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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】粉体塗料及び静電粉体塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20220511BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20220511BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220511BHJP
【FI】
C09D167/00
C09D5/03
C09D7/61
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017065371
(22)【出願日】2017-03-29
(65)【公開番号】P2018168239
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉野 進
(72)【発明者】
【氏名】阿形 岳
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006143(JP,A)
【文献】特開2005-248046(JP,A)
【文献】特開平10-017792(JP,A)
【文献】特開2012-168527(JP,A)
【文献】特開2013-134453(JP,A)
【文献】特開2005-113022(JP,A)
【文献】特開2006-154686(JP,A)
【文献】特開2005-213507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 167/00
C09D 5/03
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電損率が40×10-3以上150×10-3以下である粉体粒子を含み、
前記粉体粒子が熱硬化性ポリエステル樹脂を含む、
粉体塗料。
但し、前記誘電損率の測定方法は、次のとおりである。
粉体粒子5gをペレット状に成型し、20℃、相対湿度60%下において、電極間にセットし、LCRメーターにて、5V、周波数100kHzで測定する。
なお、誘電損率は下記の式(1)によって求められる。
(14.39/(W×D ))×Gx×Tx×10 12 ・・・式(1)
式(1)中、W=2πf(f:測定周波数100kHz)、D:電極直径(cm)、Gx:電導度(S)、Tx:試料厚み(cm)を表す。
【請求項2】
前記粉体粒子が、体積平均粒径が1nm~100nmのコロイダルシリカを前記粉体粒子の全質量に対し、3質量%以上20質量%以下含有する、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項3】
前記コロイダルシリカの含有量が、前記粉体粒子の全質量に対し、5質量%以上20質量%以下含有する、請求項2に記載の粉体塗料。
【請求項4】
前記粉体粒子の含水率が、前記粉体粒子の全質量に対し、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の粉体塗料。
【請求項5】
前記粉体粒子の含水率が、前記粉体粒子の全質量に対し、0.2質量%以上3質量%以下である、請求項4に記載の粉体塗料。
【請求項6】
前記粉体粒子が、酸化チタンを前記粉体粒子の全質量に対し、25質量%未満含有する、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項7】
前記粉体粒子が、酸化チタンを前記粉体粒子の全質量に対し、25質量%以上50質量%以下含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粉体塗料。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の粉体塗料であって、帯電した粉体塗料を吐出して、粉体塗料を被塗装物に静電付着させる工程と、
被塗装物に静電付着した粉体塗料を加熱して、塗装膜を形成する工程と、を有する
静電粉体塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料及び静電粉体塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉体塗料を利用した粉体塗装の技術は、塗装工程における揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOC)排出量が少なく、しかも塗装後、被塗装物に付着しなかった粉体塗料を回収し、再利用できることから、地球環境保護の面で注目されている。このため、粉体塗料については、種々のものが研究されている。
【0003】
特許文献1には、カーボンブラック含有量が0.1~5質量%であり、合成樹脂用滑剤含有量が0.1~5質量%であることを特徴とする静電塗装用粉体塗料組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、少なくとも結着樹脂および硬化剤からなり体積平均粒子径が5~20μmである粉体粒子の表面に体積固有抵抗が1×10Ω・cm以下である導電性酸化亜鉛微粉末あるいは導電性酸化チタン微粉末が付着あるいは固着されていることを特徴とする粉体塗料。が記載されている。
【0005】
特許文献3には、粉体樹脂粒子表面に硬化剤、硬化触媒及び着色剤から選ばれる少なくとも1種の添加物を埋没または固着してなる粉体塗料であって、体積平均粒子径が10~30μm及び標準偏差が15μm以下で粒子形状が球状であることを特徴とする粉体塗料。が記載されている。
【0006】
特許文献4には、粉体塗料粒子中に、体積固有抵抗値1~100Ω・cmである導電性金属酸化物微粉末を溶融混練法で混合してなる粉体塗料であって、該導電性金属酸化物微粉末が該粉体塗料中の0.1~10.0重量%であることを特徴とする静電塗装用粉体塗料が記載されている。
【0007】
特許文献5には、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む芯部と、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを持ち、且つ体積粒度分布指標GSDvが1.50以下であり、平均円形度が0.96以上である粉体粒子を有する熱硬化性粉体塗料が記載されている。
【0008】
特許文献6には、熱硬化性樹脂及びブロック化イソシアネート基を有する熱硬化剤を含む芯部と、ガラス転移温度が45℃以上である熱硬化性樹脂を含み、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部と、を有し下記(1)乃至(4)を満たす粉体粒子、を含む熱硬化性粉体塗料が記載されている。
(1)体積粒度分布指標GSDvが1.50以下である。
(2)平均円形度が0.96以上である。
(3)1/2法によりフローテスターで測定した溶融温度が90℃以上115℃以下である。
(4)示差走査熱量測定において発熱ピークを80℃以上150℃以下の範囲に有する。
【0009】
特許文献7には、2種以上の色相の異なる粉体塗料の混色により均一な色相の塗膜を得る塗装方法であって、用いる粉体塗料の1種以上に体積平均粒子径が100nm以下の親水性無機微粒子を含有してなる粉体塗料を組み合わせて使用する塗装方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-064316号公報
【文献】特開平8-253711号公報
【文献】特開2007-084709号公報
【文献】特開平11-100534号公報
【文献】特開2015-232063号公報
【文献】特開2016-183300号公報
【文献】特開2001-062385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、粉体粒子の誘電損率が40×10-3未満であるか、150×10-3を超える場合に比して、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた粉体塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の手段により解決される。すなわち、

電損率が40×10-3以上150×10-3以下である粉体粒子を含む、
粉体塗料。

記粉体粒子が、体積平均粒径が1nm~100nmのコロイダルシリカを前記粉体粒子の全質量に対し、3質量%以上20質量%以下含有する、に記載の粉体塗料。

記コロイダルシリカの含有量が、前記粉体粒子の全質量に対し、5質量%以上20質量%以下含有する、に記載の粉体塗料。

記粉体粒子の含水率が、前記粉体粒子の全質量に対し、0.1質量%以上5質量%以下である、又はに記載の粉体塗料。

記粉体粒子の含水率が、前記粉体粒子の全質量に対し、0.2質量%以上3質量%以下である、に記載の粉体塗料。

記粉体粒子が、酸化チタンを前記粉体粒子の全質量に対し、25質量%未満含有する、に記載の粉体塗料。

記粉体粒子が、酸化チタンを前記粉体粒子の全質量に対し、25質量%以上50質量%以下含有する、のいずれか1項に記載の粉体塗料。

のいずれか1項に記載の粉体塗料であって、帯電した粉体塗料を吐出して、粉体塗料を塗装物に静電付着させる工程と、
被塗装物に静電付着した粉体塗料を加熱して、塗装膜を形成する工程と、を有する
静電粉体塗装方法。
【発明の効果】
【0013】
に係る発明によれば、粉体粒子の誘電損率が40×10-3未満であるか、150×10-3を超える場合に比して、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた粉体塗料が提供される。
【0014】
に係る発明によれば、体積平均粒径が1nm~100nmのコロイダルシリカの含有量が、粉体粒子の全質量に対し、3質量%未満であるか、20質量%を超える場合に比して、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた粉体塗料が提供される。
【0015】
に係る発明によれば、体積平均粒径が1nm~100nmのコロイダルシリカの含有量が、粉体粒子の全質量に対し、5質量%未満であるか、20質量%を超える場合に比して、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた粉体塗料が提供される。
【0016】
に係る発明によれば、前記粉体粒子の含水率が、前記粉体粒子の全質量に対し、0.1質量%未満であるか、5質量%を超える場合に比して、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた粉体塗料が提供される。
【0017】
に係る発明によれば、前記粉体粒子の含水率が、前記粉体粒子の全質量に対し、0.2質量%未満であるか、4質量%を超える場合に比して、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた粉体塗料が提供される。
【0018】
に係る発明によれば、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れたクリア粉体塗料が提供される。
【0019】
に係る発明によれば、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた着色粉体塗料が提供される。
【0020】
に係る発明によれば、粉体粒子の誘電損率が40×10-3未満であるか、150×10-3を超える場合に比して、静電反発の発生の抑制に優れ、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れた静電粉体塗装方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0022】
(粉体塗料)
本実施形態の粉体塗料は、誘電損率が40×10-3以上150×10-3以下である粉体粒子を含む。
本実施形態の粉体塗料によれば、静電反発の発生が抑制され、かつ、得られる塗膜の平滑性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
【0023】
従来、粉体塗装に用いる粉体塗料(粉体粒子)は、結着樹脂及び必要に応じ用いられるこの結着樹脂を硬化させる硬化剤、着色のための顔料や難燃剤、レベリング剤等の他の成分を混合して溶融後、所望の粒径に粉砕することにより製造される。こうして製造された粉体塗料は、例えば、静電塗装法などの方法にて被塗装体に塗装される。静電塗装法は、スプレーガンを使って、接触帯電又はコロナ放電によって帯電した粉体粒子を放出して接地された被塗物に粉体粒子を静電的に付着させる方法である。
【0024】
しかしながら、従来の粉体塗料を用いて、静電塗装法等により塗装する際に、特に粒径が小さい粉体粒子を使用した場合には、付着量を多くして、例えば粉体塗料の膜厚が100μm以上の厚い塗膜を作製した際に、得られる塗膜に、静電反発が発生する場合があった。静電反発とは、粉体粒子の層が厚くなりすぎた場合に、被塗物と反対極の電荷が誘起されて、粉体粒子同士が反発して円形状(クレーター状)の凹みを発生させることをいう。
ここで、粉体粒子を含み、誘電損率が40×10-3以上15×10-3以下である粉体塗料を用いることにより、上記静電反発の発生が抑制される。
上記効果が得られる詳細な機構は不明であるが、下記のように推測している。
粉体粒子の誘電損率が40×10-3以上であることにより、塗布時の粉体粒子同士の静電反発が抑えられ、塗膜を形成した場合に静電反発の発生が抑制される。
また、粉体塗料の誘電損率が150×10-3以下であることにより、塗布している最中には粉体塗料が電荷を有するため、粉体粒子の静電的な付着に優れ、例えば塗布時の気流により粉体粒子が飛ばされてしまうことが抑制され、平滑性に優れた塗膜が形成される。
以下、本実施形態の粉体塗料の詳細について説明する。
【0025】
<粉体粒子>
本実施形態に係る粉体塗料は、誘電損率が40×10-3以上150×10-3以下である粉体粒子を含む。
上記粉体粒子の誘電損率は、40×10-3以上150×10-3以下であり、50×10-3以上120×10-3以下であることが好ましく、60×10-3以上100×10-3以下であることがより好ましい。
粉体塗料における粉体粒子の誘電損率は、以下の方法により測定する。
【0026】
〔外添剤の除去〕
初めに、外添剤を除去するため、500mlビーカーに、アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK)5.0g、イオン交換水995g、粉体塗料5.0gを投入し、超音波震盪機で30分間分散した後、2,000回転/分で20分間遠心分離を行い、上澄み液を廃棄し、沈殿物を回収した。この沈殿物を、イオン交換水995g、アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK)5.0gの混合溶液に投入し、泡立たない程度の速度で60分間撹拌し、再度、超音波震盪機で30分間分散した後、2,000回転/分で20分間遠心分離を行い、上澄み液を廃棄し、沈殿物を回収した。
回収した沈殿物を、イオン交換水1,000gに投入し、ウルトラタラックスを用い5,000回転/分で5分間分散した後、4枚羽撹拌機で150回転/分で30分間撹拌分散し、これをアスピレーターでろ過した。得られた固形分を、再度、イオン交換水1000gに投入し、ウルトラタラックスを用い5,000回転/分で5分間分散した後、4枚羽撹拌機で150回転/分で30分間撹拌分散し、これをアスピレーターでろ過した。この操作を、アスピレーターろ過液の伝導度が10μS/cm以下になるまで繰り返した。ろ過液の伝導度が10uS/cm以下になったら、固形分を凍結乾燥機(凍結温度-40℃、乾燥温度30℃)で乾燥した。
得られた乾燥粉を粉体粒子として、下記方法により誘電損率を測定した。
【0027】
〔粉体粒子の誘電損率の測定方法〕
まず、粉体粒子5gをペレット状に成型し、20℃、相対湿度60%下において、電極〔SE-71型固体用電極、安藤電気(株)製〕間にセットし、LCRメーター(4274A型、横河ヒューレットパッカード製)にて、5V、周波数100kHzで測定する。
なお、誘電損率は下記の式(1)によって求められる。
(14.39/(W×D))×Gx×Tx×1012 ・・・式(1)
ここで、W=2πf(f:測定周波数100kHz)、D:電極直径(cm)、Gx:電導度(S)、Tx:試料厚み(cm)を表す。
上記粉体粒子の誘電損率は、例えば、粉体粒子に含まれる水分量や、粉体粒子に含まれる酸化チタンなどの着色剤の種類、粒径、疎水性の有無及び含有量などによって決定される。
【0028】
また、粉体粒子は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含むことが好ましい。粉体粒子は、必要に応じて、コロイダルシリカ、着色剤、その他の添加剤を含んでもよい。
【0029】
〔熱硬化性樹脂〕
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応性基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂としては、従来、粉体塗料の粉体粒子として使用される様々な種類の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。熱硬化性樹脂として非水溶性(疎水性)の樹脂を適用すると、粉体塗料(粉体粒子)の帯電特性の環境依存性が低減される。また、粉体粒子を凝集合一法により作製する場合、水性媒体中で乳化分散を実現する点からも、熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。なお、非水溶性(疎水性)とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が5質量部未満であることを意味する。
【0030】
熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリエステル樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。熱硬化性樹脂の中でも、塗装時に帯電列が制御されやすい点、塗装膜の強度、仕上げの美しさ等の点から、熱硬化性ポリエステル樹脂が好ましい。
熱硬化性ポリエステル樹脂に含まれる熱硬化反応性基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水物基、及び、ブロックイソシアネート基等が挙げられるが、合成が容易な点から、カルボキシル基、及び水酸基が好ましい。
【0031】
-熱硬化性ポリエステル樹脂-
熱硬化性ポリエステル樹脂は、硬化反応性基を有するポリエステル樹脂である。熱硬化性ポリエステル樹脂に含まれる熱硬化反応性基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水物基、ブロックイソシアネート基等が挙げられるが、合成が容易な点から、カルボキシル基、及び水酸基が好ましい。
【0032】
熱硬化性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを少なくとも重縮合した重縮合体である。
熱硬化性ポリエステル樹脂の熱硬化反応性基の導入は、ポリエステル樹脂を合成する際の多塩基酸と多価アルコールとの使用量を調整することにより行う。この調整により、熱硬化反応性基として、カルボキシル基、及び水酸基の少なくとも一方を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が得られる。
また、ポリエステル樹脂を合成した後、熱硬化性反応基を導入して、熱硬化性ポリエステル樹脂を得てもよい。
【0033】
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これら酸の無水物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、これら酸の無水物;マレイン酸、イタコン酸、これら酸の無水物;フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、これら酸の無水物;シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0034】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、シクロヘキサンジメタノール、オクタンジオール、ジエチルプロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート等が挙げられる。
【0035】
熱硬化性ポリエステル樹脂は、多塩基酸及び多価アルコール以外の他の単量体が重縮合されていてもよい。
他の単量体としては、例えば、1分子中にカルボキシル基と水酸基とを併せ有する化合物(例えばジメタノールプロピオン酸、ヒドロキシピバレート等)、モノエポキシ化合物(例えば「カージュラE10(シェル社製)」等の分岐脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル)など)、種々の1価アルコール(例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等)、種々の1価の塩基酸(例えば安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸等)、種々の脂肪酸(例えばひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸の等)等が挙げられる。
【0036】
熱硬化性ポリエステル樹脂の構造は、分岐構造のものでも、線状構造のものでもよい。
【0037】
熱硬化性ポリエステル樹脂は、酸価と水酸基価との合計が10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、且つ数平均分子量が1000以上100,000以下のポリエステル樹脂が好ましい。
酸価と水酸基価との合計を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上すると共に、粉体塗料の貯蔵安定性も向上しやすくなる。
【0038】
なお、熱硬化性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の測定は、JIS K-0070-1992に準ずる。また、熱硬化性ポリエステル樹脂の数平均分子量の測定は、後述する熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量の測定と同様である。
【0039】
-熱硬化性(メタ)アクリル樹脂-
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂である。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂への熱硬化反応性基の導入は、熱硬化反応性基を有するビニル単量体を用いることがよい。熱硬化反応性基を有するビニル単量体は、(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)であってもよいし、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体であってもよい。
【0040】
ここで、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の熱硬化反応性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水物基、(ブロック)イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル樹脂の熱硬化反応性基としては、(メタ)アクリル樹脂の製造容易な点から、エポキシ基、カルボキシル基、及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に、粉体塗料の貯蔵安定性及び塗装膜外観に優れる点から、ことから、熱硬化反応性基の少なくとも1種はエポキシ基であることがより好ましい。
【0041】
硬化性反応性基としてエポキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、各種の鎖式エポキシ基含有単量体(例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等)、各種の(2-オキソ-1,3-オキソラン)基含有ビニル単量体(例えば(2-オキソ-1,3-オキソラン)メチル(メタ)アクリレート等)、各種の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体(例えば3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等)などが挙げられる。
【0042】
硬化性反応性基としてカルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、各種のカルボキシル基含有単量体(例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等)、各種のα,β-不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのモノエステル類(例えばフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノtert-ブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノ2-エチルヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノtert-ブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2-エチルヘキシル等)、イタコン酸モノアルキルエステル(例えばイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノヘキシル、イタコン酸モノオクチル、イタコン酸モノ2-エチルヘキシル等)などが挙げられる。
【0043】
硬化性反応性基として水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、各種の水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等)、上記各種の水酸基含有(メタ)アクリレートとε-カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有ビニルエーテル(例えば2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等)、上記各種の水酸基含有ビニルエーテルとε-カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有アリルエーテル(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテル、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル等)、上記各種の水酸基含有アリルエーテルとε-カプロラクトンとの付加反応生成物などが挙げられる。
【0044】
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル単量体以外にも、熱硬化反応性基を有さない他のビニル単量体が共重合されていてもよい。
他のビニル単量体としては、各種のα-オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン-1等)、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン(例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、各種の芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等)、各種の不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのジエステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等)、各種の酸無水物基含有単量体(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸等)、各種の燐酸ステル基含有単量体(例えばジエチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル-2-(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル-2-(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等)、各種の加水分解性シリル基含有単量体(例えばγ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、各種の脂肪族カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9以上11以下の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、環状構造を有するカルボン酸の各種のビニルエステル(例えばシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p-tert-ブチル安息香酸ビニル等)などが挙げられる。
【0045】
なお、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂において、熱硬化反応性基を有するビニル単量体として、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体を使用する場合、硬化性反応性基を有さないアクリル単量体を使用する。
硬化性反応性基を有さないアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、各種の(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等)、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート(例えばエチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、他の各種の(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体(例えばN-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、各種のアミノ基含有単量体(例えばtert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等)。
【0046】
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、数平均分子量が1,000以上20,000以下(好ましくは1,500以上15,000以下)のアクリル樹脂が好ましい。
数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。
【0047】
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー(株)製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0048】
熱硬化性樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
熱硬化性樹脂の含有量は、粉体粒子全体に対して、20質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上95質量%以下が好ましい。
なお、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際、樹脂被覆部の樹脂として熱硬化性樹脂を適用する場合には、上記の熱硬化性樹脂の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂の含有量を意味する。
【0050】
〔熱硬化剤〕
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基の種類に応じて選択する。
ここで、熱硬化剤とは、熱硬化性樹脂の末端基である熱硬化反応性基に対して、反応可能な官能基を有している化合物を意味する。
【0051】
熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基がカルボキシル基の場合、熱硬化剤としては、例えば、種々のエポキシ樹脂(例えばビスフェノールAのポリグリシジルエーテル等)、エポキシ基含有アクリル樹脂(例えばグリシジル基含有アクリル樹脂等)、種々の多価アルコール(例えば1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等)のポリグリシジルエーテル、種々の多価カルボン酸(例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)のポリグリシジルエステル、種々の脂環式エポキシ基含有化合物(例えばビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルアジペート等)、ヒドロキシアミド(例えばトリグリシジルイソシアヌレート、β-ヒドロキシアルキルアミド等)等が挙げられる。
【0052】
熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基が水酸基の場合、熱硬化剤としては、例えば、ポリブロックイソシアネート、アミノプラスト等が挙げられる。ポリブロックポリイソシアネートとしては、例えば、各種の脂肪族ジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、各種の環状脂肪族ジイソシアネート(例えばキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等)、各種の芳香族ジイソシアネート(例えばトリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等)などの有機ジイソシアネート;これら有機ジイソシアネートと、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂(例えばポリエステルポリオール)又は水等との付加物;これら有機ジイソシアネート同士の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をも含む重合体);イソシアネート・ビウレット体等の各種のポリイソシアネート化合物を公知慣用のブロック化剤でブロック化したもの;ウレトジオン結合を構造単位として有するセルフ・ブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0053】
熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基がエポキシ基の場合、熱硬化剤としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の酸;これら酸の無水物;これらの酸のウレタン変性物などが挙げられる。これらの中でも、熱硬化剤としては、塗装膜物性、及び貯蔵安定性の点から、脂肪族二塩基酸が好ましく、塗装膜物性の点から、ドデカン二酸が特に好ましい。
【0054】
熱硬化剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
熱硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下が好ましい。
なお、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際、樹脂被覆部の樹脂として熱硬化性樹脂を適用する場合には、上記の熱硬化剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂に対する含有量を意味する。
【0056】
〔コロイダルシリカ〕
本実施形態に係る粉体粒子は、静電反発の抑制の観点から、コロイダルシリカを含有することが好ましい。本実施形態において、コロイダルシリカとは、液体媒体中でコロイドとなる性質を有するシリカ粒子をいう。
コロイダルシリカは、結晶水を有する状態で粉体粒子に含まれることが好ましい。
例えば、含水率が2質量%以上のコロイダルシリカを粉体粒子に添加することにより、粉体粒子の誘電損率が調整される。
コロイダルシリカの含水率は、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが更に好ましい。
コロイダルシリカの体積平均粒径は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、8nm以上80nm以下がより好ましく、15nm以上50nm以下が更に好ましい。
上記体積平均粒径は、ナノトラックUPA-ST(マイクロトラック・ベル社製動的光散乱式粒度測定装置)を用いて測定される。また、測定条件は、サンプル濃度は20%、測定時間は300秒とする。この装置は、分散質のブラウン運動を利用して粒子径を測定するものであり、溶液にレーザー光を照射し、その散乱光を検出することにより粒子径を測定する。測定される粒度分布を基にして、分割された粒度範囲(チャンネル)に対して個々の粒子の体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径として求める。
【0057】
本実施形態に係る粉体粒子は、コロイダルシリカを、1種単独で含有しても、2種以上を併用してもよい。
コロイダルシリカの含有量は、粉体粒子の全質量に対し、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、4質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
〔着色剤〕
着色剤としては、例えば、顔料が挙げられる。着色剤は、顔料と共に染料を併用してもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄(例えばベンガラ等)、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、ベンツイミダゾロンイエロー等の有機顔料などが挙げられる。
顔料としては、その他、光輝性顔料も挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、パール顔料、アルミニウム粉、ステンレス鋼粉等の金属粉;金属フレーク;ガラスビーズ;ガラスフレーク;雲母;リン片状酸化鉄(MIO)等が挙げられる。
【0059】
着色剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
着色剤の含有量は、顔料の種類及び塗装膜に求められる色彩、明度、及び深度等に応じて選択する。
例えば、着色剤の含有量は、粉体粒子を構成する全樹脂に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、2質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0061】
ここで、粉体粒子は、着色剤として、白色顔料と共に、白色顔料以外の着色顔料を含むことがよい。粉体粒子が着色顔料と共に白色顔料を含有することで、塗装膜により被塗装物表面の色が隠蔽され、着色顔料の発色性が向上する。なお、白色顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等の周知の白色顔料が挙げられるが、白色度が高い(つまり隠蔽性が高い)点で、酸化チタンが好ましい。
【0062】
本実施形態において、粉体塗料をクリア塗料とする場合には、酸化チタンの含有量は、粉体粒子の全質量に対し、25質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、5質量%未満であることが特に好ましく、1質量%未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
粉体塗料がクリア塗料である場合、粉体粒子に含まれる着色剤が少ない又は全くないため、静電反発が発生しやすいと推測される。そのため、クリア塗料において粉体粒子の誘電損率を40×10-3以上とした場合には、着色塗料において粉体粒子の誘電損率を40×10-3以上とした場合よりも、静電反発の発生が大きく抑制されると考えられる。
また、本実施形態において、粉体塗料を着色塗料とする場合には、酸化チタンの含有量は、25質量%以上50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、粉体粒子が酸化チタンを含有する場合、上記酸化チタンは硫酸法により製造された酸化チタンであることが好ましい。
酸化チタンの製造法としては、塩素法と硫酸法が挙げられるが、酸化チタン自体の誘電損率が高く、静電反発を更に抑制する観点から、本実施形態においては硫酸法による酸化チタンを用いることが好ましい。
【0063】
〔2価以上の金属イオン〕
粉体粒子には、2価以上の金属イオン(以下、単に「金属イオン」とも称する)を含むことがよい。この金属イオンは、後述するように、粉体粒子がコア・シェル型粒子である際には、粉体粒子の芯部及び樹脂被覆部のいずれにも含まれる成分である。
粉体粒子に2価以上の金属イオンを含むと、粉体粒子で金属イオンによるイオン架橋を形成する。例えば、熱硬化性樹脂の官能基(例えば、熱硬化性樹脂として、熱硬化性ポリエステル樹脂を使用した場合、熱硬化性ポリエステル樹脂のカルボキシル基又は水酸基)と金属イオンとが相互作用し、イオン架橋を形成する。このイオン架橋により、粉体粒子の内包物(熱硬化剤、及び熱硬化剤以外に必要に応じて添加される着色剤、その他の添加剤等)が粉体粒子の表面に析出する現象(所謂、ブリード)が抑制され、保管性が高まりやすくなる。また、このイオン架橋は、粉体塗料の塗装後、熱硬化をするときの加熱により、イオン架橋の結合が切れることで、粉体粒子の溶融粘度が低下し、平滑性の高い塗装膜を形成しやすくなる。
【0064】
金属イオンとしては、例えば、2価以上4価以下の金属イオンが挙げられる。具体的には、金属イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、及びカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンが挙げられる。
【0065】
金属イオンの供給源(粉体粒子に添加剤として含ませる化合物)としては、例えば、金属塩、無機金属塩重合体、金属錯体等が挙げられる。この金属塩、及び無機金属塩重合体は、例えば、粉体粒子を凝集合一法により作製する場合、凝集剤として粉体粒子に添加する。
金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機金属塩重合体としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリ硫酸鉄(II)、多硫化カルシウム等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。金属錯体として、具体的には、例えば、エチレンジアミン4酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ニトリル3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等の公知のキレートをベースにした金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
【0066】
なお、これら金属イオンの供給源は、凝集剤用途ではなく、単なる添加剤として添加してもよい。
【0067】
金属イオンの価数は、高い程、網目状のイオン架橋を形成しやすくなり、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で好適である。このため、金属イオンとしては、Alイオンが好ましい。つまり、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。更に、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、金属イオンの供給源のうち、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、無機金属塩重合体が好ましい。このため、金属イオンの供給源としては、特に、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。
【0068】
金属イオンの含有量は、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、粉体粒子全体に対して0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
金属イオンの含有量を0.002質量%以上とすると、金属イオンによる適度なイオン架橋が形成され、粉体粒子のブリードを抑え、塗装塗料の保管性が高まりやすくなる。一方、金属イオンの含有量を0.2質量%以下とすると、金属イオンによる過剰なイオン架橋の形成を抑え、塗装膜の平滑性が高まりやすくなる。
【0069】
ここで、粉体粒子を凝集合一法により作製する場合、凝集剤として添加される金属イオンの供給源(金属塩、金属塩重合体)は、粉体粒子の粒度分布及び形状の制御に寄与する。
【0070】
具体的には、金属イオンの価数は高い程、狭い粒度分布を得る点で好適である。また、狭い粒度分布を得る点で、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、金属塩重合体が好適である。このため、これら点からも、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましく、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が特に好ましい。
【0071】
また、金属イオンの含有量が0.002質量%以上になるように、凝集剤を添加すると、水性媒体中における樹脂粒子の凝集が進行し、狭い粒度分布の実現に寄与する。また、芯部となる凝集粒子に対して、樹脂被覆部となる樹脂粒子の凝集が進行し、芯部表面全体に対する樹脂被覆部の形成の実現に寄与する。一方、金属イオンの含有量が0.2質量%以下になるように、凝集剤を添加すると、凝集粒子中のイオン架橋の過剰な生成を抑え、融合合一するときに、生成される粉体粒子の形状が球状に近づきやすくなる。このため、これらの点からも、金属イオンの含有量は、0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
【0072】
金属イオンの含有量は、粉体粒子の蛍光X線強度を定量分析することにより測定される。具体的には、例えば、まず、樹脂と金属イオンの供給源との混合し、金属イオンの濃度が既知の樹脂混合物を得る。この樹脂混合物200mgを、直径13mmの錠剤成形器を用いて、ペレットサンプルを得る。このペレットサンプルの質量を精秤し、ペレットサンプルの蛍光X線強度測定を行って、ピーク強度を求める。同様に、金属イオンの供給源の添加量を変更したペレットサンプルについても測定を行い、これらの結果から検量線を作成する。そして、この検量線を用いて、測定対象となる粉体粒子中の金属イオンの含有量を定量分析する。
【0073】
金属イオンの含有量の調整方法としては、例えば、1)金属イオンの供給源の添加量を調整する方法、2)粉体粒子を凝集合一法により作製する場合、凝集工程において、金属イオンの供給源として凝集剤(例えば金属塩、又は金属塩重合体)を添加した後、凝集工程の最後にキレート剤(例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)等)を添加し、キレート剤により金属イオンと錯体を形成させ、その後の洗浄工程等で形成された錯塩を除去して、金属イオンの含有量を調整する方法等が挙げられる。
【0074】
〔その他の添加剤〕
その他の添加剤としては、粉体塗料に使用される各種の添加剤が挙げられる。
具体的には、その他の添加剤としては、例えば、発泡(ワキ)防止剤(例えば、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体等)、硬化促進剤(アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等)、表面調整剤(レベリング剤)、可塑剤、帯電制御剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤等が挙げられる。
【0075】
〔コア・シェル型粒子〕
本実施形態において、粉体粒子は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する芯部と、該芯部の表面を被覆する樹脂被覆部と、を有するコア・シェル型粒子であってもよい。
この際、芯部は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤の他、必要に応じて、前述したコロイダルシリカ、着色剤、その他の添加剤等を含有してもよい。
【0076】
また、コア・シェル型粒子における樹脂被覆部について、以下に説明する。
樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていてもよいし、他の成分(芯部を構成する成分として説明した熱硬化剤、その他の添加剤等)を含んでいてもよい。
但し、ブリードを低減させる点から、樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていることがよい。なお、樹脂被覆部が、樹脂以外の他の成分を含む場合でも、樹脂は樹脂被覆部全体の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)を占めることがよい。
【0077】
樹脂被覆部を構成する樹脂は、非硬化性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよいが、塗装膜の硬化密度(架橋密度)向上の点から、熱硬化性樹脂であることがよい。
樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、この熱硬化性樹脂としては、芯部の熱硬化性樹脂と同様なものが挙げられ、好ましい例も同様である。但し、樹脂被覆部の熱硬化性樹脂は、芯部の熱硬化性樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、非硬化性樹脂を適用する場合、非硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0078】
樹脂被覆部の被覆率は、ブリードの抑制の点から、30%以上100%以下が好ましく、50%以上100%以下がより好ましい。
【0079】
樹脂被覆部の被覆率は、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率はXPS(X線光電子分光)測定により求められた値である。
具体的には、XPS測定は、測定装置として日本電子(株)製、JPS-9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施する。
上記条件で得られたスペクトルから、粉体粒子表面の芯部の材料に起因する成分と被覆樹脂部の材料に起因する成分をピーク分離することによって、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率を定量する。ピーク分離は、測定されたスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離する。
分離のベースとなる成分スペクトルは、粉体粒子の作製に用いた熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、被覆用樹脂を単独に測定して得られたスペクトルを用いる。そして、粉体粒子で得られた全スペクトル強度の総和に対しての被覆用樹脂に起因するスペクトル強度の比率から、被覆率を求める。
【0080】
樹脂被覆部の厚さは、ブリード抑制の点から、0.2μm以上4μm以下が好ましく、0.3μm以上3μm以下がより好ましい。
樹脂被覆部の厚さは、次の方法により測定された値である。粉体粒子をエポキシ樹脂などに包埋し、ダイヤモンドナイフなどで切削することで薄切片を作製する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察、複数の粉体粒子の断面画像を撮影する。粉体粒子の断面画像から樹脂被覆部の厚みを20か所測定して、その平均値を採用する。クリア粉体塗料などで断面画像において樹脂被覆部の観察が難しい場合は、染色を行って観察することで、測定を容易にすることもできる。
【0081】
〔粉体粒子の好ましい特性〕
-体積粒度分布指標GSDv-
粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvは、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、1.50以下であることが好ましく、1.40以下がより好ましく、1.30以下が更に好ましい。体積粒度分布指標GSDvが1.40以下であれば、塗膜の平滑性の悪化が抑制される。
【0082】
-体積平均粒径D50v-
また、粉体粒子の体積平均粒径D50vは、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する点から、1μm以上25μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下が更に好ましい。
【0083】
-平均円形度-
更に、粉体粒子の平均円形度は、0.97以上であることが好ましく、0.98以上がより好ましく、0.99以上が更に好ましい。
粉体粒子の平均円形度が0.97以上であれば、静電反発の抑制により優れる。
静電反発の抑制により優れる理由の詳細は不明であるが、粉体粒子の平均円形度が0.97以上であれば、塗布膜の形成時に、塗布膜における粉体粒子の密度が高くなり、粉体粒子の単位質量当たりの表面積が小さくなることから塗布膜中の粉体粒子の電荷保持量も小さくなるため、粉体粒子同士の静電反発が抑制されると推測している。
【0084】
ここで、粉体粒子の体積平均粒径D50v、及び体積粒度分布指標GSDvは、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50,000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vと定義する。
そして、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として算出される。
【0085】
また、粉体粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000(シスメックス社製)」を用いることにより測定される。具体的には、予め不純固形物を除去した水100ml以上150ml以下の中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml以上0.5ml以下加え、更に測定試料を0.1g以上0.5g以下加える。測定試料を分散した懸濁液は超音波分散器で1分以上3分以下分散処理を行ない、分散液濃度を3,000個/μl以上1万個/μl以下とする。この分散液に対して、フロー式粒子像分析装置を用いて、粉体粒子の平均円形度を測定する。
【0086】
ここで、粉体粒子の平均円形度は、粉体粒子について測定されたn個の各粒子の円形度(Ci)を求め、次いで、下記式により算出される値である。但し、下記式中、Ciは、円形度(=粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子投影像の周囲長)を示し、fiは、粉体粒子の頻度を示す。
【0087】
【数1】
【0088】
-含水率-
粉体粒子の含水率は、静電反発の抑制の観点から、粉体粒子の全質量に対し、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。
粉体粒子の含水率は、TGAによる100℃までの熱減量により測定される。
【0089】
<無機粒子>
本実施形態の粉体粒子は、無機粒子を含むことが好ましい。
前記無機粒子は、粉体粒子の表面に外添される。
外添方法としては特に制限はなく、粉体塗料の分野で公知の外添方法を使用することが可能である。
無機粒子としては、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSOを含む粒子が好ましく挙げられる。
本実施形態において用いられる無機粒子としては、静電反発の抑制により優れる観点から、チタニア粒子又は酸化亜鉛粒子が好ましく、チタニア粒子がより好ましい。
上記チタニア粒子の結晶形態としては、主にルチル型とアナターゼ型が知られており、そのいずれであっても本実施形態において用いることが可能であるが、塗膜の耐光性の観点から、ルチル型が好ましい。
本実施形態において、無機粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
〔粒径〕
無機粒子の体積平均粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、15nm以上90nm以下がより好ましく、20nm以上80nm以下が更に好ましい。
無機粒子の体積平均粒径が上記範囲であれば、粉体粒子への付着性に優れ、粉体塗料により得られる塗膜の平滑性がより向上する。
無機粒子の体積平均粒径は、下記方法により測定する。
まず、測定対象となる粉体塗料を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。そして、画像解析によって、測定対象となる無機粒子100個それぞれの円相当径を求め、その体積基準の分布における小径側から体積基準での累積50%の円相当径を体積平均粒径とする。
測定対象となる無機粒子100個の円相当径を求める画像解析は、解析装置(ERA-8900:エリオニクス社製)を用いて、倍率10,000倍の二次元画像を撮影し、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事社製)を用いて、0.010000μm/pixel条件で投影面積を求め、式:円相当径=2×(投影面積/π)1/2で円相当径を求める。
なお、粉体塗料から、複数種類の外部添加剤の体積平均粒径を測定するには、各外部添加剤を区別する必要がある。具体的には、各種類の外部添加剤は、SEM-EDX(エネルギー分散型X線分析装置付きの走査型電子顕微鏡)による元素マッピングをおこない、各種類の外部添加剤に由来する元素を該当する外部添加剤に対応付けることで区別する。
【0091】
〔アスペクト比〕
本実施形態において用いられる無機粒子のアスペクト比は、1以上10以下であることが好ましい。
アスペクト比が上記範囲であれば、無機粒子が粉体粒子から遊離しにくく、かつ、粉体塗料により得られる塗膜の平滑性がより向上するため好ましい。
上記アスペクト比は、得られる塗膜の平滑性をより向上させる観点からは、1以上2未満であることが好ましく、1以上1.5以下であることがより好ましい。
また、上記アスペクト比は、無機粒子の粉体粒子からの遊離を防ぐ観点からは、2以上5以下であることが好ましく、2.5以上4.5以下であることがより好ましい。
上記アスペクト比は、粉体粒子上の無機粒子に対し、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ社製、製品名:SU8010)の影像を付属の画像解析ソフトウェア(三谷商事(株)製、製品名:WinROOF)により粒子形状分析を行うことにより、長径(L)と短径(S)の比(L/S)として測定する。
【0092】
〔疎水化処理〕
本実施形態において用いられる無機粒子は、表面が予め疎水化処理されていてもよいが、粉体塗料により得られる塗膜の平滑性をより向上する観点からは、過剰に疎水化処理されていないことが好ましい。
前記疎水化処理は、疎水化処理剤に前記無機酸化物粒子を浸漬等することにより行うことができる。前記疎水化処理剤としては特に制限はないが、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
〔体積固有抵抗〕
本実施形態において用いられる無機粒子は、体積固有抵抗が1×10Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下であることが好ましく、1×10Ω・cm以上1×1012Ω・cm以下であることがより好ましく、1×10Ω・cm以上1×1011Ω・cm以下であることが更に好ましい。
体積固有抵抗が上記範囲内であれば、粉体塗料により得られる塗膜の平滑性がより向上するため好ましい。
無機粒子の体積固有抵抗は、下記方法により測定する。
まず、粉体粒子から無機粒子を分離する。そして、20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となる分離した無機粒子を1mm以上3mm以下程度の厚さになるように載せ、無機粒子層を形成する。この上に前記同様の20cmの電極板を載せ無機層を挟み込む。無機粒子間の空隙をなくすため、無機粒子層上に設置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから無機粒子層の厚み(cm)を測定する。無機層上下の両電極には、エレクトロメーター及び高圧電源発生装置に接続されている。両電極に高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、無機粒子の体積固有抵抗(Ω・cm)を計算する。上記測定は、温度20℃、相対湿度50%の条件下において行う。無機粒子の体積固有抵抗(Ω・cm)の計算式は、下式に示す通りである。
なお、式中、ρは無機粒子の体積固有抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、Iは印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは無機粒子層の厚み(cm)をそれぞれ表す。本実施形態においては、印加電圧が1000Vの時の体積固有抵抗を用いる。
・式:ρ=E×20/(I-I)/L
【0094】
〔含有量〕
無機粒子の含有量としては、粉体塗料により得られる塗膜の平滑性向上の観点から、粉体粒子の全質量に対し、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。
【0095】
(粉体塗料の製造方法)
次に、本実施形態に係る粉体塗料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を製造後、粉体粒子に対して外部添加剤を外添することにより得られる。
【0096】
粉体粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。粉体粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
【0097】
例えば、乾式製法には、1)熱硬化性樹脂及び他の原料を混練、粉砕、分級する混練粉砕法、混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる乾式製法等がある。
一方、湿式製法には、例えば、1)熱硬化性樹脂を得るための重合性単量体を乳化重合させた分散液と、他の原料の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、粉体粒子を得る凝集合一法、2)熱硬化性樹脂を得るための重合性単量体と、他の原料の溶液とを水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、3)熱硬化性樹脂と、他の原料の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等がある。なお、湿式製法の方が、熱的な影響が小さいことから好適に使用できる。
また、水系溶媒中で上述したコロイダルシリカを粉体粒子に含有させることにより、含水率が高いコロイダルシリカを粉体粒子に含有させられる。これにより、粉体粒子の含水率がより高くなり、粉体粒子の誘電損率がより高くなるため、静電反発がより抑制される。
また、上記製法により得られた粉体粒子を芯部(コア)にして、更に樹脂粒子を付着、加熱融合して、コア・シェル型粒子である粉体粒子を得てもよい。
【0098】
これらの中でも、体積粒度分布指標GSDv、体積平均粒径D50v、及び平均円形度を上記の好ましい範囲に容易に制御できる点から、凝集合一法により、粉体粒子を得ることがよい。
【0099】
以下、コア・シェル型粒子である粉体粒子を製造する凝集合一法を例に挙げて説明する。
具体的には、
熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子とが分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程(融合合一工程)と、
を経て、粉体粒子を製造することが好ましい。
なお、この凝集合一法により製造された粉体粒子は、第1凝集粒子が融合合一した部分が芯部となり、第1凝集粒子の表面に付着した第2樹脂粒子が融合合一した部分が樹脂被覆部となる。
そのため、第1凝集粒子形成工程で形成された第1凝集粒子を、第2凝集粒子形成工程を経ず、融合合一工程へと供し、第2凝集粒子の代わりに融合及び合一すれば、単層構造の粉体粒子が得られる。
第1凝集粒子凝集工程において、更にコロイダルシリカを添加することにより、コロイダルシリカを含有する粉体粒子が得られる。コロイダルシリカは、乾燥物として添加してもよいし、分散物として添加してもよいが、分散物として添加することが好ましく、水分散物として添加することがより好ましい。
【0100】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤を含む粉体粒子の製造方法について説明するが、着色剤は必要に応じて含有するものである。
【0101】
<各分散液準備工程>
まず、凝集合一法において使用する各分散液を準備する。
具体的には、芯部の熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液、着色剤が分散された着色剤分散液、樹脂被覆部の樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を準備する。
また、第1樹脂粒子分散液、及び熱硬化剤分散液に代えて、芯部用の熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された複合粒子分散液を準備する。
なお、粉体塗料の製造方法の各工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、及び複合粒子を、総じて「樹脂粒子」と称し、これらの樹脂粒子の分散液を「樹脂粒子分散液」と称して説明する。
【0102】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0103】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水性媒体が挙げられる。
水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン性界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水性媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を水性媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0106】
樹脂粒子分散液の調製方法として、具体的には、以下の方法がある。
例えば、樹脂粒子分散液が、ポリエステル樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液の場合、かかるポリエステル樹脂粒子分散液は、原料単量体を加熱溶融及び減圧下重縮合した後、得られた重縮合体を、溶剤(例えば酢酸エチル等)を加えて溶解し、更に、得られた溶解物に弱アルカリ性水溶液を加えながら撹拌、及び転相乳化することによって得られる。
【0107】
なお、樹脂粒子分散液が複合粒子分散液である場合、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを混合して、分散媒に分散(例えば転相乳化等の乳化)することで、当該複合粒子分散液を得る
【0108】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば、1μm以下がよく、0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μmが更に好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0109】
ここで、樹脂粒子分散液を作製するためには、公知の乳化方法を用いることができるが、得られる粒度分布が狭く、且つ体積平均粒径を1μm以下(特に0.08μm以上0.40μm以下)の範囲にしやすい転相乳化法が有効である。
【0110】
転相乳化法は、樹脂を溶解する有機溶剤、更に両親媒性の有機溶剤の単独、又は混合溶剤に樹脂を溶かして油相とする。その油相を撹拌しながら塩基性化合物を少量滴下し、更に撹拌しながら水を少しずつ滴下し、油相中に水滴が取り込まれる。次に水の滴下量がある量を超えると油相と水相が逆転して油相が油滴となる。その後、減圧化の脱溶剤工程をへて水分散液が得られる。
【0111】
両親媒性の有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも5g/L以上、望ましくは10g/L以上であるものをいう。この溶解性が5g/L未満のものは、水性化処理速度を加速させる効果に乏しく、得られる水分散体も貯蔵安定性に劣る。また、両親媒性の有機溶剤としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、更には、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を混合しても使用できる。
【0112】
なお、熱硬化性樹脂としての熱硬化性ポリエステル樹脂は、水媒体に分散させる際に塩基性化合物で中和される。熱硬化性ポリエステル樹脂のカルボキシル基との中和反応が水性化の起動力であり、しかも生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、粒子間の凝集を抑制され易くなる。
塩基性化合物としてはアンモニア、沸点が250℃以下の有機アミン化合物等が挙げられる。好ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等が挙げられる。
塩基性化合物は、熱硬化性ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2倍当量以上9.0倍当量以下を添加することが好ましく、0.6倍当量以上2.0倍当量以下を添加することがより好ましい。0.2倍当量以上であれば、塩基性化合物添加の効果が認められ易い。9.0倍当量以下であれば、油相の親水性が過剰に増すことが抑制されるためと思われるが、粒径分布が広くなりにくく良好な分散液を得られ易い。
【0113】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0114】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、熱硬化剤分散液及び着色剤分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における樹脂粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤分散液中に分散する着色剤の粒子、硬化剤分散液中に分散する硬化剤の粒子についても同様である。
【0115】
<第1凝集粒子形成工程>
次に、第1樹脂粒子分散液と、熱硬化剤分散液と、着色剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とをヘテロ凝集させ、目的とする粉体粒子の径に近い径を持つ、第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とを含む第1凝集粒子を形成する。
上述の混合分散液に、更にコロイダルシリカを加えることにより、第1凝集粒子にコロイダルシリカを含有させられる。
【0116】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、第1樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、第1樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
【0117】
なお、第1凝集粒子形成工程においては、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子分散液と、着色剤分散液と、を混合し、混合分散液中で、複合粒子と着色剤とをヘテロ凝集させて、第1凝集粒子を形成してもよい。
【0118】
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0119】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、金属塩、金属塩重合体、金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
なお、凝集終了後、凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。このキレート剤の添加により、凝集剤を過剰に添加した場合、粉体粒子の金属イオンの含有量の調整が実現される。
【0120】
ここで、凝集剤としての金属塩、金属塩重合体、金属錯体は、金属イオンの供給源として用いる。これらの例示について、既述の通りである。
【0121】
キレート剤としては、水溶性のキレート剤が挙げられる。キレート剤として、具体的には、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などが挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下がよく、0.1質量部以上3.0質量部未満が好ましい。
【0122】
<第2凝集粒子形成工程>
次に、得られた第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、第2樹脂粒子分散液とを混合する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0123】
そして、第1凝集粒子、及び第2樹脂粒子が分散された混合分散液中で、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着するように凝集して、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着した第2凝集粒子を形成する。
【0124】
具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、第2樹脂粒子分散液を混合し、この混合分散液に対して、第2樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
そして、混合分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
【0125】
これにより、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
【0126】
<融合合一工程>
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合合一し、粉体粒子を形成する。
【0127】
以上の工程を経て、粉体粒子が得られる。
【0128】
ここで、融合合一工程終了後は、分散液中に形成された粉体粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態の粉体粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引ろ過、加圧ろ過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流式乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0129】
そして、本実施形態に係る粉体塗料は、得られた乾燥状態の粉体粒子に、必要に応じて無機粒子を添加し、混合することにより製造される。
なお、上記の混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。
更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使って粉体粒子の粗大粒子を取り除いてもよい。
【0130】
(静電粉体塗装方法)
本実施形態に係る静電粉体塗装方法は、本実施形態に係る粉体塗料であって、帯電した粉体塗料を吐出して、粉体塗料を被塗装物に静電付着させる工程(以下「付着工程」と称する。)と、被塗装物に静電付着した粉体塗料を加熱して、塗装膜を形成する工程(以下「焼付工程」と称する)と、を有する。
【0131】
なお、粉体塗料は、粉体粒子に着色剤を含まない透明粉体塗料(クリア塗料)、及び粉体粒子に着色剤を含む着色粉体塗料のいずれであってもよい。
【0132】
<付着工程>
付着工程は、本実施形態に係る粉体塗料であって、帯電した粉体塗料を吐出して、粉体塗料を被塗装物に静電付着させる。
具体的には、付着工程では、例えば、静電粉体塗装機の吐出口と被塗布物の塗装面(導電性を有する面)との間に静電界を形成した状態で、静電粉体塗装機の吐出口から、帯電した粉体塗料を吐出し、粉体塗料を被塗装物の被塗装面に静電付着して、粉体塗料の膜を形成する。つまり、例えば、接地した被塗布物の被塗装面を陽極、静電粉体塗装機を陰極として電圧を印加し、両極に静電界(静電場)を形成し、帯電した粉体塗料を飛翔させて、被塗布物の塗装面に静電付着して、粉体塗料の膜を形成する。
なお、付着工程では、静電粉体塗装機の吐出口と被塗装物の塗装面とを相対的に移動しつつ、実施してもよい。
【0133】
ここで、静電粉体塗装機としては、例えば、コロナガン(コロナ放電で帯電した粉体塗料を吐出する塗装機)、トリボガン(摩擦帯電で粉体塗料を吐出する塗装機)、ベルガン(コロナ放電又は摩擦帯電で帯電した粉体塗料を遠心吐出化して吐出する塗装機)等の周知の静電粉体塗装機が利用できる。そして、良好な塗着とする為の吐出条件は、各ガンの設定範囲でよい。
【0134】
被塗装物の塗装面に付着させる粉体塗料の付着量は、塗装膜の平滑性の変動を抑制する点から、40g/m以上200g/m以下(好ましくは50g/m以上100g/m以下)がよい。
【0135】
<焼付工程>
焼付工程では、被塗装物に静電付着した粉体塗料を加熱して、塗装膜を形成する。具体的には、加熱により、粉体塗料の膜の粉体粒子を溶融すると共に硬化させることで、塗装膜を形成する。
加熱温度(焼付温度)は、粉体塗料の種類に応じて選択される。一例として、加熱温度(焼付温度)は、例えば、90℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、120℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、加熱時間(焼付時間)は、加熱温度(焼付温度)に応じて調節する。
【0136】
以上の工程を経て、塗装膜の形成、即ち、被塗装物の塗装が行われる。なお、粉体塗料の付着、及び加熱(焼付)は、一括して行ってもよい。
本実施形態に係る粉体塗料を用いることにより、静電反発が抑制され、かつ、平滑性に優れる塗膜が得られる。そのため、本実施形態に係る粉体塗料を被塗装物に付着させた後に、更に、本実施形態に係る粉体塗料又は他の粉体塗料を付着させ、一括で焼き付けを行った場合には、粉体塗料同士の界面及び最外層の平滑性に優れた塗膜が得られる。
【0137】
ここで、粉体塗料を塗装する対象物品である被塗装物は、特に、制限はなく、各種の金属部品、セラミック部品、樹脂部品等が挙げられる。これら対象物品は、板状品、線状品等の各物品への成形前の未成形品であってもよいし、電子部品用、道路車両用、建築内外装資材用等に成形された成形品であってもよい。また、対象物品は、被塗装面に、予め、プライマー処理、めっき処理、電着塗装等の表面処理が施された物品であってもよい。
【実施例
【0138】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0139】
(粉体塗料の作製)
<着色剤分散液(C1)の調製>
・シアン顔料(大日精化(株)製、C.I.Pigment Blue 15:3、(銅フタロシアニン)): 100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK): 15質量部
・イオン交換水: 450質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散して着色剤(シアン顔料)を分散させてなる着色剤分散液を調製した。着色剤分散液における着色剤(シアン顔料)の平均粒径は、0.13μm、着色剤分散液(C1)の固形分比率は25質量%であった。
【0140】
<着色剤分散液(M1)の調製>
着色剤分散液(C1)の調製で用いたシアン顔料の代わりにマゼンタ顔料(大日精化(株)製、C.I.Pigment Red 122、(キナクリドン))を用いた以外は着色剤分散液(C1)の調製と同様の方法で固形分比率は25質量%の着色剤分散液(M1)を得た。
【0141】
<着色剤分散液(Y1)の調製>
着色剤分散液(C1)の調製で用いたシアン顔料の代わりにイエロー顔料(大日精化(株)製、C.I.Pigment Yellow 74、(モノアゾ顔料))を用いた以外は着色剤分散液(C1)の調製と同様の方法で固形分比率は25質量%の着色剤分散液(Y1)を得た。
【0142】
<白色顔料分散液(W1)の調製>
・酸化チタン(石原産業製 A-220): 100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK): 15質量部
・イオン交換水: 400質量部
・0.3mol/lの硝酸: 4質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて3時間分散して酸化チタンを分散させてなる白色顔料分散液を調製した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ顔料分散液における酸化チタンの体積平均粒径は、0.25μm、白色顔料分散液固形分比率は25%であった。
【0143】
<ポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)の調製>
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械(株)製:BJ-30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル180質量部とイソプロピルアルコール80質量部との混合溶剤を投入し、これに下記組成物を投入した。
・ポリエステル樹脂(PES1)[テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパンの重縮合体(モル比=100/60/38/2(mol%)、ガラス転移温度=62℃、酸価(Av)=12mgKOH/g、水酸基価(OHv)=55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=12,000、数平均分子量(Mn)=4,000]: 240質量部
・ブロックイソシアネート硬化剤VESTAGONB1530(EVONIK社製): 60質量部
・ベンゾイン: 1.5質量部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F BASF社): 3質量部
【0144】
投入後、スリーワンモーターを用い150rpmで撹拌を施し、溶解させて油相を得た。この撹拌されている油相に、10質量%アンモニア水溶液の1質量部と5質量%水酸化ナトリウム水溶液の47質量部との混合液を5分間で滴下し、10分間混合した後、更にイオン交換水900質量部を毎分5質量部の速度で滴下して転相させ、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800質量部とイオン交換水700質量部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械(株)製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1100質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は145nmであった。その後、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル製、Dowfax2A1、有効成分量45質量%)を、分散液中の樹脂分に対して有効成分として2質量%添加混合し、イオン交換水を加えて固形分濃度が25質量%になるように調整した。これをポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)とした。
【0145】
<白色粉体粒子(1)の作製>
-凝集工程-
・ポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1):180質量部(固形分45質量部)
・白色顔料分散液(W1): 160質量部(固形分40質量部)
・イオン交換水: 200質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて混合及び分散した。次いで、1.0質量%硝酸水溶液を用い、pHを3.5に調整した。これに10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.50質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌の回転数を調整しながら、50℃まで昇温し、50℃で15分保持した後、コールターカウンター[TA-II]型(アパーチャー径:50μm、ベックマン-コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmとなったところで、シェルとしてポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)60質量部をゆっくりと投入した。
【0146】
-融合合一工程-
投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0とした。その後、90℃まで昇温し、5時間保持した。
【0147】
-ろ過、洗浄、乾燥工程-
反応終了後、フラスコ内の溶液を冷却し、ろ過することにより固形分を得た。次に、この固形分を、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引ろ過で固液分離し、再度固形分を得た。
次に、この固形分を40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引ろ過で固液分離して得られた固形分を12時間真空乾燥させて白色粉体粒子(1)を得た。
この白色粉体粒子(1)の粒径を測定したところ、体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.99であった。
【0148】
得られた粉体塗料100部に対し、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、R972)1.5部を添加し、ヘンシェルミキサーにて周速30m/sにて3分混合して、篩分し、粉体塗料を得た。
【0149】
<白色粉体粒子(2)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、混合分散系を以下の構成にした。
・ポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1):180質量部
・白色顔料分散液(W1): 160質量部
・イオン交換水: 200質量部
・コロイダルシリカ(型番、日産化学社製):スノーテックスOS 2.1質量部
・イオン交換水: 200質量部
以上を混合及び分散し、10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.60質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を行った以外は白色粉体粒子(1)と同様にして白色粉体粒子(2)を得た。
この白色粉体粒子(2)の体積平均粒径D50vは6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0150】
<白色粉体粒子(3)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.2質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.60質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(3)を得た。
この白色粉体粒子(3)の体積平均粒径D50vは6.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0151】
<白色粉体粒子(4)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.3質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.72質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(4)を得た。
この白色粉体粒子(4)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.99であった。
【0152】
<白色粉体粒子(5)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.4質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.74質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(5)を得た。
この白色粉体粒子(5)の体積平均粒径D50vは6.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.99であった。<白色粉体粒子(5)の作製>
【0153】
<白色粉体粒子(6)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.5質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.77質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(6)を得た。
この白色粉体粒子(6)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0154】
<白色粉体粒子(7)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.7質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.8質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(7)を得た。
この白色粉体粒子(7)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0155】
<青色粉体粒子(1)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(7)に対し、着色剤分散液(C1)を50質量部加えた以外は白色粉体粒子(7)と同様にして青色粉体粒子(1)を得た。
この青色粉体粒子(1)の体積平均粒径D50vは6.3μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0156】
<赤色粉体粒子(1)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(7)に対し、着色剤分散液(M1)を50質量部加えた以外は白色粉体粒子(7)と同様にして赤色粉体粒子(1)を得た。
この赤色粉体粒子(1)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.99であった。
【0157】
<黄色粉体粒子(1)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(7)に対し、着色剤分散液(Y1)を70質量部加えた以外は白色粉体粒子(7)と同様にして黄色粉体粒子(1)を得た。
この赤色粉体粒子(1)の体積平均粒径D50vは6.3μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.99であった。
【0158】
<白色粉体粒子(8)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.7質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.1質量部にし、融合合一条件を80℃、5時間にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(8)を得た。
この白色粉体粒子(8)の体積平均粒径D50vは6.3μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.98であった。
【0159】
<白色粉体粒子(9)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.8質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.6質量部にし、融合合一条件を80℃、3時間にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(9)を得た。
この白色粉体粒子(9)の体積平均粒径D50vは6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.97であった。
【0160】
<白色粉体粒子(10)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.8質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.9質量部にし、融合合一条件を75℃、3時間にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(10)を得た。
この白色粉体粒子(9)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.96であった。
【0161】
<白色粉体粒子(11)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.9質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.8質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(11)を得た。
この白色粉体粒子(11)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0162】
<白色粉体粒子(12)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを3.1質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.0質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(12)を得た。
この白色粉体粒子(12)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0163】
<白色粉体粒子(13)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを3.3質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.0質量部にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(13)を得た。
この白色粉体粒子(13)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は、0.99であった。
【0164】
<白色粉体粒子(14)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを3.5質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.6質量部にし、融合合一条件を90℃、6時間にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(14)を得た。
この白色粉体粒子(14)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0165】
<白色粉体粒子(15)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを3.8質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.8質量部にし、融合合一条件を92℃、6時間にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(15)を得た。
この白色粉体粒子(15)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0166】
<白色粉体粒子(16)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを6質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を1.8質量部にし、融合合一条件を94℃、6時間にした以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(16)を得た。
この白色粉体粒子(16)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、平均円形度は、0.99であった。
【0167】
<白色粉体粒子(17)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.7質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.1質量部、10%塩化ナトリウム水溶液30質量部に変更した以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(17)を得た。
この白色粉体粒子(17)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.36、平均円形度は、0.99であった。
【0168】
<白色粉体粒子(18)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.7質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.04質量部、10%塩化ナトリウム水溶液50質量部に変更した以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(18)を得た。
この白色粉体粒子(18)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.45、平均円形度は、0.99であった。
【0169】
<白色粉体粒子(19)の作製>
-凝集工程-
白色粉体粒子(1)に対し、コロイダルシリカを2.8質量部にし、ポリ塩化アルミニウム水溶液を0.01質量部、10%塩化ナトリウム水溶液70質量部に変更した以外は白色粉体粒子(2)と同様にして白色粉体粒子(19)を得た。
この白色粉体粒子(18)の体積平均粒径D50vは6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.53、平均円形度は、0.99であった。
【0170】
各実施例及び比較例において用いられた粉体塗料に含まれる粉体粒子は下記の通りである。
【0171】
【表1】
【0172】
(実施例1乃至20、比較例1乃至2)
各実施例及び比較例において、表1に記載した粉体粒子を含む粉体塗料を使用し、次のようにして静電粉体塗装を実施した。
【0173】
<静電粉体塗装>
粉体塗料を旭サナック製コロナガンXR4-110Cを装填した。
そして、鏡面仕上げのアルミ板の30cm×30cmの四角形テストパネル(被塗装物)に対して、パネル正面から30cmの距離(パネルとコロナガンの吐出口との距離)で、旭サナック製コロナガンXR4-110Cを上下左右にスライドさせて、粉体塗料を吐出して、パネルに静電付着させた。コロナガンの印加電圧は80kV、入力エア圧は0.55MPa、吐出量200g/分とし、パネルに付着させる粉体塗料の付着量を50g/m、90g/m、180g/m、220g/mとした4個の塗装面を作製した。なお各付着量は±5g/mの範囲であれば良いものとした。
その後、180℃に設定した高温チャンバーに入れて30分加熱(焼付)した。このようにして、パネルに対して、静電粉体塗装を実施した。
【0174】
<静電反発の評価>
各付着量における上記方法により焼付を行う前の吐出された粉体粒子による膜の表面を観察し、下記5段階の評価により評価した。評価結果は表2に記載した。
A:表面の凹みが、220g/mの付着量の塗装面でも確認されない。
B:表面の凹みが、220g/mの付着量の塗装面で面積1cmに対し、1個以上10個未満。ただし50g/m、90g/m、180g/mでは確認されない。
C:表面の凹みが、220g/mの付着量の塗装面で面積1cmに対し、11個以上20個未満。180g/mで1個以上10個未満、ただし50g/m、90g/mは確認されない。
D:表面の凹みが、220g/mの付着量の塗装面で面積1cmに対し、21個以上30個未満。180g/mで11個以上20個未満、90g/mで1個以上10個未満、ただし50g/mでは確認されない。
E:50g/mで確認される。
許容されるのはDまでで、評価結果が複数及ぶときは、段階の低いほうを優先とした。例えば220g/mの付着量の塗装面で3個確認され、180g/mで4個確認された場合、段階の低いCとした。結果を表2に示す。
【0175】
<平滑性の評価>
各付着量における上記方法により焼付を行った後の塗膜表面を観察し、下記5段階の評価により評価した。評価結果は表2に記載した。
A:いずれの塗膜表面にも塗膜荒れが認められない。
B:50g/m、90g/m、180g/mでは確認できないが220g/mで、わずかな塗膜荒れが認められる。
C:180g/mで、塗膜荒れが認められる。
D:90g/mで、塗膜荒れが認められる。
E:50g/mで、塗膜荒れが認められる。
なお、許容されるのはDまでとした。結果を表2に示す。
【0176】
【表2】
【0177】
以上から次の点が明らかである。すなわち本願に記載の実施例によれば、塗装時に静電反発による塗装面の凹みの発生が抑制され、かつ塗装面からの粉体の離脱も抑制された平滑性の高い塗装面を作製することができる粉体塗料が得られる。