(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】自動車用の作動液容器内の作動液の品質特性を決定する方法およびその方法を実行する作動液容器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20220510BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
G01N27/22 B
(21)【出願番号】P 2020536113
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2018084746
(87)【国際公開番号】W WO2019129500
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】102017223853.4
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カール-ルートヴィヒ・クリーガー
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・ハッペル
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート・ヴォルフ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/142553(WO,A1)
【文献】特表2001-525059(JP,A)
【文献】特表2004-533867(JP,A)
【文献】特開2008-076227(JP,A)
【文献】特表2007-507689(JP,A)
【文献】特表2009-505074(JP,A)
【文献】特開平07-239316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0018381(US,A1)
【文献】国際公開第2017/018893(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0222656(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0046985(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0257094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の作動液容器(1)内の作動液の電気伝導率を決定する方法であって、前記作動液容器(1)は第1の電極(61、71)およびそれに対向する第2の電極(62、72)を有する前記作動液容器(1)の容器壁(10、20、30)に固定された少なくとも1つのコンデンサ(60、70)を含み、前記方法が、
前記コンデンサ(60、70)に少なくとも3つの異なる交流電圧を印加する方法ステップ(A)であって、第1の交流電圧の第1の周波数が10kHzの下限周波数(fmin)に対応し、第2の交流電圧の第2の周波数が前記下限周波数(fmin)と1MHzまたは100kHzの上限周波数(fmax)との間の周波数に対応し、第3の交流電圧の第3の周波数が前記上限周波数(fmax)に対応する、方法ステップ(A)と、
前記第1の周波数についての前記コンデンサ(60、70)の第1のインピーダンス、前記第2の周波数についての前記コンデンサ(60、70)の第2のインピーダンス、および前記第3の周波数についての前記コンデンサ(60、70)の第3のインピーダンスを決定および記憶する方法ステップ(B)と、
前記第1のインピーダンスから第1の位相角(φ1)、前記第2のインピーダンスから第2の位相角(φ2)、および前記第3のインピーダンスから第3の位相角(φ3)を決定する方法ステップ(C)と、
前記第2の位相角(φ2)が前記第1の位相角(φ1)より大きく、かつ前記第3の位相角(φ3)より大きい場合に、前記作動液容器(1)内に位置する作動液(50)が品質要件を満たすと判定する方法ステップ(D)と、を備
え、
前記作動液が脱イオン水である、方法。
【請求項2】
前記第2の位相角(φ2)が前記第1の位相角(φ1)より大きく、かつ前記第3の位相角(φ3)より大きい場合に、前記自動車の作動を可能にする解除信号を出力する方法ステップ(D1)を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の位相角(φ3)が前記第2の位相角(φ2)より大きく、または前記第2の位相角(φ2)に等しい場合に、前記作動液容器(1)内に位置する作動液(50)が品質要件を満たしていないと警報する警報信号を出力する方法ステップ(E)を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第3の位相角(φ3)と前記第1の位相角(φ1)との間の差分が所定の最小損失角(δs)未満である場合に、前記自動車の作動を防止する停止信号を出力する方法ステップ(F)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
作動液容器(1)であって、
作動液容器内部(2)が、天井壁(30)、底壁(10)、および前記底壁(10)を前記天井壁(30)に接続する側壁(20)で区切られ、
前記作動液容器(1)が、第1の電極(61、71)および第2の電極(62、72)を有する前記作動液容器(1)の容器壁(10、20、30)に固定された少なくとも1つのコンデンサ(60、70)を含み、
前記作動液容器(1)が、前記第1の電極(61、71)および前記第2の電極(62、72)に電気的に接続された電子評価ユニット(80)を含む、特徴を有し、
前記作動液容器(1)が、前記電子評価ユニット(80)が請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法を実行するように設計されていることを特徴とする、作動液容器(1)。
【請求項6】
前記コンデンサ(60、70)が前記容器壁(10、20、30)に埋め込まれていることを特徴とする、請求項
5に記載の作動液容器(1)。
【請求項7】
前記底壁(10)が、前記作動液容器内部(2)に延びる凸部(11)を含み、
前記コンデンサ(70)の前記第1の電極(71)および前記第2の電極(72)が前記凸部(11)に埋め込まれていることを特徴とする、請求項
5または
6に記載の作動液容器(1)。
【請求項8】
前記容器壁(10、20、30)が、外層(41)、前記作動液容器内部(2)に向かって対向する内層(45)、およびそれらの間に配置された接着層(44)を含み、
前記少なくとも1つのコンデンサ(60)の前記第1の電極(61、71)および前記第2の電極(62、72)が前記外層(41)と前記接着層(44)との間に配置されていることを特徴とする、請求項
5から
7のいずれか一項に記載の作動液容器(1)。
【請求項9】
前記容器壁(10、20、30)が遮蔽層(42)および絶縁層(43)を含み、
前記遮蔽層(42)が外層(41)と前記第1および第2の電極(61、62、71、72)との間に配置され、
前記絶縁層(43)が前記遮蔽層(42)と前記第1および第2の電極(61、62、71、72)との間に配置されているステップを特徴とする、請求項
5から8のいずれか一項に記載の作動液容器(1)。
【請求項10】
前記絶縁層(43)が内層(45)および/または前記外層(41)と同じ誘電率を有することを特徴とする、請求項
9に記載の作動液容器(1)。
【請求項11】
前記第1および第2の電極(61、62、71、72)から前記作動液容器内部(2)までの距離が1.5mm~3.5mmであることを特徴とする、請求項
5から
10のいずれか一項に記載の作動液容器(1)。
【請求項12】
前記コンデンサ(60、70)の前記第1および第2の電極(61、62、71、72)のうちの少なくとも1つがその長さ拡張部(L)に沿って不均一な幅拡張部(B)を有することを特徴とする、請求項
5から
11のいずれか一項に記載の作動液容器(1)。
【請求項13】
前記コンデンサ(60)の前記第1および第2の電極(61、62、71、72)の少なくとも1つがその長さ拡張部(L)に沿って前記底壁(10)の方向に増加する幅拡張部(B)を有することを特徴とする、請求項
5から
12のいずれか一項に記載の作動液容器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の作動液容器内の作動液の品質特性を決定する方法に関する。さらに、本発明は、方法を実行する作動液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車で使用するために設計された水の容器として設計された作動容器も、以下で参照する。本発明の意味での作動液容器は、特に、しかし排他的ではなく、例えば、自動車用の内燃機関、水切りワイパー容器、尿素容器、燃料容器(ガソリン燃料またはディーゼル燃料用の)、油容器、二次液容器、または付加的容器の吸気マニホールドに噴射される水を貯蔵する自動車用の水容器である。冒頭で述べた容器は、押し出しブロー成形によって頻繁に製造され、特に、HDPE(高密度ポリエチレン)は押し出しブロー成形容器の製造に適している。射出成形法により対応する作動液容器を製造することがさらに可能である。
【0003】
水噴射は内燃機関の性能を高める方法である。超高性能の間に最大温度を越えないように、蒸留水が内燃機関の吸気マニホールド内に噴射される。蒸発している液体は冷却効果を有し、締固め作業を低減する。蒸気動力を発生させ、排気温度を低下させ、ゆえに排気容器圧力を低下させる燃焼行程中の噴射も実施される。特に、内燃機関の窒素酸化物の汚染排出は水噴射により低減され得る。吸気マニホールド内に噴射される水は、適用される蒸発熱による効果的な充填空気冷却をもたらし、したがって、エンジンの内部冷却も実現する。より冷たい燃焼空気、ゆえにその高密度の燃焼空気により、性能が向上する。
【0004】
蒸留水または脱イオン水のみを、噴射ユニットにおける混合物および析出物の燃焼を回避するように水噴射について使用するために、自動車の汚染排出が増加されないことが想定される。よって、水道水は水噴射には適切ではない。
【0005】
したがって、水容器として設計された自動車用の作動液容器において、水容器内の水の電気伝導率は監視対象の品質特性である。蒸留水または脱イオン水は、例えば、水道水に比べて、かなり低い電気伝導性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、自動車についての作動液容器内の作動液の品質特性を決定する方法を提供する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の根本的な目的は、本発明の請求項1に記載の方法により達成される。有利な設計については、請求項1に従属する請求項に記載している。
【0008】
より具体的には、本発明の根本的な目的は、自動車用の作動液容器内の作動液の電気伝導率を決定する方法であって、作動液容器は第1の電極およびそれに対向する第2の電極を有する作動液容器の容器壁に固定された少なくとも1つのコンデンサを含む、方法により達成される。本発明による方法は、次の方法ステップA、B、CおよびD、すなわち、
A)コンデンサに少なくとも3つの異なる交流電圧を印加する方法ステップであって、第1の交流電圧の第1の周波数が下限周波数に対応し、第2の交流電圧の第2の周波数が下限周波数と上限周波数との間の周波数に対応し、第3の交流電圧の第3の周波数が上限周波数に対応する、方法ステップと、
B)第1の周波数についてのコンデンサの第1のインピーダンス、第2の周波数についてのコンデンサの第2のインピーダンス、および第3の周波数についてのコンデンサの第3のインピーダンスを決定および記憶する方法ステップと、
C)第1のインピーダンスから第1の位相角、第2のインピーダンスから第2の位相角、および第3のインピーダンスから第3の位相角を決定する方法ステップと、
D)第2の位相角が前記第1の位相角より大きく、かつ第2の位相角より大きい場合に、作動液容器内に位置する作動液が品質要件を満たすと判定する方法ステップ(D)と、を特徴とする。
【0009】
本発明による方法は、作動液容器内に位置する作動液が所定の品質要件に対応するかどうかの判定が、作動液を伴って、測定ユニット、本事例においてはコンデンサの直接接触なしに確実に有効となる利点を有する。所定の品質要件は、作動液の電気伝導率と相関する。したがって、作動液容器内部に位置する作動液の電気伝導率を決定することによって、作動液の品質特性を推測し得る。
【0010】
コンデンサの周波数依存性インピーダンスは、第1の電極と第2の電極との間の交流電場によって透過する媒体の電気伝導率に依存する。したがって、コンデンサの周波数依存性インピーダンスは、容器壁の材料および作動液容器内部に位置する作動液に依存する。
【0011】
出願人は、印加される交流電圧の周波数においてコンデンサのインピーダンスの曲線が作動液の品質特性の明確な推測を可能にすることを発見した。したがって、出願人は、作動液の電気伝導率が低いときに、インピーダンスの位相角が下限周波数と上限周波数との間に最大値を有することを確立した。この場合、コンデンサに印加される交流電圧の下限周波数および上限周波数は、コンデンサの形状、コンデンサの電極の大きさおよびコンデンサの電極の互いからの距離に依存する。
【0012】
出願人は、1μS/cm~50μS/cmの電気伝導率を有する作動液容器内の脱イオン水についてのコンデンサのインピーダンスの周波数依存性位相曲線が、10kHz~1MHzの周波数範囲内に最大値を有することを確立した。しかしながら、周波数範囲は、コンデンサの大きさおよび形状に応じて変化し得る。
【0013】
作動液容器は、自動車用の作動液であることが好ましい。さらに、作動液容器は、自動車の内燃機関内への噴射のために提供される水を収容する自動車用の水容器として設計されることが好ましい。
【0014】
少なくとも3つの異なる交流電圧をコンデンサに印加する方法ステップAでは、好ましくは、下限周波数と上限周波数との間の周波数範囲内に異なる周波数を各々が有する複数の、すなわち、3つ以上の異なる交流電圧がコンデンサに印加される。
【0015】
下限周波数と上限周波数も両方共が、コンデンサの形状および寸法に依存し、したがって、変化し得る。特に、下限周波数は10kHzであり、上限周波数は1MHzである。さらに、上限周波数は、100kHzであることが好ましい。
【0016】
互いに隣接するそれぞれの交流電圧の周波数間隔は、可変であることが好ましく、コンデンサの形状および寸法ならびに達成される測定分解能に依存する。特に、異なる交流電圧の周波数間の周波数間隔は1kHzである。
【0017】
方法ステップBはまた、異なる交流電圧のためのコンデンサの周波数依存性インピーダンスを決定して記憶すると表現され得る。
【0018】
位相角は、コンデンサに印加される電圧とコンデンサに流れる電流との間の角度である。
【0019】
したがって、方法ステップCでは、周波数依存性位相曲線は、電圧および電流で決定される。
【0020】
方法ステップDでは、第1の位相角より大きくかつ第3の位相角より大きい第2の位相角は、下限周波数と上限周波数との間に最大値を有する位相角の曲線に相当する。
【0021】
好ましくは、方法は、第2の位相角が第1の位相角より大きくかつ第3の位相角より大きいときに、解除信号を出力する方法ステップD1を含むように設計されている。
【0022】
解除信号を出力することによって、作動液容器内部に位置する作動液が所定の品質要件に対応するために、自動車の作動が可能になることが、特に、自動車の制御ユニットにシグナリングされ得る。
【0023】
方法は、第3の位相角が第2の位相角より大きくまたは第2の位相角に等しい場合に、警告信号を出力する方法ステップEを含むように設計されることが好ましい。
【0024】
警告信号を出力する方法ステップでは、したがって、位相角の最大値が下限周波数と上限周波数との間の位相角の周波数依存性曲線で決定できない場合に、警告信号のみが出力となる。
【0025】
位相角の最大値が下限周波数と上限周波数との間で決定できず、第3の位相角と第1の位相角との差分が所定の最小損失角より大きい場合、作動液容器内部に位置する作動液は、なおも十分な品質を有する。しかしながら、警告信号が出力されているために、作動液容器が設置されている自動車のユーザは、作動液容器内部に位置する作動液が低下した品質を有するが、自動車の作動にはなおも適切であることを通知され得る。
【0026】
損失角は、-90°の差分およびインピーダンスの位相角として理解される必要がある。
【0027】
方法は、第3の位相角と第1の位相角との差分が所定の最小損失角未満である場合、停止信号を出力する方法ステップFを含むように設計されることが好ましい。
【0028】
第3の位相角と第1の位相角との差分が所定の最小損失角未満である場合、作動液容器内部に位置する作動液は、自動車の作動には適切でなく、自動車または自動車のアセンブリ、例えば、内燃機関についての水噴射ユニットへの損傷の原因になり得る品質を有する。したがって、自動車の作動は、停止信号を出力することによって防止し得る。
【0029】
本発明の根本的な目的は、本発明の請求項5に記載の方法によってさらに達成される。方法の有利な設計については、請求項5に従属する請求項に記載している。
【0030】
より具体的には、本発明の根本的な目的は、自動車用の作動液容器内の作動液の電気伝導率を決定する方法であって、作動液容器が、第1の電極およびそれに対向する第2の電極を有する作動液容器の容器壁に固定された少なくとも1つのコンデンサを含む、方法によって達成される。本発明による方法は、次の方法ステップG、H、I、およびJ、すなわち、
G)コンデンサに少なくとも2つの異なる交流電圧を印加する方法ステップであって、第1の交流電圧の第1の周波数が下限周波数に対応し、第2の交流電圧の第2の周波数が上限周波数に対応する、方法ステップと、
H)第1の周波数についてのコンデンサの第1の静電容量、および第2の周波数についてのコンデンサの第2の静電容量を決定および記憶する方法ステップと、
I)第1の静電容量からの第2の静電容量の相対的なずれを確認する方法ステップと、
J)第1の静電容量からの第2の静電容量の相対的なずれが第1の最小ずれより大きい場合に、作動液容器内に位置する作動液が所定の品質要件を満たすと判定する方法ステップと、を特徴とする。
【0031】
本発明による方法は、作動液容器内に位置する作動液が所定の品質要件に対応しているかどうかの判定が、作動液を伴って、測定ユニット、本事例においてはコンデンサの直接接触なしに確実に有効となる利点を有する。所定の品質要件は、一方、交流電場がコンデンサの第1の電極と第2の電極との間を透過する媒体に依存するコンデンサの静電容量と相関する。したがって、コンデンサの周波数依存性静電容量を決定することによって、作動液の品質特性を推測し得る。
【0032】
コンデンサの周波数依存性静電容量は、第1の電極と第2の電極との間の交流電場によって透過する媒体の電気伝導率に依存する。したがって、コンデンサの周波数依存性静電容量は、容器壁の材料および作動液容器内部に位置する作動液に依存する。
【0033】
出願人は、印加される交流電圧の周波数においてコンデンサの静電容量の曲線が作動液の品質特性の明確な推測を可能にすることを発見した。したがって、出願人は、作動液の電気伝導率が低い場合に、下限周波数と上限周波数との間でコンデンサの静電容量の曲線が、特定のずれ、例えば、特定の低下を有する必要があることを確立した。この場合、コンデンサに印加される交流電圧の下限周波数および上限周波数は、コンデンサの形状、コンデンサの電極の大きさおよびコンデンサの電極の互いからの距離に依存する。
【0034】
出願人は、作動液容器内で1μS/cm~50μS/cmの電気伝導率を有する脱イオン水についてのコンデンサの静電容量が、10kHz~1MHzの周波数範囲内で少なくとも20%だけずれる必要があることを確立した。したがって、1MHzの周波数でのコンデンサの静電容量と10kHzの周波数でのコンデンサの静電容量との差分は少なくとも20%である。しかしながら、周波数範囲は、コンデンサの大きさおよび形状に応じて変化し得る。
【0035】
作動液容器は、自動車用の作動液であることが好ましい。さらに、作動液容器は、自動車の内燃機関内への噴射のために提供される水を収容する自動車用の水容器として設計されることが好ましい。
【0036】
第1の静電容量からの第2の静電容量の相対的なずれを確認する方法ステップIでは、次の式が実行される。
Δ(デルタ)=|Cfmin-Cfmax|/Cfmin
この場合、
fminは下限周波数であり、
fmaxは上限周波数であり、
Cfminは、下限周波数fminを有する交流電圧の場合のコンデンサの第1の静電容量であり、
Cfmaxは、上限周波数fmaxを有する交流電圧の場合のコンデンサの第2の静電容量であり、
Δ(デルタ)は、第1の静電容量Cfminからの第2の静電容量の相対的なずれである。
【0037】
第1の最小ずれは0.2より大きいことが好ましい。
【0038】
脱イオン水ならびに下限周波数10kHzおよび上限周波数100kHzについて、最小ずれは、例えば、コンデンサの電極が長さ拡張100mm、幅拡張50mm、第1の電極から第2の電極までの距離10mmを有する場合には、約0.2である。
【0039】
所定の品質要件は、作動液の静電容量であることが好ましい。作動液が、内燃機関内への噴射のために提供される、水を収容する水容器として設計されている場合、所定の品質要件は、例えば、水の静電容量であり、かつ1μS/cm~50μS/cmである。
【0040】
方法は、第1の静電容量からの第2の静電容量の相対的なずれが第1の最小ずれより大きい場合、解除信号を出力する方法ステップJ1を含むように設計されることが好ましい。
【0041】
解除信号を出力することによって、作動液容器内部に位置する作動液が所定の品質要件に対応するために、自動車の作動を可能にすることを、特に自動車の制御ユニットはシグナリングされ得る。
【0042】
方法は、第1の静電容量からの第2の静電容量の相対的ずれが第1の最小ずれと第2の最小ずれとの間の値を有する場合に、警告信号を出力する方法ステップKを含み、第2の最小ずれが第1の最小ずれ未満であるように設計されることが好ましい。
【0043】
第1の静電容量からの第2の静電容量の相対的ずれが、第1の最小ずれ未満であるが第2の最小ずれより大きい場合に、作動液容器内部に配置された作動液は、なおも適切である品質を有する。しかしながら、警告信号は、作動液容器が設置されている自動車のユーザが、作動液容器内に位置する作動液の品質が自動車の作動になおも十分である低下した品質を有することが通知され得るように出力される。
【0044】
方法は、第1の静電容量からの第2の静電容量の相対的ずれが第2の最小ずれ未満である場合に、停止信号を出力する方法ステップKを有し、第2の最小ずれが第1の最小ずれ未満であるように設計されることが好ましい。
【0045】
この場合、作動液容器内部に位置する作動液は、自動車の作動に適切でなく、自動車または自動車のアセンブリ、例えば、水噴射ユニットまたは内燃機関への損傷の原因になり得る品質を有する。したがって、自動車の作動は、停止信号を出力することによって防止し得る。
【0046】
もちろん、請求項1~4の一項に記載の方法と請求項5~8の一項に記載の方法を組み合わせることも可能である。
【0047】
さらに、本発明は、作動液容器内に位置する作動液の品質特性を決定するために設計されている作動液の品質特性を決定するように設計された作動液を供給する目的に基づいている。
【0048】
この目的は、請求項9の特徴を有する作動液容器により達成される。作動液容器の有利な設計は、請求項9の従属請求項に記載されている。
【0049】
より具体的には、本発明の根本的な目的は、天井壁、底壁および底壁を天井壁に接続する側壁で区切られている作動液容器内部によって達成される。作動液容器は、第1の電極および第2の電極を有する作動液容器の容器壁に固定された少なくとも1つのコンデンサを含む。さらに、作動液容器は、第1の電極および第2の電極に電気的に接続された電子評価ユニットを有する。本発明による作動液容器は、評価ユニットが上記の方法のうちの少なくとも1つを実行するように設計されていることを特徴とする。
【0050】
少なくとも1つのコンデンサは、作動液容器の側壁上または内に取り付けられることが好ましい。さらに、少なくとも1つのコンデンサは、第1の電極および第2の電極の長さ拡張が天井壁の方向に底壁から延びるように第1の電極および第2の電極の各々が側壁に対して平行に延びている、各々が長さ拡張、幅拡張、および深さ拡張を有するように、側壁上にまたは側壁内に設置されることが好ましい。
【0051】
作動液容器のさらなる設計により、少なくとも1つのコンデンサは、底壁上または底壁内に設置されるために、第1の電極および第2の電極は各々、底壁に対して平行に延びている。
【0052】
少なくとも1つのコンデンサは、容器壁の外側に設置され得、かつそれに接続され得る。さらに、少なくとも1つのコンデンサが容器壁に一体化または埋め込まれることも可能である。この場合、コンデンサのそれぞれの第1の電極および第2の電極は容器壁により囲まれている。
【0053】
作動液容器は、少なくとも1つのコンデンサが容器壁に埋め込まれているように設計されていることが好ましい。
【0054】
コンデンサの電極が容器壁に埋め込まれている場合、電極は容器壁に囲まれるために、電極の電極端子のみが容器壁から一層突出している。
【0055】
対応して設計された作動液容器は、作動液容器の容器壁内の少なくとも1つのコンデンサの埋め込みのために、少なくとも1つのコンデンサの第1の電極および第2の電極が、作動液容器内部までの、したがって、作動液容器内部に位置する作動液までの減少された距離を有する利点を有する。したがって、第1の電極と第2の電極との間に位置する電場は、容器壁の材料と殆ど相互作用せず、作動液容器内に位置する作動液とより相互作用する。したがって、作動液容器内部の作動液の電気伝導率は、高い精度で決定され得る。
【0056】
容器壁に少なくとも1つのコンデンサを埋め込むさらなる利点は、少なくとも1つのコンデンサが、機械的にかつ化学的に保護されるために、本発明による作動液容器は長期安定性が向上した。
【0057】
作動液容器は、特に、自動車用の作動液として設計されている。
【0058】
作動液容器は、底壁が作動液容器内部に延びる凸部を含み、コンデンサの第1の電極および第2の電極が凸部に埋め込まれるように設計されることが好ましい。
【0059】
作動液容器の対応する設計により、底壁の領域での可能な堆積物が、作動液容器内部に位置する作動液の電気伝導率の決定への影響が少ないために、作動液の電気伝導率の決定が、より一層高い精度で可能になる。
【0060】
底壁の凸部は、作動液容器内部への折り畳みとして形成することが好ましい。
【0061】
凸部は、底壁の内周面から2mm~5mm突き出ていることが好ましい。
【0062】
作動液容器は、容器壁が、外層、作動液容器内部に向かって対向する内層、およびそれらの間に配置された接着層を含み、少なくとも1つのコンデンサの第1の電極および第2の電極が外層と接着層との間に配置されるように設計されることが好ましい。
【0063】
したがって、少なくとも1つのコンデンサは、外層と接着層との間に配置される。したがって、内層は、作動液と直接接触し得る。
【0064】
作動液容器の対応する設計は、作動液容器の容器壁におけるコンデンサの単純化した構造および単純化した一体化を可能にする。
【0065】
作動液容器は、容器壁が遮蔽層および絶縁層を含み、遮蔽層が外層と第1および第2の電極との間に配置され、絶縁層が遮蔽層と第1および第2の電極との間に配置されるように設計されることが好ましい。
【0066】
対応して設計された作動液容器は、作動液容器内部に位置する作動液の電気伝導率の決定に対してより一層高い精度を有する利点を有する。これは、金属層として形成することが好ましい遮蔽層が干渉場から少なくとも1つのコンデンサの電極を遮蔽するためである。
【0067】
したがって、遮蔽層は、外層と基準コンデンサまたはコンデンサとの間に配置される。
【0068】
遮蔽層は、外層と接触していることが好ましい。
【0069】
したがって、絶縁層は、遮蔽層とコンデンサとの間に挟まれて配置される。
【0070】
遮蔽層は金属を含むために、少なくとも1つのコンデンサは電気的干渉場から保護される。
【0071】
絶縁層は、誘電体材料、好ましくは、プラスチックによって製造されるために、少なくとも1つのコンデンサの第1および第2の電極は遮蔽層と電気的に接触していない。
【0072】
作動液容器は、絶縁層が内層および/または外層と同じ誘電率を有するように設計されることが好ましい。
【0073】
対応して形成される作動液容器は、作動液容器内部に位置する作動液の電気伝導率の決定に対して一層高い精度を有する利点を有する。
【0074】
作動液容器は、第1および第2の電極から作動液容器内部までの距離が1.5mm~3.5mmであるように設計されることが好ましい。
【0075】
対応して設計される作動液容器は、対応する電極から作動液容器内部に位置する作動液までの距離が小さくなるため、作動液容器内部に位置する作動液の電気伝導率の決定に対する一層高い精度を有する利点を有する。
【0076】
したがって、内層は、1.5mm~3.5mmの厚さを有することが好ましい。
【0077】
したがって、少なくとも1つのコンデンサは、作動液容器内部まで1.5mm~3.5mmの距離を有する。
【0078】
作動液容器は、コンデンサの第1および第2の電極のうちの少なくとも1つがその長さ拡張に沿って不均一な幅拡張を有するように形成されることが好ましい。
【0079】
電極が広くなればなるほど、作動液容器内におよびその中に位置する作動液内に電場が深く貫入するために、作動液は、作動液の電気伝導率の決定に対してより大きい影響を有する。
【0080】
作動液容器は、コンデンサの第1および第2の電極のうちの少なくとも1つがその長手方向に沿って底壁の方向に拡がった幅拡張を有するように設計されることが好ましい。
【0081】
対応して設計される作動液容器は、作動液容器の底部領域におけるコンデンサによる電気伝導率の測定精度が高くなる利点を有する。
【0082】
本発明のさらなる利点、詳細および特徴については、以下の例示的な実施形態の説明から得られる。具体的な図について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】本発明の第1の実施形態による作動液の品質特性を決定する方法であって、品質特性が作動液の電気伝導率である、方法のフローチャート図を示す。
【
図2】各々が異なる電気伝導率を有する3つの異なる作動液についてのコンデンサのインピーダンスの周波数依存性位相曲線を示す。
【
図3】本発明の第2の実施形態による作動液の品質特性を決定する方法であって、品質特性が作動液の電気伝導率である、方法のフローチャート図を示す。
【
図4】各々が異なる電気伝導率を有する3つの異なる作動液についてのコンデンサのインピーダンスの周波数依存性静電容量曲線を示す。
【
図5】本発明による作動液容器のかなり単純化した三次元図を示す。
【
図6】本発明のさらなる実施形態による作動液容器の底壁および/または側壁の層構造のかなり単純化した図を示す。
【
図7】
図7Aから
図7Cは、本発明の異なる実施形態の作動液容器の側面上面図における測定コンデンサのみの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下の説明では、同一の参照符号は同一の構成要素または同一の特徴物を同一のものとみなされ、ゆえに、1つの図に対して実行される構成要素に関する説明は他の図にも適用されるために、繰り返しの説明は回避される。さらに、1つの実施形態に関連して説明された個々の特徴は、他の実施形態においても別個に使用可能である。
【0085】
図1は、本発明の第1の実施形態による作動液の品質特性を決定する方法であって、品質特性が作動液の電気伝導率である、方法のフローチャート図を示す。
図1に示すフローチャート図による方法は、
図5に示す作動液容器1によって実行される。
【0086】
図5は、本発明による作動液容器1のかなり単純化した三次元図を示す。作動液容器内部2は、天井壁30、底壁10、および底壁10を天井壁30に接続する側壁20で区切られている。
図5から、側壁20が周状に形成されていることが明らかである。
【0087】
図5に示す作動液1は第1のコンデンサ60および第2のコンデンサ70を含む。しかしながら、本発明により、作動液容器1はまた、第1のコンデンサ60のみまたは第2のコンデンサ70のみを含み得る。さらに、作動液容器1はまた、
図5に示していないさらなるコンデンサを含み得る。
【0088】
第1のコンデンサ60は第1の電極61および第2の電極62を含む。第1の電極61および第2の電極62の各々は、長さ拡張L、幅拡張B、および深さ拡張を有する(
図7A~7Cを参照されたい)。第1の電極61および第2の電極62は各々、この場合、第1の電極61および第2の電極62の長さ拡張Lが天井壁30の方向に底壁10から拡張するように、側壁20に対して平行に拡張して配置されている。この場合、第1の電極61および第2の電極62の深さ拡張は互いに対向して配置されている。
【0089】
第1のコンデンサ60は側壁20に埋め込まれているために、第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62は側壁20に埋め込まれている。したがって、第1のコンデンサ60は側壁20により囲まれている。したがって、第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62は、作動液50と直接接触していない(
図6を参照されたい)。さらに、第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62はまた、作動液容器1の周囲と直接接触していない。側壁20内への第1のコンデンサ60の埋め込みに関しては、以下に説明している
図4を参照する。
【0090】
しかしながら、本発明は、側壁20に埋め込まれた第1のコンデンサ60に限定されない。本発明による作動液容器1において、第1のコンデンサ60はまた、側壁20の外面上に配置され得る。
【0091】
第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62の各々が、電極61、62の幅拡張Bに対して平行に延びる2つの翼63を含むことが、
図5から明らかである。それぞれの翼63は、この場合、第1および第2の電極61、62の異なる高さに形成されているために、翼63は、作動液容器1の異なる高さに配置されている。したがって、第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62は、それらの長さ拡張Lに沿って不均一な幅拡張Bを有する。しかしながら、本発明は、第1のコンデンサ60の第1および第2の電極61、62の対応する設計に限定されない。例えば、第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62はまた、それらの長さ拡張Lに亘って均一な幅拡張Bを備え得る。
【0092】
第2のコンデンサ70は第1の電極71および第2の電極72を含む。第1の電極71および第2の電極72は底壁10と平行に延びている。第1の電極71および第2の電極72は各々、第1の電極71および第2の電極72の長さ拡張および幅拡張が底壁10の面内に延びるように、ここでは底壁10と平行に延びるように配置されているために、第1の電極71および第2の電極72の深さ拡張は互いに対向して配置されている。
【0093】
図5から明らかであるように、底壁10は、作動液容器内部2に延びる凸部11を含む。第2のコンデンサ70は、第2のコンデンサ70の第1の電極71および第2の電極72が底壁10の凸部11に埋め込まれるように、底壁10に埋め込まれている。したがって、第2のコンデンサ70の第1の電極71および第2の電極72は、作動液50と直接接触していない。さらに、第2のコンデンサ70の第1の電極71および第2の電極72はまた、作動液容器1の周囲と直接接触していない。底壁10の凸部11に第1の電極71および第2の電極72を埋め込んでいるために、底壁10上への可能な堆積物は、作動液容器内部2に位置する作動液50の電極の測定への影響が低い。
【0094】
底壁10へのまたは底壁10の凸部11への第2のコンデンサ70の埋め込みに関して、以下に説明している
図6を参照する。
【0095】
しかしながら、本発明は、底壁10に埋め込まれた第2のコンデンサ70に限定されない。本発明による作動液容器1において、第2のコンデンサ70はまた、底壁10の外面に固定され得る。
【0096】
作動液容器1は、第1のコンデンサ60および第2のコンデンサ70に電気的に接続された電子評価ユニット80をさらに含む。第1のコンデンサ60および第2のコンデンサ70への評価ユニット80の電気接続が電気線路を介して形成される(
図5に示していない)。
【0097】
評価ユニット80は、以下に説明している
図1に示すフローチャート図により方法を実行するように設計されている。
【0098】
方法ステップAでは、異なる周波数を有する少なくとも3つの異なる交流電圧が、第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70に印加される。この場合、第1の交流電圧の第1の周波数は、下限周波数fmin、例えば、10kHzに対応する。第2の交流電圧の第2の周波数は、下限周波数fminと上限周波数fmaxとの間の周波数に対応し、上限周波数fmaxは、例えば、100kHzである。第3の交流電圧の第3の周波数は上限周波数fmaxに対応する。
【0099】
方法ステップBでは、第1の周波数についての第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の第1のインピーダンス、第2の周波数についての第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の第2のインピーダンス、ならびに第3の周波数についての第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の第3のインピーダンスが決定されて、各々記憶される。
【0100】
次いで、方法ステップCでは、第1の位相角φ1が第1のインピーダンスから決定され、第2の位相角φ2が第2のインピーダンスから決定され、第3の位相角φ3が第3のインピーダンスから決定される。
【0101】
第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70のインピーダンスの3つの異なる周波数依存性位相曲線を、
図2の3つの異なる作動液について示している。この場合、曲線91は、脱イオン水についてのインピーダンスの位相曲線を示す。曲線92は、脱イオン水50%と水道水50%との混合水についてのインピーダンスの周波数依存性位相角曲線を示し、曲線93は、水道水についてのインピーダンスの周波数依存性位相角曲線を示す。脱イオン水は1~50μS/cmの電気伝導率を有する。脱イオン水50%および水道水50%の混合水は50~200μS/cmの電気伝導率を有する。水道水は200μS/cm以上の電気伝導率を有する。
【0102】
図2から、脱イオン水の場合にコンデンサ60、70のインピーダンスの位相角の曲線91が、10kHzの下限周波数fminと100kHzの上限周波数との間に最大値を有することが明らかである。対照的に、脱イオン水と水道水との混合水についてのコンデンサ60、70のインピーダンスの位相角の曲線92は、下限周波数fminと上限周波数fmaxとの間で立ち上がっていることが、
図2からさらに明らかである。これは、水道水についてのコンデンサ60、70のインピーダンスの位相角の曲線93についても同様である。この場合、100kHzの上限周波数fmaxにおいて、曲線93が曲線92に比べてよりゆっくりと立ち上がっていることが明らかである。
【0103】
図1に示すフローチャート図による方法に戻って、第2の位相角φ2が第1の位相角φ1より大きく、かつ第3の位相角φ3より大きいかどうかを、方法ステップC後にチェックする。この条件が満たされる場合、位相角の曲線は、下限周波数fminと上限周波数fmaxとの間に最大値を有する。位相角の曲線が最大値を有する場合、方法ステップDでは、作動液容器1内に位置する作動液が所定の品質要件を満たすことが判定または確立される。
【0104】
説明している例示的な実施形態では、位相角の曲線の最大値の確認時に、作動液容器内部2に位置する作動液の電気伝導率が1~50μS/cmの電気伝導率を有すると判定される。これから、作動液容器内部2に位置する水が脱イオン水であり、水噴射ユニットの作動に適することを推測できる。この場合、解除信号が方法ステップD1で出力される。しかしながら、ステップD1は任意であり、必須ではない。
【0105】
第2の位相角φ2が第3の位相角φ3より大きくないことが確認された場合、第3の位相角φ3と第1の位相角φ1との間の差分が所定の最小損失角δs未満であるかどうかがチェックされる。図示されている例示的な実施形態における最小損失角δsは1°である。
図2に示す周波数依存性曲線93から、上限周波数fmaxについての損失角が1°未満であり、したがって、最小損失角δs未満であることが明らかである。したがって、停止信号が方法ステップFで出力される。したがって、停止信号により、水噴射システム(図に示していない)は、水が200μS/cmより大きい電気伝導率を有するために、作動液容器内部2に位置する水が水噴射に適さないことをシグナリングし得る。したがって、作動液容器内部2に位置する水は、例えば、水道水である。
【0106】
第3の位相角φ3と第1の位相角φ1との間の差分が所定の最小損失角δs未満でない場合、第3の位相角φ3が第2の位相角φ2より大きくないかどうかがチェックされる。この条件が満たされる場合、作動液容器内部2に位置する水は50~200μS/cmの電気伝導率を有することが結論される。この水の品質特性は水噴射になおも十分である。しかしながら、警告信号が方法ステップEで出力されるために、本発明による作動液容器1が設置されている自動車のユーザは、作動液容器内部2に位置する水がその要件を満たすが、汚染物質を含むことを認識し得る。
【0107】
図5に示す作動液容器1の評価ユニット80は、以下に説明する
図3に示すフローチャート図による方法を実行するようにさらに設計されている。
【0108】
方法ステップGでは、異なる周波数を有する少なくとも2つの異なる交流電圧が、第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70に印加される。この場合、第1の交流電圧の第1の周波数は下限周波数fminに対応する。第2の交流電圧の第2の周波数は上限周波数fmaxに対応する。
【0109】
次いで、方法ステップHでは、第1の周波数についての第1のコンデンサおよび/または第2のコンデンサ70の第1の静電容量C1が決定および記憶される。さらに、方法ステップHでは、第2の周波数についての第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の第2の静電容量C2が決定および記憶される。
【0110】
次いで、方法ステップIでは、第1の静電容量C1からの第2の静電容量C2の相対的ずれが確認される。したがって、方法ステップIでは、第2の静電容量C2が第1の静電容量C1からどれ位の割合ずれるかが確認される。
【0111】
第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の3つの異なる周波数依存性静電容量曲線が
図4に示されている。この場合、曲線101は、脱イオン水についての第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の周波数依存性静電容量曲線を示す。曲線102は、脱イオン水50%と水道水50%との混合水についての第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の周波数依存性静電容量曲線を示し、曲線103は、水道水についての第1のコンデンサ60および/または第2のコンデンサ70の周波数依存性静電容量曲線を示す。脱イオン水は1~50μS/cmの電気伝導率を有する。脱イオン水50%と水道水50%との混合水は50~200μS/cmの電気伝導率を有する。水道水は200μS/cm以上の電気伝導率を有する。
【0112】
図4から、作動液としての脱イオン水の場合のコンデンサ60、70の周波数依存性静電容量の曲線101が第1の静電容量C1から第2の静電容量C2に低下することが明らかである。この場合、コンデンサ60、70は、図示している例示的な実施形態において10kHzである下限周波数fminで約3.2pFの第1の静電容量C1を有し、図示している例示的な実施形態において1MHzである上限周波数fmaxで約2.4pFの第2の静電容量C2を有する。したがって、作動液としての脱イオン水の場合のC1からC2への相対的ずれは約25%である。
【0113】
図4から、作動液としての脱イオン水50%と水道水50%の混合水の場合のコンデンサ60、70の周波数依存性静電容量が第1の静電容量C1から第2の静電容量C2に低下することが明らかである。この場合、コンデンサ60、70は、図示している例示的な実施形態において10kHzである下限周波数fminで約3.6pFの第1の静電容量C1を有し、図示している例示的な実施形態において1MHzである上限周波数fmaxで約3.4pFの第2の静電容量C2を有する。したがって、作動液としての脱イオン水50%と水道水50%の混合水の場合のC1からC2への相対的ずれは約6%である。
【0114】
さらに、コンデンサ60、70の周波数依存性静電容量が、作動液としての水道水の場合に第1の静電容量C1から第2の静電容量C2に低下することが明らかである。この場合、コンデンサ60、70は、図示している例示的な実施形態において10kHzである下限周波数fminで約3.4pFの第1の静電容量C1を有し、図示している例示的な実施形態において1MHzである上限周波数fminで約3.35pFの第2の静電容量C2を有する。したがって、作動液としての水道水の場合のC1からC2への相対的ずれは約1.5%である。
【0115】
図3に示すフローチャート図による方法に戻って、第1の静電容量C1からの第2の静電容量C2の相対的ずれが第1の最小ずれΔ1より大きいかどうかを、方法ステップI後にチェックする。より具体的には、以下の条件が満たされるかどうかが判定される。
|C1-C2|/C1 > Δ1
【0116】
この条件が満たされる場合、方法ステップJでは、作動液の電気伝導率が1~50μS/cmの値を有するために、作動液容器1内に位置する作動液が所定の品質要件を満たすと判定される。
【0117】
説明している例示的な実施形態では、最小ずれΔ1は値0.2を有する。したがって、方法ステップJでは、作動液としての脱イオン水について、第1の静電容量C1からの第2の静電容量C2の相対的ずれが25%、ゆえに、0.25であると判定されるために、脱イオン水が所定の品質要件を満たすと判定される。
【0118】
次いで、方法ステップJ1では、第1の静電容量C1からの第2の静電容量C2の相対的ずれが第1の最小ずれΔ1より大きい場合に、解除信号が出力される。しかしながら、方法ステップJ1は、本発明については、単に任意であり、必須ではない。
【0119】
対照的に、次の条件
|C1-C2|/C1 > Δ1
が満たされない場合、次の条件が満たされるかどうかがチェックされる。
Δ1 > |C1-C2|/C1 > Δ2
【0120】
この条件が満たされる場合、作動液容器内部2に位置する水は50~200μS/cmの電気伝導率を有することが結論される。この水の品質特性は水噴射のためになおも十分である。しかしながら、警報信号が方法ステップKで出力されるために、本発明による作動液容器1が設置されている自動車のユーザは、作動液容器内部2に位置する水がその要件を満たすが、汚染物質を含むことを認識し得る。したがって、方法ステップKでは、第1の静電容量C1からの第2の静電容量C2の相対的ずれが第1の最小ずれΔ1と第2の最小ずれΔ2との間の値を有し、第2の最小ずれΔ2は第1の最小ずれΔ1未満である場合に、警報信号を出力する。
【0121】
説明している例示的な実施形態では、Δ2は値0.05を有する。したがって、作動液として脱イオン水50%と水道水50%からなる混合水については、|C1-C2|/C1が値0.06となる場合に、条件0.2>0.06>0.05が満たされるために、警報信号が方法ステップKで出力される。
【0122】
対照的に、次の条件
Δ1 > |C1-C2|/C1 > Δ2
が満たされない場合、次の条件が満たされるかどうかがチェックされる。
Δ2 > |C1-C2|/C1
【0123】
この条件が満たされる場合、作動液容器内部2に位置する水は200μS/cmより大きい電気伝導率を有することが結論される。この水の品質特性は水噴射には不適切である。したがって、停止信号が方法ステップLで出力される。停止信号により、水が200μS/cmより大きい電気伝導率を有するために、作動液容器内部2に位置する水が水噴射に適さないことを、水噴射システム(図に示していない)はシグナリングされ得る。したがって、作動液容器内部2に位置する水は、例えば、水道水である。
【0124】
したがって、第1の静電容量C1からの第2の静電容量C2の相対的ずれが第2の最小ずれΔ2未満である場合に、停止信号が方法ステップLで出力される。
【0125】
説明している例示的な実施形態では、Δ2は値0.05を有する。したがって、作動液としての水道水については、|C1-C2|/C1が値0.015となる場合に、条件0.05>0.015が満たされるために、停止信号が方法ステップLで出力される。
【0126】
図6は、作動液容器1の容器壁10、20、30の層構造のかなり単純化した図を示す。容器壁は、底壁10および/または側壁20および/または天井壁30であり得る。容器壁10が複数の層に構築されることが明らかである。
【0127】
容器壁10、20、30の層構造は、以下に、側壁20に関して、および第1のコンデンサ60に関して説明されている。しかしながら、底壁10および/または天井壁30はまた、対応する層構造を有し得る。さらに、第2のコンデンサ70はまた、容器壁10、20、30に同様に埋め込まれ得る。
【0128】
側壁20が、外層41、作動液容器内部2に向かって対向する内層45、および外層41と内層45との間に配置された接着層44を含むことが明らかである。第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62は外層41と接着層44との間に配置される。側壁20は、遮蔽層42および絶縁層43をさらに含み、遮蔽層42は、外層41と第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62との間に配置される。絶縁層43は、一方、遮蔽層42と第1のコンデンサ60の第1および第2の電極61、62との間に配置される。
【0129】
側壁20が、外層41、作動液容器内部2に向かって対向する内層45、および外層41と内層45との間に配置された接着層44を含むことがさらに明らかである。第1のコンデンサ60の第1の電極61および第2の電極62は外層41と接着層44との間に配置される。側壁20は、遮蔽層42および絶縁層43をさらに含み、遮蔽層42は、外層41と第1のコンデンサ60の第1および第2の電極61、62との間に配置される。絶縁層43は、一方、遮蔽層42と第1のコンデンサ60の第1および第2の電極61、62との間に配置される。
【0130】
図7Aは、側面上面図における第1のコンデンサ60のみを示す。図示している例示的な実施形態では、第1のコンデンサ60の第1の電極61がその長さ拡張Lに沿って均一な幅拡張Bを有することが明らかである。対照的に、第1のコンデンサ60の第2の電極62は、第2の電極62の長さ拡張に沿って変化する幅拡張Bを有する。第2の電極62の長さ拡張Lに沿ったその幅が底壁10の方向に増加する幅拡張Bを有することは明らかである。
【0131】
図7Bは、作動液容器1のさらなる実施形態による第1のコンデンサ60のさらなる例を示す。第1の電極61および第2の電極62の各々が、異なる高さに、すなわち、翼が第1および第2の電極61、62の幅拡張Bに沿って拡張する、第1および第2の電極61、62の長さ拡張Lに対する異なる位置に、2つの翼63を含むことが明らかである。それぞれの翼63は丸められていることが明らかである。
【0132】
図7Cは、一方、さらなる実施形態による作動液容器1の第1のコンデンサ60を示す。
図7Cに示す第1のコンデンサ60はまた、それぞれの電極61、62の幅拡張Bにおいて拡張する2つの翼63を第1の電極61および第2の電極62の各々が含むように、設計される。それぞれの翼63は、それぞれの電極61、62の異なる高さに配置される。
【0133】
本発明は、作動液容器内部2に拡張する第1のコンデンサ60により電場が発生される限り、
図7A~7Cに示す第1のコンデンサ60の設計に限定されないために、作動液50の電気伝導率は評価ユニット80により確認され得る。
【符号の説明】
【0134】
1 作動液容器
2 作動液容器内部
10 底壁(作動液容器の)
11 凸部(底壁の)
20 側壁(作動液容器の)
30 天井壁
41 外層(底壁/側壁の)
42 遮蔽層(底壁/側壁の)
43 絶縁層(底壁/側壁の)
44 接着層(底壁/側壁の)
45 内層(底壁/側壁の)
50 作動液
60 第1のコンデンサ
61 第1の電極(第1のコンデンサの)
62 第2の電極(第1のコンデンサの)
63 翼(第1の電極および/または第2の電極の)
70 第2のコンデンサ
71 第1の電極(第2のコンデンサの)
72 第2の電極(第2のコンデンサの)
80 評価ユニット
91 脱イオン水の周波数依存性位相曲線
92 脱イオン水50%と水道水50%の混合水の周波数依存性位相曲線
93 水道水の周波数依存性位相曲線
101 脱イオン水の周波数依存性静電容量曲線
102 脱イオン水50%と水道水50%の混合水の周波数依存性静電容量曲線
103 水道水の周波数依存性静電容量曲線
L 長さ拡張(測定コンデンサの電極の)
B 幅拡張(測定コンデンサの電極の)
C1 第1の静電容量(コンデンサの)
C2 第2の静電容量(コンデンサの)
fmin 下限周波数
fmax 上限周波数
φ1 第1の位相角
φ2 第2の位相角
φ3 第3の位相角
δs 最小損失角
Δ1 第1の最小ずれ
Δ2 第2の最小ずれ