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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20220511BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E03D13/00
E03D5/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018033360
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019148112
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祐介
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-093274(JP,U)
【文献】特開昭62-276138(JP,A)
【文献】特開2017-222987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を受けるボウル面と、
その底部に形成される排水口と、
洗浄水を吐水して尿を希釈すると共に上記ボウル面を洗浄する吐水装置と、
この吐水装置による洗浄水の吐水を制御する制御部と、
使用者を検知するセンサと、
上記ボウル面に使用者が放尿すべきターゲットマークを表示する表示手段と、
を有し、
上記制御部は、上記センサが使用者を検知している間、上記吐水装置から洗浄水を吐水して尿を希釈し、上記センサが使用者を検知しなくなった後に、上記吐水装置から洗浄水を吐水して上記ボウル面を洗浄し、
上記制御部は、洗浄水を吐水して尿を希釈するとき、上記吐水装置を制御して、上記ターゲットマークが表示された領域及びこのターゲットマークの所定幅で下方に延びる領域からなる吐水領域の少なくとも一部を通過するような洗浄水の流れを形成し、
上記吐水装置は、上記ターゲットマークの位置に対して左右方向に偏心して配置された吐水口を備え、
上記制御部は、尿を希釈するための第1の吐水形態として、上記吐水装置を制御して、この吐水装置の上記吐水口から第1の瞬間流量の洗浄水を吐水し、この第1の瞬間流量の洗浄水は上記ターゲットマークが表示された領域を流れることなく上記ターゲットマークの所定幅で下方に延びる領域を流れて尿を希釈させることを特徴とする小便器。
【請求項2】
上記制御部は、上記第1の吐水形態として、上記吐水装置を制御して、上記吐水装置の吐水口から上記ボウル面の正面部を左又は右方向に湾曲する弧を描きながら流下した後に上記ターゲットマークの所定幅で下方に延びる領域を流れるように上記第1の瞬間流量の洗浄水を吐水して尿を希釈させる、請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
上記制御部は、上記吐水装置の吐水口から吐水される洗浄水の瞬間流量を変更可能であり、
上記制御部は、尿を希釈するための第2の吐水形態として、上記吐水装置を制御して、上記吐水装置の吐水口から上記ターゲットマークが表示された領域の少なくとも一部を流れるように第2の瞬間流量の洗浄水を吐水して尿を希釈させる、請求項1に記載の小便器。
【請求項4】
上記制御部は、上記第2の吐水形態として、上記吐水装置を制御して、上記吐水装置の吐水口から上記ターゲットマークが表示された領域の全域を流れるように洗浄水を吐水して尿を希釈させる、請求項3に記載の小便器。
【請求項5】
上記制御部は、上記第2の吐水形態として、上記吐水装置を制御して、上記吐水装置の吐水口から洗浄水が広がった後に縮小し、その縮小する部分が上記ターゲットマークが表示された領域を流れるように洗浄水を吐水して尿を希釈させる、請求項3又は4に記載の小便器。
【請求項6】
上記表示手段は、上記ボウル面に光を照射することにより上記ターゲットマークを表示する光照射装置であり、
上記制御部は、上記光照射装置を制御して、洗浄水を吐水して尿を希釈しているときに上記ボウル面に上記ターゲットマークを表示させる、請求項1乃至5の何れか1項に記載の小便器。
【請求項7】
上記制御部は、上記光照射装置による光の照射を開始させた後に、上記吐水装置を制御して、尿を希釈するための洗浄水の吐水を開始させる、請求項6に記載の小便器。
【請求項8】
上記制御部は、尿を希釈するための洗浄水の吐水を終了させる前に、上記光照射装置による光の照射を終了させる、請求項6又は7に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器に係わり、特に、洗浄水により尿を希釈する小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
小便器を使用した後に、小便器に洗浄水を流しても放尿された尿が小便器の排水トラップや壁裏の横引配管内に残ることがある。排水トラップに流入する尿の濃度が高ければ高いほど尿が残存する可能性が高まり、尿石が発生して配管内が閉塞される可能性がある。そこで、特許文献1の小便器においては、使用者が放尿している間に小便器のボウル面に洗浄水を供給することによって、排水トラップに流入する前に尿を希釈させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-149415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の節水化により、尿の希釈に使用される洗浄水の水量を減らすことが要請されている。上述した特許文献1の小便器において節水化を行うと、洗浄水をボウル面の一部にしか流すことが出来ないので、使用者の放尿方向によっては尿が希釈されず、高い濃度の状態で排出されてしまうという問題がある。即ち、節水化した場合、十分に尿を希釈することができないという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、節水化された場合においても尿を十分に希釈することができる小便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、尿を受けるボウル面と、その底部に形成される排水口と、洗浄水を吐水して尿を希釈すると共にボウル面を洗浄する吐水装置と、この吐水装置による洗浄水の吐水を制御する制御部と、使用者を検知するセンサと、ボウル面に使用者が放尿すべきターゲットマークを表示する表示手段と、を有し、制御部は、センサが使用者を検知している間、吐水装置から洗浄水を吐水して尿を希釈し、センサが使用者を検知しなくなった後に、吐水装置から洗浄水を吐水してボウル面を洗浄し、制御部は、洗浄水を吐水して尿を希釈するとき、吐水装置を制御して、ターゲットマークが表示された領域及びこのターゲットマークの所定幅で下方に延びる領域からなる吐水領域の少なくとも一部を通過するような洗浄水の流れを形成し、吐水装置は、ターゲットマークの位置に対して左右方向に偏心して配置された吐水口を備え、制御部は、尿を希釈するための第1の吐水形態として、吐水装置を制御して、この吐水装置の吐水口から第1の瞬間流量の洗浄水を吐水し、この第1の瞬間流量の洗浄水はターゲットマークが表示された領域を流れることなくターゲットマークの所定幅で下方に延びる領域を流れて尿を希釈させることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、使用者がターゲットマークに向けて放尿するので、尿の着地点が安定する。使用者が放尿しているときに、ターゲットマークが表示された領域及びこのターゲットマークの所定幅で下方に延びる領域からなる吐水領域の少なくとも一部を洗浄水が通過するので、排水口から排出される前に、ターゲットマークに向けて放尿された尿が洗浄水と混ざって希釈される。したがって、節水化した場合、尿を十分に希釈させることができる。
また、尿が着地するターゲットマークではない領域を洗浄水が流れるので、尿が洗浄水と衝突して飛び跳ねることを抑制することができると共に、尿を十分に希釈させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、制御部は、第1の吐水形態として、吐水装置を制御して、吐水装置の吐水口からボウル面の正面部を左又は右方向に湾曲する弧を描きながら流下した後にターゲットマークの所定幅で下方に延びる領域を流れるように第1の瞬間流量の洗浄水を吐水して尿を希釈させる。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、制御部は、吐水装置の吐水口から吐水される洗浄水の瞬間流量を変更可能であり、制御部は、尿を希釈するための第2の吐水形態として、吐水装置を制御して、吐水装置の吐水口からターゲットマークが表示された領域の少なくとも一部を流れるように第2の瞬間流量の洗浄水を吐水して尿を希釈させる。
このように構成された本発明によれば、尿が着地するターゲットマークの少なくとも一部を洗浄水が流れるので、ターゲットマークへと放尿された尿が洗浄水と混ざって希釈される。
【0009】
本発明において、好ましくは、制御部は、第2の吐水形態として、吐水装置を制御して、吐水装置の吐水口からターゲットマークが表示された領域の全域を流れるように洗浄水を吐水して尿を希釈させる。
このように構成された本発明によれば、尿が着地するターゲットマークの全域を洗浄水が流れるので、尿が洗浄水とより確実に混ざって希釈される。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、制御部は、第2の吐水形態として、吐水装置を制御して、吐水装置の吐水口から洗浄水が広がった後に縮小し、その縮小する部分がターゲットマークが表示された領域を流れるように洗浄水を吐水して尿を希釈させる。
このように構成された本発明によれば、洗浄水が広がった後に縮小するように流れる場合においても、縮小する部分がターゲットマークを流れるので、尿が洗浄水と混ざって希釈される。
【0011】
本発明において、好ましくは、表示手段は、ボウル面に光を照射することによりターゲットマークを表示する光照射装置であり、制御部は、光照射装置を制御して、洗浄水を吐水して尿を希釈しているときにボウル面にターゲットマークを表示させる。
このように構成された本発明によれば、ターゲットマークが表示されたタイミングに合わせて放尿するように使用者を誘導し、そのタイミングでは洗浄水が流れているので、尿が洗浄水と確実に混ざって希釈される。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、制御部は、光照射装置による光の照射を開始させた後に、吐水装置を制御して、尿を希釈するための洗浄水の吐水を開始させる。
このように構成された本発明によれば、予め使用者の放尿方向を定めるので、尿が洗浄水と確実に混ざって希釈される。
【0013】
本発明において、好ましくは、制御部は、尿を希釈するための洗浄水の吐水を終了させる前に、光照射装置による光の照射を終了させる。
このように構成された本発明によれば、尿軌道が下がり、ターゲットマークを表示する必要がなくなった時点で照射を終了させ、光照射装置の寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の小便器によれば、節水化された場合においても尿を十分に希釈させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態による小便器を示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態による小便器を示す断面図である。
図3】本発明の第一実施形態による小便器の自動洗浄ユニットを示す概略図である。
図4】本発明の第一実施形態による小便器の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の第一実施形態による小便器の吐水形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図3を参照して、本発明の第一実施形態による小便器を説明する。
本明細書において、小便器の「背面側」とは、小便器の、壁面に当接する側を示し、小便器の「正面側」とは、小便器の、尿を受ける側(「背面側」の反対側)を示す。また、小便器の「左右方向」とは、小便器が設置される壁面と平行で、水平な方向を示す。
【0017】
図1に示すように、本発明の第一実施形態による小便器1は、壁面Wに取り付けて使用される壁掛けタイプの小便器であり、その底面は床面よりも上方に位置している。また、小便器1は陶器製の小便器である。小便器1は、全体として、壁面Wに当接する背面から前端部にかけて幅が狭くなるように形成され、小便器1の内側には尿を受けるボウル面2が形成され、さらに、ボウル面2の左右方向中央の上方には吐水装置4が取り付けられている。小便器1は、使用者が放尿した後、吐水装置4から吐出される洗浄水により、ボウル面2を洗浄するようになっている。
【0018】
小便器1のボウル面2は、壁面Wと概ね平行に延びる正面部2aと、この正面部2aの両側から、小便器1の前端部に向けて延びる側面部2bを備えている。側面部2bは、上端から下方に向けて幅が広くなる三角形状に形成されていると共に、各側面部2bの上方は開放されており、ボウル面2には「天井面」に相当する部分がない構造となっている。また、正面部2aは、その上部においては平面状に形成され、下方にかけて前端部側(使用者が立つ側)にせり出すように湾曲して形成されている。さらに、ボウル面2は、その正面部2aが各側面部2bと滑らかに連なるように形成されている。
【0019】
図2に示すように、小便器1のボウル面2の底部には、ボウル面2が受けた尿及び洗浄水を小便器1外に排出する排水口6が設けられている。小便器1には、排水口6と連通する排水管路8が設けられ、この排水管路8は、下方に向けて延びる下降管8aと、この下降管8aの下端から上方に向けて延びる上昇管8bと、この上昇管の上端から壁面Wに向けて水平に延びる排出管8cを備えている。この排出管8cは、外部に位置する排水配管(図示せず)に接続されており、この排水配管は、壁面Wの中を通って壁面Wから突出するように設けられている。さらに、小便器1の排水口6には、複数の開口部(図示せず)が形成された円盤である目皿10が配置されている。
【0020】
次に、図3を参照して、小便器1の自動洗浄ユニットを詳細に説明する。
図3に示すように、小便器1の自動洗浄ユニット9は、人体や尿を検知するマイクロ波センサ42と、上述した洗浄水をボウル面2へ吐水する吐水装置4と、ボウル面2に光を照射する表示手段である光照射装置30と、マイクロ波センサ42からの信号に基づき吐水装置4及び光照射装置30を制御する制御部40と、を備えている。
【0021】
吐水装置4は、尿を希釈するための洗浄水(希釈水)及び小便器1のボウル面2を洗浄するための洗浄水(洗浄水)を小便器1へ供給する。吐水装置4は、尿を希釈するための洗浄水が通過する供給路である希釈用水路系統12と、ボウル面2を洗浄するための洗浄水が通過する供給路である洗浄用水路系統13と、ボウル面2の左右方向の中央に設けられボウル面2上に洗浄水を吐水するスプレッダ14と、を備えている。
【0022】
希釈用水路系統12は、水道管16と接続される第1供給路18と、この第1供給路18に設けられ、尿を希釈するための洗浄水の小便器への吐水/止水を制御すると共に吐水される洗浄水の瞬間流量を変更する第1電磁弁20と、洗浄水をボウル面2上に吐水する第1吐水口22(図5参照)とを備えている。第1吐水口22から吐水される洗浄水の瞬間流量は、第1供給路18に設けられる定流量弁(図示せず)又は第1電磁弁20にて規定され、瞬間流量は、0.1~8リットル/分の範囲で設定される。
【0023】
第1吐水口22は、スプレッダ14を小便器1に取り付けた状態において、左右方向の中央線CLから左方向に所定間隔Xだけ偏心して配置されている(図5参照)。第1吐水口22は、円形で形成され、下方に向けて開口している。それにより、尿を希釈するための洗浄水は、中央線CLから左方向に偏心した位置から下方に流れるようになっている(図5のW1,W2参照)。なお、本実施形態は、第1吐水口22を左方向に偏心して配置させているが、これに代えて、右方向に偏心して配置させても、第1吐水口22を左右両側に偏心させた状態で2つ設けても良い。
【0024】
洗浄用水路系統13は、水道管16と接続される第2供給路24と、この第2供給路24に設けられ、ボウル面2を洗浄するための洗浄水の吐水/止水を制御する第2電磁弁26と、洗浄水をボウル面2上に吐水する第2吐水口28とを備えている。第2吐水口28から吐水される洗浄水の瞬間流量は、第2供給路14に設けられる定流量弁(図示せず)で規定され、洗浄水の瞬間流量は、8~17リットル/分の範囲で設定される。
【0025】
第2吐水口28は、スプレッダ14を小便器1に取り付けた状態において、中央線CLと同軸上に配置されている。第2吐水口28は、ボウル面2の正面部2aに概ね沿って延びる薄型の開口であり、下方に向けて扇形に広がるように形成される。第2吐水口28は、下方且つボウル面2の正面部2に向けて僅かに背面側に傾斜して開口している。それにより、ボウル面2を洗浄するための洗浄水は、吐水装置4から下方に広がるように流れるようになっている(図5のW3参照)。
【0026】
スプレッダ14は、円筒状で形成され、ボウル部2の正面部2aの上方に配置されている。また、スプレッダ14は、ボウル面2の正面部2aの左右方向の中央線CLと同軸上に配置されている。
【0027】
光照射装置30は、LED光源である発光ダイオード32と、この発光ダイオード32から発せられた光を所定の広がり角度で照射させるレンズ34とを備えており、吐水装置4のスプレッダ14に内蔵されている。また、光照射装置30は、吐水装置4の各供給路18,24及び各吐水口22,28の前方側に配置されている。光照射装置30は、ボウル面2の下方領域に向けた光軸Lに沿って光を照射することにより、中央線CLと同軸上の正面部2aの下方領域に輝点T(ターゲットマーク)を形成し(図2参照)、使用者が放尿すべき位置を表示するようになっている。それにより、使用者は、輝点Tに向け尿軌道Uを描いて放尿する。
【0028】
発光ダイオード32は、発光する光の色を変更可能な多色タイプのものであり、制御部40からの指令信号に基づいて、光の色や発光パターンを変更して照射する態様を変更することができるようになっている。光照射装置30のレンズ34から射出される光の光軸Lは、吐水装置4を取り付ける正面部2aに対し、所定の傾斜角度αだけ小便器1の正面部2aから正面側に傾斜するように向けられている。
【0029】
マイクロ波センサ42は、電波を送信(放射)する送信部44と、その反射波を受信する受信部46とを備えており、これらが、ボウル面2の背面側に配置されている。マイクロ波センサ42は、ブラケット(図示せず)を介して吐水装置4と一体となって小便器1の背面側に取り付けられている。マイクロ波センサ42は、送信部44から正面側下方に向けてボウル面2を透過する電波(マイクロ波)を送信するようになっている。マイクロ波センサ42は、送信された電波が使用者の人体や放尿された尿に衝突して返ってくる反射波を受信部46で受信するようになっている。マイクロ波センサ42は、反射波を受信すると、制御部40に人体検知信号を送信するようになっている。なお、マイクロ波センサ42に代えて、赤外線センサ、超音波センサ等を使用しても良い。
【0030】
制御部40は、マイクロプロセッサ、タイマ、メモリ、インターフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム等(以上、図示せず)により構成されている。制御部40は、マイクロ波センサ42からの検知信号に基づいて、光照射装置30へ点灯/消灯信号を送信し、所定タイミング及び所定パターンの光を照射させるようになっている。また、制御部40は、マイクロ波センサ42の検知信号に基づいて、吐水装置4へ洗浄水の吐水開始/終了信号を送信して、第1電磁弁20及び第2電磁弁26を所定タイミングで開閉動作させるようになっている。また、制御部40は、流量調節スイッチ(図示せず)が操作されることにより、第1電磁弁20を調節された所定開度で開弁させるようになっている。
【0031】
次に、本発明の実施形態による小便器1の動作フローについて説明する。図4において、Sは各ステップを示す。
【0032】
まず、図4に示すように、S1において、使用者を検知したか否かを判定する。具体的には、制御部40は、マイクロ波センサ42からの人体検知信号に基づいて、小便器1から所定距離以内に使用者がいるか否かを判定する。制御部40は、マイクロ波センサ42から人体検知信号を受信していない場合には、使用者を検知していない(使用者が小便器1に接近していない)と判定して、使用者を検知したか否かの判定を継続する。使用者を検知した場合、即ち、制御部40が、マイクロ波センサ42から人体検知信号を受信した場合には、使用者が小便器1に接近して放尿する意思があると判定して、S2に進む。なお、本実施形態においては、人体検知信号として使用者の人体を検知しているが、これに代えて、使用者の尿を検知してもよい。
【0033】
次に、S2において、制御部40は、人体検知信号の受信と同時に、光照射装置30に点灯信号を送信し、光照射装置30の発光ダイオード32を点灯させる(光照射を開始する)。それにより、光照射装置30から光が照射されて、ボウル面2の正面部2aの下方領域に輝点Tが表示される。
【0034】
次に、S3に進み、制御部40は、人体検知信号を受信した時点から待機時間を経過した後に、吐水装置4の第1電磁弁20に開弁信号を送信して、予め規定された第1の所定開度で第1電磁弁20を開弁し、希釈するための洗浄水の吐水を開始する。待機時間は、制御部40のメモリに予め記憶されており、タイマでカウントされる。待機時間の長さは、約6~11秒であり、使用者が小便器に接近して放尿を開始するまでに要する準備時間として設定されている。第1電磁弁20が開弁されると、使用者が放尿をしている間に第1吐水口22からボウル面2の一部に向けて尿を希釈するための洗浄水が吐水される。なお、本実施形態においては、タイマによって第1電磁弁20を開弁させているが、これに代えて、マイクロ波センサ42により尿を検知して、使用者が放尿を開始した時点で第1電磁弁20を開弁させても良い。
【0035】
次に、S4に進み、所定時間が経過したか否かを判定する。具体的には、制御部40が人体検知信号を受信した時点から所定時間を経過したか否かを判定する。ここで、所定時間は、制御部40のメモリに予め記憶されており、タイマでカウントされる。所定時間の長さは、約9~14秒であり、使用者が小便器に接近してから放尿を開始して一定の尿軌道で放尿している(尿の勢いが強い)間の時間として設定されている。即ち、所定時間経過後、使用者により放尿された尿の尿軌道は下がる(尿の勢いが弱まる)。所定時間が経過していない場合、制御部40は、タイマによるカウントを続ける。所定時間が経過した場合(S4;Yes)、S5に進む。
【0036】
S5において、制御部40は、所定時間経過と同時に、光照射装置30に消灯信号を送信して、光照射装置30の発光ダイオード32を消灯させ、光照射を終了する。それにより、ボウル面2の下方領域に表示されていた輝点Tが消滅する。なお、本実施形態においては、タイマによって光照射装置30を消灯させているが、これに代えて、マイクロ波センサ42により尿を検知して、尿軌道が下がってきた時点で光照射装置30を消灯させても良い。
【0037】
次に、S6に進み、使用者を検知しなくなったか否か(使用者非検知)を判定する。具体的には、制御部40は、制御部40は、人体検知信号に基づいて、使用者が小便器から所定距離以上離れたか否かを判定する。制御部40が人体検知信号を受信している場合、使用者が小便器1を未だ使用していると判定して、継続して信号を受信し続ける。制御部40が人体検知信号を受信しなくなった場合、使用者が小便器1の使用を終え去ったと判定して、S7に進む。
【0038】
S7において、制御部40は、吐水装置4の第1電磁弁20に閉弁信号を送信して、第1電磁弁20を閉弁させ、それにより、第1吐水口22からの尿を希釈するための洗浄水の吐水が終了する。
【0039】
次に、S8に進み、制御部40は、第1電磁弁20の閉弁信号の送信と同時に、吐水装置4の第2電磁弁26に開弁信号を送信して、予め定め規定された所定開度で第2電磁弁26を開弁させる。それにより、洗浄水が第2吐水口28からボウル面2の全体に吐水されて小便器1の洗浄(便器洗浄)が行われる。制御部40は、所定時間経過後に、吐水装置4の第2電磁弁26に閉弁信号を送信して、第2電磁弁26を閉弁させる。それにより、第2吐水口28からの洗浄水の吐水が停止される。以上により、小便器1の動作を終了する。
【0040】
次に、図5を参照して、本実施形態による小便器1における尿を希釈するための洗浄水及びボウル面2を洗浄するための洗浄水の吐水形態について説明する。図5において、W1は尿を希釈するための洗浄水の第1の吐水形態、W2は、尿を希釈するための洗浄水の第2の吐水形態、W3は、ボウル面2を洗浄するための洗浄水の吐水形態を表している。
【0041】
まず、図5において、ボウル面2の正面部2aの下方領域には、使用者が放尿すべきターゲットマークとしての輝点Tが表示されている。輝点Tは、所定径(約30mm)の円形であり、使用者により放尿される尿の最大断面積より大きな表面積で形成されている。輝点Tの下方には、使用者が輝点Tに向けて放尿したとき、輝点Tに衝突した尿が排水口6に向けて流れる領域Aが設定されている。領域Aは、輝点Tの直径と略同一の左右方向の所定幅で設定され、輝点Tからボウル面に沿って排水口まで下方向に延びる領域として設定されている(図2参照)。
【0042】
次に、尿を希釈するための洗浄水の第1の吐水形態は、上述したS3~S7において、制御部40が第1電磁弁20を第1の開度で開弁させた場合の形態である。この場合、洗浄水は、中央線CLより所定間隔Xだけ偏心された第1吐水口22から第1の瞬間流量(3~5リットル/分、この好ましくは3.5~4.5リットル/分)で吐水される(図5のW1参照)。洗浄水は、ボウル面2の正面部2a上を左方向に緩やかに湾曲する弧を描きながら流下した後に、輝点Tの下方の領域A上を流れる。洗浄水が領域Aを流れるときに、輝点Tに衝突して流下する尿と合流するので、尿は排出口から排出される前に希釈される。
【0043】
尿を希釈するための洗浄水の第2の吐水形態は、上述したS3~S7において、制御部40が第1電磁弁20を第1の開度より小さい第2の開度で開弁させた場合の形態である。この場合、洗浄水は、中央線CLより所定間隔Xだけ偏心された第1吐水口22から第1の瞬間流量より小さい第2の瞬間流量(0.125~2リットル/分、好ましくは0.15~0.175リットル/分)で吐水される(図5のW2参照)。洗浄水は、瞬間流量が小さいので、第1吐水口22から吐水された後、上流側において左右方向に幅D1で広がる部分(拡大流)を形成し、下流側で左右方向に幅D2で縮小する部分(縮小流)を形成して流れる。この場合の拡大流の幅D1は、第2の瞬間流量において、24~112mmであり、縮小流の幅D2は、5~50mmである。洗浄水の縮小する部分は、輝点Tの直径と略同じ幅で輝点T上を流れる。洗浄水が輝点Tを流れるときに、輝点Tに衝突して尿と合流するので、尿は排出口から排出される前に希釈される。上述した第1の吐水形態と第2の吐水形態とは、メンテナンス作業者等が制御部40の流量調節スイッチを操作することにより変更される。
【0044】
次に、ボウル面2を洗浄するための洗浄水の吐水形態は、上述したS8において、制御部40が第2電磁弁26を開弁させた場合の形態である。この場合、洗浄水は、中央線CLと同軸上である第2吐水口28から所定の瞬間流量(9リットル/分)、所定の洗浄水量(0.5リットル/回)で吐水される(図5のW3参照)。洗浄水は、下方に扇状に広がりながらボウル面2の全体を流れた後に、尿や塵等と共に排出口から排出される。
【0045】
次に、本実施形態による小便器1の作用効果について説明する。
本実施形態による小便器1においては、尿を受けるボウル面2と、その底部に形成される排水口6と、洗浄水を吐水して尿を希釈すると共にボウル面を洗浄する吐水装置4と、この吐水装置4による洗浄水の吐水を制御する制御部40と、使用者を検知するマイクロ波センサ42と、ボウル面2に使用者が放尿すべき輝点Tを表示する光照射装置30とを備えている。小便器1の制御部40は、マイクロ波センサ42が使用者を検知している間、吐水装置4から洗浄水を吐水して尿を希釈し、マイクロ波センサ42が使用者を検知しなくなった後に、吐水装置4から洗浄水を吐水してボウル面2の全体を洗浄する。制御部40は、洗浄水を吐水して尿を希釈するとき、吐水装置4を制御して、輝点Tが表示された領域及びこの輝点Tの所定幅で輝点Tより下方に延びる領域Aからなる吐水領域の少なくとも一部を通過するような洗浄水の流れを形成させる。
【0046】
このように構成された本実施形態においては、使用者が輝点Tに向けて放尿するので尿の着地点が安定する。待機時間経過後の使用者が放尿しているときに、その輝点Tが表示された領域及びこの輝点Tの所定幅で輝点Tより下方に延びる領域Aからなる吐水領域の少なくとも一部を洗浄水が流れるので、排水口6から排出される前に輝点Tに向けて放尿された尿が洗浄水と混ざって希釈される。したがって、節水化した場合、尿を十分に希釈させることができる。
【0047】
また、本実施形態による小便器1においては、吐水装置4は、中央線CLと同軸上にある輝点Tの位置に対して左方向に所定間隔Xだけ偏心して配置された第1吐水口22を備えている。また、尿を希釈するための洗浄水の第1の吐水形態において、制御部40は、第1電磁弁20を第1の所定開度に制御して、領域Aを流れるように第1の瞬間流量の洗浄水を吐水して尿を希釈させる。このように構成された本実施形態によれば、尿が着地する輝点Tではない領域Aを洗浄水が流れるので、尿が洗浄水と衝突して飛び跳ねることを抑制することができると共に、尿を十分に希釈させることができる。
【0048】
尿を希釈するための洗浄水の第2の吐水形態において、制御部40は、第1電磁弁20を第2の所定開度を制御して、輝点Tの少なくとも一部を流れるように第1の吐水形態の第1の瞬間流量よりも少ない第2の瞬間流量の洗浄水を吐水して尿を希釈させる。このように構成された本実施形態によれば、尿が着地する輝点Tの少なくとも一部を洗浄水が流れるので、輝点Tに向けて放尿された尿が洗浄水と混ざって希釈される。
【0049】
また、第2の吐水形態において、制御部40は、第1電磁弁20を第2の所定開度に制御して、輝点Tの全域(表面全体)を流れるように、輝点Tの左右方向の最大幅以上に幅が広くなるように洗浄水を吐水して尿を希釈させる。このように構成された本実施形態によれば、尿が着地する輝点Tの全域を洗浄水が流れるので、尿が洗浄水とより確実に混ざって希釈される。
【0050】
さらに、第2の吐水形態において、自動洗浄ユニット9の制御部40は、第1電磁弁20を第2の所定開度に制御して、洗浄水が吐水後に幅D1で広がった後に幅D2で縮小し、その幅D2に縮小する部分(縮小流)が輝点Tを流れるように洗浄水を吐水して希釈させる。このように構成された本発明によれば、洗浄水を第2の瞬間流量で吐水した場合、洗浄水は幅D1で広がった後に幅D2で縮小するように流れるが、幅D2に縮小する部分が輝点Tを流れるので、尿が洗浄水と混ざって希釈される。
【0051】
本実施形態による小便器1においては、制御部40は、光照射装置30を制御して、洗浄水を吐水して尿を希釈しているときにボウル面2に輝点Tを表示させる。このように構成された本実施形態によれば、輝点Tが表示されたタイミングに合わせて放尿するように使用者を誘導し、そのタイミングでは洗浄水が流れているので、尿が洗浄水と確実に混ざって希釈される。
【0052】
また、本実施形態による小便器1においては、制御部40は、光照射装置30による光の照射を開始させた後、尿を希釈させるための洗浄水の吐水を開始させる。このように構成された本実施形態によれば、予め使用者の放尿方向を定めるので、尿が洗浄水と確実に混ざって希釈される。
【0053】
本実施形態による小便器1においては、制御部40は、尿を希釈するための洗浄水の吐水を終了させる前に、光照射装置30による光の照射を終了させる。このように構成された本実施形態によれば、輝点Tを表示する必要がなくなった時点(尿の軌道が下がった時点)で照射を終了させ、LEDの電池等を浪費することがなく光照射装置30の寿命を延ばすことができる。
【0054】
本実施形態においては、第1吐水口22から尿を希釈させるための洗浄水を吐水させ、第2吐水口28からボウル面2を洗浄するための洗浄水を吐水させているが、これに代えて、第1吐水口22及び第2吐水口28を同一の吐水口として形成して洗浄水を吐水しても良い。
【0055】
本実施形態においては、表示手段として光照射装置30を用いたが、これに代えて、小便器に直接刻印したマークや小便器の表面に貼ったシールなどを用いても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 小便器
2 ボウル面
4 吐水装置
6 排水口
9 自動洗浄ユニット
20 第1電磁弁
22 第1吐水口
26 第2電磁弁
28 第2吐水口
30 光照射装置
40 制御部
42 マイクロ波センサ
図1
図2
図3
図4
図5