(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20220511BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E03C1/05
E03C1/042 B
E03C1/042 E
(21)【出願番号】P 2018131505
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】竹内 聡
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177841(JP,A)
【文献】特開平10-311071(JP,A)
【文献】特開2014-118797(JP,A)
【文献】特開2012-072619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吐出する吐水口を有する吐水部と、
給水源から前記吐水口に水を導く給水路と、
前記給水路を開閉する開閉弁と、
対象物の検知を行うセンサ部と、
前記センサ部と分離して設けられ、前記センサ部の検知結果に応じて前記開閉弁を開閉駆動する制御部と、
前記開閉弁、前記センサ部、及び前記制御部のそれぞれに給電する電池と、
を備え、
前記センサ部は、前記制御部から取り外された状態から前記制御部に接続可能であり、前記制御部に接続信号を送信する接続信号送信モードを有し、前記電池からの給電に応じて前記接続信号送信モードになり、
前記制御部は、前記接続信号の受信を待機し、前記接続信号の受信に応答して接続応答信号を前記センサ部に送信する接続信号受信モードを有し、前記電池からの給電に応じて前記接続信号受信モードになることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記開閉弁を開いた際に、前記給水路を流れる水の流れを利用して発電を行う発電部と、
前記発電部で発電された電力を蓄電し、前記開閉弁、前記センサ部、及び前記制御部のそれぞれに給電する蓄電部と、
をさらに備え、
前記電池は、前記蓄電部と接続され、前記蓄電部を充電することにより、前記蓄電部を介して前記開閉弁、前記センサ部、及び前記制御部のそれぞれに給電することを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサ部に作動要求を定期的に送信する作動要求送信モードを有し、前記接続応答信号の送信に応答して前記接続信号受信モードから前記作動要求送信モードに遷移し、
前記センサ部は、前記作動要求の受信を待機し、前記作動要求の受信に応答して前記対象物の検知を行い、前記対象物の検知結果を前記制御部に送信する作動要求受信モードを有し、前記接続応答信号の受信に応答して前記接続信号送信モードから前記作動要求受信モードに遷移することを特徴とする請求項1又は2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記制御部は、共通の通信ラインを介して複数の前記センサ部と接続可能であることを特徴とする請求項3記載の吐水装置。
【請求項5】
前記センサ部は、前記接続信号送信モードにおいて、別の前記センサ部が前記制御部と接続されているか否かを前記接続信号送信モードの開始から所定時間監視し、接続されていない場合に、前記制御部に前記接続信号を送信し、接続されている場合に、前記接続信号を送信することなく前記接続信号送信モードから前記作動要求受信モードに遷移することを特徴とする請求項4記載の吐水装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記作動要求送信モードにおいて、前記センサ部に前記接続信号を定期的に送信し、
前記センサ部は、前記接続信号を送信することなく前記作動要求受信モードに遷移した場合、前記作動要求受信モードにおいて前記制御部からの前記接続信号を受信し、前記接続信号の受信に応答して前記接続応答信号を前記制御部に送信することを特徴とする請求項5記載の吐水装置。
【請求項7】
前記制御部は、接続された前記センサ部の数が上限に達すると、前記接続信号の送信を停止することを特徴とする請求項6記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の手などの対象物をセンサで検知し、センサの検知に基づいて制御部が電磁弁を駆動することにより、吐止水を自動で制御する吐水装置がある。吐水装置は、電池を有し、吐水装置の各部は、電池からの電力の供給に基づいて動作する。
【0003】
こうした吐水装置において、例えば、吐水装置の製品出荷時から施工前までは電池を本体から取り外した状態にし、施工時に電池を接続することで、駆動を開始することが行われている。
【0004】
しかしながら、この方法では、電池寿命を延ばすことができる反面、電池の接続から制御部などの起動までに時間がかかり、施工に不要な時間がかかってしまう場合がある。一方で、予め電池を取り付けた状態で出荷する方法では、起動などにともなう施工時の不要な時間を抑制できる反面、保管している間にも、常に電池寿命が減り続けてしまう。例えば、保管の期間が長かった場合などに、施工から電池交換までの時間が、決められた動作保証時間よりも短くなってしまう可能性がある。
【0005】
例えば、特許文献1では、予め全ての部品と電池を取り付けた状態で出荷し、センサの検出レベルに基づいて保管されているかを制御部が判断し、保管されている場合はセンサの作動周期を低減することで、電池の消費を抑えることを提案している。これにより、施工時に不要な時間がかかってしまうことを抑制しつつ、保管時に電池寿命が減ってしまうことも抑制することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成においても、センサ作動分の待機時消費は、常に発生してしまう。そして、センサの作動周期を極端に長くした場合には、施工のタイミングとセンサの作動周期のタイミングとによっては、センサの作動までに時間がかかってしまい、施工に不要な時間がかかってしまう可能性がある。
【0007】
このように、特許文献1の構成においても、施工時間と電池寿命とのトレードオフについて検討の余地が残されており、吐水装置では、施工時の不要な時間の発生を抑えつつ、保管時の電池の消費をより抑えられるようにすることが望まれている。
【0008】
例えば、保管時にはセンサを制御部から外しておき、センサを作動させないようにすることも考えられる。これにより、保管時の電池の消費をより確実に抑制することができる。制御部は、センサに対して定期的に作動要求を行う。この際、制御部の消費電力の低減のために作動要求の頻度を落とすと、センサの接続のタイミングによっては最大で通信周期分、作動実施までの時間が必要となるため、施工に不要な時間がかかってしまう。外部スイッチを設け、外部スイッチの入力に応じて作動要求の頻度を基に戻す方法も考えられるが、部品構成要素が増えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、簡単な構成で、施工時の不要な時間の発生を抑えつつ、保管時の電池の消費をより抑えることができる吐水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、水を吐出する吐水口を有する吐水部と、給水源から前記吐水口に水を導く給水路と、前記給水路を開閉する開閉弁と、対象物の検知を行うセンサ部と、前記センサ部と分離して設けられ、前記センサ部の検知結果に応じて前記開閉弁を開閉駆動する制御部と、前記開閉弁、前記センサ部、及び前記制御部のそれぞれに給電する電池と、を備え、前記センサ部は、前記制御部から取り外された状態から前記制御部に接続可能であり、前記制御部に接続信号を送信する接続信号送信モードを有し、前記電池からの給電に応じて前記接続信号送信モードになり、前記制御部は、前記接続信号の受信を待機し、前記接続信号の受信に応答して接続応答信号を前記センサ部に送信する接続信号受信モードを有し、前記電池からの給電に応じて前記接続信号受信モードになることを特徴とする吐水装置である。
【0012】
この吐水装置によれば、センサ部が接続され、センサ部から接続信号が送信されるまで、制御部を接続信号受信モードにしておくことにより、保管時に制御部から作動要求を定期的に送信する構成などと比べて、制御部をより低消費電力にすることができる。そして、センサ部の接続に応じてセンサ部から接続信号を制御部に送信することにより、施工時に不要な時間が発生してしまうことも抑えることができる。さらに、スイッチなどを別途設ける必要もない。従って、簡単な構成で、施工時の不要な時間の発生を抑えつつ、保管時の電池の消費をより抑えることができる吐水装置を提供することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記開閉弁を開いた際に、前記給水路を流れる水の流れを利用して発電を行う発電部と、前記発電部で発電された電力を蓄電し、前記開閉弁、前記センサ部、及び前記制御部のそれぞれに給電する蓄電部と、をさらに備え、前記電池は、前記蓄電部と接続され、前記蓄電部を充電することにより、前記蓄電部を介して前記開閉弁、前記センサ部、及び前記制御部のそれぞれに給電することを特徴とする吐水装置である。
【0014】
この吐水装置によれば、保管時にも蓄電部を電池によって充電しておくことができる。従って、蓄電部が設けられている場合にも、施工時に不用な待ち時間が発生してしまうことを抑制することができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記制御部は、前記センサ部に作動要求を定期的に送信する作動要求送信モードを有し、前記接続応答信号の送信に応答して前記接続信号受信モードから前記作動要求送信モードに遷移し、前記センサ部は、前記作動要求の受信を待機し、前記作動要求の受信に応答して前記対象物の検知を行い、前記対象物の検知結果を前記制御部に送信する作動要求受信モードを有し、前記接続応答信号の受信に応答して前記接続信号送信モードから前記作動要求受信モードに遷移することを特徴とする吐水装置である。
【0016】
この吐水装置によれば、制御部が接続信号受信モードから作動要求送信モードに、センサ部が接続信号送信モードから作動要求受信モードに、それぞれ自動的に遷移することにより、施工者が各モードの切り替えなどを行う必要が無く、施工の作業性をより高めることができる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、前記制御部は、共通の通信ラインを介して複数の前記センサ部と接続可能であることを特徴とする吐水装置である。
【0018】
この吐水装置によれば、制御部に複数のセンサ部を接続可能とすることで、対象物をより正確に検知したり、様々な対象物を検知したりすることを可能にし、吐水装置の機能性をより向上させることができる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明において、前記センサ部は、前記接続信号送信モードにおいて、別の前記センサ部が前記制御部と接続されているか否かを前記接続信号送信モードの開始から所定時間監視し、接続されていない場合に、前記制御部に前記接続信号を送信し、接続されている場合に、前記接続信号を送信することなく前記接続信号送信モードから前記作動要求受信モードに遷移することを特徴とする吐水装置である。
【0020】
この吐水装置によれば、別のセンサ部の接続によって制御部が既に作動要求送信モードに遷移している場合にも、制御部と複数のセンサ部との間の通信を適切に行うことができる。例えば、新たに接続されたセンサ部からの接続信号が、制御部と複数のセンサ部との間の通信の妨げとなってしまうことを抑制することができる。
【0021】
第6の発明は、第5の発明において、前記制御部は、前記作動要求送信モードにおいて、前記センサ部に前記接続信号を定期的に送信し、前記センサ部は、前記接続信号を送信することなく前記作動要求受信モードに遷移した場合、前記作動要求受信モードにおいて前記制御部からの前記接続信号を受信し、前記接続信号の受信に応答して前記接続応答信号を前記制御部に送信することを特徴とする吐水装置である。
【0022】
この吐水装置によれば、作動要求送信モードに遷移した制御部が定期的に接続信号を送信することで、特別な操作を行うことなく、より簡単に複数のセンサ部を制御部に接続することが可能となる。
【0023】
第7の発明は、第6の発明において、前記制御部は、接続された前記センサ部の数が上限に達すると、前記接続信号の送信を停止することを特徴とする吐水装置である。
【0024】
この吐水装置によれば、制御部が、接続されたセンサ部の数が上限に達すると、接続信号の送信を停止することにより、接続信号の送信にともなう不要な電力消費が発生してしまうことを抑制することができる。作動要求送信モードにおける電力消費を、より低減させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の態様によれば、簡単な構成で、施工時の不要な時間の発生を抑えつつ、保管時の電池の消費をより抑えることができる吐水装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施形態に係る水栓装置を模式的に表す説明図である。
【
図2】第1の実施形態に係る水栓装置を模式的に表すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る水栓装置の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
【
図4】水栓装置の参考の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係る水栓装置を模式的に表すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態に係る水栓装置の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る水栓装置を模式的に表す説明図である。
図1に表したように、水栓装置10(吐水装置)は、対象物(人体や物体等)を検知して自動的な吐止水を行うものであり、洗面台に備え付けられる洗面器11に対して吐止水を行う。
【0028】
洗面器11は、洗面カウンタ12の上面に設けられる。洗面カウンタ12の上には、洗面器11のボウル面11aに対して水を吐出するためのスパウトを構成する水栓13(吐水部)が設けられる。水栓13は、水を吐出する吐水口13aを有し、この吐水口13aから吐出される水が洗面器11のボウル面11a内に吐出されるように設けられる。
【0029】
水栓13が吐水口13aから吐出する水は、給水路14により供給される。給水路14は、水道管等の給水源から供給される水を吐水口13aへと導く。洗面器11には、排水路15が接続されている。排水路15は、吐水口13aから洗面器11のボウル面11a内に吐水された水を排出する。
【0030】
水栓装置10は、水栓13及び給水路14を備えるとともに、電磁弁16(開閉弁)と、センサ部18と、制御部20と、発電部22と、を備える。センサ部18は、制御部20と分離されている。センサ部18は、例えば、水栓13の内部に収容される。電磁弁16及び制御部20は、例えば、洗面台の下側に収容される。電磁弁16及び制御部20は、例えば、洗面カウンタ12の下方に設けられるキャビネット(図示は省略)内に収容される。
【0031】
センサ部18と制御部20とは、接続ケーブル17で接続されている。制御部20は、例えば、接続ケーブル17を介してセンサ部18に電源電圧を供給し、接続ケーブル17を介してセンサ部18を制御する。
【0032】
電磁弁16は、給水路14に設けられ、給水路14の開閉を行う。電磁弁16が開くと、給水路14から供給された水が吐水口13aから吐出される吐水状態となり、電磁弁16が閉じると、給水路14から供給された水が吐水口13aから吐出されない止水状態となる。
【0033】
電磁弁16は、制御部20に接続されており、制御部20は、電磁弁16を駆動して開/閉動作を制御する。電磁弁16は、制御部20からの制御信号に従って電気的に制御され、給水路14の開閉を行う。このように、電磁弁16は、吐水口13aから吐水される水の給水路14を開閉する開閉弁として機能する。
【0034】
電磁弁16は、いわゆるラッチング・ソレノイド・バルブと称される自己保持型電磁弁(ラッチ式電磁弁)であり、ソレノイドコイルへの一方向への通電によって閉状態から開状態に動作(開動作)し、その後ソレノイドコイルへの通電を遮断しても開状態を保持し、ソレノイドコイルへの他方向への通電によって開状態から閉状態に動作(閉動作)し、その後ソレノイドコイルへの通電を遮断しても閉状態を保持する。なお、給水路14を開閉する開閉弁は、電磁弁16に限ることなく、給水路14を開閉可能な任意の開閉弁でよい。
【0035】
センサ部18は、吐水口13aに接近する対象物(手など)を検知する。この吐水口13aの吐水先が、センサ部18の検知領域となる。センサ部18は、光信号を送信し、送信した光信号を受けた人体等の対象物から反射した反射信号を受信することにより、対象物の位置や動き等を検知する。
【0036】
センサ部18は、例えば、赤外光の光信号を用いた光センサである。センサ部18から送信される光信号は、例えば、可視光などでもよい。以下では、光信号を赤外光として説明を行う。なお、「赤外光」とは、例えば、0.7μm以上1000μm以下の波長の光である。また、センサ部18には、例えば、超音波センサやマイクロ波センサなどを用いてもよい。
【0037】
センサ部18は、水栓13の吐水口13a近くの内部に設けられ、洗面台の使用者側(
図1において左側)に向けて光信号を送信するように配置される。これにより、センサ部18は、吐水口13aに人体が近づいてきたことや、吐水口13aに近づいた人体から吐水口13aに向けて手が差し出されたこと等を検知可能にする。
【0038】
センサ部18は、対象物の検知結果を表す検知信号を接続ケーブル17を介して制御部20に入力する。制御部20は、センサ部18から入力された検知信号に基づいて、対象物の有無を検知する。制御部20は、例えば、検知信号に基づいて、対象物の位置や動き等を検知する。そして、制御部20は、この検知結果に基づいて電磁弁16の開/閉動作を制御する。また、制御部20は、センサ部18に対して制御信号を出力して、センサ部18のセンシング動作を制御する。
【0039】
発電部22は、例えば、水栓13と電磁弁16との間の給水路14の経路上に設けられ、電磁弁16を開いた際に、給水路14を流れる水の流れを利用して発電を行う。発電部22は、発電した電力を制御部20に供給する。なお、発電部22は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0040】
以上のように、本実施形態の水栓装置10は、水栓13と、給水路14と、電磁弁16と、センサ部18と、制御部20と、発電部22と、を備え、センサ部18の検知結果に基づいて制御部20が制御することにより、電磁弁16の開/閉動作が制御される。これにより、吐水口13aに接近する対象物の検知結果(洗面台の使用者の動き等)に応じた吐水を行う。制御部20は、対象物の検知に応じて吐水を行い、対象物の非検知に応じて吐水を停止させる。すなわち、水栓装置10では、使用者が吐水口13aの近くに手などを差し出している間、自動的に吐水が行われる。
【0041】
また、センサ部18は常に動作しているのではなく、センシングを必要とするタイミングに動作をするように、制御部20が制御している。これにより、センサ部18の消費電力を下げることができる。制御部20は、例えば、使用者が不便に感じない程度にセンサ部18のセンシング動作の頻度を下げる。これにより、水栓装置10全体の低消費電力化を図ることができる。
【0042】
図2は、第1の実施形態に係る水栓装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、制御部20は、接続部20aを有する。接続部20aは、接続ケーブル17の一端に設けられた被接続部17aと接続される。センサ部18は、被接続部17aを接続部20aと接続することにより、制御部20と接続される。被接続部17a及び接続部20aは、いわゆるコネクタである。
【0043】
このように、センサ部18は、被接続部17a及び接続部20aの接続により、制御部20から取り外された状態から制御部20に接続可能である。センサ部18は、製造工場などにおいて制御部20から取り外された状態で保管され、制御部20から取り外された状態で出荷される。そして、センサ部18は、水栓装置10の施工現場において制御部20と接続される。
【0044】
被接続部17aは、例えば、接続部20aに対して着脱可能である。換言すれば、センサ部18は、例えば、制御部20に対して着脱可能である。但し、センサ部18は、制御部20に接続した後、制御部20から簡単には取り外しできない構成でもよい。
【0045】
センサ部18を制御部20に接続可能とする構成は、上記に限ることなく、少なくとも制御部20から取り外された状態のセンサ部18を制御部20に接続することができる任意の構成でよい。接続ケーブル17は、センサ部18と一体的に設けられていてもよいし、センサ部18に対して着脱可能な構成としてもよい。接続ケーブル17は、制御部20側に設けてもよい。
【0046】
図2に表したように、水栓装置10は、蓄電部24と、電池26と、をさらに備える。蓄電部24は、発電部22で発電された電力を蓄電し、電磁弁16、センサ部18、及び制御部20のそれぞれに給電する。電磁弁16及びセンサ部18への給電は、制御部20を介して行われる。電磁弁16及びセンサ部18への給電は、例えば、蓄電部24から直接的に行ってもよい。蓄電部24には、例えば、コンデンサが用いられる。
【0047】
電池26は、蓄電部24と接続され、蓄電部24を充電することにより、蓄電部24を介して電磁弁16、センサ部18、及び制御部20のそれぞれに給電する。電池26は、より詳しくは、一次電池である。
【0048】
蓄電部24及び電池26は、例えば、制御部20内に設けられる。換言すれば、蓄電部24及び電池26は、制御部20と同じ筐体の内部に設けられる。但し、蓄電部24及び電池26は、それぞれ制御部20とは別に設けてもよい。
【0049】
このように、水栓装置10では、発電部22で発電された電力と電池26の電力とによって電磁弁16、センサ部18、及び制御部20を動作させる。これにより、水栓装置10では、商用電源などからの電力供給を受けることなく、電磁弁16、センサ部18、及び制御部20などの電装品を動作させることができる。
【0050】
なお、発電部22及び蓄電部24を省略し、電池26の電力を電磁弁16、センサ部18、及び制御部20のそれぞれに直接的に給電してもよい。発電部22及び蓄電部24は、必要に応じて設けられ、省略可能である。但し、発電部22及び蓄電部24を設けることにより、電池26から直接的に給電を行う場合と比べて、電池26の消耗を抑制することができる。例えば、電池26の交換を行うことなく、水栓装置10を10年以上動作させることができる。
【0051】
電池26は、例えば、工場内での製造の工程において水栓装置10に設けられ、蓄電部24と接続される。このため、蓄電部24は、工場からの出荷の段階において、電池26によって充電される。従って、制御部20は、工場内での保管時や工場からの出荷時においても、蓄電部24及び電池26からの給電によって動作可能な状態となっている。一方、センサ部18は、前述のように、制御部20から取り外された状態で保管され、施工時に制御部20と接続される。従って、センサ部18は、施工時に制御部20と接続された段階で、制御部20から給電を受け、動作可能な状態となる。
【0052】
図3は、第1の実施形態に係る水栓装置の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
図3に表したように、センサ部18は、制御部20に接続信号を送信する接続信号送信モードを有する。センサ部18は、蓄電部24及び電池26からの給電に応じて接続信号送信モードになる。換言すれば、センサ部18は、制御部20に接続した際に、接続信号送信モードになる。センサ部18は、制御部20に接続され、蓄電部24及び電池26からの給電を受けると、接続信号送信モードで起動し、制御部20に接続信号を送信する。
【0053】
制御部20は、接続信号の受信を待機し、接続信号の受信に応答して接続応答信号をセンサ部18に送信する接続信号受信モードを有する。制御部20は、蓄電部24及び電池26からの給電に応じて接続信号受信モードになる。
【0054】
また、制御部20は、センサ部18に作動要求を定期的に送信する作動要求送信モードを、さらに有する。制御部20は、接続応答信号の送信に応答して、接続信号受信モードから作動要求送信モードに遷移する。作動要求は、例えば、光センサであるセンサ部18に投光を要求する投光要求である。
【0055】
センサ部18は、作動要求の受信を待機し、作動要求の受信に応答して対象物の検知を行い、対象物の検知結果を制御部20に送信する作動要求受信モードを、さらに有する。センサ部18は、接続応答信号の受信に応答して、接続信号送信モードから作動要求受信モードに遷移する。これにより、センサ部18と制御部20との間の通信が確定される。
制御部20は、センサ部18から受信した検知結果に応じて電磁弁16の開/閉動作を制御する。このように、水栓装置10では、センサ部18が作動要求受信モードにあり、制御部20が作動要求送信モードにある状態において、水栓13からの吐止水が切り替えられる。
【0056】
前述のように、工場などでの保管時においては、制御部20は、蓄電部24及び電池26からの給電によって動作可能な状態となっている。一方、センサ部18は、制御部20から取り外されており、動作していない。このため、制御部20は、保管時においては、接続信号受信モードとなったままであり、施工時にセンサ部18を制御部20に接続することによって接続信号受信モードから作動要求送信モードに遷移する。
【0057】
制御部20は、接続信号受信モードにおいては、作動要求などの信号の出力を行わない。これにより、接続信号受信モードにおいては、制御部20の消費電力を抑え、電池26の消費を抑制することができる。保管時に制御部20を接続信号受信モードとすることにより、保管時の電池26の消費を抑制することができる。接続信号受信モードは、換言すれば、低消費モードである。接続信号受信モードでは、例えば、プロセッサなどからなる制御部20をスリープモードに設定することができる。これにより、消費電力を適切に抑えることができる。
【0058】
制御部20の接続信号受信モードは、例えば、センサ部18と制御部20との間の通信におけるスレーブモードであり、センサ部18の接続信号送信モードは、例えば、センサ部18と制御部20との間の通信におけるマスタモードである。そして、制御部20の作動要求送信モードは、例えば、センサ部18と制御部20との間の通信におけるマスタモードであり、センサ部18の作動要求受信モードは、例えば、センサ部18と制御部20との間の通信におけるスレーブモードである。
【0059】
水栓装置10では、例えば、センサ部18の接続の有無によって、センサ部18と制御部20との間の通信のマスタとスレーブとの関係を入れ替える。これにより、水栓装置10では、保管時における電池26の消費を適切に抑制しつつ、水栓13からの吐止水を適切に制御することができる。
【0060】
図4は、水栓装置の参考の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
図4に表したように、例えば、保管時にセンサ部18を制御部20から外しておき、制御部20が、センサ部18に対して定期的に作動要求を行う構成も考えられる。すなわち、保管時においても、制御部20を通信のマスタモードとし、センサ部18を通信のスレーブモードとしておく構成も考えられる。
【0061】
この場合に、例えば、
図4の期間P1の部分のように作動要求の送信の頻度を通常時と同じにしていると、制御部20での電力消費が比較的大きくなり、保管時の電池26の消費を抑えることが難しくなってしまう。
【0062】
一方で、
図4の期間P2の部分のように、制御部20の消費電力の低減のために、保管時に作動要求の送信の頻度を落とすと、センサ部18の接続のタイミングによっては最大で通信周期分、作動実施までの時間が必要となるため、施工に不要な時間がかかってしまう。また、外部スイッチを設け、外部スイッチの入力に応じて作動要求の送信の頻度を基に戻す方法も考えられるが、部品構成要素が増えてしまう。
【0063】
これに対して、本実施形態に係る水栓装置10では、センサ部18が接続され、センサ部18から接続信号が送信されるまで、制御部20を接続信号受信モードにしておくことにより、保管時に制御部20から作動要求を定期的に送信する構成などと比べて、制御部20をより低消費電力にすることができる。そして、センサ部18の接続に応じてセンサ部18から接続信号を制御部20に送信することにより、施工時に不要な時間が発生してしまうことも抑えることができる。さらに、スイッチなどを別途設ける必要もない。従って、簡単な構成で、施工時の不要な時間の発生を抑えつつ、保管時の電池の消費をより抑えることができる水栓装置10を提供することができる。
【0064】
また、水栓装置10では、保管時にも蓄電部24を電池26によって充電しておくことができる。従って、蓄電部24が設けられている場合にも、施工時に不用な待ち時間が発生してしまうことを抑制することができる。
【0065】
また、水栓装置10では、制御部20が接続信号受信モードから作動要求送信モードに、センサ部18が接続信号送信モードから作動要求受信モードに、それぞれ自動的に遷移することにより、施工者が各モードの切り替えなどを行う必要が無く、施工の作業性をより高めることができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、センサ部18と制御部20との通信が確定した後、センサ部18と制御部20との通信のマスタとスレーブとの関係を入れ替えている。これに限ることなく、例えば、通信が確定した後にも制御部20をスレーブのままとし、マスタであるセンサ部18から定期的に制御部20に検知結果を送信する構成としてもよい。
【0067】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る水栓装置を模式的に表すブロック図である。
なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は、省略する。
図5に表したように、水栓装置10aでは、制御部20が、共通の通信ライン20bを介して複数のセンサ部18と接続可能である。
【0068】
図5では、制御部20が、3つのセンサ部18と接続された例を図示している。以下では、制御部20に対して最初に接続されるセンサ部18を第1センサ部18a、2番目に接続されるセンサ部18を第2センサ部18b、3番目に接続されるセンサ部18を第3センサ部18cとして説明を行う。また、複数のセンサ部18a~18cを区別しない場合には、これまでと同様にセンサ部18と称す。なお、制御部20に接続可能なセンサ部18の数は、3つに限ることなく、2つでもよいし、4つ以上でもよい。制御部20に接続可能なセンサ部18の数は、任意の数でよい。
【0069】
共通の通信ライン20bとは、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)通信におけるTXD線及びRXD線や、I2C(Inter-Integrated Circuit)通信におけるSCL線及びSDA線などである。例えば、センサ部18と制御部20との間の通信規格が、UART通信である場合には、TXD線及びRXD線が、複数のセンサ部18に対して共通に用いられる。センサ部18と制御部20との間の通信規格が、I2C通信である場合には、SCL線及びSDA線が、複数のセンサ部18に対して共通に用いられる。但し、複数のセンサ部18に共通に用いられる通信ライン20bは、上記に限ることなく、センサ部18と制御部20との間の通信規格に応じた任意の通信ラインでよい。
【0070】
図6は、第2の実施形態に係る水栓装置の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
図6に表したように、水栓装置10aでは、センサ部18が、接続信号送信モードにおいて、別のセンサ部18が制御部20と接続されているか否かを接続信号送信モードの開始から所定時間監視する(
図6のタイミングt1~t2、及びタイミングt6~t7)。換言すれば、センサ部18は、接続信号送信モードにおいて、別のセンサ部18が制御部20と接続されているか否かを制御部20との接続から所定時間監視する。
【0071】
センサ部18は、例えば、制御部20からの作動要求又は別のセンサ部18からの検知結果が所定時間以内に通信ライン20b上に送信された場合に、別のセンサ部18が接続されていると判断し、所定時間以内に送信されなかった場合に、接続されていないと判断する。従って、所定時間は、例えば、制御部20が作動要求を送信する間隔よりも長く設定しておけばよい。
【0072】
センサ部18は、別のセンサ部18が接続されていない場合に、制御部20に接続信号を送信する(
図6のタイミングt2)。制御部20は、接続信号を受信すると、接続応答信号を送信し、作動要求送信モードに遷移する。センサ部18は、接続応答信号を受信すると、作動要求受信モードに遷移する。これにより、最初の第1センサ部18aと制御部20との間の通信が確定される(
図6のタイミングt3)。
【0073】
制御部20は、作動要求送信モードに遷移すると、第1センサ部18aに対して第1作動要求を定期的に送信する(
図6のタイミングt4)。制御部20は、例えば、第1センサ部18aに対応する識別情報を作動要求に含めることによって第1作動要求を生成する。これにより、制御部20は、第1センサ部18aのみが第1作動要求を受信できるようにする。第1センサ部18aは、第1作動要求を受信すると、対象物の検知を行い、対象物の検知結果を制御部20に送信する(
図6のタイミングt5)。これにより、制御部20において、第1センサ部18aの検知結果に基づく制御が実行される。
【0074】
一方、センサ部18は、別のセンサ部18が接続されている場合に、接続信号を送信することなく接続信号送信モードから作動要求受信モードに遷移する(
図6のタイミングt7)。
【0075】
制御部20は、作動要求送信モードにおいて、接続が確定されたセンサ部18に作動要求を定期的に送信するとともに、センサ部18に接続信号を定期的に送信する(
図6のタイミングt8)。
【0076】
センサ部18は、接続信号を送信することなく作動要求受信モードに遷移した場合、作動要求受信モードにおいて制御部20からの接続信号を受信し、接続信号の受信に応答して接続応答信号を制御部20に送信する(
図6のタイミングt9)。これにより、2番目の第2センサ部18bと制御部20との間の通信が確定される。
【0077】
制御部20は、第2センサ部18bから接続応答信号を受信すると、第1センサ部18aに対する第1作動要求を定期的に送信するとともに、第2センサ部18bに対する第2作動要求を定期的に送信する(
図6のタイミングt10)。
【0078】
第2センサ部18bは、第2作動要求を受信すると、対象物の検知を行い、対象物の検知結果を制御部20に送信する(
図6のタイミングt11)。これにより、制御部20において、第2センサ部18bの検知結果に基づく制御が実行される。
【0079】
制御部20は、3番目の第3センサ部18cに対しても第2センサ部18bと同様の処理を行う。これにより、3番目の第3センサ部18cと制御部20との間の通信が確定され、制御部20において、第3センサ部18cの検知結果に基づく制御が実行される。
【0080】
また、制御部20は、接続されたセンサ部18の数が上限に達すると、接続信号の送信を停止する。すなわち、この例では、制御部20は、第3センサ部18cとの通信を確定し、接続されたセンサ部18の数が3つに達した場合に、接続信号の送信を停止する。
【0081】
以上、説明したように、水栓装置10aでは、制御部20に複数のセンサ部18を接続可能とすることで、対象物をより正確に検知したり、様々な対象物を検知したりすることを可能にし、水栓装置10aの機能性をより向上させることができる。
【0082】
なお、複数のセンサ部18を制御部20に接続する場合に、センサ部18をマスタとし、制御部20をスレーブとすると、複数のセンサ部18からの信号の送信のタイミングを制御することが難しくなる。従って、複数のセンサ部18を制御部20に接続する場合には、上記のように、1つ目のセンサ部18との接続が確定した段階で、センサ部18をスレーブとし、制御部20をマスタとすることが好ましい。
【0083】
また、水栓装置10aでは、別のセンサ部18が既に接続されている場合に、センサ部18が、接続信号を送信することなく接続信号送信モードから作動要求受信モードに遷移する。これにより、別のセンサ部18の接続によって制御部20が既に作動要求送信モードに遷移している場合にも、制御部20と複数のセンサ部18との間の通信を適切に行うことができる。例えば、新たに接続されたセンサ部18からの接続信号が、制御部20と複数のセンサ部18との間の通信の妨げとなってしまうことを抑制することができる。
【0084】
また、水栓装置10aでは、作動要求送信モードに遷移した制御部20が定期的に接続信号を送信することで、特別な操作を行うことなく、より簡単に複数のセンサ部18を制御部20に接続することが可能となる。
【0085】
さらに、水栓装置10aでは、制御部20が、接続されたセンサ部18の数が上限に達すると、接続信号の送信を停止する。これにより、接続信号の送信にともなう不要な電力消費が発生してしまうことを抑制することができる。作動要求送信モードにおける電力消費を、より低減させることができる。
【0086】
なお、上記各実施形態では、吐水装置として水栓装置10、10aを表している。吐水装置は、水栓装置に限ることなく、例えば、大便器を用いたトイレ装置や、小便器を用いたトイレ装置などでもよい。吐水装置は、これらに限ることなく、対象物の検知を行って吐止水を制御する任意の吐水装置でよい。
【0087】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水栓装置10、10aなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0088】
10、10a 水栓装置(吐水装置)、 11 洗面器、 11a ボウル面、 12 洗面カウンタ、 13 水栓(吐水部)、 13a 吐水口、 14 給水路、 15 排水路、 16 電磁弁、 17 接続ケーブル、 17a 被接続部、 18、18a~18c センサ部、 20 制御部、 20a 接続部、 20b 通信ライン、 22 発電部、 24 蓄電部、 26 電池