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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】アンテナ装置の放熱機構
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20220510BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20220510BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H01Q23/00
H04B1/38
H05K7/20 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020566745
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 KR2019006458
(87)【国際公開番号】W WO2019231242
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0062284
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウー ヨー
(72)【発明者】
【氏名】ミン シク パク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ウー ヤン
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0223012(US,A1)
【文献】国際公開第2018/093173(WO,A1)
【文献】特開2014-022680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 23/00
H04B 1/38
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な作動時に所定の熱を生成する多数の通信素子と、
一面に前記多数の通信素子が収容され、他面に多数の放熱リブが一体に形成され、上下の長さ方向に長く形成された放熱兼用ケースと、
前記放熱兼用ケースの一面に前記多数の通信素子が実装されるアンテナボードとを含み、
前記多数の放熱リブは、
相対的に前記放熱兼用ケースの下部から放熱されて形成された上昇気流が相対的に上部で前記放熱兼用ケースの幅方向左右外側に上向きに傾斜して排気されるように形成され
前記放熱兼用ケースの幅方向の一側と幅方向の他側とにそれぞれ空き空間が形成されるように、上下方向に多段に配置された多数の押出放熱リブと、
前記多数の押出放熱リブの間の前記空き空間に結合され、真中を中心にそれぞれ前記放熱兼用ケースの幅方向左右外側に上向きに傾斜して配置された多数の傾斜リブを有する多数のキャスティング放熱リブとを含む、アンテナ装置の放熱機構。
【請求項2】
前記多数の放熱リブは、所定の距離離隔して配置され、
前記多数のキャスティング放熱リブは、ダイキャスティング工法で製作されている、請求項1に記載のアンテナ装置の放熱機構。
【請求項3】
前記多数の放熱リブのうち、前記多数の押出放熱リブは、前記放熱兼用ケースの幅方向に第1離隔距離を有するように離隔配置され、
前記多数のキャスティング放熱リブは、それぞれの下段が前記多数の押出放熱リブの各先端に連結される第2離隔距離を有するように離隔配置された、
請求項2に記載のアンテナ装置の放熱機構。
【請求項4】
前記多数の放熱リブのうち、前記多数のキャスティング放熱リブは、それぞれの上段が前記放熱兼用ケースの幅方向の一端及び他端にマッチングされるように延長形成された、
請求項3に記載のアンテナ装置の放熱機構。
【請求項5】
前記多数のキャスティング放熱リブのうち少なくとも一つは、上部に配置された前記多数の押出放熱リブの各リブの下段を連結するように配置された、
請求項4に記載のアンテナ装置の放熱機構。
【請求項6】
前記多数の押出放熱リブの間に形成された前記空き空間は、三角形の形状に形成された、
請求項2に記載のアンテナ装置の放熱機構。
【請求項7】
前記多数のキャスティング放熱リブは、
前記放熱兼用ケースの幅方向の一側に前記三角形の形状に形成された一側の空き空間に満たされる第1リブ群と、
前記放熱兼用ケースの幅方向の他側に前記三角形の形状に形成された他側の空き空間に満たされる第2リブ群とを含み、
前記第1リブ群と前記第2リブ群とは一体にダイキャスティング成形された、
請求項6に記載のアンテナ装置の放熱機構。
【請求項8】
前記多数の押出放熱リブの各リブが形成する下段の形状は、「V」字状に備えられ、
前記多数のキャスティング放熱リブのうち最上段に配置された2つのリブは、前記多数の押出放熱リブの各下段を連結するように「V」字状に備えられた、
請求項2に記載のアンテナ装置の放熱機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置の放熱機構(HEAT-RADIATING MECHANISM FOR ANTENNA DEVICE)に関するものであって、より詳細には、上下に長く形成された放熱兼用ケースの下段部で形成された上昇気流の影響が最小化して均一な放熱性能を実現することができるアンテナ装置の放熱機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分散アンテナシステム(distributed antenna system)は、基地局とユーザー端末との間の通信を中継する中継システムの一例であって、インドア(indoor)やアウトドア(outdoor)で必然的に生じる陰影地域まで移動通信サービスを提供することができるように基地局のサービスカバレッジ拡張の面で活用されている。
【0003】
分散アンテナシステムは、ダウンリンク経路を基準に、基地局から基地局信号の伝送を受け、増幅などの信号処理を行った後、信号処理された基地局信号をサービス領域内のユーザー端末に伝送し、アップリンク経路を基準にサービス領域内のユーザー端末から伝送された端末信号を増幅などの信号処理後に、これを基地局に伝送する役割をするが、このような分散アンテナシステムの中継の役割を実現するためには、基地局と分散アンテナシステムとの間に送受信される信号の整合、例えば、信号のパワー調整などが必須であり、そのために基地局信号整合装置が用いられてきた。
【0004】
このような基地局信号整合装置は、ダウンリンク経路で高いパワーレベルを有する基地局信号を分散アンテナシステムに求められる適正のパワーレベルに調整するが、このとき、相当量の熱が発生することによって、基地局信号整合装置が破損して寿命が短縮する問題があり、発生される熱を効率的に放出させることができる方案が求められる。
【0005】
図1は、従来技術に係るアンテナ装置の一例を示した正面図及び背面図である。
【0006】
従来技術に係るアンテナ装置の一例(1)は、図1に参照されているように、アンテナ素子(未図示)、FPGA(13)及びRFIC(14)を含む多数の通信素子(12)が内部に備えられ(図面には図示していないが、レドームなどのようなカバー部材によって、多数の通信素子は、外部と遮蔽される)、未図示のアンテナ取付支柱に取り付け固定されるように備えられたケースホディ(10)を含む。
【0007】
最近、多数のアンテナ素子を用いてデータ伝送容量を大幅に増やす技術として、送信機ではそれぞれの送信アンテナを通じて互いに異なるデータを伝送し、受信機では適切な信号処理を通じて送信データを区分するSpatial multiplexing技法が採用されたMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が発達するに伴い、一つのケースボディ(10)の内部に多数の通信素子(12)が配列される一方で、多数のユーザー端末機に対する信号性能を向上させるように、前記ケースホディ(10)は、アンテナ素子が取り付けられた面が略下向きに傾斜するように上下に長く形成される。
【0008】
図1に示された従来技術に係るアンテナ装置が上下に長く設計された形態のケースホディ(10)が採用された一例であって、このような上下の長さ方向のスリム型ケースボディ(10)は、多数のアンテナ素子を含む通信素子(12)から発生する熱を効果的に放熱するように背面に上下に長く配置された多数の放熱リブ(20)が一体に形成される。
【0009】
しかし、従来技術に係るアンテナ装置の一例(1)は、前記多数の放熱リブ(20)が上下方向に長く形成されたため、下側に備えられた通信素子(13、14)から生成された熱を下側に備えられた多数の放熱リブ(20)を通じて放熱するようになると、外気と熱交換して昇温されつつ、その上側の放熱リブ(20)に沿って上昇気流を形成するようになり、このような上昇気流は、多数の放熱リブ(20)のうち、特に上側に備えられた放熱リブ(20)の放熱特性に影響を及ぼすので、多数の放熱リブ(20)の上下の放熱ばらつきが激しく生じ得る。このような多数の放熱リブ(20)の高さによる上下の放熱ばらつきは、結局、通信性能の不均一をもたらし、通信不良を起こす問題に繋がり得る。従来技術に係るアンテナ装置の一例(1)の具体的な放熱ばらつきに関する実験データは、本発明の実施例の説明のために提供された図7を参照すると、より明確に理解することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記した技術的課題を解決するために案出されたものであって、上下の長さ方向のスリム型ケースボディを備えたアンテナ装置において、上下の放熱ばらつきを最小化してアンテナの性能を向上させることができるアンテナ装置の放熱機構を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るアンテナ装置の放熱機構の一実施例は、電気的な作動時に所定の熱を生成する多数の通信素子と、一面に前記多数の通信素子が収容され、他面に多数の放熱リブが一体に形成され、上下の長さ方向に長く形成された放熱兼用ケースと、前記放熱兼用ケースの一面に前記多数の通信素子が実装されるアンテナボードとを含み、前記多数の放熱リブは、相対的に前記放熱兼用ケースの下部から放熱されて形成された上昇気流が相対的に上部で前記放熱兼用ケースの幅方向左右外側に上向きに傾斜して排気されるように形成されてもよい。
【0012】
ここで、前記多数の放熱リブは、前記放熱兼用ケースの幅方向の一側と幅方向の他側とにそれぞれ空き空間が形成されるように、上下方向に所定の距離離隔されるように多段に配置された多数の押出放熱リブと、ダイキャスティング工法で製作され、前記多数の押出放熱リブの間の前記空き空間に結合され、真中を中心にそれぞれ前記放熱兼用ケースの幅方向左右外側に上向きに傾斜して配置された多数の傾斜リブとを有する多数のキャスティング放熱リブを含んでもよい。
【0013】
また、前記多数の放熱リブのうち、前記多数の押出放熱リブは、前記放熱兼用ケースの幅方向に第1離隔距離を有するように離隔配置され、前記多数のキャスティング放熱リブは、それぞれの下段が前記多数の押出放熱リブの各先端に連結される第2離隔距離を有するように離隔配置されてもよい。
【0014】
また、前記多数の放熱リブのうち、前記多数のキャスティング放熱リブは、それぞれの上段が前記放熱兼用ケースの幅方向の一端及び他端にマッチングされるように延長形成されてもよい。
【0015】
また、前記多数のキャスティング放熱リブのうち少なくとも一つは、上部に配置された前記多数の押出放熱リブの各リブの下段を連結するように配置されてもよい。
【0016】
また、前記多数の押出放熱リブの間に形成された前記空き空間は、三角形の形状に形成されてもよい。
【0017】
また、前記多数のキャスティング放熱リブは、前記放熱兼用ケースの幅方向の一側に前記三角形の形状に形成された一側の空き空間に満たされる第1リブ群と、前記放熱兼用ケースの幅方向の他側に前記三角形の形状に形成された他側の空き空間に満たされる第2リブ群とを含み、前記第1リブ群と前記第2リブ群とは一体にダイキャスティング成形されてもよい。
【0018】
また、前記多数の押出放熱リブの各リブが形成する下段の形状は、「V」字状に備えられ、前記多数のキャスティング放熱リブのうち最上段に配置された2つのリブは、前記多数の押出放熱リブの各下段を連結するように「V」字状に備えられてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るアンテナ装置の放熱機構の一実施例によると、上下の長さ方向に長く形成された上下の長さ方向のスリム型ケースの放熱ばらつきを減らすことによって、より改善された放熱性能を実現することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術に係るアンテナ装置の放熱機構の一例を示した背面図及び正面図である。
図2】本発明に係るアンテナ装置の放熱機構の一実施例を示した斜視図である。
図3図2の分解斜視図である。
図4図2の背面図及びその一部の拡大図である。
図5】本発明に係るアンテナ装置の放熱機構と放熱性能を比較するための比較実施例の斜視図及び一部の断面図である。
図6】本発明に係るアンテナ装置の放熱機構の放熱性能を比較するための実験条件を示した表である。
図7】本発明に係るアンテナ装置の放熱機構と従来技術及び比較実施例の放熱性能を比較するための比較データである。
図8】本発明に係るアンテナ装置の放熱機構と従来技術及び比較実施例の熱抵抗値を比較するための熱分布図及びその結果テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面を通じて詳細に説明する。
【0022】
各図面の構成要素に参照符号を付加するにおいて、同一な構成要素については、たとえ、他の図面上に表示されても可能な限り同一な符号を有するようにしていることに留意すべきである。また、本発明の実施例を説明するにおいて、関連する公知の構成または機能に対する具体的な説明が、本発明の実施例に対する理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0023】
本発明の実施例の構成要素を説明するにおいて、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであって、その用語により、該当構成要素の本質や順番や順序などが限定されない。また、異にして定義されない限り、技術的または科学的な用語を含め、ここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一な意味を有する。一般的に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味として解釈されない。
【0024】
図2は、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構の一実施例を示した斜視図であり、図3は、図2の分解斜視図であり、図4は、図2の背面図及びその一部の拡大図である。
【0025】
本発明の一実施例に係るアンテナ装置の放熱機構(1)は、図2ないし図4に参照されているように、電気的な作動時に所定の熱を生成する多数の通信素子(12)と、一面に前記多数の通信素子(12)が収容され、他面に多数の放熱リブ(図3の図面符号30及び40を参照)が一体に形成された放熱兼用ケース(10)及び前記放熱兼用ケース(10)の一面に前記多数の通信素子(12)をカバーするように結合されるアンテナボード(17)を含む。
【0026】
特に、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)の一実施例において、放熱兼用ケース(10)は、多数の通信素子(12)が上下方向に長く離隔配置され、相対的に幅の長さより上下高さの長さがより大きい上下の長さ方向のスリム型ケースに製作されてもよい。
【0027】
併せて、多数の通信素子(12)は、アンテナボード(17)の外側面に実装配置された多数のアンテナ素子(未図示)とアンテナボード(17)の内側面に実装配置された多数のFPGA(13)及びRFIC(14)とであってもよい。
【0028】
多数の通信素子(12)のうち、FPGA(13)及びRFIC(14)は、電気的に作動されるときに所定の熱を生成する発熱素子であってもよい。
【0029】
一方、アンテナボード(17)は、放熱兼用ケース(10)の内部空間に収容される多数の通信素子(12)及び未図示のアンテナ素子が、内側面及び外側面に実装される回路基板の機能を行えることはもちろん、外部から内側面に実装されたアンテナ素子を保護するための機能を行うことができる。この場合、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)の一実施例は、アンテナボード(17)の外側面を囲みながら、アンテナ素子を保護する未図示のレドームをさらに含んでもよい。
【0030】
多数の放熱リブ(30、40)は、図2及び図3に参照されているように、放熱兼用ケース(10)のボディプレート(11)と一体に押出製作されるが、放熱兼用ケース(10)の幅方向の一側と幅方向の他側とにそれぞれ空き空間(15、16)が形成されるように、上下方向に所定の距離離隔されるように多段に配置された多数の押出放熱リブ(30)及びダイキャスティング製作され、多数の押出放熱リブ(30)の間の前記空き空間(15、16)に結合され、真中を中心にそれぞれ放熱兼用ケース(10)の幅方向左右外側に上向きに傾斜して配置された多数の傾斜リブを有する多数のキャスティング放熱リブ(40)を含んでもよい。
【0031】
より詳細には、多数の押出放熱リブ(30)は、「発明の背景となる技術」の項目で記述した図1の放熱リブを押出成形方式で製作するが、前記放熱兼用ケース(10)の幅方向の一側と幅方向の他側とにそれぞれ多数の空き空間(15、16)が形成されるように、放熱兼用ケース(10)の長さ方向(つまり、上下方向)に長く形成される。
【0032】
ここで、多数の押出放熱リブ(30)は、前記空き空間(15、16)によって上下方向に連続されず、上下方向に多数個が多段に配置されてもよい。
【0033】
また、前記空き空間(15、16)は、それぞれ放熱兼用ケース(10)の一側に形成される一側の空き空間(15)及び放熱兼用ケース(10)の他側に形成される他側の空き空間(16)に定義され得る。
【0034】
一側の空き空間(15)と他側の空き空間(16)とは、略直角三角形の形状に形成され、直角をなす部位が相互連結された形状に形成されてもよい。
【0035】
このような一側の空き空間(15)及び他側の空き空間(16)には、多数の押出放熱リブ(30)とは別にダイキャスティング成形方式で製造された前記多数のキャスティング放熱リブ(40)が満たされるように結合されてもよい。
【0036】
多数のキャスティング放熱リブ(40)は、多数の押出放熱リブ(30)が放熱兼用ケース(10)の骨格をなすボディプレート(11)と一体的に押出成形される方式で製作されるのに対し、ボディプレート(11)とは別にダイキャスティング成形方式で製作され、前記空き空間(15、16)に結合されてもよい。
【0037】
より詳細には、多数のキャスティング放熱リブ(40)は、図3及び図4に参照されているように、放熱兼用ケース(10)の幅方向の一側に三角形の形状に形成された一側の空き空間(15)に満たされる第1リブ群(41)及び放熱兼用ケース(10)の幅方向の他側に三角形の形状に形成された他側の空き空間(16)に満たされる第2リブ群(42)を含んでもよい。
【0038】
ここで、第1リブ群(41)と前記第2のリブ群(42)とは、一体にダイキャスティング成形されるのが好ましい。しかし、必ずしも第1リブ群(41)と第2のリブ群(42)とが一体に形成される必要はなく、別々に製作され、それぞれ一側の空き空間(15)及び他側の空き空間(16)に一般的な結合方式を通じて結合されてもよい。本発明の一実施例に係るアンテナ装置の放熱機構(1)では、多数のキャスティング放熱リブ(40)が、第1リブ群(41)及び第2リブ群(42)が一体に形成されることを前提して説明することにする。
【0039】
一方、多数の放熱リブ(30、40)のうち多数の押出放熱リブ(30)は、図4に参照されているように、放熱兼用ケース(10)の幅方向に第1離隔距離(L1)を有するように離隔配置され、多数のキャスティング放熱リブ(40)は、それぞれの下段が多数の押出放熱リブ(30)の各先端に連結される第2離隔距離(L2)を有するように離隔配置されてもよい。
【0040】
理論的には、多数のキャスティング放熱リブ(40)の各下段が多数の押出放熱リブ(30)の各先端に連結されるので、第1離隔距離(L1)と第2離隔距離(L2)とは相互に同一なはずであるが、必ず第1離隔距離(L1)及び第2離隔距離(L2)が同一でなければならないものではない。
【0041】
多数の放熱リブ(30、40)のうち多数のキャスティング放熱リブ(40)は、それぞれの上段が前記放熱兼用ケース(10)の幅方向の端部を形成するように延長形成されてもよい。
【0042】
つまり、多数のキャスティング放熱リブ(40)の第1リブ群(41)は、図面上、放熱兼用ケース(10)の左側の幅方向に形成された一側の空き空間(15)に満たされるように配置される場合、第1リブ群(41)の上段は、放熱兼用ケース(10)の左側端にマッチングされる長さを有するように形成されるが、上向きに傾斜して形成されてもよい。
【0043】
併せて、多数のキャスティング放熱リブ(40)の第2リブ群(42)は、図面上、放熱兼用ケース(10)の右側の幅方向に形成された他側の空き空間(16)に満たされるように配置される場合、第2のリブ群(42)の上段は、放熱兼用ケース(10)の右側端にマッチングされる長さを有するように形成されるが、上向きに傾斜して形成されてもよい。
【0044】
一方、多数のキャスティング放熱リブ(40)のうち少なくとも一つ(42a、42b)は、上部に配置された多数の押出放熱リブ(30)の各リブの下段を連結するように配置されてもよい。反対に解釈すれば、多数の押出放熱リブ(30)の下段は、多数のキャスティング放熱リブ(40)のうち少なくとも一つに接する形状に形成されてもよい。
【0045】
ここで、図面に図示されていないが、多数の通信素子(12)が備えられたボディプレート(11)の一側面には、それぞれの通信素子(12)と直接接触される多数の接触突起が備えられてもよい。多数の接触突起は、発熱素子からなる多数の通信素子(12)のそれぞれから生成された熱を放熱兼用ケース(10)を通じて外側の多数の押出放熱リブ(30)への熱伝達を媒介する構成として理解されてよい。
【0046】
したがって、多数の接触突起を通じて発熱される多数の通信素子(12)のそれぞれからの熱の伝達を受け、ボディプレート(11)の外側面に一体に形成された多数の押出放熱リブ(30)に伝達して放熱することができる。つまり、放熱構造の設計時に、多数の押出放熱リブ(30)は、その対向面に配置された多数の通信素子(12)に対応するように多段に配置設計されるのが好ましい。
【0047】
放熱兼用ケース(10)の多数の押出放熱リブ(30)は、多数の通信素子(12)からの熱の伝達を受け、放熱するようになり、放熱された熱によって所定の上昇気流を形成することになる。このような上昇気流は、相対的に上部に位置するキャスティング放熱リブ(40)によって、その上部に位置する多数の押出放熱リブ(30)側に伝達されなくなる。これは、前述のように、前記多数のキャスティング放熱リブ(40)のうち少なくとも一つ(42a、42b)によって上昇気流が放熱兼用ケース(10)の幅方向の外側に排気されるためである。したがって、相対的に放熱兼用ケース(10)の下側で放熱されて形成された上昇気流が相対的にその上部に備えられた多数の押出放熱リブ(30)に影響を及ぼさない。
【0048】
ここで、多数の押出放熱リブ(30)の各リブの下段を連結するラインの形状は、「V」字状であってもよいし、多数のキャスティング放熱リブ(40)のうち最上段に配置された2つのリブも、多数の押出放熱リブ(30)の各下段を連結するように「V」字状に備えられてもよい。
【0049】
このような構成からなる本発明の一実施例に係るアンテナ装置の放熱機構(1)は、図4に参照されているように、多数の通信素子(12)(例えば、最も発熱量の多いFPGA(13))のそれぞれに接触されるように備えられた接触突起を通じて熱を多数の押出放熱リブ(30)に伝達し、多数の押出放熱リブ(30)は、多数の通信素子(12)から伝達された熱を外気と熱交換する方式で放熱する。
【0050】
多数の押出放熱リブ(30)を通じて放出された熱は、自然対流状態の上昇気流を形成しつつ、多数の押出放熱リブ(30)のそれぞれの間に備えられた空気流路を通して上昇し、多数のキャスティング放熱リブ(40)のそれぞれの間を通して放熱兼用ケース(10)の幅方向の一側または他側に排気されてもよい。
【0051】
従って、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)の一実施例は、各通信素子(12)から発生する熱を多数の押出放熱リブ(30)を通じて外部に放熱するにおいて、上下の長さ方向スリム型ケースの形態で製作された放熱兼用ケース(10)の上下高さによる放熱ばらつきを解消することができる。
【0052】
本発明の出願人は、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)の一実施例が最適の放熱性能を有することを確認するために、その比較実施例として、図5に参照されているように、比較実施例を設計した。
【0053】
図5は、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)と放熱性能を比較するための比較実施例の斜視図及び一部の断面図であり、図6は、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)の放熱性能を比較するための実験条件を示した表であり、図7は、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)と従来技術及び比較実施例の放熱性能を比較するための比較データであり、図8は、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)と従来技術及び比較実施例の熱抵抗値を比較するための熱分布図及びその結果テーブルである。
【0054】
以下では、既に「発明の背景となる技術」の項目で説明した従来技術に係るアンテナ装置の放熱機構(1)の一例を「Model 1」と指し、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構(1)の一実施例を「Model 2」と指し、さらに、図5を参照して説明する比較実施例を「Model 3」と指して説明することにする。
【0055】
Model 2で実現される比較実施例は、図5に参照されているように、放熱兼用ケース(10)の上下長さ方向に長く形成され、上下に多段に離隔配置された多数の押出放熱リブ(30)と、多数の押出放熱リブ(30)の離隔空間に配置され、下段部から形成された上昇気流を放熱兼用ケース(10)の背面側に排気するように配置されたエアバッフル(50)を含んでもよい。
【0056】
多数の押出放熱リブ(30)の製作方式は、本発明の一実施例で実現されるModel 2の方式に従うが、Model 3は上昇気流を放熱兼用ケース(10)の幅方向の外側ではなく、放熱兼用ケース(10)の背面側に排気するエアバッフル(50)を備える点で相違がある。
【0057】
ここで、エアバッフル(50)は、押出成形方式で製造された多数の押出放熱リブ(30)の各離隔空間にダイキャスティング成形方式で製造されたエアバッフル(50)が満たされるように結合されてもよい。
【0058】
つまり、多数の押出放熱リブ(30)は、放熱兼用ケース(10)の骨格をなすボディプレート(11)と一体的に押出成形される方式で製作されるのに対し、エアバッフル(50)は、ボディプレート(11)とは別にダイキャスティング成形方式で製作され、前記離隔空間に結合されてもよい。
【0059】
エアバッフル(50)は、多数の押出放熱リブ(30)の各下段を遮蔽するように放熱兼用ケース(10)の背面側に上向きに傾斜して配置された傾斜排気プレート(51)と、下側に配置された多数の押出放熱リブ(30)の上段に連結され、上昇気流を傾斜排気プレート(51)に誘導する多数の誘導放熱リブ(52)を含んでもよい。
【0060】
したがって、Model 3で実現される比較実施例の場合、図5に参照されているように、多数の押出放熱リブ(30)を通じて放熱されることによって形成された上昇気流は、多数の押出放熱リブ(30)のそれぞれの間の空気流路を通して上昇しつつ、エアバッフル(50)の多数の誘導放熱リブ(52)を通じて上昇した後、傾斜排気プレート(51)を通じて放熱兼用ケース(10)の背面側に排気される。
【0061】
しかし、Model 3の傾斜排気プレート(51)を通じて放熱兼用ケース(10)の背面側に排気された上昇気流は、自然対流状態によって異なるが、さらに上昇しつつ、再びその上部に位置された多数の押出放熱リブ(30)に流入する恐れがある。
【0062】
本発明の出願人は、前述のようなModel 1、Model 2及びModel 3で実現されるアンテナ装置の放熱機構(1)の各放熱性能を確認するために、図6のような実験条件下で実験した後、図7及び図8のような結果を確認した。
【0063】
図7を参照すると、発熱素子のいずれかであるFPGA(13)が7カ所備えられ、下段から上段まで1~7番という数字を付与し、各支点に対する温度を測定した結果であって、Model 1は、下段である1番と上部である7番との間の温度ばらつきが6度近く生じるのに対し、Model 2は1.8度の温度ばらつきが生じることを確認できた。
【0064】
また、Model 3の場合、3.3度の温度ばらつきが生じることから、最適の放熱設計案ではないことが分かった。これは、先に説明したように、Model 3は放熱兼用ケース(10)の背面側に排気された上昇気流は、自然対流状態によって異なるが、さらに上昇しつつ、再びその上部に位置された多数の押出放熱リブ(30)に流入するためであると解釈される。
【0065】
併せて、図8を参照すると、FPGA(13)が備えられた部位の各熱抵抗値も、Model 2で最も好ましい結果値が得られたことが分かる。FPGA(13)が備えられた各支点での多少熱抵抗ばらつきが生じることを確認できるが、同時に、全体的な熱抵抗の平均値の面では、Model 2で最も低い値が得られた。ちなみに、Model 1ないしModel 3から合理的な熱抵抗値を得るために、図8に参照されているように、多数の放熱リブのうち多数の押出放熱リブ(30)の先端から20mmの地点を共通に測定した。
【0066】
以上、本発明に係るアンテナ装置の放熱機構の一実施例を添付された図面を参照して詳細に説明した。しかし、本発明の実施例が必ず前述した一実施例によって限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者による様々な変形及び均等な範囲での実施が可能であることは当然であると言える。したがって、本発明の真の権利範囲は、後述する特許請求の範囲によって決定されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、上下の長さ方向のスリム型ケースボディを備えたアンテナ装置において、上下の放熱ばらつきを最小化してアンテナの性能を向上させることができるアンテナ装置の放熱機構を提供する。
【符号の説明】
【0068】
1 放熱機構
10 放熱兼用ケース
11 ボディプレート
12 通信素子
13 FPGA
14 RFIC
20 多数の放熱リブ
30 多数の押出放熱リブ
40 多数のキャスティング放熱リブ
50 エアバッフル
51 傾斜プレート
52 誘導リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8