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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】乗用車用の共有安全セル
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B62D21/15 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020520111
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077650
(87)【国際公開番号】W WO2019072939
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】17195802.8
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591064047
【氏名又は名称】オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フレーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・リンドナー
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-509345(JP,A)
【文献】特開2014-080116(JP,A)
【文献】特開2011-218979(JP,A)
【文献】特開2015-067121(JP,A)
【文献】特開平04-297375(JP,A)
【文献】特開2005-247295(JP,A)
【文献】特表2017-500245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合型の安全セルを備えたパワートレイン乗用車であって、
前記安全セルの外側面は、該安全セルよりも低強度エネルギー吸収領域によって囲まれ、1セルブースユニットとして前記安全セルを共用する乗員及びエネルギー源を保護し、
該乗用車は、前記エネルギー吸収領域の降伏強度を、該乗用車の横断方向と高さ方向における端部に向かうにつれて低下するように構成することによって、該乗用車を複合ばねシステムとして機能させ
前記安全セル領域ブロック上ばねのように機能させ、
前記エネルギー吸収領域を圧縮ばねのように機能させて衝突エネルギーを吸収するパワートレイン乗用車。
【請求項2】
前記横断方向及び前記高さ方向に加えて、前記車の前記長手方向側も、複合ばねシステムとして設計され、前記安全セル領域が、ブロック上ばねとして機能し、前記安全セルを外側面まで囲む前記領域が圧縮ばねとして機能する、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項3】
前記安全セルが前記車の前軸と後軸との間に配置されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項4】
前記安全セルが、エンジンから前記乗員を好ましくは水平方向に分離するために隔壁を使用することによって、前記安全セルが少なくとも2つの内側室に分離されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項5】
前記安全セルに使用される材料と周囲部品に使用される材料との間の降伏強度比が、≧2.0であり、より好ましくは2.5≦rRP0.2≦3.5である、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項6】
前記安全セルが、降伏強度≧520MPa、より好ましくは≧800MPaのひずみ硬化オーステナイト系ステンレス鋼で製造されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項7】
前記安全セルが、引張強度≧1,200MPa、より好ましくは≧2,200MPaのプレス硬化性鋼で作製されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項8】
前記安全セル周囲領域が、圧縮ばねのように作用する衝突吸収要素として設計されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項9】
前記周囲領域が、ばね鋼、より好ましくはオーステナイト系ステンレスばね鋼で作製されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項10】
下部及びパワートレインコンポーネント周囲要素が、ステンレス鋼、より好ましくは高い耐熱性及び耐酸性ステンレス鋼で作製されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項11】
前記車両が、乗員及びエネルギー源が1つの安全セル内で一緒に保護される、自動運転車、タクシー、バス、又はバンである、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【請求項12】
前記車両が、燃焼機関又はハイブリッド燃焼機関によって動力を供給され、前記車両の個々の部品が前記安全セルに統合されている、請求項1に記載のパワートレイン乗用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員及び主要コンポーネントを備えたエネルギー源に共有されて、1つのセルブースユニットとして保護を提供する、代替パワートレイン乗用車用の受動的安全セルに関する。
【背景技術】
【0002】
1886年、原動機付き車両の発明者のゴットリーブ・ダイムラーと、自動車両の発明者のカール・ベンツが、乗員向けの新たな個人用輸送技術として自動車を確立した。最初の数十年、自動車両は明らかに、馬車や大型馬車由来であった。したがって、このような自動車構造の安全性は、全く異なる他の運動挙動を有する低速の馬車から採用されたものであった。例えば、前側に馬が存在しないために、前方衝突が起こり、運転手及び同乗者が直接、致死的な衝撃を受ける新たな現象が発生した。1920年代に死亡事故が生じた理由は、ステアリングの構造によるものであった。長いステアリングコラムは、前方衝突時に槍のような挙動を呈する。また、新たに体験する側方衝撃もあった。この結果、自動車両の乗員の安全を保証するために、新しい構造と方法を発明し、承認し、導入する必要が生じた。
【0003】
1930年代及び1940年代における新たな受動的安全性コンセプトの2つの例は、ドイツ特許出願第767715C号に記載されているXチューブラフレーム、又はドイツ特許出願第742977C号のプラットフォームフレームである。ベラ・バレニーは、現代の安全自動車というコンセプトの先駆けである、分割車体(DE704477C、DE834048C)と、セル構造設計(DE810924C、DE826699C、DE835843C、DE820380C)とを開発し、これらのコンセプトは、新旧の自動車の概念をつなぐブリッジとして評価することができる。今日の安全自動車のコンセプトの中間的段階としては、横方向隔壁(bピラー)を備えた特許出願第DE828485C及びDE933372C、並びに中央長手方向ビームの発明(DE755321C、DE683885C、DE741448C)を挙げることができる。また、乗員の前後横断壁の一体化(DE841852C、DE823698C、DE973838C)は、今日の乗用車では周知であり、後に開発された乗員セルへの一歩を表す。この方向を更に進めたのが、特許出願DE885204C、DE947856C、又はDE843503Cである。
【0004】
1950年代までの乗用車の最大の欠点は、材料の点で、長手方向中心線における強度が車両の全長にわたってほぼ同じであるという点にあった。ベラ・バレニーは、自身のドイツ特許出願第854157C号において、乗員コンパートメントを車の最大強度レベルとすることを定義している。強度は、車両の前端及び後端に向かって一定に又は段階的に低下する。こうして、事故又は衝突時に乗員を保護する乗用車安全セルが発明された。以来、車の前部コンパートメント及び後端部は、変形可能区間として知られている。ベラ・バレニーは、再度セル構造設計を採用し、高強度乗員セル用の中央セルと、比較的軟性の前部コンパートメント及び後端部用の外側セルについて述べている。更に、彼は、所定の破断点を画定し、安全セルと内部の乗員の追加の保護を提供した。ドイツ特許出願第DE1157935B号は、ひずみ部材(今日、クラッシュボックスとして知られている)の追加にも触れており、この受動的安全性コンセプトは、今日の原理にも適用されている。
【0005】
以来、最新の乗員安全セルは、ほぼ車両の長手方向に配向されるように設計されている。実際に、事故の46%は前方衝突が占め、追加の27%が後方衝撃である。つまり、全事故の73%は、長手方向の衝撃である[2]。同試験で分析された159,994件の事故の53%が、速度v<20km/hで、38%が21≦v≦46km/hの速度範囲で発生している。しかし、2%を占める速度v≧64km/hでの事故の場合、側方衝撃の数が非常に増加し、それらの側方衝撃のうち26%は死亡事故となり、57%が重傷の事故となっている。側方衝突は、拘束システムのような支持的能動安全システムを、横衝撃領域(例えばドア又はbピラー)への局所的接近のために実装することができないという特有の問題を提起する。一般的な構成方法は、この領域における車の剛性を高め、より強度の高い材料からなる上述の乗員用安全セルを使用することである。自動車のカスタマーにとって、乗員の安全は、カテゴリ「極めて重要」において95%の割合で最も重要性の高い購入基準である[1]。
【0006】
しかし、乗員用安全セルは、燃焼機関及び燃焼機関周りのコンポーネントを備えた乗用車用に開発されている。代替パワートレインのコンセプトは、変換又は用途設計として強化されるか否かに関係なく、同じ乗員用安全セルを使用するが、それらのコンポーネントは、既成構造への実装部品として組み込まれる。結論として、乗員は、依然として乗員コンパートメントによって直接保護されるが、衝突の結果としての間接的なリスクは全く考慮されていない。その結果、電池電気自動車(BEV)又はハイブリッド電気自動車(HEV)の車両バッテリが損傷を受け、その後、自然発火、短絡ハザード、バッテリ液の漏出、及び機能の喪失(コスト、修理又は交換のための手間)を引き起こす可能性がある。燃料電池自動車(FCV)又は燃料電池ハイブリッド自動車(FCHV)についても、同じことが指摘され得る。現状技術では、代替パワートレインのエネルギー源は、乗員と共に保護されるように乗員コンパートメントに組み込まれていないため、受動的安全性の一部に含まれていない。代替パワートレインのエネルギー源も保護することによって、火災、バッテリ液の接触、又は感電などの、事故に関連するエネルギー源の故障を回避することができるため、乗員や救助チームのような他の人も保護される。「事故後挙動」は、安全管理の重要なサブシステムの1つであるが、代替パワートレイン乗用車の更なる開発候補である。
【0007】
次の課題の1つは、乗員の乗用車内での自由度が高まる自動運転がテーマである。よって、衝撃が起こり得るあらゆる方向で乗員を保護する必要性も、著しく上昇する。既存の荷重経路は、役に立たなくなるか作動しなくなり、車の脆弱箇所全てを対象とした多方向システムによって補強されなければならない。特に、自動運転のテーマでは、高強度の安全セルを設計するだけでは安全上十分ではない。乗員だけでなく代替パワートレインシステムも衝撃に耐え得るように、加速力(「g力」)を低減させなければならない。
【発明の概要】
【0008】
本明細書で言及される点は全て、受動的安全又は事故軽減の一部である。乗員保護は、異なる衝撃方向に分類される。
【0009】
本発明の目的は、従来技術のいくつかの欠点を解消し、乗員だけでなくエネルギー源に共有されて1セルブースユニットとして保護する統合安全セルを備えた代替パワートレイン乗用車を実現することである。乗用車は、車の横断方向及び高さ方向で、安全システムが複合ばねシステムのように機能する一方で、安全セル領域(「安全領域」)がブロック上のばねのように機能し、安全セルを外側面まで囲む領域(「エネルギー吸収領域」)が圧縮ばねのように機能するように設計されている。この作用は、所望により長手方向側に伝達されてもよく、このことは上述の特許出願からほぼ既知である。安全セルは、車の前軸と後軸との間に配置され、前の乗員コンパートメントだけでなく、駆動技術のエネルギー源及びそのエネルギー貯蔵システムも包括している。駆動技術の個々の単一コンポーネントは、衝突の大きな影響を受けず、パッケージ、設計、組立、又は修理の点で取り扱いし易い場合は、所望により安全セルの外部に配置することができる。
【0010】
安全セルは、所望により、エンジンから乗員を分離するために、いくつかの内部室に分割されるように設計され得る。この場合、船舶で既知である水平方向の隔壁が、互いに異なる空間に分離することができる。このように構成することにより、安全セルは、UN R94及びR95規格による物理的保護を確保し、完全に覆われた高電圧コンポーネント(IPXXB保護)に人が接触するのを防ぐ。更に、高電圧コンポーネントは、電気自動車から取り外すことができる。また、FMVSS305により、高電圧コンポーネントが実際の乗員コンポーネントに侵入することはない。
【0011】
このように、乗用車の構成は、上述したような複合ばねシステムとして機能することができるため、安全セルには金属材料を使用する、より好ましくは、高強度及び超高強度の鋼又はステンレス鋼を使用することが好ましく、安全セルに使用される材料と周囲部品に使用される材料との間の降伏強度比は、
RP0.2=RP0.2安全セル/RP0.2周囲部品≧2.0、
より好ましくは2.5≦rRP0.2≦3.5となる。
【0012】
安全セルの変形は許容されないため、車両、特に本発明の安全セルは、降伏強度別に設計することが好ましい。要約すると、降伏強度は、周囲部品(「エネルギー吸収領域」)では有意に低く、それに対して安全セル領域では有意に高い。これにより、周囲領域は再度、所望により、異なる降伏強度領域に細分されることが適切であり得る。好ましくは、降伏強度は、全ての車両方向、すなわち、x軸(車両の長手方向)、y軸(横断方向)、及びz軸(高さ方向)に沿って、車両端部に向かって低下する。その際、様々な強度は、例えば、強度レベルが一定の材料又は様々な熱処理材料の厚さの連続的低減によって、定常的かつ連続的に低下させることができる、又は、例えば、強度の異なる材料、可撓性圧延材料、又は特注溶接材料片、特注接合材料片、若しくは特注強化材料などの特注製品を組み合わせることによって、不連続的かつ断続的に低下させることができる。
【0013】
好ましくは、衝突挙動、修理コスト、及びアクセスの点だけでなく、単純かつ費用効率のよい構造設計という観点からも、本発明の構成は、周囲領域に段階的に配置される。周囲領域について言及した構成方法は、調節可能なばね特性又はばね定数を有する圧縮ばねの物理的効果によって説明することができる。ばね剛性又はばね硬度とも呼ばれるばね定数は、ばねに影響を及ぼす力と、それに応じて生じたばねの変位との比を規定する。SI単位であるばね定数Dは、式(1)を用いて算出することができる。
D=F/ΔL=(EA)/L、物理単位N・m-1=kg・s-2(1)
【0014】
F[kN]は圧縮力であり、より詳細には、車両への衝撃力であり、ΔL[mm]は、一般的にはばね撓み、この場合、ブロック長に達する前の周囲部品の収縮であり、Eは、材料に依存するヤング率[N/m]であり、Aはばね(システム)の断面積であり、Lはばね(システム)の初期長さであり、本発明の場合、より詳細には、初期状態における衝突前の周囲部品の寸法である。以下、Lは、「長さ変形領域」(L)と称する。
【0015】
侵入物体は、線形、累進的、又は逓減的なばね定数で、具体的な車両構造に応じて吸収され得る。線形ばね定数は、周囲部品の一定の強度レベルに対応する。非線形の累進的ばね特性は、車両構成に応じて徐々に又は断続的に、車両端部に向かう強度の低下に対応する。この場合、エネルギーは最初に吸収され、端部では衝撃に対する高抵抗が生じる。逆に、最初に高抵抗が所望され、次いで、エネルギーが周囲部品に吸収される場合には、逓減的なばね特性を使用することができる。周囲部品について記載されたばね効果は、剛性及びエネルギー吸収の最良の組み合わせを達成するように、様々な配置に設定することができる。
・並列配置
・直列配置
・組み合わせ配置
【0016】
衝突中の周囲部品の挙動を説明する他のパラメータの1つは、圧縮(渦巻き)ばねについて、ばねが初期無負荷状態から巻取り時の巻線が配置される状態までカバーし得る方法として記載されているばね撓みである。端部状態はブロック長と呼ばれる。ばね撓みは、周囲部品の最大侵入レベルとして解釈することができ、側部領域(y軸)、下部及びルーフ構造(z軸)、又は前部若しくは後部構造(x軸)にも使用可能なパッケージに依存する。ばね撓みが高いほど、エネルギー吸収が大きくなり、安全セル、ひいては乗員及び内部のエネルギー貯蔵装置に及ぼす力及び加速が小さくなる。本発明の特に好ましいばね特性設計として、円錐圧縮コイルばね又は同じ動作原理を有するシステムは、低パッケージ必要性及び高エネルギー吸収性(低ばね定数)と組み合わせてブロック長が定義される利点を有する、と言える。
【0017】
本発明の好適に使用される材料として、高強度ステンレス鋼、より好ましくは著しいひずみ硬化効果を有するより高強度のオーステナイト系ステンレス鋼が、安全セルに使用される。本発明の理想的な実施形態として、降伏強度がRP0.2≧500MPa、より好ましくはRP0.2≧800MPaであり、引張強度がR≧1,000MPaであり、降伏強度と引張強度との比が≧65%、より好ましくは≧75%である。別の好ましい材料は、プレス硬化性又は熱成形可能群によって代表される、22MnB5などのホウ素-マンガン合金鋼であり、この合金鋼は、熱成形中に1250-2200MPa間の引張強度レベルまで硬化され得る。熱処理と同様に、1.4034のようなマルテンサイト系ステンレス鋼は、Rp0.2≧1200MPa及びR≧1800MPaの機械的特性を有し、高剛性かつ変形不能な安全セルという目標を達成するのに好適である。特に、ステンレス鋼群は、本発明と比較して可能性が増加することを実証する。熱、酸、及び腐食への耐性が、安全セルの利点を一層高め、これらの特性により乗員及びエネルギー源を更に保護する。
【0018】
本発明の方法は、「ミニカー」から「コンパクトクラス」及び「中型車」から「ラグジュアリークラス」、「バン」、又は「SUV」に至るまでの全てのクラスの車両に適合させることができる。車長(L103)、ホイールベース(L101)、又は最低地上高(H157)など、ECIE(欧州自動車製造業者情報交換グループ-17号)による様々な寸法は、本発明のシステムには影響を及ぼさず、車両のクラスに関連して変動する。また、骨盤位置から踵接触レベルまでの垂直距離である椅子高H30などの乗員関連の寸法は、本発明によって影響を受けず、車体エンジニアにとって車両設計及び内部空間配置の点で更に自由度を高めることができる。
【0019】
本発明の方法では、乗員はより高い座席高を占め、視界が広がるために間接的な安全に直接関与する。この何年間にわたる欧州諸国におけるSUVの傾向に関しては、この特徴は乗員に簡便性を付与する。更に、低位に配置された荷重経路(前側及び後側クラッシュボックス、クロスビーム、及び長手方向ビームのようなコンポーネントによって代表される)に対して乗員が高い位置をとることで、安全レベルが向上する。衝突時、衝撃力は、乗員及び安全セルの下に誘導され得る。この機構は、バンパーカーの実施例を用いて例示することができる。ドイツ特許出願第885818C号とは対照的に、本発明の方法は、張出要素を示さず、実際には、外側から閉鎖されたユニットであり、安全セルは、エネルギー吸収周囲領域に完全に埋め込まれている。トラックによる追加例も提示することができ、この場合、衝突中に燃焼機関がキャビネットの下に導かれることによって、乗員は高い着座位置で安全に保たれる。加えて、本発明の配置はまた、側方衝撃時に、侵入が乗員の身体レベル(ドアサイド衝撃ビーム又はbピラーの中央部)に直接作用しないため、安全レベルが高まる。実際、バリア、ポール、又は低い位置に配置されるクラッシュボックスを備えた他の車両などの、侵入可能性のある要素よりも高い着座位置をとることで、乗員と同じレベルに衝撃を与えることなく、乗員を衝撃力から遠ざけることができる。更に、代替パワートレインは、燃焼機関関連のコンポーネントの数が逓減されているため、車両設計者は所望により、長手方向(x軸)においてより短い車長を構築することができる。これにより、駐車空間という点で都市エリアに恩恵をもたらすことができる。例えば、バッテリ区画内に重いバッテリを備えた代替パワートレインでは、ルーフ構造が安全要件に加わる。転覆時、バッテリコンポーネントの全重量が、乗員の安全を守るために座屈することなく安定していなければならないルーフ構造に作用する。この事実は、本発明の方法においても考慮され、ルーフ構造に関しても、安全セルがエネルギー吸収領域によって変形不能に囲まれるものと定義される。好適な構成方法の1つは、キャブリオレで既知であるロールオーバーバーを組み込むことであり、ロールオーバーバーは、ルーフと安全セルの床構造との間に連結されて、変形不能な安全領域を更に支持することができる。他のz軸(高さ方向)の衝撃に関しては、安全セルの下のエネルギー吸収領域により、安全セルを損傷させることなく、またその結果、内部のエネルギー源コンポーネントを損傷させることなく、ポール、バリア、又は鋭い切断要素などの侵入要素が下部に及ぼす衝撃を吸収することができる。概して、本発明の安全性コンセプトでは、設計エンジニアに新たな設計機会が提供される。
【0020】
調整及び規模の拡大縮小により、本発明は、バス、ピープルムーバ、商用車、又は荷物配達車などの他の種類の電気乗用車又は製品輸送用車両にも適用される。更に、本発明は、乗員及びエネルギー源を一緒に保護しなければならない、自動運転車、タクシー、小型バス、又はバンなどの他の種類の輸送システムにも適合可能である。また、本発明の方法は、燃料タンクなどの単一の特別部品が安全セルに統合されるように、燃焼機関を備えた車両又は燃焼機関を備えたハイブリッド車に特に適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、以下の図面を参照して、より詳細に例示される。
図1】本発明の好適な一実施形態の概略側面図である。
図2】本発明の好適な一実施形態の概略正面図である。
図3】本発明の好適な一実施形態の概略正面図である。
図4】本発明の好適な一実施形態の概略正面図である。
図5】本発明の好適な一実施形態の概略正面図である。
図6】本発明の好適な一実施形態の概略正面図である。
図7】本発明の好適な一実施形態の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、複合ばねシステムとして車の長手方向(x軸)の構成方法を示しており、(現状技術から既知のように)、軟性領域5は、エネルギー吸収領域として圧縮ばねのように作用し、安全セル2を外側面まで囲む「長さ変形領域」(L)と称する。安全セル領域2は、乗員3並びにエネルギー源4を保護するブロック上ばねLのように機能し、「安全領域」と称する。
【0023】
図2は、代替パワートレイン乗用車の好適な設計の実施形態を示しており、変形不能な安全セル2は、横断方向(y軸)及び高さ方向(z軸)に、衝突エネルギーを吸収する圧縮ばねのように作用する軟性領域5によって囲まれる。
【0024】
図3は、複合ばねシステムとして車の横断方向(y軸)の構成方法を示しており、軟性領域5は、エネルギー吸収領域として圧縮ばねのように機能し、安全セル2を外側面まで囲む「幅変形領域」(W)と称する。安全セル領域2は、乗員3並びにエネルギー源4を保護するブロック上ばねWのように機能し、「安全領域」と称する。
【0025】
図4は、横断方向(y軸、側方衝撃)の衝突中の挙動を示しており、衝突後車両寸法6が衝突前車両寸法7に関連する。寸法WBCは、全体(複合)ばねシステムの衝突後のブロック長を定義する。
【0026】
図5は、複合ばねシステムとしての車の高さ方向(z軸)の構成方法を示しており、軟性領域5は、エネルギー吸収領域として圧縮ばねのように作用し、安全セル2を外側面まで囲む「幅変形領域」(H)と称する。安全セル領域2は、乗員3並びにエネルギー源4を保護するブロック上ばねHのように機能し、「安全領域」と称する。
【0027】
図6は、下部への衝撃によって開始された高さ方向(z軸)の衝突中の挙動を示しており、衝突後車両寸法6が衝突前車両寸法7に関連する。寸法HBCは、ポール、バリア、又は他の切断物体8などからの下部への衝撃による、ばねシステムの衝突後のブロック長を画定する。
【0028】
図7は、ルーフ構造への衝撃(転覆)によって開始された高さ方向(z軸)の衝突中の挙動を示しており、衝突後車両寸法6が衝突前車両寸法7に関連する。寸法HBCは、ばねシステムの衝突後のブロック長を画定する。
【0029】
出典:
[1]H.H.Braess,U.Seiffert:Vieweg Handbuch Kraftfahrzeugtechnik,6.Auflage,ATZ Vieweg Teubner,2011
[2]M.Buchsner:自動運転を考慮した乗員安全システムとシート環境との統合、第2回年次シート改革サミット、ベルリン(2017年4月6日)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7