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特許7069351リチウム二次電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20220510BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220510BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20220510BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M10/052
H01M50/46
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020565252
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2019011446
(87)【国際公開番号】W WO2020060079
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0112863
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジウン・ソン
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0020599(KR,A)
【文献】国際公開第2018/062844(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/164494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 10/052
H01M 50/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属層;及び
前記リチウム金属層の少なくとも一面に形成される炭素系薄膜層;を含むリチウム二次電池用負極であって、
前記炭素系薄膜層は、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列され
前記多孔性炭素材はカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーであり、
前記多孔性炭素材の直径は10nm以上1000nm以下であり、
前記炭素系薄膜層の気孔の大きさは1nm以上200nm以下である、リチウム二次電池用負極。
【請求項2】
前記炭素系薄膜層の厚さは1ないし20μmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記多孔性炭素材はカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記多孔性炭素材の直径は20ないし50nmであることを特徴とする請求項3に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
前記炭素系薄膜層の気孔の大きさは10ないし100nmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項6】
前記炭素系薄膜層の気孔の大きさは20ないし100nmであることを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項7】
前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄電池であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項8】
正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解質を含むリチウム二次電池であって、
前記負極は、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の負極であることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄電池であることを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月20日付韓国特許出願第10-2018-0112863号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に対する関心が段々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、ひいては電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡大され、電気化学素子の研究と開発に対する努力がますます具体化されている。
【0004】
電気化学素子は、このような側面で最も注目されている分野であり、その中でも充・放電可能な二次電池の開発は関心の的になっていて、最近はこのような電池を開発するにあたり、容量密度及びエネルギー効率を向上させるために新しい電極と電池の設計に対する研究開発に進められている。
【0005】
現在適用されている二次電池の中で、1990年代初に開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの在来式電池に比べて作動電圧が高く、エネルギー密度が遥かに大きいという長所で脚光を浴びている。
【0006】
一般に、リチウム二次電池は、正極、負極及び前記正極と前記負極の間に介在された分離膜を含む電極組立体が積層または捲取された構造で電池ケースに内蔵され、その内部に非水電解液が注入されることで構成される。負極としてリチウム電極は平面状の集電体上にリチウムホイルを付着して使用する。
【0007】
リチウム二次電池は、充・放電の際にリチウム形成と除去が不規則で、リチウムデンドライトが形成され、これは持続的な容量低下につながる。これを解決するために、現在リチウム金属層にポリマー保護層または無機固体保護層を取り入れたり、電解液の塩の濃度を高くしたり、適切な添加剤を適用する研究が行われた。しかし、このような研究のリチウムデンドライト抑制効果は微々たる実情である。よって、リチウム金属の負極自体の形態変形や電池の構造変形を通じて問題を解決することが効果的な代案になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0056731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来のリチウム二次電池は、充・放電時に電極面に生成されるリチウムデンドライトによって電池の安定性及び寿命特性が低下する問題が発生する。ここで、本発明者らは多角的に研究した結果、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列された炭素系薄膜層をリチウム金属層上に形成すれば、リチウムデンドライトの生成を抑制し、寿命特性を改善することができることを確認して本発明を完成した。
【0010】
よって、本発明の目的は、リチウム金属層上に炭素系薄膜を含むリチウム二次電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、
本リチウム金属層;及び
前記リチウム金属層の少なくとも一面に形成される炭素系薄膜層;を含むリチウム二次電池用負極であって、
前記炭素系薄膜層は、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列されたリチウム二次電池用負極を提供する。
【0012】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解質を含むリチウム二次電池であって、
前記負極は、本発明の負極であるリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリチウム二次電池用負極は、リチウム金属層上に形成された炭素系薄膜層がリチウムデンドライトの形成を抑制して電池の反応性を均一にし、寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のリチウム二次電池用負極の一実施例を示す構造である。
図2】実施例1で製造した負極の炭素系薄膜層を観察したSEM写真である。
図3】比較例1で製造した負極の炭素系薄膜層を観察したSEM写真である。
図4】比較例2で製造した負極の炭素系薄膜層を観察したSEM写真である。
図5】比較例3で製造した負極の炭素系薄膜層を観察したSEM写真である。
図6】40サイクル以後、実施例1で製造した負極の表面を観察した写真である。
図7】1サイクル以後、比較例1で製造した負極の表面を観察した写真である。
図8】1サイクル以後、比較例2で製造した負極の表面を観察した写真である。
図9】1サイクル以後、比較例3で製造した負極の表面を観察した写真である。
図10】40サイクル以後、比較例4で製造した負極の表面を観察した写真である。
図11】実験例2のリチウム-硫黄電池の寿命特性測定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0016】
リチウム二次電池の早期退化の主な原因としては、リチウム負極の効率低下が挙げられる。負極でリチウム金属を使用する場合、不均一な酸化層(自然酸化物層(native oxide layer))によって反応が不均一なだけでなく、充電(Liプレーティング(Li plating))時にデンドライトが成長してデッドリチウム(dead Li)が容易に発生し、反応に参加できるリチウムが消耗され、リチウム負極の効率が低下する。
【0017】
リチウム表面の均一な反応性を確保して、リチウムデンドライトの成長を抑制するためにリチウム金属層上に保護膜、伝導性ホストマトリックス(host matrix)などを形成する方法などが試みられている。前記保護膜の場合、リチウムデンドライトを抑制するための高い機械的強度と、リチウムイオンを伝達するための高いイオン伝導度が同時に必要であるが、前記機械的強度及びイオン伝導度は相反する関係(trade-off)において前記機械的強度及びイオン伝導度を同時に向上させることは難しい。前記伝導性ホストマトリックスの場合、ホストマトリックス内部にリチウムが充填(Liプレーティング(Li plating))されてホストの役目をしなければならないが、ホストマトリックスの表面のみにリチウムが積もるようになって、リチウムデンドライトが成長する。
【0018】
よって、本発明では、リチウムデンドライトの成長を防いで、電池の寿命特性を向上させることができるリチウム二次電池用負極を提供しようとした。
【0019】
リチウム二次電池用負極
本発明は、
リチウム金属層;及び
前記リチウム金属層の少なくとも一面に形成される炭素系薄膜層;を含むリチウム二次電池用負極であって、
前記炭素系薄膜層は、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列されたリチウム二次電池用負極に関する。
【0020】
図1は、本発明の一具現例によるリチウム二次電池用負極の断面図である。
【0021】
図1を参照すれば、リチウム二次電池用負極(110)は、リチウム金属層(111)上に炭素系薄膜層(112)が積層された構造を有する。本図面では、リチウム金属層(111)の一面のみに炭素系薄膜層(112)が形成されているが、両面ともに形成されてもよい。
【0022】
前記リチウム金属層(111)は、リチウム金属またはリチウム合金であってもよい。このとき、リチウム合金はリチウムと合金化可能な元素を含み、具体的に、リチウムとSi、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge及びAlからなる群から選択される1種以上との合金であってもよい。
【0023】
前記リチウム金属層(111)は、シートまたはホイルの形態であってもよく、場合によって集電体上にリチウム金属またはリチウム合金が乾式工程によって蒸着またはコーティングされた形態であったり、粒子相金属及び合金が湿式工程などによって蒸着またはコーティングされた形態であってもよい。
【0024】
このとき、リチウム金属層(111)の形成方法は特に制限されず、公知の金属薄膜形成方法であるラミネーション法、スパッタリング法などが利用されてもよい。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電によって金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明のリチウム金属層(111)に含まれる。
【0025】
前記リチウム金属層(111)は、電極製造に容易であるよう、電極形態によって幅を調節することができる。リチウム金属層(111)の厚さは1ないし500μm、好ましくは10ないし350μm、より具体的には50ないし200μmであってもよい。
【0026】
また、前記リチウム金属層(111)は、一側に集電体をさらに含むことができる。具体的に、前記リチウム金属層(111)は負極であってもよく、このとき、集電体は負極集電体が使用されてもよい。
【0027】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限されず、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されてもよく、前記合金では、アルミニウム-カドミウム合金を使用してもよく、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などを使用してもよい。一般的に負極集電体では銅薄板を適用する。
【0028】
また、その形態は表面に微細な凹凸が形成された/未形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態が使用されてもよい。
【0029】
また、前記負極集電体は、厚さ3ないし500μmの範囲のものを適用する。前記負極集電体の厚さが3μm未満であれば集電効果が落ちる一方、厚さが500μmを超えるとセルをフォールディング(folding)して組み立てる場合に加工性が低下する問題点がある。
【0030】
一般に、リチウム金属を負極で利用する場合、次のような問題が存在する。第一に、リチウムを負極で使用する場合、電解質や水、電池内の不純物、リチウム塩などと反応して不動態層を作るようになり、この層は局所的な電流密度差をもたらして樹状のリチウムデンドライトを形成させる。また、このように形成されたデンドライトは成長して分離膜の空隙の間を超えて正極と直接的に内部短絡を起こすことがあるので、電池が爆発する現象をもたらすことになる。第二に、リチウムは柔らかい金属で、機械的強度が弱いため、さらに表面処理をせずに使用するには取り扱い性が非常に落ちる。
【0031】
よって、本発明ではリチウム金属層(111)の表面に炭素系薄膜層(112)を形成することで不動態層を形成し機械的強度を補強することができ、特にデンドライト形成を効果的に防ぐことができる。
【0032】
本発明の炭素系薄膜層(112)は、前述したリチウム金属層(111)の上に形成され、負極(110)の充・放電時に炭素系薄膜層の伝導性表面を通じて電子が不均一に傾く現象を緩和させ、リチウムデンドライトの形成を抑制する。これを通じて、より均一なリチウムの反応性を確保することができる。よって、電池の内部短絡が防止され、充・放電時にサイクル寿命特性を向上させることができる。
【0033】
前記リチウムデンドライト吸水性物質である炭素材は、互いに接触して凝集されると伝導性ネットワークが形成され、これによって伝導性ネットワークを通じて負極表面に電子が均一に分散される。このとき、炭素系薄膜層が形成する気孔が不均一であったり、数十μm以上に大きく形成される場合は、リチウムイオンの移動を邪魔することができないため、デンドライトが形成されて電池のサイクル特性の低下をもたらすことがある。よって、前記リチウムデンドライトの吸水性物質である炭素材は、一方向に均一に分布することが好ましい。
【0034】
よって、本発明の炭素系薄膜層(112)は、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列されていることを特徴とする。
【0035】
本発明における水平方向とは、リチウム金属層(111)を基準にしたとき、水平な方向を意味する。
【0036】
炭素系薄膜層はリチウム金属層と水平方向に配向され、一方向に整列された複数個の炭素材を含む。
【0037】
前記炭素系薄膜層に含まれる複数個の炭素材は、例えば、バインダーによって接着されたものであるか、またはエレクトロスピニングによって炭素材を放射するとき、方向を一定に形成して硬化させた形態のものであってもよい。
【0038】
前記の水平方向とは、炭素系薄膜層の製造過程を考慮するとき、完全な水平方向のみならず、リチウム金属層と0ないし45゜、好ましくは0ないし10゜の角度をなす方向を含むものとして解釈しなければならない。
【0039】
また、一方向整列の場合も炭素系薄膜層の製造過程を考慮するとき、一部方向を異にする炭素材が含まれてもよいと解釈しなければならない。つまり、炭素材が全体的に一方向に方向性を有する場合、一部方向を異にする炭素材が含まれる場合も一方向整列状態であると理解しなければならない。
【0040】
前記炭素系薄膜層の厚さは1ないし20μmで、好ましくは2ないし8μmであってもよい。前記炭素系薄膜層の厚さが1μm未満であれば、炭素系薄膜層の内部気孔構造が崩れることがあるし、内部気孔がリチウムデンドライトの成長を抑制するに充分でないこともあるし、20μmを超えると負極の厚さが厚くなって、重量が増加し、体積及び重量当たりエネルギー密度が低下することがある。
【0041】
前記多孔性炭素材はカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーであってもよく、好ましくはカーボンナノチューブであってもよい。前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブであってもよい。
【0042】
前記多孔性炭素材の直径は10ないし1000nmで、好ましくは20ないし50nmである。前記多孔性炭素材の直径が10nm未満で製作されることはとても難しく、1000nmを超えるとリチウムデンドライトの生成抑制効果を示すことができない。
【0043】
また、前記炭素系薄膜層の複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列されることによって多孔性炭素材の間に一定空間が形成され、これは炭素系薄膜層の気孔を意味する。
【0044】
前記炭素系薄膜層の気孔は1ないし200nm、好ましくは10ないし100nmの大きさを有する。前記炭素系薄膜層の気孔は、多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列された構造であるとき、1ないし200nmの大きさを有することができ、一方向に整列されていない多孔性炭素材を含む炭素系薄膜層は前記範囲の気孔を形成しにくいし、一般的に数十μm以上の不均一な気孔を形成する。前記炭素系薄膜層の気孔が200nmを超えると、リチウムデンドライトの成長を抑制する効果を示すことができない。
【0045】
前記複数の多孔性炭素材が狭い間隔、つまり前記気孔に整列された水平方向を形成することによってリチウムイオンが多孔性炭素材の間の小さい気孔を透過した後でメッキされ、リチウム二次電池の充・放電後にもリチウム負極表面が均一な形態を有することができる。よって、前記複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列された炭素系薄膜層は、リチウム金属層の保護層の役目をすることができる。
【0046】
炭素材が垂直方向に一方向に整列された炭素系薄膜層の場合、シード(seed)を使って基板上に炭素材を垂直方向に成長させなければならず、炭素系薄膜層に負極活物質を分散させなければならない追加工程も必要であるため、製造工程が複雑である。また、前記垂直方向に整列された炭素系薄膜層の構造を維持しながら基板を取り除くことができないので、基板とともに使用しなければならない。このとき、前記基板は垂直方向に一方向に整列された炭素材の製造工程を耐えられるニッケルまたはコバルトなどを含む耐久性を有する金属、つまり比重が高い金属が使用されてもよいが、リチウム金属層は耐久性に優れてないので使用が不可能である。
【0047】
また、前記垂直方向によって炭素系薄膜層の厚さが薄く製造されないし、一般的に数十μm以上の厚さで製造されて負極の厚さが厚くなり、重量が増加して体積及び重量当たりエネルギー密度が低下する問題があり、複数の多孔性炭素材が垂直方向に一方向に整列された炭素系薄膜層の場合は、ホストマトリックスとして炭素系薄膜層の表面のみにリチウムが積もる役目をし、リチウム負極の上に形成されてリチウムデンドライトの成長を抑制する保護層の役目をすることができない。
【0048】
本発明では前記の直径を有する複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列されて前記の気孔を有する炭素系薄膜層を含むことにより、上述したようにリチウムデンドライトの形成を防いで電池の寿命特性を向上させることができる。
【0049】
前記リチウム二次電池用負極は、好ましくはリチウム-硫黄電池用負極であってもよい。
【0050】
本発明による炭素系薄膜層(112)は、スパッタリング(Sputtering)、気化蒸着法(Evaporation)、化学気相蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)、物理気相蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)、原子層蒸着法(ALD:Atomic Layer Deposition)、アーク放電及びこれらの組み合わせから構成された群から選択される方法を利用してもよく、具体的には物理気相蒸着法を適用する。
【0051】
前記物理気相蒸着法で炭素系薄膜層(112)を形成すれば、均一で薄い炭素系薄膜層を形成することができて好ましい。
【0052】
また、物理気相蒸着法は20ないし120分、好ましくは40ないし120分、より好ましくは40ないし100分、最も好ましくは40ないし60分間行われ、蒸着時間が20分未満であれば炭素系薄膜層の厚さが薄すぎて、まともに保護膜の役目をすることができず、亀裂が発生する一方、蒸着時間が120分を超えると、炭素系薄膜層の厚さが厚くなってエネルギー密度を下げる問題点がある。
【0053】
前記蒸着段階以後、必要に応じて選択的に熱処理工程を行うことができる。このとき、熱処理温度は1200℃であってもよい。具体的に、熱処理温度まで5ないし300℃までの昇温速度を有する急速熱処理(急速熱アニール(rapid thermal anneal))によって行われることが好ましい。このような熱処理工程は、蒸着された炭素粒子の自己組み立てを通じて気孔の均一な整列を誘導することができる。
【0054】
リチウム二次電池
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解質を含むリチウム二次電池に関するものであって、
前記負極は、上述した本発明の負極であってもよい。
【0055】
本発明による正極は、正極活物質、導電材及びバインダーを含む組成物を正極集電体に製膜して正極の形態で製造することができる。
【0056】
前記正極活物質はリチウム二次電池の用途によって変わることがあって、具体的な組成は公知された物質を使用する。一例として、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウム銅酸化物、リチウムニッケル系酸化物及びリチウムマンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物からなる群から選択されたいずれか一つのリチウム遷移金属酸化物を挙げることができ、より具体的には、Li1+xMn2-x(ここで、xは0ないし0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaで、x=0.01ないし0.3である)で表されるリチウムニッケル酸化物;LiMn2-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaで、x=0.01ないし0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物、Li(NiCoMn)O(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)で表されるリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、Fe(MoO;硫黄元素、ジスルフィド化合物、有機硫黄保護層(Organosulfur compound)及び炭素-硫黄ポリマー((C:x=2.5ないし50、n≧2);黒鉛系物質;スーパー-P(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンブラックのようなカーボンブラック系物質;フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;及びポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセンチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子;多孔性炭素支持体にPtまたはRuなど触媒が担持された形態などが可能で、これらのみに限定されることではなく、好ましくは炭素-硫黄ポリマーが使用されてもよい。
【0057】
よって、本発明のリチウム二次電池は、好ましくはリチウム-硫黄電池であってもよい。
【0058】
前記導電材は、正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、非制限的な例として、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されてもよい。
【0059】
前記正極は、正極活物質と導電材の組み合わせと集電体に対する組み合わせのためにバインダーをさらに含んでもよい。前記バインダーは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含んでもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合剤などを単独または混合して使用してもよいが、必ずこれらに限定されないし、当該技術分野でバインダーで使用されてもよいものであれば、いずれも可能である。
【0060】
前記正極集電体は、前記負極集電体で述べた内容と同一であり、一般的に正極集電体はアルミニウム薄板が利用されてもよい。
【0061】
前記のような正極は通常の方法によって製造されてもよく、具体的には正極活物質と導電材及びバインダーを有機溶媒上で混合して製造した正極活物質層形成用組成物を集電体上に塗布及び乾燥し、選択的に電極密度を向上させるために集電体に圧縮成形して製造することができる。このとき、前記有機溶媒では、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発されることを使用することが好ましい。具体的には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどを挙げることができる。
【0062】
前記正極組成物を正極集電体上に当業界で知られた通常の方法を利用してコーティングすることができ、例えば、ディッピング(dipping)法、スプレー(spray)法、ロールコート(roll court)法、グラビア印刷法、バーコート(bar court)法、ダイ(die)コーティング法、コンマ(comma)コーティング法またはこれらの混合方式など様々な方式を利用することができる。
【0063】
このようなコーティング過程を経た正極及び正極組成物は、以後乾燥過程を通じて溶媒や分散媒の蒸発、コーティング膜の稠密性、及びコーティング膜と集電体との密着性などが行われる。このとき、乾燥は通常の方法によって実施され、これを特に制限しない。
【0064】
正極と負極の間は通常の分離膜が介在されてもよい。前記分離膜は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜で使用されるものであれば特に制限されずに使用可能で、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0065】
また、前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させながら正極と負極の間にリチウムイオンを輸送できるようにする。このような分離膜は、多孔性で非伝導性または絶縁性の物質からなってもよい。前記分離膜は、フィルムのような独立的な部材であるか、または正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0066】
前記分離膜で使用されてもよいポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した膜を挙げることができる。
【0067】
前記分離膜で使用される不織布の例としては、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエステル(polyester)などをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した不織布が可能で、このような不織布は、多孔性ウェブ(web)を形成する繊維の形態であって、長繊維で構成されたスパンボンド(spunbond)またはメルトブローン(meltblown)の形態を含む。
【0068】
前記分離膜の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm範囲が好ましく、より好ましくは5ないし50μm範囲である。前記分離膜の厚さが1μm未満の場合は機械的物性を維持することができず、100μmを超える場合は前記分離膜が抵抗層に作用するようになって電池の性能が低下する。
【0069】
前記分離膜の気孔の大きさ及び気孔度は特に制限されないが、気孔の大きさは0.1ないし50μmで、気孔度は10ないし95%であることが好ましい。前記分離膜の気孔の大きさが0.1μm未満であったり気孔度が10%未満であれば分離膜が抵抗層で作用するようになり、気孔の大きさが50μmを超えたり気孔度が95%を超える場合は機械的物性を維持することができない。
【0070】
前記リチウム二次電池の電解液は、リチウム塩含有電解液で水系または非水系電解液であってもよく、具体的に有機溶媒電解液とリチウム塩からなる非水系電解質である。この他、有機固体電解質または無機固体電解質などが含まれてもよいが、これらのみに限定されてもよい。
【0071】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどが制限されずに使用されてもよい。例えば、前記リチウム塩の陰イオンでは、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN及び(CFCFSOからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらの中で2種以上を含むことができる。
【0072】
前記非水系電解液に含まれる有機溶媒では、リチウム二次電池用電解液に通常使われるものなどを制限されずに使用することができ、例えば、エーテル、エステル、アミド、線状カーボネート、環状カーボネートなどをそれぞれ単独で、または2種以上混合して使用することができる。その中で、代表的には環状カーボネート、線状カーボネート、またはこれらの混合物であるカーボネート化合物を含むことができる。
【0073】
前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート及びこれらのハロゲン化物からなる群から選択されるいずれか一つ、またはこれらの中で2種以上の混合物がある。これらのハロゲン化物では、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylenecarbonate、FEC)などがあり、これに限定されることではない。
【0074】
また、前記線状カーボネート化合物の具体的な例では、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群から選択されるいずれか一つ、またはこれらの中で2種以上の混合物などが代表的に使用されてもよいが、これに限定されることではない。
【0075】
特に、前記カーボネート系有機溶媒の中で、環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは高粘度の有機溶媒であって誘電率が高く、電解質内のリチウム塩をもっとよく解離させることができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適正の割合で混合して使用すれば、より高い電気伝導率を有する電解液を作ることができる。
【0076】
また、前記有機溶媒の中で、エーテルではジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル及びエチルプロピルエーテルからなる群から選択されるいずれか一つ、またはこれらの中で2種以上の混合物を使用することができるが、これに限定されることではない。
【0077】
そして、前記有機溶媒の中で、エステルではメチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネイト、エチルプロピオネイト、プロピルプロピオネイト、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンからなる群から選択されるいずれか一つ、またはこれらの中で2種以上の混合物を使用してもよいが、これに限定されることではない。
【0078】
前記非水系電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性によって、電気化学素子の製造工程中、適切な段階で行われてもよい。すなわち、電気化学素子を組み立てる前、または電気化学素子を組み立てる最終段階などで適用されてもよい。
【0079】
本発明によるリチウム二次電池は、一般的工程である捲取(winding)以外も分離膜と電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。そして、前記電池ケースは、円筒状、角形、ポーチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであってもよい。
【0080】
このとき、リチウム二次電池は、使用する正極の材質及び分離膜の種類によってリチウム-硫黄電池、リチウム-空気電池、リチウム-酸化物電池、リチウム全固体電池など様々な電池で分類可能であり、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などで分類されてもよく、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプで分けることができる。これらの電池の構造と製造方法は、この分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0081】
以下、本発明を理解しやすくするために、好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0082】
<リチウム-硫黄電池の製造>
実施例1.
直径が30nm以下の複数のカーボンナノチューブが一方向に整列され、カーボンナノチューブの間に20ないし100nmの大きさの気孔を形成する炭素系薄膜を厚さ40μmのリチウム金属板に形成させて負極を製造した。このとき、前記炭素系薄膜層の厚さは3ないし8μmで、炭素系薄膜層を構成するカーボンナノチューブは、リチウム金属板を基準にして水平に一方向に配向された構造を有している。図2に炭素系薄膜層のSEM写真を図示した。
【0083】
電池伝導性を有している導電性炭素と硫黄を30:70の重量比で混合してボールミル工程を通じて硫黄-炭素複合体を製造した。前記硫黄-炭素複合体は、正極活物質で使用された。
【0084】
硫黄-炭素複合体70g、導電材としてSuper-P20g、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン10g、及び溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン500gを混合して正極活物質スラリーを製造し、前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体上にコーティングして正極を製造した。
【0085】
前記正極及び負極の間にポリオレフィン分離膜を介在させた後、1M濃度のLiN(CFSOが溶解されたジメトキシエタン:ジオキソラン(1:1の体積比)の混合液を電解液として使用してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0086】
比較例1.
直径が60nm以下の複数のカーボンナノチューブが放射形構造からなるカーボンナノチューブ集合体を物理気相蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)で厚さ40μmのリチウム金属板に炭素系薄膜層(厚さ:18μm)を形成して負極を製造した。このとき、炭素系薄膜層は200ないし500nm大きさの気孔を含んでいて、前記気孔はカーボンナノチューブの間の空間で形成されたものである。図3に炭素系薄膜層のSEM写真を図示した。
【0087】
以後、前記実施例1と同様に実施してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0088】
比較例2.
直径が50nm以下の複数のカーボンナノチューブが放射形構造からなるカーボンナノチューブ集合体を物理気相蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)で厚さ40μmのリチウム金属板に炭素系薄膜層(厚さ:30μm)を形成して負極を製造した。このとき、炭素系薄膜層は200ないし500nm大きさの気孔を含んでいて、前記気孔はカーボンナノチューブの間の空間で形成されたものである。図4に炭素系薄膜層のSEM写真を図示した。
【0089】
以後、前記実施例1と同様に実施してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0090】
比較例3.
直径が10μm以下の複数のカーボンナノチューブが放射形構造からなる炭素ナノチーブ集合体を物理気相蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)で厚さ40μmのリチウム金属板に炭素系薄膜層(厚さ:100μm)を形成して負極を製造した。このとき、炭素系薄膜層は30ないし100μm大きさの気孔を含んでいて、前記気孔はカーボンナノチューブの間の空間で形成されたものである。図5に炭素系薄膜層のSEM写真を図示した。
【0091】
以後、前記実施例1と同様に実施してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0092】
比較例4.
厚さ40μmのリチウム金属板を負極で使用した。
【0093】
以後、前記実施例1と同様に実施してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0094】
実験例1.リチウム二次電池用負極の表面観察
前記実施例1及び比較例1ないし4で製造した負極を含むリチウム二次電池を製作した後、0.5mAの条件で40回充・放電した。次いで、リチウムデンドライトの形成可否を確認するために、電池から負極を分離して表面を観察した。
【0095】
比較例1ないし3の負極は、1回のサイクル後、炭素系薄膜層の上にリチウムがそのまま生成された形状を示した(図7ないし9)。
【0096】
一方、実施例1の負極は、40回のサイクル後、炭素系薄膜層の上に成長したリチウムが非常に少ない面積で観察された(図6)。また、リチウム金属を負極で使用した比較例4の負極の40回のサイクル後、表面(図10)と比べたとき、表面が遥かに均一な形状を示した。
【0097】
よって、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列された炭素系薄膜層を含むリチウム二次電池用負極は、リチウムデンドライトの形成を効果的に制御することが分かった。
【0098】
実験例2.リチウム二次電池の寿命特性測定
前記実施例1及び比較例1ないし4で製造したリチウム二次電池の寿命特性を測定した。
【0099】
充電電圧を2.5Vカットレートを0.5Cにし、放電電圧を1.8Vカットレートを0.5Cにして寿命特性を測定した。
【0100】
その結果、実施例1が最も優れる寿命特性を示した。
【0101】
一方、比較例1ないし4は、実施例1に比べて寿命特性が不良な結果を示した。
【0102】
すなわち、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列された炭素系薄膜層を含むリチウム二次電池はリチウムデンドライトの成長を防ぐことができて優れる寿命特性を示すことが分かった。
【0103】
しかし、炭素系薄膜層を含んでも多孔性炭素材が放射形状である比較例1ないし3は、リチウムデンドライトの成長を防ぐことができず、リチウム二次電池の寿命特性の向上効果を得られなかった。
【0104】
前記実験から、複数の多孔性炭素材が水平方向に一方向に整列された炭素系薄膜層を含む負極は、リチウム二次電池のリチウムデンドライトの成長を防いでリチウム二次電池の寿命特性を向上させることができることが分かる。
【符号の説明】
【0105】
110:リチウム二次電池用負極
111:リチウム金属層
112:炭素系薄膜層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11