(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】感熱フィルム
(51)【国際特許分類】
B41M 5/42 20060101AFI20220511BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20220511BHJP
B41M 5/41 20060101ALI20220511BHJP
B41M 5/40 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B41M5/42 221
B41M5/44 210
B41M5/41 200
B41M5/40 210
(21)【出願番号】P 2020203098
(22)【出願日】2020-12-08
(62)【分割の表示】P 2016103697の分割
【原出願日】2016-05-24
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】古澤 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 信一
【審査官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-118233(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012386(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/072410(WO,A1)
【文献】特開2016-074480(JP,A)
【文献】特開平10-006652(JP,A)
【文献】特開2010-023252(JP,A)
【文献】特開2005-088557(JP,A)
【文献】特開2005-289401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28 - 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材の少なくとも一方の表面に部分的に設けた感熱層と保護層とを備え、サーマルヘッドにより前記感熱層を発色させるか又は発色させた感熱フィルムであって、
前記保護層を、前記基材の前記感熱層を設けた側の表面上に、前記感熱層の全面を被覆した状態で、前記感熱フィルムと前記サーマルヘッドとの接触範囲に設け、
さらに、前記感熱層と前記保護層との間に中間層を備え、前記中間層にコア-シェル構造の樹脂を含
み、
前記基材が透明の合成樹脂フィルムであり、前記保護層が粒子径1.0μm以下のコロイダルシリカを含む
感熱フィルム。
【請求項2】
前記感熱層を複数備えた、
請求項1に記載の感熱フィルム。
【請求項3】
前記基材が帯状体であり、
前記保護層を、前記基材の長さ方向に連続して設けた、
請求項1又は2に記載の感熱フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱フィルムに関し、更に詳しくは、サーマルヘッドの摩耗を抑制できる感熱フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
感熱フィルムは、サーマルヘッド等の加熱によって感熱発色組成物が化学反応により発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベルなどとして広範な用途に使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
周囲を囲繞する空白部分を残した状態で感熱記録材層を基材シート上に部分的に形成した感熱記録シートにおいて、化学物質への耐久性を付与する目的で、感熱記録材層直上部全面及び空白部分の少なくとも感熱記録材層形成部近傍の周縁部を被覆するようにして基材シート上に透明保護層を形成した感熱記録シートが開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、サーマルヘッドの観点からの保護層形成については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-362027号公報
【文献】特開2005-88557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記サーマルヘッドは、複数の発熱抵抗体を一列に配置することにより、選択的に発熱させることができる構造を有している。感熱フィルムに接触して断線することを防止するため、この複数の発熱抵抗体は、ヘッド保護層に覆われている。発熱抵抗体による加熱効率を上げるため、通常このヘッド保護層は非常に薄く形成されている。そのため、印字時に感熱フィルムと接触することによるヘッド保護層の摩耗は避けることができず、感熱フィルムとの接触によるヘッド保護層の摩耗が、サーマルヘッドの寿命に大きな影響を与えている。
特に、感熱フィルムのブロッキング防止のため、感熱フィルムの基材にブロッキング防止材としてシリカ等が配合されている場合には、感熱フィルムとの接触によるヘッド保護層の摩耗が顕著であり、サーマルヘッドの寿命がきわめて短くなるという問題があった。
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、サーマルヘッドのヘッド保護層の摩耗が抑制された感熱フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0007】
本発明の感熱フィルムは、基材と上記基材の少なくとも一方の表面に部分的に設けた感熱層と保護層とを備え、サーマルヘッドにより上記感熱層を発色させるか又は発色させた感熱フィルムであって、上記保護層を、上記基材の上記感熱層を設けた側の表面上に、上記感熱層の全面を被覆した状態で、上記感熱フィルムと上記サーマルヘッドとの接触範囲に設けている。
【0008】
また、本発明の感熱フィルムは、上記感熱層を複数備えていることが好ましい。
さらに、本発明の感熱フィルムは、上記基材が帯状体であり、上記保護層を、上記基材の長さ方向に連続して設けていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サーマルヘッドの摩耗を抑制できる感熱フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の感熱フィルムの概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の感熱フィルムを上から見た図である。
【
図3】本発明の一実施形態の感熱フィルムにサーマルヘッドが接触した状態を表す概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の感熱フィルムにおける、感熱フィルムとサーマルヘッドとの接触範囲を示す図である。
【
図5】本発明の他の一実施形態の感熱フィルムの概略断面図である。
【
図6】本発明の他の一実施形態の感熱フィルムを上から見た図である。
【
図7】本発明の他の一実施形態の感熱フィルムにおける、感熱フィルムとサーマルヘッドとの接触範囲を示す図である。
【
図8】本発明の別の一実施形態の感熱フィルムを上から見た図である。
【
図9】本発明の別の一実施形態の感熱フィルムにおける、感熱フィルムとサーマルヘッドとの接触範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の感熱フィルムは、基材と上記基材の少なくとも一方の表面に部分的に設けた感熱層と保護層とを備え、サーマルヘッドにより上記感熱層を発色させるか又は発色させた感熱フィルムであって、上記保護層を、上記基材の上記感熱層を設けた側の表面上に、上記感熱層の全面を被覆した状態で、上記感熱フィルムと上記サーマルヘッドとの接触範囲に設けている。
【0012】
感熱層は、基材の少なくとも一方の表面に部分的に設けられているが、ここで、「部分的に」とは、基材の少なくとも一方の表面を、感熱層が100%(全て)被覆していない状態をいう。
【0013】
また、「感熱フィルムとサーマルヘッドとの接触範囲」とは、感熱フィルムをサーマルヘッドからの熱により発色させる工程において、感熱フィルムが既にサーマルヘッドと接触した範囲と、将来的にサーマルヘッドと接触する範囲とを含む。
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1に、本発明の一実施形態の感熱フィルム1の概略断面図を示す。感熱フィルム1は、フィルム状の基材2上に、加熱によって発色する感熱発色組成物を含む感熱層3、及び保護層4が積層された構造となっている。感熱層3は、
図1に示すように、基材2の幅よりも狭い幅で、基材2上に部分的に形成されている。保護層4は、感熱層3を覆い、さらに基材2上の感熱層3の形成されていない部分の上であって、少なくとも、
図1中に示したサーマルヘッド接触幅Lで形成されている。保護層4の幅は、上記L以上であることが好ましい。
【0016】
図2でさらに説明すると、感熱フィルム1では、基材2上に、基材2の長さ方向に連続して1つの感熱層3が、基材2の幅よりも狭い幅で、基材2の長手方向に連続して形成されている。保護層4は、基材2上に、サーマルヘッド接触幅L以上の幅をもって、基材2の長さ方向に連続して形成されており、感熱層3を全て被覆し、さらに感熱層3の無い部分の基材2上に直接形成されている。
【0017】
図2中に示す、サーマルヘッド接触幅Lの両端部から、保護層4の幅方向の両端部までの幅L
1、L
2は、それぞれ独立して、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。L
1、L
2の上限は、例えば15mm程度である。なお、本明細書において、基材の長手方向を「長さ方向」、基材上で該長手方向に垂直な方向を「幅方向」と称する。
【0018】
図3に示すように、感熱フィルム1の印字工程では、サーマルヘッド5が保護層4に接触する。そして、サーマルヘッド5は、感熱フィルム1が紙面後方から手前側に向けて長さ方向に移動するのに伴い、サーマルヘッド接触幅Lで保護層4に接触し続け、これにより感熱層を発色させる。サーマルヘッド接触幅Lは、サーマルヘッド5の幅である。
【0019】
上述の様に、サーマルヘッド5が保護層4に接触した状態で、感熱フィルム1が
図4中の矢印で示す方向に、移動する。従って、感熱フィルム1とサーマルヘッド5は、サーマルヘッド接触幅Lで、基材2の長さ方向に連続した範囲で接触する。感熱フィルム1とサーマルヘッド5との接触範囲は、
図4に参照符号6で示した範囲である。
【0020】
基材2としては、透明の合成樹脂フィルム、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを用いることができる。基材は、二枚以上を積層して、複合基材として使用してもよい。これらのフィルムを使用することにより、より高い透明性を有する感熱フィルムを製造できる。
【0021】
かかるフィルムの厚さは特に限定されないが、例えば、10μm~100μm程度が塗工性及び透明性に優れ、より好ましい。これらのフィルムは、タック性を有している場合がある。この場合、しわや搬送エラーを防止するために、ブロッキング剤を練り込んで形成してもよい。ブロッキング剤としては、微粒シリカの粉末等が使用できる。
【0022】
また、基材2としては、透明性が不要であれば、紙やパルプなどを用いても良い。
【0023】
ブロッキング剤を添加した基材2や、基材2として用いた紙やパルプは、表面に凹凸を有しており、これらがサーマルヘッド5に直接接すると、サーマルヘッド5の摩耗の原因となる。
【0024】
感熱層3を形成する材料は、染料と顕色剤とを含む感熱発色組成物を含む。染料は、加熱により発色する発色剤が好ましい。感熱発色組成物は、他に、充填剤、結着剤、及び滑剤などを含んでいてもよい。
【0025】
上記染料としては、具体的には、発色剤であるロイコ染料として、例えば、2-アニリン-3メチル-6-(N-メチル-P-トルイジノ)フルオランなどを挙げることができる。上記染料の含有量は、感熱発色組成物中、10~20質量%が好ましく、15~18質量%がより好ましい。
【0026】
上記顕色剤としては、例えば、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンなどを挙げることができる。上記顕色剤の含有量は、感熱発色組成物中、20~45質量%が好ましく、30~40質量%がより好ましい。
【0027】
上記の充填剤としては、例えば、カオリン、炭酸カルシウムなどを挙げることができ、それらの粒子径は、1.0μm以下であるのが好ましい。
【0028】
上記の結着剤としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体などを挙げることができる。
【0029】
上記の滑剤としては、ポリエチレン、ステアリン酸亜鉛、パラフィンなどを挙げることができ、それらの粒子径は、0.5μm以下であるのが好ましい。
【0030】
透明性を向上させるためには、パラフィンを含有させるのが特に有効であり、このパラフィンは、感熱層3の発色温度未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは、50℃未満の低融点のパラフィンであるのが好ましい。
【0031】
この低融点のパラフィンの粒子径は、上記のように0.5μm以下であるのが好ましい。このパラフィンの含有量は、乾燥重量で、例えば、0.1~1.0g/m2であるのが好ましい。
【0032】
このように低融点のパラフィンを含有させることによって、感熱層形成用の塗液を、基材2上に塗布し、乾燥する際に、パラフィンが溶融し、感熱層3を構成する粒子の表面の凹凸等の隙間に入り込んで、隙間を埋めることになり、これによって、粒子表面の乱反射を抑制して透明性をより向上させることができる。
【0033】
基材2上に感熱層3を形成したフィルムは、タック性を有している場合がある。この場合、しわや搬送エラーを防止するために、上記ブロッキング剤を表面に添加してもよい。
【0034】
感熱層3が充填剤として、カオリン、炭酸カルシウムなどを含有している場合や、基材2上に感熱層3を形成したフィルム表面にブロッキング剤を添加した場合は、表面に凹凸を有しており、これらがサーマルヘッド5に直接接すると、サーマルヘッド5が摩耗しやすくなる。
【0035】
保護層4は、上記基材2や感熱層3の表面の凹凸や硬度の高い材料を保護してサーマルヘッド5との摩擦を抑制し、サーマルヘッド5の摩耗を抑制する。また、好ましくは、サーマルヘッド5に対する感熱フィルム1のマッチング性を向上させて、感熱層3の発色が順調に行われるようにする。保護層4としては、結着剤中に充填剤、滑剤、架橋剤などを添加したものが用いられる。
【0036】
結着剤である樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、などが挙げられる。
【0037】
滑剤としては、例えば、ポリエチレン、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0038】
架橋剤としては、例えば、炭酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0039】
充填剤としては、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。
【0040】
これら充填剤の粒子径は、1.0μm以下であるのが好ましい。
【0041】
透明性をより向上させるためには、充填剤として、粒子径の小さいコロイダルシリカが好ましい。
【0042】
以上のような材料によって形成される感熱層3、及び保護層4の厚み、すなわち、基材2を除いたフィルム状の感熱フィルム1の厚みは、特に限定されないが、1.0μm以上の厚みにおいて、当該感熱フィルム1の不透明度が、10%以下であることが好ましい。この不透明度は、紙の不透明度の測定規格であるJISP8138に基づくものである。
【0043】
感熱フィルム1において、感熱層3と保護層4との間に、水や油に対するバリアー性を有する中間層を設けてもよい。
【0044】
中間層は、主に、樹脂によって形成されている。この中間層の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂のエマルション、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂等の水溶性樹脂、SBR樹脂などが挙げられる。
【0045】
透明性を向上させるためには、上記樹脂は、水溶性部分を有する樹脂、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)樹脂、あるいは、疎水性のコア粒子を、水溶性のシェルポリマーでコーティングしたコア-シェル構造の樹脂、例えば、コア-シェル型アクリル樹脂などが好ましい。
【0046】
水溶性のポリビニルアルコール(PVA)やコア-シェル型のアクリル樹脂は、成膜性が良好であり、感熱層3上に、中間層形成用の塗液を塗布して乾燥する際に、水溶性部分を有する樹脂が、感熱層3へ染み込んで平滑な中間層が形成されるので、感熱層3での乱反射が抑制されて透明性がより向上する。
【0047】
コア-シェル型の樹脂は、従来公知であり、例えば、コア-シェル型アクリル樹脂として、バリアスター(三井化学社製)の名称で市販されているものなどを挙げることができる。
【0048】
実施形態の感熱フィルム1の製造方法では、感熱層形成工程において、上記基材2上に、上記感熱層形成用塗料を部分的に塗布して、上記感熱層3を形成する。続いて、保護層形成工程において、上記感熱層3上ならびに上記感熱層3が形成されていない基材2上に、保護層形成用塗料を塗布して保護層4を形成する。
【0049】
感熱層3上に中間層を設ける場合には、上記感熱層形成工程において形成した感熱層3上に、中間層形成用の塗液を塗布して乾燥して中間層を形成した後、保護層形成工程において、中間層上及び上記感熱層3ならびに中間層が形成されていない基材2上に、保護層形成用塗料を塗布して保護層4を形成する。
【0050】
変形例1
図5に、本発明の他の一実施形態の感熱フィルム10の概略断面図を示す。感熱フィルム10は、フィルム状の基材12上に、加熱によって発色する感熱発色組成物を含む2つの感熱層13、及び保護層14が積層された構造となっている。2つの感熱層13は、基材12上に部分的に形成されている。保護層14は、基材12上に、2つの感熱層13を被覆し、さらに感熱層13の無い部分の基材12上であって、
図5中に示したサーマルヘッド接触幅L以上の幅で形成されている。
【0051】
基材12、感熱層13、及び保護層14の材料ならびに膜厚は、上記基材2、感熱層3、及び保護層4と好ましい態様を同じとする。また、感熱層13、及び保護層14の間に中間層が形成されていてもよい。中間層の材料ならびに膜厚は、感熱フィルム1に好ましくは形成されていてもよい中間層と好ましい態様を同じとする。
【0052】
2つの感熱層13は、例えば、赤発色の感熱層と、黒発色の感熱層であってもよい。2つの感熱層13は、1つのサーマルヘッドで同時に発色できる。
【0053】
図6でさらに説明すると、感熱フィルム10では、基材12上に、基材12の長さ方向に連続して2つの感熱層13が、基材12上にそれぞれ部分的に形成されている。保護層14は、基材12上に、サーマルヘッド接触幅L以上の幅をもって、基材12の長さ方向に連続して形成されており、2つの感熱層13を被覆し、さらに感熱層13の無い部分の基材12上に直接形成されている。
【0054】
図6中に示す、サーマルヘッド接触幅Lの両端部から、保護層14の幅方向の両端部までの幅L
1、L
2は、それぞれ独立して、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。L
1、L
2の上限は、例えば15mm程度である。
【0055】
上述の様に、サーマルヘッドが保護層14に接触した状態で、感熱フィルム10が
図7中の矢印で示す方向に、移動する。従って、感熱フィルム10とサーマルヘッドは、サーマルヘッド接触幅Lで、基材12の長さ方向に連続した範囲で接触する。感熱フィルム10とサーマルヘッドとの接触範囲は、
図7に参照符号16で示した範囲である。
【0056】
変形例2
図8に示すように、感熱フィルム20では、基材22上に、複数の感熱層23が島状に部分的に形成されている。保護層24は、基材22上の全ての複数の感熱層23を覆い、さらに感熱層23の無い部分の基材22上においてもサーマルヘッドとの接触範囲の幅を保った状態で、基材22の長さ方向に連続して形成されており、複数の島状の感熱層23を被覆し、さらに感熱層23の無い部分の基材22上に直接形成されている。
【0057】
図8中に示す、サーマルヘッド接触幅Lの両端部から、保護層24の幅方向の両端部までの幅L
1、L
2は、それぞれ独立して、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。L
1、L
2の上限は、例えば15mm程度である。
【0058】
基材22、感熱層23、及び保護層24の材料ならびに膜厚は、上記基材2、感熱層3、及び保護層4と好ましい態様を同じとする。また、感熱層23、及び保護層24の間には中間層が形成されていてもよい。中間層の材料ならびに膜厚は、感熱フィルム1に好ましくは形成されていてもよい中間層と好ましい態様を同じとする。
【0059】
複数の島状の感熱層23は、例えば、それぞれ異なる色を発色する感熱層であってもよい。これらの感熱層23は、1つのサーマルヘッドで同時に発色できる。
【0060】
上述の様に、サーマルヘッドが保護層24に接触した状態で、感熱フィルム20が
図9中の矢印で示す方向に、移動する。従って、感熱フィルム20とサーマルヘッドは、サーマルヘッド接触幅Lで、基材22の長さ方向に連続した範囲で接触する。感熱フィルム20とサーマルヘッドとの接触範囲は、
図9に参照符号26で示した範囲である。
【実施例】
【0061】
次に、実施例に基づいて、本発明について、更に詳細に説明する。なお、以下において、部は質量部を意味する。
【0062】
実施例1
基材として、厚さ40μmのOPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルムを使用した。
【0063】
このOPPフィルムのJISP8138に基づく不透明度は、2.0%であった。
【0064】
不透明度は、東京電色製の反射率計「TC-6DS/A型」を使用して測定した。
【0065】
[感熱層の形成]
このOPPフィルム上に、加熱により発色する発色剤、顕色剤、充填剤、結着剤、及び滑剤などを含む感熱層形成用の塗液を、塗布量が、乾燥重量で4.0g/m
2となるように塗布・乾燥を行って感熱層を得た。感熱層は、上記
図1で示すように、基材の長さ方向に連続して、1つの感熱層を基材の幅よりも狭い幅で、基材上に部分的に形成した。
【0066】
[中間層の形成]
コア-シェル型アクリル樹脂で構成された中間層形成用の塗料を、上記感熱層上に、塗布量が、乾燥重量で2.0g/m2となるように塗布した後、乾燥を行って、感熱層上に中間層を形成した。
【0067】
[保護層の形成]
ポリエチレン11部、ステアリン酸亜鉛4部、アクリル46部、炭酸Zr6部、コロイダルシリカ43部からなる汎用の保護層形成用の塗料を、上記感熱層と中間層の上ならびに感熱層が形成されていない基材層上のサーマルヘッドとの接触範囲に、塗布量が、乾燥重量で4.0g/m2となるように塗布した後、乾燥を行って保護層を形成し、感熱フィルムを得た。
【0068】
上記感熱フィルムを、サーマルヘッドを有するサーマルプリンタにセットして、発色印字した。1つのサーマルヘッドで、100km長さの感熱フィルムの印字が可能であった。
【0069】
実施例2
変形例1に対応した実施例として、感熱層を、上記
図5、6に示すように、基材の長さ方向に連続して、2つの感熱層を基材の幅よりも狭い幅で、基材上に2ラインで部分的に形成した以外は実施例1と同様にして、感熱フィルムを得た。
【0070】
上記感熱フィルムを、サーマルヘッドを有するサーマルプリンタにセットして、発色印字した。1つのサーマルヘッドで、100km長さの感熱フィルムの印字が可能であった。
【0071】
実施例3
変形例2に対応した実施例として、感熱層を、上記
図8に示すように、島状に、基材上に部分的に形成した以外は実施例1と同様にして、感熱フィルムを得た。
【0072】
上記感熱フィルムを、サーマルヘッドを有するサーマルプリンタにセットして、発色印字した。1つのサーマルヘッドで、100km長さの感熱フィルムの印字が可能であった。
【0073】
比較例
保護層を感熱層と同じ幅で設けた以外は実施例1と同様にして、感熱フィルムを得た。
【0074】
上記感熱フィルムを、サーマルヘッドを有するサーマルプリンタにセットして、発色印字した。1km長さの感熱フィルムの印字をしたところで、サーマルヘッドが摩耗し、印字不能となった。
【0075】
上記実施例1~3と比較例が示すように、保護層を、基材の感熱層を設けた側の表面上に、感熱層の全面を被覆した状態で、感熱フィルムとサーマルヘッドとの接触範囲に設けることにより、サーマルヘッドの摩耗を抑制でき、数百kmの感熱フィルムを1つのサーマルヘッドで印字できた。
【符号の説明】
【0076】
1、10、20 感熱フィルム
2、12、22 基材
3、13、23 感熱層
4、14、24 保護層
5 サーマルヘッド
6、16、26 感熱フィルムとサーマルヘッドとの接触範囲