(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
E01F8/00
(21)【出願番号】P 2022016512
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516365426
【氏名又は名称】株式会社東進工事
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆志
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2044472(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0092227(KR,A)
【文献】実開昭59-092212(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
E01F 13/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路のコンクリート壁の天端上に立設された遮音壁の既存H形支柱を補強する補強H形支柱が該コンクリート壁の側面から該既存H形支柱に対面して並設され、該補強H形支柱と該既存H形支柱間を連結する連結金具であって、
前記連結金具は前記補強H形支柱に固着される補強側部材と前記既存H形支柱に固着される既存側部材から形成され、
前記補強側部材は前記既存H形支柱のフランジ面に固定される方形の平板で形成されるベース板と該ベース板の縦方向の中心線上に垂設される方形の平板で形成されるスライド板からなり、
前記既存側部材は前記既存H形支柱のフランジの表面に接する方形の平板と該フランジの裏面及び小口に接するL字の板が結合したユの字状で左右対称形の1対の部材からなる掴持部と、表面に接する該方形の平板の端縁から垂直方向に垂設される1対の方形の平板の挟持部からなり、該挟持部は前記スライド板を挟持する、ことを特徴とする既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具。
【請求項2】
前記連結用金具はすべての部材が防錆処理され、前記補強側部材と前記補強H形支柱および前記既存側部材と前記H形支柱はいずれも螺着され、該補強側部材のスライド板と該既存側部材の挟持部は間隔調整後に螺着される、ことを特徴とする請求項1に記載の既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具。
【請求項3】
前記連結用金具は前記補強H形支柱および前記既存H形支柱間に2ヶ所設置される、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路のコンクリート手摺壁上に立設された遮音壁の劣化した既存H形支柱を補強するための補強H形支柱と既存H形支柱の間に架け渡される連結用金具に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備されたことから、今後急速に老朽化することが懸念されていて、道路に設置される遮音壁についても老朽化が進んでいる。このような事情を背景に、出願人は道路の側壁上に設置された金属パネルの更新工事に適したH形支柱に関する特許を取得したが、その内容は特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の発明は、発明の名称「支柱支持金具およびこの金具を使用した構成支柱の補強または設置方法」に係り、「既設の金属パネルの更新工事や補強工事における支柱、特に支柱支持金具について、支柱とコンクリート側壁面との遊間の有無に拘わらずコンクリート側壁面に密着することができる支柱支持金具を提供する。」ことを課題としていて、その解決手段を「H形鋼支柱のコンクリート側壁に対面する以外の3面を囲繞するコの字部材と、コンクリート側壁に密着するとともにコの字部材の両脇に密着するL字部材と、からなり、H形鋼支柱のフランジに密着するコの字部材の面には水平方向に2つのフランジ接合ボルト貫通孔が貫設されてフランジとボルト接合し、L字部材の1の面には後施工のアンカーボルトが貫通するアンカーボルト貫通長円孔が水平方向に1つ以上貫設され、L字部材の他の面の中心部には第1のウエブ接合ボルト貫通孔が貫設されて、後施工で削孔されたコの字部材の両脇面の第2のウエブ接合ボルト貫通孔とボルト接合される、」構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、道路に設置される遮音壁には、コンクリート側壁の天端上に立設された遮音壁もあり、この遮音壁の金属パネルはH形支柱に支持されていて、老朽化の多くは、このH形支柱を固定するためのコンクリート側壁内に埋設されるアンカーボルト頭部とH形支柱との接合部分の腐食から始まる。このため、接合部分の更新が必要になるが、H形支柱やアンカーボルト頭部の交換は容易ではなく、時間と費用が嵩むことになる。
【0006】
そこで、本願発明は、コンクリート側壁の天端上に立設される遮音壁の更新工事に適し、コストも掛からず短期間の工期で済むことになる既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具は、道路のコンクリート壁の天端上に立設された遮音壁の既存H形支柱を補強する補強H形支柱が該コンクリート壁の側面から該既存H形支柱に対面して並設され、該補強H形支柱と該既存H形支柱間を連結する連結金具であって、前記連結金具は前記補強H形支柱に固着される補強側部材と前記既存H形支柱に固着される既存側部材から形成され、前記補強側部材は前記既存H形支柱のフランジ面に固定される方形の平板で形成されるベース板と該ベース板の縦方向の中心線上に垂設される方形の平板で形成されるスライド板からなり、前記既存側部材は前記既存H形支柱のフランジの表面に接する方形の平板と該フランジの裏面及び小口に接するL字の板が結合したユの字状で左右対称形の1対の部材からなる掴持部と、表面に接する該方形の平板の端縁から垂直方向に垂設される1対の方形の平板の挟持部からなり、該挟持部は前記スライド板を挟持する、ことを特徴としている。
なお、「ベース板の縦方向」とは、取り付けた状態における概念である。また「フランジの表面」とはフランジの外側の面であり、「フランジの裏面」とは、の表面の反対側の面である。
また、本願請求項2に係る既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具は、請求項1に記載の既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具であって、前記連結用金具はすべての部材が防錆処理され、前記補強側部材と前記補強H形支柱および前記既存側部材と前記H形支柱はいずれも螺着され、該補強側部材のスライド板と該既存側部材の挟持部は間隔調整後に螺着される、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具は、請求項1または請求項2に記載の既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具であって、前記連結用金具は前記補強H形支柱および該既存H形支柱間に2ヶ所設置される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により本願発明は以下の効果を奏する。
(1-1)本願発明に係る補強H形支柱はコンクリート壁の天端上に立設される既存H形支柱に対面してコンクリート壁の側面から並設される。特許文献1に記載の「支柱支持金具」を使用することにより、容易に既存H形支柱に対面して並行に垂設することができる。
(1-2)また、補強H形支柱と既存H形支柱を連結する連結金具は、補強側部材と既存側部材から形成されていて、スライドして連結部の長さが調整可能であり、さらに既存側部材の掴持部は上下方向と共に左右方向にもスライド可能であるので、取り付け時の無理な残留応力が発生することなく補強H形支柱と既存H形支柱を力学的に一体化することができる。なお、既存の遮音パネルは既存H形支柱のフランジ面内側にバネで押圧されて固定されているので、既存側部材のユの字状の掴持部を遮音パネルと補強H形支柱のフランジ間に挿入することは容易である。
(2-1)連結用金具はすべての部材が予め防錆処理されている。防錆処理にはメッキ処理や塗装処理等があるが、メッキ処理の場合はメンテナンスフリーに近い状態となり、塗装処理であっても、外観から劣化状態の確認が容易であるので、メンテナンスは容易である。
(2-2)連結用金具の接合部の溶接箇所については現場溶接ではなく工場溶接に拠っているし、プレートの重ね合わせ部の固定が螺着に拠っていて現場溶接することはない。このため連結用金具の取付作業は極めて容易に確実に行うことができ、その後のメンテナンスも容易である。
(3)連結用金具を補強H形支柱および既存H形支柱間に2ヶ所設置することにより、極めて強固に固着されて力学的に一体となって、相互の緩みがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例に係る補強H形支柱と既存H形支柱の取付状態を示す図であって、(1)は側面図、(2)は正面図、である。
【
図2】
図2は、実施例に係る連結用金具図であって、(1)は連結用金具の平面図、(2)は連結用金具の側面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態に係る実施例について、
図1および
図2を参照して説明する。なお、
図1および
図2において、符号1は実施例に係る連結金具、符号10は補強側部材、符号11はベース板、符号12はスライド板、符号20は既存側部材、符号21は掴持部、符号22は挟持部、符号23は補強リブ、符号30は補強H形支柱、符号31は補強H形支柱のフランジ、符号40は既存H形支柱、符号41は既存H形支柱のフランジ、符号43は支柱支持金具、符号45は金属パネル、符号50は道路のコンクリート壁、である。
【実施例】
【0011】
まず、実施例に係る連結用金具1に関係する全体的な設置状態について、
図1を参照して説明する。
【0012】
既存H形支柱40は道路のコンクリート壁50の天端上に立設された遮音壁の支柱であり、既存H形支柱40、40・・・間には複数段の金属パネル45が挿入されて遮音壁が形成されている。補強H形支柱30は道路のコンクリート壁50の側壁(
図1では外壁に相当)から支柱支持金具43により既存H形支柱40に並行に対面して垂設されていて、補強H形支柱30と既存H形支柱40間には上下方向の2箇所に連結金具1が取り付けられている。
【0013】
つぎに、実施例に係る連結用金具1について、主に
図2を参照して説明する。
連結用金具1は補強H形支柱のフランジ31に取り付けられる補強側部材10と既存H形支柱のフランジ41に取り付けられる既存側部材20から形成されている。
【0014】
補強側部材10は平面から見た形状がT字状を呈していて、既存H形支柱のフランジ面31にボルト接合で固定される方形の平板のベース板11とベース板11の縦方向の中心線上に垂設される方形の平板のスライド板12から形成されている。なお、ベース板11とスライド板12は予め工場で溶着されている。
【0015】
平面から見た形状が左右対称形で向かい合わせとなる1対の金具から形成される既存側部材20は、既存H形支柱のフランジ41の表面に接する方形の平板とこのフランジ41の裏面及び小口に接するL字の板が結合したユの字状を呈する掴持部21と、補強側部材10のスライド板12方形の平板からなる1対の挟持部22から形成されている。そして、垂設されている既存H形支柱のフランジ41を上下方向にスライド可能に掴持するとともに、水平方向にもスライド可能となっている。また、掴持部21と挟持部22の直交する平板は補強リブ部23で予め補強されている。
【0016】
ここで、連結用金具1の使用手順例について説明する。
(1)道路のコンクリート壁50の側壁から既存H形支柱40に対面するように補強H形支柱30を垂設する。垂設に際しては、特許文献1に記載の支柱支持金具43を使用する。なお、補強H形支柱30には予め上下の2箇所に補強側部材10が固定されて取り付けられている。
(2)補強H形支柱30の補強側部材10が固定されている位置に対応するようにして、1対の金具から形成される既存側部材20の掴持部21のそれぞれの金具を既存H形支柱のフランジ41の両脇から挿入する。金属パネル45は既存H形支柱のフランジ41にバネで付勢されているので、金属パネル45を押圧することにより金属パネル45と既存H形支柱のフランジ41の間には隙間が生じ、この隙間に掴持部21を形成するプレートを挿入することは容易にできる。そして、掴持部21を上下方向にスライドさせて補強側部材10の取り付け位置に一致させる。掴持部21の位置決め後は掴持部21の補強側部材10側のプレートに設置されている図示外の締め付けボルトで締め付けて、掴持部21を確実に既存H形支柱のフランジ41に固定する。さらに、スライド板12を挟持している挟持部22をスライド板12と共に螺着する。
(3)以上で、連結用金具1は、補強側部材10と既存側部材20を介して補強H形支柱30と既存H形支柱40を連結し、力学的にも同体となり、コンクリート壁50の天端上に立設される遮音壁の更新工事は完了する。
【符号の説明】
【0017】
1 実施例に係る連結金具
10 補強側部材
11 ベース板
12 スライド板
20 既存側部材
21 掴持部
22 挟持部
30 補強H形支柱
31 補強H形支柱のフランジ
40 既存H形支柱
41 既存H形支柱のフランジ
43 支柱支持金具
45 金属パネル
50 道路のコンクリート壁
【要約】
【課題】コンクリート側壁の天端上に立設される遮音壁の更新工事に適していて、底コストで短期間の工期で済ませることができる既存H形支柱と補強H形支柱の連結用金具を提供する。
【解決手段】道路のコンクリート壁の天端上に立設された遮音壁の既存H形支柱を補強する補強H形支柱が該コンクリート壁の側面から該既存H形支柱に対面して並設されて、該補強H形支柱と該既存H形支柱間を連結する連結金具であって、前記連結金具は前記補強H形支柱に固着される補強側部材と前記既存H形支柱に固着される既存側部材から形成され、前記補強側部材は前記既存H形支柱のフランジ面に固定される方形の平板で形成されるベース板と該ベース板の縦方向の中心線上に垂設される方形の平板で形成されるスライド板からなり、前記既存側部材は前記既存H形支柱のフランジを両側から掴持する掴持部と前記スライド板を挟持する挟持部とから形成される、構成とした。
【選択図】
図2