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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電動車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20220511BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20220511BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/00 B
B62D25/20 E
B62D25/20 C
B62D25/20 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017163454
(22)【出願日】2017-08-28
(65)【公開番号】P2019038467
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼砂 雄介
(72)【発明者】
【氏名】服部 信彦
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 道弘
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103465763(CN,A)
【文献】特開2009-057035(JP,A)
【文献】特開2006-224877(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194684(WO,A1)
【文献】特開2013-063758(JP,A)
【文献】特開2009-137408(JP,A)
【文献】特開2009-057031(JP,A)
【文献】特開2009-057030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 21/00
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔を空けて配置されている一対のサイドメンバと、
前記サイドメンバに接合され、車幅方向に延びているフロントサスペンションフレームと、
前記フロントサスペンションフレームの車両後方に配置され、内部に電池ユニットを収容している電池ケースと、
前記フロントサスペンションフレームの車両後方に配置され、車幅方向に延びている電池懸架クロスメンバと、を備え、
前記電池懸架クロスメンバは、前記電池ケースの前部を懸架し、一対の前記サイドメンバの車幅方向間に配置され、前記サイドメンバに接合されている電動車両の車体構造において、
車幅方向中間部の左右両側が前方に向かって傾斜するように延びて一対の前記サイドメンバに接合される後凸クロスメンバを備えていることを特徴とする、電動車両の車体構造。
【請求項2】
一対の前記サイドメンバは、車両後方に向かうに従い互いに離れるように延びる末広がり部を有し、
前記末広がり部に前記後凸クロスメンバが接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の電動車両の車体構造。
【請求項3】
前記フロントサスペンションフレームの後部は、車両前方に凸となる凸形状部を有し、
前記後凸クロスメンバは、前記フロントサスペンションフレームと前記電池懸架クロスメンバとの間に配置され、
前記凸形状部と前記後凸クロスメンバによって枠構造が構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電動車両の車体構造。
【請求項4】
一対の前記サイドメンバよりも車幅方向内側に配置されるセンタトンネルを備え、
前記後凸クロスメンバは、前記センタトンネルに接合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電動車両の車体構造。
【請求項5】
一対の前記サイドメンバよりも車幅方向外側に配置される一対のサイドシルと、
一対の前記サイドシルと一対の前記サイドメンバを連結するブレースと、を備え、
前記ブレースは、車幅方向において前記後凸クロスメンバと一対の前記サイドメンバとの接続面と重なる位置で、前記一対の前記サイドメンバに接続されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の電動車両の車体構造。
【請求項6】
前記電池懸架クロスメンバには、車両前後方向に延びている平板状のブラケットが設けられ、
前記ブラケットは、前記電池懸架クロスメンバと前記電池ケースに接合され、前記電池懸架クロスメンバと前記電池ケースを繋いでおり、
前記ブラケットの後部は、前記電池ケースの前壁部及び底面部に面接触していることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の電動車両の車体構造。
【請求項7】
前記電池懸架クロスメンバには、車両前後方向に延びている平板状のブラケットが設けられ、
前記ブラケットは、前記電池懸架クロスメンバと前記電池ケースに接合され、前記電池懸架クロスメンバと前記電池ケースを繋いでおり、
前記電池懸架クロスメンバと前記ブラケットは、車両下方視で重なって配置され、
前記電池ケースの底面部、前記ブラケット、及び、前後方向補強部材が重ねて接合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の電動車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車等の電動車両は、車両下部にバッテリユニットを備えている。当該バッテリユニットは、複数のバッテリモジュールがユニット化されることにより構成され、車両室のフロアの下側に搭載されている。バッテリユニットは、車体を構成する部材に取り付けられている。
【0003】
バッテリユニットを搭載する電動車両の前部が衝突すると、車両室に大きな衝撃力が作用する。車両が障害物と前面衝突したときに、大きな重量を有するバッテリユニットには、車両前方側へ移動しようとする大きな慣性力が作用する。このため、バッテリユニットの上方に配置される車両室には、バッテリユニットの重量に相当する荷重が加わることになる。
【0004】
この問題を解決するために、例えば特許文献1に開示されている構造が知られている。当該文献に開示されている構造は、車幅方向両側部に一対となるように配置されたフレーム部材に、バッテリユニットが支持されており、当該フレーム部材の前部が、前輪サスペンションアームを支持するサスペンションクロスメンバに接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5477256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前突やオフセット衝突等、車両が車両前方からの衝撃荷重を受けるとき、当該衝撃荷重による車両前部の変形を抑制するために、車両前部を構成する複数の部材に、衝撃荷重を分散させる必要がある。
【0007】
上記例では、車両前方からの衝撃荷重を受けた場合、サスペンションクロスメンバで受けた荷重を、フレーム部材に分散させることができる。また、衝撃荷重を受けることによりバッテリユニットが車両前方側に移動しようとする慣性力を、フレーム部材を介してサスペンションクロスメンバで受けている。このため、サスペンションクロスメンバとフレーム部材の接合部に作用する負荷が増大する。
【0008】
特に、オフセット衝突の場合には、衝突側となる一方の車幅方向側部が大きく変形するので、バッテリユニットの前部が懸架されている領域に変形が及ぶ可能性がある。また、上記のようなバッテリユニットの慣性力により、電池バックの懸架部の維持、すなわち懸架部の破壊や脱落等を抑制することが求められている。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両前方側からの衝撃荷重による車体前部の変形を抑制するために、車体を構成する部材に衝撃荷重を効率よく分散させることが可能な電動車両の車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明に係る電動車両の車体構造は、車幅方向に間隔を空けて配置されている一対のサイドメンバと、前記サイドメンバに接合され、車幅方向に延びているフロントサスペンションフレームと、前記フロントサスペンションフレームの車両後方に配置され、内部に電池ユニットを収容している電池ケースと、前記フロントサスペンションフレームの車両後方に配置され、車幅方向に延びている電池懸架クロスメンバと、を備え、前記電池懸架クロスメンバは、前記電池ケースの前部を懸架し、一対の前記サイドメンバの車幅方向間に配置され、前記サイドメンバに接合されている。当該電動車両の車体構造は、車幅方向中間部の左右両側が前方に向かって傾斜するように延びて一対の前記サイドメンバに接合される後凸クロスメンバを、さらに備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動車両の車体構造において、車両前方側からの衝撃荷重による車体前部の変形を抑制するために、車体を構成する部材に衝撃荷重を効率よく分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る電動車両の車体構造を、車両下方から見た下面図である。
図2図1のサスペンションアーム及びフロントサスペンションフレームを取り外した状態の斜視図である。
図3図1の電池懸架クロスメンバ等を車両下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電動車両の車体構造の実施形態について、図面(図1図3)を参照して説明する。
【0014】
本実施形態の電動車両は、図1に示すように、車両前部に配置された電動モータ36及び変速機37を有している。電動モータ36や変速機37は、車両室の前部を構成するダッシュパネル(図示せず)の車両前方側に配置されている。電動モータ36は、例えば車体の前輪20aを駆動するための動力を提供する。
【0015】
当該車体構造は、フロントサスペンションフレーム21と、電池ユニット31が収容された電池ケース30と、一対のサイドメンバ17と、後凸クロスメンバ19と、電池懸架クロスメンバ25と、2つのブラケット27を有している。
【0016】
電池ユニット31は、例えば、電動モータ36等を作動させるための電源装置である。当該電池ユニット31は、詳細な図示は省略しているが、複数の電池モジュールがユニット化されて構成されており、大きな重量を有している。電池ユニット31は、電池ケース30に収容されており、当該電池ケース30は、車両室のフロア部を構成するフロアパネル10の車両下方側に配置されている。
【0017】
電池ケース30は、図1図3に示すように、車両前後方向に延びている。電池ケース30は、箱状の部材で、底面部30cと、前壁部30aと、側壁部30bに続く水平なフランジと、後壁部(図示せず)を有している。底面部30cは、車両前後方向に延び、電池ユニット31が載置されている。前壁部30aは、底面部30cの前部から車両上方に突出し、車両前後方向に延びている。前壁部30a、側壁部30bのフランジ、及び後壁部は、フロアパネル10の下面に接合されている。
【0018】
電池ケース30は、複数の補強部材30d,30eを有している。当該補強部材30d,30eは、図1及び図3に示すように、車両前後方向に延びている長板状の前後方向補強部材30dと、車幅方向に延びている長板状の幅方向補強部材30eを有している。前後方向補強部材30dは、底面部30cにおける車幅方向外側の縁部に接合されている。幅方向補強部材30eは、両側の前後方向補強部材30dに接合されている状態で、底面部30cに接合されている。この例では、図3に示すように、4つの幅方向補強部材30eが、車両前後方向に間隔を空けて配置されている。最前に配置された幅方向補強部材30eは、後述するブラケット27の車両後方に隣接するように配置されている。
【0019】
電池ユニット31には、電動モータ36等に電力を供給するための電源ケーブル(図示せず)が接続されている。電源ケーブルは、配管部材35の中に収容されている。配管部材35は、センタトンネル11内に配置され、電池ケース30の前壁部30aに接続されている。
【0020】
センタトンネル11は、図3に示すように、フロアパネル10の車幅方向中央が車両上方に膨出し、車両前後方向に延びている。本実施形態のセンタトンネル11は、フロントサスペンションフレーム21から、電池ユニット31に向かって車両後方に延びている。図示による説明は省略しているが、当該センタトンネル11は、後述する後凸クロスメンバ19及び電池懸架クロスメンバ25に対して交差するように車両前後方向に延びている。
【0021】
フロントサスペンションフレーム21は、図1に示すように、電動モータ36や変速機37の車両後方であって、前輪20aの車幅方向間に配置されており、車幅方向に延びている。フロントサスペンションフレーム21の車幅方向両側部には、サスペンションアーム20が取り付けられている。当該サスペンションアーム20には、前輪20aが回転可能に取り付けられている。なお、図1では、前輪20aは仮想的に示している。
【0022】
フロントサスペンションフレーム21の前部における車幅方向両外側部には、突出部23が設けられている。サスペンションアーム20は、当該突出部23と、後述する傾斜部22cによって支持されている。
【0023】
フロントサスペンションフレーム21は、後部に凸形状部22を有している。凸形状部22は、フロントサスペンションフレーム21の後縁部の輪郭を構成する部分であり、車両前方に凸となっている。凸形状部22は、直線部22a、湾曲部22b、傾斜部22cにより構成されている。
【0024】
直線部22aは、凸形状部22における車幅方向中間部に配置されており、車幅方向に略直線状に延びている部分である。湾曲部22bは、直線部22aの車幅方向両端に配置され、直線部22aに連続し、車幅方向外側に向かうに従い車両後方に湾曲している部分である。
【0025】
傾斜部22cは、湾曲部22bの後端から連続して、車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜するように延びている部分である。傾斜部22cの後部における上面には、後凸クロスメンバ19が接合される接合部22dが設けられている。
【0026】
続いて、サイドメンバ17及び後凸クロスメンバ19について説明する。サイドメンバ17及び後凸クロスメンバ19は、車体の骨格を構成する剛性の高い部材である。サイドメンバ17は、図1に示すように、車幅方向両側のそれぞれに配置され、車両前後方向に延びている部材であり、サイドメンバ17の上部は、フロアパネル10の下面に接合されている。
【0027】
また、サイドメンバ17の下部は、フロントサスペンションフレーム21に接合されている。また、サイドメンバ17の車幅方向外側部には、車幅方向に延びるブレース15が接合されている。当該ブレース15は、サイドシル13まで延びている。サイドシル13は、サイドメンバ17の車幅方向外側に配置され、車両前後方向に延びている。
【0028】
また、サイドメンバ17の車幅方向内側部には、後凸クロスメンバ19が接合されている。図2に示すように、ブレース15の車幅方向内側部と後凸クロスメンバ19の車幅方向外側部は、サイドメンバ17を介して互いに対向している状態で、サイドメンバ17に接合されている。
【0029】
サイドメンバ17は、図1に示すように、前部から車両後方に向かうに従い、車幅方向外側に傾斜している。すなわち、一対のサイドメンバ17は、車両後方に向かうに従い互いに離れるように延び、車両下方視でハの字状に配置されている。サイドメンバ17の後部は、サイドシル13まで延びている。
【0030】
後凸クロスメンバ19は、フロントサスペンションフレーム21の車両後方に、間隔を空けて配置され、車幅方向に延びている部材ある。後凸クロスメンバ19は、センタトンネル11を横断している状態で、センタトンネル11の縁部に接合されている。
【0031】
また、後凸クロスメンバ19は、図1及び図2に示すように、車幅方向の両外側が車両前方に屈曲し、車両下方視で全体として車両後方に凸となるように構成されている。詳細には、後凸クロスメンバ19の車幅方向中間部は、車幅方向に略直線状に延び、その両端に屈曲部が設けられている。屈曲部よりも車幅方向外側は、車幅方向外側に向かうに従い車両前方に傾斜するように延びている。
【0032】
図1に示すように、フロントサスペンションフレーム21の凸形状部22と、後凸クロスメンバ19は、互いに対向するように配置さており、凸形状部22の傾斜部22cに設けられた接合部22dに、後凸クロスメンバ19の車幅方向側部における下部が接合されている。このように配置及び接合することによって、凸形状部22及び後凸クロスメンバ19は、車両下方視で閉じられた枠構造を構成している。
【0033】
また、接合部22dは、フロントサスペンションフレーム21とサイドメンバ17が接合されている位置に近接するように配置されている。本実施形態では、サイドメンバ17、ブレース15、後凸クロスメンバ19、フロントサスペンションフレーム21等における互いに接合される位置が、上記の枠構造の車幅方向側部の周辺に密集するように配置されており、これにより剛性を高めている。
【0034】
電池懸架クロスメンバ25は、図1図3に示すように、車幅方向に延びている剛性の高い部材で、電池ケース30の前部を車両上方で懸架(支持)している。電池懸架クロスメンバ25は、後凸クロスメンバ19の車両後方に配置されており、一対のサイドメンバ17の車幅方向間、すなわち一対のサイドメンバ17の内側に配置されている。電池懸架クロスメンバ25は、車幅方向両側部がサイドメンバ17に接合されている状態で、サイドメンバ17を架け渡している。また、電池懸架クロスメンバ25は、車両上方に開口するU字状の横断面形状を有している。
【0035】
本実施形態の電池懸架クロスメンバ25は、図2及び図3に示すように、センタトンネル11の形状に沿って屈曲している。この例における電池懸架クロスメンバ25には、車幅方向に間隔を空けて2つの下側屈曲部25aが設けられている。各下側屈曲部25aは、センタトンネル11の車幅方向両側の縁部に配置されている。電池懸架クロスメンバ25は、各下側屈曲部25aからセンタトンネル11の側壁に沿って車両上方に延び、さらに、上側屈曲部25bで屈曲してセンタトンネル11の内部の天井に沿って車幅方向に延びている。すなわち、電池懸架クロスメンバ25は、車両前後方向視で、ハット形状となっている。
【0036】
続いて、2枚のブラケット27の構成について説明する。各ブラケット27は、図1及び図2に示すように、車両前後方向に延びている板状の部材で、電池懸架クロスメンバ25と電池ケース30を繋いでいる。ブラケット27の前部は、電池懸架クロスメンバ25の車幅方向両側部の下面に接合されている。本実施形態では、懸架電池クロスメンバ25と各ブラケット27は、車両下方視で重なって配置された状態で、ボルト28により締結されている。
【0037】
また、ブラケット27の後部は、電池ケース30の底面部30c及び前壁部30aに、例えば溶接により接合されている。ブラケット27の後部は、電池ケース30の前壁部30aに面接触となるように折り曲げられ、さらに、電池ケース30の底面部30cに面接触となるように折り曲げられている。
【0038】
また、ブラケット27の後部は、前後方向補強部材30dに重なって接合されている。すなわち、ブラケット27の後部は、ブラケット27、前後方向補強部材30d及び底面部30cが3枚重ねで接合されている。
【0039】
また、本実施形態の車体構造は、図1に示すように、電池懸架クロスメンバ25の車両後方に後方フロアクロスメンバ(後方クロスメンバ)26を有している。後方フロアクロスメンバ26は、剛性の高い部材であり、フロアパネル10の上面に接合されている。後方フロアクロスメンバ26は、車幅方向に延びており、一対のサイドメンバ17のそれぞれを横切っており、後方フロアクロスメンバ26の車幅方向外側部は、サイドシル13に接合されている。また、この例の後方フロアクロスメンバ26は、ブラケット27に車両下方視で重なっている状態で、フロアパネル10の上面に接合されている。
【0040】
本実施形態では、サイドメンバ17とフロントサスペンションフレーム21が接合される位置に近接する位置に、フロントサスペンションフレーム21の凸形状部22と後凸クロスメンバ19で構成される枠構造が配置される。さらに、サイドメンバ17、ブレース15、フロントサスペンションフレーム21等における互いに接合される位置が、上記の枠構造の車幅方向側部の周辺に密集するように配置されている。複数の部材の接合によって剛性の高い部位を車体前部に設けることにより、車両前方側からの衝撃荷重(前突やオフセット衝突)を受けたときに、当該衝撃荷重を剛性の高い部位で受け止めることが可能となる。
【0041】
剛性の高い部位で衝撃荷重を受け止めることで、各部材の変形により衝撃荷重を分散させるときに、変形過程で変化する荷重条件に追従して変形中の衝撃荷重を受け止める機能も安定する。また、剛性の高い部位で受け止めた衝撃荷重を、ハの字状に配置されたサイドメンバ17とセンタトンネル11により、車両後方に分散させることができる。
【0042】
また、衝撃荷重を受けたときに、車両前部には、電池ユニット31が車両前方に移動しようとする慣性力が発生する。電池懸架クロスメンバ25には、ブラケット27を介して、慣性力による荷重が作用する。このとき、ブラケット27が変形しつつ電池懸架クロスメンバ25に荷重を作用させ、さらに、センタトンネル11には、車両前方に向う荷重が伝搬される。
【0043】
ブラケット27が板状に形成されていることにより、ブラケット27と電池懸架クロスメンバ25の下面とが面接触となり、さらに、ブラケット27と電池ケース30の底面部30cとが面接触となる。これにより、車両前後方向に作用する荷重に対する強度を向上させている。
【0044】
車両前方からの衝撃荷重はサイドメンバ17を介して車両後方へ伝搬し、慣性力は主にセンタトンネル11を介して車両前方に伝搬する。
【0045】
サイドメンバ17がハの字状に配置されることにより、車両前方からの衝撃荷重の流れが、ブラケット27を避ける方向に伝搬されるので、サイドメンバ17に伝搬する慣性力による荷重は、センタトンネル11に伝搬する荷重よりも小さくなる。よって、ハの字状に配置されたサイドメンバ17により、衝撃荷重を車両後方に効果的に伝搬させることができる。
【0046】
センタトンネル11には、後凸クロスメンバ19と電池懸架クロスメンバ25の間に前後方向の荷重が作用する。このため、本実施形態では、図示による説明は省略しているが、センタトンネル11における後凸クロスメンバ19と電池懸架クロスメンバ25の間の部分には、予め剛性強化をしておくとよい。
【0047】
さらに、ブラケット27に過大な荷重が作用することを抑制できるので、電池ユニット31の保持を確実に行うことができる。
【0048】
上記に加えて、後方フロアクロスメンバ26を配置することより、車両前方側からの衝撃荷重は、後方フロアクロスメンバ26を介してフロアパネル10とサイドシル13に分散させる。また、電池ユニット31の慣性力は、電池懸架クロスメンバ25から、センタトンネル11を経由して、後方フロアクロスメンバ26を車両前方に引っ張るように荷重が作用するので、後方フロアクロスメンバ26が配置されている領域で、当該荷重を十分に吸収することができる。
【0049】
以上の説明からわかるように本実施形態のように電動車両の車体構造を構成することにより、車両前方側からの衝撃荷重(前突もしくはオフセット衝突)を受けたときに、多くの部材に衝撃荷重を効率よく分散させることが可能となる。その結果、車体前部の変形を抑制することができる。
【0050】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0051】
本実施形態では、電池ケース30の前部は、ブラケット27を介して電池懸架クロスメンバ25に接続されているが、これに限らない。電池ケース30の前部も、電池懸架クロスメンバ25に接合されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 フロアパネル
11 センタトンネル
13 サイドシル
15 ブレース
17 サイドメンバ
19 後凸クロスメンバ
20 サスペンションアーム
20a 前輪
21 フロントサスペンションフレーム
22 凸形状部
22a 直線部
22b 湾曲部
22c 傾斜部
22d 接合部
23 突出部
25 電池懸架クロスメンバ
25a 下側屈曲部
25b 上側屈曲部
26 後方フロアクロスメンバ(後方クロスメンバ)
27 ブラケット
28 ボルト
30 電池ケース
30a 前壁部
30b 側壁部
30c 底面部
30d 前後方向補強部材
30e 幅方向補強部材
31 電池ユニット
35 配管部材
36 電動モータ
37 変速機
図1
図2
図3