(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】シャトルコック
(51)【国際特許分類】
A63B 67/193 20160101AFI20220510BHJP
【FI】
A63B67/193
(21)【出願番号】P 2020524374
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 MY2018050089
(87)【国際公開番号】W WO2019132649
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】PI2017001865
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(73)【特許権者】
【識別番号】520141173
【氏名又は名称】バドミントン・ワールド・フェデレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・バート
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0032087(US,A1)
【文献】特開2009-125359(JP,A)
【文献】特表2012-533395(JP,A)
【文献】特開昭55-155666(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069349(WO,A1)
【文献】実開昭58-139174(JP,U)
【文献】特表2007-521083(JP,A)
【文献】実公昭36-033648(JP,Y1)
【文献】実公昭43-018029(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B67/00-67/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャトルコック(1)であって、
上方リップ(3)
、下方リップ(7)、および、前
記上方リップ(3)と前記下方リップ(7)との間に形成される基部(5)を有する先端部(9)と、
前
記下方リップ(7)から遠くへ延びる複数の区域(29)であって、前記複数の区域(29)の各々は、一対の離間された分岐する羽軸(11)を、前
記下方リップ(7)から遠位の前記区域(29)の端において前記羽軸(11)同士の間に羽根(15)が設けられた状態で有し、前記羽根(15)は複数の穿孔(17)を有し、前記複数の区域(29)は環状の配列で一体に形成および配置される、複数の区域(29)と、
を備え、
前記複数の区域(29)の各々
は、前記一対の離間された分岐する羽軸(11)と前記羽根(15)とよって画定された単一の中央開口(13)
を有し、前記区域(29)の前記中央開口(13)は、横風の干渉を低減するために横風の通過を許容するように構成され、前記下方リップ(7)から先の前記区域(29)の低減した質量が、前記シャトルコック(1)の重心が前記先端部(9)のより近くに移動させられることをもたらし、
各々の区域(29)の前記羽根(15)は、前記下方リップ(7)から遠くへ延びるにつれて放物線状に湾曲した形を有することを特徴とするシャトルコック(1)。
【請求項2】
前記羽軸(11)
の断面は、円形、管状、L字、X字、長方形、または三角形の形態で
ある、請求項1に記載のシャトルコック(1)。
【請求項3】
前記区域(29)の前記中央開口(13)は、長方形、六角形、または三角形の形態で
ある、請求項1に記載のシャトルコック(1)。
【請求項4】
前記羽根(15)の前記複数の穿孔(17)は、円形、三角形、または正方形の形態で
ある、請求項1に記載のシャトルコック(1)。
【請求項5】
スナップフィット機構によって前記先端部(9)と適切に係合されるコルク(5)が設けられる、請求項1に記載のシャトルコック(1)。
【請求項6】
前記複数の区域(29)の前記羽根(15)はスカート(19)を集合的に形成する、請求項1に記載のシャトルコック(1)。
【請求項7】
前記羽根(15)の前記複数の穿孔(17)は、前記シャトルコック(1)の軸回転をもたらすように、前記区域(29)の前記羽根(15)を通じて、前記羽根(15)にわたって空気を流すように構成される、請求項1に記載のシャトルコック(1)。
【請求項8】
開口(31)における前記スカート(19)の直径が55mmから80mmの範囲で
ある、請求項6に記載のシャトルコック(1)。
【請求項9】
前記スカート(19)は、開口(31)における67mmの直径と、20mmの高さとを有する、請求項6に記載のシャトルコック(1)。
【請求項10】
前記シャトルコック(1)の前記重心は前記下方リップ(7)と前記先端部(9)の端との間にある、請求項1に記載のシャトルコック(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャトルコックに関し、詳細には、側方からの風の干渉が低減され、長手方向の角度安定性が高められたバドミントンのシャトルコックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャトルコックまたは既存のシャトルコックは、各々の羽軸の間に狭い空間を典型的には有し、このような設計を伴うシャトルコックは、周囲の場所の外部攪乱に概して敏感であり、具体的には変化する風の強さに概して敏感であり、これは、バドミントンのゲームまたは活動においてシャトルコックの飛行性能に最終的に影響を与える可能性がある。この外部攪乱は、バドミントンのゲームまたは活動が屋内バドミントンコートにおいて行われるときは限定または低減され得る。しかしながら、屋外の環境では、不規則な強さおよび方向の風の条件の存在は、空気の流れが各々の羽軸の間の狭い空間により制限されるため、強い横風の干渉の結果としてシャトルコックの飛行性能を大幅に悪化させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の欠点を克服するために、本発明は、従来のシャトルコックまたは既存のシャトルコックと比較して各々の羽軸の間により大きな空間を伴い、このような設計によって、屋内条件または屋外条件のいずれであっても、風の条件に立ち向かわせることでシャトルコックの飛行安定性を高めることによってもたらされる飛行の逸脱に対する増加した抵抗力を、シャトルコックに持たせることができるシャトルコックを提起している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、側方からの風の干渉を低減し、長手方向の角度安定性を高めるように構成されるシャトルコックに関する。
【0005】
本発明によれば、シャトルコックは、先端部と、先端部から遠くへ延びる複数の区域とを備える。好ましい実施形態では、先端部は、窪んだ上方リップと、基部と、窪んだ下方リップとを備える。基部は、窪んだ上方リップと窪んだ下方リップとの間に形成される。シャトルコックの先端部は、スナップフィット機構によって複数の区域と好ましくは係合される。スナップフィット機構は、何らかの接着剤または留め具を用いることなく2つの柔軟な部品を一体の構成部品へと組み合わせる組み立て技術である。スナップフィット機構を用いることで材料を減らすことができることは、理解されるものである。
【0006】
好ましくは、複数の区域は、窪んだ下方リップから延び、環状の配列で一体に形成および配置される。本発明の好ましい実施形態では、複数の区域の各々は、一対の離間された分岐する羽軸を、羽軸同士の間に羽根が設けられた状態で有する。区域の羽根が、窪んだ下方リップから遠位の区域の端に位置付けられることは、留意されるべきである。好ましくは、区域の羽根には複数の穿孔が設けられる。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、大きな中央開口が複数の区域の各々の中央部分に形成される。区域の中央開口が、横風の干渉を低減するために横風の通過を許容するように構成されることは、理解されるものである。区域の中央開口が、下方リップから先の区域の質量を低減でき、これが、シャトルコックの重心が先端部のより近くに移動させられることをもたらすことは、留意されるべきである。
【0008】
好ましい実施形態では、シャトルコックの先端部にコルクが設けられる。コルクは、半球形のドームと円筒形の基部とを好ましくは有する。望まれる場合、コルクの半球形のドームの表面には、シャトルコックの美的外観を高めるように複数の窪みが設けられ得る。
【0009】
限定されることなく例として、シャトルコックは、ポリアミド(好ましくはナイロン)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、または、適切であると考えられる任意の他の材料から形成され得る。
【0010】
本発明の装置は、いくつの新規の特徴と、以後において添付の記載および図面に完全に記載および図示される部品の組み合わせとから成り、詳細における様々な変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、または、本発明の利点のいずれかを犠牲にすることなく、行われ得ることが理解される。
【0011】
本発明は、本明細書において以下に提供されている詳細な記載と、例示として提供されているだけであり、本発明を限定することのない添付の図面とから、完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】コルクの設けられたシャトルコックの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、シャトルコックに関し、より具体的には、側方からの風の干渉が低減され、長手方向の角度安定性が高められたシャトルコックに関する。以後において、本明細書は、本発明の好ましい実施形態により本発明を記載している。しかしながら、記載を本発明の好ましい実施形態に限定することが本発明の詳述を容易にするためだけであることは理解され、当業者が添付の特許請求の範囲から逸脱することなく様々な改良物および均等物を考案できることは考えられている。ここで、本発明を実行する好ましい様態によるシャトルコックが、添付の図面の
図1および
図2に従って、個別またはそれらの組み合わせのいずれかで記載される。
【0014】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態のシャトルコック(1)が示されている。シャトルコック(1)は先端部(9)と複数の区域(29)とを備えている。好ましくは、先端部(9)と区域(29)とはスナップフィット機構によって連結される。スナップフィット機構は、何らかの接着剤または留め具を用いることなく2つの柔軟な部品を一体の構成部品へと組み合わせる組み立て技術であり、この組み立て技術がシャトルコック(1)の生産のための材料コストを節約できることは、理解されるものである。好ましい実施形態では、シャトルコック(1)の先端部(9)は、窪んだ上方リップ(3)と、基部(5)と、窪んだ下方リップ(7)とを備える。先端部(9)の基部(5)が窪んだ上方リップ(3)と窪んだ下方リップ(7)との間に形成されていることは留意されるべきである。本発明の好ましい実施形態によれば、複数の区域(29)は、先端部(9)の窪んだ下方リップ(7)から遠くへ延びており、環状の配列で一体に形成および配置されている。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、大きな中央開口(13)が複数の区域(29)の各々の中央部分に形成されている。区域(29)の中央開口(13)が、横風の干渉を低減するために横風の通過を許容するように構成されることは、留意されるべきである。区域(29)の中央開口(13)が、下方リップ(7)から先の区域(29)の質量を低減でき、これが、シャトルコック(1)の重心が先端部(9)のより近くに移動させられることをもたらすことは、理解されるものである。シャトルコック(1)の先端部(9)に向けて重心がより近くなると、シャトルコック(1)の長手方向の角度安定性がより高くなり、そのためシャトルコック(1)の反転の局面の間にぐらつきを低減することは、留意されるべきである。限定されることなく例として、区域(29)の中央開口(13)は、長方形、六角形、または三角形の形態であり得る。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、複数の区域(29)の各々は、一対の離間された分岐する羽軸(11)を有する。好ましくは、各々の羽軸(11)の長さは10mmから50mmの範囲であり、羽軸(11)とシャトルコック(1)の先端部(9)との間の角度は90度から120度の範囲であり得る。羽軸(11)が、限定されることはないが、円形の断面、管状の断面、L字の断面、X字の断面、または長方形の断面を含む任意の他の適切な輪郭の形態であり得ることは、留意されるべきである。
【0017】
好ましい実施形態では、
図1に示されているように、羽根(15)が羽軸(11)同士の間に設けられている。区域(29)の羽根(15)は、好ましくは、窪んだ下方リップ(7)から遠位の区域(29)の端に位置付けられ、複数の穿孔(17)が設けられる。限定されることなく例として、羽根(15)の複数の穿孔(17)は、所望の大きさにおける円形、三角形、または正方形の形態であり得る。羽根(15)の複数の穿孔(17)は、シャトルコック(1)の軸回転をもたらすように、区域(29)の羽根(15)を通じて、羽根(15)にわたって空気を流すために、所望の通気性を作り出すように構成されている。軸回転は、シャトルコック(1)の軌道プロフィールを安定させることに寄与する。好ましくは、区域(29)の羽根(15)は、放物線状に湾曲した形を有する。このような構成が横風の干渉をさらに低減できることは、理解されるものである。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、区域(29)の複数の羽根(15)はシャトルコック(1)のスカート(19)を集合的に形成する。スカート(19)は、開口(31)における67mmの直径と、20mmの高さとを好ましくは有する。スカート(19)の高さは、縮小した側方の輪郭を提供する一方で、長手方向における角度安定性のための必要なピッチングモーメントを保持する。任意選択で、開口(31)におけるスカート(19)の直径が55mmから80mmの範囲であり得る。スカートの直径を増加させることで、シャトルコックの受ける抵抗も増加させられ得ることは、理解されるものである。スカート(19)の高さは、好ましくは5mmから25mmの範囲である。スカートの高さを増加させることで、側方からの風の干渉に対する抵抗の減少を犠牲にして、シャトルコックの角度安定性も増加させられ得ることは、留意されるべきである。
【0019】
本発明のシャトルコック(1)には、
図2に示されているようなコルク(5)も設けられている。好ましくは、コルクは、半球形のドームと円筒形の基部とを有し、スナップフィット機構によってシャトルコックの先端部(9)と適切に係合される。望まれる場合、コルクの半球形のドームの表面には、シャトルコック(1)の美的外観を高めるように複数の窪み(31)が設けられている。
【0020】
限定されることなく例として、本発明のシャトルコック(1)は、ポリアミド(好ましくはナイロン)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、または、適切であると考えられる任意の他の材料から形成され得る。
【0021】
前述の記載は、本発明の原理の例示と見なされる。さらに、多くの改良および変更が当業者によって容易に行われるため、図示および記載された正確な構造および動作に本発明を限定することは望まれておらず、したがって、すべての適切な変形および均等は、本発明の範囲内にあると訴えられ得る。
【符号の説明】
【0022】
1 シャトルコック
3 窪んだ上方リップ
5 基部、コルク
7 窪んだ下方リップ
9 先端部
11 羽軸
13 中央開口
15 羽根
17 穿孔
19 スカート
29 区域
31 開口、窪み