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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】圧着体製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20220511BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017155590
(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公開番号】P2019036419
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】濱口 陽平
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭一
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-146232(JP,A)
【文献】特開平10-289708(JP,A)
【文献】特開2001-015172(JP,A)
【文献】特開2016-103503(JP,A)
【文献】特開2003-297430(JP,A)
【文献】特開平07-085865(JP,A)
【文献】中国実用新案第206134814(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の負極に対してリチウム箔を圧着するための圧着装置を用いて、前記負極と前記負極に圧着された第1リチウム箔及び第2リチウム箔とを含む圧着体を製造する圧着体製造方法であって、
前記圧着装置は、
前記負極の表面上を回転しながら相対移動することにより、前記負極の前記表面上に順に配置された前記第1リチウム箔及び第1フィルムを前記表面に押圧して前記第1リチウム箔を前記表面に圧着する円筒状の第1ローラと、
前記第1ローラに対向するように配置され、前記負極の裏面上を回転しながら相対移動することにより、前記負極の前記裏面上に順に配置された前記第2リチウム箔及び第2フィルムを前記裏面に押圧して前記第2リチウム箔を前記裏面に圧着する円筒状の第2ローラと、を備え、
前記負極の前記表面から一端側に延出するように前記第1リチウム箔及び前記第1フィルムを前記表面上に配置する第1工程と、
前記負極の前記裏面から前記一端側に延出するように前記第2リチウム箔及び前記第2フィルムを前記裏面上に配置する第2工程と、
前記第1リチウム箔及び前記第1フィルムにおける前記表面からの延出部分と、前記第2リチウム箔及び前記第2フィルムにおける前記裏面からの延出部分と、を互いに接合して接合部を形成する第3工程と、
前記負極、前記第1リチウム箔、前記第1フィルム、前記第2リチウム箔、及び前記第2フィルムを、前記接合部側から前記第1ローラと前記第2ローラとの間に導入することにより、前記第1ローラにより前記第1フィルム及び前記第1リチウム箔を前記表面に押圧して前記第1リチウム箔を前記表面に圧着すると共に、前記第2ローラにより前記第2フィルム及び前記第2リチウム箔を前記裏面に押圧して前記第2リチウム箔を前記裏面に圧着する第4工程と、
を備え、
前記第1ローラの半径rは、前記第1ローラの円筒面から前記第1リチウム箔及び前記負極に付与される剪断力のピーク位置が前記第1リチウム箔よりも前記負極側となるように、前記負極の厚さをdоとし、前記第1リチウム箔及び前記第2リチウム箔の厚さと前記負極の厚さdоとの比をαとしたとき、下記式(1)を満たし、
前記第2ローラの半径rは、前記第2ローラの円筒面から前記第2リチウム箔及び前記負極に付与される剪断力のピーク位置が前記第2リチウム箔よりも前記負極側となるように、前記負極の厚さをdоとし、前記第1リチウム箔及び前記第2リチウム箔の厚さと前記負極の厚さdоとの比をαとしたとき、下記式(1)を満たす、
r>1.27・(2α・dо) 1/2 ・・・(1)
圧着体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着装置、及び、圧着体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帯状の負極板の両表面に対してリチウム箔を設ける方法が記載されている。この方法においては、ベースフィルムとベースフィルムに積層された金属リチウム箔とを含むリチウム箔ラミネートフィルムを使用して、リチウム箔を負極板の両表面に転写する。より具体的には、この方法においては、リチウム箔ラミネートフィルムを負極板20の両表面に重ね、これを一対の転写ロール間に通して加圧し、転写ロールの出口側でベースフィルムを剥がして巻き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-289708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にあっては、上記のような方法により、負極板の表面にリチウム箔が食い込むようになって圧接され、リチウム箔が負極板に転写されるとしている。しかしながら、本発明者は、上記のような方法により負極にリチウム箔を圧着する際には、転写ロールからリチウム箔に大きな剪断力が加わる結果、リチウム箔のずれが生じるおそれがあるとの知見を得た。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、リチウム箔のずれを抑制可能な圧着装置、及び、圧着体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧着装置は、シート状の負極に対してリチウム箔を圧着するための圧着装置であって、負極の表面上を回転しながら相対移動することにより、負極の表面上に順に配置された第1リチウム箔及び第1フィルムを表面に押圧して第1リチウム箔を表面に圧着する円筒状の第1ローラを備え、第1ローラの半径は、第1ローラの円筒面から第1リチウム箔及び負極に付与される剪断力のピーク位置が第1リチウム箔よりも負極側となるように設定されている。
【0007】
この圧着装置は、負極の表面上を回転しながら相対移動することにより、負極の表面上に順に配置された第1リチウム箔及び第1フィルムを表面に押圧して圧着する円筒状の第1ローラを備えている。そして、第1ローラの半径が、その円筒面から第1リチウム箔及び負極に付与される剪断力のピーク位置が第1リチウム箔よりも負極側となるように設定されている。このため、第1ローラから第1リチウム箔に加わる剪断力が比較的小さく制御され、第1リチウム箔のずれが抑制される。
【0008】
本発明に係る圧着装置においては、第1ローラに対向するように配置された円筒状の第2ローラをさらに備え、第2ローラは、負極の裏面上を回転しながら相対移動することにより、負極の裏面上に順に配置された第2リチウム箔及び第2フィルムを裏面に押圧して第2リチウム箔を裏面に圧着し、第2ローラの半径は、第2ローラの円筒面から第2リチウム箔及び負極に付与される剪断力のピーク位置が第2リチウム箔よりも負極側となるように設定されていてもよい。この場合、負極の表面及び裏面上において、第1及び第2リチウム箔のずれを抑制しつつ、第1及び第2リチウム箔の圧着を行うことができる。
【0009】
本発明に係る圧着装置においては、第1ローラ及び第2ローラの半径rは、負極の厚さをdоとし、第1リチウム箔及び第2リチウム箔の厚さと負極の厚さdоとの比をαとしたとき、下記式(1)を満たしてもよい。第1及び第2ローラの半径をこのように設定することにより、確実に、第1及び第2ローラの円筒面からの剪断力のピーク位置を第1及び第2リチウム箔よりも負極側となるようにできる。
r>1.27・(2α・dо)1/2・・・(1)
【0010】
本発明に係る圧着体製造方法は、上記の圧着装置を用いて、負極と負極に圧着された第1リチウム箔及び第2リチウム箔とを含む圧着体を製造する圧着体製造方法であって、負極の表面から一端側に延出するように第1リチウム箔及び第1フィルムを表面上に配置する第1工程と、負極の裏面から一端側に延出ように第2リチウム箔及び第2フィルムを裏面上に配置する第2工程と、第1リチウム箔及び第1フィルムにおける表面からの延出部分と、第2リチウム箔及び第2フィルムにおける裏面からの延出部分と、を互いに接合して接合部を形成する第3工程と、負極、第1リチウム箔、第1フィルム、第2リチウム箔、及び第2フィルムを、接合部側から第1ローラと第2ローラとの間に導入することにより、第1ローラにより第1フィルム及び第1リチウム箔を表面に押圧して第1リチウム箔を表面に圧着すると共に、第2ローラにより第2フィルム及び第2リチウム箔を裏面に押圧して第2リチウム箔を裏面に圧着する第4工程と、を備える。この方法によれば、リチウム箔のずれを確実に抑制しつつ圧着体を製造可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リチウム箔のずれを抑制可能な圧着装置、及び、圧着体製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る圧着体を示す図である。
図2】本実施形態に係る圧着装置の一例を示す模式的な断面図である。
図3図2に示されたローラを含む圧着装置の一部の拡大断面図である。
図4】ワークに生じる剪断力を示すグラフである。
図5】本実施形態に係る圧着体製造方法の主要な工程を示す図である。
図6】本実施形態に係る圧着体製造方法の主要な工程を示す図である。
図7】本実施形態に係る圧着体製造方法の主要な工程を示す図である。
図8】本実施形態に係る圧着体製造方法の主要な工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面参照して圧着装置及び圧着体製造方法の一実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素同士、又は、相当する要素同士には互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本実施形態に係る圧着体を示す図である。図1の(a)は平面図であり、図1の(b)は図1の(a)のIb-Ib線に沿っての断面図である。図1に示されるように、圧着体1は、シート状の負極2と、負極2に圧着されたリチウム箔(第1リチウム箔)3及びリチウム箔(第2リチウム箔)4と、を備えている。圧着体1は、例えば、正極(不図示)及びセパレータ等と共に積層されることにより、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池の電極組立体を構成する。負極2は、表面2f及び裏面2rを有する。リチウム箔3は、表面2fに圧着されて設けられている。リチウム箔4は、裏面2rに圧着されて設けられている。
【0015】
負極2は、金属箔21と、金属箔21の両面に形成された活物質層22と、を有する。金属箔21は、活物質層22に覆われた矩形状の本体部23と、本体部に突設され、活物質層22から露出した矩形状のタブ24と、からなる。金属箔21は、例えば銅箔からなる負極集電体である。活物質層22、負極活物質とバインダとを含んで形成された多孔質の層である。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物またはホウ素添加炭素等が挙げられる。
【0016】
本実施形態に係る圧着装置、及び、圧着体製造方法は、以上のような圧着体1を製造する。図2は、本実施形態に係る圧着装置の一例を示す模式的な断面図である。図2に示されるように、圧着装置100は、シート状の負極2に対してリチウム箔3,4を圧着するためのものである。圧着装置100は、円筒状のローラ(第1ローラ)11及びローラ(第2ローラ)12と、搬送部13,14と、を備えている。
【0017】
ローラ11とローラ12とは、互いに対向して配置されている。ローラ11は、中心軸A1を回転軸として回転駆動する。ローラ12は、中心軸A2を回転軸として、ローラ11と逆方向に回転駆動する。ローラ11の中心軸A1とローラ12の中心軸A2とは、互いの対向方向に一致している。また、ローラ11とローラ12とは、互いに同一の半径rを有している。ローラ11は外表面としての円筒面11sを有している。ローラ12は、外表面としての円筒面12sを有している。
【0018】
搬送部13は、ワークWをローラ11とローラ12との間に向けて搬送する。ワークWは、負極2と、負極2の表面2f上に順に配置されたリチウム箔3及びフィルム(第1フィルム)5と、負極2の裏面2r上に順に配置されたリチウム箔4及びフィルム(第2フィルム)6と、を含む。ワークWは、後述するように、リチウム箔3,4の圧着及びフィルム5,6の除去によって、上述した圧着体1となる加工対象物である。搬送部14は、ローラ11とローラ12との間から排出されたワークWを後段に搬送する。搬送部13,14は、ワークWの搬送のため、例えばベルトコンベアやローラ等を含んでもよい。
【0019】
ローラ11は、搬送部13により搬送されたワークWに対して、負極2の表面2f上を回転しながら負極2に対して相対移動することにより、リチウム箔3及びフィルム5を表面2fに押圧し、リチウム箔3を表面2fに圧着する。このとき、少なくとも負極2は、圧延される場合がある。ローラ12は、搬送部13により搬送されたワークWに対して、負極2の裏面2r上を回転しながら負極2に対して相対移動することにより、リチウム箔4及びフィルム6を裏面2rに押圧し、リチウム箔4を裏面2rに圧着する。このとき、少なくとも負極2は、圧延される場合がある。
【0020】
ここでは、ローラ11,12は、ワークW(負極2、リチウム箔3,4、及びフィルム5,6)を挟み込んだ状態において互いに逆回転することにより、ローラ11,12に対してワークWを移動させる。上述したように、ここでは、ローラ11,12は、半径rを含め互いに同一の形状を有しており、かつ、同じ速さで回転する。ローラ11,12の半径rは、ローラ11,12の円筒面11s,12sからリチウム箔3,4及び負極2に付与される剪断力のピーク位置がリチウム箔3,4よりも負極2側となるように設定されている。この点について、詳細に説明する。
【0021】
図3は、図2に示されたローラを含む圧着装置の一部の拡大断面図である(例えば、「吉野・中西・渡邊・宮沢(2016),アルミニウムの冷延・再結晶集合組織に及ぼすロール径およびパススケジュールの影響,軽金属 第66巻 第11号 595-601」参照)。図3においては、ハッチングが省略されている。なお、ローラ11,12の半径rについては、互いに同様に設定されている。したがって、以下では、ローラ11について詳細に説明し、ローラ12については省略する。本発明者の知見によると、ローラ11の半径が小さすぎると、負極2にリチウム箔3を圧着する際に、ローラ11からリチウム箔3に大きな剪断力が加わる結果、リチウム箔3のずれが生じるおそれがある。したがって、本実施形態においては、以下のようにローラ11の半径rの下限を設定する。
【0022】
すなわち、ローラ11の半径rは、負極2の圧延前の厚さをdоとし、リチウム箔3の厚さと負極2の厚さdоとの比をαとし、たとき、下記式(1)を満たす。
r>1.27・(2α・dо)1/2・・・(1)
【0023】
上記式(1)について具体的に説明する。図4は、ワークに生じる剪断力を示すグラフである。図4の横軸は剪断力τであり、縦軸は深さzである(図3参照)。図3,4に示されるように、ローラ11の円筒面11sからワークWに付与される剪断力τの最大値τmaxは、深さzが0.786bの位置(ピーク位置)に発生する(例えば、「転がり軸受工学編集委員会編(1975),転がり軸受工学,養賢堂」参照)。したがって、ローラ11の半径rを調整することにより、この剪断力τのピーク位置を、リチウム箔3よりも負極2側(リチウム箔3よりも深い位置)とする。
【0024】
ローラ11の円筒面11sとワークWとの接触幅をLcとすると、接触幅Lc=2bと表される。また、上述したように圧延前の負極2の厚さをdоとし、圧延後の負極2の厚さをdとする。さらに、圧延後のリチウム箔3,4を含むワークWの厚さは、圧延前の負極2の厚さdとなるとする(なお、ここでは、フィルム5,6は、そのヤング率がワークWの他の部材に比べて極端に小さいため省略されている)。このとき、リチウム箔3の厚さdfと負極の厚さdoとの比αは、α=((dо-d)/2)/dоと表される。これを変形すると、(dо-d)=2α・dоとなる。
【0025】
一方、接触幅Lc≒Lとすると、L=r・(dо-d)1/2となり、ここから、r・dо(1-α)=bとの関係式が得られる。上述したように、0.786bを、リチウム箔3よりも深い位置とするためには、0.786b>リチウム箔3の厚さdf=(dо-d)/2とする。上記のbについての関係式を用いて変形すると、0.786(r・(dо-d)1/2/2)>(dо-d)/2が得られる。これより、0.786・r・(dо-d)1/2>(dо-d)であるから、rについて整理すると、r>1.27(dо-d)1/2が得られ、これをαを用いて表現すると、上記式(1)が得られる。このように半径rの下限を設定することにより、ローラ11,12の円筒面11s,12sからリチウム箔3,4及び負極2に付与される剪断力τのピーク位置がリチウム箔3,4よりも負極2側となる。
【0026】
一方、ローラ11,12の半径rの上限は、任意に設定することができるが、例えば、装置の小型化の観点、及び、円筒面11s,12sとワークWとの線接触の確保(線圧の確保、密着力の確保)の観点から、例えば60mm~600mm程度とすることができる。
【0027】
引き続いて、上述した圧着体1を製造するための圧着体製造方法の一例について説明する。図5~8は、本実施形態に係る圧着体製造方法の主要な工程を示す図である。なお、各斜視図においても、リチウム箔の部分にハッチングを設けている。この方法においては、まず、図5の(a)に示されるように、帯状の母材を切断することにより、リチウム箔3,4を用意する。また、同様に、帯状の母材の切断により、フィルム5,6を用意する。フィルム5,6は、例えば樹脂フィルムである。樹脂フィルムの材料は特に限定されないが、フィルム圧延時にリチウム箔3,4を補強する目的で、強度及び剛性に比較的優れる材料を選択するのが好ましい。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル等は、比較的安価であり、かつリチウム箔3,4の補強用樹脂フィルムとして充分に機能し得るため、好適である。
【0028】
続いて、フィルム5上にリチウム箔3を配置すると共に、リチウム箔3の一端に加重を付加してフィルム5にリチウム箔3を固定する。これにより、ワークW1が作製される。同様に、フィルム6上にリチウム箔4を配置すると共に、リチウム箔4の一端に加重を付加してフィルム6にリチウム箔4を固定する。これにより、ワークW2を作製される。
【0029】
続いて、図5の(b)に示されるように、別のフィルムF1,F2を用意し、フィルム5と別のフィルムF1とでリチウム箔3を挟み込むようにフィルム5及びリチウム箔3上に別のフィルムF1を設ける。このとき、リチウム箔3上に潤滑液を塗布してもよい。これにより、ワークW3が作製される(図6の(a)参照)。また、フィルム6と別のフィルムF2とでリチウム箔4を挟み込むようにフィルム6及びリチウム箔4上に別のフィルムF2を設ける。このとき、リチウム箔4上に潤滑液を塗布してもよい。これにより、ワークW4が作製される(図6の(a)参照)。
【0030】
続いて、図6の(a)に示されるように、ワークW3,W4を、一対のローラR1,R2を用いて圧延する。その後、別のフィルムF1,F2を除去して圧延後のワークW1,W2を得た後に、それぞれの厚み及び重量を測定する。
【0031】
続いて、図6の(b)に示されるように、負極2を用意すると共に、負極2の表面2f側にリチウム箔3が臨むように、且つ、負極2の裏面2r側にリチウム箔4が臨むように、ワークW1とワークW2とで負極2を挟むようにワークW1,W2を配置する。このとき、図7の(a)に示されるように、ワークW1及びワークW2が、負極2の表面2f及び裏面2rから一端2a側に延出するようにする。すなわち、この工程では、負極2の表面2fから一端2a側に延出するようにリチウム箔3及びフィルム5を表面2f上に配置する(第1工程)と共に、負極2の裏面2rから一端2a側に延出ようにリチウム箔4及びフィルム6を裏面2r上に配置する(第2工程)。
【0032】
続いて、リチウム箔3及びフィルム5(ワークW1)における表面2fからの延出部分P1と、リチウム箔4及びフィルム6(ワークW2)における裏面2rからの延出部分P2と、を互いに接合して接合部Pを形成する(第3工程)。これにより、ワークWが作製される。
【0033】
そして、図7の(b)に示されるように、ワークW(負極2、リチウム箔3,4、及び、フィルム5,6)を、接合部P側からローラ11とローラ12との間に導入することにより、ローラ11によりフィルム5及びリチウム箔3を表面2fに押圧してリチウム箔3を表面2fに圧着すると共に、ローラ12によりフィルム6及びリチウム箔4を裏面2rに押圧してリチウム箔4を裏面2rに圧着する(第4工程)。
【0034】
その後、図8に示されるように、リチウム箔3,4の余剰部分と共にフィルム5,6を負極2側から剥離することによって、負極2とリチウム箔3,4とを含む圧着体1が製造される。なお、この後、剥離されたフィルム5,6の厚み及び重量を測定する工程を実施してもよい。
【0035】
以上説明したように、圧着装置100は、負極2の表面2f上を回転しながら相対移動することにより、負極2の表面2f上に順に配置されたリチウム箔3及びフィルム5を表面2fに押圧して圧着する円筒状のローラ11を備えている。そして、ローラ11の半径rが、その円筒面11sからリチウム箔3及び負極2に付与される剪断力τのピーク位置がリチウム箔3よりも負極2側となるように設定されている。このため、ローラ11からリチウム箔3に加わる剪断力が比較的小さく制御され、リチウム箔3のずれが抑制される。
【0036】
また、圧着装置100においては、ローラ11に対向するように配置された円筒状のローラ12をさらに備える。ローラ12は、負極2の裏面2r上を回転しながら相対移動することにより、負極2の裏面2r上に順に配置されたリチウム箔4及びフィルム6を裏面2rに押圧してリチウム箔4を裏面2rに圧着する。そして、ローラ12の半径rは、ローラ12の円筒面12sからリチウム箔4及び負極2に付与される剪断力τのピーク位置がリチウム箔4よりも負極2側となるように設定されている。このため、負極2の表面2f及び裏面2r上において、リチウム箔3,4のずれを抑制しつつ、リチウム箔3,4の圧着を行うことができる。
【0037】
さらに、圧着装置100においては、ローラ11,12の半径rは、負極2の厚さをdоとし、リチウム箔3,4の厚さと負極2の厚さdоとの比をαとしたとき、下記式(1)を満たしている。ローラ11,12の半径rをこのように設定することにより、確実に、ローラ11,12の円筒面11s,12sからの剪断力τのピーク位置をリチウム箔3,4よりも負極2側となるようにできる。
r>1.27・(2α・dо)1/2・・・(1)
【0038】
そして、本実施形態に係る圧着体製造方法によれば、リチウム箔3,4の圧着に先立って、リチウム箔3及びフィルム5における表面2fからの延出部分P1と、リチウム箔4及びフィルム6における裏面2rからの延出部分P2と、を互いに接合して接合部Pを形成する。そして、リチウム箔3,4の圧着の際には、その接合部P側からのローラ11,12の間への導入を行う。このため、リチウム箔3,4のずれを確実に抑制しつつ圧着体1を製造可能である。
【0039】
以上の実施形態は、本発明に係る圧着装置、及び、圧着体製造方法の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係る圧着装置、及び、圧着体製造方法は、上記実施形態に限定されず、各請求項の要旨を変更しない範囲において任意に変形され得る。
【0040】
例えば、図4に示されるように、剪断力τがその最大値τmaxの3/4の値となる深さzの範囲は、0.4b以下1.7b以上の範囲である。したがって、リチウム箔3(及び、リチウム箔4(以下同様))の厚さdfを、この範囲を避けるように設定することが好ましい。さらには、剪断力τがその最大値τmaxの半値となる深さzの範囲は、0.2b以下2.7b以上の範囲である。したがって、リチウム箔3の厚さdfを、さらにこの範囲を避けるように設定することがよい好ましい。
【0041】
ただし、剪断力τの最大値τmaxを与えるピーク位置である0.786bの±10%を避ける意味から、リチウム箔3の厚さは、0.7b以上0.9b以下の範囲を避けるように設定されてもよい。
【0042】
また、本発明は、ローラ11,12のうちの一方を用いて、リチウム箔3,4のうちの一方を圧着する場合にも適用することができる。さらに、上記実施形態においては、負極2に対してリチウム箔3,4を圧着する場合について例示したが、本発明は、正極板(正極)に対してリチウム箔を圧着する場合にも適用可能である。すなわち、本発明におけるリチウム箔の圧着対象物は、負極及び正極といったシート状の電極とすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…圧着体、2…負極、2f…表面、2r…裏面、2a…一端、3…リチウム箔(第1リチウム箔)、4…リチウム箔(第2リチウム箔)、5…フィルム(第1フィルム)、6…フィルム(第2フィルム)、11…ローラ(第1ローラ)、11s…円筒面、12…ローラ(第2ローラ)、12s…円筒面、P…接合部、P1,P2…延出部分。
図1
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図7
図8