(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイを仮想世界と同期するためのベースステーションを備えた同期装置、該同期装置を備えた娯楽用の乗り物、および該娯楽用の乗り物を作動させる方法
(51)【国際特許分類】
A63G 31/16 20060101AFI20220510BHJP
A63G 21/04 20060101ALI20220510BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A63G31/16
A63G21/04
G06F3/01 510
(21)【出願番号】P 2020549563
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018084226
(87)【国際公開番号】W WO2019174769
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517168875
【氏名又は名称】ファオエル コースター ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】VR Coaster GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハイゼ、ミヒャエル
【審査官】大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189572(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/075674(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0252658(US,A1)
【文献】国際公開第2017/193043(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103028252(CN,A)
【文献】国際公開第2018/012731(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 1/00~33/00
G06T 19/00~19/20
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイ(22)を仮想世
界と同期させるための同期装置であって、
VR装置(30)によって生成された仮想現実を表示することができる少なくとも1つのヘッドマウントディスプレイ(22)と、
前記ヘッドマウントディスプレイ(22)を格納するためのベースステーション(24)であって、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)を前記ベースステーション(24)内の定義された位置および向きに格納可能な受容手段を備えるベースステーション(24)と、
ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向きを検出するためのディスプレイ位置検出装置(28)とを備え、
前記同期装置(12)は、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)が前記ベースステーション(24)から取り外されるとき、前記ベースステーション(24)内の前記ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向き
に対する前記ディスプレイ位置検出装置によって検出された前記ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向きを考慮して、前記仮想現実が前記ヘッドマウントディスプレイ(22)と同期するように設定されている、同期装置。
【請求項2】
前記ベースステーション(24)は、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)が前記ベースステーション(24)から取り外された場合、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)がベースステーション(24)に格納されているかどうかを検出できる存在検出手段(45)を有することを特徴とする、請求項1に記載の同期装置。
【請求項3】
前記ベースステーション(24)が、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)を充電するための充電装置(48)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の同期装置。
【請求項4】
娯楽用の乗り物(10
)であって、
少なくとも1つの車両(16)が移動可能に配置されるルート(14)であって、前記車両(16)は、少なくとも1人の乗客(20)を収容するように設計されている、ルート(14)と、
前記ルート(14)に沿った前記車両(16)に乗っている前記乗客(20)の移動に対応する仮想現実を生成し、前記乗客(20)に割り当てられた前記ヘッドマウントディスプレイ(22)で表示可能なVR装置(30)と、
前記ルート(14)上の前記車両(16)の位置を検出するための車両位置検出装置(34)と、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の同期装置(12)とを備え、
前記娯楽用の乗り物(10)は、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)が取り外されるとき、前記仮想現実が前記ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向きと同期するように設定されており、
前記ルート(14)上の前記車両(16)の位置と、前記ベースステーション(24)に対する前記ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向きとを考慮して仮想現実が前記
ヘッドマウントディスプレイ(22)に表示される、娯楽用の乗り物
(10)。
【請求項5】
前記同期装置および前記ベースステーション(24)のうち少なくとも一方が前記車両(16)上に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の娯楽
用の乗り物(10)。
【請求項6】
前記車両(16)が、それぞれ1人の乗客(20)を収容するための少なくとも2つの乗客用座席(18)を有し、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)がそれぞれ前記乗客用座席(18)に割り当てられることを特徴とする、請求項5に記載の娯楽用の乗り物(10)。
【請求項7】
前記ヘッドマウントディスプレイ(22)は、ケーブル(46)によって前記ベースステーション(24)に接続されることを特徴とする、請求項6に記載の娯楽用の乗り物(10)。
【請求項8】
前記同期装置(12)が車両(16)の外部に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の娯楽用の乗り物(10)。
【請求項9】
前記車両(16)の外部にある前記ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向きに対応する仮想現実が生成され、かつ前記乗客(20)に割り当てられた前記ヘッドマウントディスプレイ(22)上に表示可能に、前記VR装置(30)が設定されることを特徴とする、請求項4乃至8のいずれか一項に記載の娯楽用の乗り物(10)。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の同期装置(12)を備えた、請求項4乃至9のいずれか一項に記載
の娯楽用の乗り物(10)を作動させるための方法であって、
VR装置(30)を使用して、ルート(14)に沿う車両(16)に乗る乗客(20)の旅程に対応する仮想現実を生成することと、
車両位置検出装置(34)によって前記ルート(14)上の車両(16)の位置を検出することと、
ディスプレイ位置検出装置(28)によって前記ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向きを検出することと、
前記乗客(20)に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ(22)に、前記車両(16)内の前記ヘッドマウントディスプレイ(22)の位置および向きに応じて仮想現実を表示することと、
前記ヘッドマウントディスプレイが前記ベースステーションから取り外されるとき、前記ルート上の前記車両の位置ならびに前記ベースステーションに対する前記ヘッドマウントディスプレイの位置および向きを考慮して、前記仮想現実と前記ヘッドマウントディスプレイの位置および向きを同期することとを備え、前記仮想現実が前記ヘッドマウントディスプレイに表示される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記ディスプレイ位置検出装置(28)は、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)が前記娯楽用の乗り物(10)の選択可能な領域(52)内にあることを検出するとき、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)に前記仮想現実を表示する方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記車両位置検出装置(34)が前記車両(16)が前記ルートに沿って移動していることを検出するとき、前記ヘッドマウントディスプレイ(22)に仮想現実を表示することを備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイを仮想世界と同期するためのベースステーションを備えた同期装置に関する。さらに、本発明は、該同期装置を有する娯楽用の乗り物に関する。さらに、本発明は、該娯楽用の乗り物を作動させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、コンピューターのプロセッサの性能の向上と無線で送信可能なデータ量の増加とにより、仮想現実(VR)の概念をより広い領域の用途に転送することができる。特別な応用分野は、娯楽用の乗り物です。この乗り物は、仮想現実で行われる動きと現実の動きとを特に広範囲に組み合わせて、乗客にとって特に広範囲にわたる没入感と搭乗体験とを実現することができる。この種の娯楽用の乗り物は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4により知られている。
【0003】
仮想現実を乗客に提供するために、VR眼鏡のようなヘッドマウントディスプレイが一般に使用され、該ヘッドマウントディスプレイは、多くの場合で仮想現実を生成するVR装置と無線通信する。しかしながら、VR装置がヘッドマウントディスプレイに組み込まれることもある。ヘッドマウントディスプレイは通常、娯楽用の乗り物で旅程の開始前に乗客に提供され、旅程が終了した後に再び回収される。ヘッドマウントディスプレイの提供および収集は、乗客が車両に乗り降りする娯楽用の乗り物の駅で行われる。乗客が車両に進入した後、ヘッドマウントディスプレイを仮想現実と同期させて、仮想現実がヘッドマウントディスプレイの現在の位置と現在の向きとに一致し、十分な没入感が確保されるようにする必要がある。乗客はヘッドマウントディスプレイを頭に置くので、ヘッドマウントディスプレイの位置は乗客の位置に対応し、ヘッドマウントディスプレイの向きは乗客の頭の向きに対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第2138213号明細書
【文献】特開2001-062154号公報
【文献】米国特許第6179619号明細書
【文献】欧州特許第3041591号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
知られている娯楽用の乗り物では、同期は、乗客が特定の方向、通常、移動方向に目を向けることによって実行され、そうすることでヘッドマウントディスプレイ上の仮想現実の表現を開始する。同期中のヘッドマウントディスプレイの位置および向きは、基準として使用される。したがって、移動中のヘッドマウントディスプレイの位置および向きに応じた仮想現実の表現は、同期中のヘッドマウントディスプレイの位置および向きに依存する。実際の位置と、仮想現実を生成するときにVR装置が想定する位置とヘッドマウントディスプレイの向きが一致するほど、没入感は高くなる。この目的のために、乗客は頭を移動方向に向けた状態で、同期中に特定のポイントに焦点を合わせる必要がある。同期中の頭の正確な向きは非常に重要である。これを達成するには、通常、担当者による説明または指示が必要である。ただし、誤った操作を除外することはできないため、何度か同期を実行する必要がある。その結果、同期は人員と時間労力との増加に関連する。
【0006】
したがって、本発明の実施形態および設計の課題は、上述の状況に対する改善策を提供すること、特に、乗客の頭の向きに関わらず、ヘッドマウントディスプレイと仮想現実との同期が可能な同期装置および娯楽用の乗り物を提供することである。さらに、本発明の設計は、ヘッドマウントディスプレイを乗客の頭の向きとは無関係に仮想現実と同期させることを可能にする方法を提供する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1、4、および10で特定された機能を使用して達成される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
本発明の一実施形態は、娯楽用の乗り物においてヘッドマウントディスプレイを仮想世界と同期させるための同期装置に関し、VR装置によって生成された仮想現実を表示可能な少なくとも1つのヘッドマウントディスプレイと、ヘッドマウントディスプレイを格納するためのベースステーションであって、ヘッドマウントディスプレイをベースステーション内の定義された位置および向きに格納可能な受容手段を有するベースステーションと、ヘッドマウントディスプレイの位置および向きを検出するためのディスプレイ位置検出装置とを備え、同期装置は、ヘッドマウントディスプレイがベースステーションから取り外されるとき、ベースステーション内のヘッドマウントディスプレイの位置及び向きに関して、ディスプレイ位置検出装置によって検出されるヘッドマウントディスプレイの位置及び向きを考慮して、仮想現実がヘッドマウントディスプレイと同期するように設定されている。
【0008】
提案された同期装置において、ヘッドマウントディスプレイは、ベースステーション内で十分に定義された位置、およびベースステーション内で十分に定義された向きで格納されている。その結果、仮想現実が生成されたときに想定されるヘッドマウントディスプレイの実際の位置および向きは完全に同じになる。ヘッドマウントディスプレイがベースステーションから取り外されるとき、ヘッドマウントディスプレイは仮想現実と同期する。ヘッドマウントディスプレイの現在の位置および現在の向き、つまりユーザーの現在の位置および向きは、ベースステーションのヘッドマウントディスプレイの位置および向きに基づいている。ヘッドマウントディスプレイの取り外しは、例えば、ディスプレイ位置検出装置により検出することができる。
【0009】
ディスプレイ位置検出装置は、ヘッドマウントディスプレイの内部またはベースステーションなどの外部装置内に配置可能である。しかしながら、ディスプレイ位置検出装置は離れたデータセンターに配置され得る。さらに、ベースステーションは車両に配置され得る。
【0010】
ディスプレイ位置検出装置は、以下のように構成することができる。いわゆる「アウトサイド・イン・トラッキング(outside-in-tracking)」を使用することができ、この場合、位置センサは離れて、ヘッドマウントディスプレイの外部に配置される。この目的のために、マーカーが乗客のヘッドマウントディスプレイに取り付けられてもよい。位置センサはマーカーの動きを追跡できるため、ヘッドマウントディスプレイの位置を計算してVR装置に送信可能である。ヘッドマウントディスプレイの向きは、ジャイロ、加速度センサ、及び/又は磁気センサなどの部品を使用して決定でき、これらの部品は、スマートフォンなどに今日非常に多く搭載されている。これらの部品は、ヘッドマウントディスプレイに組み込まれている。
【0011】
さらに、位置センサがヘッドマウントディスプレイに配置されている、いわゆる「インサイド・アウト・トラッキング(inside-out-tracking)」を使用可能である。ここでも、娯楽用の乗り物において固定された物体、たとえば階段や壁に取り付けられたマーカーを使用可能である。
【0012】
同期は、ユーザーの頭の向きおよび位置に無関係である。提案された同期装置で達成できる没入感は再現性の高いものである。ユーザーは同期を支援する必要がないため、同期をより速く、誤った操作のリスクなしに実行できる。構成に応じて、同期装置及びヘッドマウントディスプレイの少なくとも一方は、特に仮想現実を生成する外部VR装置と無線で通信するか、VR装置がヘッドマウントディスプレイに統合される。
【0013】
別の実施形態によれば、ベースステーションは、ヘッドマウントディスプレイがベースステーションに格納されているかどうか、およびヘッドマウントディスプレイがベースステーションから取り外されたときに検出できる存在検出手段を有する。ディスプレイ位置検出装置は、ヘッドマウントディスプレイがベースステーションから取り外されたことを認識することもできるが、そのためには常にアクティブである必要がある。存在検出手段は、例えば、ヘッドマウントディスプレイがベースステーションから取り外されたときに切り替わることによって、同期装置およびディスプレイ位置検出装置を作動させるリード接点を備えることができる。したがって、同期装置は、よりエネルギー効率の高い方法で、より少ないデータ量で操作され得る。
【0014】
さらに発展した実施形態では、ベースステーションは、ヘッドマウントディスプレイを充電するための充電デバイスを有することができる。充電デバイスは、ヘッドマウントディスプレイがベースステーションに配置されたときに電源と接触するように設計することができる。これにより、ヘッドマウントディスプレイを充電するための追加のステップを実行する必要なく、ヘッドマウントディスプレイが常に十分に充電されることが保証される。充電装置からの取り外しを検出でき、この情報を使用できるため、充電装置は、存在検出手段として使用することもできる。
【0015】
本発明の一実施形態は、娯楽用の乗り物に係り、特にジェットコースターに関するものであり、少なくとも一人の乗客を収容するように設計された少なくとも1つの車両が移動可能に配置されるルートと、ルートに沿う車両に乗る乗客の旅程に対応する仮想現実が生成されかつ該仮想現実が乗客に割り当てられたヘッドマウントディスプレイに表示されるVR装置と、ルート上の車両の位置を検出するための車両位置検出装置と、上述した実施形態のうちの一つに従う同期装置とを備え、娯楽用の乗り物は、ヘッドマウントディスプレイがベースステーションから取り外されるとき、仮想現実がヘッドマウントディスプレイの位置及び向きと同期するように設定されており、ルート上の車両の位置ならびにベースステーションに対するヘッドマウントディスプレイの位置及び向きを考慮した仮想現実がヘッドマウントディスプレイに表示される。
【0016】
提案された娯楽用の乗り物によって達成できる技術的効果及び利点は、現在の同期装置について説明されたものに対応する。ヘッドマウントディスプレイと仮想現実との同期は、乗客の動作とは無関係に実行されるため、対応する説明及び指示を省略することができる。誤った操作及び同期の更新を回避できるため、娯楽用の乗り物をより高い効率で作動させることができる。さらに、人件費が削減されるため、提案された娯楽用の乗り物は、この種の従来の娯楽用の乗り物よりもはるかに経済的に作動させることができる。
【0017】
ヘッドマウントディスプレイの取り外しは、ディスプレイ位置検出装置及び存在検出手段のうち少なくとも一方により検出することができる。
娯楽用の乗り物のさらなる展開は、同期装置およびベースステーションのうち少なくとも一方が車両に配置されることを特徴とする。乗降時に乗客はヘッドマウントディスプレイによって邪魔されない。乗り降り時にヘッドマウントディスプレイが損傷または紛失する可能性が低下する。
【0018】
さらなる展開によれば、車両は、それぞれ1人の乗客を収容するための少なくとも2つの乗客用座席を有し、ヘッドマウントディスプレイが各乗客用座席に割り当てられる。高レベルの没入感を実現するために、ヘッドマウントディスプレイの位置、およびその結果として、車両に対する乗客の位置も考慮する必要がある。特に長い車両の場合、最初の列に座っている乗客は最後の列に座っている乗客よりも早くルートの特定のセクションを通過する。この時間差は、それぞれの乗客に表示される仮想現実で考慮する必要がある。ディスプレイ位置検出装置は、車両に対するディスプレイの位置を決定することもできるが、乗客用座席へのヘッドマウントディスプレイの割り当ては、この決定を省略できるという利点を有する。ディスプレイ位置検出装置が行わなければならない演算能力を削減することができる。
【0019】
さらなる展開によれば、ヘッドマウントディスプレイは、ケーブルによってベースステーションに接続される。少なくともこの出願の優先日において、ワイヤレス接続よりもはるかに多くのデータ量をケーブル経由で送信できる。さらに、ケーブルを使用したデータ伝送は、外部の影響を受けにくい。ケーブルは、データ伝送に加えて、たとえば、ヘッドマウントディスプレイが旅程中に乗客の頭から滑り落ちる場合の損失に対する保護としても機能するように設計できる。さらに、ケーブルは、旅程終了後の乗客によるヘッドマウントディスプレイの意識的または無意識的な持ち去りに対する保護としても機能する。さらに、ヘッドマウントディスプレイ内の重いバッテリーを省くことができ、装着感を高めることができる。
【0020】
乗り物のさらなる発展において、同期装置が車両の外部に配置されることが想定される。このような同期装置を車両に装備することは、通常、同期装置を車両の外部に設置するよりも複雑である。加えて、この実施形態における車両の重量は、同期装置によって増加しない。故障したヘッドマウントディスプレイは、車両にアクセスする必要なく交換できるため、車両の操作の遅延を回避できる。旅程の前後にヘッドマウントディスプレイを車外に出し入れできるので、乗客はこれに要する時間を車内で過ごす必要がない。その結果、時間当たりの乗車数を増加させることができる。この設計により、ヘッドマウントディスプレイの同期は、仮想現実の表示の開始からオフセットされた時間に実行できることが明確である。
【0021】
娯楽用の乗り物のさらなる展開は、VR装置が、車外のヘッドマウントディスプレイの位置及び向きに対応する仮想現実を生成して、乗客に割り当てられたヘッドマウントディスプレイに表示できるように設定されていることを特徴ととする。この設計では、仮想現実はルートに限定されない。むしろ、ルートに隣接する娯楽用の乗り物のエリアを仮想現実に統合することもできる。これにより、乗客の体験が向上し、待ち時間を乗客にとって楽しい方法で過ごすことができる。さらに、特定のヘッドマウントディスプレイを携帯する特定の乗客が特定の乗客用座席に誘導されるように、仮想現実を設定できる。一部の娯楽用乗り物では、一部の乗客用客室は全ての乗客が利用できるわけではない。たとえば、乗降時にサポートが必要で、斜面を介して駅に案内される歩行困難の乗客は、対応する識別されたヘッドマウントディスプレイを備えた特定の乗客用客室に誘導することができ、特定の乗客用客室では、従業員が乗客を支援できる。
【0022】
本発明の1つの設計は、前述の実施形態の1つによる同期装置を備えた、前述した実施形態の1つによる、特に、ジェットコースターなどの娯楽用の乗り物を作動させる方法に関し、は、以下のステップを含む。
【0023】
VR装置を使用して、ルートに沿った車両での乗客の移動に対応する仮想現実を生成すること、
車両位置検出装置によってルート上の車両の位置を検出すること、
ディスプレイ位置検出装置によりヘッドマウントディスプレイの位置及び向きを検出すること、
乗客に割り当てられたヘッドマウントディスプレイに仮想現実を表示すること、
ヘッドマウントディスプレイがベースステーションから取り外されるとき、ルート上の車両の位置ならびにベースステーションに対するヘッドマウントディスプレイの位置および向きを考慮して、仮想現実とヘッドマウントディスプレイの位置および向きを同期して、仮想現実がヘッドマウントディスプレイに表示されること。
【0024】
提案された娯楽用の乗り物によって達成できる技術的効果及び利点は、現在の同期装置について説明されたものに対応する。ヘッドマウントディスプレイと仮想現実との同期は、乗客の動作とは無関係に実行されるため、対応する説明及び指示を省略することができる。誤った操作及び同期の更新を回避できるため、娯楽用の乗り物をより高い効率で作動させることができる。さらに、人件費が削減されるため、提案された娯楽用の乗り物は、この種の従来の娯楽用の乗り物よりもはるかに経済的に作動させることができる。
【0025】
ヘッドマウントディスプレイの取り外しは、ディスプレイ位置検出装置及び存在検出手段のうち少なくとも一方により検出することができる。
この時点で、本同期装置および提案された方法は、娯楽用の乗り物とは独立して使用することもできることを指摘しておくべきである。例えば国際公開第2013/050473号に記載されているように、本同期装置および提案された方法は、レジャーおよびゲームセンターのテーマパーク、フィットネススタジオまたは脱出ゲームで使用することができる。
【0026】
さらなる設計では、方法は、ディスプレイ位置検出装置がヘッドマウントディスプレイが娯楽用の乗り物の選択可能な領域内にあることを検出するとき、ヘッドマウントディスプレイに仮想現実を表示するステップを含むことができる。すでに述べたように、仮想現実はルートに限定されることなく、ルートに隣接するエリアまで拡張可能である。この設計では、ヘッドマウントディスプレイ、つまり乗客が選択可能な領域内に入るとき、仮想現実の表現が開始される。仮想現実の内容を変更する場合など、選択領域は柔軟に変更可能である。なお、選択可能領域は車両と一致してもよい。
【0027】
この方法のさらなる設計は、以下のステップを含む。
車両位置検出装置は、車両がルートに沿って移動していることを検出するとき、ヘッドマウントディスプレイに仮想現実を表示する。
【0028】
ディスプレイ位置検出装置は、ヘッドマウントディスプレイで車両がルートに沿って移動していることを検出することもできるが、車両位置検出装置によってルートに沿って移動する車両が検出される場合、ディスプレイ位置検出装置が実行する計算能力を削減できる。
【0029】
この目的のために、車両位置検出装置は、仮想現実の表現の開始のために、コントローラまたは娯楽乗車のオペレータによって出力される車両の開始信号を使用することもできる。
【0030】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明による同期装置の第1の実施形態を備えた娯楽用の乗り物を示す。
【
図2】
図2は、それぞれが基本平面図に基づく、本発明による同期装置の第2の実施形態を備えた娯楽用の乗り物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、概略図に基づき、本発明による同期装置121の第1の実施形態を備えた娯楽用の乗り物10を示す。娯楽用の乗り物10は、ルート14を含み、それに沿って、車両16は、図示されていない駆動手段によって移動することができる。もちろん、娯楽用の乗り物10は、複数の車両16を有することができる。図示の実施形態の例では、娯楽用の乗り物10はジェットコースターである。車両16は、第1の乗客用座席18
1および第2の乗客用座席18
2を有し、第1の乗客20
1および第2の乗客20
2をそれぞれ収容することができる。
【0033】
同期装置121は、仮想現実を表示可能な少なくとも1つのヘッドマウントディスプレイ22を備える。さらに、同期装置は、ヘッドマウントディスプレイ22を格納するためのベースステーション24を有する。ベースステーション24は、乗客用座席181、182ごとに車両16に設けられる。ベースステーション24には、ヘッドマウントディスプレイ22が定義された位置および向きでのみベースステーション24に格納できることを保証する受容手段26が設けられている。
【0034】
さらに、同期装置121は、ヘッドマウントディスプレイ22の位置および向きを検出することができるディスプレイ位置検出装置28を備える。
また、娯楽用の乗り物10は仮想現実を生成することができるVR装置30を有する。この目的のために、VR装置30は演算ユニット32を有する。VR装置30は、乗客20が眼鏡のように身に着けている同期装置121およびヘッドマウントディスプレイ22と無線で通信する。
【0035】
さらに、娯楽用の乗り物10は、ルート14上の車両16の位置を検出するために使用される車両位置検出装置34を備えている。車両位置検出装置34は、距離センサ36を有し、距離センサ36を用いて、ルート14上の車両16の位置が検出され、計算ユニット32に送信され、演算ユニット32は、仮想現実を生成する時にルート14上の車両16の位置を考慮する。
【0036】
娯楽用の乗り物10は次のように操作される。初期状態では、ヘッドマウントディスプレイ22は、ベースステーション24に格納されている。言及したように、ベースステーション24の受容手段26は、ヘッドマウントディスプレイ22が定義された位置および向きでのみベースステーション24に格納され得るように設計される。ヘッドマウントディスプレイ22は、第2の乗客用座席182に割り当てられたベースステーション24に対応して格納される。
【0037】
娯楽用の乗り物10は、ルート14が横断する駅38を有し、車両16は駅38で停止したり、再びスタートしたりする。乗客は駅38で車両16に乗り降りすることができる。乗客が乗客用座席18
1、18
2に着席するとき、乗客は、ベースステーション24から彼らの乗客用座席18
1、18
2に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ22を取り外して置くことができる。
図1では、第1の乗客20
1は、第1の乗客用座席18
1に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ22を既に装着しており、第2の乗客用座席18
2に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ22は、依然としてベースステーション24にある。
【0038】
ヘッドマウントディスプレイ22の位置および向きは、第1の座標系40で記述することができる。ベースステーション24の動きおよび向きは、第2の座標系42で説明することができ、車両16の動きおよび向きは、第3の座標系44で説明することができる。
【0039】
図示の例では、車両16は、ルート14に沿って単一の方法でしか移動できないので、車両16の向きは、ルート14の各位置について知られている。車両位置検出装置34を用いて、車両16の現在の位置、したがって速度は、仮想現実を生成するときに、VR装置によって決定され、考慮され得る。
【0040】
ベースステーション24は車両16に固定して取り付けられているので、第2の座標系42および第3の座標系44は互いに固定された関係にあり、それは変化しない。
ヘッドマウントディスプレイ22がベースステーション24内にある限り、第1の座標系40も、第2および第3の座標系42、44に対して固定された関係にある。しかしながら、関係する乗客20がヘッドマウントディスプレイ22をベースステーション24から取り外すとき、この関係が変化する。ベースステーション24は、受容手段26に組み込まれて例えばリード接点の形態で実装される存在検出手段45を有するが、ベースステーション24からの取り外しは、ディスプレイ位置検出装置28によって登録され得る。存在検出手段45は、ヘッドマウントディスプレイ22がベースステーション24から取り外されるときに通知信号を生成する。通知信号は、VR機器30の演算ユニット32に送られる。取り外しの瞬間に、仮想現実が、ベースステーション24内のヘッドマウントディスプレイ22の位置および向きと同期し、ヘッドマウントディスプレイ22のその後の位置および向きは、ベースステーション24内のヘッドマウントディスプレイ22の位置および向きに基づく。ベースステーション24からの取り外しは、ヘッドマウントディスプレイ22における仮想現実の表現を開始するために使用することもできるが、これは、例えば、車両位置検出装置34のすぐ後に、後で行うこともできる。車両16がルート14に沿って移動していることを検出する。対応する信号は、この目的のためにVR装置30の演算ユニット32にも送信される。これには他のトリガーイベントを使用することもできる。ます。たとえば、(図示しない)安全バーの閉鎖、娯楽用の乗り物10の従業員が発信する解除信号、またはオペレータが発信する開始信号などである。
【0041】
同期中の乗客20の支援は不要である。ヘッドマウントディスプレイ22の位置および向きのすべての変化は、仮想現実を表すときにVR装置30によって考慮される。車両位置検出装置34からの信号に基づいて、ルート14上の車両16の位置も、VR装置30による仮想現実の表現において考慮され、その結果、高い没入感を達成することができる。
【0042】
旅程が終了するとき、乗客20はヘッドマウントディスプレイ22を取り外し、それをベースステーション24に戻し、ステーション38を介して車両16を離れる。ここで、さらなる乗客20は、説明した方法で娯楽用の乗り物10を使用することができる。
【0043】
また、
図1は、ヘッドマウントディスプレイ22がケーブル46を介してベースステーション24に接続されていることを示す。ケーブル46は、データ伝送、ヘッドマウントディスプレイ22の固定、またはヘッドマウントディスプレイ22の充電に使用することができる。しかしながら、図示の例では、充電装置48がベースステーション24の受容手段26に統合されているので、ヘッドマウントディスプレイ22がベースに格納されるときにヘッドマウントディスプレイ22を充電することができる。
【0044】
図2は、本発明による同期装置122の第2の実施形態を備えた娯楽用の乗り物10を示す。第1の実施形態による同期装置12
1を備えた娯楽用の乗り物10との主な違いは、ベースステーション24が、例えば駅38に隣接する娯楽用の乗り物10の待機エリア50において車両16の外側に配置されることである。ただし、第2の実施形態による同期装置12
2の基本構造および基本的な動作モードは、第1の実施形態のものと変わらない。しかしながら、ベースステーション24は車両16の外側に配置され、それらの位置を変えないので、同期装置の第1の実施形態の場合のような、第2および第3座標系42、44はもはや固定された不変の関係にない。
【0045】
同期装置122の第2の実施形態では、乗客20がヘッドマウントディスプレイ22をベースステーション24から取り外すときに、同期も実行される。しかしながら、乗客20は、駅38及び車両16まで一定の距離を移動しなければならないため、第2の乗客202と同様に、駅38に到着する前及び車両16に搭乗する前に、既にヘッドマウントディスプレイ22を装着している可能性も否定できない。それにもかかわらず、乗客に必要な向きを与えるために、現実世界または車両16を超えて延びる仮想現実のいずれかを示すことができる。車両16を超える仮想現実の場合、現実世界の障害物は、ヘッドマウントディスプレイ22を装着した乗客20に危険をもたらさないように考慮される。例えば、仮想現実は、乗客20が娯楽用の乗り物10の選択可能な領域52内、例えば駅38内または車両16内にあるときにのみ示すことができる。
【符号の説明】
【0046】
10…娯楽用の乗り物
12…同期装置
121…第1の同期装置
122…第2の同期装置
14…ルート
16…車両
18…乗客用座席
181…第1の乗客用座席
182…第2の乗客用座席
20…乗客
201…第1の乗客
202…第2の乗客
22…ヘッドマウントディスプレイ
24…ベースステーション
26…受容手段
28…ディスプレイ位置検出装置
30…VR装置
32…演算ユニット
34…車両位置検出装置
36…距離センサ
38…駅
50…第1の座標系
42…第2の座標系
44…第3の座標系
45…存在検出手段
46…ケーブル
48…充電装置
50…待機エリア
52…選択可能なエリア