(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】注射可能な医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61L 27/52 20060101AFI20220511BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220511BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220511BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20220511BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220511BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220511BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20220511BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20220511BHJP
A61K 31/4152 20060101ALI20220511BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20220511BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220511BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220511BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220511BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61L27/52
A61L27/54
A61L27/20
A61L27/58
A61K9/06
A61K47/38
A61K31/5415
A61K31/403
A61K31/4152
A61K31/485
A61K47/20
A61K47/22
A61P25/04
A61P29/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020153559
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2020-12-04
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514158855
【氏名又は名称】ユー ピー エム キュンメネ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヌオッポネン マルクス
(72)【発明者】
【氏名】パーソネン ラウリ
(72)【発明者】
【氏名】メリルオト アンネ
(72)【発明者】
【氏名】リッサネン ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】ユカライネン ハッリ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540804(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103520739(CN,A)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2017年,Volume 532, Issue 1,269-280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 31/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノフィブリル状セルロースの含有量が1~
7%(w/w)であり、前記ナノフィブリル状セルロースの平均フィブリル径が200nm以下である、ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルと、
凝結体として、及び/又は50nm超の平均径を有する粒子として存在する、医薬化合物と、
を含
み、
25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0.001~100Paで徐々に増加させて応力制御回転レオメーターによって決定される、
貯蔵弾性率が350~5000Paの範囲であり、降伏応力が25~300Paの範囲である
、徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項2】
前記ナノフィブリル状セルロースが、1~200nmの平均フィブリル径を有
する、請求項1に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項3】
前記ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、22℃±1℃の水性媒体中、0.5%(w/w)の濃度で回転レオメーターによって決定される、ゼロせん断粘度が1000~100000Pa・sであり、降伏応力が1~50Paである、請求項1又は請求項2に記載の徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項4】
前記ナノフィブリル状セルロースが化学的未変性ナノフィブリル状セルロースである、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項5】
前記ナノフィブリル状セルロースがアニオン変性ナノフィブリル状セルロースである、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項6】
前記アニオン変性ナノフィブリル状セルロースの含有量が、4~
7%(w/w)又は1.5~6.5%(w/w)である、請求項
5に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項7】
前記アニオン変性ナノフィブリル状セルロースの含有量が、1.5~3.5%(w/w)である、請求項
6に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項8】
前記医薬化合物の含有量が0.1~10%(w/w)である、請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項9】
前記医薬化合物の含有量が0.2~5%(w/w)である、請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項10】
前記医薬化合物が、25℃で0.001mg/ml超の水への溶解度を有する、請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項11】
前記医薬化合物が、25℃で0.01mg/ml超の水への溶解度を有する、請求項1~請求項
10のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項12】
前記医薬化合物が、25℃で0.1mg/ml超の水への溶解度を有する、請求項1~請求項
11のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項13】
前記医薬化合物が鎮痛化合物を含む、請求項1~請求項
12のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項14】
前記医薬化合物が、オピオイド又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む、請求項
13に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項15】
前記オピオイド又は前記非ステロイド性抗炎症薬が、メロキシカム、カルプロフェン、メタミゾール/ジピロン及びブプレノルフィンから選択される医薬化合物を含む、請求項
14に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項16】
水を82~98.9%(w/w)含む、請求項1~請求項
15のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項17】
水を90~98.9%(w/w)含む、請求項1~請求項
16のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項18】
有機溶媒を含む、請求項1~請求項
17のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項19】
前記有機溶媒がジメチルスルホキシド及び/又はN-メチル-2-ピロリドンを含む、請求項
18に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項20】
前記有機溶媒を5~55%(w/w)含む、請求項
18又は請求項
19に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項21】
皮下投与、皮内投与又は筋肉内投与用である、請求項1~請求項20のいずれか1項に記載の徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項22】
3~14日間、前記医薬化合物の徐放を提供するための、
請求項1~請求項21のいずれか1項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項23】
前記医薬化合物の少なくとも18%(w/w)又は少なくとも25%(w/w)が3日~14日で放出される、請求項
22に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項24】
最初の日の間に前記医薬化合物の20~40%(w/w)を徐放する、
請求項1~請求項
23のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項25】
最初の6~12時間の間に前記医薬化合物の20~40%(w/w)を徐放し、4日目~7日目の間のその後の累積放出が55%以上又は70%以上である、
請求項
24に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項26】
医薬化合物を対象に注射するために使用するための、請求項1~請求項
25のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項27】
対象における医薬化合物の徐放を提供するために使用するための、請求項1~請求項
26のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項28】
前記対象が動物である、請求項25又は請求項
27に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤。
【請求項29】
請求項1~請求項
28のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤を含有するシリンジ。
【請求項30】
請求項1~請求項
28のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤を含有するインプラント。
【請求項31】
請求項1~請求項
28のいずれか一項に記載の
徐放性の注射可能な医薬製剤又は請求項
30に記載のインプラントを調製するためのナノフィブリル状セルロースの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、注射可能及び移植可能な医薬製剤、並びに医薬化合物を対象に注射するために使用するための、及び対象における医薬化合物の徐放を提供するために使用するための注射可能な医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の場合、医薬化合物を、投与後に遅延して、長期間にわたって及び/又は体の特定の標的に送達するために使用される放出調節(modified-release)投与量として、患者などの対象に投与することが必要である。徐放性剤形は、医薬化合物の一定濃度又はそうでなければ所望の濃度を維持するための所定の速度及び/又は制御された速度で医薬化合物を放出するように設計された剤形である。注射可能な製剤などの様々な薬物製剤を使用することができる。しかしながら、このような製剤で使用される多くの担体は問題があり、例えば担体材料が医薬品の放出プロファイルに大きな影響を与える可能性がある。
【0003】
長期間にわたって徐放を可能にする注射可能な材料が市場で必要とされている。製剤の安定性、バイオアベイラビリティ、放出動態及び注射可能性は、最大の有効性を得るために克服しなければならない課題である。
【発明の概要】
【0004】
ナノフィブリル状セルロースを担体又はマトリックス材料として使用することによって、制御放出様式で医薬品を対象に送達するために使用され得る注射剤、インプラントなどの放出調節材料及び投与量を得ることが可能であることが分かった。
【0005】
本出願は、
ナノフィブリル状セルロースの含有量が1~8%(w/w)であり、前記ナノフィブリル状セルロースの平均フィブリル径が200nm以下、例えば1~200nmである、ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルと、
医薬化合物と、
を含む、注射可能な医薬製剤であって、
25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0.001~100Paで徐々に増加させて応力制御回転レオメーターによって決定される、貯蔵弾性率が350Pa以上であり、降伏応力/破壊強度が25Pa以上である製剤を提供する。
【0006】
本出願は、注射可能な医薬製剤を含有するシリンジを提供する。
【0007】
本出願は、注射可能な医薬製剤を含有するインプラントを提供する。
【0008】
本出願は、注射可能な医薬製剤又はインプラントを調製するためのナノフィブリル状セルロースの使用を提供する。
【0009】
主な実施形態は、独立請求項で特徴付けられる。様々な実施形態が従属請求項に開示される。特許請求の範囲及び明細書に列挙される実施形態及び実施例は、特に明記されていない限り、相互に自由に組み合わせることができる。
【0010】
ヒドロゲルとして存在するナノフィブリル状セルロースは、非毒性で、生体適合性で、生分解性でもある親水性マトリックスを提供する。マトリックスは、例えばセルラーゼを添加することによって、酵素的に分解することができる。一方、ヒドロゲルは生理学的条件で安定であり、追加の薬剤を使用して架橋する必要はない。不溶性担体又はマトリックス材料としてのナノフィブリル状セルロースは安定であり、例えば貯蔵中又は投与後に容易に分解しない。ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルの透過性などの特性は、ナノフィブリル状セルロースの化学的特性及び/又は物理的特性を調整することによって制御され得る。
【0011】
ナノフィブリル状セルロースを含むヒドロゲルの一定の有利な特性には、可撓性、弾性及び再成形性(remouldability)が含まれる。ヒドロゲルは多くの水を含有しているので、分子に対する優れた透過性も示す。実施形態のヒドロゲルはまた、高い水分保持能力及び分子拡散特性速度を提供する。
【0012】
比較的大量の水を含有する濃度のナノフィブリル状セルロースは、注射用製剤を調製するための適切なマトリックスであることが分かった。ナノフィブリル状セルロースの濃度は、マトリックスからの医薬品の放出に対する効果をほとんど有さず、ナノフィブリル状セルロースマトリックスからの医薬品の拡散は、主に医薬品自体の特性に基づくことが発見された。したがって、異なる用途のための様々な異なる医薬製剤を得ること、並びに薬物の量及び組成物からの放出を制御及び調整することが可能である。安定したナノフィブリル状セルロースマトリックスを使用することによって、薬物を投与するための一定の条件を提供することが可能である。これは、注射可能又は移植可能な製剤が望まれる場合に特に有利である。
【0013】
したがって、鎮痛薬などの目的の薬物による動物又はヒト対象の、延長された、持続された及び/又は長期の処置を得ることが可能である。試験では、注射可能な製剤で3~14日間に渡る徐放が容易に得られることが認められた。例えば、最初の6時間以内に全用量のわずか5~10%の放出などの、薬物放出は高いが制御可能な初期バーストを得ることも可能であった。本組成物は、長期鎮痛処置、すなわち、疼痛管理、特に術後疼痛管理に適しているが、慢性疼痛管理にも適している。
【0014】
医薬製剤及び組成物は、実験動物、例えばげっ歯類などの動物に投与するのに適している。動物はヒトを含んでも含まなくてもよい。医薬製剤は獣医学的医薬製剤であり得る。
【0015】
ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルは、注射可能及び移植可能であり、したがって、物質を所望の対象又は標的に送達することができる。注射中の押出せん断力が、シリンジ内に存在する粘着性材料の粘度を減少させるのに十分大きく、注射後、せん断力が取り除かれた後に、材料が標的中で安定化するので、ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルは自身を容易に注射可能にする擬塑性又はせん断減粘非ニュートン流体である。従来の、すなわちニュートン流体は、この挙動を示さない。この挙動は、筋肉中又は皮膚下に注射する場合に特に有利であり、標的内で注射された材料の所望の安定した形状及び長さを得ることが可能である。この挙動はまた、材料がシリンジ内に存在する場合を含む、貯蔵中に材料を安定化させる。
【0016】
NFCヒドロゲルを、非水溶性又は限定水溶性薬物粉末のマトリックスとして使用して、重力による凝集、凝結、凝固又は付着を防ぎ、よって薬物を安定化させ、バイオアベイラビリティ及び溶解率を増強することができる。ヒドロゲルはまた、経口剤形(ゲルカプセル)又は注射可能な流体で施用され得る。この現象は実験作業中に認められた。安定性のために、注射可能な医薬品を、NFCヒドロゲルが大量の水を含有している場合でさえも、NFCヒドロゲル中で長期間保管することができる。これにより、製剤の調製、充填、提供、保管及び使用のプロセス全体が容易になる。
【0017】
安定性、バイオアベイラビリティ及び徐放特性を示す医薬製剤は、皮下投与、皮内投与又は筋肉内投与に特に適していることが分かった。注射された材料は、対象に望ましくない反応を引き起こすことなく標的内に留まり、医薬化合物が、所望のように効率的に放出され、所望の効果も提供した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、API-NFC注射の溶解セットアップを示す図である。A)それぞれ、溶解バイアル、ステンレス鋼スプリング、ポーチ、金属グリッド及びNFC-API懸濁液を含む注射針である。B)ポーチをわずかに開いたままにするために内側にスプリングを備えた、密封されたセルロースポーチ(Ankom Technologies、F58、5~8μm空隙率)の内側に注射を行った。C)セルロースポーチを緩い金属グリッドの内側に置き、溶解溶液(0.9%NaCl)を含む溶解バイアルに入れた。容器を軌道振盪を備えたインキュベーターに置いた。D)溶解後にセルロースポーチを開いた。NFC-API注射がスプリング周囲に見られる。
【0019】
【
図2】
図2は、天然及び架橋PVAを使用した溶解研究における1時間後のPVA/TiO
2漏出を示す図である。1%シュウ酸架橋を有する10%高分子量PVAは、マトリックスのほとんどをポーチ内に数日間保持した。緩やかな漏出がHPLCカラムを閉塞するかどうか、及びAPIを分析できるかどうかを確認するために、CPFを使用して短時間溶解試験を実施した。試料は左から、(1)10%低分子量PVA、シュウ酸なし、(2)10%低分子量PVA、5%シュウ酸、(3)10%低分子量PVA、20%シュウ酸、(4)対照、10%低分子量PVA、シュウ酸なし、TiO
2なし、(5)10%高分子量PVA、シュウ酸なし、(6)10%高分子量PVA、5%シュウ酸、(7)10%高分子量PVA、20%シュウ酸である。
【0020】
【
図3A】
図3Aは、1%又は5%シュウ酸架橋を有する10%高分子量PVAからのCPF放出を示す図であり、30分の時点での放出を示す。
【0021】
【
図3B】
図3Bは、1%又は5%シュウ酸架橋を有する10%高分子量PVAからのCPF放出を示す図であり、5日目の放出を示す。
【0022】
【
図4】
図4は、NFCデポーからのCPF放出に対するDMSO、NMP及びH
2Oの効果を示す図である。
【0023】
【
図5A】
図5Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0024】
【
図5B】
図5Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0025】
【
図5C】
図5Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0026】
【
図5D】
図5Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0027】
【
図5E】
図5Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。PVAマトリックス。
【0028】
【
図5F】
図5Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0029】
【
図5G】
図5Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0030】
【
図5H】
図5Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0031】
【
図6A】
図6Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0032】
【
図6B】
図6Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0033】
【
図6C】
図6Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0034】
【
図6D】
図6Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0035】
【
図6E】
図6Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0036】
【
図6F】
図6Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0037】
【
図6G】
図6Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0038】
【
図6H】
図6Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0039】
【
図7A】
図7Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。PVAマトリックス。
【0040】
【
図7B】
図7Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。PVAマトリックス。
【0041】
【
図7C】
図7Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0042】
【
図7D】
図7Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0043】
【
図7E】
図7Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0044】
【
図7F】
図7Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0045】
【
図7G】
図7Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0046】
【
図7H】
図7Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0047】
【
図8A】
図8Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0048】
【
図8B】
図8Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0049】
【
図8C】
図8Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0050】
【
図8D】
図8Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0051】
【
図8E】
図8Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。PVAマトリックス。
【0052】
【
図8F】
図8Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0053】
【
図8G】
図8Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0054】
【
図8H】
図8Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0055】
【
図9A】
図9Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0056】
【
図9B】
図9Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0057】
【
図9C】
図9Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0058】
【
図9D】
図9Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0059】
【
図9E】
図9Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0060】
【
図9F】
図9Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0061】
【
図9G】
図9Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0062】
【
図9H】
図9Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0063】
【
図10A】
図10Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。PVAマトリックス。
【0064】
【
図10B】
図10Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。PVAマトリックス。
【0065】
【
図10C】
図10Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0066】
【
図10D】
図10Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0067】
【
図10E】
図10Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0068】
【
図10F】
図10Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0069】
【
図10G】
図10Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0070】
【
図10H】
図10Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0071】
【
図11A】
図11Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0072】
【
図11B】
図11Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0073】
【
図11C】
図11Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0074】
【
図11D】
図11Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0075】
【
図11E】
図11Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。PVAマトリックス。
【0076】
【
図11F】
図11Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0077】
【
図11G】
図11Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0078】
【
図11H】
図11Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0079】
【
図12A】
図12Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0080】
【
図12B】
図12Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0081】
【
図12C】
図12Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0082】
【
図12D】
図12Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0083】
【
図12E】
図12Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0084】
【
図12F】
図12Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0085】
【
図12G】
図12Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0086】
【
図12H】
図12Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0087】
【
図13A】
図13Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。PVAマトリックス。
【0088】
【
図13B】
図13Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。PVAマトリックス。
【0089】
【
図13C】
図13Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0090】
【
図13D】
図13Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0091】
【
図13E】
図13Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0092】
【
図13F】
図13Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0093】
【
図13G】
図13Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0094】
【
図13H】
図13Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、低用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0095】
【
図14A】
図14Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0096】
【
図14B】
図14Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0097】
【
図14C】
図14Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0098】
【
図14D】
図14Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0099】
【
図14E】
図14Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。PVAマトリックス。
【0100】
【
図14F】
図14Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0101】
【
図14G】
図14Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0102】
【
図14H】
図14Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0103】
【
図15A】
図15Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0104】
【
図15B】
図15Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。アニオン性6%NFCマトリックス。
【0105】
【
図15C】
図15Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0106】
【
図15D】
図15Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。アニオン性2%NFCマトリックス。
【0107】
【
図15E】
図15Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0108】
【
図15F】
図15Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。天然1.5%NFCマトリックス。
【0109】
【
図15G】
図15Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。PLGAマトリックス。
【
図15H】
図15Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。PLGAマトリックス。
【0110】
【
図16A】
図16Aは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。PVAマトリックス。
【0111】
【
図16B】
図16Bは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。PVAマトリックス。
【0112】
【
図16C】
図16Cは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0113】
【
図16D】
図16Dは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0114】
【
図16E】
図16Eは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0115】
【
図16F】
図16Fは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0116】
【
図16G】
図16Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0117】
【
図16H】
図16Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(mcg、高用量範囲)。同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0118】
【
図17A】
図17Aは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/日、高用量範囲)。アニオン性6%NFC及び5mg CPF用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量5mgのCPF、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量2.5mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の750μg/日<ラットの標的用量<1500μg/日。
【0119】
【
図17B】
図17Bは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/日、高用量範囲)。アニオン性6%NFC及び5mg CPF用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量5mgのCPF、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量2.5mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の750μg/日<ラットの標的用量<1500μg/日。
【0120】
【
図17C】
図17Cは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。アニオン性6%NFC及び5mg CPF用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量5mgのCPF、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量2.5mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の750μg/日<ラットの標的用量<1500μg/日。
【0121】
【
図17D】
図17Dは、1日当たりの蓄積された全用量を表すヒストグラムである。アニオン性6%NFC及び5mg CPF用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量5mgのCPF、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量2.5mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の750μg/日<ラットの標的用量<1500μg/日。
【0122】
【
図18A】
図18Aは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/日、低用量範囲)。アニオン性6%NFC及び0.5mg CPF用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.5mgのCPF、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.25mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の100μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0123】
【
図18B】
図18Bは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/日、低用量範囲)。アニオン性6%NFC及び0.5mg CPF用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.5mgのCPF、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.25mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の100μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0124】
【
図18C】
図18Cは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。アニオン性6%NFC及び0.5mg CPF用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.5mgのCPF、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.25mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の100μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0125】
【
図18D】
図18Dは、1日当たりの蓄積された全用量を表すヒストグラムである。アニオン性6%NFC及び0.5mg CPF用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.5mgのCPF、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.25mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の100μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0126】
【
図19A】
図19Aは、最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/日、高用量範囲)。アニオン性6%NFC及び2mg MLX用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量2mgのMLX、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量1mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の250μg/日<ラットの標的用量<600μg/日。
【0127】
【
図19B】
図19Bは、最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/日、高用量範囲)。アニオン性6%NFC及び2mg MLX用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量2mgのMLX、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量1mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の250μg/日<ラットの標的用量<600μg/日。
【0128】
【
図19C】
図19Cは、最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、高用量範囲)。アニオン性6%NFC及び2mg MLX用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量2mgのMLX、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量1mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の250μg/日<ラットの標的用量<600μg/日。
【0129】
【
図19D】
図19Dは、1日当たりの蓄積された全用量を表すヒストグラムである。アニオン性6%NFC及び2mg MLX用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量2mgのMLX、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量1mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の250μg/日<ラットの標的用量<600μg/日。
【0130】
【
図20A】
図20Aは、最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/日、低用量範囲)。アニオン性6%NFC及び0.4mg MLX用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.4mgのMLX、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.2mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の60μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0131】
【
図20B】
図20Bは、 最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/日、低用量範囲)。アニオン性6%NFC及び0.4mg MLX用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.4mgのMLX、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.2mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の60μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0132】
【
図20C】
図20Cは、最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%、低用量範囲)。アニオン性6%NFC及び0.4mg MLX用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.4mgのMLX、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.2mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の60μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0133】
【
図20D】
図20Dは、1日当たりの蓄積された全用量を表すヒストグラムである。アニオン性6%NFC及び0.4mg MLX用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.4mgのMLX、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.2mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の60μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【発明を実施するための形態】
【0134】
本明細書では、特に明記しない限り、パーセンテージ値は重量(w/w)に基づく。数値範囲が提供されている場合、範囲には上限値と下限値も含まれる。「含む(comprise)」という開いた用語には、「からなる(consisting of)」という閉じた用語も1つの選択肢として含まれる。
【0135】
本明細書に記載される材料及び製品は、生命科学材料及び製品などの医療用及び/又は科学用の材料及び製品であり得、本明細書に記載されるものなどの生細胞及び/又は生物活性材料若しくは物質を伴う方法並びに用途に使用され得る。材料又は製品は、細胞培養物、細胞貯蔵物及び/又は細胞研究材料若しくは製品であり得る又はこれらに関連し得、細胞が培養、保管、維持、輸送、提供、改変、試験される方法に使用され得る、及び/又は医療目的若しくは科学目的のため、若しくは他の関連する適切な方法に使用され得る。
【0136】
鎮痛薬の正確な用量は、前臨床動物研究で極めて重要な役割を果たす。適切な術後疼痛管理の目標は、受け入れられない有害効果をもたらすことなく疼痛及び不快感を最小化することである。げっ歯類の疼痛の評価は、疼痛が無能力にするものでない限り、げっ歯類が典型的には疼痛に関連する行動を最小限に抑えるので困難となり得る。したがって、前臨床動物研究における疼痛管理は、薬学的介入を含まなければならない。鎮痛薬の有効性は、鎮痛化合物自体に依存するだけではない。製剤の安定性、バイオアベイラビリティ、放出動態及び注射可能性は、最大の有効性を得るために克服しなければならない課題である。賦形剤及び徐放技術は、これらの課題に対する解決策を提供する。前臨床設定では、ほとんどの場合、化合物を従来の注射として投与することが望ましい。本出願は、例えば前臨床研究用途のための鎮痛薬のためのNFCゲルベースの注射及びインプラントを提供する。本明細書に開示される医薬製剤は、持続放出投与量又は持続放出組成物を提供する又は含み得る。
【0137】
持続放出投与量は、徐放(SR)又は制御放出(CR)投与量を含み得る。SRは薬物放出を持続時間にわたって維持するが、一定の速度では維持しない。CRは薬物放出を持続時間にわたって、ほぼ一定の速度で維持する。
【0138】
本出願は、
医薬製剤中のナノフィブリル状セルロースの含有量が1~8%(w/w)であるナノフィブリル状セルロースヒドロゲル、及び
医薬化合物
を含む注射可能な医薬製剤を提供する。
【0139】
本出願はまた、前記方法で得られた注射可能な医薬製品を提供する。医薬製品は単離された製品であり、充填された又は使用されるように他の方法で調製された均質な無菌形態などの、すぐに使用できる状態で製剤化及び提供され得る。プロセスの中間製品は定義から除外される。製品の製剤は、バイアル又はシリンジに充填されるなどの、注射用の1又は複数回用量として提供され得る。「製剤」、「組成物」及び「製品」という用語は、該当する場合、互換的に使用され得る。
【0140】
本明細書で使用される「製剤」は、本明細書では注射である、特定の目的のために特に形成された組成物の形態を指す。製剤化は、活性医薬化合物を含む化学物質を組み合わせて最終医薬品を製造するプロセスである。製剤は剤形で提供され得る。製剤は、注射可能性及び医薬化合物の所望の徐放などの特定の用途のための1又は複数の所望の特性を得るために形成され得る。
【0141】
製剤、組成物又は製品は注射可能である、すなわち、製剤、組成物又は製品は特に注射針を用いた、注射用に提供され、これは、製剤、組成物又は製品が対象中に注射され得る、すなわち、製剤、組成物又は製品が、注射することによる皮下投与、皮内投与又は筋肉内投与用に提供され得ることを意味する。例えば、特に針で組織中に注射することによって投与される場合の医薬化合物の濃度、レオロジー特性、均質性、安定性及びバイオアベイラビリティ、並びに同様の特性を含む注射可能性は、適切な形態で材料を提供することによって得られる。
【0142】
製品は、極めて高い含水量である十分に注射可能な製剤を得るために、少なくとも82%(w/w)、又は少なくとも85%(w/w)、又は好ましくは少なくとも90%(w/w)の含水量を有するヒドロゲルの形態であり得るので、得られる組成物又は製品は様々な種類の投与に適している。組成物は流動分散液として存在することができるが、流動ヒドロゲル及び/又は注射可能なヒドロゲルなどのヒドロゲルとして存在することもできる。せん断減粘材料であるヒドロゲルは、注射されると、すなわち、シリンジを操作することによってヒドロゲルに圧力が印加されると、流動性及び/又は注射可能になり得る。一例では、ナノフィブリル状セルロースの分散液がヒドロゲルを含む。製剤は、貯蔵中、例えば、材料が凝集又は沈殿しないので、安定性及び貯蔵寿命を提供するが、使用中、すなわち注射中、材料が薄くなり、よって針を介して正確な標的中への効率的な注射を可能にし、その後、以前の厚い形態に戻るヒドロゲルとして存在し得る。
【0143】
ナノフィブリル状セルロース及び医薬化合物の部分に応じて含水量が調整され得る。量の和は合計100%(w/w)になる。含水量は、85~98.9%(w/w)、90~98.9%(w/w)又は92~98.9%(w/w)などの82~98.9%(w/w)の範囲であり得る。例では、含水量が、82~98%(w/w)、85~98%(w/w)、90~98%(w/w)又は92~98%(w/w)の範囲である。
【0144】
例えば、注射可能な組成物は、適切なせん断減粘特性を提供する、92~98.9%(w/w)の含水量及び/又は1~8%(w/w)のナノフィブリル状セルロースの含有量を有し得る。製剤の所望のせん断減粘特性を得るために、製剤は、組成物中の唯一のポリマー材料としてナノフィブリル状セルロースを含有することができ、組成物は、実質的に医薬化合物、ナノフィブリル状セルロース及び水のみを含有することができる、又は医薬化合物、ナノフィブリル状セルロース及び水からなることができる。場合によっては、好ましくは組成物の構造又はレオロジー特性に対する効果を有さない、着色剤、保存剤又は同様の薬剤などの当技術分野で通例の添加剤少量を、好ましくは0.2%(w/w)以下又は0.1%(w/w)以下などの0.5%(w/w)以下の量で含めることができる。
【0145】
医薬製剤中のナノフィブリル状セルロースの含有量は、ほとんどの場合において注射可能性を確保するために、1.5~6%(w/w)などの1~7%(w/w)又は1~6%(w/w)の範囲であり得る。含水量を、それに応じて、例えば、残りが水であってもよい、ナノフィブリル状セルロース及び医薬成分、並びにおそらく他の溶媒及び/又は任意の添加剤のパーセンテージを合計することによって計算又は調整することができる。
【0146】
一実施形態は、
含水量が好ましくは90~98.9%(w/w)などの82~98.9%(w/w)であり、ナノフィブリル状セルロースの含有量が好ましくは1~8%(w/w)であるナノフィブリル状セルロースヒドロゲルと、
医薬化合物と、
を含み、
前記ナノフィブリル状セルロースの平均フィブリル径が200nm以下、例えば1~200nmである、好ましくは皮下投与、皮内投与又は筋肉内投与用の、注射可能な医薬製剤を提供する。
【0147】
しかしながら、医薬化合物の放出プロファイルを修正するために溶媒を含めることが可能である。適切な溶媒には、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び/又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒が含まれ、これらは、製剤からの医薬化合物の放出を増加させるために使用され得る。
【0148】
一実施形態では、組成物が、5~55%(w/w)、例えば5~20%(w/w)、5~30%(w/w)、10~40%(w/w)、20~50%(w/w)又は30~50%(w/w)の量などの、ジメチルスルホキシド及び/又はN-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒を含有する。組成物は、このような溶媒を添加すること、及びナノフィブリル状セルロース分散液と組み合わせること、及び同時に又は後で医薬化合物と組み合わせることによって調製され得る。医薬化合物は、有機溶媒中で提供され得る。
【0149】
一実施形態では、ナノフィブリル状セルロースが、化学的未変性ナノフィブリル状セルロースである。一実施形態では、特にナノフィブリル状セルロースが化学的未変性ナノフィブリル状セルロースである場合、組成物が、1~2%(w/w)などの1~3%(w/w)の範囲のナノフィブリル状セルロースの含有量を有する。
【0150】
一実施形態では、ナノフィブリル状セルロースが、アニオン変性ナノフィブリル状セルロースである。他の種類のナノフィブリル状セルロースと比較して、アニオン変性ナノフィブリル状セルロースが、注射可能又は移植可能な持続放出組成物において有利である三次元ゲル形成特性などのより優れた機械的特性を提供することが分かった。アニオン変性ナノフィブリル状セルロースはまた、ほとんどの治療で望ましい、医薬化合物のより高い初期バーストを提供した。
【0151】
一実施形態では、特にナノフィブリル状セルロースがアニオン変性ナノフィブリル状セルロースである場合、組成物が、4~7%(w/w)又は5~7%(w/w)などの4~8%(w/w)の範囲のナノフィブリル状セルロースの含有量を有する。一実施形態では、組成物が、1.5~6.5%(w/w)の範囲のアニオン変性ナノフィブリル状セルロースの含有量を有する。アニオン変性NFCのこれらの濃度により、医薬品の所望の初期バーストの提供が可能になる。場合によっては、1.5~5%(w/w)、1.5~4%又は1.5~3.5%(w/w)などのより低い濃度が、様々な用途又は特定の用途に望ましい注射特性を得るために望まれ得る。
【0152】
一実施形態では、ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、22℃±1℃の水性媒体中、0.5%(w/w)の濃度で回転レオメーターによって決定される、ゼロせん断粘度が5000~50000Pa・sなどの1000~100000Pa・sであり、降伏応力が3~15Paなどの1~50Paであり、並びに/又はナノフィブリル状セルロースが、1~200nmなどの200nm以下の平均フィブリル径を有する。
【0153】
1投与当たりの医薬化合物の量及び用量のサイズは変動し得る。1日当たりのカルプロフェン用量の例には、1ml注射当たり約5mgのカルプロフェンを含む高用量範囲、及び1日2回投与され得る0.1ml注射当たり約0.25mgのカルプロフェン、又は0.2ml注射当たり約0.5mgのカルプロフェンを含む低用量範囲が含まれる。1日当たりのメロキシカム用量の例には、1ml注射当たり約2mgのメロキシカムを含む高用量範囲、及び1日2回投与され得る0.1ml注射当たり約0.2mgのメロキシカム、又は0.2ml注射当たり0.4mgのメロキシカムを含む低用量範囲が含まれる。
【0154】
デポーなどについての1日全用量は、例えば、化合物に応じて、1回、2回又はそれ以上の投与で投与され得る、0.05~5mg、0.05~2mg、0.05~1.5mg、0.1~5mg、0.1~2mg又は0.1~1.5mgなどの、1日当たり0.05~10mgの範囲であり得る。単回投与量は、100μl~1ml又は100~500μlなどの50μl~2mlの範囲であり得る。ラット及び/又はマウスなどのげっ歯類の場合、1日量は2~5mg/kgなどの0.5~5mg/kgの範囲であり得る。
【0155】
一例では、医薬化合物の含有量が、0.1~10mg、0.2~10mg又は0.5~10mgであるなどの0.5~10mgの範囲であり、例えば、注射可能な医薬製剤100μl当たり3~10mg又は1~7mgの範囲である。一例では、医薬化合物の含有量が、0.1~10mg、0.2~10mg又は0.5~10mgであるなどの0.5~10mgの範囲であり、例えば、注射可能な医薬製剤100mg当たり3~10mg又は1~7mgの範囲である。一例では、医薬化合物の含有量が、注射可能な医薬製剤1g当たり0.1~50mgの範囲である。例えば、マウスなどの小げっ歯類などの小動物に適し得る、0.1~5mg、0.2~5mg、0.1~2mg、0.2~2mg又は0.2~1mgなどのより低い量が提供されてもよい。
【0156】
医薬化合物の含有量は、医薬製剤の0.1~10%(w/w)、0.2~10%(w/w)又は0.5~10%(w/w)の範囲であり得る。一例では、医薬化合物の含有量が、3~10%(w/w)又は1~7%(w/w)の範囲である。0.1~5%(w/w)、0.2~5%(w/w)、0.1~2%(w/w)、0.2~2%(w/w)又は0.2~1%(w/w)などのより低い量が提供されてもよい。
【0157】
ナノフィブリル状セルロースを医薬化合物のマトリックスとして使用した場合、ナノフィブリル状セルロースは化合物を安定化させ、化合物の沈殿を防ぐことができ、結果として化合物が分散液中に残った。化合物の溶解率が増加し、それにより、対象への化合物の送達を増強することができる。このようにして、注射剤及びインプラントなどの剤形での難水溶性医薬品の溶解及びバイオアベイラビリティを改善し、同時に化合物の持続放出を提供することが可能であった。
【0158】
医薬化合物は、任意の適切な医薬化合物であり得る。医薬化合物は、1又は複数の抗腫瘍化合物又は剤、抗がん化合物又は剤、抗生物質などの抗菌化合物又は剤、抗ウイルス化合物又は剤、抗炎症化合物又は剤、抗アレルギー化合物又は剤、及び鎮痛化合物又は剤を含んでも含まなくてもよい。一実施形態では、医薬化合物が、オピオイド若しくは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの鎮痛化合物、すなわち、痛み止めを含む、又はオピオイド若しくは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの鎮痛化合物、すなわち、痛み止めである。このような化合物の例としては、メロキシカム、カルプロフェン、メタミゾール/ジピロン及びブプレノルフィンが挙げられる。本製剤によって提供される溶解プロファイルから利益を得るので、鎮痛薬が適している。
【0159】
本組成物は、医薬化合物の溶解及びバイオアベイラビリティを増強するために提供され得、水への溶解度が限られている医薬品にとって特に有益である。
【0160】
医薬化合物は、完全に又は部分的に水溶性であり得る。医薬化合物は、水への溶解度が限られている若しくは低い、及び/又はバイオアベイラビリティが低い可能性がある。医薬化合物は、25℃で0.001mg/mlまでの、又は0.001mg/ml超の水溶解度を有し得る。医薬化合物は、25℃で0.01mg/ml超、25℃で0.1mg/ml超、25℃で0.2mg/ml超、又は25℃で3mg/ml超などの25℃で1mg/ml超の水への溶解度を有し得る。ナノフィブリル状セルロースマトリックスに、限られた水溶性を有する化合物を含めることによって、溶解度を増強する、及び/又はより多くの化合物を含めることを可能にすることができる。化合物のバイオアベイラビリティも増加する。しかしながら、同時に、ナノフィブリル状セルロースは、高い含水量で提供され得る。
【0161】
前に開示されるように、水への溶解度が限られている又は低い医薬化合物は、凝結体として、及び/又は70nm超、若しくは100nm超、さらには200nm超、若しくは500nm超などの50nm超の平均径を有する粒子として存在し得る。これらの粒子又は凝結体は、ナノフィブリル状セルロースによって安定化され、そのバイオアベイラビリティが増強される。ナノ粒子のサイズ及び形状は、最終製品から微視的に検出することができる。難水溶性化合物は、結晶形態で又は主に結晶形態で存在し得る。これらは、ナノフィブリル状セルロース分散液中、アモルファス状態で及び/又は核形成プロセスで形成されたナノ粒子の形態で存在しない可能性がある。
【0162】
限られた水溶性を有する医薬化合物の例としては、25℃の水中で、溶解度が0.0168mg/ml(16.8μg/ml)であるブプレノルフィン、溶解度が0.00715mg/ml(7.15μg/ml)であるメロキシカム、及び溶解度が0.00379mg/ml(3.79μg/ml)であるカルプロフェンが挙げられる。
【0163】
1又は複数の上記の及び/又は他の医薬化合物を、本明細書に記載される医薬製剤に含めることができる。医薬製剤は、水若しくは有機溶媒などの水以外であり得る適切な溶媒、又は水溶液、有機溶媒などの溶媒を含有する分散液若しくはエマルジョンで提供され得る。溶媒は、例えば、無水エタノールなどのエタノールであり得る。特に、限られた水溶性を有する医薬化合物は、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合物であり得る少なくとも部分的に化合物を溶解することができる溶媒で提供され得る。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-オクタノール、プロピレングリコール、トルエン、アセトン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、アセトニトリル、クロロホルム、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DFM)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0164】
適切な溶媒中にあり得る医薬化合物は、ナノフィブリル状セルロースの処理にも使用することができるミキサー、撹拌機、分散機、ホモジナイザー又は同様の装置を使用することなどによって、混合でナノフィブリル状セルロースの水性分散液と組み合わせることができる。
【0165】
本組成物は、比較的短い薬物放出を提供するために、若しくは他方でゆっくりとした均一な薬物放出を提供するために、又はこれらの組み合わせを提供するために使用され得る。ナノフィブリル状セルロース、特に木材セルロース及び/又は完全に均質化され、フィブリル化された材料の均質性は、このような制御されたゆっくりとした均一な放出を得ることを可能にする。
【0166】
一例では、放出される薬物の大部分、例えば約30%、例えば20%以上、又は25%以上などを1日目の間に有することがより良い。4~7日目の間に極めて少ない放出が望ましい場合があり、累積放出は、例えば55%超、好ましくは70%超である。
【0167】
別の例は、減速し、少なくとも3~14日間などの、均一な薬物放出を得ることを目的とする。医薬製剤は、標的又は対象における医薬化合物の所望の徐放を提供するように製剤化又は構成され得る。
【0168】
一実施形態では、注射可能な医薬製剤が、例えば医薬化合物の少なくとも25%(w/w)などの少なくとも18%(w/w)が3~14日間で放出される、3~14日間で医薬化合物の徐放を提供するためなどの、徐放性の注射可能な医薬製剤である。
【0169】
一実施形態では、注射可能な医薬製剤が、最初の6~12時間などの最初の日の間に医薬化合物の20~40%(w/w)の徐放を提供するための徐放性の注射可能な医薬製剤である。一例では、化合物の5~15%などの5~20%が、最初の6時間の間に放出される。好ましくは、4~7日目の間のその後の累積放出が70%以上などの55%以上であるなど、その後の放出が比較的少ない。
【0170】
注射可能な組成物は、対象に注射されると医薬化合物の徐放を提供するために使用するために提供され得る。組成物は、前に開示される徐放を提供するために使用するために提供され得る。
【0171】
一例は、
平均フィブリル径が、200nm以下、例えば1~200nmの範囲などであるナノフィブリル状セルロースの含有量が4~8%(w/w)の範囲又は1.5~6.5%(w/w)の範囲であるアニオン変性ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルと、
鎮痛化合物を含む医薬化合物と、
を含む注射可能な医薬製剤であって、
好ましくは、25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0.001~100Paの範囲で徐々に増加させて応力制御回転レオメーターによって決定される、貯蔵弾性率が350Pa以上であり、降伏応力/破壊強度が25Pa以上である、例えば貯蔵弾性率が350~5000Paの範囲であり、降伏応力が25~300Paの範囲であるなどの、製剤を提供する。このような製剤は、鎮痛処置の迅速な開始に望ましい、極めて高い初期バーストを提供することができる。このような製剤は、最初の6~12時間の間などの最初の日の間に20~40%(w/w)の徐放、例えば最初の6時間の間に5~15%などの5~20%の徐放を提供し得る。
【0172】
本出願は、シリンジに充填された注射可能な医薬品を提供する。本出願は、注射可能な医薬製剤を含有するシリンジを提供する。本出願はまた、医薬製剤を含有するインプラントも提供する。
【0173】
本出願は、医薬化合物を動物などの対象に、好ましくは針で対象の組織中に注射するために使用するための注射可能な医薬製剤を提供する。動物は、例えば、げっ歯類、例えばマウス若しくはラットなどの実験動物、ウサギ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ウシ又は他の適切な動物であり得る。組織は、例えば、筋組織、脂肪組織又は任意の適切な皮下組織若しくは皮内組織であり得る。本明細書で使用される「中へ」とは、注射針又は同様の適切な貫通手段を使用することによって皮膚を通して注射することを指す。シリンジによる皮膚又は他の組織上への施用は除外され得る。
【0174】
本出願は、動物などの対象における医薬化合物の徐放を提供するために使用するための注射可能な医薬製剤を提供する。
【0175】
ナノフィブリル状セルロース
ヒドロゲルを形成するための出発材料は、単離セルロースフィブリル又はセルロース原料に由来するフィブリル束を指す、ナノセルロースとも呼ばれるナノフィブリル状セルロースである。ナノフィブリル状セルロースは、天然に豊富にある天然ポリマーに基づく。ナノフィブリル状セルロースは、水中で粘着性ヒドロゲルを形成する能力を有する。ナノフィブリル状セルロース製造技術は、パルプ繊維の水性分散液を粉砕してナノフィブリル化セルロースを得ることなどの、繊維状原料の分解に基づき得る。粉砕又は均質化プロセスの後、得られたナノフィブリル状セルロース材料は、希粘弾性ヒドロゲルである。
【0176】
得られた材料は通常、分解条件のために水中に均質に分布した比較的低濃度で存在する。出発材料は、0.2~10%(w/w)、例えば0.2~5%(w/w)の濃度の水性ゲルであり得る。ナノフィブリル状セルロースは、繊維状原料の分解から直接得ることができる。市販のナノフィブリル状セルロースヒドロゲルの例は、UPM製のGrowDex(登録商標)である。
【0177】
そのナノスケール構造のため、ナノフィブリル状セルロースは、従来の非ナノフィブリル状セルロースによっては提供できない機能を可能にする独特の特性を有する。従来製品又は従来のセルロース系材料を使用した製品とは異なる特性を示す材料及び製品を調製することが可能である。しかしながら、ナノスケールの構造のため、ナノフィブリル状セルロースは困難な材料でもある。例えば、ナノフィブリル状セルロースの脱水又は取扱いは困難となり得る。
【0178】
ナノフィブリル状セルロースは、植物起源のセルロース原料から調製されてもよいし、又は一定の細菌発酵プロセスから誘導されてもよい。ナノフィブリル状セルロースは、好ましくは植物材料でできている。原料は、セルロースを含有する任意の植物材料に基づくことができる。一例では、フィブリルが非柔組織植物材料から得られる。このような場合、フィブリルを二次細胞壁から得ることができる。このようなセルロースフィブリルの豊富な供給源の1つは、木質繊維である。ナノフィブリル状セルロースは、化学パルプであり得る木材由来の繊維状原料を均質化することによって製造され得る。セルロース繊維は分解されて、ほとんどの場合、200nm以下であり得るほんの数ナノメートルの平均径を有するフィブリルを生成し、フィブリルの水中分散液をもたらす。二次細胞壁に由来するフィブリルは本質的に結晶性であり、結晶化度が少なくとも55%である。このようなフィブリルは、一次細胞壁に由来するフィブリルとは異なる特性を有する可能性があり、例えば、二次細胞壁に由来するフィブリルの脱水は、より困難となり得る。一般に、テンサイ、ジャガイモ塊茎及びバナナ花軸などの一次細胞壁からのセルロース源では、ミクロフィブリルが木材からのフィブリルよりも繊維マトリックスから遊離しやすく、分解に必要なエネルギーが少なくなる。しかしながら、これらの材料はまだいくらか不均質であり、大きなフィブリル束からなる。
【0179】
非木材材料は、農業廃棄物、牧草、又は綿、トウモロコシ、小麦、エンバク、ライ麦、大麦、イネ、亜麻、麻、マニラ麻、サイザル麻、ジュート、ラミー、ケナフ、バガス、竹若しくはリード由来のわら、葉、樹皮、種子、外皮、花、野菜若しくは果実などの他の植物物質に由来し得る。セルロース原料は、セルロース産生微生物からも誘導され得る。微生物は、アセトバクター(Acetobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、リゾビウム(Rhizobium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属又はアルカリゲネス(Alcaligenes)属、好ましくはアセトバクター(Acetobacter)属、より好ましくはアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinumor)種又はアセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)種のものであり得る。
【0180】
木材セルロースから得られたナノフィブリル状セルロースが、本明細書に記載される医療製品又は科学製品に好ましいことが分かった。木材セルロースは大量に入手可能であり、木材セルロース用に開発された調製方法により、製品に適したナノフィブリル状材料を製造できる。植物繊維、特に木質繊維をフィブリル化して得られるナノフィブリル状セルロースは、微生物から得られるナノフィブリル状セルロースとは構造的に異なり、異なる特性を有する。例えば、バクテリアセルロースと比較すると、ナノフィブリル化木材セルロースは均質で、より多孔性で、ばらばらの材料であり、医療用途に有利である。バクテリアセルロースは通常、植物セルロースと同様のフィブリル化なしでそのまま使用されるので、この点でも材料が異なる。バクテリアセルロースは、小型球状体を容易に形成する緻密材料であり、したがって材料の構造が不連続であり、特に材料の均質性が必要な場合、医療用途でこのような材料を使用することは望ましくない。
【0181】
木材は、トウヒ、マツ、モミ、カラマツ、ベイマツ若しくはヘムロックなどの針葉樹由来、又はカバノキ、ヤマナラシ、ポプラ、ハンノキ、ユーカリ、オーク、ブナ若しくはアカシアなどの広葉樹由来、又は針葉樹と広葉樹の混合由来であり得る。一例では、ナノフィブリル状セルロースが木材パルプから得られる。ナノフィブリル状セルロースは、広葉樹パルプから得ることができる。一例では、広葉樹はカバノキである。ナノフィブリル状セルロースは、針葉樹パルプから得ることができる。一例では、前記木材パルプは化学パルプである。本明細書に開示される製品には化学パルプが望ましい場合がある。化学パルプは純粋な材料であり、多種多様な用途で使用できる。例えば、化学パルプは、機械パルプに存在するピッチ及び樹脂酸を欠いており、より無菌性である、又は容易に滅菌可能である。さらに、化学パルプはより可撓性であり、例えば医療材料及び科学材料で有利な特性を提供する。例えば、極めて均質なナノフィブリル状セルロース材料が、過剰な処理又は特定の設備若しくは面倒な処理工程の必要性なしに調製され得る。
【0182】
セルロースフィブリル及び/又はフィブリル束を含むナノフィブリル状セルロースは、高いアスペクト比(長さ/直径)を特徴とする。ナノフィブリル状セルロースの平均長(フィブリル又はフィブリル束などの粒子の中央長)は、1μmを超える場合があり、ほとんどの場合50μm以下である。エレメンタリーフィブリル(elementary fibril)が互いに完全に分離されていない場合、絡み合ったフィブリルは、例えば1~100μm、1~50μm又は1~20μmの範囲の平均全長を有し得る。しかしながら、ナノフィブリル状材料が高度にフィブリル化されている場合、エレメンタリーフィブリルは完全に又はほぼ完全に分離されている可能性があり、平均フィブリル長が1~10μm又は1~5μmの範囲などより短くなる。これは特に、例えば化学的、酵素的又は機械的に、短縮又は消化されていない天然グレードのフィブリルに当てはまる。しかしながら、強く誘導体化されたナノフィブリル状セルロースは、0.3~20μm、例えば0.5~10μm又は1~10μmなどの0.3~50μmの範囲などのより短い平均フィブリル長を有し得る。酵素的若しくは化学的に消化されたフィブリル又は機械的に処理された材料などの特に短縮されたフィブリルは、0.1~1μm、0.2~0.8μm又は0.4~0.6μmなどの1μm未満の平均フィブリル長を有し得る。フィブリル長及び/又は直径は、例えば、CRYO-TEM、SEM又はAFM像を使用して微視的に推定され得る。
【0183】
ナノフィブリル状セルロースの平均径(幅)は、1μm未満、又は1~500nmの範囲などの500nm以下であるが、好ましくは1~200nm、2~200nm、2~100nm又は2~50nmの範囲などの200nm以下、さらには100nm以下又は50nm以下、高度にフィブリル化された材料の場合はさらには2~20である。本明細書に開示される直径は、フィブリル及び/又はフィブリル束を指し得る。最も小さいフィブリルはエレメンタリーフィブリルのスケールであり、平均径は、典型的には2~12nmの範囲内である。フィブリルの寸法及びサイズ分布は、叩解(refining)方法及び効率に依存する。高度に叩解された天然ナノフィブリル状セルロースの場合、フィブリル束を含む平均フィブリル径は、2~200nm又は5~100nmの範囲、例えば10~50nmの範囲となり得る。ナノフィブリル状セルロースは、比表面積が大きく、水素結合を形成する能力が強いことを特徴とする。水分散液では、ナノフィブリル状セルロースは、典型的には、軽い又は混濁したゲル状材料のように見える。繊維原料によって、植物、特に木材から得られたナノフィブリル状セルロースが、少量の他の植物成分、特にヘミセルロース又はリグニンなどの木材成分を含有する場合もある。量は植物源に依存する。
【0184】
一般に、セルロースナノ材料は、セルロースナノ材料の標準的な用語を提供するTAPPI W13021に従ってカテゴリーに分類され得る。これらの材料の全てがナノフィブリル状セルロースであるわけではない。2つの主なカテゴリーは「ナノ物体(Nano object)」及び「ナノ構造化材料」である。ナノ構造化材料には、直径10~12μm及び長さ:直径比(L/D)<2の「セルロースミクロクリスタル」(CMCとも呼ばれる)、並びに直径10~100nm及び長さ0.5~50μmの「セルロースミクロフィブリル」が含まれる。ナノ物体には、「セルロースナノファイバー」が含まれ、「セルロースナノファイバー」は直径3~10nm及びL/D>5の「セルロースナノクリスタル」(CNC)、並びに直径5~30nm及びL/D>50の「セルロースナノフィブリル」(CNF又はNFC)に分類できる。
【0185】
異なるグレードのナノフィブリル状セルロースは、3つの主要な特性:(i)サイズ分布、長さ及び/又は直径(ii)化学組成、並びに(iii)レオロジー特性に基づいて分類され得る。これらの特性は、必ずしも互いに直接依存しているわけではない。グレードを完全に説明するために、特性を並行して使用することができる。異なるグレードの例としては、天然(化学的及び/又は酵素的未変性)NFC、酸化NFC(高粘度)、酸化NFC(低粘度)、カルボキシメチル化NFC及びカチオン化NFCが挙げられる。これらの主要なグレード内には、サブグレード、例えば:極めてよくフィブリル化されたもの対中程度にフィブリル化されたもの、高置換度対低置換度、低粘度対高粘度等も存在する。フィブリル化技術及び化学的前変性は、フィブリルサイズ分布に影響を及ぼす。典型的には、非イオングレードは平均フィブリル径が広く(例えば、10~100nm又は10~50nmの範囲)、化学変性グレードはずっと薄い(例えば、2~20nmの範囲)。変性グレードについても分布が狭い。一定の変性、特にTEMPO酸化により、フィブリルが短くなる。
【0186】
原料供給源、例えば広葉樹パルプ対針葉樹パルプに応じて、最終的なナノフィブリル状セルロース製品に異なる多糖組成が存在する。一般的に、非イオングレードは、高キシレン含有量(25重量%)をもたらす漂白カバノキパルプから調製される。変性グレードは、広葉樹パルプ又は針葉樹パルプから調製される。これらの変性グレードでは、ヘミセルロースもセルロースドメインと共に変性される。おそらく、変性は均質ではない、すなわち、ある部分が他の部分よりも変性されている。したがって、変性された製品は異なる多糖構造の複雑な混合物であるので、詳細な化学分析は通常不可能である。
【0187】
水性環境では、セルロースナノフィブリルの分散液が粘弾性ヒドロゲルネットワークを形成する。ゲルは、分散及び水和した絡み合ったフィブリルによって、例えば0.05~0.2%(w/w)の比較的低い濃度で既に形成されている。NFCヒドロゲルの粘弾性は、例えば動的振動レオロジー測定で特徴付けられ得る。
【0188】
ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルは、特徴的なレオロジー特性を示す。例えば、これらは、その粘度が、材料が変形する速度又は力に依存することを意味する、チキソトロピー挙動の特殊なケースと見なすことができる、せん断減粘又は擬塑性材料である。回転レオメーターで粘度を測定する場合、せん断減粘挙動は、せん断速度の増加に伴う粘度の減少として見られる。ヒドロゲルは、材料が容易に流動し始める前に、一定のせん断応力(力)が必要であることを意味する、塑性挙動を示す。この臨界せん断応力は、しばしば降伏応力と呼ばれる。降伏応力は、応力制御レオメーターで測定された定常状態流動曲線から決定することができる。印加されたせん断応力の関数として粘度をプロットすると、臨界せん断応力を超えた後、粘度の劇的な減少が見られる。ゼロせん断粘度及び降伏応力は、材料の懸濁力を説明する最も重要なレオロジーパラメータである。これらの2つのパラメータは、異なるグレードを極めて明確に分離し、よって、グレードの分類を可能にする。
【0189】
フィブリル又はフィブリル束の寸法は、例えば、原料、分解方法、及び分解の実行回数に依存する。セルロース原料の機械的分解は、リファイナー、砕木機、分散機、ホモジナイザー、コロイド、摩擦グラインダー、ピンミル、ローター-ローター分散機、超音波処理機、マイクロフルイダイザー、マクロフルイダイザーなどのフルイダイザー、又はフルイダイザー型ホモジナイザーなどの任意の適切な設備で行うことができる。分解処理は、繊維間の結合の形成を防ぐために水が十分存在する条件で実施される。当業者であれば、例えば、適切な分解設備、適切な出発材料、適切な化学的処理、物理的処理及び/又は酵素的処理、プロセスで使用される通過回数及び/又はエネルギー、並びに得られた製品の濃度及び化学物質含有量を選択することによって、過度の実験なしに、所望のレオロジー特性及びフィブリル化の程度を有するナノフィブリル状セルロースを調製するための条件を調整することができる。
【0190】
一例では、分解が、少なくとも2つのローターを有するローター-ローター分散機などの、少なくとも1つのローター、ブレード又は同様の移動機械部材を有する分散機を使用することによって行われる。分散機では、分散している繊維材料が、ブレードが、回転速度及び半径(回転軸までの距離)によって決定される周速で反対方向に回転すると、ブレード又はローターのリブが反対方向から衝突することによって繰り返し衝撃を受ける。繊維材料は半径方向の外側に運ばれるため、反対方向から高い周速で次々と来るブレードの広い表面、すなわち、リブに衝突する;換言すれば、繊維材料は反対方向から複数の連続した衝撃を受ける。また、次のローターブレードの反対側のエッジとブレードギャップを形成する、ブレードの広い表面のエッジ、すなわちリブで、せん断力が発生し、これが繊維の分解及びフィブリルの剥離に寄与する。衝撃頻度は、ローターの回転速度、ローターの数、各ローターのブレードの数、及び装置を通る分散液の流量によって決定される。
【0191】
ローター-ローター分散機では、材料が、異なる逆回転ローターの効果によってせん断力及び衝撃力に繰り返し供され、それによって同時にフィブリル化されるように、繊維材料が逆回転ローターを通して、ローターの回転軸に対して半径方向の外向きに導入される。ローター-ローター分散機の一例は、Atrex装置である。
【0192】
分解に適した装置の別の例は、マルチペリフェラルピンミル(multi-peripheral pin mill)などのピンミルである。このような装置の一例は、ハウジングと、その中に衝突面を備えた第1のローター;第1のローターと同心であり、衝突面を備え、第1のローターと反対方向に回転するように配置されている第2のローター;又は第1のローターと同心であり、衝突面を備えたステーターとを備える。この装置は、ハウジング内にあり、ローター又はローターとステーターの中心に向かって開口している供給オリフィスと、ハウジング壁にあり、最も外側のローター又はステーターの周囲に向かって開口している排出オリフィスとを備える。
【0193】
一例では、分解が、ホモジナイザーを使用することによって行われる。ホモジナイザーでは、繊維材料が、圧力の効果による均質化に供される。ナノフィブリル状セルロースへの繊維材料分散液の均質化は、材料をフィブリルに分解する、分散液の強制的貫通流によって引き起こされる。繊維材料分散液が、分散液の線速度の増加により分散液に対するせん断力及び衝撃力が引き起こされ、繊維材料からフィブリルが除去される狭い貫通流ギャップに所定の圧力で通過させられる。繊維片は、フィブリル化工程でフィブリルに分解される。
【0194】
本明細書で使用される場合、「フィブリル化」という用語は、一般に、粒子に印加される仕事によって機械的に繊維材料を分解することを指し、セルロースフィブリルは繊維又は繊維片から剥離される。仕事は、粉砕、破砕若しくはせん断、若しくはこれらの組み合わせ、又は粒径を小さくする別の対応する作用などの様々な効果に基づき得る。「分解」又は「分解処理」という表現は、「フィブリル化」と互換的に使用され得る。
【0195】
フィブリル化に供される繊維材料分散液は、本明細書では「パルプ」とも呼ばれる、繊維材料と水の混合物である。繊維材料分散液は、一般に、繊維全体、繊維から分離された部分(片)、フィブリル束、又は水と混合されたフィブリルを指すことがあり、典型的には、水性繊維材料分散液は、これらの要素の混合物であり、ここでは成分間の比が処理の程度又は処理段階、例えば同じバッチの繊維材料の処理の実行又は「通過」の数に依存する。
【0196】
ナノフィブリル状セルロースを特徴付ける1つの方法は、前記ナノフィブリル状セルロースを含有する水溶液の粘度を使用することである。粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度又はゼロせん断粘度であり得る。本明細書に記載される比粘度は、ナノフィブリル状セルロースを非ナノフィブリル状セルロースと区別する。
【0197】
一例では、ナノフィブリル状セルロースの見かけの粘度が、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド粘度)又は別の対応する装置で測定される。適切には、ベーンスピンドル(73番)が使用される。見かけの粘度を測定するために利用可能ないくつかの市販のブルックフィールド粘度計があり、これらは全て同じ原理に基づく。適切には、RVDVスプリング(ブルックフィールドRVDV-III)が装置で使用される。ナノフィブリル状セルロースの試料を水中0.8重量%の濃度に希釈し、10分間混合する。希釈した試料塊を250mlビーカーに添加し、温度を20℃±1℃に調整し、必要に応じて加熱し、混合する。低い回転速度10rpmが使用される。一般に、ブルックフィールド粘度は、20℃±1℃、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで測定され得る。
【0198】
例えば本方法で出発材料として用意されるナノフィブリル状セルロースは、それが水溶液中で提供する粘度によって特徴付けられ得る。粘度は、例えば、ナノフィブリル状セルロースのフィブリル化の程度を説明する。一例では、ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも3000mPa・sなどの少なくとも2000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。一例では、ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも10000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。一例では、ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも15000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。水に分散された場合の前記ナノフィブリル状セルロースのブルックフィールド粘度範囲の例としては、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、2000~20000mPa・s、3000~20000mPa・s、10000~20000mPa・s、15000~20000mPa・s、2000~25000mPa・s、3000~25000mPa・s、10000~25000mPa・s、15000~25000mPa・s、2000~30000mPa・s、3000~30000mPa・s、10000~30000mPa・s、及び15000~30000mPa・sが挙げられる。
【0199】
ナノフィブリル状セルロースはまた、平均径(若しくは幅)によって、又はブルックフィールド粘度若しくはゼロせん断粘度などの粘度と共に平均径によって特徴付けられ得る。一例では、本明細書に記載される製品での使用に適したナノフィブリル状セルロースが、1~200nm又は1~100nmの範囲の平均フィブリル径を有する。一例では、前記ナノフィブリル状セルロースが、2~20nm又は5~30nmなどの1~50nmの範囲の平均フィブリル径を有する。一例では、前記ナノフィブリル状セルロースが、TEMPO酸化ナノフィブリル状セルロースの場合などの2~15nmの範囲の平均フィブリル径を有する。
【0200】
フィブリルの直径は、顕微鏡法などのいくつかの技法で決定され得る。フィブリルの厚さ及び幅の分布は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)、極低温透過型電子顕微鏡(cryo-TEM)などの透過型電子顕微鏡(TEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)の像の像分析によって測定され得る。一般に、AFM及びTEMは、フィブリル径分布が狭いナノフィブリル状セルロースグレードに最適である。
【0201】
ナノフィブリル状セルロース分散液のレオメーター粘度は、直径30mmの円筒形試料カップ中狭いギャップのベーン幾何学(直径28mm、長さ42mm)を備えた応力制御回転レオメーター(AR-G2、TA Instruments、英国)を使用して、22℃で一例に従って測定され得る。試料をレオメーターに充填した後、測定を開始する前に試料を5分間静止させる。定常状態粘度を、徐々に増加するせん断応力(印加されるトルクに比例)で測定し、せん断速度(角速度に比例)を測定する。一定のせん断応力で報告された粘度(=せん断応力/せん断速度)を、一定のせん断速度に達した後、又は最大2分後に記録する。1000s-1のせん断速度を超えたら、測定を停止する。この方法は、ゼロせん断粘度を決定するために使用され得る。
【0202】
別の例では、ヒドロゲル試料のレオロジー測定を、20mmのプレート幾何学を備えた応力制御回転レオメーター(AR-G2、TA機器、英国)を使用して行った。試料を、希釈せずにレオメーター、1mmギャップに充填した後、測定を開始する前に試料を5分間静置させた。25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0,001~100Paの範囲で徐々に増加させて応力スイープ粘度を測定した。貯蔵弾性率、損失弾性率及び降伏応力/破壊強度を決定することができる。
【0203】
ヒドロゲルが注射後にその形状を保持するために必要な最小粘度レベルがあることが分かった。これは、25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0.001~100Paの範囲で徐々に増加させて応力制御回転レオメーターによって決定される、貯蔵弾性率が350Pa以上であり、及び降伏応力/破壊強度が25Pa以上であることによって特徴付けることができる。当業者は、化学変性セルロース又は化学的未変性セルロースなどの異なるタイプの出発材料を使用する場合でも、このような特徴を得るために適切な調製方法及びパラメータを選択することができる。
【0204】
ナノフィブリル状セルロースは、所望の特性及び効果が得られるように、十分なフィブリル化の程度を有するべきである。一実施形態では、ナノフィブリル状セルロースが、1~200nmの範囲のフィブリルの平均径を有する、並びに/又は、ナノフィブリル状セルロース若しくは医薬製剤が、水に分散されると、25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0.001~100Paの範囲で徐々に増加させて応力制御回転レオメーターによって決定される、貯蔵弾性率が350~5000Pa、若しくは好ましくは350~1000Paの範囲などの350Pa以上であり、及び降伏応力が25~300Pa、好ましくは25~75Paの範囲などの25Pa以上である。
【0205】
一例では、例えば本方法で出発材料として用意されるナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、22℃±1℃の水性媒体中、0.5重量%(w/w)の濃度で回転レオメーターによって決定される、ゼロせん断粘度(小さなせん断応力での一定の粘度の「プラトー」)は5000~50000Pa・sの範囲などの1000~100000Pa・sであり、及び降伏応力(せん断減粘が始まるせん断応力)は3~15Paの範囲などの1~50Paである。このようなナノフィブリル状セルロースはまた、1~200nmの範囲などの200nm以下の平均フィブリル径を有し得る。
【0206】
濁度とは、一般に肉眼では見えない個々の粒子(完全に懸濁又は溶解した固体)によって引き起こされる流体の曇り又はかすみである。濁度を測定するいくつかの実用的な方法があり、最も直接的なのは、光が水の試料柱を通過する際の光の減衰(すなわち、強度の低下)の測定である。代わりに使用されるジャクソンキャンドル法(単位:ジャクソン濁度単位又はJTU)は、本質的に、水の柱を通して見られるキャンドルの炎を完全に隠すのに必要な水の柱の長さの逆尺度である。
【0207】
濁度は、光学濁度測定器を使用して定量的に測定され得る。濁度を定量的に測定するために利用可能な市販の濁度計がいくつかある。この場合、比濁法に基づく方法が使用される。校正された比濁計からの濁度の単位は、比濁法濁度単位(NTU)と呼ばれる。測定装置(濁度計)を標準校正試料で校正及び制御し、引き続いて希釈されたNFC試料の濁度を測定する。
【0208】
1つの濁度測定法では、ナノフィブリル状セルロース試料を水に希釈して、前記ナノフィブリル状セルロースのゲル化点未満の濃度にし、希釈された試料の濁度を測定する。ナノフィブリル状セルロース試料の濁度が測定される前記濃度は、0.1%である。50ml測定容器を備えたHACH P2100濁度計が濁度測定に使用される。ナノフィブリル状セルロース試料の乾物を測定し、乾物として計算された試料0.5gを測定容器に充填し、測定容器に水道水を500gまで満たし、約30秒間振盪することによって激しく混合する。水性混合物を遅滞なく5つの測定容器に分け、濁度計に挿入する。各容器で3回の測定を行う。得られた結果から平均値及び標準偏差を計算し、最終結果をNTU単位で与える。
【0209】
ナノフィブリル状セルロースを特徴付ける1つの方法は、粘度と濁度の両方を定義することである。小さなフィブリルは光をほとんど散乱させないため、低濁度は、小さな直径などの小さなサイズのフィブリルを指す。一般に、フィブリル化の程度が増加するにつれて、粘度が増加し、同時に濁度が減少する。しかしながら、これは一定の点まで起こる。フィブリル化をさらに続けると、フィブリルは最終的に壊れ始め、強固なネットワークをもはや形成できなくなる。したがって、この点以降、濁度と粘度の両方が減少し始める。
【0210】
一例では、アニオン性ナノフィブリル状セルロースの濁度が、水性媒体中0.1%(w/w)の濃度で測定され、比濁法によって測定される、90NTU未満、例えば5~60NTU、例えば8~40NTUなどの3~90NTUである。一例では、天然ナノフィブリルの濁度が、水性媒体中0.1%(w/w)の濃度で、20℃±1℃で測定され、比濁法によって測定される、200NTU超、例えば20~200NTU、例えば50~200NTUなどの10~220NTUであり得る。ナノフィブリル状セルロースを特徴付けるために、これらの範囲を、ゼロせん断粘度、貯蔵弾性率及び/又は降伏応力などのナノフィブリル状セルロースの粘度範囲と組み合わせることができる。
【0211】
ナノフィブリル状セルロースは、非変性ナノフィブリル状セルロースであり得る、又は非変性ナノフィブリル状セルロースを含み得る。非変性ナノフィブリル状セルロースの排水は、例えばアニオングレードよりも有意に速い。非変性ナノフィブリル状セルロースは、一般に0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、2000~10000mPa・sの範囲のブルックフィールド粘度を有する。ナノフィブリル状セルロースが、電気伝導度滴定によって決定される、0.6~1.4mmol COOH/gの範囲、例えば、0.7~1.2mmol COOH/gの範囲、又は0.7~1.0mmol COOH/g若しくは0.8~1.2mmol COOH/gの範囲などの、適切なカルボン酸含有量を有することが好ましい。
【0212】
分解された繊維状セルロース原料は、変性繊維状原料であってもよい。変性繊維状原料とは、セルロースナノフィブリルが繊維からより容易に剥離できるように、繊維が処理によって影響を受けている原料を意味する。変性は通常、液体、すなわちパルプ中に懸濁液として存在する繊維状セルロース原料に対して実施される。
【0213】
繊維の変性処理は、化学的、酵素的又は物理的であり得る。化学的変性では、好ましくは、セルロース分子の長さは影響を受けないが、ポリマーのβ-D-グルコピラノース単位に官能基が付加されるように、セルロース分子の化学構造が化学反応(セルロースの「誘導体化」)によって変更される。セルロースの化学的変性は、反応物質の投与量及び反応条件に依存する一定の転換度で行われ、原則としてセルロースがフィブリルとして固体形態に留まり、水に溶解しないように、完全ではない。物理的変性では、アニオン性、カチオン性、又は非イオン性の物質又はこれらの任意の組み合わせがセルロース表面に物理的に吸着される。
【0214】
繊維中のセルロースは、変性後に特にイオン的に帯電することがある。セルロースのイオン電荷は繊維の内部結合を弱め、後でナノフィブリル状セルロースへの分解を促進する。イオン電荷は、セルロースの化学的変性又は物理的変性によって達成され得る。繊維は、出発原料と比較して、変性後、より高いアニオン性電荷又はカチオン性電荷を有し得る。アニオン性電荷を生成するために最も一般的に使用される化学的変性方法は、ヒドロキシル基をアルデヒド基及びカルボキシル基に酸化する酸化、スルホン化並びにカルボキシメチル化である。ナノフィブリル状セルロースと生物活性分子との間の共有結合の形成に関与し得るカルボキシル基などの基を導入する化学的変性が望ましい場合がある。同様に、カチオン性電荷は、第四級アンモニウム基などのカチオン性基をセルロースに結合することによるカチオン化によって化学的に生成され得る。
【0215】
ナノフィブリル状セルロースは、アニオン変性ナノフィブリル状セルロース又はカチオン変性ナノフィブリル状セルロースなどの化学変性ナノフィブリル状セルロースを含み得る。一例では、ナノフィブリル状セルロースが、アニオン変性ナノフィブリル状セルロースである。一例では、アニオン変性ナノフィブリル状セルロースが、酸化ナノフィブリル状セルロースである。一例では、アニオン変性ナノフィブリル状セルロースが、スルホン化ナノフィブリル状セルロースである。一例では、アニオン変性ナノフィブリル状セルロースが、カルボキシメチル化ナノフィブリル状セルロースである。セルロースのアニオン性変性で得られる材料は、非変性材料と比較した場合、カルボキシル基などのアニオン性基の量又は割合が変性により増加している材料を指す、アニオン性セルロースと呼ばれ得る。カルボキシル基の代わりに、又はカルボキシル基に加えて、リン酸基又は硫酸基などの他のアニオン性基をセルロースに導入することも可能である。これらの基の含有量は、本明細書でカルボン酸について開示されているのと同じ範囲内であり得る。
【0216】
セルロースが酸化されていてもよい。セルロースの酸化では、セルロースの第一級ヒドロキシル基が、N-オキシル媒介触媒酸化を通して、例えば、一般に「TEMPO」と呼ばれる、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシフリーラジカルなどの複素環式ニトロキシル化合物によって触媒的に酸化され得る。セルロース系β-D-グルコピラノース単位の第一級ヒドロキシル基(C6-ヒドロキシル基)が、カルボキシル基に選択的に酸化される。いくつかのアルデヒド基も、第一級ヒドロキシル基から形成される。酸化度が低いと十分なフィブリル化が効率的に行えず、酸化度が高いと機械的破壊処理後にセルロースが分解されるという所見に関して、セルロースは、電気伝導度滴定によって決定される、0.5~2.0mmol COOH/gパルプ、0.6~1.4mmol COOH/gパルプ、又は0.8~1.2mmol COOH/gパルプ、好ましくは1.0~1.2mmol COOH/gパルプの範囲の酸化セルロース中カルボン酸含有量を有するレベルまで酸化され得る。このようにして得られた酸化セルロースの繊維が水中で分解すると、これらは、例えば幅が3~5nmであり得る個別のセルロースフィブリルの安定な透明分散液を与える。開始媒体として酸化パルプを使用すると、0.8%(w/w)の濃度で測定されるブルックフィールド粘度が少なくとも10000mPa・s、例えば10000~30000mPa・sの範囲であるナノフィブリル状セルロースを得ることが可能である。
【0217】
本開示で触媒「TEMPO」が言及されている場合は常に、「TEMPO」が関与する全ての測定及び操作が、TEMPOの任意の誘導体又はセルロース中のC6炭素のヒドロキシル基の酸化を選択的に触媒することができる任意の複素環式ニトロキシルラジカルに等しく同様に適用されることが自明である。
【0218】
本明細書に開示されるナノフィブリル状セルロースの変性は、本明細書に記載される他のフィブリル状セルロースグレードにも適用され得る。例えば、高度に叩解されたセルロース又はミクロフィブリル状セルロースも、同様に化学的又は酵素的に変性され得る。しかしながら、例えば、材料の最終的なフィブリル化の程度には差がある。
【0219】
一例では、このような化学変性ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも10000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。一例では、このような化学変性ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも15000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。一例では、このような化学変性ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも18000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。使用されるアニオン性ナノフィブリル状セルロースの例は、フィブリル化の程度に応じて、13000~15000mPa・s、又は18000~20000mPa・s、又はさらには最大25000mPa・sのブルックフィールド粘度を有する。
【0220】
一例では、ナノフィブリル状セルロースが、TEMPO酸化ナノフィブリル状セルロースである。これは、低濃度で高い粘度、例えば0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも20000mPa・s、さらには少なくとも25000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。一例では、TEMPO酸化ナノフィブリル状セルロースのブルックフィールド粘度が、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、25000~30000mPa・sなどの20000~30000mPa・sの範囲である。
【0221】
一例では、ナノフィブリル状セルロースが、化学的未変性ナノフィブリル状セルロースを含む。一例では、このような化学的未変性ナノフィブリル状セルロースが、水に分散されると、0.8%(w/w)の濃度及び10rpmで、20℃±1℃で測定される、少なくとも2000mPa・s又は少なくとも3000mPa・sのブルックフィールド粘度を提供する。
【0222】
製造プロセスを増強するため、又は製品の特性を改善若しくは調整するための補助剤をナノフィブリル状セルロース分散液に含めることができる。このような補助剤は、分散液の液相に可溶であってもよいし、これらはエマルジョンを形成してもよいし、又はこれらは固体であってもよい。補助剤をナノフィブリル状セルロース分散液の製造中に原料に既に添加してもよいし、又は補助剤を形成されたナノフィブリル状セルロース分散液若しくはゲルに添加してもよい。補助剤を、例えば、含浸、噴霧、液浸、浸漬又は同様の方法によって、最終製品に添加してもよい。補助剤は通常、ナノフィブリル状セルロースに共有結合されていないため、ナノセルロースマトリックスから放出可能であり得る。このような薬剤の制御放出及び/又は徐放は、NFCをマトリックスとして使用すると得ることができる。補助剤の例としては、治療(薬学)剤、及び緩衝剤、界面活性剤、可塑剤、乳化剤などの、製品の特性又は活性剤の特性に影響を及ぼす他の薬剤が挙げられる。一例では、分散液が、最終製品の特性を増強するため、又は製造プロセスで製品からの水の除去を容易にするために添加することができる、1又は複数の塩を含有する。塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムなどの塩化物塩が挙げられる。塩は、分散液中の乾物の0.01~1.0%(w/w)の範囲の量で含まれ得る。最終製品を、約0.9%塩化ナトリウムの水溶液などの塩化ナトリウムの溶液に液浸又は浸漬してもよい。最終製品中の望ましい塩含有量は、湿潤製品の体積の約0.9%などの約0.5~1%の範囲であり得る。塩、緩衝剤及び同様の薬剤は、生理学的条件を得るために提供され得る。
【0223】
ナノフィブリル状セルロースの非共有結合架橋を得るために、多価カチオンを含めてもよい。一例は、ナノフィブリル状セルロース、特にアニオン変性ナノフィブリル状セルロース、並びに例えばカルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、金、プラチナ及びチタンのカチオンから選択される多価金属カチオンなどの多価カチオンを含むナノフィブリル状セルロース製品を提供し、ここではナノフィブリル状セルロースが、多価カチオンによって架橋されている。特にバリウム及びカルシウムが生物医学的用途に有用であり得、特にバリウムが標識に使用され得、注射されたヒドロゲルの検出に使用することができる。多価カチオンの量は、ヒドロゲルの乾燥含有量から計算される、0.1~3%(w/w)、例えば0.1~2%(w/w)の範囲であり得る。
【0224】
一例は、このようなヒドロゲルを調製する方法であって、パルプを用意すること、ナノフィブリル状セルロースが得られるまでパルプを分解すること、ナノフィブリル状セルロースをヒドロゲルに形成することを含む方法を提供する。
【0225】
ナノフィブリル状セルロースは、所望のフィブリル化の程度にフィブリル化され、所望の含水量に調整され得る、又は本明細書に記載される所望の特性を有するゲルを形成するように変性され得る。一例では、ヒドロゲル中のナノフィブリル状セルロースが、アニオン変性ナノフィブリル状セルロースである。
【0226】
医療ヒドロゲル又は科学ヒドロゲルとして使用されるヒドロゲルは、均質である必要がある。したがって、ヒドロゲルを調製する方法は、ナノフィブリル状セルロースを含むヒドロゲルを、好ましくは本明細書に記載される装置などの均質化装置で均質化することを含み得る。この好ましくは非フィブリル化均質化工程により、不連続領域をゲルから除去することが可能である。適用のためのより優れた特性を有する均質なゲルが得られる。ヒドロゲルは、更に、例えば、熱及び/若しくは放射線を使用することによって、並びに/又は抗微生物剤などの殺菌剤を添加することによって、殺菌(sterilized)され得る。
【0227】
組成物の使用
本明細書に開示されるナノフィブリル状セルロースヒドロゲル中に医薬化合物を含む組成物又は製剤は、組成物をヒト又は動物対象などの対象に送達、注射、移植及び/又は他の方法で投与することを含む様々な方法で使用され得る。対象は、患者、特に組成物に含まれる医薬化合物を伴う療法を必要とする患者であり得る。処置を必要とする対象を認識又は検出することが必要となり得る。医薬品が標的化される、例えば注射される対象には特定の標的が存在し得る。本方法は、ナノフィブリル状セルロースヒドロゲル中に医薬化合物を含む組成物を、注射可能な形態又は移植可能な形態などの適切な形態で用意することを含む。また、例えば、ソフトカプセルなどの生分解性カプセルに封入された、経口剤形が提供されてもよい。治療であり得る処置は、徐放又は制御放出投与などの1又は複数の医薬化合物の持続放出投与を含み得る。同様に、投与される医薬製剤は、徐放性又は制御放出性の組成物又は剤形などの持続放出組成物又は剤形であり得る。処置は、鎮痛処置、例えば長期鎮痛処置、又は水への溶解度が低い1若しくは複数の化合物などの他の適切な医薬化合物による処置など、を含み得る。組成物は、治療的処置又は方法であり得る処置に使用され得る。
【0228】
一実施形態は、医薬化合物を対象に投与することを含む治療方法で使用するための注射可能な製剤を提供する。
【0229】
一実施形態は、医薬化合物を対象に投与することを含む治療方法で使用するための移植可能な製剤を提供する。
【0230】
一例は、治療を必要とする対象を処置する方法であって、
好ましくは、治療又は処置を必要とする対象を認識すること、
本明細書に開示されるナノフィブリル状セルロースヒドロゲル中に医薬化合物を含む製剤を用意すること、及び
例えば注射することによって又は移植することによって、製剤を対象に送達又は投与すること
を含む方法を提供する。
【実施例】
【0231】
鎮痛薬の正確な用量は、前臨床動物研究で極めて重要な役割を果たす。適切な術後疼痛管理の目標は、受け入れられない有害効果をもたらすことなく疼痛及び不快感を最小化することである。げっ歯類の疼痛の評価は、疼痛が無能力にするものでない限り、げっ歯類が典型的には疼痛に関連する行動を最小限に抑えるので困難となり得る。したがって、前臨床動物研究における疼痛管理は、薬学的介入を含まなければならない。実験動物の術後疼痛管理の場合、典型的な処置期間は2~4日間であるが、慢性疼痛を緩和する獣医学的使用の場合、薬物放出が長ければ長いほど、動物への効果が高くなる。慢性疼痛処置のための用量は、典型的には、術後処置と比較して低くなる。
【0232】
薬物及び投与量の推奨は、世界的に、さらには機関によって異なる。実験動物の術後疼痛を処置するために典型的に使用される鎮痛薬の2つのクラスは、オピオイド及びNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)である。これらの全てが、中等度から重度の疼痛の処置として提案されているが、これらの各々が極めて異なる作用機序及び副作用の程度を有する。
【0233】
ブプレノルフィンは実験動物ケアで最も一般的に使用されるオピオイドであり、カルプロフェン、ケトプロフェン及びメロキシカムは広く使用されている抗炎症薬である。適切な鎮痛効果と有害効果との間のバランスはしばしば狭い。よって、動物における正確な1日量が何であるかを知ること、及び投与方法が正確で安定していることが極めて重要である。オピオイド及びいくつかのNSAIDの作用期間は比較的短く、6~12時間であり、1日当たり数回の投与を要する。しかしながら、動物実験室での一般的な慣行は、これを1日1回又は2回しか与えないというものであり、不十分な疼痛緩和をもたらす。
【0234】
鎮痛薬の有効性は、鎮痛化合物自体に依存するだけではない。製剤の安定性、バイオアベイラビリティ、放出動態及び注射可能性は、最大の有効性を得るために克服しなければならない課題である。賦形剤及び徐放技術は、これらの課題に対する解決策を提供する。前臨床設定では、化合物を投与する最も一般的な方法は、従来の注射である。適用されている徐放技術はわずかである。これらの中で、浸透圧ポンプ、マトリックスペレット及びポリマーが最も頻繁に使用されているが、これらには全て、より大きな使用を妨げる弱点がある。
【0235】
結果及び研究結果
この研究では、NFCが、前臨床研究使用のための鎮痛薬メロキシカム及びカルプロフェンの注射可能な徐放性賦形剤として提供される。標的とするインビボ用量は、注射によって投与される典型的な1日量から計算した。製剤を、前臨床研究で最も一般的に使用される実験動物であるラット及びマウスに標的化した。
【0236】
全ての低用量製剤で用量反応が観察された。対照的に、高用量では用量反応が軽度である、又はまったく見られなかった。この現象は、制限因子がAPIの環境への溶解速度であるという事実によるものであり、これは、基本的に化合物の水溶性が低いためである。APIの環境への溶解速度は、その表面積を増加させる(=マイクロ化若しくはナノ化による粒径の減少)、又は注射中のマトリックス体積を増加させることによって加速することができる。より高用量では、累積放出も不十分であり、放出されていない化合物がデポー又は溶解システムの他の場所に残っていることを示している。
【0237】
研究動物の術後鎮痛薬としてのAPI-NFCゲルの施用性を検討する場合、最適な製剤は、3~7日以内に全ての有効成分(100%の累積結果に近い)を放出しなければならず、及び最初の2~4日以内に化合物のほとんどを放出しなければならない。より長い放出は、鎮痛薬の過剰投与及び有害効果につながるおそれがある。術後の効果のない疼痛緩和は、慢性疼痛症候群を引き起こすおそれがある。全体として、制御が不十分な疼痛管理は、実験動物の福祉に悪影響を及ぼすとともに、実験結果の解釈を混乱させ得る。製剤のほとんどで2週間以内に放出がゼロ近くまで減少したという事実にもかかわらず、製剤のいずれでも累積放出は100%ではなかった。一部は、これは、API化合物のいくらかがまだデポー内にあるためであるが、一部は、APIのいくらかが、ポーチに付着されているなど溶解システムに、又は溶解媒体交換中に失われているためである。最も高い累積放出は80%~90%の間で、これがこの研究で使用された溶解システムで最大と思われる。
【0238】
一部のCPF及びMLX低用量範囲製剤は、マウスの術後疼痛処置の標的投与量レベルを満たした。初期バーストは高すぎず、最初の6時間以内にAPIのおよそ5~10%を放出し、APIのほとんどは4日以内に放出された。最適な用量は、現在の注射量若しくはわずかに多い量を含む既存の製剤又は反復注射を使用することによって達成することができる。6%アニオン性NFCは、透明な3Dゲルを形成し、2%アニオン性NFC形態及び1.5%天然NFC形態と比較して、注射後の形状をより良く保ち、これは、製剤中の水分量が少ないためである。NFCの3つの形態の間で、放出プロファイルに大きな差はなかった。ただし、6%アニオン性NFCは最も強い初期バーストを有し、バイオアベイラビリティが最も高く、鎮痛作用が最も速いことを示唆している。商業的使用の場合、長期安定性に注意が必要である。この研究後、天然NFCを冷蔵庫で部分的に凍結すると、解凍後に水とNFCが明確に分離され、容易に混合されないことが観察された。これらは全てインビボでの使用に重要な現象である可能性があり、したがって、将来の研究での6%アニオン性ゲルの選択を支持する。
【0239】
参照
参照マトリックスとしてのPVAの使用を検討する場合、PVAは水溶性であるため、溶解ポーチから漏出することが懸念された。水中PVAはそれ自体、溶解ポーチから急速に漏出した。高分子量PVAは、シュウ酸と架橋することによってうまく製剤化され、より多くの3D構造を提示し、溶解研究に適したものになった。しかしながら、PVAは面倒な架橋手順を必要とするため、取り扱いが困難であった。インビトロ設定では、溶解したポリマーがHPLCカラムを閉塞したため、測定分析に課題が生じた。
【0240】
参照マトリックスPLGA/DMSOゲル及び参照マトリックスPVA/H2Oゲルは徐放性プロファイルを示したが、術後疼痛管理の適応を検討する場合、NFCゲルと比較していくつかの重要な有益な特性を欠いていた。PLGAは、全体的に放出率が低すぎ、累積放出が低すぎた。PVAは、より高く、標的用量放出率に近かったが、初期バーストは除外され、累積放出も低すぎた。
【0241】
PVAは、生体安定性で、水中及び動物中インビボで溶解性でないNFCマトリックス及びPLGAマトリックスと比較して生分解性マトリックスと見なすことができる。この違いは、最終的な適応を検討する際に重要である。実験動物では、生体安定性マトリックスと生分解性マトリックスの両方を使用することができるが、獣医用途では、皮下腔内にマトリックスが蓄積するため、生体安定性マトリックスの大量の頻繁な注射は使用の禁忌を引き起こすおそれがある。
【0242】
インビボ設定では、徐放性メロキシカムが、米国及び欧州のいくつかの実験室で使用されている(メロキシカム-SR、Zoopharm Inc)。近年の論文は、その製品の悪い結果を要約している。論文では、製造業者が推奨する72時間当たり4mg/kgの投与を使用して、メロキシカム-SRの有効性及び血中レベルを評価するパイロット研究が行われた。マウスが疼痛の徴候を示し、血漿薬物レベルが投与4時間後に検出不能であり、メロキシカム-SRが現在推奨されている投与で十分な疼痛制御をもたらせないことが認められた。本研究のNFC-API研究結果を、論文で行われたSR-メロキシカム研究と比較すると、NFC-API製剤のインビボでのより良い結果を得ることができる。
【0243】
概要
この研究の目的は、前臨床研究使用のための鎮痛薬の徐放性賦形剤としてのナノフィブリル状セルロース(NFC)ゲルを開発することであった。選択された鎮痛薬はメロキシカム(MLX)及びカルプロフェン(CPF)であった。NFCに対して選択された参照マトリックスは、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリ(乳酸)-コ-グリコール酸(PLGA)であった。この研究にはいくつかの段階;PVAの溶解実現可能性段階、累積放出段階、及び広範な溶解段階が含まれていた。この研究は、アニオン性又は天然(化学的未変性)のいずれの形態のNFCが優れた徐放性賦形剤であるか、及び短期術後疼痛管理(2~4日間)又は長期慢性疼痛管理(1~4週間)のいずれの適応がより有望な適応領域に思われるか結論を裏付けることを目的としていた。
【0244】
標的とするインビボ用量は、注射によって投与される典型的な1日量から計算した。製剤には、前臨床研究で最も一般的に使用される実験動物であるマウス及びラットを標的とした、3つの投与並びに低用量及び高用量の2つの用量範囲が含まれていた。広範な溶解段階の長さは、頻繁なサンプリング点を含む2週間であった。
【0245】
PVA実現可能性研究の結果は、シュウ酸を架橋剤として使用することによって、PVAが溶解研究に適した3Dゲル構造を形成することを示唆したので、参照材料であるPVA/H2OゲルとPLGA/DMSOゲルの両方を広範な溶解研究に含めた。累積放出研究では、50%DMSO(ジメチルスルホキシド)及び50%NMP(N-メチル-2-ピロリドン)がCPFの放出を増加させることが認められた。これらのうち、DMSOを高用量CPF製剤に含めた。
【0246】
広範な溶解研究に基づいて、選択された用量のカルプロフェン(CPF)及びメロキシカム(MLX)は、NFC製剤から3~14日間徐放を示した。全ての低用量製剤で用量反応が観察されたが、高用量製剤では観察されず、APIの環境への溶解速度が制限因子であることを示唆している。マウス術後疼痛処置の標的用量を達成するためのCPF製剤及びMLX製剤を特定し、調べた。最適な製剤は同時に高い累積放出を有し、マウスでの術後疼痛処置のための優れた製剤を示している。最適な用量は、現在の注射量又はわずかに多い量を含む既存の製剤を使用することによって達成することができる。標的レベルの製剤は、例えば100μl注射で0.5mg CPFを含む6%アニオン性NFC及び1~2×100μl注射で0.1~0.2mg MLXを含む6%アニオン性NFCであった。これらの製剤は、鎮痛処置の迅速な開始に望ましい、高い初期バーストを有する。高い初期バーストは短く、最初の6時間以内に全用量の5~10%しか放出しない。
【0247】
50%DMSOは、累積放出溶解研究でCPFの放出を増加させた。増加は研究の最初の日に最も明白であり、その後、純粋なNFCと同様の放出が得られた。初期の時点での放出が高いにもかかわらず、広範な14日間の溶解研究では、累積放出は依然として低いままであった。ラット術後疼痛処置の標的用量を達成するためのCPF製剤及びMLX製剤は、現在の製剤では容易に達成できない。高用量製剤での2週間の間の低い累積放出値は、関節炎などの慢性疼痛、処置、及び数週間までの徐放にとって潜在的に優れた製剤を示す。
【0248】
実現可能性及び溶解試験に基づいて、天然形態とアニオン性形態の両方の形態のNFCを鎮痛化合物の賦形剤として使用することができるが、6%アニオン性形態は、他のNFC形態よりも、優れた3Dゲル形成特性及び高い初期バーストなどのいくつかの有益な特性を有する。参照マトリックスPLGA/DMSOゲル及び参照マトリックスPVA/H2Oゲルは徐放特性を示した。PVAの放出プロファイルは、初期バーストを除いてNFCと同様であったが、PLGAからの放出は初期バースト後は極めて低かった。術後疼痛管理の適応を検討する場合、NFCゲルは参照マトリックスと比較して優れていた。PLGA/DMSOゲルは、全体的に放出率が低すぎ、累積放出が低すぎた。PVA/H2Oゲルは、より高く、標的用量放出率に近かったが、短期放出製品については累積放出が低すぎた。PVAは、面倒な架橋手順を必要とし、その後API懸濁が困難であるので、取り扱いが困難であった。
【0249】
この研究に基づくと、ナノフィブリル状セルロースゲルは、前臨床研究使用又は獣医学的使用のための鎮痛薬カルプロフェン及びメロキシカムの有望な徐放性賦形剤である。NFCを用いた活性剤の製剤化は、二重非対称遠心混合を使用することによって実現可能であり、凝集体は混合カップ内の金属球で破壊された。全てのNFC、ただし特にCPF又はMLXを含む6%アニオン性NFCを、マウスで、及びラットではいくつかの制限付きで、2~4日間、術後疼痛管理の賦形剤として使用することができる。全てのNFCは、ラット及びより大型の動物で、及びマウスではいくつかの制限付きで、2週間超の間、慢性疼痛管理の賦形剤として使用することができる。
【0250】
目的
この研究の目的は、前臨床研究使用のための鎮痛薬の徐放性賦形剤としてナノフィブリル状セルロースゲルを開発することであった。研究にはいくつかの段階が含まれ、以下の設計の特徴に特に注意を払う:
【0251】
1.物理化学的特性に基づいて、インビトロ溶解使用のためのNFCの参照マトリックスとしてのポリビニルアルコール(PVA)の適合性を評価する(溶解実現可能性段階、PVA)
2.7日以内に100%に近い累積結果を得ることを目的とするMLX及びCPFの累積放出を調べる(累積放出段階)
3.NFC及び参照マトリックス-APIデポーについての広範な溶解研究を設計及び実施する(広範な溶解段階)
4.アニオン性又は天然のいずれの形態のNFCが優れた徐放性賦形剤であるか、及び短期術後疼痛管理(2~4日間)又は長期慢性疼痛管理(1~4週間)のいずれの適応がより有望な適応領域に思われるか結論づける
【0252】
標的とするインビボ用量は、注射によって投与される典型的な1日量から計算した。製剤には、前臨床研究で最も一般的に使用される実験動物であるマウス及びラットを標的とした、3つの投与並びに低用量及び高用量の2つの用量範囲が含まれていた。広範な溶解段階の長さは、頻繁なサンプリング点を含む2週間であった。
【0253】
化合物及びマトリックス材料
カルプロフェン(CPF)、NSAID
CAS 53716-49-7、式 C15H12ClNO2
分子量273.71g/mol
製造業者:Hyperchem、固形粉末、純度99%
Mp.=195~199℃
ロット00301A
【0254】
メロキシカム(MLX)、NSAID
CAS 71125-38-7、式C14H13N3O4S2
分子量351.40g/mol
製造業者:Hyperchem、固形粉末、純度98.0%
Mp.=254℃
ロット170616001
【0255】
ナノフィブリル状セルロースゲルはUPMから入手した。6%アニオン性形態(ロット11944)、2%アニオン性形態(ロット12066)及び1.5%天然形態(ロット11992)の3つの形態のNFCを試験のために入手した。セルロースを所望のフィブリル化の程度に分解し、アニオン性形態を酸化した。参照マトリックス、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸(PLGA))はSigma Aldrich Co.から入手した。低分子量:分子量平均40.000(31.000~50.000、カタログ番号363138、ロットMKCG6270)及び高分子量:分子量130.000(カタログ番号563900、ロットMKCB5273)の2つの分子量の加水分解PVAを入手した。分子量平均12.000(7.000~17.000、Resomer(登録商標)RG 502、カタログ番号719897、ロット番号BCBX6534)の1つの形態の酸末端PLGAを入手した。試験化合物及びマトリックス成分は、製造業者から入手した指示に従って取り扱い及び保管した。
【0256】
研究設計
溶解実現可能性、PVA
物理化学的特性に基づく、インビトロ溶解使用のためのNFCの参照マトリックスとしてのポリビニルアルコール(PVA)の評価
広範な溶解研究では、PVAの溶解実現可能性研究の結果が支持的であったので、参照マトリックスはPVAとPLGAの両方とした。以下の詳細な課題を実施した:
【0257】
・物理化学的特性に基づく、インビボ及びインビトロでの使用のためのPVAゲル形態の評価
・H2O及びPVAゲル形態を用いた混合試験
・均質な混合を確実にするためのTiO2粉末を用いた混合試験
・プラセボマーカーとしてTiO2を使用し、PVAゲルでTiO2の放出/漏出を監視することによる、RT及び37℃での溶解特性の評価
・シリンジ及び針からのPVAゲルの注射可能性
・PVAの徐放特性を改善するための物理的(凍結-解凍)及び化学的(シュウ酸)薬剤による架橋試験
・API(CPF)を用いたPVAのパイロット溶解
【0258】
累積放出段階
CPFの放出率を増加させ、7日以内にNFC製剤の100%に近い累積結果を得ることを目的とした累積放出研究。以下の詳細な課題を実施した:
【0259】
・H2Oに加えて、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びNMP(N-メチル-2-ピロリドン)の2つの溶媒を使用して、CPFの放出を増強した
・6%アニオン性NFC及び1.5%天然NFCを調べた
・研究には、NFC-APIデポーの製剤化及び累積放出を追跡する短期インビトロ溶解研究が含まれた
【0260】
広範な溶解
NFC及び参照マトリックスを用いたカルプロフェン(CPF)及びメロキシカム(MLX)についての広範な溶解。以下の詳細な課題を実施した:
【0261】
・前の実験に基づく、NFC-API及び参照マトリックス-APIデポーについての広範なインビトロ溶解試験
・3つのAPI用量、2つの複製、3つの異なる形態のNFCゲル(天然1.5%、2%アニオン性及び6%アニオン性)並びに参照マトリックスPVA(ポリビニルアルコール)及び参照マトリックスPLGA(ポリ(乳酸-コ-グリコール酸、Resomer(RES))を含む
・マウスについて低用量標的化及びラットについて高用量標的化の2つの用量範囲
・時点:2時間、6時間、1日目、2日目、4日目、7日目、10日目及び14日目
【0262】
【0263】
APIデポーの製造及び溶解段階
手短に言えば、CPF及びMLXを粉砕後に計量し、Dual Asymmetric Centrifugation(2500rpm、pp10カップで1分間、SpeedMixer(商標)モデル150/250)によってNFC又は参照マトリックスに別々に分散させた。PLGAを最初にDMSO(40/60)に溶解し、10%PVAをUP-H
2Oに溶解した(90℃、30分)。さらに、API添加の前に、PVAを1%シュウ酸で処理した(110℃、120分)。得られたAPI-マトリックス懸濁液を、1mlシリンジ及び21G針を用いて、100~300μlの注射量で注射した。デポーを、インビボの皮下空間を模倣する、ポーチをわずかに開いたままにするために内側に金属スプリングを備えた、5~8μm空隙率の密封されたセルロースポーチ(F58、Ankom Technologies)に注射した。溶解セットアップを
図1A~
図1Dに示す。
【0264】
インビトロ溶解試験を、各APIデポーについて別々に実施した。溶解研究を、セルロースのポーチが緩い金属グリッドの内側に置かれ、ポーチを同時に溶解液体表面下に保持して、流体の自由な循環を可能にする、100mlガラスバイアル内で実施した。ガラスバイアルをオービタルシェーカー(+37℃、暗所で60rpm)に入れた。溶解溶液は0.9%NaClとした。広範な溶解研究のサンプリング時点には、研究日:2時間、6時間、1日目、2日目、4日目、7日目、10日目及び14日目が含まれていた。各時点で、サンプリング後に全ての流体を交換した。
【0265】
HPLC測定
HPLC-UV設備(Agilent 1200シリーズ)を使用して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を実施した。化合物標準のストック溶液を、各化合物について適切な濃度で、溶離液で調製した。全ての標準を、研究全体を通じて+4℃の冷蔵庫に保管した。化合物定量用の試料を、事前に予定された計画に従って、いくつかの時点で溶解バイアルから回収した。試料をガラス製HPLCバイアルに回収し、分析前に+4℃で暗所に放置した。120 EC-C18カラム(長さ50 mm、内径3.0 mm、粒径4.0μm)及びガードカラムをこの研究で使用した。定量化の計算は、未知の試料と標準のピーク面積比に基づいた。HPLC-UV分析からのピークデータを、OpenLAB CDS ChemStationソフトウェアを使用して収集、統合及び分析した。線形回帰を使用して標準曲線を作成した。
【0266】
選択した測定条件:
CPF(カルプロフェン)
・溶離液:50%アセトニトリル-49%UP-H2O - 1%酢酸
・流量0.5ml/分、注射量10μl、UV 260nm、保持時間約2.1分、カラム温度30℃
・典型的な標準曲線及び測定されたAPI-ピークを、結果を決定するために使用した
MLX(メロキシカム)
・溶離液:70%メタノール-30%UP-H2O、pH2.6、リン酸で調整
・流量0.3ml/分、注射量10μl、UV 230nm、保持時間約2.0分、カラム温度30℃
・典型的な標準曲線及び測定されたAPI-ピークを、結果を決定するために使用した
【0267】
結果
溶解実現可能性、PVA
最初の実験は、高分子量と低分子量の両方の形態のPVAが、水に溶解した場合に透明な3Dゲルを形成しないことを実証した。21G針を通した注射可能性を維持するための最高濃度は、高分子量PVAの場合は12%水溶液であり、低分子量PVAの場合は16%水溶液であった。低分子量PVAは数分以内、高分子量PVAは数時間以内で、両最高濃度とも溶解ポーチから漏出した(
図1)。繰り返しの凍結-解凍サイクルによる架橋は、よりゲル状の構造を生成したが、1%シュウ酸処理及び10%PVAで、ヒドロゲルのより良い形成が観察された。より高いシュウ酸処理は、ゲルの粘度をさらに増加させたが、注射可能性を低下させた。架橋後の3Dゲル構造にもかかわらず、低分子量PVAは溶解ポーチから1時間以内に漏出し、高分子量PVAは主にポーチ内に残っているように見えた(
図1)。
【0268】
図2は、天然及び架橋PVAを使用した溶解研究における1時間後のPVA/TiO
2漏出を示す図である。
図3は、1%又は5%シュウ酸架橋を有する10%高分子量PVAからのCPF放出を示す図である。A)30分の時点での放出及びB)5日目の放出。
【0269】
結果は、2つの用量(0.5mg及び2mg)の間で用量-反応を観察することができ、シュウ酸による架橋増加(1%から5%まで)が徐放特性をさらに増加させることを実証した。しかしながら、5%架橋製剤では注射可能性が制限されるので、さらなる製剤化では1%シュウ酸架橋を選択した。
【0270】
累積放出研究
前の実験でMLXと比較して累積放出結果が明らかに低かったので、CPFでNFC製剤についての累積結果を増加させることを目的とした累積放出研究を実施した。6%アニオン性NFC及び1.5%天然NFCを調べた。H
2Oに加えて、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びNMP(N-メチル-2-ピロリドン)の2つの溶媒を使用して、CPFの放出を増強した。この研究には、NFC-APIデポーの製剤化及び累積放出を追跡する短期インビトロ溶解研究が含まれた(
図7)。デポーは、50%の溶媒及び50%のNFCを含有していた。
【0271】
図4は、NFCデポーからのCPF放出に対するDMSO、NMP及びH
2Oの効果を示す図である。結果は、DMSOとNMPの両溶媒が、NFC-API及びNFC-H
2O-API製剤と比較して、1日放出を有意に増加させることを示唆した。溶媒は、溶媒又は賦形剤を含まない固体CPFのレベルまで、最初の数時間の放出を増加させた。しかしながら、増加は研究の最初の数時間及び最初の日に最も明白であり、放出後に純粋なNFC製剤のレベルに戻った。
【0272】
これらの結果に基づいて、DMSO及びNMPが水によって比較的急速に置き換えられ、累積結果への正味の効果は軽いように思われる場合でも、CPF-NFC高用量製剤の広範な溶解研究に50%DMSOを選択した。術後疼痛管理では、より長い放出は、鎮痛薬の過剰投与及び有害効果につながるおそれがあるため、計画された処置期間である2~4日以内に高い累積結果を受けることが重要である。逆に、低い累積結果は、長期放出及び慢性疼痛管理における適応の可能性を示す。
【0273】
広範な溶解
CPF及びMLXを用いて、全てのNFC及び参照マトリックスに対して広範な溶解研究を実施した。研究には、3つのAPI用量、2つの複製、3つの異なる形態のNFCゲル(天然1.5%、2%アニオン性及び6%アニオン性)、2つの参照マトリックスPVA及びPLGA、並びにマウスについて低用量標的化及びラットについて高用量標的化の2つの用量範囲が含まれた。サンプリング時点は、2時間、6時間、1日目、2日目、4日目、7日目、10日目及び14日目とした。
【0274】
CPF低及び高用量実験並びにMLX低用量実験での注射量は100μl/デポーとし、MLX高用量実験での注射量は300μl/デポーとした。CPF高用量実験では、DMSOを使用して放出を増加させた。DMSO/NFC(50/50)を速度混合(2500rpm、1分)で混合した後、APIを添加し、対応してこれを速度混合(2500 rpm、1分、金属球)で混合することによって、DMSO製剤を調製した。PLGA製剤及びPVA製剤を、実現可能性及び累積放出段階に対応して調製した。
【0275】
結果を4つの章に分ける;1)MLX1日放出結果及び累積放出結果、マウスを標的とした低用量範囲、2)MLX1日放出結果及び累積放出結果、ラットを標的とした高用量範囲、3)CPF1日放出結果及び累積放出結果、マウスを標的とした低用量範囲、及び4)CPF1日放出結果及び累積放出結果、ラットを標的とした高用量範囲。
【0276】
1日放出結果を2つのサンプリング時点の平均として示し(例えば、12日目のデータポイントは14日目の測定結果を表すため、10日目~14日目の放出)、累積放出結果を測定日に基づいて示す。各値は、溶解した2つの別々の試料の平均である(SD/SEは示さず)。群をマトリックスに従って命名する(ANI 6%=6%アニオン性NFC、ANI 2%=2%アニオン性NFC、NAT 1.5%=1.5%天然NFC、PLGA=PLGA Resomer(登録商標)RG 502ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)及びPVA=高分子量(MW 130.000)ポリビニルアルコール。1回の注射当たりの薬物の総量(mg)は、群名の後に記載される。
【0277】
MLX1日放出、低用量範囲
図5A~
図5Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0278】
MLX累積放出、低用量範囲
図6A~
図6Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%及びmcg、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC及びPLGAマトリックス。
【0279】
図7A~
図7Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%及びmcg、低用量範囲)。PVAマトリックス及び同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0280】
図8A~
図8Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0281】
MLX累積放出、高用量範囲
図9A~
図9Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%及びmcg、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC及びPLGAマトリックス。
【0282】
図10A~
図10Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの累積放出を示す図である(%及びmcg、高用量範囲)。PVAマトリックス及び同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0283】
CPF1日放出、低用量範囲
図11A~
図11Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0284】
CPF累積放出、低用量範囲
図12A~
図12Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%及びmcg、低用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC及びPLGAマトリックス。
【0285】
図13A~
図13Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%及びmcg、低用量範囲)。PVAマトリックス及び同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0286】
CPF1日放出、高用量範囲
図14A~
図14Hは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出を示す図である(mcg/d、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC、PLGA及びPVAマトリックス。
【0287】
CPF累積放出、高用量範囲
図15A~
図15Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%及びmcg、高用量範囲)。アニオン性6%NFC、アニオン性2%NFC、天然1.5%NFC及びPLGAマトリックス。
【0288】
図16A~
図16Gは、最大14日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの累積放出を示す図である(%及びmcg、高用量範囲)。PVAマトリックス及び同じ図で別々に1投与当たり全てのマトリックス。
【0289】
CPF、追加実験、高用量範囲
図17A~
図17Dは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出及び累積放出を示す図である(mcg/日、%及びmcg、高用量範囲)。ヒストグラムは、1日当たりの蓄積された全用量を表す。アニオン性6%NFC及び5mg CPF用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量5mgのCPF、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量2.5mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の750μg/日<ラットの標的用量<1500μg/日。
【0290】
CPF、追加実験、低用量範囲
図18A~
図18Dは、最大9日間の広範な溶解研究におけるカルプロフェンの1日放出及び累積放出を示す図である(mcg/日、%及びmcg、低用量範囲)。ヒストグラムは、1日当たりの蓄積された全用量を表す。アニオン性6%NFC及び0.5mg CPF用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.5mgのCPF、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.25mgのCPF。術後疼痛管理のため、2~4日間の100μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0291】
MLX、追加実験、高用量範囲
図19A~
図19Dは、最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出及び累積放出を示す図である(mcg/日、%及びmcg、高用量範囲)。ヒストグラムは、1日当たりの蓄積された全用量を表す。アニオン性6%NFC及び2mg MLX用量。2つの製剤:1×1ml注射、1回の注射当たり用量2mgのMLX、及び2×0.5ml注射、1回の注射当たり用量1mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の250μg/日<ラットの標的用量<600μg/日。
【0292】
MLX、追加実験、低用量範囲
図20A~
図20Dは、最大9日間の広範な溶解研究におけるメロキシカムの1日放出及び累積放出を示す(mcg/日、%及びmcg、低用量範囲)。ヒストグラムは、1日当たりの蓄積された全用量を表す。アニオン性6%NFC及び0.4mg MLX用量。2つの製剤:1×0.2ml注射、1回の注射当たり用量0.4mgのMLX、及び2×0.1ml注射、1回の注射当たり用量0.2mgのMLX。術後疼痛管理のため、2~4日間の60μg/日<マウスの標的用量<125μg/日。
【0293】
結論
PVA実現可能性研究の結果は、シュウ酸を架橋剤として使用することによって、PVAが溶解研究に適した3Dゲル構造を形成することを示唆した。PVA/H2OゲルとPLGA/DMSOゲルの両参照材料を、広範な溶解研究に含めた。広範な溶解研究に基づいて、選択された用量のカルプロフェン(CPF)及びメロキシカム(MLX)は、NFC製剤から3~14日間徐放を示した。
【0294】
全ての低用量製剤で用量反応が観察されたが、高用量製剤では観察されず、APIの環境への溶解速度が制限因子であることを示唆している。これは主にCPF及びMLXの水溶性が低いためである。APIの環境への溶解速度は、その表面積を増加させる(=微細化による粒径の減少)及び/又は注射中のマトリックス体積を顕著に増加させることによって加速することができる。マウス術後疼痛処置の標的用量を達成するためのCPF及びMLX製剤を特定し、調べた。
【0295】
最適な製剤は同時に高い累積放出を有し、マウスでの術後疼痛処置のための優れた製剤を示している。最適な用量は、現在の注射量又はわずかに多い量を含む既存の製剤を使用することによって達成することができる。標的レベルの製剤は、例えば100μl注射で0.5mg CPFを含む6%アニオン性NFC及び1~2×100μl注射で0.1~0.2mg MLXを含む6%アニオン性NFCであった。これらの製剤は、鎮痛処置の迅速な開始に望ましい、高い初期バーストを有する。高い初期バーストは短く、最初の6時間以内に全用量の5~10%しか放出しない。
【0296】
50%DMSO(ジメチルスルホキシド)及び50%NMP(N-メチル-2-ピロリドン)は、累積放出溶解研究でCPFの放出を増加させた。増加は研究の最初の日に最も明白であり、その後、純粋なNFCと同様の放出が得られた。初期の時点での放出が高いにもかかわらず、広範な14日の溶解研究では、累積放出は依然として低いままであった。ラット術後疼痛処置の標的用量を達成するためのCPF製剤及びMLX製剤は、現在の製剤では容易に達成できない。制限因子はAPIの環境への溶解速度であるように思われるので、NFC中のAPIの量を増加させることによって高用量を達成することはできない。およそ10倍の注射量(およそ1ml量)の既存のマウス製剤を使用することによって、又は数回の反復注射で用量を達成することができる。1ml全注射量は、ラットの最大注射量をまだ下回っているが、使用するのに不便となり得る。高用量製剤での2週間の間の低い累積放出値は、関節炎などの慢性疼痛、処置、及び数週間までの徐放にとって潜在的に優れた製剤を示す。
【0297】
実現可能性及び溶解試験に基づいて、天然形態とアニオン性形態の両方の形態のNFCを鎮痛化合物の賦形剤として使用することができるが、6%アニオン性形態は、他のNFC形態よりも、球状デポーの形成及びAPI懸濁液安定性を助ける優れた3Dゲル構造、並びにインビボでのバイオアベイラビリティ増加及び有効性の迅速な開始を示す迅速で高い放出率などのいくつかの有益な特性を有する。
【0298】
参照マトリックスPLGA/DMSOゲル及び参照マトリックスPVA/H2Oゲルは徐放特性を示した。PVAの放出プロファイルは、初期バーストを除いてNFCと同様であったが、PLGAからの放出は初期バースト後は極めて低かった。術後疼痛管理の適応を検討する場合、NFCゲルは参照マトリックスと比較して優れていた。PLGA/DMSOゲルは、全体的に放出率が低すぎ、累積放出が低すぎた。PVA/H2Oゲルは、より高く、標的用量放出率に近かったが、短期放出製品については累積放出が低すぎた。PVAは、面倒な架橋手順を必要とし、その後API懸濁が困難であるので、取り扱いが困難であった。
【0299】
本願の実施形態は以下の態様を含む。
<1>
ナノフィブリル状セルロースの含有量が1~8%(w/w)であり、前記ナノフィブリル状セルロースの平均フィブリル径が200nm以下である、ナノフィブリル状セルロースヒドロゲルと、
医薬化合物と、
を含む、好ましくは皮下投与、皮内投与又は筋肉内投与用の、注射可能な医薬製剤であって、
25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0.001~100Paで徐々に増加させて応力制御回転レオメーターによって決定される、貯蔵弾性率が350Pa以上であり、降伏応力/破壊強度が25Pa以上である製剤。
<2>
前記ナノフィブリル状セルロースが、1~200nmの平均フィブリル径を有し、
25℃で、周波数10rad/s、ひずみ2%で、せん断応力を0.001~100Paで徐々に増加させて応力制御回転レオメーターによって決定される、貯蔵弾性率が350~5000Paであり、降伏応力が25~300Paである、<1>に記載の注射可能な医薬製剤。
<3>
前記ナノフィブリル状セルロースが化学的未変性ナノフィブリル状セルロースである、<1>又は<2>に記載の注射可能な医薬製剤。
<4>
前記ナノフィブリル状セルロースがアニオン変性ナノフィブリル状セルロースである、<1>又は<2>に記載の注射可能な医薬製剤。
<5>
前記アニオン変性ナノフィブリル状セルロースの含有量が、4~8%(w/w)又は1.5~6.5%(w/w)である、<4>に記載の注射可能な医薬製剤。
<6>
前記アニオン変性ナノフィブリル状セルロースの含有量が、1.5~3.5%(w/w)である、<5>に記載の注射可能な医薬製剤。
<7>
前記医薬化合物の含有量が0.1~10%(w/w)である、<1>~<6>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<8>
前記医薬化合物の含有量が0.2~5%(w/w)である、<1>~<7>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<9>
前記医薬化合物が、25℃で0.001mg/ml超の水への溶解度を有する、<1>~<8>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<10>
前記医薬化合物が、25℃で0.01mg/ml超の水への溶解度を有する、<1>~<9>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<11>
前記医薬化合物が、25℃で0.1mg/ml超の水への溶解度を有する、<1>~<10>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<12>
前記医薬化合物が鎮痛化合物を含む、<1>~<11>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<13>
前記医薬化合物が、オピオイド又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む、<12>に記載の注射可能な医薬製剤。
<14>
前記オピオイド又は前記非ステロイド性抗炎症薬が、メロキシカム、カルプロフェン、メタミゾール/ジピロン及びブプレノルフィンから選択される医薬化合物を含む、<13>に記載の注射可能な医薬製剤。
<15>
水を82~98.9%(w/w)含む、<1>~<14>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<16>
水を90~98.9%(w/w)含む、<1>~<15>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<17>
有機溶媒を含む、<1>~<16>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<18>
前記有機溶媒がジメチルスルホキシド及び/又はN-メチル-2-ピロリドンを含む、<17>に記載の注射可能な医薬製剤。
<19>
前記有機溶媒を5~55%(w/w)含む、<17>又は<18>に記載の注射可能な医薬製剤。
<20>
徐放性の注射可能な医薬製剤である、<1>~<19>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<21>
3~14日間、前記医薬化合物の徐放を提供するための、<20>に記載の注射可能な医薬製剤。
<22>
前記医薬化合物の少なくとも18%(w/w)又は少なくとも25%(w/w)が3日~14日で放出される、<21>に記載の注射可能な医薬製剤。
<23>
最初の日の間に前記医薬化合物の20~40%(w/w)を徐放する、徐放性の注射可能な医薬製剤である、<1>~<22>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<24>
最初の6~12時間の間に前記医薬化合物の20~40%(w/w)を徐放し、4日目~7日目の間のその後の累積放出が55%以上又は70%以上である、徐放性の注射可能な医薬製剤である、<23>に記載の注射可能な医薬製剤。
<25>
医薬化合物を対象に注射するために使用するための、<1>~<24>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<26>
対象における医薬化合物の徐放を提供するために使用するための、<1>~<25>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤。
<27>
前記対象が動物である、<25>又は<26>に記載の注射可能な医薬製剤。
<28>
<1>~<27>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤を含有するシリンジ。
<29>
<1>~<27>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤を含有するインプラント。
<30>
<1>~<27>のいずれか一項に記載の注射可能な医薬製剤又は<29>に記載のインプラントを調製するためのナノフィブリル状セルロースの使用。