(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
A01M7/00 D
(21)【出願番号】P 2017211327
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永井 真人
(72)【発明者】
【氏名】上島 徳弘
(72)【発明者】
【氏名】赤松 克利
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸一
(72)【発明者】
【氏名】常 建卓
(72)【発明者】
【氏名】長尾 康史
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073096(JP,A)
【文献】特開2001-120040(JP,A)
【文献】特開2017-104075(JP,A)
【文献】特開2017-189172(JP,A)
【文献】特開2014-200218(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0015020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右前輪(6,6)及び左右後輪(7,7)を備えた走行車体(2)と、前記走行車体(2)の左右側に設けられた回動部を利用して、前記走行車体(2)の左右両側に向けて回動可能に配置された左右一対のサイドブーム(40b,40b)と、前記走行車体(2)に載置された散布剤を貯留する薬剤タンク(30)を備えた作業車両において、走行車体(2)の後部に乗降用ステップ(13)を設け、乗降用ステップ(13)を上下方向に回動可能に構成し、走行車体(2)の後部にキャリア(10)を設け、前記乗降用ステップ(13)を照らすライト(75)とライト(75)の点灯スイッチを前記キャリア(10)に設け
、前記乗降用ステップ(13)を上下方向に回動させる回動モータ(70)を2個設け、回動モータ(70)を駆動して乗降用ステップ(13)を昇降させる収納スイッチ(71)と使用スイッチ(72)を備え、走行車体の前方の障害物を検出する超音波センサ(73)と走行車体の後方の障害物を検出する超音波センサ(74)を乗降用ステップ(13)に設け、障害物が乗降用ステップ(13)に当接する可能性がある場合は、乗降用ステップ(13)を上昇させるように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
運転座席(4)の右側に操作パネル(77)を設け、操作パネル(77)に動かない集中操作レバー(79)を設け、集中操作レバー(79)の上部にサイドブームの昇降、旋回を実施するスイッチと、サイドブームの伸長スライドと縮小スライドを実施するスイッチを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用車両などとして用いられる作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行して薬液を散布するために用いられる作業車両としては、機体後部に乗降用ステップを設けている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の構成は、乗降用ステップ自体を折畳む構成であり、乗降用ステップ全体を回動させる構成ではない。このため、丈の長い作物などに当接する可能性がある。また、夜間や暗い場所においては、乗降ステップでの乗降がし難い状況であった。
本発明の課題は、前述のような不具合を解消する作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
【0006】
すなわち、請求項1記載の発明では、左右前輪6,6及び左右後輪7,7を備えた走行車体2と、前記走行車体2の左右側に設けられた回動部を利用して、前記走行車体2の左右両側に向けて回動可能に配置された左右一対のサイドブーム40b,40bと、前記走行車体2に載置された散布剤を貯留する薬剤タンク30を備えた作業車両において、走行車体2の後部に乗降用ステップ13を設け、乗降用ステップ13を上下方向に回動可能に構成し、走行車体2の後部にキャリア10を設け、前記乗降用ステップ13を照らすライト75とライト75の点灯スイッチを前記キャリア10に設け、前記乗降用ステップ13を上下方向に回動させる回動モータ70を2個設け、回動モータ70を駆動して乗降用ステップ13を昇降させる収納スイッチ71と使用スイッチ72を備え、走行車体の前方の障害物を検出する超音波センサ73と走行車体の後方の障害物を検出する超音波センサ74を乗降用ステップ13に設け、障害物が乗降用ステップ13に当接する可能性がある場合は、乗降用ステップ13を上昇させるように構成したことを特徴とする作業車両としたものである。
【0007】
請求項2記載の発明では、運転座席4の右側に操作パネル77を設け、操作パネル77に動かない集中操作レバー79を設け、集中操作レバー79の上部にサイドブームの昇降、旋回を実施するスイッチと、サイドブームの伸長スライドと縮小スライドを実施するスイッチを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1の発明においては、乗降用ステップ13が丈の長い作物などへ当接するのを防止できる。また、夜間や納屋などの暗い場所で、乗降用ステップでの乗降が容易となり、乗降用ステップ13の回動が容易となる。また、回動モータ70を2個設けることで、乗降用ステップ13の回動が安定する。また、乗降用ステップ13と作物などの当接を防止できる。
請求項2の発明においては、省スペース化を図ることができ、操作性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)の薬剤散布車につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、実施形態に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
本実施形態に係る薬剤散布車1は、作業員等のオペレータが走行車体2に搭乗して運転操作をしながら薬剤を圃場に散布する作業車両である。薬剤散布車1は、
図1~
図3に示すように、走行車体2と、キャビン20と薬剤タンク30と該薬剤タンク30から供給される薬剤を圃場に散布するための防除ブーム40等から構成されている。なお、本実施形態において、薬剤散布車1の進行方向は、走行車体2の前後方向に沿った方向であり、薬剤散布車1の直進時に運転座席4から前面ガラスGFに向かう方向である。また、走行車体2の車幅方向あるいは左右方向は、上記進行方向に対して水平に直交する方向である。また、走行車体2の上下方向は、上記進行方向に対して鉛直に直交する方向である。
【0012】
走行車体2は、メインフレーム3と運転座席4とステアリングハンドル5と、前輪6と後輪7とを含む構成である。メインフレーム3は、走行車体2の前後に延長して形成されている。運転座席4は、オペレータが薬剤散布車1の運転操作をする際に着座するための座席である。運転座席4の周囲の適切な位置には、防除ブーム40の開閉や薬剤の散布等の動作を制御するための操作部90が配置されている。ステアリングハンドル5は、オペレータによる回動操作によって、少なくとも左右の前輪6,6を操舵することで、薬剤散布車1の進行方向を変更する。前輪6,6は、少なくともステアリングハンドルの回動操作により操舵される操舵輪である。
【0013】
前輪6と後輪7は、ボンネットBN内のエンジンの動力がトランスミッションケース内(図示せず)で適宜変速され、変速された動力が伝達されて回転駆動する。
【0014】
キャビン20は、運転座席4およびその周辺の機器類、ステアリングハンドル等を囲むことで乗員室を形成するものである。キャビン20は、薬剤タンク30と防除ブーム40との間に配置されている。キャビン20は、キャビンフレーム21(21a、21b、21cなど)、キャビンルーフ22、左右の開閉扉25L、25Rなどから構成されている。
【0015】
キャビンフレーム21は、キャビン20前部の車幅方向の左右両側に配置されてメインフレーム3上に立設する左右の第1前部フレーム21a、21aと、左右の第1前部フレーム21a、21aの後方に配置される左右の第2フレーム21d、21dと、左右の第2フレーム21d、21dの後方に配置される左右の第3フレーム21e、21eから構成されている。さらに、左右の第3フレーム21e、21eの後方には、メインフレーム3に立設しない左右の第4フレーム21b、21bが構成され、前記左右の第1前部フレーム21a、21aと、左右の第2フレーム21d、21dと、左右の第3フレーム21e、21eと、左右の第4フレーム21b、21bの上部を連結する上部フレーム21cから構成されている。
【0016】
左右の第4フレーム21b、21bの下端部と左右の第3フレーム21e、21eの中間部には、左右の第5フレーム21f、21fで連結されている。前記左右の第1前部フレーム21a、21aの中間部は、前部連結フレーム21gで連結されている。前記左右の第4フレーム21b、21bの下端部より少し上側は、後部連結フレーム21hで連結されている。
【0017】
前部連結フレーム21gと上部フレーム21cの間には、前面ガラスGFが取り付けられ、前部連結フレームの下には下部前面ガラスGFuが取り付けられている。また、後部連結フレーム21hと上部フレーム21cとの間には、リヤガラス57が設けられており、リヤガラス57は、上側を支点にして外側に向かって開閉可能に構成している。また、左の第1前部フレーム21aと左の第2フレーム21dの間には、左の第1ガラスLG1が取り付けられ、左の第3フレーム21eと左の第4フレーム21bの間には、左の第2ガラスLG2が取り付けられ、右の第1前部フレーム21aと右の第2フレーム21dの間には、右の第1ガラスRG1が取り付けられ、右の第3フレーム21eと右の第4フレーム21bの間には、空調用の冷媒を冷却して液化するコンデンサ48が取り付けられ、該コンデンサ48の下側に右の第2ガラスRG2を取り付ける構成としている。
【0018】
前記左右の第4フレーム21b、21bの下方から左右の第5フレーム21f、21fの下方にかけて、さらに、左右の第3フレーム21e、21eの後方にかけて薬剤タンク30を接近させて設置する構成としている。前記キャビン20の前部上部には、左右の作業灯WR1、WR2を設けている。また、前記ボンネットBNの前部には、左右の前照灯BFL、BFRを設けている。前記左右の作業灯WR1、WR2は、左右の前照灯BFL、BFRと連動させる構成とする。即ち、左右の作業灯WR1、WR2を点灯すると、左右の前照灯BFL、BFRは消灯回路とする。これにより、同時点灯しないので、充放電性能を確保できバッテリー上がりを防止できる。
【0019】
薬剤タンク30は、ブーム40から散布される薬剤を収容する容器である。薬剤タンク30は、
図1に示すように、キャビン20の後側に配置されている。薬剤タンク30は、平面視で
図4に示すように、運転座席4の左右両側および後側を囲むようにコの字状に形成されている。薬剤タンク30は、メインフレーム3上に着脱可能に搭載されている。薬剤は、肥料、農薬等を溶媒(例えば、水)に溶解させた液体、および、肥料、農薬等の固形分を含む液体(例えば、水)等の液状物である。
【0020】
図5に示すように、防除ブーム40は、薬剤散布車1の前側に薬剤を散布するものである。ブーム40は、走行車体2の前側に設けられている。ブーム40は、センターブーム40aと両側方のサイドブーム40b,40bから構成されている。センターブーム40aは、薬剤散布車1の前側に配置され、走行車体2の車幅方向に水平に延在されている。センターブーム40aには、薬剤を霧状に噴射するノズル41aが間隔をおいて複数配設されている。サイドブーム40bは、走行車体2の車幅方向に延びる散布姿勢と、走行車体2の左右両側に沿う収納姿勢とに切り替え可能に、センターブーム40aの左右両側に取り付けられている。サイドブーム40bは、収納姿勢時に、走行車体2の後側の左右両側に配置されたブーム受け80で支持される。サイドブーム40bには、薬剤を霧状に散布するノズル41bが間隔をおいて複数配設されている。
【0021】
空調装置のコンデンサ48は、前述の位置に設けられており、冷媒を冷却するものであり、液化が進んだ冷媒は、コンデンサ48の後方に設置されているレシーバドライヤ55に送られる。
【0022】
図2に示すように、冷却風を生成するエアコン本体100は、キャビン20の天井部に配置されており、キャビン20の上部を覆うキャビンルーフ22で覆われている。これにより、エアコン本体100を防除時の飛散してくる薬液から保護できる。また、空調装置の外気導入部110は、
図1に示すように、キャビンルーフ22の後部中央の下方に設ける構成とする。これにより、薬液飛散の少ない後部より外気を導入可能となる。キャビンルーフ22の後部に外気導入部110を設け、その開口部はキャビン20側としているので、薬液のキャビン20内への侵入を抑制できる。
【0023】
キャビン20の両側面にはガラス板をはめ込んだ左右の開閉扉25L、25Rが設けられている。左の開閉扉25Lを閉じた状態においては、左の開閉扉25Lは、前記左の第2フレーム21d、左の第3フレーム21e、上部フレーム21c、床面STの左端部分で囲まれる部分に位置する構成としている。右の開閉扉25Rは左の開閉扉25Lの対称なので、説明は省略する。
【0024】
走行車体2の後部にキャリア10を突出して設け、その下部に設ける左右支持枠9R、9Lにポンプユニット11の運搬用取手12R、12Lを吊り下げて取り付けている(
図6)。この乗降用ステップ13は、主に薬剤タンク30やブーム受け80の保守管理作業などに用いるものである。特に、薬剤タンク30の上部蓋30aを外して薬剤を投入したり、ホースなどを差し込んで薬剤タンク30内の洗浄を行うときに使用する。
【0025】
左側の後輪7の後側で運搬用取手12Lに乗降用ステップ13をスプリングピン18で取り外し可能に垂直方向約70°で取り付けている。この乗降用ステップ13を使って走行車体2の運転座席4に乗り上がったり、薬剤タンク30の上部蓋30aを開けて薬剤や水の供給作業を行ったりする。
【0026】
この乗降用ステップ13は、上下に二段のステップ13a,13bを設け、スプリングピン18を中心にして跳ね上げて固定することも可能である。
【0027】
また、乗降用ステップ13の長さは、キャリア10の横幅とほぼ同一で、使用しない場合にキャリア10上に固定する。
【0028】
なお、運転座席4に乗るために、専用の乗降用ステップを前輪6と後輪7の間に設けてもよい。
【0029】
乗降用ステップ13の別構成について説明する。
図1と
図7に示すように、乗降用ステップ13の上部に回動モータ70を設ける構成としている。この回動モータ70を起動させると、乗降用ステップ13は矢印P方向に回動してQ位置まで回動する(収納位置)。この収納のための収納スイッチ71を乗降用ステップ13に近くに設ける構成とする。具体的には回動モータ70自体に設ける構成とする。また、乗降用ステップ13を使用位置Rにするためには、使用スイッチ72を操作する構成としており、収納スイッチ71と同様に回動モータ70自体に設ける構成とする。これにより、作物や草が想定外に大きくなっている場合に作物や草が、乗降用ステップ13に当接するのを防止できる。
【0030】
前記回動モータ70は左右2個設けることで、乗降用ステップ13の回動が安定する。
【0031】
図1に示すように、前方の障害物を検出する超音波センサ73を乗降用ステップ13に設け、障害物が乗降用ステップ13に当接する可能性がある場合は、自動で乗降用ステップ13をQ位置に回動させる構成とする。また、後方の障害物を検出する超音波センサ74を乗降用ステップ13に設け、障害物が乗降用ステップ13に当接する可能性がある場合は、自動で乗降用ステップ13をQ位置に回動させる構成とする。これにより、前進時においても後進時においても、乗降用ステップ13を保護できる。
【0032】
前記収納スイッチ71と使用スイッチ72をキャビン20内に設ける構成としてもよい。運転座席4から使用可能位置に設けることで、操作が容易となる。また、前記収納スイッチ71と使用スイッチ72は、乗降用ステップ13の近くに設け、さらにキャビン20内の両方に設けるように構成してもよい。
【0033】
また、キャリア10にライト75を設け、乗降用ステップ11を照らすように構成している。このライト75の点灯スイッチをライト75の近傍でキャリア10に設ける構成とする。これにより、夜間や納屋での暗い場所で、乗降用ステップ13の乗降が容易となる。
【0034】
図8は運転座席4の右側の操作パネル77を示している。操作パネル77の中央には、センターブーム40aから薬液を散布するセンター散布レバー78aと左右のサイドブーム40b、40bから薬液を散布する左右散布レバー78b、78bを設けている。また、センター散布レバー78aの溝78a1から集中操作レバー79を設けている。集中操作レバー79は動かないので、センター散布レバー78aに影響を与えない。集中操作レバー79の上部にグリップ79aを設け、このグリップ79aに複数のスイッチを設ける構成としている。
【0035】
具体的には、左右のサイドブーム40b、40bの昇降と左右旋回を実施する十字スイッチ79d、左右のサイドブーム40b、40bの左右スライドの伸長と縮小を実施するスライドスイッチ(トグルスイッチ)79e、左右のサイドブーム40b、40bの内、右サイドブーム40bを動かすための右スイッチ79b、左右のサイドブーム40b、40bの内、左サイドブーム40bを動かすための左スイッチ79cを設ける構成としている。
【0036】
これにより、省スペース化を図ることができ、操作性が向上する。
【符号の説明】
【0037】
2 走行車体
4 運転座席
6 前輪
7 後輪
10 キャリア
13 乗降用ステップ
30 薬剤タンク
40b サイドブーム
70 回動モータ
71 収納スイッチ
72 使用スイッチ
73 前方障害物検出用の超音波センサ
74 後方障害物検出用の超音波センサ
75 ライト
77 操作パネル
79 動かない集中操作レバー