(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】患者の体壁力を測定するセンサを備えるカニューレ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20220510BHJP
A61B 34/35 20160101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B34/35
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021015891
(22)【出願日】2021-02-03
(62)【分割の表示】P 2019110234の分割
【原出願日】2015-07-27
【審査請求日】2021-02-16
(32)【優先日】2014-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ペイジ,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーナー,ロートン エヌ
(72)【発明者】
【氏名】スティーガー,ジョーン アール
(72)【発明者】
【氏名】ディー,スミタ
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-159509(JP,A)
【文献】特表2007-528238(JP,A)
【文献】米国特許第4299230(US,A)
【文献】Zemiti, N. et al,A Force Controlled Laparoscopic Surgical Robot without Distal Force Sensing,Experimental Robotics IX,Springer,2006年,Vol.21,pp. 153-163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 34/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術システムであって、当該手術システムは、
シャフトを含む手術器具と、
組織と接触して配置されるカニューレであって、該カニューレは前記手術器具の前記シャフトを受け入れるような大きさとされる導管を定め
る内側チューブを含み、
前記カニューレは、前記内側チューブと同軸に整列され且つ前記内側チューブの長さの少なくとも一部に沿って前記内側チューブから間隙だけ離して配置されるオーバーチューブを含み、前記カニューレは
前記オーバーチューブの壁に配置された複数のセンサを含み、組織内に固定されるように構成されるカニューレと、
を含み、
前記複数のセンサは、
前記手術器具の前記シャフトが前記導管内に挿入されている間に
前記組織によって前記カニューレに与えられる組織負荷を測定するように構成され
る、
手術システム。
【請求項2】
前記複数のセンサは、前記カニューレに与えられる力及びモーメントのうちの少なくとも1つの指標を提供するように配置される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項3】
前記複数のセンサは、前記カニューレの撓みの指標を提供するように配置される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項4】
前記複数のセンサは、前記カニューレの内壁に取り付けられた1つ又は複数のセンサを含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項5】
前記複数のセンサは、前記カニューレの外壁に配置された1つ又は複数のセンサを含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項6】
前記複数のセンサは、前記カニューレの内壁に取り付けられた1つ又は複数のセンサを含み、且つ前記カニューレの外壁に配置された1つ又は複数のセンサを含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項7】
前記カニューレに与えられる負荷は、前記組織によって前記手術器具のエンドエフェクタに加えられる力に関連している、請求項1に記載の手術システム。
【請求項8】
前記複数のセンサは、1つ又は複数の6自由度センサを含む、請求項1に記載の手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、最小侵襲的な手術システムに関し、より具体的には、最小侵襲的な手術中に用いられるカニューレに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡検査は、最も一般的な形態の最小侵襲的な手術であることがある。おそらく、最も一般的な形態の内視鏡検査は、腹腔の内側の最小侵襲的な検査及び手術である、腹腔鏡検査である。典型的な腹腔鏡手術では、患者の腹部にガスが吹き込まれ、カニューレスリーブが小さな(約1/2インチの)切開部を通じて進められて、腹腔鏡手術器具のための入口ポートを提供する。
【0003】
「Obturator and Cannula for a Trocar Adapted for Ease of Insertion and Removal」という名称の米国特許第6,989,003号において説明されているように、トロカールと一般的に呼ばれるトロカール-カニューレは、腹腔鏡手術又は関節鏡手術のような様々な外科処置を行うよう、体腔へのアクセスを得るために用いられる、手術デバイスである。典型的には、トロカールは、当該技術分野において「カニューレ」と呼ばれるチューブ状のデバイス内に適合される、当該技術分野において「閉塞子」と呼ばれる先の尖ったロッド状のデバイスを含む、細長い先の尖った手術器具である。先の尖った、時折、鋭利に先の尖った、閉塞子の端は、カニューレの端から外に突出し、体腔の外側組織を貫通するために用いられる。組織が貫通させられ、例えば、体腔がトロカールによってアクセスされた後、閉塞子は体腔から引っ込められ、カニューレが体腔内の所定の場所に残されて、体腔にアクセスするための通路をもたらす。次に、カニューレを介して更なる手術器具によって体腔にアクセスして、様々な外科処置を行い得る。
【0004】
腹腔鏡手術器具は、一般的には、手術野を見るための腹腔鏡と、エンドエフェクタを定める作業ツールとを含む。典型的な外科エンドエフェクタは、例えば、クランプ、グラスパ、鋏、ステープラ、又は持針器を含む。作業ツールは、各ツールの作業端又はエンドエフェクタが、例えば、約12インチの長さの延長チューブによって、そのハンドルから分離されている点を除き、従来的な(観血)手術において用いられるものと類似する。
【0005】
外科処置を行うために、外科医は、これらの作業ツール又は器具を、カニューレスリーブを通じて所要の内部手術部位まで通し、カニューレスリーブを通じて出入りするようそれらをスライドさせ、カニューレスリーブ内でそれらを回転させ、腹壁に対して器具を梃子式に動かし(即ち、旋回させ)、そして、腹部の外側から器具の遠位端にあるエンドエフェクタを作動させることによって、腹部の外側からそれらを操作する。器具は、腹壁の筋肉を通じて延びる切開部によって定められる中心の周りで旋回する。外科医は、腹腔鏡カメラを介して手術部位の画像を表示するテレビモニタを用いて、処置をモニタリングする。腹腔鏡カメラは、腹壁を通じても手術部位に導入される。類似の内視鏡技法が、例えば、関節鏡検査、後腹膜鏡検査(retroperitoneoscopy)、胎盤鏡検査、腎臓鏡検査、膀胱鏡検査、槽鏡検査(cisternoscopy)、洞鏡検査(sinoscopy)、子宮鏡検査、尿道鏡検査、及び同等検査において、利用される。
【0006】
「Camera Referenced Control in a Minimally Invasive Surgical Apparatus」という名称の米国特許第7,155,315号は、外科医の器用さを増大させ且つ外科医が遠隔場所から患者を手術するのを可能にするよう、手術中における使用のための最小侵襲的な遠隔手術システムを記載する。遠隔手術は、外科医が、器具を手で直接的に保持して動かすのではなくむしろ、何らかの形態の遠隔制御、例えば、サーボ機構又は同等物を用いて、手術器具動作を操作する、手術システムについての一般用語である。そのような遠隔手術システムにおいて、外科医は、手術部位の画像を遠隔場所で提供される。視認は、典型的には、適切なビューア又はディスプレイ上の手術部位の三次元画像であるが、外科医は、遠隔場所で、サーボ機械的に作動させられる器具の動きを制御するマスタ制御装置を操作することによって、患者に対して外科処置を行う。
【0007】
遠隔手術のために用いられるサーボ機構は、しばしば、2つ(外科医の両手の各々について1つ)のマスタコントローラからの入力を受け入れ、2つのロボットアームを含むことがある。各マスタ制御装置と関連するアーム及び器具アセンブリとの間の動作的な通信は、制御システムを通じて達成される。制御システムは、少なくとも1つのプロセッサを含み、少なくとも1つのプロセッサは、例えば、フォースフィードバックの場合、入力命令をマスタコントローラから関連するアーム及び器具アセンブリに、そして、アーム及び器具アセンブリから関連するマスタコントローラに中継する。
【0008】
図1は、患者の体壁106を通じて延びる1つ又はそれよりも多くの器具104を受け入れる導管として作用する既知のカニューレ102を示す例示的な図面である。カニューレは、体腔の外側に配置される近位端部分108と、体腔内に延びる遠位端部分110とを含む。器具104は、典型的には、細長いシャフト部分104-1を含み、シャフト部分は、その遠位作業端に連結されるエンドエフェクタ104-2を有する。動作中、器具がカニューレ内に挿入されるときに、器具104及びカニューレ102の長手軸は整列させられる。幾つかの遠隔手術システムでは、リスト状の機構104-3が、シャフト104-1とエンドエフェクタ104-2との間で器具の遠位端に配置されて、体腔内のエンドエフェクタの回転的な動作を可能にする。
【0009】
典型的には、最小侵襲的な手術の間、外科医が器具104を操作して、ある距離から外科処置を行い、それは、外科医が、手術中に、フィードバック源として物理的接触を用いる能力を減少させる。外科医は、例えば、カニューレ102を通じて延びる細長い器具シャフト104-1の端に配置されるエンドエフェクタ104-2を操作してよい。結果的に、外科医は、処置中に内部身体組織に対して加えられる力の量を検知する能力を失うことがある。N. Zemiti et al.のTrocar Device for Passing a Surgical Toolという名称の米国特許出願公開第2011/0178477号、A Force Controlled Laparoscopic Surgical Robot without Distal Force Sensing, Experimental Robotics IX, STAR 21, 152-163頁,Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2006は、最小侵襲的な手術中に手術器具によって接触される内部身体組織に対して細長い器具によって加えられる力を推定するために用いられるセンサを含むトロカールを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
カニューレは、1つ又はそれよりも多くの手術器具を受け入れるような大きさとされる近位開口を定めるヘッド部分を含む。ヘッド部分に剛的に締結される細長い内側チューブが、近位開口と遠位開口との間に細長い導管を定める。1つ又はそれよりも多くの手術器具が、近位開口を通じて挿入可能であり、導管を通じて遠位開口に延びる。細長いオーバーチューブが、ヘッド部分に剛的に締結され、内側チューブと同軸に整列させられ、内側チューブの部分の周りに延在する。オーバーチューブの内壁が、内側チューブの外壁から離間させられる。センサがオーバーチューブに配置されて、オーバーチューブの長手方向寸法に対して概ね横方向においてオーバーチューブの外壁に適用される力の表示をもたらす。
【0011】
本開示の特徴は、添付の図面と共に判読されるときに、以下の詳細な記述から最良に理解される。業界内の標準的な慣行に従って、様々な構成を原寸通りに描いていないことを強調する。実際には、様々な構成の寸法は、議論の明瞭性のために、任意に増大され或いは減少されることがある。加えて、本開示は、様々な実施例において参照番号及び/又は文字を繰り返すことがある。この繰返しは単純性及び明瞭性の目的のためであり、それ自体は議論する様々な実施態様及び/又は構成の間の関係を決定しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】患者の体壁を通じて延びる1つ又はそれよりも多くの器具のための導管として作用する既知のカニューレを示す例示的な側断面図である。
【
図2】カニューレ内に挿入される器具に加えられる特定の力及び患者の体壁に加えられる結果としての力を表す例示的な図である。
【
図3A】幾つかの実施態様に従った第1のカニューレの例示的な側面図である。
【
図3B】幾つかの実施態様に従った
図3Aの第1のカニューレの断面図である。
【
図4】幾つかの実施態様に従った第2のカニューレの例示的な側面図である。
【
図5】幾つかの実施態様に従った6自由度センサの斜視図である。
【
図6A】幾つかの実施態様に従った内側チューブと衝突するように配置される器具を示す第1のカニューレの例示的な断面図である。
【
図6B】幾つかの実施態様に従った内側チューブに梃子の力を付与するように配置される器具を示す第1のカニューレの例示的な断面図である。
【
図6C1】幾つかの実施態様に従った4つの代替的なセンサ配置を備えるオーバーチューブの部分の縦断面図を示す例示的な図である。
【
図6C2】幾つかの実施態様に従った4つの代替的なセンサ配置を備えるオーバーチューブの部分の縦断面図を示す例示的な図である。
【
図6C3】幾つかの実施態様に従った4つの代替的なセンサ配置を備えるオーバーチューブの部分の縦断面図を示す例示的な図である。
【
図6C4】幾つかの実施態様に従った4つの代替的なセンサ配置を備えるオーバーチューブの部分の縦断面図を示す例示的な図である。
【
図7】その長手方向寸法を変更する軸方向の力に晒される物体を表す例示的な図である。
【
図8】長手構造の長手軸に対して横方向の力に晒される長手構造の両側に取り付けられるひずみ計の実施例を示す例示的な図である。
【
図9】幾つかの実施態様に従ったロゼット状の構成において配置されるひずみ計を示す例示的な図である。
【
図10】幾つかの実施態様に従った第2のカニューレの例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の記述は、当業者が器具―カニューレ衝突に起因する力から隔離されるセンサを備えるカニューレを創り且つ使用することを可能にするために提示される。実施態様に対する様々な変更が当業者に直ちに明らかであり、ここにおいて定められる一般的な原理は、発明的な主題の精神及び範囲から逸脱せずに、他の実施態様及び用途に適用されてよい。その上、以下の記述では、数多くの詳細が、説明の目的のために示されている。しかしながら、当業者は発明的な主題がこれらの具体的な詳細がなくても実施されることがあることを認識するであろう。異なる図面中の同じ品目の異なる図を提示するために、同一の参照番号が用いられることがある。よって、発明的な主題は、図示の実施態様に限定されることを意図せず、ここに開示される原理及び構成と一致する最広義の範囲が付与されるべきである。
【0014】
図2は、カニューレ内に挿入される器具に対して加えられる特定の力及び患者の体壁に対する結果として得られる力を表す例示的な図面である。腹腔鏡手術及び遠隔手術の両方の間、カニューレ及びカニューレに挿入される器具の挿入及び動作は、患者の腹部の体壁に対して加えられる力をもたらす。カニューレ及びカニューレ内に挿入される器具は、例えば、図示するy軸と概ね平行に延びる、長手軸を有する。外科医は、腹腔鏡手術又は遠隔手術の間に、患者の体の外側に配置される器具の近位端に、カニューレ及び器具の長手軸に対して概ね垂直な力成分を有する横方向の力を付与することがある。器具に対する外科医の力は、カニューレに付与される。反応して、体腔の内側で、器具の遠位端によって接触される、内部身体組織は、患者の体の内側に配置される器具の遠位端に、カニューレ及び器具の長手軸に対して概ね垂直に向けられる力成分を有する横方向の力を加えることがある。器具に対する内部身体組織の力は、カニューレに付与される。外科医が付与する力の部位と組織が付与する力の部位との間に配置される体壁は、カニューレの垂直軸に対して概ね垂直に向けられる力成分を有する外科医の力及び組織の力の組み合わせに応答して、横方向の反力を加える。より具体的には、カニューレ内に挿入される器具の操作に応答して創り出される力は、患者の体壁が梃子の支点に配置される、梃子作用を創り出す。梃子作用と関連付けられるこれらの力は、組織外傷を引き起こし得る応力を体壁組織に対して加える。
【0015】
図3Aは、幾つかの実施態様に従った第1のカニューレ302の例示的な側面図である。
図3Bは、幾つかの実施態様に従った
図3Aの第1のカニューレ302の断面図である。第1のカニューレ302は、ヘッド部分304と、細長い部分306とを含み、細長い部分306は、同軸の細長い内側チューブ308と、細長いオーバーチューブ310(overtube)とを含む。細長い内側チューブ308と細長いオーバーチューブ310とを含む細長い部分306は、概ね円筒形の輪郭である。細長い部分306は、ヘッド部分304から垂れ下がっている。より具体的には、内側チューブ308及びオーバーチューブ310は、ヘッド部分304に剛的に締結される(即ち、溶接され或いはその他の方法において機械的に接続される)。幾つかの実施態様において、内側チューブ308及びオーバーチューブ310は、ヘッド部分304と一体的に形成される。
【0016】
内側チューブ308は、(1つのみを示している)1つ又はそれよりも多くの手術器具312を受け入れるような大きさとされる細長い内側導管を定める、内壁を含む。オーバーチューブ310は、内側チューブ308の少なくとも部分を取り囲み、体壁からの荷重の全てがオーバーチューブに付与されて、内側チューブに付与されないよう、体壁と接触するようになるほど十分に遠位に延びる。内側チューブ308は、オーバーチューブ310よりも長く、従って、オーバーチューブ310の遠位端を越えて遠位に延びる。オーバーチューブの遠位端を越えて延びる内側チューブ308は、通常の手術中に器具がオーバーチューブと直接的に接触するようにならないことを保証する。第1のカニューレは、患者の体壁314を通じて延びる細長い部分306で示されている。内側チューブ308は、1つ又はそれよりも多くの手術器具を受け入れるような大きさにされる横方向寸法を有し、患者の体内に外科アクセスをもたらすよう、遠位端に遠位開口を定める。以下に説明する
図6A-6Bにおいて明らかに提示するように、オーバーチューブ310は、内側チューブ308と同軸に整列させられ、通常の手術中に内側チューブ308と接触しないよう、内側チューブ308から横方向に離間させられる。より具体的には、
図6A-6Bにより明らかに示すように、内側チューブ及びオーバーチューブが通常の手術中に接触するようにならないよう、内側チューブ外径は、オーバーチューブ内径よりも十分に小さい。オーバーチューブ310壁と接触して配置されるセンサデバイス311が、体壁314によってオーバーチューブ310に付与される力の表示をもたらすように構成される。
【0017】
典型的な外科処置の間に、第1のカニューレ302のヘッド部分304は、患者の体腔の外側に配置され、内側チューブ308の部分とオーバーチューブ310の部分とを含む細長い部分306の少なくとも部分は、体壁314を通じて患者の体腔の内部に延びる。細長い部分306は、例えば、図示するようにy軸と概ね平行な、長手軸を有する。1つ又はそれよりも多くの手術器具は、ヘッド部分304を通じて挿入可能であり、内側チューブ308の開放遠位端から患者の体の内部に突出するよう、内側チューブ308によって定められる器具受入れ導管を通じる中心軸と概ね平行に延び得る。
【0018】
幾つかの実施態様において、ヘッド部分304及び内側チューブ308は、1つ又はそれよりも多くの器具を挿入してよい器具受入れ導管を定める、一体的な構造を含む。ヘッド部分304は、導管への近位開口316を定める。近位開口316は、器具の挿入及び除去における容易さをもたらすよう拡大され、ヘッド部分内の導管壁は、器具を内側チューブによって定められる導管のより狭い直径の細長い部分に案内するガイド面をもたらすよう、傾斜させられる。幾つかの実施態様において、ヘッド部分304は、外科処置中に体腔に通気するために内側チューブを通じて1つ又はそれよりも多くのガスを導入するガス導管(図示せず)も含む。幾つかの実施態様において、ヘッド部分304は、外科処置中の通気の間に、ガスが体腔から漏れ出るのを防止するためのシール(図示せず)も含む。腹腔鏡手術の間の使用のために適合される幾つかの実施態様において、ヘッド部分304は、例えば、本発明の部分を形成しないトロカール(図示せず)の挿入又は閉塞子(図示せず)の取出しの間に、外科医によって保持されるような大きさ及び形状とされる。
【0019】
オーバーチューブ310は、それが、例えば、典型的な外科処置中に、概ねx軸又はz軸において付与される力を含む、患者の体壁314によってその長手軸に対して概ね横方向に付与される力に応答して、その長手方向に沿う1つ又はそれよりも多くの場所で撓み(deflect)得るような、剛性を有する。その上、オーバーチューブ310の剛性及び内側チューブ308からのその横方向間隔は、オーバーチューブが典型的な外科処置中に患者の体壁314に付与される力に応答してその長手中心軸に対して撓むときに、オーバーチューブの内壁及び内側チューブの外壁が物理的に互いに接触しないような、剛性及び横方向間隔である。幾つかの実施態様において、オーバーチューブと内側チューブとの間の間隔は、間隙307を含み、間隙307は、間隙607として
図6A-6Bにより明らかに表されており、間隙307は、患者の体内に細長い部分306を挿入するために必要とされる外科切開部の大きさを有意に増大させないよう、カニューレ302の細長い部分306の全体的な直径を有意に増大させないのに十分な程に狭い。
【0020】
通常の手術中、内側チューブとオーバーチューブとの間に定められる(
図6A-6Bを参照してより十分に以下に記載され且つ例示される)間隙領域307は、例えば、外科処置の過程における内側チューブとの器具接触の故に内側チューブ308に付与されることがある撓みから、オーバーチューブ310を隔離する。そのような器具接触は、外科処置中の外科医の又は遠隔操作ロボットの器具の操作に起因して内側チューブの内壁を叩く器具を含んでよい。従って、オーバーチューブ310と接触する(以下により十分に記載する)センサデバイスは、器具と内側チューブ308との間の衝突の故に付与される撓み力の影響から隔離される。よって、幾つかの実施態様に従ったカニューレは、オーバーチューブに付与される体壁荷重から内側チューブの内壁との器具衝突によって付与される力の不明確さを取り除く(disambiguate)。
【0021】
図4は、幾つかの実施態様に従った第2のカニューレ402の例示的な側面図である。第1のカニューレ302の構成と実質的に同じ第2のカニューレの構成が、
図3A-3B中の対応する構成を特定するために用いられる参照番号によって特定されており、更に議論されない。第2のカニューレ402は、6自由度(6-dof)センサデバイス403を含む。幾つかの実施態様において、6-dofセンサ403は、スチュワートプラットフォーム(Stewart platform)に基づく力/トルクセンサを含む。第2のカニューレ402は、ヘッド部分404と、同軸に整列させられる細長い内側チューブ408と、細長いオーバーチューブ410とを含む。内側チューブ408は、(1つだけが示されている)1つ又はそれよりも多くの手術器具412を受け入れるような大きさとされる。第2のカニューレ402のオーバーチューブ410は、第1のオーバーチューブ部分410-1と、第2のオーバーチューブ部分410-2とを含み、6-dofセンサ403は、第1及び第2のオーバーチューブ部分の間に配置される。
【0022】
図5は、幾つかの実施態様に従った6自由度センサ403の斜視図である。6-dof力/センサは、器具(図示せず)及び内側チューブ408が延び得る中央開口424を定める環状形状を有する。幾つかの実施態様において、6-dofセンサは、力を検知するシリコンひずみ計を含む。
図4を再び参照すると、第1のオーバーチューブ部分410-1は、第2のカニューレ402のヘッド部分304から剛的に垂れ下がる。第1のオーバーチューブ部分410-1は、6-dofセンサ403の近位表面領域430と動作的に接触するような大きさとされる第1の環状フランジ428-1を定める遠位端を含む。第2のオーバーチューブ部分410-2は、6-dofセンサ403の遠位表面領域426と動作的に接触するような大きさとされる第2の環状フランジ428-2を定める近位端を含む。取付け締結具(例えば、ネジ)429も見える。
【0023】
図6Aは、幾つかの実施態様に従った器具622と内側チューブ604との間の例示的な衝突を表す第1のカニューレ600の例示的な断面図である。第1のカニューレ600は、ヘッド部分602と、細長い部分603とを含む。ヘッド部分602は、外科処置中に内側チューブ604の内側及び内側チューブを介して患者の体腔の内側に通気ガスを導入し得る、通気導管640を定める。細長い部分603は、同軸内側チューブ604とオーバーチューブ606とを含み、それはヘッド部分602から垂れ下がる。内側チューブは、器具受入れ導管と外壁619とを定める内壁605を含む。間隙607は、内側チューブの外壁619とオーバーチューブの内壁616とによって定められる。内側チューブ604の内壁605及びヘッド部分602は、共に、器具受入れ導管608を定める。ヘッド部分602は、導管608に対する近位開口610を定める。内側チューブ604の遠位端は、患者の体腔に近接して導管608に対する遠位開口612を定める。ひずみセンサ614が、オーバーチューブ604の内壁616及び/又はオーバーチューブ604の外壁618と接触するように配置され、オーバーチューブに付与されるひずみを測定するように構成される。
【0024】
図6C1-6C4の例示的な図面を参照すると、幾つかの実施態様に従った4つの代替的なセンサ配置構成を備えるオーバーチューブ606の部分の縦断面図が示されている。
図6C1は、オーバーチューブ606の外壁618上の例示的な第1のセンサ配置を示している。外壁618の1つの側面に、センサ614があり、センサ614から反対側の外壁618上で180度離れて、相補的なセンサ614がある。
図6C2は、オーバーチューブ606の内壁上の例示的なセンサ配置を示している。内壁616の1つの側面には、センサ614があり、内壁616の反対側の面する部分には、相補的なセンサ614がある。
図6C3は、オーバーチューブ606の内壁616及び外壁の両方での例示的な第3のセンサ配置を示している。内壁616には、センサ614があり、そのセンサ614の正反対の外壁618の部分には、相補的なセンサ614がある。
図6C4は、
図6C3のセンサ配置のような冗長センサ配置を備える例示的な第4のセンサ配置を示している。
【0025】
図6Aを再び参照すると、外科処置の遂行中、第1のカニューレ600は患者の体壁620を通じて延び、器具622が導管608内に延びて、患者の体腔の内側に達する。器具622は、外科処置を行うときの使用のためのエンドエフェクタ624を含んでよい。外科医のような操作者626又は遠隔操作手術システムは、器具が導管608内に延びて患者の体内に至る間に器具622を操作する。
【0026】
処置中、操作者626によって器具622の上に付与される力操作者及び/又は患者組織によって器具622の上に付与される力組織は、器具を内側チューブ604の内壁605と衝突させ、それは内側チューブ604の内壁605の上に力器具を付与する。しかしながら、器具衝突力は、オーバーチューブ606に付与されない。何故ならば、それは間隙607によって内側チューブ604から隔離されているからである。よって、オーバーチューブ606におけるひずみを検知するように構成されるセンサ614は、器具622と内側チューブ604との間の衝突に起因して付与される力F器具からの撓みを検出しない。
【0027】
内側チューブ604の内壁605の上の力F器具は、オーバーチューブ6060を通じて患者の体壁に荷重を付与することが理解されるであろう。しかしながら、内側チューブ604とオーバーチューブ606との間の間隙607は、オーバーチューブ606を、内側チューブ604と器具622との間の衝突に起因して被る撓みから隔離する。よって、オーバーチューブ606に付与される撓みは、患者の体壁力に由来し、それは内側チューブ604の内壁605の上の力F器具に応答することがあるが、そのような撓みは、器具622とオーバーチューブ606との間の衝突の故に付与されない。何故ならば、そのような衝突はないからである。
【0028】
オーバーチューブ606は、その長手軸に対して概ね垂直な方向において、例えば、x軸又はz軸において、患者の体壁620によって付与されるが、カニューレと体壁との間の角度、例えば、θが90度でないときに、y軸における成分力を有する、横方向の力に応答して、その長手軸に対して撓み得るような、剛性(stiffness)を有する。加えて、オーバーチューブ606は、それが、例えば、y軸方向において、非横方向の体壁力に応答して、その長手軸に沿って縮み或いは伸張し得るような、圧縮力を有する。
【0029】
より具体的には、幾つかの実施態様において、オーバーチューブ剛性は、応力、即ち、既知のヤング率に対する予測可能な線形のひずみ応答を有する。より具体的には、幾つかの実施態様において、オーバーチューブの剛性は、典型的な約0~30ニュートンの体壁荷重の下でチューブが撓み且つ恒久的に変形しない程に大きい。より一層具体的には、幾つかの実施態様において、オーバーチューブの剛性は、約0~50ニュートンの荷重の下でチューブが撓み且つ恒久的に変形しない程に大きい。幾つかの実施態様では、約0.005~0.050の壁厚を備える、好ましくは、約0.012~0.030の壁厚範囲を備え、約0.25~1インチの、好ましくは、約0.4~0.6インチの範囲の外径を備える、ステンレス鋼オーバーチューブが、体壁からの通常の荷重の下で撓むが恒久的に変形しない、受け入れ可能な剛性を有する。好ましくは、幾つかの実施態様において、オーバーチューブと内側チューブとの間の間隔は、オーバーチューブが撓むときに、オーバーチューブの内径(ID)が内側チューブの外径(OD)と接触しないよう、十分に大きいが、オーバーチューブの外径が最小侵襲的な手術における典型的なカニューレ直径を提示するように、十分に小さくなければならない。幾つかの実施態様において、オーバーチューブIDと内側チューブODとの間の、
図6Aの間隔607は、約0.007~0.1インチであり、好ましくは、約0.015~0.035インチの範囲である。
【0030】
図6Bは、幾つかの実施態様に従った、内側チューブ604に梃子の力を付与するように配置される器具622を示す、第1のカニューレ600の例示的な断面図である。
図6A及び
図6Bは、内側チューブ内の器具の配置及び付与される力を除き同じであることが理解されるであろう。操作者が力F
操作者を付与し、組織が組織F
組織を付与すると想定すると、それらは、器具622を、内側チューブ604の近位端に隣接する内側チューブ604の内壁605に対して、
図6Bにおける左に押し、器具622を、内側チューブ604の遠位端に隣接する内側チューブ604の内壁605に対して、
図6Bにおける右に押す。これらの条件の下で、例えば、第1のカニューレ600は、体壁620の場所の周りで、破線630によって概ね示される場所に支点を有する梃子として作用する。
【0031】
これらの条件の下で、体壁力F体壁が、患者の体壁620に付与される。例えば、体壁力は、例えば、オーバーチューブ606の遠位端が、図面における概ね右の方向において力を付与し、オーバーチューブ606の近位端が、図面における概ね左の方向において力を付与する、トルク又は力であり得る。x軸及び/又はz軸についてのオーバーチューブ606に対するトルクの力は、例えば、体壁620の場所の周りで中心化される。幾つかの実施態様において、体壁力F体壁は、オーバーチューブ606に付与され、オーバーチューブ606は、体壁力に応答して撓むことがある。センサ614は、力又はトルクに起因するオーバーチューブにおけるひずみを検出して、ひずみの測定値を提供し得る。
【0032】
センサデバイス614は、オーバーチューブ606の撓みを測定するために、オーバーチューブ606と物理的に接触して配置される。センサデバイスは、オーバーチューブの内壁618と接触して、オーバーチューブの内壁616と接触して、或いはそれらの両方と接触して配置させられ得る。幾つかの実施態様において、センサデバイス614は、ひずみ計として作用するように構成される。ひずみは、適用される力に起因する体の変形の量の測定値である。より具体的には、ひずみは、長さの部分的な変化として定められ得る。
【0033】
図7は、その長さ寸法を変更する軸方向の力に晒される物体702を表す例示的な図面である。力がないときの物体の長さは、Lである。力に応答する物体の長さの変化は、ΔLである。
【0034】
ひずみをε=ΔL/Lとして定め得る。
【0035】
図8は、治具806から水平方向に垂れ下がり且つ構造804の長手軸(L)に対して横方向の力に晒される長手構造804の両側に取り付けられる、第1及び第2のひずみ計802-1,802-2の実施例を示す、例示的な図面である。構造804の長手軸に対して横方向に付与される例示的な概ね下向きの一軸力が、伸張において力が付与される、構造のある側面に取り付けられる、静止長さL
1を有する第1のひずみ計802-1を変位させ、第1のひずみ計802-1の長さ寸法をL
1+ΔL
1に増大させる。結果的に、構造804の長手軸に対して横方向に付与される下向きの一軸力は、圧縮において力が付与される、それとは反対の構造804の側面に取り付けられる、静止長さL
1を有する第2のひずみ計802-2を変位させ、第2のひずみ計802-2の長さ寸法をL
1-ΔL
2に減少させる。幾つかの実施態様によれば、ひずみ計は、オーバーチューブ606の内壁616及び外壁618に取り付けられ、適用される力を多数の方向において測定するために様々な構成においてオーバーチューブの周りに離間させられてよい。
【0036】
図6Bを参照して上で説明したように、体壁からのモーメントは、荷重を受ける部材の長さにおける様々な地点に沿う同時の伸張及び圧縮を含む複雑なチューブ撓みを生む。幾つかの実施態様において、そのようなモーメントは、互い違い構成のひずみ計が用いられるときに計算され得る。何故ならば、ひずみ計は、オーバーチューブの表面の内壁及び外壁に沿う既知の地点で伸張及び圧縮の両方を受けているからである。
【0037】
図9は、幾つかの実施態様に従ったロゼット状の構成に配置されたひずみ計902を示す例示的な図面である。ひずみ計は、当業者に周知である。幾つかの実施態様において、ひずみ計は、格子パターンに配列される極めて精細な金属ワイヤ、フォイル(箔)、ファイバ等を含む、格子パターン904を含むことがある。格子904は、ひずみを測定する品目に直接的に取り付けられる、一般的にキャリアと呼ばれる、薄い裏当て(図示せず)に結合される。そのような品目が受けるひずみは、ひずみ計に直接的に伝えられ、それは電気抵抗において既知の、例えば、線形の変化で応答する。ロゼット状(rosette-like)の構成では、多数のひずみ計が、ロゼット状の配列において互いに対して既知の角度(例えば、α、β、γ)に位置付けられて、長手ひずみを平面ひずみの3つの独立的な成分に変換する。幾つかの実施態様によれば、ロゼット構造に配置されるセンサのグループをオーバーチューブ606の内壁616及び外壁618に沿って互い違いにさせて、x軸及びz軸についてのモーメントを測定し得る。
【0038】
図10は、幾つかの実施態様に従った第2のカニューレ1000の例示的な断面図である。第2のカニューレ1000は、環状の6-dofセンサ632を含む。オーバーチューブ606は、6-dofセンサ632の近位表面領域640と動作的に接触するような大きさとされる第1の環状フランジ638を含む、第1のオーバーチューブ部分636を含む。オーバーチューブ606は、6-dofセンサ632の遠位表面領域646と動作的に接触するような大きさとされる第2の環状フランジ644を定める近位端を有する、第2のオーバーチューブ部分642を含む。よって、第2のオーバーチューブ部分642は、6-dofセンサ632から懸架される。他の特徴において
図6A-6B及び
図10の第1及び第2のカニューレは実質的に同じであることが理解されるであろう。
【0039】
本発明に従った実施態様の前述の記述及び図面は、本発明の原理の例示であるに過ぎない。従って、当業者は、付属の請求項において定められる本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、様々な変形を実施態様に行い得ることが理解されるであろう。