(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】画像形成装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G03G21/00 512
G03G21/00 386
(21)【出願番号】P 2017205273
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草壁 一史
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146566(JP,A)
【文献】特開2008-185824(JP,A)
【文献】特開2016-065889(JP,A)
【文献】特開2007-128047(JP,A)
【文献】特開2003-021991(JP,A)
【文献】特開2010-217707(JP,A)
【文献】特開2011-123440(JP,A)
【文献】特開2016-062224(JP,A)
【文献】特開2017-138501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成に関するユニットと、
前記ユニットの使用可能期間を設定するための制御装置とを備え、
前記ユニットは、回転体と、前記回転体を清掃するために前記回転体に押圧して配置される部材とを含み、
前記制御装置は、
前記ユニットについて予め定められた使用可能期間を取得し、
前記部材の前記回転体に対する押圧状態に関する初期パラメーターに基づいて前記予め定められた使用可能期間を補正して、補正結果を当該ユニットの使用可能期間として設定し、
前記ユニットを用いた平均印字率および前記回転体の
膜厚の対応関係から、
前記平均印字率に反比例する前記回転体の膜減耗量の第1の係数を算出し、
前記ユニットを用いて実行される印字ジョブの平均印字枚数および前記回転体の
膜厚の対応関係から、
前記平均印字枚数に反比例する前記回転体の膜減耗量の第2の係数を算出し、
前記ユニットが用いられたときの温度および前記回転体の
膜厚の対応関係から、
前記温度に反比例する前記回転体の膜減耗量の第3の係数を算出し、
前記使用可能期間を前記第1の係数、前記第2の係数および前記第3の係数で除することにより、前記使用可能期間を補正するように構成される、画像形成装置。
【請求項2】
前記回転体は、トナー像を担持搬送するための像担持体を含み、
前記部材は、前記像担持体に残留するトナー像を除去するためのブレードを含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ユニットは、前記像担持体を帯電するための帯電装置、および前記像担持体上に形成された静電潜像を現像するための現像装置のうち少なくともひとつをさらに含む、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ユニットについて予め定められた使用可能期間は、前記画像形成装置の記憶装置または前記画像形成装置と通信可能な外部装置の記憶装置に格納されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記初期パラメーターは、前記ユニットが未使用である状態で測定された前記回転体を駆動するためのモーターのトルクを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記初期パラメーターは、前記ユニットが未使用である状態で測定された前記部材の前記回転体に対する仮想的な食込み量を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記初期パラメーターは、前記ユニットが未使用である状態で測定された、前記回転体および前記部材の一方が他方を押圧する力を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ユニットは、当該ユニットの使用により切断されるヒューズを含み、
前記ユニットが未使用である状態は、前記ヒューズが切断される前の前記ユニットの状態を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記ユニットを用いた平均印字率に基づいて、前記設定された使用可能期間を補正するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記ユニットを用いて実行される印字ジョブの平均印字枚数に基づいて、前記設定された使用可能期間を補正するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
温度を測定するための温度センサーをさらに備え、
前記制御装置は、前記温度センサーの測定結果に基づいて、前記設定された使用可能期間を補正するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記設定された使用可能期間を他のパラメーターに基づいて補正する第1のモードと、前記設定された使用可能期間を前記他のパラメーターに基づいて補正しない第2のモードとを切り替え可能に構成される、請求項9~11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記ユニットは、前記初期パラメーターを記憶するための不揮発性メモリーを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記画像形成装置を識別するための識別情報を前記画像形成装置と通信可能に構成される外部装置に送信し、
前記外部装置から前記初期パラメーターを受信するように構成される、請求項1~13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御装置は、
前記ユニットを用いて印字された枚数、前記像担持体の回転数、または前記像担持体の回転距離を前記ユニットの使用量としてカウントし、
前記設定された使用可能期間が表す使用量を前記カウントされた使用量が上回った場合に前記ユニットの使用可能期間を満了したと判断するように構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記カウントされた使用量と前記設定された使用可能期間が表す使用量とが予め定められた条件を満たした場合に、その旨を通知するように構成される、請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
画像形成装置に含まれるユニットの使用可能期間を予測するためにコンピューターで実行されるプログラムであって、
前記ユニットは、回転体と、前記回転体を清掃するために前記回転体に押圧して配置される部材とを含み、
前記プログラムは前記コンピューターに、
前記ユニットの使用可能期間を取得するステップと、
前記部材の前記回転体に対する押圧状態に関する初期パラメーターを取得するステップと、
前記初期パラメーターに基づいて前記取得された前記ユニットの使用可能期間を補正するステップと、
前記ユニットを用いた平均印字率および前記回転体の
膜厚の対応関係から、
前記平均印字率に反比例する前記回転体の膜減耗量の第1の係数を算出するステップと、
前記ユニットを用いて実行される印字ジョブの平均印字枚数および前記回転体の
膜厚の対応関係から、
前記平均印字枚数に反比例する前記回転体の膜減耗量の第2の係数を算出するステップと、
前記ユニットが用いられたときの温度および前記回転体の
膜厚の対応関係から、
前記温度に反比例する前記回転体の膜減耗量の第3の係数を算出するステップと、
前記使用可能期間を前記第1の係数、前記第2の係数および前記第3の係数で除することにより、前記使用可能期間を補正するステップとを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、画像形成装置に関し、より特定的には、電子写真方式に従う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮などに鑑み、製品の長寿命化が求められている。この傾向は、画像形成装置も同様である。画像形成装置の長寿命化を実現するために、装置を構成する部品の正確な寿命(使用可能期間)を判断する技術が必要とされている。まだ使用できる状態であるにも拘らず寿命と判断された場合、結果的に当該部品の寿命が短くなってしまうためである。
【0003】
画像形成装置を構成する部品の寿命を判断する様々な手法が提案されている。例えば、感光体の膜厚が所定値未満になった場合に感光体が寿命に到達したと判断する構成が提案されている。
【0004】
感光体の膜削れについて、例えば、特開2007-304523号公報(特許文献1)は、「感光体/クリーニング手段間の当接圧・当接角などが大きく影響し、これらの影響は回転トルクに表れる」と開示した上で、「像担持体の回転トルクを測定する手段を有し、像担持体の感光層の膜厚を予測するに当って、回転トルクも参照することを特徴とする」画像形成装置を開示している(「要約」および「請求項3」を参照)。
【0005】
また、特開2007-128047号公報(特許文献2)は画像の最高濃度が一定となるように、「回転トルクと作像カウンタ(または感光体回転時間など)から、より正確な膜厚減少量を算出し、この膜厚減少量と感光体の帯電電位と感光体膜厚変動量に応じて露光量(LDパワー・露光時間)を変更する」画像形成装置を開示している(「要約」を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-304523号公報
【文献】特開2007-128047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子写真方式に従う画像形成装置の部品は、例えば、感光体のような回転体と、当該回転体を清掃するために押圧して配置される清掃部材とを含むユニットが挙げられる。特許文献1および2は、画像形成装置を構成するユニットの寿命を判断または予測する構成については何ら言及していない。また、従来提案されている画像形成装置を構成するユニットの寿命を判断または予測するための技術は、ユニットの使用に伴う回転体または清掃部材の状態遷移をモニタし、当該状態に応じて当該ユニットについて予め設定された寿命を補正する構成を採用している。
【0008】
しかしながら、ユニットを構成する回転体や清掃部材の製造精度や配置精度によって、上記ユニットごとに予め設定された寿命が不正確な場合がある。したがって、ユニットごとに最適な寿命(使用可能期間)を設定するための技術が必要とされている。
【0009】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、電子写真方式に従う画像形成装置を構成するユニットごとに最適な使用可能期間を設定するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある実施形態に従うと、画像形成に関するユニットと、ユニットの使用可能期間を設定するための制御装置とを備える画像形成装置が提供される。ユニットは、回転体と、回転体を清掃するために回転体に押圧して配置される部材とを含む。制御装置は、ユニットについて予め定められた使用可能期間を取得し、部材の回転体に対する押圧状態に関する初期パラメーターに基づいて予め定められた使用可能期間を補正して、補正結果を当該ユニットの使用可能期間として設定するように構成される。
【0011】
好ましくは、回転体は、トナー像を担持搬送するための像担持体を含む。部材は、像担持体に残留するトナー像を除去するためのブレードを含む。
【0012】
さらに好ましくは、ユニットは、像担持体を帯電するための帯電装置、および像担持体上に形成された静電潜像を現像するための現像装置のうち少なくともひとつをさらに含む、請求項2に記載の画像形成装置。
【0013】
好ましくは、ユニットについて予め定められた使用可能期間は、画像形成装置の記憶装置または画像形成装置と通信可能な外部装置の記憶装置に格納されている。
【0014】
好ましくは、初期パラメーターは、ユニットが未使用である状態で測定された回転体を駆動するためのモーターのトルクを含む。
【0015】
好ましくは、初期パラメーターは、ユニットが未使用である状態で測定された部材の回転体に対する仮想的な食込み量を含む。
【0016】
好ましくは、初期パラメーターは、ユニットが未使用である状態で測定された、回転体および部材の一方が他方を押圧する力を含む。
【0017】
さらに好ましくは、ユニットは、当該ユニットの使用により切断されるヒューズを含む。ユニットが未使用である状態は、ヒューズが切断される前のユニットの状態を含む。
【0018】
好ましくは、制御装置は、ユニットを用いた平均印字率に基づいて、設定された使用可能期間を補正するように構成される。
【0019】
好ましくは、制御装置は、ユニットを用いて実行される印字ジョブの平均印字枚数に基づいて、設定された使用可能期間を補正するように構成される。
【0020】
好ましくは、画像形成装置は、温度を測定するための温度センサーをさらに備える。制御装置は、温度センサーの測定結果に基づいて、設定された使用可能期間を補正するように構成される。
【0021】
好ましくは、制御装置は、ユニットを用いた平均印字率、ユニットを用いて実行される印字ジョブの平均印字枚数、およびユニットが用いられたときの温度、のうち少なくとも2つ以上に基づいて、設定された使用可能期間を補正するように構成される。
【0022】
さらに好ましくは、制御装置は、設定された使用可能期間を他のパラメーターに基づいて補正する第1のモードと、設定された使用可能期間を他のパラメーターに基づいて補正しない第2のモードとを切り替え可能に構成される。
【0023】
好ましくは、ユニットは、初期パラメーターを記憶するための不揮発性メモリーを含む。
【0024】
好ましくは、制御装置は、画像形成装置を識別するための識別情報を画像形成装置と通信可能に構成される外部装置に送信し、外部装置から初期パラメーターを受信するように構成される。
【0025】
好ましくは、制御装置は、ユニットを用いて印字された枚数、像担持体の回転数、または像担持体の回転距離をユニットの使用量としてカウントし、設定された使用可能期間が表す使用量をカウントされた使用量が上回った場合にユニットの使用可能期間を満了したと判断するように構成される。
【0026】
さらに好ましくは、制御装置は、カウントされた使用量と設定された使用可能期間が表す使用量とが予め定められた条件を満たした場合に、その旨を通知するように構成される。
【0027】
他の局面に従うと、画像形成装置に含まれるユニットの使用可能期間を予測するためにコンピューターで実行されるプログラムが提供される。ユニットは、回転体と、回転体を清掃するために回転体に押圧して配置される部材とを含む。プログラムはコンピューターに、ユニットの使用可能期間を取得するステップと、部材の回転体に対する押圧状態に関する初期パラメーターを取得するステップと、初期パラメーターに基づいて取得されたユニットの使用可能期間を補正するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0028】
ある実施形態に従う画像形成装置は、当該画像形成装置を構成する部材の使用可能期間を精度よく設定できる。
【0029】
開示された技術的特徴の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の技術思想を説明するための図である。
【
図2】実施形態に従う画像形成装置の構成例を説明する図である。
【
図4】実施形態に従う画像形成装置の電気的な構成の一例について説明する図である。
【
図5】初期パラメーターの一例について説明するための図である。
【
図6】食込み量Δuと当接力Fとの関係を表す図である。
【
図7】食込み量Δuと感光体の膜減耗量(感光体の膜の削れ量)との関係を表す図である。
【
図8】モーターのトルクと当接力Fとの関係を表す図である。
【
図9】モーターのトルクと感光体の膜減耗量との関係を表す図である。
【
図10】当接力Fと感光体の膜減耗量との関係を表す図である。
【
図11】ユニットの使用可能期間を設定する処理を表すフローチャートである。
【
図12】操作パネルにユニットの使用可能期間を表示する一態様を表す図である。
【
図13】平均印字率とユニットを用いた累計枚数と感光体の膜厚との関係を表す図である。
【
図14】平均印字枚数とユニットを用いた累計枚数と感光体の膜厚との関係を表す図である。
【
図15】平均温度とユニットを用いた累計枚数と感光体の膜厚との関係を表す図である。
【
図16】設定されたユニットの使用可能期間を補正するフローチャートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この技術的思想の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0032】
[技術思想]
電子写真方式に従う画像形成装置は、回転可能な感光体上にトナー像を形成し、中間転写体または用紙に当該トナー像を転写するように構成されている。感光体上に残存する未転写のトナーは、感光体に押圧して配置されるクリーニング部材(例えば、ブレード、ブラシ)によって回収される。
【0033】
感光体およびクリーニング部材は、一般的にユニットとして一体に形成され、当該ユニット単位で交換される。
【0034】
図1は、本開示の技術思想を説明するための図である。
図1の横軸は感光体を含むユニットの使用量を表し、縦軸は感光体の膜厚を表す。ユニットの使用量は、例えば、ユニットを用いて印字された枚数(以下、「累計枚数」とも言う)であり得る。
【0035】
ライン110は、クリーニング部材の感光体に対する初期圧力が弱い場合の、ユニットの使用量と感光体の膜厚との関係を表す。一方、ライン120は、クリーニング部材の感光体に対する初期圧力が強い場合の、ユニットの使用量と感光体の膜厚との関係を表す。「初期圧力」は、ユニットが画像形成装置において使用される前の、クリーニング部材の感光体に対する圧力を表す。
【0036】
ライン110および120に示されるように、感光体の膜削れの度合いは初期圧力に依存する。より具体的には、ライン120に示されるように初期圧力が強い場合、ユニット使用量に対する感光体の膜削れ量は多い。一方、ライン110に示されるように初期圧力が弱い場合、ユニット使用量に対する感光体の膜削れ量は少ない。
【0037】
そのため、感光体の膜厚が所定値τthに到達するまでの期間、つまり、感光体を含むユニットの使用可能期間(寿命)は、初期圧力に依存する。より具体的には、初期圧力が弱い場合の使用可能期間N2の方が、初期圧力が強い場合の使用可能期間N1よりも長い。
【0038】
この初期圧力は、ユニットごとに異なる。その理由は、ユニットごとに、クリーニング部材および感光体の製造精度並びに配置位置が異なるためである。
【0039】
そのため、実施形態に従う画像形成装置は、初期圧力に関するパラメーターを取得し、当該パラメーターに基づいてユニットごとに使用可能期間を設定する。以下、実施形態に従う画像形成装置の具体的な構成および制御について説明する。
【0040】
[実施形態]
(画像形成装置の構成)
図2は、実施形態に従う画像形成装置200の構成例を説明する図である。ある実施形態において、画像形成装置200は、レーザプリンタやLEDプリンター等の電子写真方式の画像形成装置である。
図2に示されるように、画像形成装置200は、内部の略中央部にベルト部材として中間転写ローラー1を備えている。中間転写ローラー1の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色にそれぞれ対応する4つのユニット2Y,2M,2C,2Kが中間転写ローラー1に沿って並んで配置される。これらのユニット2Y,2M,2C,2Kは、トナー像を担持可能に構成される感光体3Y,3M,3C,3Kをそれぞれ有している。感光体3Y,3M,3C,3Kはそれぞれ、回転可能に構成される。
【0041】
各感光体3Y,3M,3C,3Kの周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電装置4Y,4M,4C,4Kと、露光装置5Y,5M,5C,5Kと、現像装置6Y,6M,6C,6Kと、中間転写ローラー1を挟んで各感光体3Y,3M,3C,3Kと対向する1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kと、ブレード8Y,8M,8C,8Kがそれぞれ配置されている。ブレード8Y,8M,8C,8Kは、対応する感光体3Y,3M,3C,3Kを押圧するように接触して配置される。
【0042】
中間転写ローラー1の中間転写ベルト駆動ローラー9で支持された部分には、2次転写ローラー10が圧接されており、当該領域で2次転写が行なわれる。2次転写領域後方の搬送路R1の下流位置には、定着ローラー21と加圧ローラー22とを含む定着加熱部20が配置されている。
【0043】
画像形成装置200の下部には、給紙カセット30が着脱可能に配置されている。給紙カセット30内に積載収容された用紙Pは、給紙ローラー31の回転によって最上部の用紙から1枚ずつ搬送路R1に送り出されることになる。
【0044】
また、画像形成装置200の上部には、操作パネル80が配置されている。操作パネル80は、一例として、タッチパネルとディスプレイとが互いに重ね合わせられた画面と、物理ボタンとから構成される。
【0045】
なお、上記の例において画像形成装置200は、タンデム式の中間転写方式を採用しているがこれに限定されるものではない。例えば、サイクル方式を採用する画像形成装置であってもよいし、現像装置から印刷媒体に直接トナーを転写する直接転写方式を採用する画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、モノクロまたはカラーの複写機、プリンター、およびFAXなどの機能を有する複合機であってもよい。
【0046】
(画像形成装置200の概略動作)
次に、以上の構成からなる画像形成装置200の概略動作について説明する。ある局面において外部装置(たとえば、パソコン等)から画像形成装置200の制御装置として機能するCPU(Central Processing Unit)70に画像信号が入力される。CPU70は、入力された画像信号をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックに色変換したデジタル画像信号を作成し、入力されたデジタル信号に基づいて、各ユニット2Y,2M,2C,2Kの各露光装置5Y,5M,5C,5Kを発光させて露光を行なう。
【0047】
これにより、各感光体3Y,3M,3C,3K上に形成された静電潜像は、各現像装置6Y,6M,6C,6Kによりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。各色のトナー画像は、各1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kの作用により、
図1中の矢印A方向に移動する中間転写ローラー1上に順次重ね合わせて1次転写される。
【0048】
このようにして中間転写ローラー1上に形成されたトナー画像は、2次転写ローラー10の作用により、用紙Pに一括して2次転写される。
【0049】
用紙Pに2次転写されたトナー画像は、定着加熱部20に達する。トナー画像は、加熱された定着ローラー21、および加圧ローラー22の作用により用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、排紙ローラー50を介して排紙トレイ60に排出される。
【0050】
各感光体3Y,3M,3C,3Kにおいて中間転写ローラー1に1次転写されなかったトナー(未転写のトナー)は、対応するブレード8Y,8M,8C,8Kによって回収される。つまり、ブレード8Y,8M,8C,8Kは、対応する感光体3Y,3M,3C,3Kを清掃する。
【0051】
以下では、上述の各色ごとに設けられた構成要素からイエロー「Y」、マゼンタ「M」、シアン「C」、およびブラック「K」の符号を省略する場合がある。そのような構成要素は、4色の各構成要素の総称を表す。例えば、感光体3は、感光体3Y、3M、3C、3Kの総称を表す。
【0052】
(ユニットの構成)
図3は、ユニット2の構成の一例を表す。ユニット2は、画像形成装置200に着脱可能に構成される。ユニット2は、感光体3と、当該感光体3を清掃するブレード8とを少なくとも含む。
図3に示される例において、ユニット2はさらに、帯電装置4と現像装置6とを含む構成を採用しているが、他の実施形態において、ユニット2は、帯電装置4および現像装置6の少なくとも一方を含まないように構成されてもよい。さらに他の実施形態において、ブレード8の代わりにクリーニングブラシが配置されるように構成されてもよい。
【0053】
図3を参照して、帯電装置4は、帯電ローラー342と、当該帯電ローラー上に残留するトナーを回収するための清掃ローラー344と、バネ346とを含む。清掃ローラー344は、バネ346により帯電ローラー342に押し付けられている。
【0054】
図示しない電源装置によって帯電ローラー342が帯電される。感光体3は、帯電した帯電ローラー342との接触摩擦により、所定の電位に帯電される。
【0055】
現像装置6は、現像ローラー362と、供給スクリュー364と、撹拌スクリュー366と、規制部材368とを含む。
【0056】
撹拌スクリュー366は、トナーとキャリアとを撹拌する。トナーとキャリアとの摩擦により、トナーおよびキャリアは互いに逆の極性に帯電する。ここでは、キャリアは正極性、トナーは負極性に帯電されるものとする。正極性に帯電したキャリアの周囲に、負極性に帯電したトナーが、主として両者の電気的な吸引力により付着する。供給スクリュー364は、キャリアに付着した状態のトナーを現像ローラー362に供給する。
【0057】
現像ローラー362は回転可能に構成されるスリーブを有する。トナーおよびキャリアは、当該スリーブの回転に伴い時計回りに搬送され、規制部材368と現像ローラー362とが形成するギャップを通過することで一定の厚みに規制される。
【0058】
現像ローラー362は、図示しない電源装置によって所定の電位に帯電される。現像ローラー362上のトナーは、現像ローラー362と感光体3に形成された静電潜像との電位差に従い、当該静電潜像を現像する。
【0059】
ブレード8の近辺には、搬送スクリュー-382が配置されている。ブレード8によって回収された未転写トナーは、搬送スクリュー-382によって図示しないボックスに搬送される。
【0060】
(画像形成装置の電気的な構成)
図4は、実施形態に従う画像形成装置200の電気的な構成の一例について説明する図である。CPU70は、RAM(Random Access Memory)410と、ROM(Read Only Memory)420と、記憶装置430と、モーター440と、電流センサー450と、操作パネル80と、環境センサー470と、インターフェイス(I/F)480とに電気的に接続されている。
【0061】
CPU70は、ROM420に格納される制御プログラム422を読み出して実行することで、CPU70に接続される各デバイスの動作を制御する。
【0062】
RAM410は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)によって実現される。RAM410は、CPU70がプログラムを動作するために必要なデータや画像データを一時的に記憶するワーキングメモリとして機能する。
【0063】
ROM420は、典型的には、フラッシュメモリーによって実現される。ROM420は、制御プログラム422の他に、画像形成装置200の動作に係る各種設定情報を記憶する。
【0064】
記憶装置430は、典型的には、ハードディスクドライブによって実現される。記憶装置430は、基準期間431と、基準値432と、使用量テーブル433と、平均印字率テーブル434と、平均印字枚数テーブル435と、平均温度テーブル436と、対応関係437~439を記憶している。
【0065】
基準期間431は、画像形成装置200を構成する各部材についての予め定められた使用可能期間(寿命)を表す。本実施形態において、基準期間431は、ユニット2の使用可能期間を表すものとする。この基準期間431は、複数のユニット2の各々に共通の値として設定される。基準期間431は、例えば、ユニット2を用いて印字された累計枚数、ユニット2に含まれる感光体3の回転数または走行距離として設定される。
【0066】
基準値432は、後述する初期パラメーター462との対比に用いられる値である。使用量テーブル433は、各色のユニット2の使用量を保持する。使用量は、例えば、ユニット2を用いて印字された累計印字枚数(以下、「累計枚数」とも言う)、ユニット2に含まれる感光体3の回転数および走行距離を含む。使用量テーブル433に保持される各色ごとの使用量は、ユニット2が使用されるごとにCPU70によって更新される。記憶装置430に格納されるその他の各データについては後述する。
【0067】
モーター440は、ユニット2に含まれる感光体3を駆動する。電流センサー450は、モーター440に流れる電流の大きさを取得して、取得結果をCPU70に出力するように構成される。
【0068】
操作パネル80は、ユーザーから受け付けた操作内容(例えばタッチパネルにおける座標位置)をCPU70に出力する。
【0069】
環境センサー470は、画像形成装置200の内部の温度および湿度を測定し、測定結果をCPU70に出力する。
【0070】
通信I/F480は、一例として、無線LAN(Local Area Network)カードにより実現される。CPU70は、通信I/F480を介してLANまたはWAN(Wide Area Network)に接続されたサーバー400と通信可能に構成される。ある実施形態において、サーバー400は、各ユニット2に設定される初期パラメーター462を、当該ユニット2の識別情報(例えば製造番号)と関連付けて図示しない記憶装置に記憶する。
【0071】
ユニット2は、
図3で示される各デバイスに加え、ヒューズ455とフラッシュメモリー460とをさらに有する。ヒューズ455は、ユニット2が画像形成装置200に装着された状態において、画像形成動作を行なうことによって切断されるように構成される。つまり、ヒューズ455が切断されていないユニット2は、未使用(新品)のユニットと言える。
【0072】
フラッシュメモリー460は、初期パラメーター462を格納する。なお、他の実施形態において、上述した記憶装置430に格納されるデータのうち少なくとも1つを、記憶装置430ではなくフラッシュメモリー460が格納するように構成されてもよい。
【0073】
初期パラメーター462は、ユニット2が未使用である状態で測定されたブレード8の感光体3に対する押圧状態に関する値である。「未使用」のユニット2とは、画像形成装置200に装着されて画像形成動作を行なう前のユニット2を表す。以下、初期パラメーター462について説明する。
【0074】
(初期パラメーター)
図5は、初期パラメーター462の一例について説明するための図である。
図5(A)は、ブレード8が感光体3に押圧されている状態を表す。
図5(B)はブレード8が感光体3に押圧されていない状態を表す。
【0075】
図5(A)を参照して、ブレード8は感光体3と接触する位置で板金510に固定されている。そのため、ブレード8から感光体3に対して、感光体3の中心520に向かう方向530に当接力Fが作用する。未使用状態のユニット2における当接力Fが、上述の初期圧力に相当する。
【0076】
感光体3は、円筒状の基材の周面に感光層が形成されている。この感光層の厚みは、ユニット2の使用可能期間(寿命)が所定期間になるために必要な膜厚に設定されている。
【0077】
ブレード8は、感光体3に当接力Fを作用させて感光体3の感光層の表面を適切に削ることにより、感光体3上に残留する未転写のトナーを回収する。一例として、ブレード8は、ウレタン樹脂を含む素材により形成される。
【0078】
上述の通り、初期圧力はユニット2ごとにばらつく。
図5(B)を参照して、その理由について説明する。
【0079】
<初期パラメーター:食込み量>
初期圧力は、ブレード8の感光体3に対する食込み量Δuに依存する。感光体3(の中心520)はユニット2のうち予め定められた位置に設置される。そのため、感光体3の位置および感光体3の外周面位置は既知の値である。食込み量Δuは、感光体3が配置されていない状態において、ブレード8のうち感光体3に最も食込んでいる部分(
図5(B)の例ではブレード8の上面の左辺)から感光体3の外周面までの距離540を表す。
【0080】
この食込み量Δuは、感光体3およびブレード8の製造精度並びに配置位置によってばらつく。より具体的には、ブレード8の板金510に対する取り付け位置がばらつくことにより、ブレード8の板金510により固定されていない部分の長さ(自由長)がばらつく。自由長がばらつくと、食込み量Δuがばらつく。また、ユニット2における板金510の取り付け位置および感光体3(の中心520)の取り付け位置がばらつくことによっても、食込み量Δuがばらつく。加えて、感光体3の半径およびブレード8の厚みがばらつくことによっても、食込み量Δuがばらつく。
【0081】
初期圧力は、食込み量Δuに依存する。そこで、ある実施形態において、ブレード8の感光体3に対する押圧状態に関する初期パラメーター462として、食込み量Δuが設定される。食込み量Δuは、以下の方法でユニット2ごとに測定される。ユニット2の製造者は、ユニット2に感光体3が配置されていない状態において、ブレード8のうち感光体3に最も食込んでいる部分から、予め定められた感光体3の中心520の位置までの距離550を測定する。感光体3の半径(既知の値)から距離550を差し引いた長さが食込み量Δuとして設定される。一例として、ユニット2の製造者は、ユニット2の製造段階において食込み量Δuを測定し、測定結果を初期パラメーター462として設定する。
【0082】
図6は、食込み量Δuと当接力Fとの関係を表す図である。
図6の横軸は食込み量Δu[μm]を、縦軸は当接力F[N/m]をそれぞれ表す。
【0083】
図6に示されるように、食込み量Δuと当接力Fとは、略比例している。より具体的には、食込み量Δuが大きくなるほど、当接力Fが大きくなる。ユニット2ごとの食込み量Δuは、1μm~2μmとなる。つまり、ユニット2ごとの食込み量Δuは、最大1μmのずれが生じる。その結果、当接力Fは約17~34[N/m]の範囲内でばらつく。
【0084】
図7は、食込み量Δuと感光体3の膜減耗量(感光体3の膜の削れ量)との関係を表す図である。
図7の横軸は食込み量Δu[mm]を、縦軸は感光体3が10万回転することによる感光体3の膜減耗量[μm/100krot]をそれぞれ表す。
【0085】
図7に示されるように、食込み量Δuと、ユニット2(感光体3)の使用量に対する感光体3の膜減耗量とは、略比例している。より具体的には、食込み量Δuが小さいほど、当接力Fが小さくなって、感光体3の膜減耗量は小さくなる。
【0086】
図1で説明したように、画像形成装置200は、感光層の厚みが所定値τth(例えば10μm)以下になったと判断した場合に、ユニット2の使用可能期間(寿命)を満了したと判断する。そのため、食込み量Δuが小さいほど、ユニット2の使用可能期間は長くなる。この性質を利用して、ある実施形態に従う画像形成装置200は、食込み量Δuに基づいて、予め定められたユニット2の使用可能期間を表す基準期間431を補正する。
【0087】
ある実施形態において、基準期間431は、食込み量Δuが基準値432である場合(つまり、ユニット2ごとに食込み量Δuのバラつきがない場合)の、感光層の厚みが所定値τth以下になるまでの期間を表す。
【0088】
なお、基準値432は、用いられる初期パラメーター462によって適宜設定される。初期パラメーター462として食込み量Δuが用いられる場合、基準値432は、食込み量Δuの目標値に設定される。
【0089】
ある実施形態において、画像形成装置200のCPU70は、初期パラメーター462(食込み量Δu)と基準値432とを比較して、比較結果に基づいて基準期間431を補正する。一例として、画像形成装置200は、初期パラメーター462(食込み量Δu)を基準値432で除した値を基準期間431に乗じて得られた期間を、ユニット2の使用可能期間(寿命)として設定する。
【0090】
具体例を説明する。基準値432が1.5[μm]であって、初期パラメーター462(食込み量Δu)が1.2[μm]の場合、基準期間431を1.25倍(=1.5/1.2)した期間がユニット2の使用可能期間として設定される。
【0091】
<初期パラメーター:トルク>
次に、感光体3を駆動するモーター440のトルクを初期パラメーター462として用いる場合について説明する。
【0092】
図8は、モーター440のトルクと当接力Fとの関係を表す図である。
図8の横軸はトルク[μm]を、縦軸は当接力F[N/m]をそれぞれ表す。
【0093】
図8に示されるように、モーター440のトルクと当接力Fとは、略比例している。当接力Fは、感光体3の回転、つまり、モーター440の駆動を妨げる方向に作用する。一方、モーター440は、予め定められた速度で感光体3を回転させる。そのため、当接力Fが大きくなるほど、モーター440のトルクが大きくなる。
図8に示される例において、当接力Fは約17~34[N/m]の範囲内でばらつく。その結果、モーター440のトルクは、0.17~0.24[N・m]の範囲内でばらつく。
【0094】
図9は、モーター440のトルクと感光体3の膜減耗量との関係を表す図である。
図9の横軸はモーター440のトルク[N・m]を、縦軸は感光体3が10万回転することによる感光体3の膜減耗量[μm/100krot]をそれぞれ表す。
【0095】
図9に示されるように、モーター440のトルクと、ユニット2(感光体3)の使用量に対する感光体3の膜減耗量とは、略比例している。より具体的には、モーター440のトルクが小さいほど、感光体3の膜減耗量は小さくなる。この性質を利用して、ある実施形態に従う画像形成装置200は、モーター440のトルクに基づいて、予め定められたユニット2の使用可能期間を表す基準期間431を補正する。
【0096】
ある実施形態において、基準期間431は、モーター440のトルクが基準値432である場合(つまり、ユニット2ごとにトルクのバラつきがない場合)の、感光層の厚みが所定値τth以下になるまでの期間を表す。なお、この実施形態における基準値432は、モーター440のトルクの目標値に設定される。
【0097】
ある実施形態において、画像形成装置200のCPU70は、初期パラメーター462(モーター440のトルク)と基準値432とを比較して、比較結果に基づいて基準期間431を補正する。一例として、画像形成装置200は、初期パラメーター462(モーター440のトルク)を基準値432で除した値を基準期間431に乗じて得られた期間を、ユニット2の使用可能期間(寿命)として設定する。
【0098】
具体例を説明する。基準値432が0.205[N・m]であって、初期パラメーター462(モーター440のトルク)が0.18[N・m]の場合、基準期間431を1.14倍(=0.205/0.18)した期間がユニット2の使用可能期間として設定される。
【0099】
モーター440のトルクは例えば、ユニット2の製造者によってユニット2の製造時に公知のトルクゲージによって測定される。なお他の局面において、画像形成装置200は、ユニット2を装着されたことを検知した場合に、電流センサー450によってモーター440に流れる電流値を測定し、当該測定結果からモーター440のトルクを算出してもよい。モーター440のトルクは、モーター電流に比例するためである。この場合、ユニット2は初期パラメーター462を含むフラッシュメモリー460を有さなくともよい。
【0100】
<初期パラメーター:当接力>
次に、当接力Fを初期パラメーター462として用いる場合について説明する。
図5(B)を参照して、ある実施形態において、ユニット2の製造者は、感光体3に替えてロードセルを配置し、ブレード8の当該ロードセルに対する当接力Fを測定する。なお、当接力Fを測定するための測定装置はロードセルに限られず、公知の力を測定可能な測定装置が用いられ得る。ユニット2の製造者は、ユニット2の製造段階において当接力Fを測定し、測定結果を初期パラメーター462として設定する。
【0101】
図10は、当接力Fと感光体3の膜減耗量との関係を表す図である。
図10の横軸は当接力[N/m]を、縦軸は感光体3が10万回転することによる感光体3の膜減耗量[μm/100krot]をそれぞれ表す。上述の通り、当接力Fは約17~34[N/m]の範囲内でばらつく。
【0102】
図10に示されるように、当接力Fと膜減耗量とは略比例する。より具体的には、当接力Fが小さいほど、感光体3の膜減耗量は小さくなる。この性質を利用して、ある実施形態に従う画像形成装置200は、初期パラメーター462として当接力Fを用いて、予め定められたユニット2の使用可能期間を表す基準期間431を補正する。
【0103】
ある実施形態において、基準期間431は、当接力Fが基準値432である場合(つまり、ユニット2ごとに当接力Fのバラつきがない場合)の、感光層の厚みが所定値τth以下になるまでの期間を表す。なお、この実施形態における基準値432は、当接力Fの目標値に設定される。
【0104】
ある実施形態において、画像形成装置200のCPU70は、初期パラメーター462(当接力F)と基準値432とを比較して、比較結果に基づいて基準期間431を補正する。一例として、画像形成装置200は、初期パラメーター462(当接力F)を基準値432で除した値を基準期間431に乗じて得られた期間を、ユニット2の使用可能期間(寿命)として設定する。
【0105】
具体例を説明する。基準値432が25.5[N/m]であって、初期パラメーター462(当接力F)が21[N・m]の場合、基準期間431を1.21倍(=25.5/21)した期間がユニット2の使用可能期間として設定される。
【0106】
なお、上記において、ユニット2の製造者が初期パラメーター462(例えば、食込み量Δu、モーター440のトルク、または当接力F)を測定して、出荷前のユニット2のフラッシュメモリー460に初期パラメーター462を設定する構成について説明した。係る場合、初期パラメーター462が測定されてからユニット2が実際に画像形成装置200にセットされて使用されるまでの間に、当接力Fが小さくなり得る。その理由は、当接力Fの反作用力を受けるブレード8が経時変化(クリープ)するためである。そこで、ある実施形態に従う初期パラメーター462は、実際に測定された値(食込み量Δu、モーター440のトルク、または当接力F)から上記クリープを考慮した分だけ小さい値に設定され得る。これにより、画像形成装置200はユニット2の使用可能期間(寿命)をより高精度に予測し得る。
【0107】
また、上記の例では、基準値432は、初期パラメーター462と同次元の値に設定されていたが、他の実施形態において、初期パラメーター462と同次元の値に設定されなくともよい。例えば、基準値432は、膜摩耗量の目標値に設定され得る。
【0108】
一例として、食込み量Δuが初期パラメーター462として用いられる場合について説明する。この場合、画像形成装置200は、
図7に示されるような食込み量Δuと膜摩耗量との対応関係(テーブル、関数など)を記憶装置430またはフラッシュメモリー460に記憶している。CPU70は、当該対応関係に基づいて食込み量Δuから膜摩耗量を算出する。CPU70は、算出された膜摩耗量と基準値(膜摩耗量の目標値)とを比較し、当該比較結果に基づいて、基準期間431を補正してもよい。
【0109】
具体的に説明する。基準値432が1.0[μm/100krot]に、初期パラメーター462(食込み量Δu)が1.2[mm]であるとする。CPU70は、食込み量Δuと膜摩耗量との対応関係を参照して、初期パラメーター462に対応する膜減耗量が0.81[μm/100krot]であると特定する。CPU70は、基準期間431を1.23倍(=1.0/0.81)した期間をユニット2の使用可能期間として設定する。
【0110】
当該構成によれば、画像形成装置200は、食込み量Δuと膜摩耗量とが比例しない場合であっても、ユニット2の使用可能期間を高精度に補正できる。
【0111】
また、上記の例では、画像形成装置200は、初期パラメーター462として、食込み量Δu、モーター440のトルク、および当接力Fのいずれかを用いる構成であったが、他の局面において、これらの2つ以上を用いるように構成されてもよい。
【0112】
(制御構造)
図11は、ユニット2の使用可能期間を設定する処理を表すフローチャートである。
図11に示される処理は、CPU70が制御プログラム422を実行することにより実現される。
【0113】
ステップS1110にて、CPU70は、未使用のユニット2が画像形成装置200に装着されたことを検知する。例えば、CPU70はユニット2が装着されることによりON/OFFが切り替わるスイッチに基づいて当該判断を行なってもよいし、操作パネル80を介したユーザーの入力に基づいて当該判断を行なってもよい。
【0114】
ステップS1120にて、CPU70は、装着されたユニット2がフラッシュメモリー460を有するか否かを判断する。CPU70は、フラッシュメモリー460を有すると判断した場合にステップS1130の処理を実行する。一方、CPU70は、フラッシュメモリー460を有さないと判断した場合にステップS1140の処理を実行する。
【0115】
なお、他の局面において、画像形成装置200には、フラッシュメモリー460を有するユニットが装着されるか、フラッシュメモリー460を有さないユニットが装着されるか、が予め定められている場合がある。係る場合、画像形成装置200のCPU70は、ステップS1120の処理を行なわずに、ステップS1130またはステップS1140のいずれか一方の処理を実行するように構成されてもよい。
【0116】
ステップS1130にて、CPU70は、フラッシュメモリー460に格納される初期パラメーター462を読み出す。
【0117】
ステップS1140にて、CPU70は、ユニット2の識別情報の入力を受け付ける。例えば、CPU70は、操作パネル80にユニット2の識別情報の入力を促すメッセージを表示する。これにより、ユーザーは、操作パネル80を操作してユニット2に記載された識別情報を入力する。他の局面において、ユニット2が識別情報を格納する不揮発性メモリーを有する場合、CPU70は当該識別情報を読み出す。
【0118】
ステップS1150にて、CPU70は取得した識別情報を通信I/F480を介してサーバー400に送信する。サーバー400は、図示しない記憶装置を参照して、入力された識別情報に関連付けられた初期パラメーター462を特定する。
【0119】
ステップS1160にて、CPU70は、サーバー400から識別情報に関連付けられた初期パラメーター462を受信する。
【0120】
ステップS1165にて、CPU70は、記憶装置430にアクセスして、基準値432(予め定められたユニット2の使用可能期間)を取得する。
【0121】
ステップS1170にて、CPU70は、基準値432と初期パラメーター462とを比較する。例えば、CPU70は、初期パラメーター462に対する基準値432の割合を算出する。
【0122】
ステップS1180にて、CPU70は、基準値432と初期パラメーター462との比較結果に基づいて、基準期間431を補正する。
【0123】
ステップS1190にて、CPU70は、補正された基準期間431をユニット2の使用可能期間(寿命)として記憶装置430に記憶する。なお、他の局面において、CPU70は、補正された基準期間431をフラッシュメモリー460に記憶するように構成されてもよい。
【0124】
上記によれば、ある実施形態に従う画像形成装置200は、ブレード8の感光体3に対する押圧状態に関する初期パラメーター462に基づいて、予め設定されている基準期間431を補正する。そのため、画像形成装置200は、ユニット2ごとに最適化された使用可能期間を設定できる。
【0125】
なお、上記の例においてCPU70は、記憶装置430にアクセスして基準値432を取得しているが、他の局面において、ステップS1140~S1160と同様に、サーバー400から基準値432を取得するように構成されてもよい。係る場合、サーバー400は、基準値432を図示しない記憶装置に記憶している。
【0126】
また、上記では、ステップS1110で未使用のユニット2が画像形成装置200に装着されることを前提としているが、ある局面において、未使用ではないユニット2が画像形成装置200に装着される場合がある。
【0127】
ある局面において、CPU70は、装着されたユニット2のヒューズ455が切断されていること、または当該ユニット2のフラッシュメモリー460に格納された履歴データなどに基づいて、当該ユニット2が未使用ではないと判断する。CPU70は、未使用のユニット2のフラッシュメモリー460に使用可能期間が既に設定されている場合、
図11で示される一連の処理を実行しない。
【0128】
(使用可能期間に関する通知)
上述のように、CPU70は、ユニット2が使用されるごとに、使用量テーブル433に保持される使用量をカウントアップする。また、ユニット2が交換された場合に、当該使用量テーブルに保持される使用量を初期化する。
【0129】
画像形成装置200は、使用量テーブル433に保持されるユニット2の使用量が、ステップS1190で設定されたユニット2の使用可能期間が表す使用量を上回った場合に、当該ユニット2の使用可能期間を満了したと判断する。
【0130】
ある実施形態に従う画像形成装置200は、使用量テーブル433に保持されるユニット2の使用量と、ステップS1190で設定されたユニット2の使用可能期間が表す使用量とが予め定められた条件を満たした場合に、その旨を通知する。
【0131】
図12は、操作パネル80にユニット2の使用可能期間を表示する一態様を表す図である。
図12に示される操作パネル80は、メッセージ1210,1230と、メーター1220とを表示している。
【0132】
メッセージ1210は、設定された使用可能期間が表す印字枚数から、使用量テーブル433に保持される現在の累計枚数を差し引いた枚数、つまり、ユニット2を用いて印字できる残りの印字枚数を表す。
【0133】
メーター1220は、設定された使用可能期間が表す印字枚数に対する現在の累計枚数の割合を視覚的に表す。なお、CPU70は、当該割合を数値として操作パネル80に表示してもよい。
【0134】
メッセージ1230は、上記割合が所定割合(例えば95%)を超えた場合に、代替の(新しい)ユニット2の準備を促す内容を含む。ユーザーは、メッセージ1230を確認して代替のユニット2を準備する。これにより、ユーザーは、ユニット2が使用可能期間を満了することにより印字できない期間(ダウンタイム)が長期にわたり発生することを抑制できる。
【0135】
また、CPU70は、上記割合が所定割合を超えた場合に、その旨をサーバー400に通知するように構成されてもよい。これにより、サービスマンは、間もなく使用可能期間を満了するユニット2の交換を効率的に行なうことができる。
【0136】
また、CPU70は、使用量テーブル433に保持される現在の累計枚数が、設定された使用可能期間が表す印字枚数を上回った場合に、その旨を操作パネル80またはサーバー400の少なくとも一方に通知するように構成される。
【0137】
(設定された使用可能期間の補正)
ユニット2の環境およびユニット2の使われ方によって、ユニット2の単位使用量あたりの感光体3の膜減耗量は異なる。そのため、上記ステップS1190で設定された使用可能期間と、実際に感光体3の膜厚が所定値τth以下になるまでの期間とがずれる場合がある。
【0138】
そこで、ある実施形態に従う画像形成装置200は、所定のタイミングで上記設定された使用可能期間を補正する。
【0139】
<印字率に基づく補正>
ある実施形態において、CPU70は、トナー画像が形成されるごとに、記憶装置430に格納される平均印字率テーブル434を更新する。平均印字率テーブル434は、各色ごとの平均印字率を保持する。印字率は、一例として、用紙において画像が形成される領域のうち、トナー画像が形成される領域の割合を表す。
【0140】
CPU70は、ユニット2が交換されたことを検出すると、平均印字率テーブル434に保持される平均印字率のうち、当該ユニット2に対応する色の平均印字率を初期化する。
【0141】
図13は、平均印字率とユニット2を用いた累計枚数と感光体3の膜厚との関係を表す図である。破線は平均印字率が7.5%である場合の、実線は平均印字率が5.0%である場合の、一点鎖線は平均印字率が2.5%である場合の、ユニット2を用いた累計枚数と感光体3の膜厚との関係をそれぞれ表す。
【0142】
図13に示されるように、ユニット2の単位使用量あたりの感光体3の膜減耗量(以下、「膜減耗量の傾き」とも言う)は、平均印字率が高いほど、小さい。そのため、平均印字率が7.5%の場合の使用可能期間(感光体3の膜厚が所定値τthに到達するときのユニット2の累計枚数)N131、平均印字率が5.0%の場合の使用可能期間N132、平均印字率が2.5%の場合の使用可能期間N133、の順に使用可能期間が長い。
【0143】
そこである実施形態に従う画像形成装置200は、平均印字率テーブル434に保持される平均印字率と、記憶装置430に格納される対応関係437とに基づいて上記設定されたユニット2の使用可能期間を補正する。
【0144】
対応関係437は、平均印字率と係数とを互いに関連付けて複数保持する。ある局面において、基準値432(予め定められたユニット2の使用可能期間)は、平均印字率が5.0%であることを前提とする。この場合、平均印字率5.0%に対応する係数は1.0に設定される。
【0145】
平均印字率5.0%である場合の、膜減耗量の傾きを基準として、他の平均印字率に関連付けられる係数が設定される。例えば、平均印字率5.0%である場合の膜減耗量の傾きがX1であって、平均印字率10.0%である場合の膜減耗量の傾きがX2である場合、平均印字率10.0%に対応する係数はX2/X1に設定される。
【0146】
ある実施形態において、対応関係437は、5.0%刻みで平均印字率と係数とを保持する。なお、他の実施形態において、対応関係437は、平均印字率から上記係数を導くことができる関数であってもよい。
【0147】
CPU70は、所定のタイミングで平均印字率テーブル434に保持される平均印字率に対応する係数を特定し、ステップS1190で設定されたユニット2の使用可能期間に当該係数を除することで、当該使用可能期間を補正する。
【0148】
上記によれば、ある実施形態に従う画像形成装置200は、平均印字率に応じて設定されたユニット2の使用可能期間を補正する。そのため、画像形成装置200は、実際の平均印字率が基準値432の前提となる平均印字率と異なる場合であっても、正確な使用可能期間を設定できる。
【0149】
<印字ジョブあたりの印字枚数に基づく補正>
ある実施形態において、CPU70は、印字ジョブを実行するごとに、記憶装置430に格納される平均印字枚数テーブル435を更新する。平均印字枚数テーブル435は、各色(または、モノクロおよびカラーの各々)についての1つの印字ジョブあたりの平均印字枚数(以下、単に「平均印字枚数」とも言う)を保持する。
【0150】
CPU70は、ユニット2が交換されたことを検出すると、平均印字枚数テーブル435に保持される平均印字枚数のうち、当該ユニット2に対応する色の平均印字枚数を初期化する。
【0151】
図14は、平均印字枚数とユニット2を用いた累計枚数と感光体3の膜厚との関係を表す図である。破線は平均印字枚数が6.0枚である場合の、実線は平均印字枚数が4.0枚である場合の、一点鎖線は平均印字枚数が2.0枚である場合の、ユニット2を用いた累計枚数と感光体3の膜厚との関係をそれぞれ表す。
【0152】
図14に示されるように、膜減耗量の傾きは、平均印字枚数が多いほど小さい。そのため、平均印字枚数が6.0枚の場合の使用可能期間N141、平均印字枚数が4.0枚の場合の使用可能期間N142、平均印字枚数が2.0枚の場合の使用可能期間N143、の順に使用可能期間が長い。
【0153】
そこである実施形態に従う画像形成装置200は、平均印字枚数テーブル435に保持される平均印字枚数と、記憶装置430に格納される対応関係438とに基づいて上記設定されたユニット2の使用可能期間を補正する。
【0154】
対応関係438は、平均印字枚数と係数とを互いに関連付けて複数保持する。ある局面において、基準値432(予め定められたユニット2の使用可能期間)は、平均印字枚数が4.0枚であることを前提とする。この場合、平均印字枚数4.0枚に対応する係数は1.0に設定される。
【0155】
平均印字枚数4.0枚である場合の、膜減耗量の傾きを基準として、他の平均印字枚数に関連付けられる係数が設定される。例えば、平均印字枚数4.0枚である場合の膜減耗量の傾きがX3であって、平均印字枚数6.0枚である場合の膜減耗量の傾きがX4である場合、平均印字枚数6.0枚に対応する係数はX4/X3に設定される。
【0156】
ある実施形態において、対応関係438は、2枚刻みで平均印字枚数と係数とを保持する。なお、他の実施形態において、対応関係438は、平均印字枚数から上記係数を導くことができる関数であってもよい。
【0157】
CPU70は、所定のタイミングで平均印字枚数テーブル435に保持される平均印字枚数に対応する係数を特定し、ステップS1190で設定されたユニット2の使用可能期間に当該係数を除することで、当該使用可能期間を補正する。
【0158】
上記によれば、ある実施形態に従う画像形成装置200は、平均印字枚数に応じて設定されたユニット2の使用可能期間を補正する。そのため、画像形成装置200は、実際の平均印字枚数が基準値432の前提となる平均印字枚数と異なる場合であっても、正確な使用可能期間を設定できる。
【0159】
<環境に基づく補正>
ある実施形態において、CPU70は、予め定められたタイミングで、記憶装置430に格納される平均温度テーブル436を更新する。平均温度テーブル436は、各色(または、モノクロおよびカラーの各々)のユニットが使用されたときの平均温度を保持する。一例として、CPU70は、モノクロの印字ジョブが入力された場合に、環境センサー470が出力する温度に基づいて、平均温度テーブル436に保持されるK(ブラック)色の平均温度を更新する。
【0160】
CPU70は、ユニット2が交換されたことを検出すると、平均温度テーブル436に保持される平均温度のうち、当該ユニット2に対応する色の平均温度を初期化する。
【0161】
図15は、平均温度とユニット2を用いた累計枚数と感光体3の膜厚との関係を表す図である。破線は平均温度が26℃である場合の、実線は平均温度が20℃である場合の、一点鎖線は平均温度が14℃である場合の、ユニット2を用いた累計枚数と感光体3の膜厚との関係をそれぞれ表す。
【0162】
図15に示されるように、膜減耗量の傾きは、平均温度が高いほど小さい。平均温度が高いほどブレード8を構成するゴム(ウレタン樹脂)の硬度が低くなり、当接力Fが小さくなるためである。そのため、平均温度が26℃の場合の使用可能期間N151、平均温度が20℃の場合の使用可能期間N152、平均温度が14℃の場合の使用可能期間N153、の順に使用可能期間が長い。
【0163】
そこである実施形態に従う画像形成装置200は、平均温度テーブル436に保持される平均温度と、記憶装置430に格納される対応関係439とに基づいて上記設定されたユニット2の使用可能期間を補正する。
【0164】
対応関係439は、平均温度と係数とを互いに関連付けて複数保持する。ある局面において、基準値432(予め定められたユニット2の使用可能期間)は、平均温度が20℃であることを前提とする。この場合、平均温度20℃に対応する係数は1.0に設定される。
【0165】
平均温度20℃である場合の、膜減耗量の傾きを基準として、他の平均温度に関連付けられる係数が設定される。例えば、平均温度20℃である場合の膜減耗量の傾きがX5であって、平均温度26℃である場合の膜減耗量の傾きがX6である場合、平均温度26℃に対応する係数はX6/X5に設定される。
【0166】
ある実施形態において、対応関係439は、5℃刻みで平均温度と係数とを保持する。なお、他の実施形態において、対応関係439は、平均温度から上記係数を導くことができる関数であってもよい。
【0167】
CPU70は、所定のタイミングで平均温度テーブル436に保持される平均温度に対応する係数を特定し、ステップS1190で設定されたユニット2の使用可能期間に当該係数を除することで、当該使用可能期間を補正する。
【0168】
上記によれば、ある実施形態に従う画像形成装置200は、平均温度に応じて設定されたユニット2の使用可能期間を補正する。そのため、画像形成装置200は、実際の平均温度が基準値432の前提となる平均温度と異なる場合であっても、正確な使用可能期間を設定できる。
【0169】
なお、画像形成装置200は、上記説明した平均印字率、平均印字枚数および平均温度のうち2つ以上のパラメーターを用いて、設定されたユニット2の使用可能期間を補正するように構成されてもよい。
【0170】
<制御構造>
図16は、設定されたユニット2の使用可能期間を補正するフローチャートを表す。
図16に示される処理は、CPU70が制御プログラム422を実行することにより実現される。
【0171】
ステップS1610にて、CPU70は所定のタイミングであるか否かを判断する。所定のタイミングは、例えば、画像形成装置200に電源が投入されたタイミング、使用量テーブル433に保持される使用量が所定値(例えば、1000枚ごと)に到達したタイミング、所定期間(例えば、前回電源投入時から今回電源投入時までの期間)における温度の変動幅が所定温度(例えば5℃)を超えたタイミングなどを含み得る。
【0172】
ステップS1620にて、CPU70は、対応関係437を参照して、平均印字率テーブル434に保持される平均印字率に対応する第1係数を特定する。
【0173】
ステップS1630にて、CPU70は、対応関係438を参照して、平均印字枚数テーブル435に保持される平均印字枚数に対応する第2係数を特定する。
【0174】
ステップS1640にて、CPU70は、対応関係439を参照して、平均温度テーブル436に保持される平均温度に対応する第3係数を特定する。
【0175】
ステップS1650にて、CPU70は、設定されたユニット2の使用可能期間を、上記第1~第3係数に基づいて補正する。一例として、CPU70は、設定された使用可能期間を、第1係数,第2係数,および第3係数で除することにより、使用可能期間を補正する。
【0176】
ステップS1660にて、CPU70は、補正結果を、ユニット2の使用可能期間として改めて設定(例えば、上書き保存)する。CPU70は、補正結果を操作パネル80に出力する構成、および補正結果をサーバー400に送信する構成の少なくとも一方の構成を採用してもよい。
【0177】
上記によれば、ある実施形態に従う画像形成装置200は、ユニット2が基準値432(予め定められたユニット2の使用可能期間)の前提条件と異なる条件で使用された場合であっても、ユニット2の使用可能期間を正確に算出できる。
【0178】
なお、上記の例においてCPU70は、所定のタイミングであると判断した場合に必ず設定された使用可能期間を補正するように構成されているが、他の局面において、必ずしも当該補正を行なわなくともよい。
【0179】
一例として、CPU70は、上記補正を行なう第1のモードと、上記補正を行なわない第2のモードとを切り替え可能に構成される。CPU70は、操作パネル80を介したユーザーからの入力に基づいていずれかのモードを選択する。CPU70は、第1のモードが設定されている場合、
図16に示される一連の処理を実行し、第2のモードが設定されている場合は、所定のタイミングに到達しても上記補正処理を実行しない。
【0180】
当該構成によれば、画像形成装置200は、特に所定タイミングの頻度が高い場合(例えば、温度変動が激しい場合)において、補正処理に要する負荷を軽減できる。その結果、画像形成装置200は、ダウンタイムを抑制し得る。
【0181】
(その他のユニットへの適用)
上記の例では、回転体としての感光体3と、感光体3を清掃するためのブレード8とを含むユニット2の使用可能期間を設定および補正する処理について説明したが、当該処理は他のユニットに適用してもよい。
【0182】
例えば、回転体としての中間転写ローラー1と、当該ローラーを清掃するためのクリーニング部材(例えば、ブレード、ブラシ)とを含むユニットについて上記処理を適用してもよい。
【0183】
また、他の例として、定着ローラーに替えて定着ベルトと当該定着ベルトを清掃するためのクリーニング部材とを有する定着ユニットについて上記処理を適用してもよい。
【0184】
上記説明した各種処理は、1つのCPU70によって実現されるものとしてあるが、これに限られない。これらの各種機能は、少なくとも1つのプロセッサのような半導体集積回路、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのDSP(Digital Signal Processor)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、および/またはその他の演算機能を有する回路によって実装され得る。
【0185】
これらの回路は、有形の読取可能な少なくとも1つの媒体から、1以上の命令を読み出すことにより上記の各種処理を実行しうる。
【0186】
このような媒体は、磁気媒体(たとえば、ハードディスク)、光学媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、DVD)、揮発性メモリー、不揮発性メモリーの任意のタイプのメモリーなどの形態をとるが、これらの形態に限定されるものではない。
【0187】
揮発性メモリーはDRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)を含み得る。不揮発性メモリーは、ROM、NVRAMを含み得る。
【0188】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0189】
1 中間転写ローラー、2 ユニット、3 感光体、4 帯電装置、5 露光装置、6 現像装置、7 1次転写ローラー、8 ブレード、20 定着加熱部、80 操作パネル、200 画像形成装置、400 サーバー、410 RAM、420 ROM、422 制御プログラム、430 記憶装置、431 基準期間、432 基準値、433 使用量テーブル、434 平均印字率テーブル、435 平均印字枚数テーブル、436 平均温度テーブル、437,438,439 対応関係、440 モーター、450 電流センサー、455 ヒューズ、460 フラッシュメモリー、462 初期パラメーター、470 環境センサー、1210,1230 メッセージ、1220 メーター。