(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】放熱ユニット 暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20220511BHJP
F24D 5/02 20060101ALI20220511BHJP
F24D 19/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F24D5/02 A
F24D19/00 C
(21)【出願番号】P 2018046186
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(74)【代理人】
【識別番号】100121599
【氏名又は名称】長石 富夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 寿久
(72)【発明者】
【氏名】山岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】滋野 正彦
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-39322(JP,A)
【文献】特開2005-265351(JP,A)
【文献】国際公開第2014/059993(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0049623(KR,A)
【文献】特開2003-227692(JP,A)
【文献】特開2008-196738(JP,A)
【文献】特開2018-124041(JP,A)
【文献】特開2019-190716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24D 5/02
F24D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空平板状の複数枚の扁平管が間隔を持って積層されると共に隣り合う扁平管はその一端部側と他端部側のそれぞれで接続部よって積層方向に連結され、流入口に流入した熱媒体流体が各扁平管および接続部を通って流出口から流出するように構成された熱交換器と、
前記扁平管がダクトの延設方向に沿う向きで前記ダクトに内挿された前記熱交換器の外縁と前記ダクトの内壁との隙間を塞ぐ仕切り板と、
を有し、
前記仕切り板は、前記扁平管に直交しかつ前記ダクトの延設方向に対して斜め方向を臨むように配置される
ことを特徴とする熱交ユニット。
【請求項2】
前記接続部を、前記仕切り板から離した位置に設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交ユニット。
【請求項3】
前記扁平管は矩形であり、
前記一端部側の接続部と前記他端部側の接続部を、前記扁平管の一方の対角線上の対向する2つの角部に分けて配置し、
前記仕切り板を、他方の対角線に沿って配置した
ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱交ユニット。
【請求項4】
前記一端部側と前記他端部側は、前記扁平管上の前記ダクトの幅方向の両端部であり、
前記一端部側の接続部と前記他端部側の接続部は、前記扁平管上の前記ダクトの延設方向の一方に寄せて配置されており、
前記仕切り板は、前記ダクトの延設方向の他方側から、前記一端部側の接続部と前記他端部側の接続部の中央に向けて凸のV字状に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱交ユニット。
【請求項5】
前記熱交換器の各扁平管は前記延設方向に凹の切欠き部を有してコの字状を成すと共に、該切欠き部の向きを揃えて積層されおり、
前記熱交換器と同一構造の第2熱交換器をさらに有し、
前記熱交換器と前記第2熱交換器を、互いの扁平管が直交する向きにしかつこれらの切欠き部同士を嵌め合わせて十字状に組み合わせ、
前記仕切り板は、前記組み合わせた前記熱交換器と前記第2熱交換器の外縁と前記ダクトの内壁との隙間を塞ぐ
ことを特徴とする請求項1、2または4に記載の熱交ユニット。
【請求項6】
前記熱交換器が有する扁平管のうち積層方向の端の扁平管の外側の面にフィンを設けた
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の熱交ユニット。
【請求項7】
前記扁平管の前記ダクトの幅方向の端部にフィンを設けた
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の熱交ユニット。
【請求項8】
前記ダクトは、壁を貫通して屋外と屋内を接続する給気ダクトである
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の熱交ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給気口に取り付けられる放熱ユニットおよびこの放熱ユニットを用いた暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅には24時間換気システムが設置されている。その代表的な構成は、
図23に示すように、たとえば、風呂場の天井裏等に換気ファン101を設け、この換気ファン101の吸込口102をトイレや洗面所、浴室などの天井(家の中心付近)に配置し、屋外に面する各居室の壁に給気口103を設け、換気ファン101の排気はダクトを通じて玄関先等に設けた排気口104から屋外に排出する、といった構成になっている。これは、排気はファンで行い、給気はファンを使用せずに自然に取込む方式(排気型)であり、一般の住宅で多く採用されている。
【0003】
ところで、冬場は給気口103から冷たい外気が室内に入って来る。
図23の住宅では、リビングなど人が長く居る部屋は暖房されて暖かい。その暖かい空気は、住宅の中心の吸込口に向かってゆっくりと流れ、吸込口102から吸い込まれて屋外に排出される。一方、洋室(1)、洋室(2)などは、寝室などに利用された場合、暖房費節約等の観点から、暖房されない場合が多い。また、リビングから暖かい空気も流れ込まないため、室温が低い。明け方になるとトイレなども冷えてしまう。そのため、たとえば、入浴後にそれらの部屋に入ったり、明け方に布団から出てトイレに行ったりすると、ヒートショックを受ける恐れがある。
【0004】
光熱費を抑えて、ヒートショックを防止し得る程度に暖房する方法として、風呂の残り湯が持つ熱量を利用する方法がある。たとえば、特許文献1には、浴槽内の湯を、ファンからの送風を受ける熱交換器に循環させる暖房システムが開示される。
【0005】
しかし、この暖房システムでは、室温と浴槽内の残り湯との温度差が少ないため、放熱効率が低く、要求される熱量を得るには大型の熱交換器が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の出願人は、24時間換気システムの給気口103に、風呂の残り湯を循環させる放熱器110を取り付け、給気口103を通じて屋外の冷たい空気を屋内に取り入れる際に放熱器110で暖めるようにした暖房システムを考案した。この放熱器110は、
図24に示すように、入水管111と出水管112の間に、薄く扁平した管路である扁平管113を所定間隔で多数枚積層して構成される。そして、給気ダクト103の中に放熱器110を収めた際に、放熱器110の外縁と給気ダクト103の内壁との隙間を空気が通り抜けないように仕切り板114が設けてある。
【0008】
この放熱器110が有する扁平管113のサイズは、長さ約70mm、幅15mm、厚み0.7mmであり、内部水路の高さは0.3mm、板厚は0.2mmである。放熱器110は、この扁平管113を1.3mm程度の間隔をあけて積層しており、直径100mmの給気ダクト(給気口103)の中に収めた場合、31枚の扁平管112を積層でき、伝熱面積は約60000mm2であり、通気抵抗は25m3/h時、18Paであった。
【0009】
より低温の温水で暖房するためには、伝熱面積を広くすることが望まれるが、単に扁平管の面積を大きくしたり、扁平管同士の間隔を狭くして扁平管の積層枚数を増やしたりすると、それに伴って通気抵抗が増えてしまう。
【0010】
本発明は、上記の要請に鑑みて成されたものであり、ダクトに挿入された状態での通気抵抗を抑えつつ熱交換効率の高い熱交ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0012】
[1]中空平板状の複数枚の扁平管が間隔を持って積層されると共に隣り合う扁平管はその一端部側と他端部側のそれぞれで接続部よって積層方向に連結され、流入口に流入した熱媒体流体が各扁平管および接続部を通って流出口から流出するように構成された熱交換器と、
前記扁平管がダクトの延設方向に沿う向きで前記ダクトに内挿された前記熱交換器の外縁と前記ダクトの内壁との隙間を塞ぐ仕切り板と、
を有し、
前記仕切り板は、前記扁平管に直交しかつ前記ダクトの延設方向に対して斜め方向を臨むように配置される
ことを特徴とする熱交ユニット。
【0013】
上記発明では、仕切り板が、ダクトの延設方向に対して斜め方向を臨むように配置される。空気がダクトを通るとき、仕切り板の箇所で最も通路面積が小さくなるが、仕切り板を斜めに配置することで、たとえば、ダクトが断面円形であれば仕切り板は楕円形となり、仕切り板の箇所における通路面積を増やすことができる。
【0014】
[2]前記接続部を、前記仕切り板から離した位置に設ける
ことを特徴とする[1]に記載の熱交ユニット。
【0015】
接続部は、隣り合う扁平管を積層方向に連結するので、接続部の有る箇所では隣り合う扁平管と扁平管の隙間を塞ぐことになる。したがって、仕切り板の箇所(あるいはその近く)に接続部を設けると、その分、仕切り板の箇所における通路面積が小さくなる。そこで、接続部を仕切り板から離して配置する。空気は接続部の周りを回り込むように流れるので、この回り込んで流れる領域が仕切り板に掛からないように離せばよい。
【0016】
[3]前記扁平管は矩形であり、
前記一端部側の接続部と前記他端部側の接続部を、前記扁平管の一方の対角線上の対向する2つの角部に分けて配置し、
前記仕切り板を、他方の対角線に沿って配置した
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の熱交ユニット。
【0017】
上記発明では、接続部を仕切り板から最も離れた位置に配置することができる。
【0018】
[4]前記一端部側と前記他端部側は、前記扁平管上の前記ダクトの幅方向の両端部であり、
前記一端部側の接続部と前記他端部側の接続部は、前記扁平管上の前記ダクトの延設方向の一方に寄せて配置されており、
前記仕切り板は、前記ダクトの延設方向の他方側から、前記一端部側の接続部と前記他端部側の接続部の中央に向けて凸のV字状に設けられている
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の熱交ユニット。
【0019】
上記発明の配置を採用した場合にも、仕切り板を、ダクトの延設方向に対して斜めを臨むように配置しつつ、接続部を仕切り板から大きく離すことができる。
【0020】
[5]前記熱交換器の各扁平管は前記延設方向に凹の切欠き部を有してコの字状を成すと共に、該切欠き部の向きを揃えて積層されおり、
前記熱交換器と同一構造の第2熱交換器をさらに有し、
前記熱交換器と前記第2熱交換器を、互いの扁平管が直交する向きにしかつこれらの切欠き部同士を嵌め合わせて十字状に組み合わせ、
前記仕切り板は、前記組み合わせた前記熱交換器と前記第2熱交換器の外縁と前記ダクトの内壁との隙間を塞ぐ
ことを特徴とする[1、2]または[4]に記載の熱交ユニット。
【0021】
上記発明では、熱交換器は十字型となるため、たとえば、断面円形のダクトの中に収めた場合の通路面積をより大きくすることができる。
【0022】
[6]前記熱交換器が有する扁平管のうち積層方向の端の扁平管の外側の面にフィンを設けた
ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の熱交ユニット。
【0023】
上記発明では、扁平管のうち積層方向の端の扁平管の外側の面にフィンを設けることで伝熱面積を増やす。
【0024】
[7]前記扁平管の前記ダクトの幅方向の端部にフィンを設けた
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の熱交ユニット。
【0025】
上記発明では、扁平管のダクトの幅方向の端部にフィンを設けることで伝熱面積を増やす。
【0026】
[8]前記ダクトは、壁を貫通して屋外と屋内を接続する給気ダクトである
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の熱交ユニット。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る熱交ユニットによれば、ダクトに挿入された際の通気抵抗を抑えつつ熱交換効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施の形態に係る熱交ユニットを示す斜視図である。
【
図2】筒状部材に内挿した状態の熱交ユニットを示す斜視図である。
【
図3】給気ダクトに内挿された熱交ユニットを示す上面図である。
【
図5】熱交換器を構成する3種類の扁平管を示す図である。
【
図6】一往復型の熱交換器における通水経路を示す図である。
【
図7】並列型の熱交換器における通水経路を示す図である。
【
図8】熱交ユニットを仕切り板の正面から見た図である。
【
図9】第1接続部と第2接続部を通る対角線に沿って切断した熱交ユニットを示す断面図である。
【
図10】給気ダクトに挿入された熱交ユニットを通る空気の流れを示す図である。
【
図11】幅広の固定板を有する熱交ユニットを示す正面図である。
【
図12】給気ダクトに挿入された、幅広の固定板を有する熱交ユニットを通る空気の流れを示す図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る熱交ユニットの上面および空気の流れを示す図である。
【
図14】第3の実施の形態に係る熱交ユニットの分解斜視図である。
【
図15】第3の実施の形態に係る熱交ユニットを示す斜視図である。
【
図16】筒状部材に収めた状態の第3の実施の形態に係る熱交ユニットを示す図である。
【
図17】第3の実施の形態に係る熱交ユニット10の正面図である。
【
図18】第4の実施の形態に係る熱交ユニットをダクトに収めた状態を示す斜視図である。
【
図19】第4の実施の形態に係る熱交ユニットを示す正面図である。
【
図21】第4の実施の形態に係る熱交ユニットの他の例を示す図である。
【
図22】ドレン受けを取り付けた熱交ユニットを示す斜視図である。
【
図23】住宅(マンション)に設置された24時間換気システムの構成例を示す図である。
【
図24】本願に係る改良前の放熱器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る熱交ユニット10の外観を示している。本実施の形態に係る熱交ユニット10は、壁を貫通して屋外と屋内を接続する給気ダクト3に挿入して使用される。給気ダクト3は、背景技術で説明したものと同様の、排気はファンで行い、給気はファンを使用せずに自然に取込む方式(排気型)の24時間換気システム、における給気口である。給気ダクト3の内径は約96mmである。ここでは、
図2に示すように熱交ユニット10を筒状部材5に内挿し、
図3に示すように、この筒状部材5ごと給気ダクト3の中に熱交ユニット10を挿入して使用する。筒状部材5の外径は給気ダクト3の中に密に収まる値にされており、筒状部材5の長さは80mmになっている。
図2では筒状部材5を半透明に描いてある。なお、筒状部材5を設けずに熱交ユニット10を直接、給気ダクトの中に挿入する構成であってもよい。
【0031】
図3は、給気ダクト3に挿入された状態の熱交ユニット10の上面を示し、
図4は、熱交ユニット10の側面図である。熱交ユニット10は、温水等の熱媒体流体が通される熱交換器11と、熱交換器11の外縁と給気ダクト3(本例では筒状部材5)の内壁との隙間を塞ぐ仕切り板20とを有する。熱交ユニット10の熱交換器11に循環させる熱媒体流体は、浴槽に残っている浴槽水などである。浴槽水を熱交ユニット10を経由して循環させる役割は、風呂給湯器、ガス温水暖房給湯器、別のポンプユニットなどが担う。
【0032】
熱交ユニット10の熱交換器11は、複数枚の扁平管12が間隔を持って積層された構造を有する。各扁平管12は、内部が空洞で矩形の薄い平板状を成している。ここでは、各扁平管12の内部空洞(水路)の高さは0.6mm、内部空洞を構成する壁面の厚み(板厚)は各0.2mmであり、積層された扁平管12同士の間隔は2.2mmになっている。
図1に示すように、扁平管12の積層方向を上下方向、給気ダクト3の延設方向(軸方向)を前後方向、積層方向および延設方向の双方に直交する方向を幅方向(扁平管12上での径方向)とする。扁平管12は、たとえば、内部に空洞をつくるための枠に上板と下板を張り合わせて形成される。
【0033】
隣り合う扁平管12は、一端部側と他端部側で接続部13によって積層方向に連結される。ここでは、
図5に示すように、一端部側の接続部13(第1接続部13a)と他端部側の接続部13(第2接続部13b)は、矩形の扁平管12の一方の対角線上にある2つの角部に分けて配置されている。
図5では、各扁平管12の斜視図の右隣に、第1接続部13aと第2接続部13bを通る対角線の箇所で切断した扁平管12の端面を示してある。なお、扁平管12は、対角線の交点を中心に点対象になっている。
【0034】
各接続部13は、扁平管12の表裏の壁面で同じ位置にあり、各壁面から積層間隔の約2分の1の高さに突起した筒状になっている。接続部13がある位置の扁平管12の壁面(表裏の一方もしくは双方)には筒状の接続部13に通じる穴が開設されている。
【0035】
本実施の形態では、扁平管12として、第1接続部13aと第2接続部13bがある箇所の双方で表裏の壁面に穴が開設された貫通型扁平管12aと、第1接続部13aと第2接続部13bがある箇所の双方で表側の壁面に穴が開設され、裏側の壁面は片方の接続部13についてのみ対応する位置に穴が開設された片裏型扁平管12bと、第1接続部13aと第2接続部13bの双方で裏側の壁面に穴が開設され、表側の壁面は片側の接続部13にのみ対応する位置に穴が開設された片表型扁平管12cの3種類を設けてあり、これらを組み合わせることで、各種の通水経路の熱交換器11を構成する。
【0036】
たとえば、
図6に示すように、上から、片表型扁平管12c×1、貫通型扁平管12a×2、片裏型扁平管12b×1、片表型扁平管12c×1、貫通型扁平管12a×2、片裏型扁平管12b×1のように積層すれば、図中の破線で示すように、上から4枚の扁平管12については第1接続部13a側から熱媒体流体が第2接続部13b側に向かって流れ、残り4枚の扁平管12については第2接続部13b側から第1接続部13a側に向かって流れる、一往復型の熱交換器が構成される。扁平管12の数が多い場合には、2往復型、3往復型…、とすることもできる。往復型の場合、流入口15と流出口16は同じ接続部側に形成される。
【0037】
一方、
図7に示すように、すべての扁平管12で同じ方向に熱媒体流体が流れる並列型の熱交換器11を構成することも可能である。この例では、上から、扁平管12b×1、貫通型扁平管12a×5、片表型扁平管12c×1が積層されている。並列型の場合、流入口15と流出口16の一方は第1接続部13aに、他方は第2接続部13bに形成される。往路、復路、往路のような構成も可能であり、この場合も流入口15と流出口16の一方は第1接続部13aに、他方は第2接続部13bに形成される。
【0038】
各扁平管12を積層することで隣り合う扁平管12の接続部13同士が接続して連結する。壁面に穴のある接続部13同士を接続すれば、その箇所で隣り合う扁平管12がその接続部13を介して連通する。
【0039】
積層された扁平管12と扁平管12との間隔は接続部13によって維持される。しかし、接続部13のみでは、扁平管12の中央部等において扁平管12同士の間隔を維持できない。これは、扁平管12の壁面の厚み(板厚)が薄いため、通水時の水圧によって扁平管12が歪むことによる。そこで、扁平管12の平面部の各所に突起したダボ14が設けてある。これらのダボの存在により、積層された扁平管12の間隔を各所で維持する。各ダボ14は接続部13と同じ高さにされており、隣り合う扁平管12から突出する対向するダボ14同士が接触して必要な間隔を維持する。なお、中央のダボ14aの高さを他のダボよりほんのわずか(0.1mmほど)だけ低くしてもよい。量産時のばらつきで中央のダボ14aが他のダボより高くなると、積層時にガタツキが生じて安定しなくなるのでこれを防止する効果がある。なお、中央のダボ14aは実際に水圧が加わって中央が膨らみ始めた際に接触すれば足りる。
【0040】
図1、
図2等に示す熱交換器11は1往復型であり、該熱交換器11への熱媒体流体の流入口15は、最も上の扁平管12の上側の壁面の第1接続部13aに繋げて設けてあり、流出口16は、最も下の扁平管12の下側の壁面の第1接続部13aに繋げて設けてある。
【0041】
熱交ユニット10は、
図2に示すような向きで給気ダクト3の中に挿入されて使用される。すなわち、熱交ユニット10は、各扁平管12が給気ダクト3の延設方向に沿う向きにして給気ダクト3の中に挿入される。
【0042】
仕切り板20は、各扁平管12に直交しかつ給気ダクト3の延設方向に対して斜め方向を臨むように配置される。すなわち、
図1で示した幅方向(扁平管12上での給気ダクト3の径方向)に対して斜めに配置される。
図1、
図2等に示す熱交ユニット10の例では、仕切り板20は、熱交換器11が有する各矩形の扁平管12を、第1接続部13aと第2接続部13bを通る対角線とクロスする側の対角線に沿って、斜めに横切るように設けてある。
【0043】
仕切り板20を扁平管12に直交しかつ給気ダクト3の延設方向に対して斜め方向を臨むように配置したことにより、給気ダクト3が断面円形であれば、仕切り板20の外形は楕円形になる。この仕切り板20の中に熱交換器11が丁度収まる矩形の開口が形成される。熱交換器11のサイズを最大化できるように、この開口は可能な範囲で大きく形成される。
図8は、熱交ユニット10の仕切り板20をその正面(仕切り板20に対して垂直な方向)から見た様子を示し、
図9は、第1接続部13aと第2接続部13bを通る対角線に沿って熱交ユニット10を切断した断面を示している。
【0044】
図1~
図3に示すように、仕切り板20は、上から見て、Zの字型を成しており、両端は扁平管12の幅方向に折り曲げられている。両端の折り曲げられた部分を簡易な形状の固定板25で前後両側から挟み込むことで、熱交ユニット10を筒状部材5(あるいは給気ダクト3)内にしっかりと固定することができる。すなわち、筒状部材5の奥側にのみ固定板25を取り付けた状態で、熱交ユニット10を筒状部材5の中に挿入し、その後、手前側の固定板25を取り付ける、といった手順で筒状部材5の中に熱交ユニット10を固定することができ、組み立ても容易となる。さらに、メンテナンス時などは簡単に筒状部材5から取り外すことができる。
【0045】
なお、各扁平管12は、仕切り板20が通る側の2つの角部分を斜めにカットした形状になっている。つまり、接続部13の無い2つの角部をそれぞれ斜めにカットして小さくしてある。これにより、
図1に示すように、各扁平管12をできるだけ大きくしつつ、仕切り板20の両端の折り曲げ部分の幅を必要量確保することができる。
【0046】
また、積層した上下両端の扁平管12のさらに上下外側にフィン17が取り付けてある。フィン17は扁平管12よりも一回り小さく形成されている。フィン17を扁平管12よりも一回り小さくすることで、
図1、
図8に示すように、仕切り板20の開口の角部22における仕切り板20の幅を広くして、部品の強度を確保している。フィン17は、たとえば、扁平管12の上板、下板にその外周部をカットする加工を施して形成することもできる。
【0047】
図10は、給気ダクト3に挿入された熱交ユニット10を通る空気の流れを示している。給気ダクト3の中を流れる空気は、仕切り板20が扁平管12の幅方向(扁平管12上での給気ダクト3の径方向)に対して斜めに配置されているので、仕切り板20の手前で向きを斜めに変えて、仕切り板20の開口に向かって流れ、仕切り板20の開口を通過した後は、向きを給気ダクト3の延設方向に沿う向きに戻すようにして流れる。
【0048】
上記空気の流れにおいて給気ダクト3の通路面積は仕切り板20の開口部分で最も小さくなる。本発明では、仕切り板20を扁平管12の幅方向(扁平管12上での給気ダクト3の径方向)に対して斜めに設けたので、仕切り板20の開口が長方形になり、仕切り板20を扁平管12の幅方向(給気ダクト3の延設方向に垂直)に設ける場合(この場合の開口は、
図24に示すような正方形になる)よりも、開口の面積が大きくなり、通気抵抗を小さく抑えることができる。
【0049】
ところで、熱交換器11において接続部13が上下に接続されて連なる箇所及びダボ14が上下に連なる箇所は、扁平管12と扁平管12の隙間が塞がっており、空気の通路として機能しない。したがって、接続部13やダボ14が仕切り板20の開口の中や仕切り板20の開口の前後方向の近くにある場合は、仕切り板20の開口のうち空気通路として有効な面積が小さくなってしまう。
【0050】
そこで、本実施の形態に係る熱交ユニット10では、接続部13を仕切り板20から離して配置する。具体的には、扁平管12の一方の対角線に沿って仕切り板20を配置し、他方の対角線上の2つの角部に接続部13を分けて配置することで、各接続部13を仕切り板20から最大限に離してある。このように接続部13を仕切り板20から離すことで、給気ダクト3を流れる空気は、仕切り板20の開口を通るときは接続部13に邪魔されずに流れることができる。また、空気は、接続部13のある箇所では、接続部13の周りを回り込むように流れることができる。
【0051】
空気は接続部13の周りを回り込むように流れるので、この回り込んで流れる領域が仕切り板20に掛からないように接続部13を仕切り板20から離せばよい。このように、接続部13を仕切り板20から離して配置することで、仕切り板20の開口のうち空気通路として有効な面積が、接続部13の存在によって削られることが回避される。
【0052】
ダボ14についても同様に、仕切り板20から離して設けることが好ましく、
図3に示すように、多くのダボ14については仕切り板20から外れた箇所に配置してある。しかし、すべてのダボ14を仕切り板20から離して配置すると、仕切り板20の開口の中央付近では、通水時の水圧によって扁平管12が歪むため、扁平管12同士の間隔を維持できなくなる。そこで、仕切り板20の開口の中央に当たる箇所にダボ14(14a)を設けて扁平管12同士の間隔を維持する。
【0053】
次に、固定板25を大きくして給気ダクト3における空気の流れを規制した熱交ユニット10Bについて説明する。
【0054】
図11は、熱交ユニット10Bの正面図(給気ダクト3の入口側から見た様子を示す図)であり、
図12は、熱交ユニット10Bを給気ダクト3に挿入した状態での空気の流れを示している。固定板25は、熱交ユニット10を固定する機能のほかに給気ダクト3内での空気の流れを変える効果がある。熱交ユニット10Bでは、固定板25を扁平管12の幅方向に幅広にすることで、扁平管12と扁平管12の隙間を最短距離で通過しようとする空気の量を少なくし、遠回りさせることで熱交換能力を向上させてある。
【0055】
この場合、空気が熱交ユニット10を通る際の圧損は大きくなるが、固定板25は簡易な形状の板部材なので、サイズの異なる固定板25を複数種類用意しておき、住宅に設置されている換気ファンの能力に応じて、適切なサイズの固定板25を選択して取り付ければよい。あるいは、固定板25を伸縮可能な部材とし、適切な幅にサイズ調整できるように構成してもよい。たとえば、室内側の固定板25を伸縮可能な部材にすれば、居住者自身で簡単に調整することができる。
【0056】
<第2の実施の形態>
図13は、第2の実施の形態に係る熱交ユニット10Cを示している。第1の実施の形態では、仕切り板20を扁平管12の一方の対角線に沿って斜めの直線状に設けた例を示したが、第2の実施の形態に係る熱交ユニット10Cでは仕切り板20はVの字型を成している。詳細には、第1接続部13aと第2接続部13bは、扁平管12の幅方向の両端、かつ、給気ダクト3の延設方向の一方(手前もしくは奥側)に寄せて配置してあり、仕切り板20は、給気ダクト3の延設方向の他方側から、第1接続部13aと第2接続部13bの中央に向けて凸のV字状に設けられている。
【0057】
図13の例では、第1接続部13a、第2接続部13bは矩形の扁平管12が有する4つの角部のうち給気ダクト3の手前の2つの角部に分けて配置してあり、仕切り板20は、扁平管12の他の2つの角部と扁平管12の中央部を結ぶ、上面視でVの字型に形成されている。
【0058】
熱交ユニット10Cでは、第1接続部13aと第2接続部13bが給気ダクト3の延設方向の一方(手前または奥側)に片寄せてあるので、流入口15と流出口16への配管が容易になる。たとえば、流入口15と流出口16を給気ダクト3の入側に集めて配置すれば、屋外側から流入口15、流出口16へ配管できる。また、仕切り板20に配管を通す必要がないため仕切り板20等の構造を簡素にすることができる。
【0059】
第2の実施の形態においても各接続部13は仕切り板20から十分離れた箇所に配置されている。そのため、接続部13が仕切り板20の開口における空気通路の有効面積を小さくすることはない。また、給気ダクト3を通る空気は、接続部13の周りをまわり込むように流れることができる。
【0060】
なお、
図13に示す熱交ユニット10Cでは、各扁平管12は、長さ約70mm、幅40mm、水路の高さが0.8mm、板厚が0.2mm(扁平管12の厚みは1.2mm)であり、扁平管12同士の間隔は2.2mm程度である。直径100mmの給気ダクト3の中に収める場合、扁平管12を19枚積層でき、伝熱面積は約1000000mm
2である。このときの通気抵抗は25m
3/h時、10Pa程度である。水40℃、空気5℃のときの放熱量は180Wである。
【0061】
<第3の実施の形態>
図14は、第3の実施の形態に係る熱交ユニット10Dの構成部品である第1の熱交換器11aと第2の熱交換器11bを示す図であり、
図15は、熱交ユニット10Dを示す斜視図であり、
図16は、筒状部材5に収めた状態の熱交ユニット10Dを示し、
図17は、熱交ユニット10Dの正面図である。
【0062】
第3の実施の形態の熱交ユニット10Dは、
図14に示すように、各扁平管12は給気ダクト3の延設方向に凹の切欠き部を有するコの字状を成しており、切欠き部の向きを揃えて積層された第1の熱交換器11aと、同形状の第2の熱交換器11bとを有する。熱交ユニット10Dは、第1の熱交換器11aと第2の熱交換器11bを、切欠き部同士を嵌め合わせて十字状(互いの扁平管が直交する向き)に組み合わせて構成される。
【0063】
ここでは、第1の熱交換器11a、第2の熱交換器11bはそれぞれ1往復型(2往復型等であってもよい)であり、第1の熱交換器11aと第2の熱交換器11bは、連結管18により、直列に接続されている。
【0064】
熱交ユニット10Dにおいても、仕切り板20は給気ダクト3の延設方向に対して斜め方向を臨むように配置されている。具体的には、
図15に示すように、
図13と同様のV字型である。
【0065】
熱交ユニット10Dでは、各扁平管12は、水路の高さが0.8mm、板厚が0.2mm(扁平管12の厚みは1.2mm)であり、扁平管12同士の間隔は2.2mmとなっている。積層枚数は12枚×2であり、伝熱面積は112000mm
2である。このときの通気抵抗は25m
3/h時、9Pa程度である。十字型の熱交ユニット10Dは、
図13に示す熱交ユニット10Cに比べて、通気抵抗を10%下げて伝熱面積を12%増やすことができる。
【0066】
また、熱交ユニット10Dでは、同じ形状の第1の熱交換器11aと第2の熱交換器11bを組み合わせるため、性能を向上させつつ部品点数の増加が抑制される。
【0067】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態に係る熱交ユニット10Eでは、通気断面積を大きくとるため、積層した最上段の扁平管12の上側および最下段の扁平管12の下側、さらに扁平管12の幅方向の両サイドにフィン(コルゲートフィン19)を設けてある。
図18は、コルゲートフィン19を有する熱交ユニット10Eの斜視図であり、
図19は熱交ユニット10Eの正面図(給気ダクト3の入口側から見た様子)である。
図20はコルゲートフィン19を示す斜視図である。
【0068】
熱交ユニット10Eの扁平管12の長さ、幅、水路の高さ、板厚、扁平管12同士の間隔、積層枚数は全て
図13に示した熱交ユニット10Cと同じであり、通気抵抗は25m
3/h時、10Pa程度である。水40℃、空気5℃のときの放熱量は200W程度である。放熱性能は
図14の熱交ユニット10Cに比べて10%向上している。
【0069】
コルゲートフィン19は、隣り合う扁平管12と扁平管12の隙間に少し押し込むようにして取り付けられる。コルゲートフィン19は、
図18に示すように、少なくとも扁平管12と仕切り板20との間に取り付けられる。
図21に示すように、扁平管12と仕切り板20との間以外の場所にもさらに多数のフィンを取り付けてもかまわない。
図21では、積層した最上段の扁平管12の上側および最下段の扁平管12の下側の面に、そのほぼ全面を覆う程の多数のコルゲートフィン19を取り付けてある。なお、取り付けるフィンの形状はコルゲートフィン19に限定されるものではない。
【0070】
次に、熱交ユニット10を用いた暖房動作等について説明する。
【0071】
<浴湯暖房動作>
浴湯暖房動作は、風呂の自動運転の終了後に浴槽の中に残っている浴槽水を熱交ユニット10(または熱交ユニット10B~10E)に循環させて暖房する動作である。たとえば、風呂の追い焚き回路のうち、風呂ポンプで送り出された湯が浴槽に向かう風呂往き管の途中に三方弁を設け、風呂ポンプで送り出された湯がそのまま浴槽に向かう第1経路と、風呂ポンプで送り出された湯が熱交ユニット10を経由してから浴槽に向かう第2経路に切り替える。浴槽水を複数の熱交ユニット10に経由させて複数の部屋を浴湯暖房する場合は、これら複数の熱交ユニット10を並列に接続すればよい。
【0072】
浴湯暖房動作では、三方弁を第2経路が形成されるように切り替えて風呂ポンプを駆動する。これにより、浴槽内の湯が、浴湯取込口から取り込まれ、熱交ユニット10を経由した後、浴湯流出口から浴槽に戻るように流れて循環する。
【0073】
24時間換気システムの作用で、常に、給気ダクト3を通じて外気が屋内に取り込まれているので、浴湯暖房中は、給気ダクト3に取り付けた熱交ユニット10によって外気が暖められて屋内に取り込まれる。
【0074】
たとえば、風呂に入り終わった夜10時から明け方の5時頃までにかけて200W(2個で400W)程度の暖房能力を得ることができ、ヒートショックの防止に貢献することができる。
【0075】
<浴槽水冷房動作>
夏場においては、熱交ユニット10を用いて簡易な冷房を行うことができる。すなわち、浴槽に水道水(たとえば15℃)を満たし、これを浴湯暖房動作と同様にして熱交ユニット10に循環させる。たとえば、夏場の朝、浴槽に水(15℃)を入れ、その後、熱交ユニット10を用いた冷房動作を行うと、夕方には、浴槽水が25℃程度まで上昇する。そうすれば、冷房効果を得られるだけでなく、追い焚きで風呂を沸かす際の熱量が少なくて済み、省エネルギーに貢献する。
【0076】
熱交ユニット10を冷房動作に使用する場合、
図22に示すように、各扁平管12が縦向きになるように熱交換器11を配置し、該熱交換器11の下にドレン受け31を設けるようにするとよい。ドレンは屋外へ排水される。
【0077】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0078】
仕切り板20の材質は特に問わず、不燃材であっても、可燃材であってもかまわない。扁平管12同士の間隔が狭いことによる消炎効果を期待する場合には、仕切り板20を不燃材とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0079】
3…給気ダクト
5…筒状部材
10、10B~10E…熱交ユニット
11…熱交換器
11a…第1の熱交換器
11b…第2の熱交換器
12…扁平管
12a…貫通型扁平管
12b…片裏型扁平管
12c…片表型扁平管
13…接続部
13a…第1接続部
13b…第2接続部
14…ダボ
14a…中央のダボ
15…流入口
16…流出口
17…フィン
18…連結管
19…コルゲートフィン
20…仕切り板
22…開口の角部
25…固定板
31…ドレン受け