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特許7069478ポリイミド、ポリイミド溶液組成物、ポリイミドフィルム、及び基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ポリイミド、ポリイミド溶液組成物、ポリイミドフィルム、及び基板
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20220511BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220511BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220511BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C08G73/10
C08J5/18 CFG
B32B17/10
H05K1/03 610N
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019562178
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048210
(87)【国際公開番号】W WO2019131896
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017253759
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】岡 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小濱 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】中川 美晴
(72)【発明者】
【氏名】久野 信治
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132686(JP,A)
【文献】国際公開第2016/153064(WO,A1)
【文献】特開2018-188373(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、50モル%より多く含むポリイミドであって、
厚みが10μmのフィルムで測定した場合の、
100~250℃の間の線熱膨張係数が25ppm/K以下であり、且つ、
波長400nmの光透過率が80%以上であることを特徴とするポリイミド(但し、
(A)
下記式(1-1)で表されるジアミンを含むジアミン成分を使用して得られるポリイミドを除く;
【化1】
(式中、R 、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原
子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
及びR は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
a、b、d及びeは、それぞれ独立して、0~4の整数を表し、そして
cは0~2の整数を表す。)
および、
(B)
式(1)の繰り返し単位を与えるノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(以下、CpODAという)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、TFMBという)について、以下の(1a)および(1b)の条件を満たす。
(1a)ポリイミドがCpODA100モル%のテトラカルボン酸二無水物およびTFMB100モル%のジアミン化合物から製造されるとき、CpODAの異性体の割合が、トランス-エキソ-エンド異性体とシス-エキソ-エンド異性体の合計量41.5モル%以上であるポリイミドを除く;
(1b)ポリイミドがCpODA100モル%未満のテトラカルボン酸二無水物およびTFMB100モル%のジアミン化合物から製造されるとき、CpODA以外のテトラカルボン酸二無水物が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物と、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物とからなるポリイミドを除く。)
【化2】
【請求項2】
下記化学式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、50モル%より多く含み、イミド化率が90%を超えるポリイミドが溶媒に溶解しており、
溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリエチレングリコール、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール、アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、およびジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするポリイミド溶液組成物(但し、
(A)
下記式(1-1)で表されるジアミンを含むジアミン成分を使用して得られるポリイミドを含まない;
【化3】
(式中、R 、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原
子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
及びR は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
a、b、d及びeは、それぞれ独立して、0~4の整数を表し、そして
cは0~2の整数を表す。)
および、
(B)
式(1)の繰り返し単位を与えるCpODAおよびTFMBについて、以下の(2a)および(2b)の条件を満たす。
(2a)ポリイミドがCpODA100モル%のテトラカルボン酸二無水物およびTFMB100モル%のジアミン化合物から製造されるとき、CpODAの異性体の割合が、トランス-エキソ-エンド異性体とシス-エキソ-エンド異性体の合計量83.1モル%以上であるポリイミドを含まない;および
(2b)ポリイミドがCpODA100モル%未満のテトラカルボン酸二無水物およびTFMB100モル%のジアミン化合物から製造されるとき、CpODA以外のテトラカルボン酸二無水物が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物と、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物とからなるポリイミドを含まない。)
【化2】
【請求項3】
請求項2に記載のポリイミド溶液組成物から溶媒を除去して得られるポリイミド(但し、
(3a)ポリイミドが、CpODA100モル%のテトラカルボン酸二無水物およびTFMB100モル%のジアミン化合物から製造されるとき、CpODAの異性体の割合が、トランス-エキソ-エンド異性体とシス-エキソ-エンド異性体の合計量41.5モル%以上であるポリイミドを除く。)
【請求項4】
請求項2に記載のポリイミド溶液組成物から溶媒を除去して得られるポリイミドフィルム(但し、
(4a)ポリイミドが、CpODA100モル%のテトラカルボン酸二無水物およびTFMB100モル%のジアミン化合物から製造されるとき、CpODAの異性体の割合が、トランス-エキソ-エンド異性体とシス-エキソ-エンド異性体の合計量41.5モル%以上であるポリイミドを除く。)
【請求項5】
フィルム厚みが10μmで測定した場合の、100~250℃の間の線熱膨張係数が25ppm/K以下であり、且つ、波長400nmの光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項3に記載のポリイミド。
【請求項6】
フィルム厚みが10μmで測定した場合の、100~250℃の間の線熱膨張係数が25ppm/K以下であり、且つ、波長400nmの光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項4に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
請求項1に記載のポリイミドを含むフィルム、または請求項4またはに記載のポリイミドフィルムがガラス基材上に形成されていることを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項1または3に記載のポリイミドを含むフィルム、または請求項4またはに記載のポリイミドフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ用、タッチパネル用、または太陽電池用の基板。
【請求項9】
請求項2に記載のポリイミド溶液組成物を基材に塗布する工程と、
前記ポリイミド溶液組成物を基材上で加熱する工程と
を含むポリイミドフィルム/基材積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項2に記載のポリイミド溶液組成物を基材に塗布する工程と、
前記ポリイミド溶液組成物を基材上で加熱する工程と、
基材上に形成されたポリイミドフィルムを基材上から剥離する工程と
を含むポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項2に記載のポリイミド溶液組成物を基材に塗布する工程と、
前記ポリイミド溶液組成物を乾燥して、自己支持性フィルムを得る工程と、
前記自己支持性フィルムを基材上から剥離して、加熱する工程と、
を含むポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミド、及び、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドが得られるポリイミド溶液組成物に関する。また、本発明は、ポリイミドフィルム、及び基板にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の到来に伴い、光通信分野の光ファイバーや光導波路等、表示装置分野の液晶配向膜やカラーフィルター用保護膜等の光学材料の開発が進んでいる。特に表示装置分野で、ガラス基板の代替として軽量でフレキシブル性に優れたプラスチック基板の検討が行なわれたり、曲げたり丸めたりすることが可能なディスプレイの開発が盛んに行われている。このため、その様な用途に用いることができる、より高性能の光学材料が求められている。
【0003】
芳香族ポリイミドは、分子内共役や電荷移動錯体の形成により、本質的に黄褐色に着色する。このため着色を抑制する手段として、例えば分子内へのフッ素原子の導入、主鎖への屈曲性の付与、側鎖として嵩高い基の導入などによって、分子内共役や電荷移動錯体の形成を阻害して、透明性を発現させる方法が提案されている。
【0004】
また、原理的に電荷移動錯体を形成しない半脂環式または全脂環式ポリイミドを用いることにより透明性を発現させる方法も提案されている。特に、テトラカルボン酸成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分として脂環式ジアミンを用いた、透明性が高い半脂環式ポリイミド、及びテトラカルボン酸成分として脂環式テトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分として芳香族ジアミンを用いた、透明性が高い半脂環式ポリイミドが多く提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、テトラカルボン酸成分として、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(略称:CpODA)を用い、ジアミン成分として、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(略称:TFMB)、または、TFMBと、その他の芳香族ジアミン(例えば、TFMB:4,4’-ジアミノベンズアニリド:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン=5:4:1(モル比))を用いたポリイミドが開示されている。特許文献2には、テトラカルボン酸成分として、特定の立体異性体の比率を有するCpODAを用い、ジアミン成分として、TFMBと、その他の芳香族ジアミン(例えば、TFMB:4,4’-ジアミノベンズアニリド=5:5(モル比)等)を用いたポリイミドが開示されている。しかしながら、特許文献1、及び特許文献2の実施例において、CpODAと、TFMBを50モル%以上含むジアミン成分とから得られているポリイミドは、高い透明性を有するが、線熱膨張係数が比較的大きい傾向がある。ポリイミドの線熱膨張係数が大きく、金属などの導体との線熱膨張係数の差が大きいと、回路基板を形成する際に反りが生じることがあり、特にディスプレイ用途などの微細な回路形成が困難になることがある。
【0006】
一方、特許文献3には、テトラカルボン酸成分と、特定の芳香族ジアミンを含むジアミン成分とから熱イミド化によって製造された、イミド化率が30%以上90%以下であるポリイミド前駆体が開示されている。より具体的には、特許文献3の実施例では、テトラカルボン酸成分として、CpODAを用い、ジアミン成分として、TFMBと、その他の芳香族ジアミン(例えば、TFMB:4,4’-ジアミノベンズアニリド=5:5(モル比)等)を用いた、イミド化率が33~60%であるポリイミド前駆体が製造されている。イミド化率について、特許文献3には、イミド化率が30%以上であるポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドを製造することにより、イミド化率が0%であるポリイミド前駆体をイミド化した場合と比較して、線熱膨張係数が低いポリイミドが得られること、その一方で、イミド化率が90%を超えると、ポリイミド前駆体(またはポリイミド)の溶解性が低下してポリイミド前駆体(またはポリイミド)が析出し、優れた特性を有するポリイミドを得ることができないことがあることが記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位Aと、ジアミン化合物に由来する構成単位Bとを含むポリイミド樹脂であって、構成単位Aが、CpODAに由来する構成単位(A-1)、ピロメリット酸二無水物に由来する構成単位(A-2)、及び1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位(A-3)の少なくともいずれか1種を含み、構成単位Bが、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンに由来する構成単位(B-1)を含み、構成単位Bにおける構成単位(B-1)の比率が、60モル%以上であるポリイミド樹脂が開示されている。より具体的には、特許文献4の実施例4では、CpODA(A-1)と9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(B-1)とからポリイミド樹脂が製造されている。特許文献4の実施例5では、CpODA(A-1)と1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(A-3)と9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(B-1)とからポリイミド樹脂((A-1):(A-3)=1:1(モル比))が製造されている。特許文献4の実施例6では、CpODA(A-1)と9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(B-1)と2,2’-ジメチルベンジジン(B-2)とからポリイミド樹脂((B-1):(B-2)=4:1(モル比))が製造されている。これらの特許文献4の実施例では、ポリイミド樹脂溶液を得た後、基板上にポリイミド樹脂溶液を塗布し、乾燥することにより溶媒を除去して、ポリイミドフィルムを得ている。
【0008】
さらに、特許文献5の実施例1、及び比較例1には、CpODAと4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(モル比:1/1)とから得られたポリイミド、及び、CpODAと9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンとから得られたポリイミドが記載されている。特許文献5の実施例1、及び比較例1でも、ポリイミドの溶液を得た後、基板上にポリイミドの溶液を塗布し、この塗膜を硬化せしめてポリイミドフィルムを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2013/179727号
【文献】国際公開第2014/046064号
【文献】国際公開第2014/208704号
【文献】国際公開第2017/191822号
【文献】特開2017-133027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高透明性と低線熱膨張性の両方を高いレベルで達成したポリイミド、すなわち、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドを提供すること、及び、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドが得られるポリイミド溶液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の各項に関する。
1. 下記化学式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、50モル%より多く含むポリイミドであって、
厚みが10μmのフィルムで測定した場合の、
100~250℃の間の線熱膨張係数が25ppm/K以下であり、且つ、
波長400nmの光透過率が80%以上であることを特徴とするポリイミド。
【0012】
【化1】
【0013】
2. 下記化学式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、50モル%より多く含み、イミド化率が90%を超えるポリイミドが溶媒に溶解していることを特徴とするポリイミド溶液組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
3. 前記項2に記載のポリイミド溶液組成物から溶媒を除去して得られるポリイミド。
4. 前記項2に記載のポリイミド溶液組成物から溶媒を除去して得られるポリイミドフィルム。
5. フィルム厚みが10μmで測定した場合の、100~250℃の間の線熱膨張係数が25ppm/K以下であり、且つ、波長400nmの光透過率が80%以上であることを特徴とする前記項3に記載のポリイミド、または前記項4に記載のポリイミドフィルム。
6. 前記項1に記載のポリイミドを含むフィルム、または前記項4または5に記載のポリイミドフィルムがガラス基材上に形成されていることを特徴とする積層体。
7. 前記項1または3に記載のポリイミド、または前記項4または5に記載のポリイミドフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ用、タッチパネル用、または太陽電池用の基板。
【0016】
8. 前記項2に記載のポリイミド溶液組成物を基材に塗布する工程と、
前記ポリイミド溶液組成物を基材上で加熱する工程と
を含むポリイミドフィルム/基材積層体の製造方法。
9. 前記項2に記載のポリイミド溶液組成物を基材に塗布する工程と、
前記ポリイミド溶液組成物を基材上で加熱する工程と、
基材上に形成されたポリイミドフィルムを基材上から剥離する工程と
を含むポリイミドフィルムの製造方法。
10. 前記項2に記載のポリイミド溶液組成物を基材に塗布する工程と、
前記ポリイミド溶液組成物を乾燥して、自己支持性フィルムを得る工程と、
前記自己支持性フィルムを基材上から剥離して、加熱する工程と、
を含むポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、高透明性と低線熱膨張性の両方を高いレベルで達成したポリイミド、すなわち、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドを提供することができる。また、本発明によって、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドが得られるポリイミド溶液組成物を提供することができる。
【0018】
本発明のポリイミド、及び本発明のポリイミド溶液組成物から得られるポリイミドは、透明性が高く、極めて低い線熱膨張係数を有するため、微細な回路の形成が容易であり、ディスプレイ用途などの基板を形成するために好適に用いることができる。また、本発明のポリイミド、及び本発明のポリイミド溶液組成物から得られるポリイミドは、タッチパネル用、太陽電池用の基板を形成するためにも好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、適宜、以下の略称を使用する。
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物
CpODA等:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸類等(テトラカルボン酸類等とは、テトラカルボン酸と、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等のテトラカルボン酸誘導体を表す)
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
前記化学式(1)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分は、CpODA等であり、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を与えるジアミン成分は、TFMBである。
【0020】
本発明の第1の実施形態のポリイミドは、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、50モル%より多く含み、厚みが10μmのフィルムで測定した場合の、100~250℃の間の線熱膨張係数が25ppm/K以下であり、且つ、波長400nmの光透過率が80%以上である。厚みが10μmのフィルムで測定した場合の100~250℃の間の線熱膨張係数は、好ましくは20ppm/K以下、より好ましくは15ppm/K以下であることが好ましい。また、厚みが10μmのフィルムで測定した場合の波長400nmの光透過率は、好ましくは83%以上であることが好ましい。
【0021】
従来知られている、CpODA等を主として含むテトラカルボン酸成分と、TFMBを主として含むジアミン成分とから得られるポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを溶媒中で、比較的低温度で、イミド化を抑制しながら反応させて、ポリアミック酸等のポリイミド前駆体を含む溶液を得た後、このポリイミド前駆体溶液を基材に塗布し、加熱して溶媒を除去(乾燥)し、イミド化することで製造されている。このようにして得られたポリイミドは、上記のように、高い透明性を有するが、線熱膨張係数が比較的大きい傾向がある。これに対して、本発明では、CpODA等を主として含むテトラカルボン酸成分と、TFMBを主として含むジアミン成分とを溶媒中で、イミド化反応が進行する条件下で反応させて、イミド化率が90%を超える、好ましくはイミド化率が95%以上である可溶性のポリイミドを含む溶液(または溶液組成物)を得た後、このポリイミド溶液(または溶液組成物)から溶媒を除去してポリイミドを製造する。この方法でポリイミドを製造すると、高い透明性を維持しながら、従来のものより線熱膨張係数を大幅に低下させることができる。その結果として、高透明性と低線熱膨張性の両方を高いレベルで達成することができ、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドが得られる。
【0022】
本発明の第1の実施形態のポリイミドにおいて、CpODA等とTFMBに由来する、前記化学式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、50モル%を超え、例えば80モル%以上、さらには90モル%以上、さらには100モル%であってもよい。
【0023】
本発明の第2の実施形態のポリイミド溶液組成物は、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、50モル%より多く含み、イミド化率が90%を超える、好ましくはイミド化率が95%以上であるポリイミドが溶媒に溶解している溶液組成物である。このポリイミド溶液組成物から溶媒を除去することで、高い透明性と極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミド、例えば、フィルム厚みが10μmで測定した場合の、100~250℃の間の線熱膨張係数が25ppm/K以下、好ましくは20ppm/K以下、より好ましくは15ppm/K以下であり、且つ、波長400nmの光透過率が80%以上、好ましくは83%以上であるポリイミドが得られる。
ここで、イミド化率が低いと、例えば、イミド化率が30%~80%程度であると、そのポリイミドの組成にもよるが、ヘイズが発生して、得られるポリイミドの透明性が低下することがある。特に前記化学式(1)の繰り返し単位からなるポリイミド[CpODA等と、TFMBとから得られるポリイミド]の場合、ヘイズが大きくなりやすい傾向がある。
【0024】
本発明の第2の実施形態のポリイミド溶液組成物中のポリイミドにおいても、CpODA等とTFMBに由来する、前記化学式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、50モル%を超え、例えば80モル%以上、さらには90モル%以上、さらには100モル%であってもよい。
【0025】
ここで、イミド化率は、アミック酸構造の繰り返し単位とイミド構造の繰り返し単位の合計に対するイミド構造の繰り返し単位の比率であり、当該ポリイミド(ポリイミド溶液組成物)のH-NMRスペクトルを測定し、芳香族プロトンのピーク(6.2~8.5ppm)の積分値とアミドプロトンのピーク(9.5~11.0ppm)の積分値の比より算出することができる。
【0026】
本発明の第1の実施形態のポリイミド、及び、本発明の第2の実施形態のポリイミド溶液組成物中のポリイミドは、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して50モル%より多く含むポリイミドであり、CpODA等を含むテトラカルボン酸成分と、TFMBを含むジアミン成分とから得られる。
【0027】
ここで用いるテトラカルボン酸成分のCpODA等としては、6種類の立体異性体のうち、trans-endo-endo-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸類等(trans-endo-endo体)および/またはcis-endo-endo-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸類等(cis-endo-endo体)を含むものが好ましいことがある。ある実施態様においては、CpODA等中のtrans-endo-endo体および/またはcis-endo-endo体の割合は、合計で、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上であることが好ましい。
【0028】
CpODA等は、1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0029】
本発明の第1の実施形態のポリイミド、及び、本発明の第2の実施形態のポリイミド溶液組成物中のポリイミドは、前記化学式(1)で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位の1種以上を、全繰り返し単位に対して50モル%以下の範囲で含むことができる。
【0030】
他の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、CpODA等以外の、他の芳香族または脂肪族テトラカルボン酸類のいずれをも使用することができる。例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-オキシジフタル酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、オクタヒドロペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、6-(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸、および、これらのテトラカルボン酸の誘導体(テトラカルボン酸二無水物など)等が挙げられる。これらのうちでは、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-オキシジフタル酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸等の誘導体や、これらの酸二無水物がより好ましい。これらのテトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0031】
また、組み合わせるジアミン成分が前記化学式(1)で表される繰り返し単位を与えるジアミン成分でない場合、他の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分は、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分、すなわち、CpODA等であってもよい。
【0032】
他の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、TFMB以外の、他の芳香族または脂肪族ジアミン類のいずれをも使用することができる。例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジアミノ-ビフェニル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、m-トリジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-p-フェニレンビス(p-アミノベンズアミド)、4-アミノフェノキシ-4-ジアミノベンゾエート、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ビス(4-アミノフェニル)エステル、p-フェニレンビス(p-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジカルボキシレート、[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(4-アミノベンゾエート)、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、p-メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3-ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]-3’,6’-ジイルビス(オキシ))ジアニリン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-プロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソプロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-sec-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-tert-ブチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノシクロへキサン等やこれらの誘導体が挙げられる。これらのうちでは、p-フェニレンジアミン、m-トリジン、4,4’-オキシジアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]-3’,6’-ジイルビス(オキシ))ジアニリン等がより好ましい。これらのジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0033】
また、組み合わせるテトラカルボン酸成分が前記化学式(1)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分でない場合、他の繰り返し単位を与えるジアミン成分は、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を与えるジアミン成分、すなわち、TFMBであってもよい。
【0034】
本発明の第1の実施形態のポリイミド、及び、本発明の第2の実施形態のポリイミド溶液組成物(以下、単に本発明のポリイミド、及び、本発明のポリイミド溶液組成物ともいう)は、例えば、次のようにして製造することができる。ただし、本発明のポリイミド、及び、本発明のポリイミド溶液組成物の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0035】
本発明のポリイミド溶液組成物は、溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モル、好ましくはテトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比[ジアミン成分のモル数/テトラカルボン酸成分のモル数]が好ましくは0.90~1.10、より好ましくは0.95~1.05の割合で反応させることによって、好適に得ることができる。
【0036】
より具体的には、溶剤にジアミン成分を溶解し、この溶液に攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分を徐々に添加し、必要に応じて、好ましくは室温~80℃の範囲で0.5~30時間攪拌した後、昇温してイミド化反応を行うことで、ポリイミド溶液が得られる。テトラカルボン酸成分を添加した後、直ちに昇温してイミド化反応を行うこともできる。また、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分の添加順序を逆にすることも可能であり、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分を同時に溶剤に添加することも可能である。
【0037】
イミド化の方法は特に限定されず、公知の熱イミド化、または化学イミド化の方法を好適に適用することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを含む溶液を100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150~250℃の範囲の温度で、0.5~72時間攪拌して、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることで、イミド化反応を行うことができる。化学イミド化の場合は、反応溶液に化学イミド化剤(無水酢酸などの酸無水物や、ピリジン、イソキノリン、トリエチルアミンなどのアミン化合物)を加えて反応を行う。必要に応じて、イミド化触媒などを反応溶液に加えて反応を行ってもよい。
【0038】
また、反応時に生成する水を除去しながらイミド化反応を行ってもよい。
【0039】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比がジアミン成分過剰である場合、必要に応じて、ジアミン成分の過剰モル数に略相当する量のカルボン酸誘導体を添加し、テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比を略当量に近づけることができる。ここでのカルボン酸誘導体としては、実質的にポリイミド溶液の粘度を増加させない、つまり実質的に分子鎖延長に関与しないテトラカルボン酸、もしくは末端停止剤として機能するトリカルボン酸とその無水物、ジカルボン酸とその無水物などが好適である。
【0040】
ポリイミド溶液を調製する際に使用する溶媒は、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が好ましく、特にN,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましいが、原料モノマー成分と生成するポリイミドが溶解すれば、どんな種類の溶媒であっても問題はなく使用できるので、特にその構造には限定されない。溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o-クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。なお、溶媒は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0041】
上記のようにイミド化反応を行った後、得られた反応溶液をそのまま、または濃縮もしくは希釈して、さらに必要に応じて後述する添加剤等を添加して、本発明のポリイミド溶液組成物として使用することができる。あるいは、得られた反応溶液から可溶性のポリイミドを単離し、単離したポリイミドを溶媒に加えて、本発明のポリイミド溶液組成物を得ることもできる。ポリイミドの単離は、例えば、得られた可溶性のポリイミドを含む反応溶液を水などの貧溶媒に滴下または混合して、ポリイミドを析出(再沈殿)させることで行うことができる。
【0042】
本発明のポリイミド溶液組成物は、少なくともポリイミドと溶媒とを含み、溶媒とポリイミドの合計量に対して、ポリイミドが5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上の割合であることが好適である。この濃度が低すぎると、例えばポリイミドフィルムを製造する際に得られるポリイミドフィルムの膜厚の制御が難しくなることがある。なお、通常は、ポリイミドが60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることが好適である。
【0043】
本発明のポリイミド溶液組成物の溶媒としては、ポリイミドが溶解すれば問題はなく、特にその構造は限定されない。ポリイミド溶液組成物の溶媒としては、上記のポリイミド溶液を調製する際に使用した溶媒と同様のものが挙げられ、ポリイミド溶液を調製する際に使用した溶媒をそのまま、ポリイミド溶液組成物の溶媒として使用することができる。また、必要に応じて、上記のようにして調製したポリイミド溶液組成物から溶媒を除去、または溶媒を加えてもよい。
【0044】
本発明において、ポリイミドの対数粘度は、特に限定されないが、30℃での濃度0.5g/dLのN,N-ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上、より好ましくは0.4dL/g以上、特に好ましくは0.5dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.2dL/g以上では、得られるポリイミドの機械強度や耐熱性に優れる。
【0045】
本発明において、ポリイミド溶液組成物の粘度(回転粘度)は、特に限定されないが、E型回転粘度計を用い、温度25℃、せん断速度20sec-1で測定した回転粘度が、0.01~1000Pa・secが好ましく、0.1~100Pa・secがより好ましい。また、必要に応じて、チキソ性を付与することもできる。上記範囲の粘度では、コーティングや製膜を行う際、ハンドリングしやすく、また、はじきが抑制され、レベリング性に優れるため、良好な被膜が得られる。
【0046】
本発明のポリイミド溶液組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、フィラー(シリカ等の無機粒子など)、染料、顔料、シランカップリング剤などのカップリング剤、プライマー、難燃材、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤(流動補助剤)、剥離剤などを含有することができる。
【0047】
本発明のポリイミドは、上記のようにして調製したポリイミド溶液組成物から溶媒を除去することによって、好適に得ることができる。例えば、ポリイミド溶液組成物を基材上に流延・塗布し、ポリイミド溶液組成物を基材上で加熱して、溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルム/基材積層体を製造することができる。加熱処理の温度は、特に限定されないが、通常、80~500℃、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~450℃程度の温度である。加熱処理は、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で行うことができるが、通常、真空中、或いは不活性ガス中で行うことが望ましい。そして、この基材上に形成されたポリイミドフィルムを基材から剥離することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0048】
ここで、基材としては、特に限定されず、例えばセラミック(ガラス、シリコン、アルミナ)、金属(銅、アルミニウム、ステンレス)、耐熱プラスチックフィルム(ポリイミドフィルム)などの基材を用いることができる。ある実施態様においては、基材としては、ガラスが好ましく、ポリイミドフィルムをガラス基材上に形成したポリイミドフィルム/ガラス基材積層体は、例えば、ディスプレイ用の基板などを製造するために好適に用いられる。
【0049】
また、ポリイミド溶液組成物を基材上に流延・塗布し、基材上のポリイミド溶液組成物を自己支持性となる程度にまで乾燥し、得られた自己支持性フィルムを基材上から剥離し、そのフィルムの端部を固定した状態で加熱して、溶媒を除去することによっても、ポリイミドフィルムを好適に製造することができる。自己支持性フィルム製造時の乾燥条件は適宜決めることができるが、例えば、ポリイミド溶液組成物を基材上で50~300℃程度の温度範囲で乾燥すればよい。自己支持性フィルムの加熱処理の温度は、特に限定されないが、通常、80~500℃、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~480℃程度の温度である。この方法においても、加熱処理は、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で行うことができるが、通常、真空中、或いは不活性ガス中で行うことが望ましい。
【0050】
なお、本発明のポリイミドの形態は、フィルム、ポリイミドフィルムと他の基材との積層体に限定されるものではなく、コーティング膜、粉末、ビーズ、成型体、発泡体なども好適に挙げることができる。
【0051】
このようにして得られる本発明のポリイミドは、厚みが10μmのフィルムで測定した場合の100~250℃の間の線熱膨張係数は、好ましくは25ppm/K以下、より好ましくは20ppm/K以下、特に好ましくは15ppm/K以下であることが好ましい。線熱膨張係数が大きいと、金属などの導体との線熱膨張係数の差が大きく、回路基板を形成する際に反りが増大するなどの不具合が生じることがある。なお、本発明における線熱膨張係数は、フィルム厚みが10μmのポリイミドフィルムについて、フィルム幅が4mm、チャック間距離が15mm、引張荷重が2g、昇温速度が20℃/分の条件で測定した値であり、線熱膨張係数は、フィルム厚みが厚くなると小さくなる傾向がある。
【0052】
本発明のポリイミドは、また、厚みが10μmのフィルムで測定した場合の波長400nmの光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上であることが好ましい。ポリイミドフィルムをディスプレイ用途等で使用する場合、光透過率が低いと光源を強くする必要があり、エネルギーがかかるといった問題等を生じることがある。なお、波長400nmの光透過率は、フィルム厚みが厚くなると低下する傾向がある。
【0053】
本発明のポリイミドは、厚みが10μmのフィルムで測定した場合のヘイズが、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下であることが好ましい。ポリイミドフィルムをディスプレイ用途等で使用する場合、ヘイズが高いと、光が散乱して画像がぼやけることがある。なお、ヘイズは、フィルム厚みが厚くなると大きくなる傾向がある。
【0054】
本発明のポリイミドからなるフィルムは、用途にもよるが、フィルムの厚みとしては、好ましくは1μm~250μm、より好ましくは1μm~150μm、さらに好ましくは1μm~100μm、特に好ましくは1μm~80μmである。ポリイミドフィルムを光が透過する用途に使用する場合、ポリイミドフィルムが厚すぎると光透過率が低くなる恐れがある。
【0055】
上記のようにして得られたポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムは、その片面もしくは両面に導電性層を形成することによって、フレキシブルな導電性基板を得ることができる。
【0056】
フレキシブルな導電性基板は、例えば次の方法によって得ることができる。すなわち、第一の方法としては、ポリイミドフィルム/基材積層体を基材からポリイミドフィルムを剥離せずに、そのポリイミドフィルム表面に、スパッタ、蒸着、印刷などによって、導電性物質(金属もしくは金属酸化物、導電性有機物、導電性炭素など)の導電層を形成させ、導電性層/ポリイミドフィルム/基材の導電性積層体を製造する。その後必要に応じて、基材より導電性層/ポリイミドフィルム積層体を剥離することによって、導電性層/ポリイミドフィルム積層体からなる透明でフレキシブルな導電性基板を得ることができる。
【0057】
第二の方法としては、ポリイミドフィルム/基材積層体の基材からポリイミドフィルムを剥離して、ポリイミドフィルムを得、そのポリイミドフィルム表面に、導電性物質(金属もしくは金属酸化物、導電性有機物、導電性炭素など)の導電層を、第一の方法と同様にして形成させ、導電性層/ポリイミドフィルム積層体、または導電性層/ポリイミドフィルム/導電性層積層体からなる透明でフレキシブルな導電性基板を得ることができる。
【0058】
なお、第一、第二の方法において、必要に応じて、ポリイミドフィルムの表面に導電層を形成する前に、スパッタ、蒸着やゲル-ゾル法などによって、水蒸気、酸素などのガスバリア層、光調整層などの無機層を形成しても構わない。
【0059】
また、導電層は、フォトリソグラフィ法や各種印刷法、インクジェット法などの方法によって、回路が好適に形成される。
【0060】
このようにして得られる本発明の基板は、本発明のポリイミドによって構成されたポリイミドフィルムの表面に、必要に応じてガスバリア層や無機層を介し、導電層の回路を有するものである。この基板は、フレキシブルであり、高い透明性、折り曲げ性、耐熱性が優れ、さらに極めて低い線熱膨張係数を有するので微細な回路の形成が容易である。したがって、この基板は、ディスプレイ用、タッチパネル用、または太陽電池用の基板として好適に用いることができる。
【0061】
すなわち、この基板に、蒸着、各種印刷法、或いはインクジェット法などによって、さらにトランジスタ(無機トランジスタ、有機トランジスタ)が形成されてフレキシブル薄膜トランジスタが製造され、そして、表示デバイス用の液晶素子、EL素子、光電素子として好適に用いられる。
また、上記第一の方法においては、ポリイミドフィルム/基材積層体の表面に、導電層だけでなく、トランジスタおよび/または、デバイスに必要な他の素子や構造の少なくとも一部を形成した後に、基材を剥離してもよい。
【実施例
【0062】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
以下の各例において評価は次の方法で行った。
【0064】
<ポリイミド溶液の評価>
[イミド化率]
内部標準物質にテトラメチルシランを用い、ポリイミド溶液の希釈溶媒にジメチルスルホキシド-dを用い、日本電子製M-AL400でポリイミド溶液のH-NMR測定を行い、芳香族プロトンのピークの積分値とアミドプロトンのピークの積分値の比から、下記式(I)によってイミド化率を算出した。
【0065】
イミド化率(%)={1-(Y/Z)×(1/X)}×100 (I)
X:モノマーの仕込み量から求められる、イミド化率0%の場合のアミドプロトンピークの積分値/芳香族プロトンピークの積分値
Y:H-NMR測定から得られるアミドプロトンピークの積分値
Z:H-NMR測定から得られる芳香族プロトンピークの積分値
【0066】
<ポリイミドフィルムの評価>
[400nm光透過率]
紫外可視分光光度計/V-650DS(日本分光製)を用いて、膜厚10μm、5cm角サイズのポリイミドフィルムの波長400nmにおける光透過率を測定した。
【0067】
[ヘイズ]
濁度計/NDH2000(日本電色工業製)を用いて、JIS K7136の規格に準拠して、膜厚10μm、5cm角サイズのポリイミドフィルムのヘイズを測定した。
【0068】
[線熱膨張係数(CTE)]
膜厚10μmのポリイミドフィルムを幅4mmの短冊状に切り取って試験片とし、TMA/SS6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用い、チャック間距離15mm、引張荷重2g、昇温速度20℃/分で500℃まで昇温した。得られたTMA曲線から、100℃から250℃までの線熱膨張係数を求めた。
【0069】
[引張弾性率、破断点伸度、破断点応力]
ポリイミドフィルムをIEC-540(S)規格のダンベル形状に打ち抜いて試験片(幅:4mm)とし、ORIENTEC社製TENSILONを用いて、チャック間長30mm、引張速度2mm/分で、初期の引張弾性率、破断点伸度、破断点応力を測定した。
【0070】
以下の各例で使用した原材料の略称、純度等は、次のとおりである。
【0071】
[ジアミン成分]
TFMB: 2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン〔純度:99.83%(GC分析)〕
BAFL: 9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン
4,4’-ODA: 4,4’-オキシジアニリン〔純度:99.9%(GC分析)〕
BAPB: 4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル
TPE-Q: 1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
[テトラカルボン酸成分]
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物
PMDA-H: 1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物〔純度:99.9%(GC分析)〕
【0072】
[溶媒]
GBL: γ―ブチロラクトン
DMAc: N,N-ジメチルアセトアミド
【0073】
〔実施例1〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 7.00g(21.9ミリモル)とBAFL 6.23g(17.9ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の95.44g(DMAcが31.81gとGBLが63.63g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 15.28g(39.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0074】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から450℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0075】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0076】
〔実施例2〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 9.00g(28.1ミリモル)とBAFL 6.53g(18.7ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の112.26gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 18.00g(46.8ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0077】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から430℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0078】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0079】
〔実施例3〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 9.00g(28.1ミリモル)とBAFL 4.20g(12.0ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の95.85gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 15.43g(40.2ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0080】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0081】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0082】
〔実施例4〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 10.00g(31.2ミリモル)とBAFL 2.72g(7.8ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の92.82gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 15.00g(39.0ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0083】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0084】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0085】
〔実施例5〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 10.00g(31.2ミリモル)とBAFL 1.20g(3.5ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の82.18gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 13.34g(34.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0086】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0087】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0088】
〔実施例6〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 40.00g(124.9ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の264.04gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 48.01g(124.9ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0089】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0090】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0091】
〔実施例7〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 8.00g(25.0ミリモル)とBAFL 2.90g(8.3ミリモル)と4,4’-ODA 1.67g(8.3モリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の95.66gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 16.00g(41.6ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0092】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0093】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例8〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 8.00g(25.0ミリモル)とBAFL 4.35g(12.5ミリモル)とBAPB 1.53g(4.2モリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の100.07gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 16.00g(41.6ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0095】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0096】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0097】
〔実施例9〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 10.00g(31.2ミリモル)とBAFL 4.66g(13.4ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の90.06g(DMAcが30.02gとGBLが60.04g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 12.86g(33.5ミリモル)とPMDA-H 2.5g(11.1ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0098】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0099】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0100】
〔実施例10〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 10.00g(31.2ミリモル)とTPE-Q 3.91g(13.4ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の93.18g(DMAcが31.06gとGBLが62.12g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 17.15g(44.6ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0101】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から370℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0102】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0103】
〔比較例1〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 7.00g(21.9ミリモル)とBAFL 7.62g(21.9ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の94.26gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 16.80g(43.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0104】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0105】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によって、高透明性と低線熱膨張性の両方を高いレベルで達成したポリイミド、すなわち、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドを提供することができる。また、本発明によって、高い透明性と、極めて低い線熱膨張係数を有するポリイミドが得られるポリイミド溶液組成物を提供することができる。本発明のポリイミド、及び本発明のポリイミド溶液組成物から得られるポリイミドは、透明性が高く、且つ低線熱膨張係数であって微細な回路の形成が容易であり、特にディスプレイ用途などの基板を形成するために好適に用いることができる。