(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】類似間葉系幹細胞の製造方法及びこれにより製造された類似間葉系幹細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20220511BHJP
【FI】
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2021023446
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0080349
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0096120
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0153819
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520329368
【氏名又は名称】ミラセルバイオ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ホン キ ソン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヒョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン チョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】カン ア ルム
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532596(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111787(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/199234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00 - 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
類似間葉系幹細胞の製造方法であって、
(a)細胞株の確立後、70回以下の継代培養されたヒト多能性幹細胞を準備するステップと、
(b)前記ヒト多能性幹細胞を分化誘導した胚様体のうち、包嚢胚様体を選別するステップと、
(c)前記包嚢胚様体を細胞透過性3次元培養挿入体上にロードして類似間葉系幹細胞を分離するステップで、EGM
(商標)-2MV
である培養用培地を利用するステップと、
(d)前記細胞透過性3次元培養挿入体を透過した細胞のうち、単層(monolayer)形態の細胞群集のみを分離するステップと、
(e)前記単層形態の細胞群集を縦と横それぞれ100μm~500μmの大きさに均一化し、類似間葉系幹細胞を培養するステップと、
を含み、
前記類似間葉系幹細胞は、抗炎症効能及び免疫抑制能を有し、CD90及びSOX2を95%以上発現する、類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項2】
前記細胞透過性3次元培養挿入体は、ナイロン、繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、グラフェン、チタン、銅、ニッケル、銀、金、白金のいずれか1つ以上からなる、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項3】
前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてMMP-1タンパク質及びHGFタンパク質を高発現し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてCD95を低発現し、CD90及びSOX2を95%以上発現することを特徴とする、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項4】
前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてMMP-1タンパク質を15倍以上高発現し、HGFタンパク質を2倍以上高発現する、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項5】
前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてCD95を15倍以上低発現する、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項6】
前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて炎症調節遺伝子を2倍~100倍以上高発現し、
前記炎症調節遺伝子は、Gata3、Adora2a、Gps2、Psma1、Pbk、Lrfn5、Cdh5、Apoe、Foxf1、Tek、Cx3cl1、Ptger4、Acp5、Bcr、Socs5、及びMdkからなる群のいずれか1つ以上である、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項7】
前記類似間葉系幹細胞は、Gata3、Adora2a、及びGps2遺伝子を同時に発現する、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項8】
前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて免疫抑制能遺伝子を2倍~100倍以上高発現し、
前記免疫抑制能遺伝子は、Gata3、Gps2、Psma1、Apoe、Foxf1、Tek、Cx3cl1、Ptger4、Bcr、Socs5及びMdkのいずれか1つ以上である、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項9】
前記類似間葉系幹細胞は、Gata3、Gps2及びPsma1遺伝子を同時に発現する、請求項1に記載の類似間葉系幹細胞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト多能性幹細胞から類似間葉系幹細胞を製造する方法及び上記製造方法により製造された類似間葉系幹細胞に関する。詳細には、多能性細胞株の確立後に70回以下の継代培養されたヒト多能性幹細胞(Humanpluripotent stem cell)を用いて、これを分化誘導した様々な形態の胚様体のうち包嚢(Cystic)胚様体を選別し、細胞透過性3次元培養挿入体(3D culture unit)上に包嚢胚様体をロードし、類似間葉系幹細胞を分離し、前記分離された類似間葉系幹細胞のうち単層(monolayer)形態の細胞群集のみを分離し、単層形態の細胞群集の大きさを均一化して類似間葉系幹細胞を製造する。このように製造された高純度の類似間葉系幹細胞は、抗炎症効果及び免疫抑制能を有し、CD90及びSOX2を95%以上発現する。また、本発明は、上記製造方法により製造された類似間葉系幹細胞、前記類似間葉系幹細胞を含む治療剤組成物、又は伝達体、前記類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームを含む疾病の予防又は治療用組成物又は化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉とは、胚発生中に起きる上皮間葉転換(EMT、Epithelial to Mesenchyme Transition)によって形成される中間層に該当する中胚葉の組織を通称する。ヒト胚性幹細胞と人工多能性幹細胞は、これらの初期の発生を試験管内で説明することができる唯一の細胞である。ヒト胚性幹細胞と人工多能性幹細胞は多能性(pluripotency)を有するため、様々な機能を有する細胞の源泉として用いることができる。
【0003】
現在の成体由来間葉系幹細胞だけでなく、ヒト多能性幹細胞由来間葉系幹細胞あるいは間葉前駆細胞に関する研究が盛んに行われている。成体においては、間葉系幹細胞のように骨髄に骨を形成できる前駆細胞が存在するということが最初に知らされた後、骨髄、脂肪組織、末梢血液、そして臍帯血と羊膜など胎児組織から間葉系幹細胞が分離可能であるものと報告された。
【0004】
このような成体由来間葉系幹細胞は、細胞治療に有用に使用することのできる様々な特性がある。従って、実際の臨床治療において、骨、軟骨、及び筋などの筋骨格系と、心筋梗塞及び血管損傷疾患などの心血管系から、急性及び慢性肺損傷などの呼吸器系、多発性硬化症、ループス(lupus)及びリウマチ性関節炎などの自己免疫系、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、及び脊椎損傷などの神経系治療にまで広がる。すなわち、様々な分野で細胞治療に関する試みが行われている。
【0005】
しかし、一般的な成体の間葉系幹細胞は胚性幹細胞とは異なり、試験管内で長期間に継代培養する場合、制限的なな増殖能力を示し、ある細胞の分裂能力が40回を越えないものと知られている。実際の細胞治療に適用する成体間葉系幹細胞は、7継代以下に培養された間葉系幹細胞だけを活用している。また、確立された細胞系がなく、成体から反復的な細胞準備が必要とされ、研究に限界がある。
【0006】
このような限界を克服するために、ヒト多能性幹細胞から間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell、MSC)又は間葉系前駆細胞(Mesenchymal Progenitor)を分離及び培養する研究が行われている。すでに知られているヒト多能性幹細胞から間葉系幹細胞又は前駆細胞を取得する方法として、所望する標示因子(Marker)を示す細胞をフローサイトメータ(Fluorescent activated cell sorter、FACS)を介して分離する方法と、分化誘導のために多量及び多種のサイトカイン(Cytokines)と化学物質(Chemicals)を処理する方法などが一般に用いられている。
【0007】
しかし、フローサイトメータを使用する方法はレーザを用いるため、細胞の生存率を低下させるだけでなく、分離してから得られる細胞の数が少なく、培養期間が増加するという問題がある。サイトカインと化学物質を処理する方法は、持続的な処理による高コストの問題と分化増殖後の遺伝的な安定性の問題が挙げられる。また、胚性幹細胞の多能性を効率的に制御することが難しい問題がある。
【0008】
一方、間葉系幹細胞の分離及び増殖方法が極めて多様であり、組織及び細胞の元に応じて間葉系幹細胞の特性化に対する接近法が互いに異なるため、世界の幹細胞治療学会(International Society for Cell Therapy、ISCT)は、ヒト間葉系幹細胞を定義する3種類の基準を提案している。第1に、ヒト間葉系幹細胞は標準培養条件で保持されるとき、癒着増殖性(adherent)がなければならない。第2に、ヒト間葉系幹細胞の表面抗原を分析するとき、CD90、CD44、CD73、CD105は95%以上に発現する一方、CD45、CD34、CD14、CD19は2%以下に発現し、未分化調節マーカーであるOct3/4、Tra-1-60、Tra-1-81、及び免疫拒否抗原であるHLA-DR(Human Leukocyte Antigen-antigen D Related)は発現されてはならない。第3に、ヒト間葉系幹細胞は、試験管内で造骨細胞(Osteogenic cell)、脂肪細胞(Adipogenic cell)及び軟骨細胞(Chondrogenic cell)に分化しなければならない。
【0009】
間葉系幹細胞を定義する代表的マーカーであるCD90(Cluster of Differentiation 90)は、間葉系幹細胞の免疫調節に関連する主要な要素である。CD90が発現した間葉系幹細胞は、sHLA-G及びIL-10を上方調節して植物性血球凝集素(phytohemagglutinin、PHA)によって活性化した末梢血液の単核細胞(peripheral blood mononuclear
【0010】
cells、PBMC)の増殖を抑制するものと知られている。HLA-G(human leukocyte antigen G)は、非古典的なMHC class I遺伝子であって、細胞膜接合体の形態(HLA-G1、-G2、-G3、-G4)と水溶性形態(sHLA-G5、-G6、and G7)として存在するが、NK及びCD81+T細胞の細胞毒性及びCD41+T細胞の活性に影響を及ぼす先天的(innate)及び適応性(adaptative)細胞反応に対して、免疫寛容機能(tolerogenic functions)を示すものと報告されている。現在、HLA-Gは、免疫寛容において重要な役割を担当している分子として理解されている。さらに、HLA-Gがサイトカインの分泌調節を介して単核細胞(decidual mononuclear cells)をTh2(T helper type 2)サイトカインプロファイル(profile)に変換(modulation)する機能を有すると知られている。Th2サイトカインプロファイルでの変換は、免疫機能の抑制と関連している。Th2サイトカインの1つであるIL-10は、抗炎症効果及び免疫抑制能などの広範囲な生物学的な機能を有する。数多い報告によると、HLA-GとIL-10の関連性に対して、IL-10がHLA-Gの発現を誘導し、HLA-GもIL-10の発現を刺激する。
【0011】
SOX2(Sex determining region Y-box2)は、ヒト胚性幹細胞と人工多能性幹細胞で知られている核心の転写因子であって、細胞の多能性保持に重要な役割を果たす。SOX2が一部の成体幹細胞で発現し、Wnt信号伝達(Wnt signaling)溶解性抑制剤であるDKK1と、cMycの調節を介して細胞の分化能と増殖に重要な影響を及ぼすことが知られ、ヒト多能性幹細胞で発現するSOX2の機能と、間葉系幹細胞で発現するSOX2とが互いに異なる役割で機能しているものとして、分離して見なされる。
【0012】
現在、幹細胞治療剤に対する生物学的又は臨床的な関心は、主に免疫抑制及び寛容などの細胞特性に基づいて持続的に増加している。本発明のヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞は、CD90とSOX2を95%以上に発現することを特徴とする間葉系幹細胞であって、現在まで報告されたことがない。これは当該の研究領域の関心を満たすだけでなく、臨床領域の観点からも十分な意味が付与され得る。
【0013】
細胞の生存率を高め、高純度類似間葉系幹細胞を生産、ヒト多能性幹細胞を効率的に制御し、製造された類似間葉系幹細胞の遺伝的な安定性を保持することのできる間葉系幹細胞の製造方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、世界の幹細胞治療学会で決めたヒト間葉系幹細胞としての最小限の基準を満たす類似間葉系幹細胞を製造する方法に関する。
【0015】
本発明は、(a)細胞株の確立後、70回以下の継代培養されたヒト多能性幹細胞を準備するステップと、(b)前記ヒト多能性幹細胞を分化誘導した胚様体のうち、包嚢胚様体を選別するステップと、(c)前記包嚢胚様体を細胞透過性3次元培養挿入体上にロードして類似間葉系幹細胞を分離するステップと、(d)前記細胞透過性3次元培養挿入体を透過した細胞のうち、単層(monolayer)形態の細胞群集のみを分離するステップと、(e)前記単層形態の細胞群集を縦と横それぞれ100μm~500μmの大きさに均一化し、類似間葉系幹細胞を培養するステップとを含み、前記類似間葉系幹細胞は、抗炎症効能及び免疫抑制能を有し、CD90及びSOX2を95%以上発現する、類似間葉系幹細胞の製造方法及び前記製造方法により製造されたヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞に関する。
【0016】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されることはない。言及されない更なる課題は、下記の記載によって当技術分野で通常の知識を有する者によって明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
類似間葉系幹細胞の製造方法であって、(a)細胞株の確立後、70回以下の継代培養されたヒト多能性幹細胞を準備するステップと、(b)前記ヒト多能性幹細胞を分化誘導した胚様体のうち、包嚢胚様体を選別するステップと、(c)前記包嚢胚様体を細胞透過性3次元培養挿入体上にロードして類似間葉系幹細胞を分離するステップと、(d)前記細胞透過性3次元培養挿入体を透過した細胞のうち、単層(monolayer)形態の細胞群集のみを分離するステップと、(e)前記単層形態の細胞群集を縦と横それぞれ100μm~500μmの大きさに均一化し、類似間葉系幹細胞を培養するステップとを含み、前記類似間葉系幹細胞は、抗炎症効能及び免疫抑制能を有し、CD90及びSOX2を95%以上発現する、類似間葉系幹細胞の製造方法が提供される。
【0018】
一側面によれば、前記細胞透過性3次元培養挿入体は、ナイロン、繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、グラフェン、チタン、銅、ニッケル、銀、金、白金のいずれか1つ以上からなることができる。
【0019】
本発明の他の一実施形態によれば、類似間葉系幹細胞の製造方法により製造されたヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞において、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてMMP-1タンパク質及びHGFタンパク質を高発現し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてCD95を低発現し、CD90及びSOX2を95%以上発現することを特徴とする類似間葉系幹細胞が提供される。
【0020】
一側面によれば、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて前記MMP-1タンパク質を15倍以上高発現し、HGFタンパク質を2倍以上高発現する類似間葉系幹細胞が提供される。
【0021】
一側面によれば、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてCD95を15倍以上低発現する類似間葉系幹細胞が提供される。
【0022】
一側面によれば、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて炎症調節遺伝子を2倍~100倍以上高発現し、前記炎症調節遺伝子は、Gata3、Adora2a、Gps2、Psma1、Pbk、Lrfn5、Cdh5、Apoe、Foxf1、Tek、Cx3cl1、Ptger4、Acp5、Bcr、Socs5、及びMdkからなる群のいずれか1つ以上である類似間葉系幹細胞が提供される。
【0023】
一側面によれば、前記類似間葉系幹細胞は、Gata3、Adora2a、及びGps2遺伝子を同時に発現する類似間葉系幹細胞が提供される。
【0024】
一側面によれば、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて免疫抑制能遺伝子を2倍~100倍以上高発現し、前記免疫抑制能遺伝子は、Gata3、Gps2、Psma1、Apoe、Foxf1、Tek、Cx3cl1、Ptger4、Bcr、Socs5及びMdkのいずれか1つ以上である類似間葉系幹細胞が提供される。
【0025】
一側面によれば、前記類似間葉系幹細胞は、Gata3、Gps2及びPsma1遺伝子を同時に発現する類似間葉系幹細胞が提供される。
【0026】
本発明の更なる実施形態によれば、類似間葉系幹細胞の製造方法によって製造されたヒト多能性幹細胞由来の類似間葉系幹細胞を含む治療剤組成物であって、前記治療剤組成物は、細胞治療剤組成物、細胞遺伝子治療剤組成物、組織工学治療剤組成物、抗炎症治療剤組成物、免疫治療剤組成物、癌の予防又は治療用組成物のいずれか1つであることを特徴とする治療剤組成物が提供される。
【0027】
一側面によれば、前記治療剤組成物は、前記類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームをさらに含む治療剤組成物が提供される。
【0028】
一側面によれば、前記治療剤組成物は、多発性硬化症、全身性硬化症、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、慢性肺疾患、急性肺疾患、クローン病、便失禁、移植片対宿主病、下肢虚血疾患、閉塞性血栓性血管炎(Buerger病)、足部潰瘍、ループス、リウマチ性関節炎、急性及び慢性腎盂炎、炎症性膀胱炎、間質性膀胱炎、低活動性膀胱、過敏性膀胱、五十肩、回旋筋腱板損傷及び破裂、様々な運動などにより発生する筋骨格系損傷、膝軟骨損傷、耳鳴症、アトピー性皮膚炎、乾癬、火傷による皮膚損傷、紫外線などによる皮膚損傷、網膜症を含む炎症性及び免疫系疾患の予防、虚血性認知症、アルツハイマー認知症、脊髄損傷、パーキンソン病及び中枢神経系疾患のいずれか1つ以上の疾病の予防又は治療のためのものである治療剤組成物が提供される。
【0029】
本発明のまた更なる実施形態によれば、類似間葉系幹細胞の製造方法によって製造されたヒト多能性幹細胞由来の類似間葉系幹細胞を含む伝達体であって、前記伝達体は、医薬組成物を担持することを特徴とする伝達体が提供される。
【0030】
本発明のまた更なる実施形態によれば、類似間葉系幹細胞の製造方法によって製造されたヒト多能性幹細胞由来の類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームを含む疾病の予防又は治療用組成物が提供される。
【0031】
一側面によれば、前記疾病は、多発性硬化症、全身性硬化症、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、慢性肺疾患、急性肺疾患、クローン病、便失禁、移植片対宿主病、下肢虚血疾患、閉塞性血栓性血管炎、足部潰瘍、ループス、リウマチ性関節炎、急性及び慢性腎盂炎、炎症性膀胱炎、間質性膀胱炎、低活動性膀胱、過敏性膀胱、五十肩、回旋筋腱板損傷及び破裂、様々な運動などにより発生する筋骨格系損傷、膝軟骨損傷、耳鳴症、アトピー性皮膚炎、乾癬、火傷による皮膚損傷、紫外線などによる皮膚損傷、網膜症を含む炎症性及び免疫系疾患の予防、虚血性認知症、アルツハイマー認知症、脊髄損傷、パーキンソン病及び中枢神経系疾患のいずれか1つ以上である。
【0032】
本発明のまた更なる実施形態によれば、類似間葉系幹細胞の製造方法によって製造されたヒト多能性幹細胞由来の類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームを含む化粧料組成物が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明の類似間葉系幹細胞の製造方法によると、類似間葉系幹細胞を高効率、高純度に分離、培養及び増殖させることができる。一方、本発明に係る類似間葉系幹細胞の製造方法によると、ヒト多能性幹細胞から抗炎症効能及び免疫抑制能を有し、CD90及びSOX2を95%以上の高発現する新規なヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞を製造することができる。
【0034】
本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、抗炎症効果と免疫抑制能を示すことができる。
【0035】
本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、特定マーカー発現態様に係る抗炎症効果と免疫抑制能を示すことができる。
【0036】
本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、CD90及びSOX2を95%以上に発現し、ヒト間葉系幹細胞としての最小限の基準と追加的な特徴を同時に示すことができる。
【0037】
本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞を含む治療剤組成物又は伝達体に適用することができる。
【0038】
本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームは、これを含む疾病の予防又は治療用組成物又は化粧料組成物に適用することができる。
【0039】
しかし、本発明の効果は、前記の効果により限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は請求範囲に記載されている発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものとして理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞(Human pluripotent stem cell)の製造方法である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞の製造時に、ヒト多能性幹細胞から分化誘導した様々な形態の胚様体から選別される包嚢(Cystic)胚様体の形態を示す。白い矢印で示された胚様体は包嚢胚様体である。
図2に示された包嚢胚様体において、包嚢(Cystic)胚様体は、様々な形態の胚様体のうち透明で明るい部分が胚様体内に含まれて観察される胚様体を意味する。
【
図3】本発明の一実施形態に係るヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞の分離に使用される細胞透過性3次元培養挿入体(3D culture unit)である。上記細胞透過性3次元培養挿入体上に包嚢胚様体をロードし、類似間葉系幹細胞を分離することができる。前記細胞透過性3次元培養挿入体を利用することで、選別された包嚢胚様体から類似間葉系幹細胞を高純度に分離することができる。
【
図4】本発明の一実施形態により細胞透過性3次元培養挿入体を透過して初期分離した類似間葉系幹細胞の群集のイメージを示す。また、グラフは、各群集の初期分離後、ディッシュに付着して(P0)、細胞の表面抗原の発現を比較測定したものである。細胞透過性3次元培養挿入体を透過して初期分離した類似間葉系幹細胞の群集は、多層(multilayer)形態又は単層(monolayer)形態のいずれか1つ以上の形態を含むことができる。ただし、本発明の一実施形態において、単層形態の細胞群集のみを分離して培養する。
【
図5】本発明の一実施例形態に係る類似間葉系幹細胞の形態を撮影したイメージである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の様々な表面抗原の発現を測定したグラフである。本発明に係る類似間葉系幹細胞は、CD90を98.2%、CD44を98.8%、CD73を96.77%、CD105を95.6%に高発現する。本発明に係る類似間葉系幹細胞は、CD45を0.15%、CD34を1.46%、CD14を0.17%及びCD19を0.09%に低発現し、Oct34を0.2%、Tra-1-60を0.08%、Tra-1-81を0.03%に低発現する。本発明に係る類似間葉系幹細胞は、HLA-DRを0.08%としてほとんど発現しない。従って、本発明に係る類似間葉系幹細胞は、世界の幹細胞治療学会で定められたヒト間葉系幹細胞としての最小限の基準を満たす新規な間葉系幹細胞である。本発明に係る類似間葉系幹細胞はCD90を高発現するとともに、SOX2を99.37%に発現する。
【
図7】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の脂肪細胞(Adipogenic cell)、造骨細胞(Osteogenic cell)、軟骨細胞(Chondrogenic cell)及び筋肉細胞(Myogenic cell)への分化特性を、オイルレッドO(Oil Red O)染色法、アリザリンレッドS(Alizarin red S)染色法、アルシアンブルー(Alcian blue)染色法、及び免疫細胞化学(immunocytochemistry)染色法に基づいて染色したイメージである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の増殖能(cumulative PDL(cPDL))及び細胞の大きさ(Cell size)を骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow mesenchymal stem cells,BM-MSC)の増殖能及び細胞の大きさと比較して示したグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞が高純度に分離したことを示すグラフである。未分化調節マーカーとして、Oct4が99%以上除去された類似間葉系幹細胞(MMSC)を確認することができる。
【
図10A】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の遺伝的な安定性をGTG-bandingとSNP(single nucleotide polymorphisms)分析を介して確認したものを示す。
【
図10B】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の遺伝的な安定性をGTG-bandingとSNP(single nucleotide polymorphisms)分析を介して確認したものを示す。
【
図11】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の組織再生能を細胞の移動程度に応じて確認したグラフとイメージである。骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)の組織再生と比較して確認したグラフとイメージである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞のヒト臍帯静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cell、HUVEC)との共培養による物質交換能を示す。
【
図13】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の直接的な血管形成能を示す。
【
図14】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)の免疫抑制能及び抗炎症効果を比較したグラフである。
【
図15】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)の細胞生存、組織再生、及び細胞死滅抑制機能性物質の分泌能を比較したグラフである。
【
図16】骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて高発現する、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の炎症調節関連の遺伝子を示す。
【
図17】骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて高発現する、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の免疫抑制能関連の遺伝子を示す。
【
図18】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の細胞溶解物(cell lysate)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて高発現するタンパク体を示す。
【
図19】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の細胞溶解物(cell lysate)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて低発現するタンパク体を示す。
【
図20】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の培養上清液(culture supernatant)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて高発現するタンパク体を示す。
【
図21】本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の培養上清液(culture supernatant)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて低発現するタンパク体を示す。
【
図22】胚性幹細胞(hESC)の継代培養の回数が70回を超過(P68+7又はP68+15)する場合、類似間葉系幹細胞の表面抗原の発現減少を示す。特に、胚性幹細胞の継代培養の回数が70回を超過するほど、類似間葉系幹細胞の表面抗原であるCD90の発現が著しく減少する。
【
図23】胚性幹細胞(hESC)の継代培養の回数(a(P68)、b(P68+7)、c(P68+15))によって分離した類似間葉系幹細胞から分化誘導した脂肪細胞及び造骨細胞の遺伝子発現のPCR電気泳動の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照して実施形態を詳細に説明する。しかし、実施形態には多様な変更が加えられることができ、特許出願の権利範囲がこの実施形態により制限されたり限定されることはない。実施形態に対するすべての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解されなければならない。
【0042】
本明細書で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0043】
異なる定義がされない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0044】
また、添付図面を参照して説明することにおいて、図面符号に関係なく、同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略することにする。実施形態の説明において、関連する公知技術に対する具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にするものと判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0045】
また、実施形態の構成要素の説明において、第1,第2,A,B,(a),(b)などの用語を使用することがある。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものにすぎず、その用語によって該当の構成要素の本質や順番又は順序などが限定されない。
【0046】
いずれか一つの実施形態に含まれている構成要素と、共通の機能を含む構成要素は、他の実施形態で同じ名称を用いて説明することにする。反対となる記載がない以上、いずれか一つの実施形態に記載した説明は、他の実施形態にも適用され、重複する範囲において具体的な説明は省略することにする。
【0047】
抗炎症効果及び免疫抑制能が強化された類似間葉系幹細胞の製造
【0048】
図1は、本発明の一実施形態に係る(a)細胞株の確立後、70回以下の継代培養されたヒト多能性幹細胞を準備するステップと、(b)前記ヒト多能性幹細胞を分化誘導した胚様体のうち、包嚢胚様体を選別するステップと、(c)前記包嚢胚様体を細胞透過性3次元培養挿入体上にロードして類似間葉系幹細胞を分離するステップと、(d)前記細胞透過性3次元培養挿入体を透過した細胞のうち、単層(monolayer)形態の細胞群集のみを分離するステップと、(e)前記単層形態の細胞群集を縦と横それぞれ100μm~500μmの大きさに均一化し、類似間葉系幹細胞を培養するステップとを含み、前記類似間葉系幹細胞は、抗炎症効能及び免疫抑制能を有し、CD90及びSOX2を95%以上発現する、ヒト多能性幹細胞由来の類似間葉系幹細胞の製造方法を示す。
【0049】
図1に示す最初のイメージは、ヒト多能性幹細胞(Humanpluripotent stem cell)を培養(culture)し保持(maintenance)するステップを示す。前記ヒト多能性幹細胞は、細胞株の確立後、70回以下の継代培養されたものである。
図1に示す2番目のイメージは、胚様体(embryoid body,EB)を形成した後、包嚢(cystic)胚様体を選別するステップと、選別された包嚢胚様体を細胞透過性3次元培養挿入体(3D culture unit)を用いて分化させるステップを示す。選別された包嚢胚様体は、細胞透過性3次元培養挿入体上にロードし、細胞透過性3次元培養挿入体を通過させる。
図1に示す3番目のイメージは、包嚢胚様体が細胞透過性3次元培養挿入体を透過し、細胞透過性3次元培養挿入体の下側面に移動することを示す。
図1に示す4番目のイメージは、細胞透過性3次元培養挿入体を透過した細胞を収集するステップと、群集の大きさを均一化するステップを示す。収集した細胞群集から多層(Multilayer)形態の群集(cluster)は機械的(mechanically)に除去し、単層(Monolayer)形態の群集のみをマイクロピペットチップ(pipette tip)を用いて均一な大きさに切って選択的に培養する。
図1に示す5番目のイメージは、CD90+及びSOX2+を発現する類似間葉系幹細胞の確立を示す。
【0050】
本明細書で使用する「ヒト多能性幹細胞」は、未分化状態の細胞で人体を構成する全ての細胞に分化可能な幹細胞を意味する。前記ヒト多能性幹細胞は、ヒト胚性幹細胞(human Embryonic Stem Cell、hESC)、体細胞核移植によるヒト多能性幹細胞(human pluripotent stem cells via
【0051】
somatic cell nuclear transfer、SCNT-hPSC)及び人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell、iPSC)のいずれか1つ以上であってもよい。
【0052】
本明細書で使用する「類似間葉系幹細胞」という用語は、骨、軟骨、脂肪、筋肉細胞を含む様々な細胞に分化することができる多能性間葉系幹細胞(multipotent mesenchymal stem cell、MMSC)を意味する。言い換えれば、「類似間葉系幹細胞」とは、受精卵が分裂してできた中胚葉から分化された骨髄の基質、軟骨、骨組織、脂肪組織などに存在する間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell、MSC)に類似機能を有する細胞を意味する。即ち、本発明の類似間葉系幹細胞は、CD90及びSOX2などを高発現することで、免疫抑制能、抗炎症効果又は多能性保持力などが向上した新規の間葉系幹細胞を意味する。従って、本明細書において、類似間葉系幹細胞と間葉系幹細胞という表現を区分して使用することにする。
【0053】
本明細書において、n継代又は継代n(passagen又はPn)は、母細胞株をn継代培養したことを意味する。例えば、70継代又はP70は、母細胞株を70回の継代培養した細胞株を意味する。前記nは整数である。
【0054】
本発明の類似間葉系幹細胞の製造に使用されるヒト多能性幹細胞は、多能性細胞株の確立後に70回以下に継代培養されたものを使用することを特徴とする。通常、多能性幹細胞を用いる間葉系幹細胞の製造において、多能性幹細胞は継代の制限なしにそのまま用いる。多能性幹細胞を継代の制限なしにそのまま用いる場合、製造された間葉系幹細胞の表面抗原のほとんどは一定でない割合で低発現し、分化効率が極めて低い。さらに、製造された間葉系幹細胞がCD90又はSOX2を95%以上発現することができない。しかし、本発明のように70回以下の継代されたヒト多能性幹細胞を用いる場合、製造された類似間葉系幹細胞の表面抗原はすべて一定な割合で95%以上高発現した。特に、CD90及びSOX2をそれぞれ95%以上発現する、類似間葉系幹細胞を製造することができる。
図22を参照すると、多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞(hESC))の継代培養の回数が70回を超過(P68+7又はP68+15)する場合、類似間葉系幹細胞の表面抗原のうち、CD90の発現量が急激に減少する。すなわち、68継代を基準にして、継代培養の回数が増加するほどCD90の発現が25%以下に減少し、CD44、CD73及びCD105は90%以下に発現する。また、多能性幹細胞の継代培養の回数が70回を超過(P68+7又はP68+15)する場合、類似間葉系幹細胞のCD44、CD73及びCD105の発現が不規則である。一方、70回以下に継代培養された多能性幹細胞から製造された類似間葉系幹細胞は、CD90を98.2%、CD44を98.8%、CD73を96.77%及びCD105を95.6%に高発現(
図6参照)する。
図23に示すように、a、b、cはそれぞれP68、P68+7、P68+15として多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞(hESC))から分離した間葉系幹細胞で分化誘導した脂肪細胞及び造骨細胞の遺伝子発現のPCR電気泳動の結果である。
図23に示すように、継代培養の回数が70回以下であるa(P68)において、脂肪細胞(Adipogenic)及び造骨細胞(Osteogenic)として分化能に優れる。一方、継代培養の回数が70回を超過するb(P68+7)、c(P68+15)においては、脂肪細胞及び軟骨細胞として分化効率が低くなる。すなわち、70回以下に継代された多能性幹細胞を使用することで、製造された類似間葉系幹細胞は、増殖能、分化能、遺伝的な安定性、組織再生能、物質交換能、血管形成能、免疫抑制能、及び抗炎症効能などが、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて優秀に保持できる。また、70回以下の継代の多能性幹細胞を使用することで製造された類似間葉系幹細胞は、細胞生存、組織再生及び細胞死滅抑制の機能性物質分泌能などが、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて優秀に保持できる。
【0055】
さらに好ましくは、70回以下の継代された多能性幹細胞を使用し、細胞透過性3次元培養挿入体を透過した分化された細胞群集のうち、多層形態の群集を除去し、単層形態の群集のみを選別して一定の大きさで機械的に均一化して培養することで、間葉系幹細胞の表面抗原を95%以上発現する。特に、間葉系幹細胞の表面抗原のうち、CD90及びSOX2をそれぞれ95%以上発現する類似間葉系幹細胞を製造することができる。
【0056】
図2は、本発明の一実施形態に係るヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞を製造する時に使用される包嚢(Cystic)胚様体の形態を示す。本発明において、「包嚢(Cystic)胚様体」は、様々な胚様体の形態のうち、透明で明るい部分が胚様体内に含まれて観察される胚様体の形態を意味する。このような特徴に基づいて肉眼で包嚢胚様体を分離することができる。
【0057】
図3は、ヒト多能性幹細胞を分化誘導した胚様体の形態のうち、選別された包嚢胚様体をロードし、類似間葉系幹細胞を分離するために用いられる細胞透過性3次元培養挿入体を示す。
【0058】
本明細書で使用される用語の「細胞透過性3次元培養挿入体」は、細胞透過性機構である。即ち、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、又は体細胞核移植幹細胞由来胚様体から類似間葉系幹細胞に分化培養を誘導する場合、胚発生の過程で生じる上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition、EMT)が自然に発生するようにする機構を意味する。すなわち、細胞透過性3次元培養挿入体を用いて、類似間葉系幹細胞を高純度、高効率に分離して培養かつ増殖させることができる。
【0059】
前記細胞透過性3次元培養挿入体は、細胞培養用の培養プレート、3次元細胞培養用インサート(insert)、又はナイロン又は繊維性材質のメッシュ(mesh)などのような細胞透過性が保障される人工挿入体であってもよい。前記細胞透過性3次元培養挿入体は、バイオプリンティング技術により製造されてもよい。前記細胞透過性3次元培養挿入体は、ナイロン、繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、グラフェン、チタン、銅、ニッケル、銀、金、白金のいずれか1つ以上からなってもよい。但し、前記細胞透過性3次元培養挿入体は、細胞透過性が保障されているのであれば、前記材料に限定されることはない。
【0060】
また、前記細胞透過性3次元培養挿入体を用いたヒト多能性幹細胞由来胚様体の培養用培地は、EGM2-MV、MCDB、DMEM、MEM-α、STEMPRO-MSC、MesenCult-MSCの培地を用いてもよい。好ましくは、培養用培地は、EGM2-MV、MCDB、DMEM、又はMEM-α培地を使用することができるが、これに限定されることはない。前記細胞透過性3次元培養挿入体を用いたヒト多能性幹細胞由来胚様体培養用培地には、ウシ胎児血清(Fetal bovine serum、FBS)、血清代替物(Serum replacement、SR)、ヒト血清(Human Serum)及びヒト血小板溶解物(Human platelet lysate、HPL)からなる群から選択される1つ以上の添加物を含んでもよい。具体的に、前記添加物は、1~20%のFBS、1~20%のSR、1~20%のHuman Serum、又は1~20%のHPLであってもよい。好ましくは、前記添加物は、5%FBS又は2.5~5%HPLであってもよいが、これに限定されることはない。
【0061】
図4は、ヒト多能性幹細胞由来間葉系幹細胞を分離するステップにおいて、細胞透過性3次元培養挿入体を透過して細胞透過性3次元培養挿入体の下から収集された細胞群集ごとの特性を示すイメージ及びグラフである。
図4に示すように、細胞透過性3次元培養挿入体の下から収集された細胞群集は、多層(multilayer)形態の群集、単層(monolayer)形態の群集であってもよい。多層及び単層形態の群集とともに培養したり、多層形態の群集、単層形態の群集のそれぞれを培養した結果、単層形態の群集のみを分離して培養した細胞において、間葉系幹細胞を示す主な表面抗原であるCD90、CD73、CD105の発現が一貫性をもって高発現されることが確認できる。
【0062】
図5は、本発明の一実施例形態に係る類似間葉系幹細胞の形態を撮影したイメージである。
【0063】
図6は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の表面抗原の発現を測定したグラフである。
図6を参照すると、類似間葉系幹細胞の表面抗原CD90、CD44、CD73、CD105、SOX2が95%以上に発現される。一方、類似間葉系幹細胞の表面抗原CD45、CD34、CD14、CD19は、2%以下に発現される。また、未分化調節マーカーであるOct3/4、Tra-1-60、Tra-1-81と、免疫拒否抗原であるHLA-DRは発現しない。従って、本発明の類似間葉系幹細胞は、免疫調節関連のマーカーであるCD90と細胞多能性保持関連のマーカーであるSOX2を95%以上に高発現することを特徴とする間葉系幹細胞である。本発明の類似間葉系幹細胞は、免疫抑制能及び多能性保持力などが向上した新規の間葉系幹細胞であることが確認できる。
【0064】
図7は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の様々な中胚葉性細胞への分化能(differentiation)を示す結果である。
図7を参照すると、類似間葉系幹細胞は、適切な分化環境で脂肪細胞(Adipogenic cell)、造骨細胞(Osteogenic cell)、軟骨細胞(Chondrogenic cell)と筋肉細胞(Myogenic cell)に分化することができる。これは世界の幹細胞治療学会で定義している間葉系幹細胞の分化能条件を満たす。
【0065】
図8は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞(MMSC)の増殖能及び細胞の大きさを骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow MSC、BM-MSC)と比較したグラフである。
図8において、cumulative PDL(cPDL)は細胞増殖能を示す。類似間葉系幹細胞は、4回の継代時に平均16.13回分裂する。ここで、類似間葉系幹細胞の大きさは13.6μmである。骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、類似間葉系幹細胞の細胞増殖が約1.6倍はやく、細胞の大きさは約0.8倍小さいと確認された。類似間葉系幹細胞は、細胞増殖能が速く、細胞の大きさが小さいため幹細胞治療剤組成物として活用される場合、体内における副作用の可能性を抑えることができ、治療効果を向上させることができる。
【0066】
図9は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞が高純度に分離されたものを示したグラフである。
図9を参照すると、未分化調節マーカーであるOct4が99%以上除去された類似間葉系幹細胞を確認することができる。従って、本発明の製造方法により、細胞株の確立後に70回以下に継代培養されたヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞を分離及び培養する場合、類似間葉系幹細胞以外の未分化細胞が混在せず、高純度に分離及び培養されたことを確認できる。
【0067】
図10 は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の遺伝的な安定性をGTG-bandingとSNP分析を通じて確認したものを示す。
図10を参照すると、3つのバッチ番号、即ち、MSP-0005、MSP-0006、MSP-0007で製造された類似間葉系幹細胞の全てで染色体が正常であり、SNPの異常が観察されていないことが確認した。
【0068】
図11は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の細胞移動程度による組織再生能を確認したグラフである。
図11を参照すると、In vitro wound healing分析を通じて、類似間葉系幹細胞の細胞移動による組織再生能力が、成体幹細胞である骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約3.5倍以上であることが確認された。
【0069】
図12は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の物質交換能力を示す。
図12を参照すると、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と類似間葉系幹細胞を共培養して細胞間の物質交換能力を確認した。
【0070】
図13は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の血管形成能力を示す。
図13を参照すると、類似間葉系幹細胞をマトリゲル(Matrigel)上で培養して自発的な血管形成能力を確認した。
【0071】
図14は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の免疫細胞増殖抑制能及び抗炎症効果を示す。
図14を参照すると、免疫細胞である単核球細胞と類似間葉系幹細胞を共培養し、免疫細胞の強い増殖抑制効果を確認した。これは、骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、類似間葉系幹細胞の免疫抑制能及び抗炎症効果が高いことを示す。
【0072】
図15は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の細胞生存、組織再生、及び細胞死滅抑制機能性物質の分泌能を示したグラフである。
【0073】
図15に示すように、本発明の一実施形態により製造されたヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞において、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてMMP-1タンパク質及びHGFタンパク質を高発現し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてCD95を低発現し、CD90及びSOX2を95%以上に発現することを特徴とする類似間葉系幹細胞が提供される。また、本発明の一実施形態によれば、前記前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、前記MMP-1タンパク質を15倍以上に高発現し、前記HGFタンパク質を2倍以上に高発現することができる。また、本発明の一実施形態によれば、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてCD95を15倍以上に低発現することができる。
【0074】
図15に示すように本発明の一実施形態により製造されたヒト多能性由来類似間葉系幹細胞で組織再生に関連するMMP-1(Matrix Metalloproteinase-1)タンパク質は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約16.9倍以上高く分泌される。そして、類似間葉系幹細胞で細胞生存及び増殖に関連するHGF(Hepatocyte growth factor)タンパク質は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約2.5倍以上高く分泌される。一方、類似間葉系幹細胞で細胞死滅に関連するCD95(Cluster Differentiation 95)は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約15倍以上低く発現することが確認された。
【0075】
前記「CD95(Cluster Differentiation 95)」は、FasR(Fas Receptor)、APO-1(Apoptosis antigen 1)、又はTNFRSF6(Tumor Necrosis Factor Receptor Superfamily Member 6)などの名称でも知られている細胞死滅受容体(death receptor)である。CD95は、細胞表面に位置してCD95L(CD95 Ligand)で知られたリガンドとの相互作用によって細胞死滅を誘導する。具体的に、前記CD95にFasL(Fas Ligand)又はCD95L(CD95 Ligand)で知られたリガンドが結合すると、死亡誘導信号伝達複合体(Death-Inducing Signaling Complex、DISC)を介して細胞死滅が促進される。即ち、幹細胞又は前駆細胞で前記CD95が過発現される場合、CD95Lによる細胞死滅信号伝達が活性化される。一方、前記CD95が相対的に低発現される幹細胞は、細胞自殺の信号伝達が抑制されて優秀な細胞生存率を示すことができる。
【0076】
図16は、本発明の一実施形態により製造されたヒト多能性由来類似間葉系幹細胞で骨髄由来間葉系幹細胞に比べて高発現される炎症調節関連の遺伝子を示す。
【0077】
図16に示すように、本発明の一実施形態により製造されたヒト多能性由来類似間葉系幹細胞で、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて炎症調節遺伝子を2倍~100倍以上に高発現し、前記炎症調節遺伝子は、Gata3、Adora2a、Gps2、Psma1、Pbk、Lrfn5、Cdh5、Apoe、Foxf1、Tek、Cx3cl1、Ptger4、Acp5、Bcr、Socs5、及びMdkからなる群のいずれか1つ以上である類似間葉系幹細胞が提供される。また、本発明の一実施形態によれば、Gata3、Adora2a、及びGps2遺伝子を同時に発現する類似間葉系幹細胞が提供される。前記炎症調節遺伝子は、炎症抑制と関連のある遺伝子であって、前記類似間葉系幹細胞は、前記炎症調節遺伝子を高発現し、抗炎症効果などが骨髄由来間葉系幹細胞に比べて2倍~100倍以上高い類似間葉系幹細胞である。
図16に示すように、
【0078】
類似間葉系幹細胞において、Gata3遺伝子が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約100倍以上高く発現された。また、類似間葉系幹細胞において、Adora2a、及びGps2遺伝子が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約10倍以上高く発現された。また、類似間葉系幹細胞において、Psma1、Pbk、Lrfn5m、Cdh5、Apoe遺伝子が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約5倍以上高く発現された。また、類似間葉系幹細胞は、前記炎症調節遺伝子Gata3、Adora2a、及びGps2遺伝子を同時に発現することができる。
【0079】
図17は、本発明の一実施形態により製造されたヒト多能性由来類似間葉系幹細胞で骨髄由来間葉系幹細胞に比べて高発現される免疫抑制能関連の遺伝子を示す。
【0080】
図17に示すように、前記類似間葉系幹細胞が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、免疫抑制能遺伝子を2倍~100倍以上に高発現し、前記免疫抑制能遺伝子は、Gata3、Gps2、Psma1、Apoe、Foxf1、Tek、Cx3cl1、Ptger4、Bcr、Socs5、及びMdkのいずれか1つ以上である類似間葉系幹細胞が提供される。また、前記類似間葉系幹細胞は、Gata3、Gps2、及びPsma1遺伝子を同時に発現する類似間葉系幹細胞が提供される。
【0081】
図17に示すように、類似間葉系幹細胞において、Gata3遺伝子が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約50倍~100倍以上高く発現された。また、類似間葉系幹細胞において、Gps2遺伝子が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約5倍~10倍以上高く発現された。また、類似間葉系幹細胞において、Psma1、Apoe遺伝子が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約5倍以上高く発現された。また、類似間葉系幹細胞は、前記免疫抑制能遺伝子Gata3、Gps2及びPsma1を同時に発現することができる。
【0082】
図18は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の細胞溶解物(cell lysate)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて高発現するタンパク体を示す。
図18を参照すると、類似間葉系幹細胞は、Angiopoietin-4(ANGPT4)、BMPR-1B(bone morphogenic protein receptor 1B)、Activin B、Activin RII、CCR1、HCR(Human chemokine receptor CRAM-A isoform)、ICAM-2(Intracellular adhesion molecule 2)を骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約2倍以上高く発現する。前記類似間葉系幹細胞は、Angiopoietin-4とBMPR-1Bを同時に発現することができる。好ましくは、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてAngiopoietin-4及びBMPR-1Bを約3倍以上高く発現することができる。より好ましくは、前記類似間葉系幹細胞は、ANGPT4、BMPR-1B、Activin B、Activin RII、CCR1、HCR及びICAM-2のいずれか1つ以上のタンパク体を、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約2倍以上高く発現することができる。
【0083】
図19は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の細胞溶解物(cell lysate)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて低発現するタンパク体を示す。
図19を参照すると、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてAngiogenin、Angiopoietin-2、CCR8、EDA-A2、IL-20を約2倍以上低く分泌することができる。前記類似間葉系幹細胞は、Angiogenin及びAngiopoietin-2を同時分泌することができ、前記Angiogenin及びAngiopoietin-2を骨髄由来幹細胞に比べて約2倍以上低く分泌することができる。
【0084】
図20は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の培養上清液(culture supernatant)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて高発現するタンパク体を示す。
図20を参照すると、類似間葉系幹細胞は、GRO-a、IL-15R alpha、FasL、Activin RII、BMP-2、CCR2、CXCL14、FGFR4、uPA、MMP-20を骨髄由来幹細胞に比べて約2倍以上高く分泌することができる。前記類似間葉系幹細胞は、GRO-aとIL-15R alphaを同時に分泌することができ、GRO-aとIL-15R alphaを骨髄由来幹細胞に比べて約2倍以上高く分泌することができる。前記間葉系幹細胞は、GRO-a、IL-15R alpha、FasL、Activin RII、BMP-2、CCR2、CXCL14、FGFR4のいずれか1つのタンパク体を骨髄由来幹細胞に比べて約2倍以上高く分泌することができる。
【0085】
図21は、本発明の一実施形態に係る類似間葉系幹細胞の培養上清液(culture supernatant)のタンパク体を分析し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて低発現するタンパク体を示す。
図21を参照すると、前記類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べてTIMP-2、Activin A、VEGF A、Follistantin-like 1、ErbB4m、Thrombospondin-1を約4倍以上低く分泌する。前記類似間葉系幹細胞は、TIMP-2とActivin Aを同時に分泌することができ、TIMP-2とActivin Aを骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約5倍以上低く分泌する。
【0086】
本発明の類似間葉系幹細胞は、ヒト末梢血由来単核球細胞と共培養するとき、増殖能を抑制することができる。より詳細に、本発明の類似間葉系幹細胞は、ヒト末梢血由来単核球細胞と共培養するとき、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約5倍~約8倍以上の増殖を抑制することができる。
【0087】
本発明の類似間葉系幹細胞は、細胞移動及び修復能の評価において骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約3.5倍以上の修復能が高く示される。
【0088】
本発明の類似間葉系幹細胞は、細胞生存関連の遺伝子であるMMP-1タンパク質を骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約15倍~約16倍以上高く分泌することができる。また、前記類似間葉系幹細胞は、細胞成長及び組織再生関連の遺伝子であるHGFタンパク質を骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約2倍以上高く分泌することができる。
【0089】
本発明の類似間葉系幹細胞は、細胞死滅受容体であるCD95が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約15倍以上低く発現することができる。
【0090】
本発明の一実施形態に係る製造方法で製造された類似間葉系幹細胞を含んでいる治療剤組成物であって、前記治療剤組成物は、細胞治療剤組成物、細胞遺伝子治療剤組成物、組織工学治療剤組成物、抗炎症治療剤組成物、免疫治療剤組成物、癌の予防又は治療用組成物のいずれか1つであることを特徴とする治療剤組成物が提供される。また、前記治療剤組成物は、前記類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームをさらに含む。また、前記治療剤組成物は、多発性硬化症、全身性硬化症、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、慢性肺疾患、急性肺疾患、クローン病、便失禁、移植片対宿主病、下肢虚血疾患、閉塞性血栓性血管炎、足部潰瘍、ループス、リウマチ性関節炎、急性及び慢性腎盂炎、炎症性膀胱炎、間質性膀胱炎、低活動性膀胱、過敏性膀胱、五十肩、回旋筋腱板損傷及び破裂、様々な運動などにより発生する筋骨格系損傷、膝軟骨損傷、耳鳴症、アトピー性皮膚炎、乾癬、火傷による皮膚損傷、紫外線などによる皮膚損傷、網膜症を含む炎症性及び免疫系疾患の予防、虚血性認知症、アルツハイマー認知症、脊髄損傷、パーキンソン病、及び中枢神経系疾患のいずれか1つ以上の疾病の予防又は治療のためのものであってもよい。
【0091】
前記類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームは、免疫抑制能、抗炎症効果、細胞生存、組織再生又は細胞死滅抑制などに関連する機能性物質の全てを含む。但し、前記治療剤組成物として機能性を有する物質であれば、これらに限定されることはない。
【0092】
本発明の一実施形態に係る製造方法として製造された類似間葉系幹細胞を含む伝達体であって、前記伝達体は、医薬組成物を担持することを特徴とする伝達体が提供される。
【0093】
本発明の一実施形態に係る製造方法として製造された類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームを含む、疾病の予防又は治療用組成物が提供される。また、前記疾病は、多発性硬化症、全身性硬化症、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、慢性肺疾患、急性肺疾患、クローン病、便失禁、移植片対宿主病、下肢虚血疾患、閉塞性血栓性血管炎、足部潰瘍、ループス、リウマチ性関節炎、急性及び慢性腎盂炎、炎症性膀胱炎、間質性膀胱炎、低活動性膀胱、過敏性膀胱、五十肩、回旋筋腱板損傷及び破裂、様々な運動などにより発生する筋骨格系損傷、膝軟骨損傷、耳鳴症、アトピー性皮膚炎、乾癬、火傷による皮膚損傷、紫外線などによる皮膚損傷、網膜症を含む炎症性及び免疫系疾患の予防、虚血性認知症、アルツハイマー認知症、脊髄損傷、パーキンソン病及び中枢神経系疾患のいずれか1つ以上であってもよい。
【0094】
本発明の一実施形態に係る製造方法として製造された類似間葉系幹細胞から分泌される有効成分又はエクソソームを含む化粧料組成物が提供される。
【0095】
本発明のヒト多能性幹細胞由来類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて抗炎症効果、免疫抑制能、及び組織再生能力が向上される。
【実施例】
【0096】
実施形態1:抗炎症効果及び免疫抑制能が強化された類似間葉系幹細胞の分離及び培養
【0097】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒト多能性幹細胞から類似間葉系幹細胞を分離して培養する過程を模式化した図である。ヒト多能性幹細胞は、細胞株の確立後に70回以下の継代培養されたものを用いた。細胞株の確立後に70回以下の継代培養されたヒト多能性幹細胞を37℃、5%CO
2細胞培養器で保持培養を行った。保持培養されたヒト多能性幹細胞は、単なる酵素処理によって培養プレートから分離した。そして、胚様体形成によって包嚢(Cystic)胚様体のみを選別した。細胞透過性3次元培養挿入体と新しい培養プレート(6well plate)の結合前に、培養時最初1回に限って、新しい培養プレートに先に2mlの培養液を入れた。そして、2mlの培養液を含む培養プレートに細胞透過性3次元培養挿入体を結合させた。その後、細胞透過性3次元培養挿入体内に2mlの培養液を追加的に入れ、選別された包嚢胚様体を、結合された細胞透過性3次元培養挿入体上にロードした。新しい培養プレートに入れた培養液と細胞透過性3次元培養挿入体内の培養液はEGM-2MVを用いた。包嚢胚様体がロードされた細胞透過性3次元培養挿入体内の培養液を二日間交替せず胚様体を培養した。その後、培養液を除去し、細胞透過性3次元培養挿入体内にのみ4mlの培養液を追加的に入れて、毎日培養液を交替して類似間葉系幹細胞への分化を誘導した。
【0098】
実施形態2:抗炎症効果及び免疫抑制能が強化された類似間葉系幹細胞の分離及び増殖
【0099】
上記の実施形態1で分離された類似間葉系幹細胞において、細胞透過性3次元培養挿入体を透過して細胞透過性3次元培養挿入体の下方に移動した、群集形態の細胞を分離した。分離した群集のうち多層形態の群集は機械的に除去した。分離した群集のうち、単層形の群集のみをマイクロファイペットチップを用いて横500μm以下、縦500μm以下の大きさに切って均一化して選択的に培養した。より好ましくは、単層形態の群集は、縦と横それぞれ100μm~500μmの大きさで均一化し、類似間葉系幹細胞を培養した。5~7日間培養した後、群集から単一細胞の形態にのび出ている類似間葉系幹細胞のみを分離し、継代培養して増殖させた。単一細胞を分離する前に、単一細胞の形態でない群集及び上皮細胞形態の細胞は、マイクロファイペットチップを用いて完全に除去した。分離された単一細胞は、新しい培養プレートに移して継代培養を介して増殖を誘導した。ここで、培養培地は、EGM-2MVを使用した。 具体的に、
図4に示すように、群集形態の類似間葉系幹細胞が細胞透過性3次元培養挿入体の下方に移動すると、細胞透過性3次元培養挿入体を培養プレートから分離した。分離した細胞透過性3次元培養挿入体の下方に移動した群集形態の類似間葉系幹細胞を収得した後、多層形態の群集は機械的に除去し、単層形態の群集の大きさを均一化して選択的培養を実施した。単層形態の群集から増殖された類似間葉系幹細胞は、持続的な継代培養にも細胞の形態及び増殖能が保持され、細胞の形態及び増殖などに及ぼす否定的な変化は観察されなかった。 実施形態3:類似間葉系幹細胞の表面抗原発現の分析
【0100】
上記の実施形態1及び2によって製造された類似間葉系幹細胞の特性分析のために、フローサイトメトリー(Fluorescence Activated Cell Sorting、FACS)を用いて幹細胞特定マーカーの発現を分析した。
【0101】
具体的に、増殖が誘導された類似間葉系幹細胞を、TrypLEを用いて単一細胞化し、5×10
5cells/ml濃度でPBS(Phosphate Buffered Saline)に浮遊させた。各細胞にSox2、CD44、CD73、CD90、CD105、CD146、NG2、HLA-ABC、CD11b、CD11c、CD14、CD19、CD34、CD45、CD40、CD40L、CD80、CD86、CD95、CD133、KDR、Flt-1、Tie-2、HLA-DR.Oct3/4、Tra-1-81及びTra-1-60抗体を添加して45分間室温で反応させた。そして、それぞれの細胞に対してフローサイトメトリー分析を実施した。核内部タンパク質であるSOX2とOct3/4は、室温で5分間0.1%triton X-100を処理し、細胞膜の透過化(permeabilization)過程を誘導した。そして、抗体を添加してフローサイトメトリー分析を実施した。その結果を下記の表1及び
図6に示した。
【0102】
【0103】
前記表1及び
図6を参照すると、本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、間葉系幹細胞特異マーカーであるCD44、CD73、CD90、CD105を全て95%以上に発現した。一方、CD45、CD34、CD14、CD19は2%以下に発現した。そして、未分化調節マーカーであるOct3/4、Tra-1-60、Tra-1-81及び免疫拒否抗原であるHLA-DRの発現がほとんど示されなかった。従って、本発明の製造方法により製造された類似間葉系幹細胞は、世界の幹細胞治療学会で定義している間葉系幹細胞としての特性を全て有することが確認された。また、世界の幹細胞治療学会で成体間葉系幹細胞の特性として定義していないSOX2、CD146が90%以上に発現し、CD95は著しく低く発現することが確認された。本発明で製造された類似間葉系幹細胞は、70回以下に継代培養されたヒト多能性幹細胞から分化誘導するため、表1の表面抗原の発現特性を有するものと予測することができる。また、ヒト多能性幹細胞を分化誘導した胚様体のうち、選別された包嚢胚様体のみを細胞透過性3次元培養挿入体を用いて分離し、単層形態の細胞群集を均一化して培養するため、表1の表面抗原の発現特性が一定に保持される。特に、本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、SOX2を90%以上発現しており、通常の間葉系幹細胞とは異なる。
【0104】
実施形態4:類似間葉系幹細胞の分化能の分析
【0105】
上記の実施形態1及び2を介して製造された類似間葉系幹細胞の多能性を確認するために、世界の幹細胞治療学会で間葉系幹細胞の特徴として定義している造骨を、脂肪及び軟骨細胞への分化と筋肉細胞への分化を誘導した。
【0106】
具体的に、製造された類似間葉系幹細胞を10%FBS、5μg/mlインスリン、1μMデキサメタゾン、0.5mMイソブチルメチルキサンチン、及び60μMインドメタシンが含まれている低濃度グルコースDMEM培地で培養した。また、10%FBS、1μMデキサメタゾン、10mMβ-グリセロリン酸及び60μMアスコルビン酸-2-リン酸を含む低濃度グルコースDMEM培地で培養した。そして、それぞれの造骨細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化有無を確認した。前記分化により生成された造骨細胞は、アリザリンレッドS(Alizarinred S)染色を介して分化の有無を確認した。前記分化により生成された脂肪細胞は、オイルレッドO(Oil Red O)染色を介して分化の有無を確認した。また、前記分化により生成された軟骨細胞は、アルシアンブルー(Alcian blue)染色を介して分化の有無を確認した。また、筋肉細胞への分化を確認するために、製造された類似間葉系幹細胞を20%FBS、1%非必須アミノ酸、1%ペニシリン硫酸塩、0.1mMβ-メルカプトエタノールを含むDMEM培地で分化させた。前記分化した筋肉細胞から、平滑筋特異マーカーであるαSMAが発現することが確認された。
【0107】
したがって、
図7に示すように、本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、造骨、脂肪、軟骨及び筋肉細胞への一定な分化能を示すため、これは世界幹細胞治療学会で提示した間葉系幹細胞の特徴を満足するものである。
【0108】
実施形態5:類似間葉系幹細胞の増殖能及び細胞の大きさ分析
【0109】
前記実施形態1及び2によって生産された類似間葉系幹細胞の増殖能を確認するため、3継代から7継代までの総細胞分裂数を確認した。成体幹細胞である骨髄由来間葉系幹細胞との総細胞分裂数を併せて比較した。その結果は、下記の表2及び
図8に示す。
【0110】
【0111】
表2及び
図8に示すように、類似間葉系幹細胞は3継代から7継代の間に1つの細胞が平均16.13回分裂した。一方、骨髄由来間葉系幹細胞は、平均10.17回分裂する。従って、増殖能において類似間葉系幹細胞が優れていることが分かる。
【0112】
一方、増殖された類似間葉系幹細胞の細胞の大きさを調査したところ、表3及び
図6に示すように類似間葉系幹細胞の細胞の大きさは平均13.6±0.3μmである。一方、骨髄由来間葉系幹細胞の場合、細胞の大きさが平均17.7±0.4μmである。従って、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて類似間葉系幹細胞の大きさが相対的に小さいことが確認された。類似間葉系幹細胞の大きさが相対的に小さいため、細胞治療剤を適用するとき血管に注入する場合、血管閉鎖による肺塞栓症(Pulmonary embolism)の発生可能を低くすることができる。従って、本発明に係る類似間葉系幹細胞は、治療剤組成物として、細胞治療剤組成物、細胞遺伝子治療剤組成物、組織工学治療剤組成物、抗炎症治療剤組成物、免疫治療剤組成物、癌の予防又は治療用組成物として提供され、治療の効率を高め、副作用の発生可能性を低めることができる。
【0113】
【0114】
実施形態6:類似間葉系幹細胞の高純度分離
【0115】
上記の実施形態1及び2により製造された類似間葉系幹細胞は、未分化細胞が混在されていない高純度細胞であることが確認された。即ち、保持及び増殖中である類似間葉系幹細胞に対して、未分化調節マーカーであるOct4の発現の有無をqPCR方法に基づいて確認した。そして、未分化多能性幹細胞であるヒト胚性幹細胞株とヒトの皮膚繊維芽細胞(hFF)とを比較分析した。その結果、
図9に示すように、未分化調節マーカーであるOct4がヒト胚性幹細胞にのみ発現した。本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞では、ヒト皮膚繊維芽細胞(hFF)と同様に、未分化細胞が混在していないことが確認された。本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、未分化細胞の発現が検出されず、高純度で分離された細胞であることが確認された。 実施形態7:類似間葉系幹細胞の遺伝的安全性の分析
【0116】
一方、類似間葉系幹細胞の遺伝的安全性を確認するために染色体分析とSNP(Single Nucleotide Polymorphism)の分析を実施した。
【0117】
具体的に、染色体分析のために、100μg/ul濃度のコルヒチン溶液20ulが含まれた10ml培地下で、類似間葉系幹細胞を添加した後、37℃で2時間の間に放置した。その後、500rpmで5分間遠心分離した後、上層液を除去した。そして、0.075M KCl貯蔵液に細胞を浮遊させてから、37℃の恒温水槽で25分間放置した。その後、固定液(methanol:glacial acetic acid=3:1、v/v)を5滴添加してから、1,200rpm下で8分間遠心分離した。その後、上層液を除去し、固定液をさらに添加し、常温で10分間放置する過程を2回行った。その後、冷たい70%エタノールに浸漬したスライドグラス上に細胞浮遊液を一滴滴下させた。次に、アルコールランプを用いてスライドの乾燥を誘導した。次に、5%Gimesa溶液に12分間染色を行った。次に、蒸留を用いて染色液を除去し、空気中乾燥を誘導した後、光学顕微鏡下で観察を行った。SNP分析は、専門検査機関に委託してIllumina SNP chipを用いて染色体の異常有無を確認した。
図10に示すように、3つのバッチ番号(batch number)で製造された類似間葉系幹細胞の全てで染色体が正常であり、SNPの異常は観察されなかった。従って、本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞は、遺伝的に安定なものであることを立証した。
【0118】
実施形態8:類似間葉系幹細胞の組織再生能の分析
【0119】
上記の実施形態1及び2によって製造された類似間葉系幹細胞の機能性を評価するために様々な分析を施行した。組織再生能を分析するために細胞移動能の分析(In vitro Cell Migration Assay)を施行した。組織再生能の分析において対照群の細胞として骨髄由来間葉系幹細胞を用いた。
【0120】
具体的に、各μ-ディッシュ35mmに類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞をそれぞれ3×10
4cells/well濃度で70ulずつ分注した。そして、37℃、5%CO
2培養器で24時間培養した。その後、培養挿入体(culture-insert)を除去し、10%DMEM培地2mlを添加した。そして、顕微鏡で観察しながら細胞の移動数を測定した。
図11に示すように、製造された類似間葉系幹細胞の移動能は平均67.51%に示された。本発明の製造方法によって製造された類似間葉系幹細胞の移動能は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて350%以上高いものと示された。即ち、本発明の一実施形態により製造された類似間葉系幹細胞は、生体内に投薬するとき迅速な細胞移動と増殖が可能であることが確認された。従って、製造された類似間葉系幹細胞の組織再生能力が著しく高いことを予測することができる。
【0121】
実施形態9:類似間葉系幹細胞の物質交換能と血管形成能の分析
【0122】
上記の実施形態1及び2によって製造された類似間葉系幹細胞の機能性評価のための異なる方法として、物質交換能と血管形成能を分析した。
【0123】
具体的に、細胞間の相互作用を分析するために使用されるギャップ結合(gap-juction)に移動可能な蛍光物質であるカルセイン(calcein)を活用して物質交換能を分析した。まず、血管細胞のうちの1つであるヒト臍帯静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cell、HUVEC)にカルセイン染色を施行した。そして、Dilが標識された類似間葉系幹細胞と37℃培養器で1時間共培養を施行した。そして、蛍光学顕微鏡で分析した。
図12に示すように、蛍光に表示されたHUVEC細胞と赤色に表示されたDil-類似間葉系幹細胞は、共培養を経て迅速に物質移動が行われることが確認できた。48時間後、フローサイトメトリー分析を施行した結果、実質的な交換が行われた細胞数は46.15%に確認された。即ち、本発明の製造方法に係る類似間葉系幹細胞は、血管細胞などとの迅速なギャップ結合によって有用物質の供給などを含む細胞間の相互作用を促進する可能性があることを示す。
【0124】
一方、血管形成能を分析するために、常温で解凍させたマトリゲルを96wellプレートにそれぞれ50ulずつ分注した。そして、37℃で30分間定置してから、単一細胞化された類似間葉系幹細胞1-2×10
4cellをマトリゲル上に播種(seeding)した後、37℃で24時間培養した。その後、10%ホルムアルデヒド固定液を添加して10分間追加培養した。そして、10倍の顕微鏡下でランダムに3~5ヶ所を観察しながら自発的な血管形成(sponteneous tubule formation)の有無を観察した。
図13に示すように、3バッチ番号の類似間葉系幹細胞の全てがマトリゲル上で自発的血管形成が行われたことが確認できた。これは、実施形態1及び2によって製造された類似間葉系幹細胞は、自発的血管形成能を保持していることを示す。即ち、前記の特性は、本発明の製造方法により製造された類似間葉系幹細胞が損傷部位の新生血管の形成促進と物質交換の作用が可能であることを示す。
【0125】
実施形態10:類似間葉系幹細胞の免疫細胞の増殖抑制と抗炎症効能の分析
【0126】
実施形態1及び2によって製造された類似間葉系幹細胞機能の分析のうちの1つとして、免疫細胞との共培養を通した細胞増殖抑制及び抗炎症関連のタンパク体の発現を分析した。
【0127】
具体的に、実施形態1及び2によって製造された類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞をそれぞれ1,000、2,000、5,000、及び10,000個準備した。そして、末梢血から採取された単核球細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cell:PBMC)2×10
5cell/wellを96wellプレートで5日間共培養した。各試験群にCFSE(Carboxy FLuorecein Succinimidyl Ester)を標識してPBMCの増殖抑制率(%)を測定した。その結果について下記の表4及び
図14に示した。
【0128】
【0129】
前記表4及び
図14に示すように、類似間葉系幹細胞は、末梢血単核球細胞の増殖を濃度依存的に抑制することを確認することができる。即ち、本発明の類似間葉系幹細胞は、増殖抑制の効果が骨髄由来間葉系幹細胞に比べて極めて高い。従って、本発明の類似間葉系幹細胞の免疫抑制能に優れる。
【0130】
一方、類似間葉系幹細胞の誘電体及びタンパク体の分析を通じて、抗炎症作用及び免疫抑制能に関連する遺伝子の発現を分析した。その結果、代表的な抗炎症作用を示すGata3、Adora2aとGps2が、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約11倍ないし約100倍以上高く発現することが確認された。従って、類似間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と比較して抗炎症効果と免疫抑制能に優れる。
【0131】
実施形態11:類似間葉系幹細胞の機能性有用物質の分泌能
【0132】
実施形態1及び2で製造された類似間葉系幹細胞の機能性分析のために、これらから分泌される有用物質の濃度を測定した。具体的に、製造された類似間葉系幹細胞を無血清状態のDMEM培地下で24時間培養した。そして、500rpm下で遠心分離を行い、上層部の培地のみを回収した。回収された培地は、ELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay)法を用いてMMP-1、HGF及びCD95を定量分析した。成体幹細胞との比較のために、骨髄由来間葉系幹細胞を比較分析し、その結果を
図15に示した。
【0133】
図15に示すように、代表的な組織再生関連のタンパク質であるMMP-1(Matrix metalloproteinase-1)の濃度は、類似間葉系幹細胞で20,953pg/mlであり、骨髄由来間葉系幹細胞で1,237pg/mlであった。即ち、類似間葉系幹細胞で骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、MMP-1が約16倍高く分泌される。一方、細胞成長及び増殖関連タンパク体であるHGF(Hepatic Growth Factor)の濃度は、類似間葉系幹細胞で1,360pg/mlであり、骨髄由来間葉系幹細胞で534pg/mlであった。即ち、類似間葉系幹細胞で骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、HGFが約2.5倍以上高く分泌される。一方、細胞死滅を誘発するために重要な役割をすることが知られているCD95の濃度は、類似間葉系幹細胞では53pg/mlであり、骨髄由来間葉系幹細胞は800pg/mlである。従って、類似間葉系幹細胞で骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、CD95が約15倍以上低く発現した。従って、本発明によって製造された類似間葉系幹細胞は、既存の骨髄由来間葉系幹細胞に比べて組織再生及び細胞増殖関連のタンパク質分泌能力に優れる。そして、細胞死滅誘発タンパク質が極めて低く発現するため、組織再生及び細胞の生存率が極めて優秀である。
【0134】
実施形態12:分離培養された類似間葉系幹細胞の炎症調節及び免疫抑制関連の遺伝子発現特性の確認
【0135】
実施形態1及び2から分離培養された類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞に対して、Next Generation Sequence(NGS)を実施した後、NCBI GEOで発表されたデータベースに基づいて遺伝子発現の差を分析した。
【0136】
具体的に、類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞の遺伝子の発現を比較するために、RNAsequencing(RNA-seq)を実行した。前記2種類の細胞は、100mm dishに3×10
5dishの密度で分注し、confluence80%の時点で分析に使用した。RNA-seqのために、細胞のtotalRNAを抽出し、すべてのRNA試料は、基準以上の均一な品質を有するものと確認された。cDNA libraryは、Truseq Stranded mRNA LTSample Prep Kit(Illumina)の標準手続きを守って制作された。前記cDNA libraryは、Truseq Stranded mRNA Sample Preparation Guide(Part#15031047Rev.E)に従い、NovaSeq6000 System(Illumina)上で序列分析された。それぞれのRNA-seqデータは、細胞あたり3つの試料を用いて生成された(n=3)。取得されたIllumina readデータからBBDuk(BBtools)を用いてPhred quality scoreを計算し、全体のデータ中から平均Q30以上のデータのみを使用した。選別されたreadデータはBowtie2を利用し、参考誘電体序列(hg19;genome database:USCS)上にマッピングされた(Langmead&Salzberg,2012)。Readデータの計算は、Bedtools(https://bedtools.readthedocs.io/en/latest/)を用いた。マッピング及び定量化は各試料ごとに行った。定量化された遺伝子発現情報は、edgeRを用いてquantile正規化された(Robinson,McCarthy,&Smyth,2010)。すべてのデータは、類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞の比較のために分析された。その結果については
図16及び
図17に示した。
【0137】
図16に示すように炎症調節遺伝子の分析により、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約2倍以上高く発現する遺伝子は、Gata3、Adora2a、Gps2、Psma1、Pbk、Lrfn5、Cdh5、Apoe、Foxf1、Tek、Cxcl1、Ptger4、Acp5、Bcr、Socs5、Mdkであって、16種の遺伝子が確認された。特に、Gata3遺伝子は約108倍、Adora2a遺伝子は約27.97倍、Gps2遺伝子は約11.02倍に発現した。従って、類似間葉系幹細胞で骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、炎症調節遺伝子が10倍以上高く発現することが確認された。
【0138】
一方、RNA-seqを活用した分析を介して免疫抑制能関連の遺伝子発現を分析した結果については
図15に示している。骨髄由来間葉系幹細胞に比べて2倍以上高く発現する遺伝子は、Gata3、Gps2、Psma1、Apoe、Foxf1、Tek、Cxcl1、Ptger4、Bcr、Socs5、Mdkであって、11種である。特に、Gata3遺伝子は108倍、Adora2a遺伝子は11.02倍で発現し、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて10倍以上高く発現することが確認された。
【0139】
実施形態13:分離培養された類似間葉系幹細胞の細胞溶解物及び培養上清液のタンパク体の分析
【0140】
実施形態1及び2で製造された類似間葉系幹細胞の細胞溶解物(Cell lysate)と培地に対してL507antibody arrayを活用して増強するタンパク体を分析した。
【0141】
具体的に、類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞の細胞溶解物及び培養上清液のタンパク質組成を比較するために、反定量的なタンパク質antibody array chipであるL507(RayBiotech)を用いた。細胞溶解物及び培養上清液はtotal RNAを収得する時点で共に収得された。L507の先端は、biotin labeling基盤で507種のタンパク質を分析する方式であって、類似間葉系幹細胞のタンパク質を分析するために選択された。分析のために、細胞溶解物及び培養上清液のタンパク質を抽出した。そして、BCA protein assay kit(Abcam)を用いて、タンパク質を定量した(50~200μgの範囲)。定量なタンパク質は、同じ量に分注されてbiotin labelingされた。そして、protein hybridizationされた。Hybridizationによる蛍光イメージは、streptavidin-cyanine3 conjugateを用いて可視化され、GenePix 4100A Microarray Scanner(Molecular Devices)でスキャンされた。全てのデータは、edgeRを用いてquantile normalizationされた。そして、GenePix Pro7.0software(Molecular Devices)を用いて分析された。全てのデータは、類似間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞とを比較するために分析され、その結果について
図18、
図19、
図20及び
図21に示されている。
【0142】
図18に示すように、類似間葉系幹細胞の溶解物タンパク体を分析した。類似間葉系幹細胞は、Angiopoietin-4(ANGPT4)、BMPR-1B(bone morphogenic protein receptor 1B)、HCR(human chemokine receptor)、Activin B、Activin RII、CCR1、ICAM-2(Intracellular adhesion molecule2)を、骨髄由来幹細胞に比べて約2倍以上高く発現した。一方、
図19に示すように、Angiogenin(ANG)、Angiopoetin-1(ANG-1)、Angiopoetin-2(ANG-2)、Bone morphogenic proteins receptor1A(BMPR1A)、CXCR6(CXC-chemokine receptor6)を含む15種タンパク体は、類似間葉系幹細胞で骨髄由来間葉系幹細胞に比べて約2倍低く発現した。
【0143】
一方、
図20のように、培養上清液のタンパク体を分析した。類似間葉系幹細胞は、GRO-a、IL-15R alpha、FasL、Activin RII、BMP-2、CCR2、CXCL14、FGFR4を骨髄由来幹細胞に比べて、約2倍以上高く分泌した。
図21のように、類似間葉系幹細胞は、TIMP-2(Tissue inhibitor of methalloproteinases-2)、ActivinA、VEGFA(Vascular endothelial factor)、FSTL1(Follistantin-like 1)、ErB4、Thrombospondin-1などは低く発現した。
【0144】
上述したように実施形態が、たとえ限定された実施形態と図面によって説明されたが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記の記載から様々な修正及び変形が可能である。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順に実行されたり、及び/又は説明された構成要素が説明された方法と異なる形態に結合又は組み合せわせられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても適切な結果が達成されることができる。
【0145】
従って、他の実現、他の実施形態及び特許請求の範囲と均等なものなども後述する請求の範囲の範囲に属する。