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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20220511BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220511BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20220511BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20220511BHJP
   C08L 19/00 20060101ALI20220511BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08L101/00
C08K5/3477
C08K5/548
C08K9/02
C08L15/00
C08L19/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017241695
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019108450
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 祥子
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6240732(JP,B2)
【文献】特開2016-125017(JP,A)
【文献】特開昭62-220536(JP,A)
【文献】特開昭63-030502(JP,A)
【文献】特開2011-256373(JP,A)
【文献】特開2012-255099(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057758(WO,A1)
【文献】特開2016-003269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位及び共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位を有する芳香族ビニル-共役ジエン共重合体、ミクロ構造におけるシス構造の割合が95質量%以上であるハイシスブタジエンゴム、並びにイソプレン系ゴムを含むゴム成分と、窒素吸着比表面積が50~300gであるカーボンブラックと、窒素吸着比表面積が160~300gのシリカを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記共重合体が、前記芳香族ビニル単位の全量を基準として、孤立芳香族ビニル単位を80%以上含み、示差走査熱量測定における前記共重合体のガラス転移温度幅が10℃より大きく20℃未満であり、
前記ゴム成分100質量%中、前記共重合体の含有量が15~45質量%、前記ハイシスブタジエンゴムの含有量が40~64質量%、前記イソプレン系ゴムの含有量が35~60質量%であり、
前記カーボンブラックの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して1~10質量部であり、
前記シリカの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して60~200質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
珪酸塩粒子の表面に酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持させた微粒子亜鉛担持体を含有する請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの圧縮試料オイル吸収量が100~180ml/100gである請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して90質量部以上である請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
可塑剤の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して50質量部以上である請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
レジンを含有する請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム成分が、変性ポリマーを含む請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を含有する請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
(式中、R及びRは同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR(Rは水素原子またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R及びRは塩を形成してもよい。)
【請求項9】
メルカプト系シランカップリング剤を含有する請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
ファルネセンを重合して得られるファルネセン系樹脂を含有する請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いて作製した空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車に対して低燃費化の要求が強くなっており、自動車用タイヤに用いるゴム組成物に対しても、低燃費性能に優れることが求められている。
【0003】
低燃費性能を改善する方法として、例えば、補強用充填剤を減量する方法が知られているが、この方法では、ゴム組成物の発熱量や補強性の低下により、氷上グリップ性能、耐摩耗性能等が悪化する傾向がある。このように、これらの性能は一般的に低燃費性能と背反する関係にあり、それぞれの性能をバランス良く得ることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、耐摩耗性能、氷上グリップ性能及び低燃費性能がバランス良く改善された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位及び共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位を有する芳香族ビニル-共役ジエン共重合体、ミクロ構造におけるシス構造の割合が95質量%以上であるハイシスブタジエンゴム、並びにイソプレン系ゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、窒素吸着比表面積が40m/g以上のシリカを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、前記共重合体が、前記芳香族ビニル単位の全量を基準として、孤立芳香族ビニル単位を80%以上含み、示差走査熱量測定における前記共重合体のガラス転移温度幅が10℃より大きく20℃未満であり、前記ゴム成分100質量%中、前記共重合体の含有量が1~45質量%、前記ハイシスブタジエンゴムの含有量が20~64質量%、前記イソプレン系ゴムの含有量が35~60質量%であり、前記シリカの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0006】
前記ゴム組成物が、珪酸塩粒子の表面に酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持させた微粒子亜鉛担持体を含有することが好ましい。
【0007】
前記シリカの窒素吸着比表面積が160m/g以上であることが好ましい。
【0008】
前記カーボンブラックの圧縮試料オイル吸収量が100~180ml/100gであることが好ましい。
【0009】
前記シリカの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して90質量部以上であることが好ましい。
【0010】
可塑剤の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して50質量部以上であることが好ましい。
【0011】
前記ゴム組成物が、レジンを含有することが好ましい。
【0012】
前記ゴム成分が、変性ポリマーを含むことが好ましい。
【0013】
前記ゴム組成物が、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を含有することが好ましい。
【化1】
(式中、R及びRは同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR(Rは水素原子またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R及びRは塩を形成してもよい。)
【0014】
前記ゴム組成物が、メルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0015】
前記ゴム組成物が、ファルネセンを重合して得られるファルネセン系樹脂を含有することが好ましい。
【0016】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定の芳香族ビニル-共役ジエン共重合体、ハイシスブタジエンゴム及びイソプレン系ゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、特定のシリカとを含有するゴム組成物であるので、耐摩耗性能、氷上グリップ性能及び低燃費性能がバランス良く改善される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族ビニル単位及び共役ジエン化合物に基づく共役ジエン単位を有し、芳香族ビニル単位の全量を基準として、孤立芳香族ビニル単位を80%以上含み、示差走査熱量測定におけるガラス転移温度幅が、10℃より大きく20℃未満である。
【0019】
ここで、「孤立芳香族ビニル単位」とは、共重合体鎖中の芳香族ビニル単位の繰り返しが1である構造単位、すなわち、芳香族ビニル単位同士が連続して結合していない構造単位をいう。孤立芳香族ビニル単位の含有割合が多いほど、芳香族ビニル単位は、共重合体鎖中に単独で存在している。また、共重合体鎖中の芳香族ビニル単位の繰り返しが2以上である構造単位、すなわち、芳香族ビニル単位同士が連続して結合している構造単位を「長連鎖芳香族ビニル」という。長連鎖芳香族ビニルが多くなると、芳香族ビニル単位は、共重合体鎖の一部に偏在する傾向にある。
【0020】
上記共重合体において、孤立芳香族ビニル単位の含有割合は、芳香族ビニル単位の全量を基準として80~95%であることが好ましく、80~90%であることが更に好ましい。孤立芳香族ビニル単位の含有割合が多いほど共重合体鎖中に芳香族ビニル単位が単独で存在している割合が多くなり、この割合が80%以上であると、共重合体の耐摩耗性能、氷上グリップ性能及び低燃費性能を向上することができる。
【0021】
共重合体鎖中の孤立芳香族ビニル単位の含有割合は、共重合体のH-NMRを測定することで求めることができる。具体的には、NMRスペクトルにおける芳香族ビニル単位のシークエンスの状態を解析することで、孤立芳香族ビニル単位の含有割合を算出することができる。
【0022】
孤立芳香族ビニル単位の含有割合は、例えば、重合反応温度を制御する方法、共役ジエン化合物を連続的に導入する方法等によって調節することができる。重合反応温度を制御する方法の場合、芳香族ビニル化合物の反応速度と共役ジエン化合物の反応速度とが同等に保たれるように重合温度を調節することが好ましい。共役ジエン化合物を連続的に導入する方法の場合、共役ジエン化合物の初期の供給量を減らして反応を開始させた後、残りの共役ジエン化合物を連続的に供給して、製造される共重合体鎖中の孤立芳香族ビニル単位の割合を適切に調節することが好ましい。
【0023】
上記共重合体のガラス転移温度幅(ΔTg)が狭いほど、芳香族ビニル単位が共重合体鎖中に均一に分布し、ΔTgが広いほど、芳香族ビニル単位が共重合体鎖のどこかに密に偏在した構造となる。ΔTgが大きいと、芳香族ビニル単位が共重合体鎖のどこかに密に遍在し過ぎ、自動車タイヤ用途において求められる低燃費性能が得られ難く、ΔTgが小さすぎると、芳香族ビニル単位の分布幅が小さく、氷上グリップ性能が十分に改良されない。耐摩耗性能、氷上グリップ性能、低燃費性能のバランスをより向上する観点から、上記共重合体のΔTgは、好ましくは11~19℃、更に好ましくは11~15℃である。
【0024】
ΔTgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。具体的には、DSC測定において、測定試料を窒素雰囲気下で-100℃まで冷却した後に、10℃/分で-100℃から100℃まで昇温し、昇温時の温度と熱流の変化から、ΔTgを算出することができる。ΔTgは、熱流曲線の転移によるベースラインシフトの外挿開始点と外挿終了点との差、すなわち、ガラス転移温度域での変曲点間の温度差である。
【0025】
上記共重合体のムーニー粘度(ML1+4)は、強度の観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上である。また、加工性能の観点から、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下である。上記共重合体のムーニー粘度(ML1+4)は、JIS K6300(1994)に従って、125℃にて測定される。
【0026】
上記共重合体の芳香族ビニル単位の含有量は、耐摩耗性能、氷上グリップ性能、低燃費性能のバランスの観点から、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位との総量を100質量%として、好ましくは10質量%以上50質量%以下である。また、共重合体における共役ジエンのビニル結合量は、耐摩耗性能、氷上グリップ性能、低燃費性能のバランスの観点から、共役ジエン単位の含有量を100モル%として、好ましくは10モル%以上80モル%以下である。低燃費性能が更に求められる用途では、共重合体の芳香族ビニル単位の含有量を30質量%未満、ビニル結合量を50モル%以上とすることがより好ましく、耐摩耗性能、氷上グリップ性能を更に求められる用途では、共重合体の芳香族ビニル単位の含有量を30質量%以上、ビニル結合量を50モル%未満とすることがより好ましい。また、耐摩耗性能、氷上グリップ性能がより重視される用途では、共重合体の芳香族ビニル単位の含有量を30質量%以上、ビニル結合量を50モル%以上としてもよい。上記共重合体の該ビニル結合量は、赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より求められる。
【0027】
上記共重合体の分子量分布は、低燃費性能の観点から、好ましくは1~5であり、より好ましくは1~2である。分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定し、MwをMnで除すことにより求められる。芳香族ビニル-共役ジエン共重合体のMwは、分子骨格強度向上による耐摩耗性能の向上、分子末端数減少による転がり抵抗の低減、及び氷上グリップ性能の向上の観点から、好ましくは100万以上であり、より好ましくは100万~300万であり、更に好ましくは100万~200万である。上記共重合体のMw及びMnは、例えば、島津製作所製の「Prominence」等により測定することができる。カラムとしては、例えば、Agilent社製の「PLgel」等を用いることができる。分子量標準物質としては、例えば、東ソー(株)製の標準ポリスチレンを用いることができる。
【0028】
以下、上記共重合体の作製に用いることができる各成分について、説明する。上記共重合体は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを重合開始剤を使用して共重合することで作製することができる。
【0029】
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン及びファルネセンが挙げられる。共役ジエン化合物として、好ましくは1,3-ブタジエン又はイソプレンである。
【0030】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン及びジビニルナフタレンが挙げられる。芳香族ビニル化合物として、好ましくはスチレンである。
【0031】
重合開始剤としては、例えば、アルカリ金属と極性化合物との錯体、アルカリ金属を有するオリゴマー、有機アルカリ金属化合物、チーグラーナッタ触媒及びメタロセン触媒が挙げられる。重合開始剤として、好ましくは、有機アルカリ金属化合物である。重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、1,4-ジリチオ-2-ブテン、1,3,3-トリリチオオクチン、ナトリウムナフタレニド、ナトリウムビフェニリド及びカリウムナフタレニド等のヒドロカルビル基を有する有機アルカリ金属化合物;メチルアミノプロピルリチウム、ジエチルアミノプロピルリチウム、tert-ブチルジメチルシリロキシプロピルリチウム、N-モルホリノプロピルリチウム、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、3-(ジメチルアミノ)プロピルリチウム又は3-(ジエチルアミノ)プロピルリチウムに、イソプレンを反応させて得られる化合物等の窒素原子を含有する基を有する有機アルカリ金属化合物が挙げられる。有機アルカリ金属化合物として、好ましくはn-ブチルリチウムである。
【0033】
重合開始剤の使用量は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の総量100gあたり、好ましくは0.01mmol~15mmolである。
【0034】
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合は、溶媒中で行われることが好ましい。溶媒としては、重合開始剤を失活させない溶媒を用いればよく、炭化水素溶媒が好ましい。炭化水素溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素等を用いることができる。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、工業用ヘキサンのような脂肪族炭化水素及び脂環族炭化水素の混合物を用いてもよい。
【0035】
脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン、プロペン、1-ブテン、iso-ブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン及び2-ヘキセンが挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンが挙げられる。脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロペンタンが挙げられる。
【0036】
また、低燃費性能や耐摩耗性能を向上させる観点から、共重合体の開始末端、鎖中、停止末端の少なくともいずれかにヘテロ原子及び/又はケイ素原子を有する変性剤に基づく単位を有していてもよい。
【0037】
上記共重合体の作製は、共役ジエン単位のビニル結合量を調整する剤、共重合体鎖中での共役ジエン単位と芳香族ビニル単位との分布を調整する剤(以下、総称して「調整剤」と記す。)の存在下で行ってもよい。
【0038】
調整剤としては、エーテル化合物、第三級アミン、ホスフィン化合物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド等を用いることができる。エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン等の環状のエーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等の脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等の脂肪族ジエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等の脂肪族トリエーテル;ジフェニルエーテル、アニソール、1,2-ジメトキシベンゼン、3,4-ジメトキシトルエン等の芳香族エーテルが挙げられる。第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、1,1,2,2-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルアニリン、ピリジン及びキノリンが挙げられる。ホスフィン化合物として、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン及びトリフェニルホスフィンが挙げられる。アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ペントキシド及びカリウム-tert-ペントキシドが挙げられる。アルカリ金属フェノキシドとしては、例えば、ナトリウムフェノキシド及びカリウムフェノキシドが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ゴム成分100質量%中の上記共重合体の含有量は、45質量%以下、好ましくは30質量%以下である。45質量%以下であると、良好な耐摩耗性能が得られ、低コストになる傾向がある。また、上記含有量は、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。1質量%以上であると、耐摩耗性能、氷上グリップ性能、低燃費性能の改善効果が得られやすい傾向がある。
【0040】
本発明のゴム組成物は、上記共重合体以外のゴム成分として、変性ポリマーを含有することが好ましい。上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。
【0041】
変性ポリマーとしては、シリカ等の無機フィラーと相互作用する官能基を有する変性ポリマー(特に、変性ゴム)であればよく、例えば、ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ゴム等が挙げられる。
【0042】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
【0043】
変性ゴムの骨格を構成するゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BR、SBR(すなわち、変性BR、変性SBR)が好ましく、BR(すなわち、変性BR)がより好ましい。
【0044】
変性ゴムとしては、シス-1,4-結合量が94.0質量%以上であり、活性末端を有する共役ジエン系重合体を用い、この共役ジエン系重合体の活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う変性工程(A)と、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる縮合工程(B)とを備え、前記共役ジエン系重合体として、下記(a)~(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物の存在下で重合した共役ジエン系重合体を用いる製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体、が好ましい。
(a)成分:ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルミノオキサン、及び、一般式(3-1);AlR313233で表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(3-1)中、R31及びR32は、同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。R33は、R31及びR32と同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(c)成分:その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物
【0045】
なお、上記変性共役ジエン系重合体は、多官能の上記アルコキシシラン化合物を導入させ、更に、導入された上記アルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させて得られるものであるから、どの部分で反応しているかを特定することは困難であり、上記変性共役ジエン系重合体をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在する。
【0046】
上記変性工程(A)は、シス-1,4-結合量が94.0質量%以上であり、活性末端を有する共役ジエン系重合体を用い、この共役ジエン系重合体の活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う工程である。
【0047】
上記共役ジエン系重合体は、シス-1,4-結合量が94.0質量%以上であり、活性末端を有する共役ジエン系重合体である。上記シス-1,4-結合量は、好ましくは94.6質量%以上であり、より好ましくは98.5質量%以上であり、更に好ましくは99.0質量%以上であり、より更に好ましくは99.2質量%以上である。シス-1,4-結合量が94.0質量%以上であると、充分な雪氷上性能、耐摩耗性能、破壊特性が得られる傾向がある。なお、本明細書において、シス-1,4-結合量は、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出した値である。
【0048】
上記共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン及びミルセンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。特に、1,3-ブタジエン、イソプレン及び2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を好適に用いることができる。すなわち、変性共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン化合物が、1,3-ブタジエン、イソプレン及び2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種の共役ジエン化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0049】
このような共役ジエン系重合体を製造する際には、溶媒を用いて重合を行ってもよいし、無溶媒下で重合を行ってもよい。重合に用いる溶媒(重合溶媒)としては、不活性な有機溶媒を用いることができるが、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4~10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数6~20の飽和脂環式炭化水素、1-ブテン、2-ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0050】
上記共役ジエン系重合体を製造する際の重合反応温度は、-30~200℃であることが好ましく、0~150℃であることがより好ましい。重合反応の形式としては特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。なお、重合溶媒を用いる場合は、この溶媒中のモノマー濃度が5~50質量%であることが好ましく、7~35質量%であることがより好ましい。また、共役ジエン系重合体製造の効率性の観点、及び、活性末端を有する共役ジエン系重合体を失活させない観点から、重合系内に、酸素、水又は炭酸ガス等の失活作用のある化合物を極力混入させないようにすることが好ましい。
【0051】
また、上記変性共役ジエン系重合体を製造する際に用いる共役ジエン系重合体としては、下記(a)~(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物(以下、「触媒」とも称する。)の存在下で重合した共役ジエン系重合体が用いられる。
(a)成分:ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルミノオキサン、及び、一般式(3-1);AlR313233で表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(3-1)中、R31及びR32は、同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。R33は、R31及びR32と同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(c)成分:その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物
【0052】
このような触媒を用いることにより、シス-1,4-結合量が94.0質量%以上である共役ジエン系重合体を得ることができる。また、この触媒は、極低温で重合反応を行う必要がなく、操作が簡便であることから、工業的な生産を行う上で有用である。
【0053】
上記(a)成分は、ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物である。ランタノイドの中でも、ネオジム、プラセオジム、セリウム、ランタン、ガドリニウム、サマリウムが好ましい。本発明の製造方法においては、これらのうち、ネオジムが特に好ましい。なお、上記ランタノイドとしては、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記ランタノイド含有化合物の具体例としては、ランタノイドのカルボン酸塩、アルコキサイド、β-ジケトン錯体、リン酸塩、亜リン酸塩等が挙げられる。このうち、カルボン酸塩、またはリン酸塩が好ましく、カルボン酸塩がより好ましい。
【0054】
上記ランタノイドのカルボン酸塩の具体例としては、一般式(3-2);(R34-COO)Mで表されるカルボン酸の塩を挙げることができる(ただし、一般式(3-2)中、Mは、ランタノイドを表す。R34は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。)。なお、上記一般式(3-2)中、R34は、飽和又は不飽和のアルキル基であることが好ましく、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であることが好ましい。また、カルボキシル基は、一級、二級又は三級の炭素原子に結合している。具体的には、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、商品名「バーサチック酸」(シェル化学社製、カルボキシル基が三級炭素原子に結合しているカルボン酸)等の塩が挙げられる。これらのうち、バーサチック酸、2-エチルヘキサン酸、ナフテン酸の塩が好ましい。
【0055】
上記ランタノイドのアルコキサイドの具体例としては、一般式(3-3);(R35O)Mで表されるものを挙げることができる(ただし、一般式(3-3)中、Mは、ランタノイドを表す。)。なお、上記一般式(3-3)中、「R35O」で表されるアルコキシ基の具体例としては、2-エチル-ヘキシルアルコキシ基、オレイルアルコキシ基、ステアリルアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基等が挙げられる。これらのうち、2-エチル-ヘキシルアルコキシ基、ベンジルアルコキシ基が好ましい。
【0056】
上記ランタノイドのβ-ジケトン錯体の具体例としては、アセチルアセトン錯体、ベンゾイルアセトン錯体、プロピオニトリルアセトン錯体、バレリルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体等が挙げられる。これらのうち、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
【0057】
上記ランタノイドのリン酸塩又は亜リン酸塩の具体例としては、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、リン酸ビス(p-ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール-p-ノニルフェニル)、リン酸(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)、リン酸(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-p-ノニルフェニル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸等の塩が挙げられる。これらのうち、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸の塩が好ましい。
【0058】
上記ランタノイド含有化合物としては、これらのなかでも、ネオジムのリン酸塩、又は、ネオジムのカルボン酸塩が特に好ましく、ネオジムのバーサチック酸塩、又は、ネオジムの2-エチルヘキサン酸塩が最も好ましい。
【0059】
上記ランタノイド含有化合物を溶剤に可溶化させるため、若しくは、長期間安定に貯蔵するために、ランタノイド含有化合物とルイス塩基とを混合すること、又は、ランタノイド含有化合物とルイス塩基とを反応させて反応生成物とすることも好ましい。ルイス塩基の量は、ランタノイド1モルに対して、0~30モルとすることが好ましく、1~10モルとすることがより好ましい。ルイス塩基の具体例としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、一価又は二価のアルコール等が挙げられる。これまで述べてきた(a)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
上記(b)成分は、アルミノオキサン、及び、一般式(3-1);AlR313233で表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(3-1)中、R31及びR32は、同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。R33は、R31及びR32と同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0061】
上記アルミノオキサン(以下、「アルモキサン」とも称する。)は、その構造が、下記一般式(3-4)又は(3-5)で表される化合物である。なお、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、及びJ.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で開示されている、アルモキサンの会合体であってもよい。
【0062】
【化2】
【0063】
【化3】
【0064】
上記一般式(3-4)及び(3-5)中、R36は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。pは、2以上の整数である。
上記R36の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、イソブチル基、t-ブチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、上記pは、4~100の整数であることが好ましい。
【0065】
上記アルモキサンの具体例としては、メチルアルモキサン(以下、「MAO」とも称する。)、エチルアルモキサン、n-プロピルアルモキサン、n-ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t-ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、イソヘキシルアルモキサン等が挙げられる。これらの中でも、MAOが好ましい。上記アルモキサンは、公知の方法によって製造することができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶媒中に、トリアルキルアルミニウム、又は、ジアルキルアルミニウムモノクロライドを加え、更に水、水蒸気、水蒸気含有窒素ガス、又は、硫酸銅5水塩や硫酸アルミニウム16水塩等の、結晶水を有する塩を加えて反応させることにより製造することができる。なお、上記アルモキサンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記一般式(3-1)で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ-n-プロピルアルミニウム、水素化ジ-n-ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム、エチルアルミニウムジハイドライド、n-プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられる。これらの中でも、水素化ジイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウムが好ましく、水素化ジイソブチルアルミニウムが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
上記(c)成分は、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物である。このようなヨウ素含有化合物を用いることで、シス-1,4-結合量が94.0質量%以上である共役ジエン系重合体を容易に製造することができる。上記ヨウ素含有化合物としては、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有している限り特に制限されないが、例えば、ヨウ素、トリメチルシリルアイオダイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイド、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カドミウム、ヨウ化水銀、ヨウ化マンガン、ヨウ化レニウム、ヨウ化銅、ヨウ化銀、ヨウ化金等が挙げられる。
【0068】
なかでも、上記ヨウ素含有化合物としては、一般式(3-6):R37 SiI4-q(一般式(3-6)中、R37は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基又は水素原子を表す。また、qは0~3の整数である。)で表されるヨウ化ケイ素化合物、一般式(3-7):R38 4-r(一般式(3-7)中、R38は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。また、rは1~3の整数である。)で表されるヨウ化炭化水素化合物又はヨウ素が好ましい。このようなヨウ化ケイ素化合物、ヨウ化炭化水素化合物、ヨウ素は有機溶剤への溶解性が良好であるため、操作が簡便になり、工業的な生産を行う上で有用である。すなわち、上記(c)成分が、ヨウ化ケイ素化合物、ヨウ化炭化水素化合物、及び、ヨウ素からなる群より選択される少なくとも1種のヨウ素含有化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0069】
上記ヨウ化ケイ素化合物(上記一般式(3-6)で示される化合物)の具体例としては、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨード等が挙げられる。なかでも、トリメチルシリルアイオダイドが好ましい。
また、上記ヨウ化炭化水素化合物(上記一般式(3-7)で示される化合物)の具体例としては、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイド等が挙げられる。なかでも、メチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタンが好ましい。
【0070】
上記ヨウ素含有化合物としては、これらのなかでも、ヨウ素、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨード、メチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタンが特に好ましく、トリメチルシリルアイオダイドが最も好ましい。上記ヨウ素含有化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記各成分((a)~(c)成分)の配合割合は、必要に応じて適宜設定すればよい。(a)成分の配合量は、例えば、100gの共役ジエン系化合物に対して、0.00001~1.0ミリモルであることが好ましく、0.0001~0.5ミリモルであることがより好ましい。0.00001ミリモル以上であると、重合活性が向上する傾向がある。1.0ミリモル以下であると、触媒濃度が高くならず、脱灰工程が必要とならない傾向がある。
【0072】
上記(b)成分がアルモキサンである場合、アルモキサンの配合量としては、(a)成分と、アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)とのモル比で表すことができ、「(a)成分」:「アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)」(モル比)が1:1~1:500であることが好ましく、1:3~1:250であることがより好ましく、1:5~1:200であることが更に好ましい。アルモキサンの配合量が上記範囲内であると、触媒活性がより向上し、触媒残渣を除去する工程が必要とならない傾向がある。
【0073】
また、上記(b)成分が有機アルミニウム化合物である場合、有機アルミニウム化合物の配合量としては、(a)成分と、有機アルミニウム化合物とのモル比で表すことができ、「(a)成分」:「有機アルミニウム化合物」(モル比)が1:1~1:700であることが好ましく、1:3~1:500であることがより好ましい。有機アルミニウム化合物の配合量が上記範囲内であると、触媒活性がより向上し、触媒残渣を除去する工程が必要とならない傾向がある。
【0074】
上記(c)成分の配合量としては、(c)成分に含有されるヨウ素原子と、(a)成分とのモル比で表すことができ、((c)成分に含有されるヨウ素原子)/((a)成分)(モル比)が0.5~3.0であることが好ましく、1.0~2.5であることがより好ましく、1.2~2.0であることが更に好ましい。((c)成分に含有されるヨウ素原子)/((a)成分)のモル比が0.5以上であると、重合触媒活性が向上する傾向がある。((c)成分に含有されるヨウ素原子)/((a)成分)のモル比が3.0以下であると、触媒毒とならない傾向がある。
【0075】
上述した触媒には、(a)~(c)成分以外に、必要に応じて、共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、(a)成分1モルに対して、1000モル以下含有させることが好ましく、3~1000モル含有させることがより好ましく、5~300モル含有させることが更に好ましい。触媒に共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有させると、触媒活性が一段と向上するために好ましい。このとき、用いられる共役ジエン系化合物としては、後述する重合用のモノマーと同じく、1,3-ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、非共役ジエン系化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ビニルヘキサジエン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0076】
上記(a)~(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物は、例えば、溶媒に溶解した(a)~(c)成分、更に必要に応じて添加される共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を反応させることにより、調製することができる。なお、調製の際の各成分の添加順序は任意であってよい。ただし、各成分を予め混合、反応させるとともに、熟成させておくことが、重合活性の向上及び重合開始誘導期間の短縮の観点から好ましい。熟成温度は0~100℃とすることが好ましく、20~80℃とすることがより好ましい。0℃以上であると、熟成が十分となる傾向がある。一方、100℃以下であると、触媒活性の低下や、分子量分布の広がりが生じ難くなる傾向にある。なお、熟成時間は特に制限されない。また、重合反応槽に添加する前に、各成分どうしをライン中で接触させてもよいが、その場合の熟成時間は0.5分以上あれば充分である。なお、調製した触媒は、数日間は安定である。
【0077】
変性共役ジエン系重合体を製造する際に用いる共役ジエン系重合体としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、すなわち、分子量分布(Mw/Mn)が、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。分子量分布が3.5以下であると、破壊特性、低燃費性能を始めとするゴム物性が向上する傾向にある。一方、分子量分布の下限は、特に限定されない。なお、本明細書において、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量と数平均分子量との割合(重量平均分子量/数平均分子量)により算出される値を意味する。ここで、共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、共役ジエン系重合体の数平均分子量は、GPC法で測定されたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0078】
なお、上記共役ジエン系重合体の、ビニル含量、シス-1,4-結合量は、重合温度をコントロールすることによって、容易に調整することができる。また、上記Mw/Mnは上記(a)~(c)成分のモル比をコントロールすることによって、容易に調整することができる。
【0079】
また、上記共役ジエン系重合体の100℃におけるムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40であることがより好ましい。5以上であると、加硫後の機械特性、耐摩耗性能などが向上する傾向がある。一方、50以下であると、変性反応を行った後の変性共役ジエン系重合体の混練り時の加工性能が向上する傾向がある。このムーニー粘度は、上記(a)~(c)成分のモル比をコントロールすることにより容易に調整することができる。
なお、共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0080】
更に、上記共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合の含量(1,2-ビニル結合量)は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。0.5質量%以下であると、破壊特性などのゴム物性が向上する傾向がある。また、上記共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合量としては、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。なお、本明細書において、共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合量は、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出した値である。
【0081】
上記変性工程(A)に用いるアルコキシシラン化合物(以下、「変性剤」とも称する。)としては、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するものである。アルコキシシリル基以外の反応基としては、特にその種類は限定されないが、例えば、(f);エポキシ基、(g);イソシアネート基、(h);カルボニル基、及び(i);シアノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。すなわち、上記アルコキシシラン化合物が、(f);エポキシ基、(g);イソシアネート基、(h);カルボニル基、及び(i);シアノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有することもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。なお、上記アルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよいし、該アルコキシシラン化合物と該部分縮合物の混合物であってもよい。
【0082】
ここで、「部分縮合物」とは、アルコキシシラン化合物のSiOR(ORは、アルコキシ基を表す。)の一部(すなわち、全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。なお、上記変性反応に用いる共役ジエン系重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0083】
上記アルコキシシラン化合物の具体例としては、(f);エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エポキシ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランが好適なものとして挙げられるが、これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランがより好ましい。
【0084】
また、(g);イソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0085】
また、(h);カルボニル基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「カルボニル基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3-メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0086】
更に、(i);シアノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「シアノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3-シアノプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3-シアノプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-シアノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0087】
上記変性剤としては、これらのなかでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシランが特に好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
これら変性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述のアルコキシシラン化合物の部分縮合物を用いることもできる。
【0088】
上記変性工程(A)の変性反応では、上記アルコキシシラン化合物の使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01~200モルであることが好ましく、0.1~150モルであることがより好ましい。0.01モル以上であると、変性反応の進行が充分となり、充填剤の分散性が充分に改良されるために、加硫後の機械特性、耐摩耗性能、低燃費性能が充分に得られる傾向がある。一方、200モル以下であると、変性反応は飽和せず、使用した分のコストが余計にかからない傾向がある。なお、上記変性剤の添加方法は特に制限されないが、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられ、なかでも、一括して添加する方法が好ましい。
【0089】
上記変性反応は、溶液中で行うことが好ましく、この溶液としては、重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液をそのまま使用することができる。また、変性反応の形式については特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器やインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などの前に行うことが好ましい。
【0090】
上記変性反応の温度は、共役ジエン系重合体を重合する際の重合温度と同様とすることができる。具体的には20~100℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。温度が20℃以上であると重合体の粘度が低下する傾向があり、100℃以下であると、重合活性末端が失活しない傾向がある。
【0091】
また、上記変性反応における反応時間は、5分~5時間であることが好ましく、15分~1時間であることがより好ましい。なお、縮合工程(B)において、重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後、所望により、公知の老化防止剤や反応停止剤を添加してもよい。
【0092】
上記変性工程(A)においては、上記変性剤の他に、縮合工程(B)において、活性末端に導入された変性剤であるアルコキシシラン化合物残基と縮合反応し、消費されるものを更に添加することが好ましい。具体的には、官能基導入剤を添加することが好ましい。この官能基導入剤により、変性共役ジエン系重合体の耐摩耗性能を向上させることができる。
【0093】
上記官能基導入剤は、活性末端との直接反応を実質的に起こさず、反応系に未反応物として残存するものであれば特に制限されないが、例えば、上記変性剤として用いるアルコキシシラン化合物とは異なるアルコキシシラン化合物、即ち、(j);アミノ基、(k);イミノ基、及び(l);メルカプト基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有するアルコキシシラン化合物であることが好ましい。なお、この官能基導入剤として用いられるアルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよいし、官能基導入剤として用いるアルコキシシラン化合物の部分縮合物でないものと該部分縮合物との混合物であってもよい。
【0094】
上記官能基導入剤の具体例としては、(j);アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「アミノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シランや、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、及び、これらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物又はエチルジメトキシシリル化合物などが挙げられるが、なかでも、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが特に好ましい。
【0095】
また、(k);イミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「イミノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3-(1-ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、また、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-〔10-(トリエトキシシリル)デシル〕-4-オキサゾリン、N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールが好適なものとして挙げられるが、これらの中でも、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールがより好ましい。
【0096】
また、(l);メルカプト基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「メルカプト基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-メルカプトプロピル(モノエトキシ)ジメチルシラン、メルカプトフェニルトリメトキシシラン、メルカプトフェニルトリエトキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0097】
上記官能基導入剤としては、これらのなかでも、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランが特に好ましく、3-アミノプロピルトリエトキシシランが最も好ましい。
これらの官能基導入剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
上記官能基導入剤としてアルコキシシラン化合物を用いる場合、その使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01~200モルが好ましく、0.1~150モルがより好ましい。0.01モル以上であると、縮合反応の進行が充分となり、充填剤の分散性が充分に改良されるために、加硫後の機械特性、耐摩耗性能、低燃費性能に優れる傾向がある。一方、200モル以下であると、縮合反応は飽和しない傾向があり、その場合には使用した分のコストが余計にかからない。
【0099】
上記官能基導入剤の添加時期としては、上記変性工程(A)において上記共役ジエン系重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後であって、上記縮合工程(B)における縮合反応が開始される前が好ましい。縮合反応開始後に添加した場合、官能基導入剤が均一に分散せず触媒性能が低下する場合がある。官能基導入剤の添加時期としては、具体的には、変性反応開始5分~5時間後であることが好ましく、変性反応開始15分~1時間後であることがより好ましい。
【0100】
なお、上記官能基導入剤として、上記官能基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合、活性末端を有する共役ジエン系重合体と、反応系に加えられた実質上化学量論的量の変性剤とが変性反応を起こし、実質的に活性末端の全てにアルコキシシリル基が導入され、更に上記官能基導入剤を添加することにより、この共役ジエン系重合体の活性末端の当量より多くのアルコキシシラン化合物残基が導入されることになる。
【0101】
アルコキシシリル基同士の縮合反応は、遊離のアルコキシシラン化合物と共役ジエン系重合体末端のアルコキシシリル基の間で起こること、また場合によっては共役ジエン系重合体末端のアルコキシシリル基同士で起こることが、反応効率の観点から好ましく、遊離のアルコキシシラン化合物同士の反応は好ましくない。したがって、官能基導入剤としてアルコキシシラン化合物を新たに加える場合には、そのアルコキシシリル基の加水分解性が、共役ジエン系重合体末端に導入したアルコキシシリル基の加水分解性に比べて低いことが好ましい。
【0102】
例えば、共役ジエン系重合体の活性末端との反応に用いられるアルコキシシラン化合物には加水分解性の高いトリメトキシシリル基を含有する化合物を用い、官能基導入剤として新たに添加するアルコキシシラン化合物には、該トリメトキシシリル基含有化合物より加水分解性が低いアルコキシシリル基(例えば、トリエトキシシリル基)を含有するものを用いる組み合わせが好ましい。
【0103】
上記縮合工程(B)は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる工程である。
【0104】
上記縮合触媒は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するものであれば、特に制限されないが、例えば、チタン(Ti)(第4族)、スズ(Sn)(第14族)、ジルコニウム(Zr)(第4族)、ビスマス(Bi)(第15族)及びアルミニウム(Al)(第13族)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むものであることが好ましい。
【0105】
上記縮合触媒の具体例としては、スズ(Sn)を含む縮合触媒として、例えば、ビス(n-オクタノエート)スズ、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ラウレート)スズ、ビス(ナフトエネート)スズ、ビス(ステアレート)スズ、ビス(オレエート)スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジn-オクタノエート、ジブチルスズジ2-エチルヘキサノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジブチルスズビス(2-エチルヘキシルマレート)、ジn-オクチルスズジアセテート、ジn-オクチルスズジn-オクタノエート、ジn-オクチルスズジ2-エチルヘキサノエート、ジn-オクチルスズジラウレート、ジn-オクチルスズマレート、ジn-オクチルスズビス(ベンジルマレート)、ジn-オクチルスズビス(2-エチルヘキシルマレート)等が挙げられる。
【0106】
ジルコニウム(Zr)を含む縮合触媒として、例えば、テトラエトキシジルコニウム、テトラn-プロポキシジルコニウム、テトラi-プロポキシジルコニウム、テトラn-ブトキシジルコニウム、テトラsec-ブトキシジルコニウム、テトラtert-ブトキシジルコニウム、テトラ(2-エチルヘキシルオキシド)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等が挙げられる。
【0107】
ビスマス(Bi)を含む縮合触媒として、例えば、トリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス等が挙げられる。
【0108】
アルミニウム(Al)を含む縮合触媒として、例えば、トリエトキシアルミニウム、トリn-プロポキシアルミニウム、トリi-プロポキシアルミニウム、トリn-ブトキシアルミニウム、トリsec-ブトキシアルミニウム、トリtert-ブトキシアルミニウム、トリ(2-エチルヘキシルオキシド)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2-エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等が挙げられる。
【0109】
チタン(Ti)を含む縮合触媒として、例えば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラn-プロポキシチタニウム、テトラi-プロポキシチタニウム、テトラn-ブトキシチタニウム、テトラn-ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラsec-ブトキシチタニウム、テトラtert-ブトキシチタニウム、テトラ(2-エチルヘキシルオキシド)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2-エチルヘキシルオキシド)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等が挙げられる。
【0110】
これらの中でも、上記縮合触媒としては、チタン(Ti)を含む縮合触媒がより好ましい。チタン(Ti)を含む縮合触媒の中でも、チタン(Ti)のアルコキシド、カルボン酸塩又はアセチルアセトナート錯塩であることが更に好ましい。特に好ましくは、テトラi-プロポキシチタニウム(テトライソプロピルチタネート)である。チタン(Ti)を含む縮合触媒を用いることにより、変性剤として用いる上記アルコキシシラン化合物の残基、及び官能基導入剤として用いる上記アルコキシシラン化合物の残基の縮合反応をより効果的に促進させることができ、加工性能、低温特性及び耐摩耗性能に優れた変性共役ジエン系重合体を得ることが可能となる。このように、上記縮合触媒が、チタン(Ti)を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0111】
上記縮合触媒の使用量としては、縮合触媒として用いることができる上記種々の化合物のモル数が、反応系内に存在するアルコキシシリル基総量1モルに対して、0.1~10モルとなることが好ましく、0.3~5モルが特に好ましい。0.1モル以上であると、縮合反応が充分に進行する傾向がある。一方、10モル以下であると、縮合触媒としての効果は飽和しない傾向があり、その場合には使用した分のコストが余計にかからない。
【0112】
上記縮合触媒は、上記変性反応前に添加することもできるが、変性反応後、かつ縮合反応開始前に添加することが好ましい。変性反応後に添加すると、活性末端との直接反応が起きず、活性末端にアルコキシシリル基が導入される傾向がある。また、縮合反応開始前に添加すると、縮合触媒が均一に分散し触媒性能が向上する傾向がある。上記縮合触媒の添加時期としては、具体的には、変性反応開始5分~5時間後であることが好ましく、変性反応開始15分~1時間後であることがより好ましい。
【0113】
上記縮合工程(B)の縮合反応は、水溶液中で行うことが好ましく、縮合反応時の温度は85~180℃であることが好ましく、100~170℃であることがより好ましく、110~150℃であることが特に好ましい。縮合反応時の温度が85℃以上であると、縮合反応の進行が充分となり、縮合反応を完結させることができる傾向があり、その場合、得られる変性共役ジエン系重合体に経時変化が発生せず、品質上問題とならない傾向がある。一方、180℃以下であると、ポリマーの老化反応が進行せず、物性を向上させる傾向がある。
【0114】
上記縮合反応が行われる水溶液のpHは9~14であることが好ましく、10~12であることがより好ましい。水溶液のpHをこのような範囲とすることにより、縮合反応が促進され、変性共役ジエン系重合体の経時安定性を改善することができる。pHが9以上であると、縮合反応の進行が充分となり、縮合反応を完結させることができる傾向があり、得られる変性共役ジエン系重合体に経時変化が発生せず、品質上問題とならない傾向がある。一方、縮合反応が行われる水溶液のpHが14以下であると、単離後の変性共役ジエン系重合体中に多量のアルカリ由来成分が残留せず、その除去が困難とならない傾向がある。
【0115】
上記縮合反応の反応時間は、5分~10時間であることが好ましく、15分~5時間程度であることがより好ましい。5分以上であると、縮合反応が完結する傾向がある。一方、10時間以下であると縮合反応が飽和しない傾向がある。また、縮合反応時の反応系内の圧力は、0.01~20MPaであることが好ましく、0.05~10MPaであることがより好ましい。
【0116】
縮合反応の形式については特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と同時に脱溶媒を行ってもよい。
【0117】
上述のように縮合反応を行った後、従来公知の後処理を行い、目的の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0118】
上記変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4(125℃))は、10~150であることが好ましく、20~100であることがより好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(125℃))が10以上であると、破壊特性を始めとするゴム物性が向上する傾向がある。一方、ムーニー粘度(ML1+4(125℃))が150以下であると、作業性が悪くならず、配合剤とともに混練りすることが容易になる傾向がある。
なお、変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0119】
また、上記変性共役ジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。分子量分布が3.5以下であると、破壊特性、低燃費性能などのゴム物性が向上する傾向がある。ここで、変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、変性共役ジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC法で測定されたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0120】
また、上記変性共役ジエン系重合体のコールドフロー値(mg/分)は、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。コールドフロー値が1.0以下であると、貯蔵時におけるポリマーの形状安定性が向上する傾向がある。なお、本明細書において、変性共役ジエン系重合体のコールドフロー値(mg/分)は、後述する測定方法により算出される値である。
【0121】
更に、上記変性共役ジエン系重合体の経時安定性の評価値は、0~5であることが好ましく、0~2であることがより好ましい。この評価値が5以下であると、貯蔵時にポリマーが経時変化しない傾向がある。なお、本明細書において、変性共役ジエン系重合体の経時安定性は、後述する測定方法により算出される値である。
【0122】
また、上記変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度は、-40℃以下であることが好ましい。より好ましくは-43℃以下であり、更に好ましくは-46℃以下であり、特に好ましくは-50℃以下である。ガラス転移温度が-40℃以下であると、スタッドレスタイヤに必要な低温特性を充分確保できる傾向がある。他方、該ガラス転移温度の下限は特に制限されない。
ここで、変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0123】
ゴム成分100質量%中の変性ポリマーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。5質量%以上であると、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%以下であると、良好な氷上グリップ性能が得られる傾向がある。
【0124】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、ミクロ構造(モノマー単位の結合様式)におけるシス構造(シス-1,4結合)の割合(シス含量)が95質量%以上であるハイシスブタジエンゴムを含有する。上記ハイシスブタジエンゴムとしては、シス含量が95質量%以上であるものであれば特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0125】
ゴム成分100質量%中の上記ハイシスブタジエンゴムの含有量は、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。20質量%以上であると、低温での充分な柔軟性を確保でき、良好な氷上グリップ性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、64質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。64質量%以下であると、良好な氷上グリップ性能が得られる傾向がある。
なお、上記ハイシスブタジエンゴムの含有量は、変性ブタジエンゴム及び非変性ブタジエンゴムの合計含有量である。
【0126】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴムを含有する。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)などがあげられる。NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。同様に、IRについても、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、35質量%以上、好ましくは40質量%以上である。35質量%以上であると、良好なゴム強度、耐摩耗性能が得られ、混練り時のゴムの纏まりが良く良好な生産性が得られる傾向がある。また、上記含有量は、60質量%以下であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。60質量%以下であると、充分な氷上グリップ性能が得られる傾向がある。
なお、イソプレン系ゴムの含有量は、変性イソプレン系ゴム及び非変性イソプレン系ゴムの合計含有量である。
【0128】
上記ハイシスブタジエンゴム、イソプレン系ゴム以外に使用できる他のゴム成分としては、従来のスチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエンイソプレンゴム、ブチルゴムなどをあげることができる。また、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体などもあげることができる。これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0129】
本発明のゴム組成物は、窒素吸着比表面積(NSA)が40m/g以上のシリカを含有する。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などがあげられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上、好ましくは60m/g以上、より好ましくは80m/g以上、更に好ましくは160m/g以上である。40m/g以上であると、補強効果が大きく、優れた耐摩耗性能やゴム強度が得られる傾向があり、160m/g以上であると、上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。また、上記NSAは、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。600m/g以下であると、シリカが分散しやすく、良好な低燃費性能や加工性能が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0131】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、特に好ましくは90質量部以上、最も好ましくは120質量部以上である。5質量部以上であると、シリカを配合した効果が得られ、優れた耐摩耗性能やゴム強度が得られる傾向があり、90質量部以上であると、上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。また、上記含有量は、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下である。250質量部以下であると、良好な加工性能が得られる傾向がある。
【0132】
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる点から、メルカプト系シランカップリング剤が好ましい。
【0133】
メルカプト系シランカップリング剤としては、下記式(2-1)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(2-2)で示される結合単位Aと下記式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤を好適に使用できる。
【化4】
(式(2-1)中、R101は-Cl、-Br、-OR106、-O(O=)CR106、-ON=CR106107、-ON=CR106107、-NR106107及び-(OSiR106107(OSiR106107108)から選択される一価の基(R106、R107及びR108は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R102はR101、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R103はR101、R102、水素原子又は-[O(R109O)0.5-基(R109は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R104は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R105は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、xa、ya及びzaは、xa+ya+2za=3、0≦xa≦3、0≦ya≦2、0≦za≦1の関係を満たす数である。)
【化5】
【化6】
(式(2-2)及び(2-3)中、xbは0以上の整数、ybは1以上の整数である。R201は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R202は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【0134】
上記式(2-1)におけるR102、R105、R106、R107及びR108の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記式(2-1)におけるR109の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0135】
上記式(2-1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なかでも、加工性能と低燃費性能の両立の点で、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(Momentive社製のNXT)が特に好ましい。上記シランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0136】
式(2-2)で示される結合単位Aと式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤は、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC-S-C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0137】
また、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Aはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの-C15部分が結合単位Bの-SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0138】
加工性能の観点から、上記構造のシランカップリング剤2において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、シリカとの反応性の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(2-2)、(2-3)と対応するユニットを形成していればよい。
【0139】
201のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などがあげられる。
【0140】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~12である。
【0141】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0142】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0143】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~12である。
【0144】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基、2-プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基、1-ヘキセニレン基、2-ヘキセニレン基、1-オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0145】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0146】
式(2-2)で示される結合単位Aと式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤2において、結合単位Aの繰り返し数(xb)と結合単位Bの繰り返し数(yb)の合計の繰り返し数(xb+yb)は、3~300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの-C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0147】
式(2-2)で示される結合単位Aと式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤2としては、例えば、Momentive社製のNXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0148】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましい。0.5質量部以上であると、カップリング効果が充分であり高い白色充填剤分散も得られる傾向がある。そのためゴム破壊強度が向上する傾向がある。また、該合計含有量は、シリカ100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。15質量部以下であると、余分なシランカップリング剤が残存せず、得られるゴム組成物の加工性能及び破壊特性が向上する傾向がある。
【0149】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイトなどをあげることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0150】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、5m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。5m/g以上であると、補強性が向上し、充分な耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、上記NSAは、600m/g以下が好ましく、300m/g以下がより好ましく、150m/g以下が更に好ましい。600m/g以下であると、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217-2:2001によって求められる。
【0151】
カーボンブラックの圧縮試料オイル吸収量(COAN)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは100ml/100g以上、更に好ましくは120ml/100g以上である。50ml/100g以上であると、分散性が低下せず、充分な補強性が確保しやすくなり、良好な耐久性能(破壊特性)が得られる傾向があり、100ml/100g以上であると、上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。また、上記COANは、好ましくは180ml/100g以下、より好ましくは170ml/100g以下、更に好ましくは150ml/100g以下である。180ml/100g以下であると、ゴムの粘度が高くなりすぎず、加工性能が劣らず、充分にカーボンブラックを分散させることが容易になる傾向があり、また、上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。
なお、本明細書において、カーボンブラックのCOANは、JIS K6217-4の測定方法によって求められる。なお、使用したオイルはジブチルフタレート(フタル酸ジブチル)である。
【0152】
カーボンブラックの900℃での揮発分量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.46質量%以下である。0.5質量%以下であると、ドライ路面におけるグリップ性能を充分に向上できる傾向がある。また、該揮発分量の下限は、特に限定されない。
なお、本明細書において、カーボンブラックの揮発分量は、JIS K6221(1994)に準拠した測定方法によって求められる。
【0153】
カーボンブラックの1500℃での揮発分量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下である。1.0質量%以下であると、ドライ路面におけるグリップ性能を充分に向上できる傾向がある。また、該揮発分量の下限は、特に限定されない。
【0154】
カーボンブラックのJIS K 6220-1に準拠して測定したpHは、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、更に好ましくは8.5以上である。pHが6.0以上であると、ドライ路面におけるグリップ性能を充分に向上できる傾向がある。該pHは、好ましくは12.0以下、より好ましくは11.0以下である。12.0以下であると、加硫速度や架橋密度などの加硫に悪影響を与えない傾向がある。
【0155】
カーボンブラックの製造方法としては、ファーネス法やチャンネル法等の従来から公知の方法が用いられるが、以下に示すファーネス法が好ましい。
【0156】
ファーネス法(オイルファーネス法)は、例えば特開2004-43598号公報、特開2004-277443号公報などのように、反応炉内に高温燃焼ガス流を発生させる燃焼帯域、高温燃焼ガス流に原料炭化水素を導入して原料炭化水素を熱分解反応によりカーボンブラックに転化させる反応帯域、及び反応ガスを急冷して反応を停止する反応停止帯域を有する装置を用いるプロセスであって、燃焼条件、高温燃焼ガス流速、反応炉内への原料油の導入条件、カーボンブラック転化から該反応停止までの時間等の諸条件を制御することによって種々の特性のカーボンブラックを製造することができる。
【0157】
燃焼帯域では、高温燃焼ガスを形成させるため、酸素含有ガスとして空気、酸素またはそれらの混合物とガス状または液体の燃料炭化水素を混合燃焼させる。燃料炭化水素としては、一酸化炭素、天然ガス、石炭ガス、石油ガス、重油等の石油系液体燃料、クレオソート油等の石炭系液体燃料が使用される。燃焼は、燃焼温度が1400℃~2000℃の範囲となるように制御されるのが好ましい。
【0158】
反応帯域では、燃焼帯域で得られた高温燃焼ガス流に並流又は横方向に設けたバーナーから原料炭化水素を噴霧導入し、原料炭化水素を熱分解させてカーボンブラックに転化させる。好ましくは、ガス流速が100~1000m/sの範囲の高温燃焼ガス流に、原料油を1本以上のバーナーにより導入する。原料油は、2本以上のバーナーにより分割し導入することが好ましい。また、反応効率を向上させる為に反応ゾーンに絞り部を設けることが好ましい。絞り部の絞り部径/絞り部上流域径の比は、0.1~0.8が好ましい。
【0159】
原料炭化水素としては、アントラセン等の芳香族炭化水素、クレオソート油等の石炭系炭化水素、EHEオイル(エチレン製造時の副性油)、FCCオイル(流動接触分解残渣油)等の石油系重質油が使用される。
【0160】
反応停止帯域では、高温反応ガスを1000~800℃以下に冷却する為、水スプレー等が行われる。原料油を導入してからの反応停止までの時間は2~100m秒が好ましい。冷却されたカーボンブラックは、ガスから分離回収された後、造粒、乾燥等の公知のプロセスをとることができる。
【0161】
上記ファーネス法により得られたカーボンブラックは、さらに、酸素を流通しない条件下(無酸素雰囲気下(例えば、水素などの還元雰囲気下、窒素などの不活性ガス雰囲気下))で800~2000℃(好ましくは900~1200℃)で熱処理され、上述のCOAN等の特性を示すカーボンブラックが得られる。なお、熱処理を行う前に、上記ファーネス法により得られたカーボンブラックを硝酸、過酸化水素、オゾン、重クロム酸塩等により酸化処理を行ってもよい。熱処理保持時間は、1~6時間が好ましい。酸素を流通しない条件下で熱処理を行うことにより、カーボンブラック粒子表面の官能基の一部(特に、カルボキシル基、ヒドロキシル基)が揮散、消失する。ここで、900℃での揮発分量が上記範囲内となるように熱処理を行うことにより、カーボンブラックの表面活性がほどよく低下し、ゴム組成物のEを充分に低減しつつ、tanδを充分に高くできる。
【0162】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0163】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部以上であると、充分な補強性が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。60質量部以下であると、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0164】
本発明のゴム組成物は、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を含有することが好ましい。上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。
【化7】
[式中、R及びRは同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)、-COOR(Rは水素原子(-H)またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R及びRは塩を形成してもよい。]
【0165】
上記ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
及びRの炭化水素基の炭素数は1~11であり、好ましくは2~9、より好ましくは4~7である。
【0166】
及びRとしては、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、-COOR又はヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、R及びRが共にヘテロ原子を有する炭化水素基であることがより好ましい。
【0167】
及びRの炭化水素基としては、特に限定されないが、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、単素環基、複素環基が好ましく、少なくとも一方が複素環基であることがより好ましく、双方が複素環基であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、単素環基とは、環構造が炭素原子のみによって構成される基を意味し、複素環基とは、環構造が炭素原子を含む2種類以上の元素によって構成される基を意味する。
【0168】
単素環基としては、例えば、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。なかでも、アリール基が好ましい。
【0169】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。なかでも、フェニル基が好ましい。
【0170】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0171】
複素環基としては、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を含有する含窒素複素環基が好ましく、環を構成するヘテロ原子として窒素原子のみを含有する含窒素複素環基がより好ましい。
【0172】
含窒素複素環基としては、例えば、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、イミダゾリジル基、ピペラジニル基、ピラゾリジル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。なかでも、ピリジル基、ピリミジル基が好ましく、ピリジル基が更に好ましい。
【0173】
上記単素環基、上記複素環基が有する水素原子は、置換基により置換されていてもよい。補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、置換基により置換されていることが好ましい。
【0174】
置換基としては、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、スルホン酸基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、更に上記置換基を有していてもよく、上記置換基以外にも例えば、アルキレン基、アルキル基等を有していてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、カルボキシル基、上記-COOR、アミノ基(好ましくは下式(A)で表される基、下式(B)で表される基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【化8】
【0175】
なお、置換基は、上式(A)、(B)で表される基のように、塩を形成してもよい。塩を形成する例としては、例えば、アミノ基とハロゲン原子との塩、カルボキシル基とNa、K等の1価の金属との塩、スルホン酸基と上記1価の金属との塩等が挙げられる。
【0176】
上記-COORのRは水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~3である。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
としては、アルキル基が好ましい。
【0177】
上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物としては、ジエン系ゴムと反応可能なものであれば特に限定されない。テトラジン系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される化合物(特に、下記一般式(1-1)又は(1-4)で表される化合物)が好ましく、下記式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-3-1)、(1-4-1)又は(1-4-2)で表される化合物(特に、下記式(1-1-1)又は(1-4-1)で表される化合物)がより好ましい。
上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成してもよい。
【化9】
[式(1-1)中、R11は、水素原子(-H)、-COOR17(R17は水素原子(-H)又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R13及びR14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)又はアルキル基を示す。また、R13及びR14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R15及びR16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)、-COOR18(R18は水素原子(-H)又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R15及びR16は塩を形成してもよい。]
【化10】
【0178】
11のヘテロ原子としては、R及びRのヘテロ原子と同様の原子が挙げられる。
11の炭化水素基の炭素数はR及びRの炭化水素基と同様であり、好適な態様も同様である。
【0179】
11としては、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、-COOR17又はヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましい。
【0180】
11の炭化水素基としては、R及びRの炭化水素基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0181】
上記-COOR17のR17は水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基としては、Rのアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
17としては、アルキル基が好ましい。
【0182】
12の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基としては、上記置換基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0183】
12は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよいが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、パラ位が好ましい。
【0184】
13及びR14のアルキル基は、Rのアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。R13及びR14としては、アルキル基が好ましい。
【0185】
15及びR16としては、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基が好ましい。
【0186】
-COOR18のR18は水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基としては、Rのアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
18としては、アルキル基が好ましい。
【0187】
15及びR16の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基としては、上記置換基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0188】
15及びR16は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよいが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、パラ位が好ましく、R15及びR16共にパラ位がより好ましい。
【0189】
上記テトラジン系化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。下限以上にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。上限以下にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
ここで、本明細書において、上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物の含有量とは、2種以上のテトラジン系化合物を含有する場合はその合計含有量を意味する。
【0190】
本発明のゴム組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、オイル、レジン等が挙げられる。なかでも、オイル、レジンが好ましく、上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる点から、レジンがより好ましい。
【0191】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いても良い。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル(アロマ系プロセスオイル)などが挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムとの相溶性と、tanδを維持することができるという理由から、芳香族系プロセスオイルが好ましい。
【0192】
レジンの軟化点は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。30℃以上であると、より良好なゴム強度、氷上グリップ性能が得られる傾向がある。また、上記軟化点は、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましい。200℃以下であると、樹脂の分散性が良好となり、より良好なゴム強度、氷上グリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0193】
レジンとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、DCPD系樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
【0194】
ジシクロペンタジエン系樹脂としては、石油のC5留分から抽出されたシクロペンタジエンを二量体化したジシクロペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂が挙げられる。
【0195】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0196】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0197】
なかでも、前記性能バランスの観点から、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
【0198】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)、これらの水素添加物などが挙げられる。
【0199】
上記テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
【0200】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、フェノールが好ましい。
【0201】
レジンとしては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0202】
レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記含有量が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0203】
可塑剤の合計含有量(好ましくは、オイルの含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。1質量部以上であると、良好な耐摩耗性能、低燃費性能が得られる傾向があり、50質量部以上であると、上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。また、上記含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。200質量部以下であると、良好な耐摩耗性能、氷上グリップ性能が得られる傾向がある。
【0204】
本発明のゴム組成物は、ファルネセン系樹脂を含有することが好ましい。ファルネセン系樹脂とは、ファルネセンをモノマー成分として重合して得られた重合体を意味する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在するが、以下の構造を有する(E)-β-ファルネセンが好ましい。
【化11】
【0205】
上記共重合体とともにファルネセン系樹脂を軟化剤として配合することにより、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。なお、ファルネセン系樹脂は、従来配合されているオイルなどの軟化剤に置き換えて配合することが好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0206】
ファルネセン系樹脂は、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)であってもよいし、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)であってもよい。ビニルモノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレンなどの芳香族ビニル化合物や、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物などが挙げられる。なかでも、スチレン、ブタジエンが好ましい。すなわち、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体としては、ファルネセンとスチレンとの共重合体(ファルネセン-スチレン共重合体)、ファルネセンとブタジエンとの共重合体(ファルネセン-ブタジエン共重合体)が好ましい。ファルネセン-スチレン共重合体を配合することで、ゴム強度、操縦安定性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能の改善効果を高めることができ、ファルネセン-ブタジエン共重合体を配合することで、低燃費性能及び耐摩耗性能の改善効果を高めることができる。
【0207】
ファルネセン単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-60℃以下、より好ましくは-70℃以下であり、好ましくは-120℃以上、より好ましくは-110℃以上である。上記範囲内であれば、タイヤ用軟化剤として好適に使用できる。
同様の理由から、ファルネセン-スチレン共重合体のTgは、好ましくは-15℃以下、より好ましくは-30℃以下であり、好ましくは-80℃以上、より好ましくは-70℃以上である。
同様の理由から、ファルネセン-ブタジエン共重合体のTgは、好ましくは-60℃以下、より好ましくは-70℃以下であり、好ましくは-120℃以上、より好ましくは-110℃以上である。
なお、本明細書において、ファルネセン系樹脂のTgは、JIS-K7121:1987に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
【0208】
ファルネセン単独重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは8000以上である。3000以上であると、操縦安定性能、耐摩耗性能が向上する傾向がある。また、該Mwは、好ましくは500000以下、より好ましくは300000以下、更に好ましくは150000以下である。500000以下であると、加工性能、耐摩耗性能が向上する傾向がある。
また、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体のMwは、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは8000以上である。3000以上であると、操縦安定性能が向上する傾向がある。また、該Mwは、好ましくは500000以下、より好ましくは300000以下、更に好ましくは150000以下、特に好ましくは100000以下である。500000以下であると、ウェットグリップ性能が向上する傾向がある。
Mwが上記範囲内のファルネセン単独重合体、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体は、常温で液状であり、タイヤ用軟化剤として好適に使用できる。
【0209】
ファルネセン単独重合体の溶融粘度は、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下であり、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上である。上記範囲内であれば、タイヤ用軟化剤として好適に使用でき、かつ耐ブルーム性にも優れる。
同様の理由から、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体の溶融粘度は、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは650Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下であり、好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは5Pa・s以上である。
なお、本明細書において、ファルネセン系樹脂の溶融粘度は、ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABS.INC.製)を用いて、38℃で測定した値である。
【0210】
ファルネセン単独重合体において、モノマー成分100質量%中のファルネセンの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0211】
ファルネセン-ビニルモノマー共重合体において、モノマー成分100質量%中のファルネセン及びビニルモノマーの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合比は、質量基準で、ファルネセン:ビニルモノマー=99/1~25/75であることが好ましく、ファルネセン:ビニルモノマー=80/20~40/60であることがより好ましい。
【0212】
ファルネセン系樹脂の合成は公知の手法により行うことができる。例えば、アニオン重合による合成の場合、充分に窒素置換した耐圧容器に、ヘキサンと、ファルネセンと、sec-ブチルリチウムと、必要に応じてビニルモノマーとを仕込んだ後、昇温させ、数時間撹拌することで行い、得られた重合溶液をクエンチ処理後、真空乾燥させることで、液状のファルネセン系樹脂を得ることができる。
【0213】
ファルネセン単独重合体を調製する際の重合において、重合手順は特に限定されず、例えば、すべてのモノマーを一度に重合させてもよいし、逐次、モノマーを加えて重合させてもよい。また、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体を調製する際の共重合においても、重合手順は特に限定されず、例えば、すべてのモノマーを一度にランダム共重合させてもよいし、予め特定のモノマー(例えば、ファルネセンモノマーのみ、ブタジエンモノマーのみなど)を共重合させた後に、残りのモノマーを加えて共重合させてもよいし、特定のモノマー毎に予め共重合させたものをブロック共重合させてもよい。
【0214】
ファルネセン系樹脂に使用するファルネセンは、石油資源から化学合成によって調製されたものであってもよいし、アリマキなどの昆虫やリンゴなどの植物から抽出したものであってもよいが、糖から誘導される炭素源を用いて微生物を培養することによって調製されたものであることが好ましい。該ファルネセンを使用することで、効率よくファルネセン系樹脂を調製できる。
【0215】
糖としては、単糖、二糖、多糖のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。単糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボースなどが挙げられる。二糖としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースなどが挙げられる。多糖としては、スターチ、グリコーゲン、セルロース、キチンなどが挙げられる。
【0216】
ファルネセンの製造に好適な糖は、多種多様な材料から得ることができ、例えば、サトウキビ、バガス、ミスカンタス、テンサイ、モロコシ、穀実用モロコシ、スイッチグラス、大麦、麻、ケナフ、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、ヒマワリ、果物、糖蜜、乳清、脱脂乳、トウモロコシ、ワラ、穀物、小麦、木、紙、麦わら、綿などが挙げられる。その他、セルロース廃棄物や、他のバイオマス材料も使用できる。なかでも、サトウキビ(Saccharum officinarum)などのSaccharum属に属する植物が好ましく、サトウキビがより好ましい。
【0217】
微生物は、培養してファルネセンを製造できる微生物であれば特に限定されず、例えば、真核生物、細菌、古細菌などが挙げられる。真核生物としては、酵母、植物などが挙げられる。
【0218】
また、微生物は形質転換体であってもよい。形質転換体は、宿主となる微生物に、外来遺伝子を導入して得られる。外来遺伝子としては、特に限定されないが、ファルネセンの製造効率をより改善できるという理由から、ファルネセン産生に関与する外来遺伝子が好ましい。
【0219】
培養条件は、微生物がファルネセンを製造できる条件であれば特に限定されない。微生物を培養する際に使用される培地としては、微生物の培養に通常使用される培地であればよい。具体的には、細菌の場合にはKB培地、LB培地が挙げられる。酵母の場合には、YM培地、KY培地、F101培地、YPD培地、YPAD培地が挙げられる。植物の場合には、Whiteの培地、Hellerの培地、SH培地(SchenkとHildebrandtの培地)、MS培地(MurashigeとSkoogの培地)、LS培地(LinsmaierとSkoogの培地)、Gamborg培地、B5培地、MB培地、WP培地(Woody Plant:木本類用)などの基本培地が挙げられる。
【0220】
培養温度は、微生物の種類によって異なるが、0~50℃であることが好ましく、10~40℃であることがより好ましく、20~35℃であることが更に好ましい。pHは、pH3~11であることが好ましく、4~10であることがより好ましく、5~9であることが更に好ましい。また、培養は、微生物の種類に応じて、嫌気的条件下、好気的条件下のいずれにおいても行うことができる。
【0221】
微生物の培養は、バッチ式培養でも可能であり、また、バイオリアクターを用いた連続式培養でも可能である。具体的な培養方法として、振とう培養、回転培養などが挙げられる。ファルネセンは、微生物の細胞内に蓄積させることができ、また、培養上清中に生成蓄積させることもできる。
【0222】
培養後の微生物からファルネセンを取得する場合、遠心分離により微生物を回収した後、微生物を破砕し、破砕液から1-ブタノールなどの溶剤を使用して抽出することができる。また、溶剤抽出法に、クロマトグラフィーなど公知の精製方法を適宜併用することもできる。ここで、微生物の破砕は、ファルネセンの変性・崩壊を防ぐために、例えば4℃などの低温で行うことが好ましい。微生物は、例えば、ガラスビーズを使用した物理的破砕などにより破砕することができる。
【0223】
培養上清からファルネセンを取得するには、遠心分離にて菌体を除去した後、得られた上清から、1-ブタノールなどの溶剤にて抽出すればよい。
【0224】
上述の微生物由来のファルネセンを使用して得られるファルネセン系樹脂は市販品として入手することができ、例えば、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0225】
ファルネセン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。1質量部以上であると、ファルネセン系樹脂配合により得られる性能の改善効果が充分に得られる傾向がある。また、該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。50質量部以下であると、良好な低燃費性能、氷上グリップ性能、操縦安定性能、耐摩耗性能(特に、操縦安定性能、耐摩耗性能)が得られる傾向がある。
【0226】
本発明のゴム組成物は、珪酸塩粒子の表面に酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持させた微粒子亜鉛担持体を含有することが好ましい。上記共重合体とともに配合することで、各性能の改善効果を相乗的に高めることができる。
【0227】
本発明において、微粒子亜鉛担持体は、珪酸塩粒子の表面に酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持させたものである。珪酸塩粒子の表面は、酸化亜鉛微粒子及び塩基性炭酸亜鉛微粒子に対して親和性を有しており、このため均一に酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持させることができる。
【0228】
酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子の担持量は、金属亜鉛換算で6~75質量%の範囲であることが好ましく、下限は、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは35質量%以上であり、上限は、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
ここで、金属亜鉛換算の担持量とは、担持している酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を金属亜鉛に換算したZn換算質量を算出し、この値を用いて、以下の式から算出することができる。
金属亜鉛換算の担持量(質量%)=〔(Zn換算質量)/(微粒子亜鉛担持体の質量)〕×100
【0229】
酸化亜鉛微粒子を担持した珪酸塩粒子(微粒子亜鉛担持体)のBET比表面積は、10~55m/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは15~50m/gの範囲であり、さらに好ましくは20~45m/gの範囲である。
【0230】
塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持した珪酸塩粒子(微粒子亜鉛担持体)のBET比表面積は、25~90m/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは30~85m/gであり、さらに好ましくは35~80m/gの範囲である。
【0231】
塩基性炭酸亜鉛微粒子の方が、酸化亜鉛微粒子よりも微細であり、BET比表面積の高い微粒子とすることができる。このため、上記のように、塩基性炭酸亜鉛微粒子を担持した場合、酸化亜鉛微粒子を担持した場合に比べ、BET比表面積が高くなっている。
【0232】
BET比表面積は、BET比表面積測定装置を用い、窒素吸着法により求めることができる。珪酸塩粒子に担持させた酸化亜鉛微粒子及び塩基性炭酸亜鉛微粒子のBET比表面積(BETZn)は、以下の式により算出することができる。
【0233】
BETZn={(BETZn-Si×WZn)+WSi(BETZn-Si-BETSi)}/WZn
BETZn-Si:微粒子亜鉛担持体のBET比表面積
BETSi:珪酸塩粒子のBET比表面積
Zn:微粒子亜鉛担持体中に含まれる酸化亜鉛又は塩基性炭酸亜鉛の質量%
Si:微粒子亜鉛担持体中に含まれる珪酸塩粒子の質量%
【0234】
珪酸塩粒子の表面に担持される酸化亜鉛微粒子及び塩基性炭酸亜鉛微粒子のBET比表面積(BETZn)は、酸化亜鉛微粒子の場合、15~100m/gの範囲であることが好ましく、40~80m/gの範囲であることがより好ましく、塩基性炭酸亜鉛微粒子の場合、15~100m/gの範囲であることが好ましく、40~80m/gの範囲であることがより好ましい。
【0235】
微粒子亜鉛担持体に関し、そのBET比表面積が低くなりすぎると、十分な架橋促進効果が得られず、耐摩耗性能等を十分に向上させることができない場合がある。また、BET比表面積が高くなりすぎると、担持されないフリーの酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子が混在し、これが凝集粒子となり、均一な架橋構造を形成できない場合がある。また、相対的に酸化亜鉛又は塩基性炭酸亜鉛の担持量が多くなるため、経済的なメリットが得られにくくなる場合がある。
【0236】
珪酸塩粒子としては、珪酸アルミニウム塩鉱物粒子が好ましく用いられる。また、珪酸アルミニウム塩鉱物粒子以外の珪酸塩粒子としては、タルク、マイカ、長石、ベントナイト、珪酸マグネシウム、シリカ、珪酸カルシウム(ワラストナイト)、珪藻土などが挙げられる。
【0237】
珪酸アルミニウム塩鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、及びセリサイトから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0238】
本発明において、珪酸アルミニウム塩鉱物粒子は、好ましくは無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子である。無水珪酸アルミニウム塩鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、及びセリサイトから選ばれる少なくとも1種を焼成したものが挙げられる。例えば、粒径2μm以下の含有率が80%以上である微細粒子からなるこれらの粘土鉱物を、500~900℃の温度で焼成したものが挙げられる。
【0239】
本発明の微粒子亜鉛担持体は、例えば、珪酸塩粒子の存在下に、亜鉛塩の酸性水溶液とアルカリ性水溶液とを混合して、酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛を析出させ、珪酸塩粒子の表面に、酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛を担持させて製造することができる。
【0240】
珪酸塩粒子の存在下に、亜鉛塩の酸性水溶液とアルカリ性水溶液を混合して、酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を析出させる方法としては、具体的には以下のような方法が挙げられる。
【0241】
(1)亜鉛塩の酸性水溶液中に珪酸塩粒子を分散させておき、この分散液に、アルカリ性水溶液を添加する。
(2)アルカリ性水溶液に珪酸塩粒子を分散させておき、この分散液に、亜鉛塩の酸性水溶液を添加する。
(3)水中に珪酸塩粒子を分散させておき、この分散液に、亜鉛塩の酸性水溶液とアルカリ性水溶液とを同時に添加する。
【0242】
上記の(1)~(3)の方法の内、特に好ましくは(1)の方法が採用される。
【0243】
亜鉛塩の酸性水溶液は、例えば、酸性水溶液中に、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛などを添加して調製することができる。酸化亜鉛としては、各種工業原料として用いられている亜鉛華を用いてもよい。酸性水溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸などの水溶液が挙げられる。また、塩化亜鉛などの水溶性亜鉛化合物を酸性水溶液中に添加して調製してもよい。
【0244】
アルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液が挙げられる。一般に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどをアルカリ性水溶液として用いた場合には、酸化亜鉛微粒子を析出させて担持させることができる。また、酸性水溶液として炭酸を用いた場合や、アルカリ性水溶液として炭酸ナトリウムなどを用いた場合には、塩基性炭酸亜鉛を析出させて担持させることができる。
【0245】
また、塩基性炭酸亜鉛を担持した珪酸塩粒子は、上述のように、酸化亜鉛微粒子を担持した珪酸塩粒子をアンモニウム塩水溶液で処理する方法又は、酸化亜鉛微粒子を担持した珪酸塩粒子の水懸濁液に炭酸ガスを導入して炭酸化を行うなどの方法で処理することにより、担持された酸化亜鉛微粒子を塩基性炭酸亜鉛微粒子に変換することにより製造することができる。これら処理方法は単独で行ってもよいし、両方法を併用してもよい。
【0246】
アンモニウム塩水溶液としては、水酸化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの水溶液が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0247】
上述のように、アンモニウム塩水溶液で処理し、酸化亜鉛微粒子を塩基性炭酸亜鉛微粒子に変換することにより、より微細な粒子として担持することができる。
【0248】
酸化亜鉛微粒子又は塩基性炭酸亜鉛微粒子を珪酸アルミニウム塩鉱物粒子の表面に析出させて担持させた後、一般には十分に水洗を行い、脱水・乾燥した後、粉砕する。
【0249】
微粒子亜鉛担持体は、有機酸、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸金属塩、樹脂酸エステル、珪酸、珪酸塩(Na塩等)、及びシランカップリング剤より選ばれる少なくとも1種で表面処理されていてもよい。表面の全部又は一部を覆う構造であればよく、必ずしも表面全体を連続的に覆う必要はない。
【0250】
表面処理方法としては、微粒子亜鉛担持体が水系スラリーである場合、表面処理剤をそのままの状態、あるいは適切な温度、溶媒で溶解して、湿式で処理することができる。また、微粒子亜鉛担持体が粉末状であれば、表面処理剤をそのままの状態、あるいは適切な温度、溶媒で溶解して乾式で処理することができる。
【0251】
上記微粒子亜鉛担持体としては、白石カルシウム(株)等の製品を使用できる。
【0252】
上記微粒子亜鉛担持体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.6質量部以上、特に好ましくは0.7質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下、更に好ましくは1.6質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0253】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0254】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0255】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0256】
上記微粒子亜鉛担持体の含有量は、硫黄100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。上記微粒子亜鉛担持体の含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは160質量部以下、特に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0257】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を含有することが好ましい。
なお、上記微粒子亜鉛担持体を含有する場合、酸化亜鉛を含有してもよいが、その含有量は少ないほうがよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0258】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
なお、上記微粒子亜鉛担持体を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、更に好ましく0質量部(含まない)である。
【0259】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましい。
【0260】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0261】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0262】
本発明のゴム組成物は、ステアリン酸を含有することが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0263】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0264】
本発明のゴム組成物は、ワックスを含有することが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0265】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0266】
ワックスの含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。
【0267】
本発明のゴム組成物は、加工助剤を含有することが好ましい。
加工助剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物などが使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪酸金属塩、アミドエステル、脂肪酸金属塩とアミドエステル若しくは脂肪酸アミドとの混合物が好ましく、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物が特に好ましい。
【0268】
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、飽和又は不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数6~28(より好ましくは炭素数10~25、更に好ましくは炭素数14~20)の飽和又は不飽和脂肪酸)が挙げられ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ネルボン酸等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。なかでも、飽和脂肪酸が好ましく、炭素数14~20の飽和脂肪酸がより好ましい。
【0269】
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケル、モリブデン等が挙げられる。なかでも、亜鉛、カルシウムが好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0270】
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミドでも不飽和脂肪酸アミドでもよい。飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、N-(1-オキソオクタデシル)サルコシン、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0271】
脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物としては、ストラクトール社の製品等を使用できる。
【0272】
加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより得られる傾向がある。
【0273】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0274】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0275】
本発明のゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;等を例示できる。
【0276】
上記共重合体に、他のゴム成分や添加剤などを配合してゴム組成物を製造する方法としては、公知の方法、例えば、各成分をロールやバンバリーのような公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
【0277】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50~200℃であり、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分であり、好ましくは1分~30分である。
【0278】
加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理を行って用いられる。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0279】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に用いることができ、キャップトレッド(特にスタッドレスタイヤのキャップトレッド)に好適に用いることができる。
【0280】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのキャップトレッドなどの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを製造できる。
【0281】
本発明の空気入りタイヤは、スタッドレスタイヤ(特に乗用車用スタッドレスタイヤ)として好適に用いることができる。
【実施例
【0282】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0283】
[製造例1]
<芳香族ビニル-共役ジエン共重合体1(共重合体1)の製造>
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、工業用ヘキサン(住友化学社製、商品名:ヘキサン(一般品)、密度0.68g/mL)7.65kg、シクロヘキサン2.93kg、1,3-ブタジエン240g、スチレン510g、テトラヒドロフラン8.8mL及びエチレングリコールジブチルエーテル0.9mLを重合反応器内に投入した。次に、重合開始剤の失活に作用する不純物を予め無毒化させるために、スカベンジャーとして少量のn-ブチルリチウム(n-BuLi)のヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを3.12mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0284】
重合反応を4時間10分行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度100rpmで攪拌し、重合反応器内には、重合開始20分後から3時間20分かけて1,3-ブタジエン660gとスチレン90gとを連続的に供給した。次いで、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で100rpmの撹拌速度で撹拌し、四塩化ケイ素0.25mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合溶液を5分間撹拌した。
【0285】
重合反応器内の撹拌物を抜き出し、共重合体のMw、ビニル結合量、スチレン単位の含有量、ΔTg、および孤立スチレン単位の含有割合を測定した。
該撹拌物に2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)6.0g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)3.0g及び伸展油(ジャパンエナジー社製、商品名:JOMOプロセスNC-140)562.5gを加え、混合物を得た。次に、該混合物中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体1(共重合体1)を得た。
【0286】
[製造例2]
<芳香族ビニル-共役ジエン共重合体2(共重合体2)の製造>
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、「ヘキサン(一般品)」7.65kg、シクロヘキサン2.93kg、1,3-ブタジエン298g、スチレン553g、テトラヒドロフラン8.8mL及びエチレングリコールジブチルエーテル0.9mLを重合反応器内に投入した。次に、n-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを3.06mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0287】
重合反応を4時間10分行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、重合開始20分後から3時間20分かけて1,3-ブタジエン630gとスチレン66gを連続的に供給した。次いで、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、四塩化ケイ素0.27mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0288】
重合反応器内の撹拌物を抜き出し、共重合体のMw、ビニル結合量、スチレン単位の含有量、ΔTg、および孤立スチレン単位の含有割合を測定した。
該撹拌物に「スミライザーGM」6.2g及び「スミライザーTP-D」3.1g及び「JOMOプロセスNC-140」580gを加え、混合物を得た。次に、該混合物中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体2(共重合体2)を得た。
【0289】
[製造例3]
<芳香族ビニル-共役ジエン共重合体3(共重合体3)の製造>
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、「ヘキサン(一般品)」7.65kg、シクロヘキサン2.93kg、1,3-ブタジエン240g、スチレン360g、テトラヒドロフラン8.8mL及びエチレングリコールジブチルエーテル0.9mLを重合反応器内に投入した。次に、n-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを2.64mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0290】
重合反応を4時間10分行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、重合開始20分後から3時間20分かけて1,3-ブタジエン480gとスチレン120gを連続的に供給した。次いで、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、四塩化ケイ素0.24mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0291】
重合反応器内の撹拌物を抜き出し、共重合体のMw、ビニル結合量、スチレン単位の含有量、ΔTg、および孤立スチレン単位の含有割合を測定した。
該撹拌物に「スミライザーGM」7.2g及び「スミライザーTP-D」3.6g及び「JOMOプロセスNC-140」450gを加え、混合物を得た。次に、該混合物中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体3(共重合体3)を得た。
【0292】
[製造例4]
<芳香族ビニル-共役ジエン共重合体4(共重合体4)の製造>
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、「ヘキサン(一般品)」7.65kg、シクロヘキサン2.93kg、1,3-ブタジエン240g、スチレン360g、テトラヒドロフラン8.8mL及びエチレングリコールジブチルエーテル0.9mLを重合反応器内に投入した。次に、n-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを3.12mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0293】
重合反応を4時間10分行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、1,3-ブタジエン540gとスチレン360gを2時間30分かけて連続的に供給した。次いで、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、四塩化ケイ素0.25mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0294】
重合反応器内の撹拌物を抜き出し、共重合体のMw、ビニル結合量、スチレン単位の含有量、ΔTg、および孤立スチレン単位の含有割合を測定した。
該撹拌物に「スミライザーGM」8.0g及び「スミライザーTP-D」4.0g及び「JOMOプロセスNC-140」562.5gを加え、混合物を得た。次に、該混合物中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体4(共重合体4)を得た。
【0295】
製造例1~4で得られた共重合体1~4のMw、ビニル結合量、スチレン単位の含有量、伸展油添加前のΔTg、孤立スチレン単位の含有割合の評価結果を表1に示す。なお、共重合体1~4の物性評価は次の方法で行った。
【0296】
1.ビニル結合量(単位:mol%)
赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より、共重合体における共役ジエンのビニル結合量を求めた。
【0297】
2.スチレン単位の含有量(単位:質量%)
JIS K6383(1995)に従って、屈折率から共重合体中のスチレン単位の含有量を求めた。
【0298】
3.重量平均分子量(Mw)
下記の条件(1)~(8)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、Mwを測定した。
(1)装置:島津製作所製 Prominence
(2)分離カラム:Agilent社製 PLgel 5μm 10Å、PLgel 5μm 10Å(各1本を連結)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:100μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
【0299】
4.孤立スチレン単位の含有割合(単位:%)
重クロロホルムを溶媒として用い、400MHzのH-NMR(日本電子製 AL400)を測定し、共重合体の構造解析を行った。得られたNMRスペクトルより、スチレン単位のシークエンスの状態を以下の範囲の積分値から求めた。孤立スチレン単位の含有割合は、下記(a)~(c)の積分値の合計に対して、下記(a)の積分値から、(b)と(c)より求められる芳香環のメタ位及びパラ位プロトンの計算値を引いた積分値の割合とした。
(a)孤立スチレン単位、2~3連鎖スチレン、4連鎖以上スチレン:7.6~7.0ppm間のピークの積分値。
(b)2~3連鎖スチレン(オルト位プロトン):7.0~6.9ppm間のピークの積分値。
(c)4連鎖以上スチレン(オルト位プロトン):6.9~6.0ppm間のピークの積分値。
【0300】
5.ガラス転移温度幅(ΔTg)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱分析装置DSC7020を用い、共重合体を窒素雰囲気下で-100℃まで冷却した後に10℃/分で100℃まで昇温する条件で測定した。得られる熱流曲線の転移によるベースラインシフトの外挿開始点と外挿終了点との差をΔTgとして読み取った。
【0301】
【表1】
【0302】
[製造例5]
<微粒子亜鉛担持体の製造>
5.5質量%濃度の焼成クレー水懸濁液847mlに、酸化亜鉛を91.5g加えて十分に攪拌した。ついで、10質量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を330gと、10質量%塩化亜鉛水溶液を340g加えてさらに攪拌した。これに30質量%濃度の炭酸ガスを、pHが7以下になるまで吹き込んで、焼成クレーの表面に塩基性炭酸亜鉛を析出させて微粒子亜鉛担持体を合成した。その後、脱水、乾燥、粉砕工程を経て粉末化し、微粒子亜鉛担持体を得た。
【0303】
微粒子亜鉛担持体のBET比表面積は50m/gであった。また、微粒子亜鉛担持体においては、焼成クレーに塩基性炭酸亜鉛が金属亜鉛として45質量%担持されていた。従って、担持された塩基性炭酸亜鉛のBET比表面積は60m/gであった。
【0304】
[製造例6、7]
<カーボンブラックB、Cの製造>
空気導入ダクトと燃焼バーナーを備える内径1100mm、長さ1700mmの燃焼帯域、該燃焼帯域から連接され、周辺から原料ノズルを貫通接続した内径175mm、長さ1050mmの狭径部からなる原料導入帯域、クエンチ装置を備えた内径400mm、長さ3000mmの後部反応帯域を順次接合したカーボンブラック反応炉を用い、燃料油にD重油、及び原料炭化水素(原料油)にクレオソート油を使用し、表2に示す各条件によりカーボンブラックを製造した。
さらに、酸素を流通しない条件下(窒素ガス雰囲気下)で表2に示す条件により熱処理を行った。
各製造例により得られたカーボンブラックの各種特性を表2に示した。なお、各特性の測定は、上述の方法により行った。
【0305】
【表2】
【0306】
[製造例8]
<変性共役ジエン系重合体の製造>
(共役ジエン系重合体の合成)
あらかじめ、0.18ミリモルのバーサチック酸ネオジムを含有するシクロヘキサン溶液、3.6ミリモルのメチルアルモキサンを含有するトルエン溶液、6.7ミリモルの水素化ジイソブチルアルミニウムを含有するトルエン溶液、及び、0.36ミリモルのトリメチルシリルアイオダイドを含有するトルエン溶液と1,3-ブタジエン0.90ミリモルを30℃で60分間反応熟成させて得られる触媒組成物(ヨウ素原子/ランタノイド含有化合物(モル比)=2.0)を得た。続いて、シクロヘキサン2.4kg、1,3-ブタジエン300gを窒素置換された5Lオートクレーブに投入した。そして、上記触媒組成物を上記オートクレーブに投入し、30℃で2時間、重合反応させて、重合体溶液を得た。なお、投入した1,3-ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
【0307】
ここで、共役ジエン系重合体(以下、「重合体」とも称する。)、すなわち、変性前のものの各種物性値を測定するため、上記重合体溶液から200gの重合体溶液を抜き取り、この重合体溶液に2,4-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを1.5g含むメタノール溶液を添加し、重合反応を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、得られた乾燥物を重合体とした。
【0308】
重合体について、以下に示す測定方法によって各種物性値を測定したところ、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が12であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.6であり、シス-1,4-結合量が99.2質量%であり、1,2-ビニル結合量が0.21質量%であった。
【0309】
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]
JIS K 6300に準じて、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
【0310】
[分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(商品名;HLC-8120GPC、東ソー社製)を使用し、検知器として、示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム ;商品名「GMHHXL」、(東ソー社製)2本、
カラム温度 ;40℃、
移動相 ;テトラヒドロフラン、
流速 ;1.0ml/分、
サンプル濃度;10mg/20ml
【0311】
[シス-1,4-結合量、1,2-ビニル結合量]
シス-1,4-結合の含量、及び1,2-ビニル結合の含量は、H-NMR分析及び13C-NMR分析により測定を行った。NMR分析には、日本電子社製の商品名「EX-270」を使用した。具体的には、H-NMR分析としては、5.30~5.50ppm(1,4-結合)、及び4.80-5.01ppm(1,2-結合)におけるシグナル強度から、重合体中の1,4-結合と1,2-結合の比を算出した。更に、13C-NMR分析としては、27.5ppm(シス-1,4-結合)、及び32.8ppm(トランス-1,4-結合)におけるシグナル強度から、重合体中のシス-1,4-結合とトランス-1,4-結合の比を算出した。これらの算出した値の比率を算出し、シス-1,4-結合量(質量%)及び1,2-ビニル結合量(質量%)とした。
【0312】
(変性共役ジエン系重合体の合成)
変性共役ジエン系重合体(以下、「変性重合体」とも称する。)を得るために、上記共役ジエン系重合体の重合体溶液に次の処理を行った。温度30℃に保持した重合体溶液に、1.71ミリモルの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間反応させて反応溶液を得た。それから、この反応溶液に1.71ミリモルの3-アミノプロピルトリエトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間撹拌した。続いて、この反応溶液に1.28ミリモルのテトライソプロピルチタネートを含有するトルエン溶液を添加し、30分間撹拌した。その後、重合反応を停止させるため、2,4-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを1.5g含むメタノール溶液を添加して、この溶液を変性重合体溶液とした。収量は2.5kgであった。続いて、この変性重合体溶液に、水酸化ナトリウムによりpH10に調整した水溶液20Lを添加し、110℃で2時間、脱溶媒とともに縮合反応させた。その後、110℃のロールで乾燥して、得られた乾燥物を変性重合体とした。
【0313】
変性重合体については、以下に示す測定方法によって各種物性値を測定したところ(ただし、分子量分布(Mw/Mn)の測定は、上記重合体と同様の条件で行った。)、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)が46であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.4であり、コールドフロー値が0.3mg/分であり、経時安定性が2であり、ガラス転移温度が-106℃であった。
【0314】
[ムーニー粘度(ML1+4,125℃)]
JIS K 6300に準じて、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度125℃の条件で測定した。
【0315】
[コールドフロー値]
圧力3.5lb/in、温度50℃で重合体を1/4インチオリフィスに通して押し出すことにより測定した。定常状態にするため、10分間放置後、押し出し速度を測定し、その測定値を毎分のミリグラム数(mg/分)で表示した。
【0316】
[経時安定性]
90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4,125℃)を測定し、下記式により算出した値である。なお、値が小さいほど経時安定性が良好である。
式:[90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4,125℃)]-[合成直後に測定したムーニー粘度(ML1+4,125℃)]
【0317】
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度は、JIS K 7121に準じて、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することによリ、ガラス転移開始温度として求めた。
【0318】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
共重合体1~4:製造例1~4で製造
変性共役ジエン系重合体:製造例8で製造
天然ゴム:TSR20
ブタジエンゴム:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含量:97質量%)
シリカA:エボニック社製のVN3(NSA:175m/g)
シリカB:エボニック社製の9000GR(NSA:235m/g)
シランカップリング剤A:エボニック社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤B:モメンティブ社製のNXT(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)
シランカップリング剤C:モメンティブ社製のNXT-Z45(結合単位A及び結合単位Bの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
カーボンブラックA:三菱化学(株)製のダイアブラックN339(NSA:96m/g、DBP吸収量:124ml/100g)
カーボンブラックB:製造例6で製造
カーボンブラックC:製造例7で製造
レジンA:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150N(ポリテルペン(β-ピネン樹脂)、軟化点:115℃)
レジンB:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT160(テルペンフェノール樹脂、軟化点:160℃)
レジンC:丸善石油化学(株)製のマルカレッツM-890A(ジシクロペンタジエン系樹脂、軟化点:105℃)
レジンD:荒川化学工業(株)製のパインクリスタルKR-85(ロジン系樹脂、軟化点:80~87℃)
レジンE:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体、軟化点:85℃)
オイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製のX-140(芳香族系プロセスオイル)
ファルネセン系樹脂A:(株)クラレ製のKB-101(ファルネセン単独重合体、Mw:10000、溶融粘度:0.7Pa・s、Tg:-72℃)
ファルネセン系樹脂B:(株)クラレ製のFSR-221(ファルネセン-スチレン共重合体、Mw:10000、質量基準の共重合比:ファルネセン/スチレン=77/23、溶融粘度:5.7Pa・s、Tg:-54℃)
ファルネセン系樹脂C:(株)クラレ製のFBR-746(ファルネセン-ブタジエン共重合体、Mw:100000、質量基準の共重合比:ファルネセン/ブタジエン=60/40、溶融粘度:603Pa・s、Tg:-78℃)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン3C
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
微粒子亜鉛担持体:製造例5で製造
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
加工助剤:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸金属塩(脂肪酸カルシウム、構成脂肪酸:炭素数14~20の飽和脂肪酸)と脂肪酸アミドとの混合物)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:住友化学(株)製のソクシノールCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:住友化学(株)製のソクシノールD(1,3-ジフェニルグアニジン)
テトラジン系化合物A:上記式(1-1-1)で表される化合物
テトラジン系化合物B:上記式(1-2-1)で表される化合物
【0319】
(実施例及び比較例)
表3~12に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15、DS-2パターンの乗用車用スタッドレスタイヤ)を製造した。
【0320】
<評価項目及び試験方法>
以下の評価において、表3の基準比較例を比較例1-1、表4の基準比較例を比較例2-1、・・・、表12の基準比較例を比較例10-1とした。
【0321】
<耐摩耗性能>
LAT試験機(Laboratory Abrasion and Skid Tester)を用い、荷重50N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件で、加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。基準比較例の容積損失量を100として指数表示した(耐摩耗性能指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性能に優れることを示している。
【0322】
<低燃費性能>
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用い、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃の条件で、加硫ゴム組成物のtanδを測定した。基準比較例のtanδを100として指数表示した(低燃費性能指数)。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れることを示している。
【0323】
<氷上グリップ性能>
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要した停止距離を測定した。基準比較例の停止距離を100として指数表示した(氷上グリップ性能指数)。指数が大きいほど、氷上グリップ性能に優れることを示している。
【0324】
【表3】
【0325】
【表4】
【0326】
【表5】
【0327】
【表6】
【0328】
【表7】
【0329】
【表8】
【0330】
【表9】
【0331】
【表10】
【0332】
【表11】
【0333】
【表12】
【0334】
表3~12に示すように、特定の芳香族ビニル-共役ジエン共重合体、ハイシスブタジエンゴム及びイソプレン系ゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、特定のシリカとを含む実施例は、耐摩耗性能、氷上グリップ性能及び低燃費性能がバランス良く改善されることが明らかとなった。