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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】浴槽用吐水装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
A47K3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017238675
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019103660
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】原島 立成
(72)【発明者】
【氏名】関 大輝
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-226628(JP,A)
【文献】特開2002-153391(JP,A)
【文献】特開2014-226467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に設置され、左右方向に幅広の水流を上記浴槽内に座っている使用者の肩方向に向けて吐水させる浴槽用吐水装置であって、
供給管から流入した水を一時的に貯留するとともにその内部が左右方向に延びて形成された貯留室と、
左右方向に延びる幅広形状に形成され、その左右方向の中央部分が左右端部分よりも後方に位置するように湾曲して形成される吐水口部と、
上記貯留室よりも絞られた流路を形成し且つ上記吐水口部まで延びる絞り流路と、を有し、
上記貯留室には、上記供給管の接続部と上記絞り流路との間において、天井面から下方に突出するとともに左右方向に延びるリブが設けられ、さらに、上記リブと上記絞り流路との間において上記リブの下面より上方の高さに上記天井面が形成され、
上記絞り流路は、この中央部分を通過する水の流速の低下を、この左右端部分を通過する水の流速の低下よりも小さくさせる流速調整手段を備えていることを特徴とする浴槽用吐水装置。
【請求項2】
上記絞り流路の上記流速調整手段は、上記絞り流路の中央部分の前後方向の長さを、左右端部分の前後方向の長さより短くすることにより形成される、請求項1記載の浴槽用吐水装置。
【請求項3】
上記吐水口部は、中央部分から左右端部分までの高さを一定にすることにより形成される、請求項2に記載の浴槽用吐水装置。
【請求項4】
上記浴槽用吐水装置は、さらに、上記貯留室と上記絞り流路との間の底面において、上記貯留室から上記絞り流路に向かって上昇する傾斜部を有し、
上記絞り流路と上記傾斜部との接続部分が、上記吐水口部の左右端部分を結ぶ仮想線と平行に延びるように形成されている、請求項2又は3に記載の浴槽用吐水装置。
【請求項5】
上記浴槽用吐水装置は、さらに、上記貯留室と上記絞り流路との間の底面において、上記貯留室から上記絞り流路に向かって上昇する傾斜部を有し、
上記貯留室と上記傾斜部との接続部分が、上記吐水口部の左右端部分を結ぶ仮想線と平行に延びるように形成されている、請求項2乃至4の何れか1項に記載の浴槽用吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽用吐水装置に係り、特に、浴槽に設置され、左右方向に幅広の水流を上記浴槽内に座っている使用者の肩方向に向けて吐水させる浴槽用吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、浴槽のリム部上に設置され且つ入浴者の肩に水を吐出させることができる肩湯用の吐水装置が知られている。この吐水装置の装置本体においては、流入口から入ってきた水を、先ず流路断面積が比較的大きい貯溜室で左右方向に広げた後、広がった水を流路断面積が比較的小さい絞り流路に流入させることで、勢いよく水を吐出口から吐出させている。このような吐水装置においては吐出口が左右方向に直線的に延びるように形成され、左右方向に幅広の吐水がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-7361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような肩湯用の吐水装置をリム部が湾曲しているような浴槽にも配置したいという要請がある。しかしながら、吐出口が左右方向に直線的に延びるような吐水装置をリム部が湾曲しているような浴槽に配置する場合、吐出口がリム部の形状に合わず、リム部から内側に突出する等してデザイン的にも使用者の使い勝手としても好ましくない。よって、本発明の発明者は、リム部の湾曲に合わせて、吐出口の中央部分が左右端部分よりも後方側に位置するように吐出口を湾曲させることを検討した。
【0005】
しかしながら、図13に示すように、吐出口を湾曲させて形成する場合、吐出口からの吐水形状が湾曲されるという問題が生じた。すなわち、使用者の肩は頭を中心に左右方向へ略直線的に延びているのに対し、湾曲された吐水が使用者の首周りのU字形に湾曲した範囲に着水し、肩に対して前後に横切るように当たることとなる。よって、使用者の肩に対して左右方向に線状に着水させることができず、吐水水量に対する着水水量の割合も減少され、使用者の浴び心地が良好にならないという問題が生じた。
【0006】
そこで、本発明は、吐水口部の開口部分の中央部分が左右端部分よりも後方に位置するように吐水口部が湾曲して形成されていても、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる浴槽用吐水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、浴槽に設置され、左右方向に幅広の水流を上記浴槽内に座っている使用者の肩方向に向けて吐水させる浴槽用吐水装置であって、供給管から流入した水を一時的に貯留するとともにその内部が左右方向に延びて形成された貯留室と、左右方向に延びる幅広形状に形成され、その左右方向の中央部分が左右端部分よりも後方に位置するように湾曲して形成される吐水口部と、上記貯留室よりも絞られた流路を形成し且つ上記吐水口部まで延びる絞り流路と、を有し、上記貯留室には、上記供給管の接続部と上記絞り流路との間において天井面から下方に突出するとともに左右方向に延びるリブが設けられ、さらに、上記リブと上記絞り流路との間において上記リブの下面より上方の高さに上記天井面が形成され、上記絞り流路は、この中央部分を通過する水の流速の低下を、この左右端部分を通過する水の流速の低下よりも小さくさせる流速調整手段を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、絞り流路は、絞り流路の中央部分を通過する水の流速の低下を、左右端部分を通過する水の流速の低下よりも小さくさせるような流速調整手段を備えているので、吐水口部の中央部分から吐水される水の流速を、吐水口部の左右端部分から吐水される水の流速よりも大きくすることができる。よって、吐水口部の中央部分から吐水される水を、左右端部分から吐水される水よりも前方の位置に吐水することができる。従って、本発明によれば、吐水口部の開口部分の中央部分が左右端部分よりも後方に位置するように吐水口部が湾曲して形成されていても、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる。
また、本発明によれば、貯留室に流入した水は貯留室において左右方向に広げられた後に、流速調整手段を備える絞り流路を通過する。これにより、左右方向に幅広の吐水の水流が形成されやすくなると共にこの水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記絞り流路の上記流速調整手段は、上記絞り流路の中央部分の前後方向の長さを、左右端部分の前後方向の長さより短くすることにより形成される。
このように構成された本発明においては、絞り流路の流速調整手段は、絞り流路の中央部分の前後方向の長さを、左右端部分の前後方向の長さより短くすることにより形成される。これにより、絞り流路の中央部分を通過する水の圧力損失を、左右端部分を通過する水の圧力損失よりも小さくさせることができる。よって、吐水口部の中央部分から吐水される水の流速を、吐水口部の左右端部分から吐水される水の流速よりも大きくすることができる。従って、本発明によれば、吐水口部の開口部分の中央部分が左右端部分よりも後方に位置するように吐水口部が湾曲して形成されていても、比較的簡単な構成により、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が湾曲されにくくすることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記吐水口部は、中央部分から左右端部分までの高さを一定にすることにより形成される。
このように構成された本発明においては、吐水口部は、中央部分から左右端部分までの流路の高さを一定にすることにより形成される。これにより、吐水口部の中央部分を通過する水の圧力損失を、左右端部分を通過する水の圧力損失よりも小さくさせることができる。よって、本発明によれば、吐水口部の高さを中央部分から左右端部分まで一定の高さとすることで、幅広の膜状に吐出された水の膜厚が乱れてしまって吐出された膜状の水が左右に分断されてしまうことを抑制しながらも、吐水口部の中央部分から吐水される水の流速を、吐水口部の左右端部分から吐水される水の流速よりも大きくすることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記浴槽用吐水装置は、さらに、上記貯留室と上記絞り流路との間の底面において、上記貯留室から上記絞り流路に向かって上昇する傾斜部を有し、上記絞り流路と上記傾斜部との接続部分が、上記吐水口部の左右端部分を結ぶ仮想線と平行に延びるように形成されている。
このように構成された本発明においては、傾斜部は、絞り流路に向かう水が加速され且つ乱流を発生させることを抑制する。さらに、この傾斜部と絞り流路との接続部分が、吐水口部の左右端部分を結ぶ仮想線と平行に延びるように形成されている。従って、絞り流路に、中央部分を通過する水の流速の低下を、左右端部分を通過する水の流速の低下よりも小さくさせるような流速調整手段が形成されている場合においても、傾斜部から絞り流路に流入する水が、仮想線に対して比較的均等に広がるように流れることができる。よって、本発明によれば、傾斜部から絞り流路に流れる水が、水の流速の低下が小さい中央部分の流れに引かれて、縮流を生じさせてしまうことを抑制できる。これにより、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が乱れることを抑制できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記浴槽用吐水装置は、さらに、上記貯留室と上記絞り流路との間の底面において、上記貯留室から上記絞り流路に向かって上昇する傾斜部を有し、上記貯留室と上記傾斜部との接続部分が、上記吐水口部の左右端部分を結ぶ仮想線と平行に延びるように形成されている。
このように構成された本発明においては、傾斜部によって、絞り流路に向かう水が加速され且つ乱流を発生させることを抑制する。さらに、貯留室と傾斜部との接続部分が、吐水口の左右端部を結ぶ仮想線と平行に延びるように形成されている。従って、絞り流路に、中央部分を通過する水の流速の低下を、左右端部分を通過する水の流速の低下よりも小さくさせるような流速調整手段が形成されている場合においても、貯留室から傾斜部に流れる水が、吐水口の左右端部を結ぶ仮想線に対して比較的均等に広がるように流れることができる。よって、本発明によれば、傾斜部から絞り流路に流入する水が、比較的均等に広がるように流れ、水の流速の低下が小さい中央部分の流れに引かれて、縮流を生じさせてしまうことを抑制できる。これにより、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が乱れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浴槽用吐水装置によれば、吐水口部の開口部分の中央部分が左右端部分よりも後方に位置するように吐水口部が湾曲して形成されていても、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置が適用される浴槽装置を示す概略斜視図である。
図2図1の上面図である。
図3図2のIII-III線に沿って見た概略断面図である。
図4図1の側面図である。
図5図3に示す本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置を拡大して紙面の左右を反転した状態で示す部分拡大断面図である。
図6図3のVI-VI線に沿って見た断面図である。
図7図6のVII-VII線に沿って見た断面図である。
図8図5のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
図9】本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置を正面から見た正面図である。
図10】本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置の貯留室に流入した水が、傾斜部及び絞り流路を通って吐水口部から吐水される様子を示す図である。
図11】本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置が設けられた浴槽内に座っている使用者に対し、吐水口部からの吐水が行われている様子を示す斜視図である。
図12】本発明の第2実施形態による浴槽用吐水装置を正面から見た正面図である。
図13】比較例として、左右方向において均一な長さの絞り流路が設けられている浴槽用吐水装置の内部流路を概略的に示すと共に、貯留室に流入した水が、吐水口部から吐水される際に吐水形状が湾曲される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置が適用される浴槽装置を説明する。
図1は本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置が適用される浴槽装置を示す概略斜視図であり、図2図1の上面図であり、図3図2のIII-III線に沿って見た概略断面図であり、図4図1の側面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態による浴槽用吐水装置1が適用される浴槽装置3は、浴槽2を備える。浴槽用吐水装置1は、浴槽2に設置されている。浴槽2は、水(湯を含む)を貯留する。なお、本実施形態において、浴槽用吐水装置1の後述する吐水口部4が設けられる側を前方向、これと反対側の貯留室36が設けられる側を後方向、吐水口部4を正面から見た状態で右側を右方向、左側を左方向という。
【0016】
浴槽2は、底部2aと、使用者Hの背中が接する短辺側の縦壁2bと、浴槽2の長辺側の側壁2dと、縦壁2bの上部と接続され且つ浴槽2の上面を形成する上端部2cとを備えている。上端部2cは、浴槽内に座っている使用者Hの上半身、例えば頭部、首部、又は肩部に比較的近い高さとして設定されている。側壁2dには第1取水口6及び第2取水口22が形成されている。
浴槽2は、浴槽2の壁面の上部を水平方向で弧状に形成したいわゆるラウンドタイプの浴槽である。なお、浴槽2は、浴槽2の壁面の上部を水平方向で円弧状に形成したいわゆるクレイドルタイプの浴槽、円形の浴槽、又は縦壁2bが長辺を形成するようなワイドタイプの浴槽であってもよい。
【0017】
図3に示すように、浴槽用吐水装置1は、供給管から供給される水を浴槽2内に吐水させる。浴槽用吐水装置1は、浴槽2の上端部2cの内側縁部分に配置されている。浴槽用吐水装置1には、水を浴槽2内に向けて水平向き且つ帯状に吐水させる吐水口部4が形成されている。
【0018】
図3及び図4に示すように、浴槽装置3は、さらに、第1取水口6から延びる第1流路8と、第1流路8上に設けられ且つ浴槽2内の水を吸引して下流側に圧送するポンプ10と、第1流路8の下流端で水の流れを制御する三方弁12と、三方弁12から吐水口部4側に延びる第2流路14と、三方弁12から第2流路14と別に延びる第3流路16と、第3流路16から供給された水を浴槽2内にブロー吐水するブロー吐水部18と、第2流路14の下流部分に設けられるジェットポンプユニット20と、第2取水口22からジェットポンプユニット20まで延びる第4流路24と、ジェットポンプユニット20から垂直上方に延びる上昇管26と、ポンプ10及び三方弁12を制御する制御部28と、使用者Hが操作する操作部30と、を備えている。
【0019】
ポンプ10は、制御部28と電気的に接続され、制御部28により駆動制御されるようになっている。
【0020】
三方弁12は、第1流路8から供給される水を、第2流路14、及び第3流路16のうちの両方又はいずれか一方に選択的に供給することができる。三方弁12は、流量の分配割合を自由に変更することができる。三方弁12は、制御部28と電気的に接続され、制御部28により電気的に開閉制御されるようになっている。第2流路14は、三方弁12からジェットポンプユニット20まで延びる流路を形成している。
【0021】
制御部28は、浴室の壁面(図示せず)の裏側に取付けられている。制御部28は、ポンプ10、三方弁12、操作部30等と、電気的に接続され、上述の各部分を操作できるようになっている。制御部28は、操作部30からの操作信号を受けて又は記憶されたプログラム等に従って各機器の制御を行う。制御部28は、浴槽用吐水装置1を適切に制御することができるようなメモリ等の記憶装置(図示せず)及び演算装置(図示せず)を備えている。
【0022】
操作部30は、使用者Hが浴槽用吐水装置1のON、OFFを操作できるように設けられ、浴室内の壁面に取付けられている。使用者Hが操作部30を操作した情報が電気信号により操作部30から制御部28に送られる。
【0023】
ジェットポンプユニット20は、ジェットポンプ作用により引き込まれる水が貯留されるチャンバー部32と、第2流路14の下流端に配置されたジェットノズル34と、を備えている。浴槽用吐水装置1はジェットポンプユニット20を採用することにより比較的小型のポンプ10を使用して吐水口部4から大流量の肩湯吐水を行うことができる。
【0024】
チャンバー部32は、箱型の貯水室を形成し、第4流路24の下流端がチャンバー部32に接続されている。チャンバー部32は、浴槽2と連通されている。チャンバー部32の底部には、ジェットノズル34が垂直上方に向けて取りつけられている。チャンバー部32の上面においては、このジェットノズル34と対向する位置に開口が形成され、この開口から上昇管26が上方に延びている。
【0025】
ジェットノズル34は、ポンプ10から供給された水をチャンバー部32を通して上昇管26内に向けて噴射する。ジェットノズル34は、チャンバー部32を通るように水を噴射するので、チャンバー部32内から水を引き込むジェットポンプ作用を誘発させる。ジェットノズル34は、その内部の流路の径を、ジェットノズル34の上流側の第2流路14の径よりも絞るように形成されている。従って、ポンプ10により圧送された水は、ジェットノズル34内でさらに加速され、ジェットノズル34から高速の水流として噴出される。ジェットノズル34から噴射された高速の噴流は、チャンバー部32内の水を引き込むことによりその流量が増大され且つ流速が減少する。
上昇管26は、チャンバー部32から垂直上方に延びる円管状の流路を形成している。
【0026】
次に、図5乃至図9を参照して、浴槽用吐水装置1について説明する。
図5図3に示す本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置を拡大して紙面の左右を反転した状態で示す部分拡大断面図であり、図6図3のVI-VI線に沿って見た断面図であり、図7図6のVII-VII線に沿って見た断面図であり、図8図5のVIII-VIII線に沿って見た断面図であり、図9は本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置を正面から見た正面図である。
【0027】
浴槽用吐水装置1は、上昇管26から流入した水を、一時的に貯留するとともに自身の内部に広げる貯留室36と、貯留室36と絞り流路38との間に設けられる傾斜部42と、左右方向に延びる幅広形状に形成された吐水口部4と、貯留室36よりも絞られた流路を形成し且つ吐水口部4まで延びる絞り流路38とを有している。
【0028】
貯留室36は、上昇管26の下流端に接続されている。貯留室36は、その内部が左右方向に延びて形成されている。貯留室36は、上面視で、側壁36eの前方側が左右方向に広がるように形成されている。貯留室36の側壁36eは、後方側から前方側に向かうにつれ徐々に前方向きに湾曲するように形成されている。貯留室36は、左右方向に広がる流路を形成しており、貯留室36において水を減速させ且つ一時的に貯留するとともに、水を左右方向に広げるようになっている。
【0029】
貯留室36には、上昇管26の接続部と傾斜部42との間にリブ44が設けられている。このリブ44は、上昇管26の接続部の近傍に配置される。リブ44は、天井面36dから下方に突出する凸部を形成し且つ対向する底面36bとの間の流路断面積を小さくするように形成されている。リブ44は、貯留室36の右側の側壁36eから左側の側壁まで貯留室36内を左右方向に横断するように形成される。なお、リブ44が、側壁36eの近傍領域においてのみ形成されていてもよい。
【0030】
リブ44により、流路断面積が小さくされ、貯留室36に流入して減速された水流を再び加速させ、貯留室36の側壁36eに沿って流れる水が側壁36eの湾曲面から剥離することにより渦流を形成することを抑制する。リブ44と貯留室36の底面36bとの間の流路断面積が、左右方向にほぼ均一に狭くなっているので、水が左右方向においてほぼ均一に前方向きに加速される。リブ44は、下流側の絞り流路38に流入する水の流量を左右方向でほぼ均一にするような左右流量均一手段を形成している。
【0031】
傾斜部42は、貯留室36と絞り流路38との間の底面において、貯留室36から絞り流路38に向かって上昇する傾斜面を形成している。傾斜部42は、左右方向に同じ形状で形成され、いずれの位置においても前後方向の長さ及び傾斜角度が一定に形成されている。傾斜部42は、上下方向の流路断面積を、前方側に向かうにつれて徐々に小さくするように形成されている。よって、傾斜部42は、水の流れを乱すことを抑制しながら徐々に加速させることができる。
【0032】
貯留室36との接続部分である傾斜部42の上流端42aが、吐水口部4の左右端部分4bを結ぶ仮想線Aと平行に延びるように形成されている。絞り流路38との接続部分である傾斜部42の下流端42b(及び絞り流路38の入口38b)も、吐水口部4の左右端部分4bを結ぶ仮想線Aと平行に延びるように形成されている。傾斜部42の上流端42aから絞り流路38の中央部分38cを通り吐水口部4までの前後方向の長さL2は、上流端42aから絞り流路38の左右端部分38dを通り吐水口部4までの前後方向の長さL1よりも短く形成されている。
【0033】
吐水口部4は、浴槽2の上端部2c上で内側且つ水平向きの開口を形成し、左右方向に幅広の水流を浴槽内に座っている状態の使用者の首や肩方向に向けて吐水させる肩湯吐水を行うようになっている。吐水口部4は、上面視で、この吐水口部4の左右方向の中央部分4aが左右端部分4bよりも後方に位置するように湾曲して形成されている。吐水口部4は、上面視で弧状の縦壁2bに沿うように弧状に形成されている。また、吐水口部4は、正面視で、長方形の開口を形成している。吐水口部4の開口の幅は、使用者の肩幅程度に形成され、その開口の高さは数ミリ程度に形成され、吐水口部4から膜状の吐水がなされるようになっている。
【0034】
次に、図5乃至図9により、絞り流路38について詳細に説明する。
絞り流路38は、傾斜部42と吐水口部4との間に形成されている。絞り流路38は、流路の高さが貯留室36及び傾斜部42内の流路の高さよりも低く形成されている。さらに、絞り流路38は、流入した水を加速させるように、貯留室36の流路断面積及び傾斜部42の流路断面積より小さい流路断面積を有する。絞り流路38の底面38aは、ほぼ平坦に形成されている。絞り流路38、傾斜部42及び貯留室36の底面には、水の残留を抑制する水抜き用の溝部40が形成されている。
【0035】
絞り流路38は、上面視で、入口38bが直線状に形成され、出口(吐水口部4)の左右方向の中央部分38cが左右端部分38dよりも後方に位置するように湾曲して形成されている。絞り流路38は、中央部分38cを通過する水の流速の低下を、中央部分38cよりも左右端側の左右端部分38dを通過する水の流速の低下よりも小さくさせる流速調整手段を備えている。絞り流路38の流速調整手段は、絞り流路38の中央部分38cの長さX2を、左右端部分38dの長さX1より短くすることにより形成される。長さX2は、中央部分38cの入口38bから吐水口部4までの長さである。長さX1は、左右端部分38dの入口38bから吐水口部4までの長さである。なお、絞り流路38は、入口38bから吐水口部4までの流路の高さH1を一定に形成している。さらに、絞り流路38の流速調整手段においては、絞り流路38の中央部分38cから左右端部分38dまでの流路の高さH1が一定に形成されている。これにより、流路の高さを変更することなく、中央部分38cを通過する水の圧力損失を、左右端部分38dを通過する水の圧力損失よりも小さくさせることができる。よって、吐水口部4の高さを中央部分38cから左右端部分38dまで一定の高さとすることで、幅広の膜状に吐出された水の膜厚が乱れてしまって吐出された膜状の水が左右に分断されてしまうことを抑制しながらも、吐水口部4の中央部分38cから吐水される水の流速を、吐水口部4の左右端部分38dから吐水される水の流速よりも大きくすることができる。なお、高さH1が一定には、中央部分38cの高さと左右端部分38dの高さとの差が所定範囲内となるほぼ一定の場合、例えば、中央部分38cの高さが、左右端部分38dの高さの90%~110%の高さとなる場合も含まれる。
【0036】
図8に示すように、絞り流路38の入口38bは、長方形形状に形成され、中央部分38cから左右端部分38dまで流路の高さH1が一定に形成されている。また、図9に示すように、絞り流路38の出口である吐水口部4も、正面視で長方形形状に形成され、中央部分38c(中央部分4a)から左右端部分38d(左右端部分4b)まで流路の高さH2が一定に形成されている。吐水口部4の流路の高さH2は絞り流路38の流路の高さH1よりもわずかに低く絞られている。なお、吐水口部4の流路の高さH2は絞り流路38の流路の高さH1と同じにされてもよい。なお、高さH2が一定には、中央部分4aの高さと左右端部分4bの高さとの差が所定範囲内となるほぼ一定の場合、例えば、中央部分4aの高さが、左右端部分4bの高さの90%~110%の高さとなる場合も含まれる。
【0037】
次に、図10及び図11により、浴槽用吐水装置1による吐水口部4からの吐水の動作(作用)を説明する。
使用者Hの操作部30の操作により制御部28はポンプ10を駆動させる。ポンプ10は、浴槽2内の水を第1流路8から吸引し、下流側の第2流路14に圧送する。水は、第2流路14からジェットノズル34に供給され、ジェットノズル34から噴射された湯水がジェットポンプ作用によりチャンバー部32内の水を引き込みながら上昇管26を上昇し、貯留室36内に流入する。
【0038】
図10に示すように、上昇管26から貯留室36内に流入した水は、矢印F1に示すように、貯留室36において減速されるとともに左右方向に広がるように流れる。この水は、側壁36eの湾曲した面から剥離する等して渦流を形成する前に、リブ44と底面36bとの間に流入する。このとき、リブ44と底面36bとの間の流路断面積が、狭くなっているので、水が、矢印F2に示すように、加速される。F2はリブ44の下部を流れるため点線により示す。このとき、リブ44と底面36bとの間の流路断面積は、左右方向においてほぼ均一に狭くなっているので、水が左右方向のいずれの位置においてもほぼ均一に加速される。このとき、リブ44は各水流のベクトルを維持したまま加速させている。従って、水が加速されることにより、渦流を形成してしまうことを抑制することができるとともに、左右方向においてほぼ均一に整流された流れを形成することができる。
【0039】
リブ44を通過した水は、矢印F3に示すように、貯留室36内で再減速されるとともにさらに左右方向に広がるように流れる。このとき、水は、渦流を形成してしまうほどに乱れることは抑制され、左右方向のいずれの位置においてもほぼ均一に整流された流れを維持することができる。
【0040】
傾斜部42は、流路断面積を、前方側に向かうにつれて徐々に小さくするように形成されている。よって、左右方向に広がった水は、矢印F4に示すように、傾斜部42において再び徐々に加速される。また、貯留室36と傾斜部42との接続部分である傾斜部42の上流端42aが、吐水口部4の左右端部分4bを結ぶ仮想線Aと平行に延びるように形成されている。よって、水が乱れを抑制し且つ水流のベクトルを維持したまま上流端42aから傾斜部42に流入される。従って、水が仮想線Aに対して比較的均等に広がるように流れることができる。また、絞り流路38と傾斜部42との接続部分である傾斜部42の下流端42b(及び絞り流路38の入口38b)が、仮想線Aと平行に延びるように形成されている。よって、水が乱れを抑制し且つ水流のベクトルを維持したまま下流端42bから絞り流路38に流入される。従って、水が仮想線Aに対して比較的均等に広がるように流れることができる。よって、水の流れが、傾斜部42において、乱されることを抑制しながら徐々に加速され、左右方向にほぼ均一に整流された流れを維持した状態で絞り流路38に流入される。
本実施形態のような傾斜部42の構造によれば、後述する比較例のように傾斜部42の上流端42aや下流端42bが吐水口部4の形状に対応して湾曲して形成されている場合のように湾曲した傾斜部42に沿って水流のベクトルが曲がり左右均一な吐水が行えなくなることを防ぐことができる。
なお、「平行」には、絞り流路38と傾斜部42との接続部分が、仮想線Aに対して比較的小さい角度範囲内で傾斜するほぼ平行な場合、例えば、絞り流路38と傾斜部42との接続部分が、仮想線Aに対して-5度~5度の角度で傾斜する場合も含まれる。同様に、「平行」には、貯留室36と傾斜部42との接続部分が、仮想線Aに対して比較的小さい角度範囲内で傾斜するほぼ平行な場合、例えば、貯留室36と傾斜部42との接続部分が、仮想線Aに対して-5度~5度の角度で傾斜する場合も含まれる。
【0041】
傾斜部42から流入した水は、絞り流路38においてさらに加速される。水は、矢印F5に示すように、絞り流路38の入口38bから、流入したときのほぼ均一に整流された流れ方向を維持した状態で吐水口部4まで流れる。このように絞り流路38は、基本的には水を加速する機能を有するが、例えば底面38a(図5参照)や天井面等の流路の壁面の抵抗による圧力損失により、絞り流路38を通過する水は流速が所定量低下される。図6に示すように、絞り流路38の流速調整手段により、絞り流路38の中央部分38cを通過する水の圧力損失を、左右端部分38dを通過する水の圧力損失よりも小さくさせることができる。よって、中央部分38cを通過する水の流速の低下が、左右端部分38dを通過する水の流速の低下よりも小さくされている。よって、吐水口部4の中央部分4aから吐水される水の流速を、左右端部分4bから吐水される水の流速よりも大きくすることができる。
【0042】
図10において矢印F6で示し、さらに、図11にも示すように、吐水口部4から吐水された水は、ほぼ一定の幅及び厚みの安定した帯状(水膜状)の流水の流れとして空中に放物線を描いて下方に流下する。吐水口部4の中央部分4aから吐水される水の飛距離は、吐水口部4の左右端部分4bから吐水される水の飛距離よりも大きくされる。よって、浴槽2内に座った姿勢の使用者Hの肩、背中等の上半身への着水範囲Bは左右方向に直線状に形成された範囲となる。着水範囲Bは左右方向においてほぼ同じ高さとなり、左右方向において比較的均一となる。使用者Hに対して線状の吐水がなされるため、吐水された水を使用者Hに効率的に着水させることができ、また使用者Hに比較的均一な浴び心地を与えることができ、使用者Hの浴び心地を向上させることができる。
【0043】
次に、図13により、比較例として、左右方向において均一な長さの絞り流路が設けられている浴槽用吐水装置201の構造及び浴槽用吐水装置201による吐水口部204からの吐水の動作(作用)を説明する。
図13は、比較例として、左右方向において均一な長さの絞り流路が設けられている浴槽用吐水装置の内部流路を概略的に示すと共に、貯留室に流入した水が、吐水口部から吐水される際に吐水形状が湾曲される様子を示す図である。
浴槽用吐水装置201は、貯留室236の下流側に設けられた傾斜部242が吐水口部204の形状に近い形まで湾曲して形成されている。傾斜部242の上流端242a及び下流端242bが、湾曲して形成されている。よって、傾斜部242に流入する水のベクトルが、湾曲した傾斜部242に沿って曲がり左右均一な吐水が行えなくなる。
絞り流路238は、上面視で、入口238b及び出口(吐水口部204)の左右方向の中央部分238cが左右端部分238dよりも後方に位置するように湾曲して形成されている。絞り流路238は、中央部分238cの前後方向の長さと、左右端部分238dの前後方向の長さとが同じ長さに形成される。絞り流路238は、絞り流路238の中央部分238cから左右端部分238dまでの流路の高さHを一定に形成している。
【0044】
貯留室236内に流入した水は、減速されるとともに左右方向に広がるように流れる。貯留室236から傾斜部242に流入した水のベクトルは、湾曲した傾斜部242に沿って曲がる。傾斜部242から流入した水は、絞り流路238においてさらに加速される。このとき、絞り流路238の中央部分238cを通過する水の圧力損失は、左右端部分238dを通過する水の圧力損失とほぼ同じとなっている。よって、中央部分238cを通過する水の流速の低下と、左右端部分238dを通過する水の流速の低下とがほぼ同じとなっている。よって、吐水口部204の中央部分204aから吐水される水の流速と、吐水口部204の左右端部分204bから吐水される水の流速とがほぼ同じとなっている。
【0045】
図13において、矢印F7に示すように、吐水口部204からの吐水形状が湾曲される。吐水口部204の中央部分204aから吐水される水の飛距離は、左右端部分204bから吐水される水の飛距離とほぼ同じとなる。よって、浴槽内に座った姿勢の使用者Hの肩、背中等の上半身への着水範囲Cが使用者Hの首周りにU字形に湾曲した範囲となる。着水範囲Cは、使用者Hの後方から見たときU字形状であり、左右中央部分がやや下方に位置し、左右端部分がやや上方に位置している。従って、吐水の一部が使用者Hの肩に対して前後に横切るように着水する。さらに、吐水された水流の両端は、使用者Hの肩を飛び越えて使用者Hの前方の水面領域Dに着水する。使用者Hの肩を飛び越える水は、肩湯として浴びることのできない無駄水となる。また、水面領域Dに着水する水は、水面で水はねを生じさせ、使用者Hに不快感を生じさせる可能性がある。
【0046】
上述した本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置1によれば、絞り流路38は、絞り流路38の中央部分38cを通過する水の流速の低下を、左右端部分38dを通過する水の流速の低下よりも小さくさせるような流速調整手段を備えているので、吐水口部4の中央部分4aから吐水される水の流速を、吐水口部4の左右端部分4bから吐水される水の流速よりも大きくすることができる。よって、吐水口部4の中央部分4aから吐水される水を、左右端部分4bから吐水される水よりも前方の位置に吐水することができる。従って、本発明によれば、吐水口部4の開口部分の中央部分4aが左右端部分4bよりも後方に位置するように吐水口部4が湾曲して形成されていても、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる。
また、本発明によれば、貯留室36に流入した水は貯留室36において左右方向に広げられた後に、流速調整手段を備える絞り流路38を通過する。これにより、左右方向に幅広の吐水の水流が形成されやすくなると共にこの水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる。
【0047】
また、本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置1によれば、絞り流路38の流速調整手段は、絞り流路38の中央部分38cの前後方向の長さX2を、左右端部分38dの前後方向の長さX1より短くすることにより形成される。これにより、絞り流路38の中央部分38cを通過する水の圧力損失を、左右端部分38dを通過する水の圧力損失よりも小さくさせることができる。よって、吐水口部4の中央部分4aから吐水される水の流速を、吐水口部4の左右端部分4bから吐水される水の流速よりも大きくすることができる。従って、本発明によれば、吐水口部4の開口部分の中央部分4aが左右端部分4bよりも後方に位置するように吐水口部4が湾曲して形成されていても、比較的簡単な構成により、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が湾曲されにくくすることができる。
【0048】
さらに、本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置1によれば、吐水口部4は、中央部分4aから左右端部分4bまでの流路の高さを一定にすることにより形成される。これにより、吐水口部4の中央部分4aを通過する水の圧力損失を、左右端部分4bを通過する水の圧力損失よりも小さくさせることができる。よって、本発明によれば、吐水口部4の高さを中央部分4aから左右端部分4bまで一定の高さすることで、幅広の膜状に吐出された水の膜厚が乱れてしまって吐出された膜状の水が左右に分断されてしまうことを抑制しながらも、吐水口部4の中央部分4aから吐水される水の流速を、吐水口部4の左右端部分4bから吐水される水の流速よりも大きくすることができる。
【0049】
さらに、本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置1によれば、傾斜部42は、絞り流路38に向かう水が加速され且つ乱流を発生させることを抑制する。さらに、この傾斜部42と絞り流路38との接続部分が、吐水口部4の左右端部分4bを結ぶ仮想線Aと平行に延びるように形成されている。従って、絞り流路38に、中央部分38cを通過する水の流速の低下を、左右端部分38dを通過する水の流速の低下よりも小さくさせるような流速調整手段が形成されている場合においても、傾斜部42から絞り流路38に流入する水が、仮想線Aに対して比較的均等に広がるように流れることができる。よって、本発明によれば、傾斜部42から絞り流路38に流れる水が、水の流速の低下が小さい中央部分38cの流れに引かれて、縮流を生じさせてしまうことを抑制できる。これにより、使用者Hの肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が乱れることを抑制できる。
【0050】
さらに、本発明の第1実施形態による浴槽用吐水装置1によれば、傾斜部42によって、絞り流路38に向かう水が加速され且つ乱流を発生させることを抑制する。さらに、貯留室36と傾斜部42との接続部分が、吐水口部4の左右端部分4bを結ぶ仮想線Aと平行に延びるように形成されている。従って、絞り流路38に、中央部分38cを通過する水の流速の低下を、左右端部分38dを通過する水の流速の低下よりも小さくさせるような流速調整手段が形成されている場合においても、貯留室36から傾斜部42に流れる水が、仮想線Aに対して比較的均等に広がるように流れることができる。よって、本発明によれば、傾斜部42から絞り流路38に流入する水が、比較的均等に広がるように流れ、水の流速の低下が小さい中央部分38cの流れに引かれて、縮流を生じさせてしまうことを抑制できる。これにより、使用者Hの肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が乱れることを抑制できる。
【0051】
次に、図12により、本発明の第2実施形態による浴槽用吐水装置を説明する。第2実施形態は、本発明による浴槽用吐水装置の絞り流路及び吐水口部の高さを変化させて形成した例である。図12は本発明の第2実施形態による浴槽用吐水装置を正面から見た正面図である。
第2実施形態による浴槽用吐水装置101は、上述した第1実施形態による浴槽用吐水装置1と構造がほぼ同じであるため、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0052】
図12に示すように、浴槽用吐水装置101の絞り流路138は、絞り流路138の中央部分138cの流路の高さY2よりも左右端部分138dの流路の高さY1が高くなるように形成され、このような構造により流速調整手段を形成している。また、吐水口部104も、中央部分104aの流路の高さY2よりも左右端部分104bの流路の高さY1が高くなるように形成され、このような構造により流速調整手段を形成している。絞り流路138は、中央部分138cにおいては入口138bから吐水口部104まで流路の高さY2を一定に形成している。さらに、絞り流路138は、左右端部分138dにおいては入口138bから吐水口部104まで流路の高さY1を一定に形成している。よって、絞り流路138の中央部分138cを通過する水の圧力損失を、左右端部分138dを通過する水の圧力損失よりも小さくさせることができる。絞り流路138の中央部分138cを通過する水の流速の低下が、左右端部分138dを通過する水の流速の低下よりも小さくされている。よって、吐水口部104の中央部分104aから吐水される水の流速を、吐水口部104の左右端部分104bから吐水される水の流速よりも大きくすることができる。
【0053】
上述した本発明の第2実施形態による浴槽用吐水装置101によれば、絞り流路138は、絞り流路138の中央部分138cを通過する水の流速の低下を、左右端部分138dを通過する水の流速の低下よりも小さくさせるような流速調整手段を備えているので、吐水口部104の中央部分104aから吐水される水の流速を、吐水口部104の左右端部分104bから吐水される水の流速よりも大きくすることができる。よって、吐水口部104の中央部分104aから吐水される水を、左右端部分104bから吐水される水よりも前方の位置に吐水することができる。従って、本発明によれば、吐水口部104の開口部分の中央部分104aが左右端部分104bよりも後方に位置するように吐水口部104が湾曲して形成されていても、使用者の肩付近に向けて吐水される水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる。
また、本発明によれば、貯留室36に流入した水は貯留室36において左右方向に広げられた後に、流速調整手段を備える絞り流路138を通過する。これにより、左右方向に幅広の吐水の水流が形成されやすくなると共にこの水流の吐水形状が湾曲されにくく且つ線状にされることができ、使用者の浴び心地を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 浴槽用吐水装置
2 浴槽
3 浴槽装置
4 吐水口部
36 貯留室
38 絞り流路
38c 中央部分
38d 左右端部分
42 傾斜部
42a 上流端
42b 下流端
101 浴槽用吐水装置
104 吐水口部
104a 中央部分
104b 左右端部分
138 絞り流路
138c 中央部分
138d 左右端部分
201 浴槽用吐水装置
204 吐水口部
204a 中央部分
204b 左右端部分
238 絞り流路
238c 中央部分
238d 左右端部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13