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  • 特許-掘進機及びその運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】掘進機及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/08 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
E21D9/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017215826
(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公開番号】P2019085795
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】林 茂郎
(72)【発明者】
【氏名】縁田 正美
(72)【発明者】
【氏名】樋口 昌典
(72)【発明者】
【氏名】安井 了一
(72)【発明者】
【氏名】小山 孝
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-132088(JP,A)
【文献】特開2002-339694(JP,A)
【文献】特開平03-107096(JP,A)
【文献】実開平02-097493(JP,U)
【文献】特開2003-314190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にカッターヘッドを有し、カッターヘッドの後部にチャンバーを備えた掘進機において、前記カッターヘッドの支持アームに、カッターヘッドの前面から前方に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成したコピーカッターと、前記カッターヘッドのカッタートルクを回転角度毎に検出するカッタートルク検出機構とを備えてなることを特徴とする掘進機。
【請求項2】
先端にカッターヘッドを有し、カッターヘッドの後部にチャンバーを備えた掘進機の運転方法において、前記カッターヘッドの支持アームに備えた、カッターヘッドの前面から前方に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成したコピーカッターを突出させた状態でカッターヘッドを回転させることによってカッターヘッドの前面の地山の全周を切削し、カッターヘッドのカッタートルクを回転角度毎に検出するカッタートルク検出機構によって測定したカッタートルクの測定値によって、カッターヘッドの前面の地山の強度を把握することを特徴とする掘進機の運転方法。
【請求項3】
請求項に記載の掘進機の運転方法において、カッターヘッドの前面の地山の強度を把握し、当該地山に硬度分布がある場合に、硬質な部分をコピーカッターによって部分的に先行掘削することを特徴とする掘進機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘進機に関し、特に、コピーカッターを備えた掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土圧式シールド掘進機、泥土圧式シールド掘進機、泥水式シールド掘進機、土圧式推進機、泥濃式推進機、泥水式推進機等の各種掘進機(推進機を含み、本明細書において、単に、「掘進機」という。)において、曲線施工や蛇行修正を行うために、コピーカッター(本明細書において、以下、「従来型のコピーカッター」という場合がある。)が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
この従来型のコピーカッターは、カッターヘッドに内蔵され、カッターヘッドの外周側に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成され、カッターヘッドの外周側を任意に余掘りすることで、曲線施工や蛇行修正を行うことができるようにしている。
【0003】
また、カッターヘッド後方のチャンバーに地山の強度等を測定するためのセンサを備えることで、掘削の制御を行うことも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-81877号公報
【文献】特開2017-96049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の掘進機においては、コピーカッターは、カッターヘッドの外周側に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成されているため、カッターヘッドの外周側に位置する地山に掘削作用を及ぼすことができるが、これは曲線施工や蛇行修正を行う際に必要な部分的な余掘りを行うものであり、全周に亘って余掘りを行うと、掘進機の方向制御に支障をきたすため、通常は行われていない。
【0006】
本発明は、上記従来の掘進機に備えられるコピーカッターではできなかった、カッターヘッドの前面側に位置する地山に掘削作用を及ぼすことができるコピーカッターを備えた掘進機及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の掘進機は、先端にカッターヘッドを有し、カッターヘッドの後部にチャンバーを備えた掘進機において、前記カッターヘッドの支持アームに、カッターヘッドの前面から前方に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成したコピーカッターを備えてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記カッターヘッドのカッタートルクを回転角度毎に検出するカッタートルク検出機構を備えてなるようにすることができる。
【0009】
また、本発明の掘進機の運転方法は、先端にカッターヘッドを有し、カッターヘッドの後部にチャンバーを備えた掘進機の運転方法において、前記カッターヘッドの支持アームに備えた、カッターヘッドの前面から前方に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成したコピーカッターを突出させた状態でカッターヘッドを回転させることによってカッターヘッドの前面の地山の全周を切削し、カッターヘッドのカッタートルクを回転角度毎に検出するカッタートルク検出機構によって測定したカッタートルクの測定値によって、カッターヘッドの前面の地山の強度を把握することを特徴とする。
【0010】
この場合において、カッターヘッドの前面の地山の強度を把握し、当該地山に硬度分布がある場合に、硬質な部分をコピーカッターによって部分的に先行掘削するようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の掘進機によれば、先端にカッターヘッドを有し、カッターヘッドの後部にチャンバーを備えた掘進機において、前記カッターヘッドの支持アームに、カッターヘッドの前面から前方に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成したコピーカッターを備えてなるようにすることにより、当該コピーカッターによって、カッターヘッドの前面側に位置する地山にカッターヘッドの全周において掘削作用を及ぼすことができる。
【0012】
また、前記カッターヘッドのカッタートルクを回転角度毎に検出するカッタートルク検出機構を備えてなるようにすることにより、掘削の制御を行うことができる。
【0013】
また、本発明の掘進機の運転方法によれば、先端にカッターヘッドを有し、カッターヘッドの後部にチャンバーを備えた掘進機の運転方法において、前記カッターヘッドの支持アームに備えた、カッターヘッドの前面から前方に突出可能な伸縮シリンダとビットで構成したコピーカッターを突出させた状態でカッターヘッドを回転させることによってカッターヘッドの前面の地山の全周を切削し、カッターヘッドのカッタートルクを回転角度毎に検出するカッタートルク検出機構によって測定したカッタートルクの測定値によって、カッターヘッドの前面の地山の強度を把握することができ、把握したカッターヘッドの前面の地山の強度に基づいた掘削の制御、具体的には、カッターヘッドの前面から前方に突出するコピーカッターの突出量の調節制御を行うことができる。
【0014】
この場合において、カッターヘッドの前面の地山の強度を把握し、当該地山に硬度分布がある場合に、硬質な部分をコピーカッターによって部分的に先行掘削するようにすることができ、芯抜き効果によって硬質な部分の硬度を低下させ、切羽地山の硬軟度を平均化し、カッターヘッドによる掘削精度、特に掘進機の直進性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の掘進機の一実施例を示す説明図で、(a)は横断面図、(b)は正面図、(c)は(a)及び(b)のA部の拡大横断面図である。
図2】本発明の掘進機の掘削制御の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の掘進機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に、本発明の掘進機の一実施例を示す。
この掘進機は、先端にカッターヘッド1を有し、このカッターヘッド1の後部にチャンバー2を備える泥土圧式シールド掘進機であり、カッターヘッド1の前方の地山の掘削面である切羽を掘削し、掘削した土砂をチャンバー2に取り込み、カッターヘッド1のセンター部及びスポーク16にそれぞれ設けた加泥材吐出口3a、3bから注入した加泥材を、カッターヘッド1及びチャンバー2内に配置される撹拌翼(図示省略)により撹拌混合することにより、掘削土砂を塑性流動性と不透水性を有する泥土に変換し、この泥土をチャンバー2内から後方に延びるスクリューコンベア4等からなる排土装置内に充満させ、この状態を維持しながらシールドジャッキ5の推力によりチャンバー2内の泥土に泥土圧を発生させて、この土砂の土圧を切羽に作用させることにより切羽の土圧と地下水圧に対抗して、切羽を安定化させ、掘進機をその推進量と排土量のバランスを図りながら地山を掘進するようにしている。
【0018】
シールド胴体6を構成する、チャンバー2を備える前胴61と後胴62とは、方向修正ジャッキ7により連結されている。
【0019】
チャンバー2内には、チャンバー2内で発生する土圧(圧力)を検知する土圧計8を配設するようにしている。
【0020】
前胴61にはその先端部分に支持軸受を介してカッターヘッド1が回転可能に支承され、駆動モータ9によって回転駆動されるようにされている。
【0021】
カッターヘッド1の外周部には、シリンダを備えた伸縮シリンダとビットで構成した従来型のコピーカッター10が内蔵され、カッターヘッド1の外周側に突出可能にされ、カッターヘッド1の外周側を任意に余掘りすることで、曲線施工や蛇行修正を行うことができるようにしている。
【0022】
カッターヘッド1の前面部には、カッタービット11、先行ビット12及びゲージビット13が取り付けられている。
【0023】
さらに、カッターヘッド1の支持アーム14に、カッターヘッド1の前面から前方に突出可能なように伸縮シリンダとビットで構成したコピーカッター15(本明細書において、以下、「前方伸縮型のコピーカッター」という場合がある。)を備えるようにしている。
前方伸縮型のコピーカッター15は、カッターヘッド1の前面部の外周部に配設し、水平方向軸に対して突出角度θが0~45°(本実施例においては、約30°。)、最大突出寸法Lが30~200mmとしているが、掘進機の外径や土質等に応じて、適した大きさ、突出量に設定することができる。
そして、この前方伸縮型のコピーカッター15によって、カッターヘッド1の前面側に位置する地山にカッターヘッド1の全周において掘削作用を及ぼすことができる。
ここで、本実施例においては、カッターヘッド1の支持アーム14が、カッターヘッド1の外周部を支持する方式のため、コピーカッター15は、カッターヘッド1の前面部の外周部に配設するようにしているが、カッターヘッド1の中間部(外周部の内側)を支持する方式の場合には、コピーカッター15は、支持アーム14が位置するカッターヘッド1の前面部の中間部に、カッターヘッド1の前面から前方に突出可能に配設するようにする。
【0024】
掘進機は、カッターヘッド1のカッタートルクを回転角度毎に検出するカッタートルク検出機構を備えるようにし、これを用いて、掘削の制御を行うようにする。
具体的には、前方伸縮型のコピーカッター15を突出させた状態でカッターヘッド1を回転させることによってカッターヘッド1の前面の地山の全周を切削し(このとき、いわゆるローリングが発生しないようにコピーカッター15の突出状態を調節する。)、カッタートルク検出機構によって測定したカッターヘッド1のカッタートルクの測定値(駆動方式が油圧モータ駆動方式の場合は油圧値、電動モータ駆動方式の場合は電流値)によって、カッターヘッド1の前面の地山の強度を把握し、把握したカッターヘッド1の前面の地山の強度に基づいた掘削の制御、より具体的には、カッターヘッド1の前面から前方に突出するコピーカッター15の突出量の調節制御を行うことができる。
すなわち、図2(a)に示すように、コピーカッター15を伸長させ、地山に貫入させてから、カッターヘッド1を回転させ、カッターヘッド1のカッタートルク(回転トルク)の変動を測定し、必要に応じて、コピーカッター15を収縮した状態の場合の回転トルクと比較する。
相対的に回転トルクの値が高い部分は地山硬度が高く、値が低い部分は地山硬度が低いと判定し(図2(b))、運転者にわかる場所に設けたモニターで硬軟度を表示する(図2(c))。
硬軟差が大きい場合には、図2(d)に示すように、硬軟度画面から判断して硬度が高い部分のみコピーカッター15を伸長させて、地山を溝状に先行切削する。
このように、カッターヘッド1の前面の地山の強度を把握し、当該地山に硬度分布がある場合に、硬質な部分をコピーカッター15によって部分的に先行掘削するようにすることにより、芯抜き効果によって硬質な部分の硬度を低下させ、切羽地山の硬軟度を平均化し、カッターヘッド1による掘削精度、特に掘進機の直進性を向上させることができる。
【実施例
【0025】
図2(e)に実験結果を示すモニターの図である(数字は、掘進中のカッターヘッド1のカッタートルク(回転トルク)の測定値(単位:MPa(油圧))を記入。)。
図2(e)に実験結果から明らかなように、前方伸縮型のコピーカッター15を伸長させ、地山に貫入させてから、カッターヘッド1を回転させ、カッターヘッド1のカッタートルク(回転トルク)の変動を測定した結果、地山硬度が高い部分は、回転トルクの値が高く、地山硬度が低い部分は、回転トルクの値が低く表れた(圧力差:3.3MPa)。
なお、このときのコピーカッター15を収縮した状態の場合の回転トルクの変動圧力差は、0.3MPaであった。
【0026】
以上、本発明の掘進機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の掘進機及びその運転方法は、前方伸縮型のコピーカッターを備えることによって、従来の掘進機に備えられる従来型のコピーカッターではできなかった、カッターヘッドの前面側に位置する地山に掘削作用を及ぼすことができるという特性を有していることから、土圧式シールド掘進機、泥土圧式シールド掘進機、泥水式シールド掘進機、土圧式推進機、泥濃式推進機、泥水式推進機等の各種掘進機の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 カッターヘッド
2 チャンバー
3a 加泥材吐出口(センター部)
3b 加泥材吐出口(スポーク)
4 スクリューコンベア
5 シールドジャッキ
6 シールド胴体
61 前胴
62 後胴
7 方向修正ジャッキ
8 土圧計
9 駆動モータ
10 コピーカッター(従来型のコピーカッター)
11 カッタービット
12 先行ビット
13 ゲージビット
14 支持アーム
15 コピーカッター(前方伸縮型のコピーカッター)
16 スポーク
図1
図2