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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220511BHJP
   B41J 3/28 20060101ALI20220511BHJP
   B41J 3/44 20060101ALI20220511BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J3/28
B41J3/44
B41J21/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018012964
(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公開番号】P2019130694
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】中原 翔太
(72)【発明者】
【氏名】助則 篤志
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-035034(JP,A)
【文献】特開2012-025005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 3/28
B41J 3/44
B41J 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷面上での所定の方向への自装置の移動を光学的に検出する移動検出手段と、
前記移動検出手段により前記自装置の前記印刷面上での前記所定の方向への移動が検出されている場合に、撮像手段に対して前記印刷面における所定の範囲を撮像させることにより前記所定の範囲の画像を取得するとともに前記所定の方向への移動に伴ってインクヘッドが前記所定の範囲上を通過するときに前記所定の範囲の画像に対応させた画像を前記所定の範囲に前記インクヘッドからのインク吐出によって印刷させる制御手段と、
を備え
前記移動検出手段は、前記所定の方向において前記撮像手段との間に前記インクヘッドが介在するように配置されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記移動検出手段は、前記所定の方向への前記移動の際に前記撮像手段の方が先頭側となるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷媒体上における装置の移動に応じて、印刷媒体に印刷対象の画像を印刷する印刷装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、記録媒体上を手動走査されることにより記録媒体上に印刷を行う手動型の印刷装置を開示している。具体的に説明すると、特許文献1に開示された印刷装置は、ユーザによって装置が手動で記録媒体上を走査されると、装置の移動量に応じて印刷ヘッドから記録媒体にインクを噴射することによって印刷を行う。更に、特許文献1に開示された印刷装置は、装置が通常の方向とは逆方向に走査された場合、印刷された文字を太くする、印刷された文字にアンダーラインを付す等の装飾を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-35034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された印刷装置は、自装置によって印刷された文字に対して装飾を行うものであった。一方で、自装置によって印刷された文字等に限らず、塗布対象上に予め存在する文字等の輝度の分布に基づいてインクを塗布したい、との要望がある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、印刷面を撮像した画像に基づいた印刷が可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置は、印刷面上での所定の方向への自装置の移動を光学的に検出する移動検出手段と、前記移動検出手段により前記自装置の前記印刷面上での前記所定の方向への移動が検出されている場合に、撮像手段に対して前記印刷面における所定の範囲を撮像させることにより前記所定の範囲の画像を取得するとともに前記所定の方向への移動に伴ってインクヘッドが前記所定の範囲上を通過するときに前記所定の範囲の画像に対応させた画像を前記所定の範囲に前記インクヘッドからのインク吐出によって印刷させる制御手段と、を備え、前記移動検出手段は、前記所定の方向において前記撮像手段との間に前記インクヘッドが介在するように配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷面を撮像した画像に基づいた印刷を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る塗布装置の概略を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る塗布装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る塗布装置の下側の面を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る塗布装置を側面から見た状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る塗布装置がインクを塗布する例を示す第1の図である。
図6】本発明の実施形態に係る塗布装置がインクを塗布する例を示す第2の図である。
図7】本発明の実施形態に係る塗布装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態に係る塗布装置による撮像及び塗布処理の例を示す第1の図である。
図9】本発明の実施形態に係る塗布装置による撮像及び塗布処理の例を示す第2の図である。
図10】本発明の実施形態に係る塗布装置による撮像及び塗布処理の例を示す第3の図である。
図11】本発明の実施形態において撮像画像から塗布画像及びノズルデータが生成される例を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る塗布装置による撮像及び塗布処理の例を示す第4の図である。
図13】本発明の実施形態に係る塗布装置による撮像及び塗布処理の例を示す第5の図である。
図14】本発明の実施形態に係る塗布装置による撮像及び塗布処理の例を示す第6の図である。
図15】本発明の実施形態に係る塗布装置によって実行される塗布処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0011】
図1に、本発明の実施形態に係る塗布装置10を示す。塗布装置10は、塗布対象30上における自装置の移動に合わせてインクを塗布することにより、塗布対象30の表面に、文字、記号、図形、絵柄、模様等の印刷対象の画像を印刷することが可能な装置である。
【0012】
塗布対象30は、例えば印刷用紙、ラベル、段ボール等である。塗布対象30の材質は、紙であることに限らず、例えばフィルム、化学繊維、樹脂、金属等であっても良いし、インクを付着させることができるものであればどのようなものであっても良い。塗布対象30におけるインクが塗布される面は、平面状であることに限らず、曲面状、すなわち多少の膨らみ又は窪みを有する面であっても良い。インクは、印刷対象の画像を印刷するために塗布対象30に塗布される塗布材(塗料)である。なお、インクは、液体状であることに限らず、固体状又はゲル状であっても良い。また、インクは、染料インク、顔料インク等であっても良く、塗布可能なものであればどのような材質で構成されていても良い。
【0013】
図1に示すように、ユーザが塗布装置10を手で把持して、予め規定された移動方向に塗布対象30上を滑らすように移動させながらインクを塗布することで、塗布対象30に印刷対象の画像が形成される。このような方式の塗布装置10は、手動走査型の印刷装置、ハンディプリンタ又はダイレクトプリンタ等と呼ばれる。
【0014】
なお、図1において、X方向は、塗布装置10の主走査方向(幅方向)に相当し、Y方向は、塗布装置10の副走査方向(移動方向)に相当し、Z方向は、塗布対象30の塗布面に垂直な方向、すなわち鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。以降の図でも同様である。
【0015】
図2に示すように、塗布装置10は、制御部11と、記憶部12と、ユーザインタフェース13と、電源部14と、通信部15と、移動検出部16と、撮像部17と、画像処理部18と、インクヘッド(塗布部)19と、を備える。
【0016】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部11において、CPUは、システムバスを介して塗布装置10の各部に接続されており、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、塗布装置10全体の動作を制御する制御手段として機能する。また、制御部11は、RTC(Real Time Clock)等の時間を計測する計時部を備える。
【0017】
記憶部12は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部12は、制御部11が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。例えば、記憶部12は、文字、記号、絵文字等のような表示用及び印刷用のデータ、及び、印刷における各種の設定を定めたテーブルを格納している。また、記憶部12は、制御部11が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0018】
ユーザインタフェース13は、入力キー、ボタン、スイッチ、タッチパッド、タッチパネル等のような入力受付部と、液晶パネル、LED(Light Emitting Diode)等の表示部と、を備える。ユーザインタフェース13は、入力部を介してユーザから各種の操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を制御部11に送信する。また、ユーザインタフェース13は、各種の情報を制御部11から取得して、取得した情報を示す画像を表示部に表示する。
【0019】
電源部14は、バッテリ及び電圧検出器を備え、塗布装置10の動作に必要な電源を作り出して各部に供給する。
【0020】
通信部15は、塗布装置10が外部の機器と通信するためのインタフェースを備える。外部の機器とは、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の端末装置である。通信部15は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等を介して外部の機器と通信する。通信部15は、制御部11の制御の下、このような有線又は無線による通信を介して、外部の機器から印刷データを含む各種データを取得する。
【0021】
移動検出部16は、塗布装置10の下部に設けられており、塗布装置10が塗布対象30上を移動した際における塗布装置10の移動を検出する。具体的に説明すると、移動検出部16は、塗布対象30の表面に向けて光を発するLED等の発光部と、発光部から発せられて塗布対象30の表面で反射した光を読み取る光学センサと、を備える。移動検出部16は、LEDから発せられた光を光学センサによって読み取り、読み取った光の変化に基づいて塗布装置10の移動量と移動の向きとを検出する。移動検出部16は、移動検出手段として機能する。
【0022】
撮像部17は、いわゆるカメラであって、被写体から射出された光を集光するレンズと、集光した光を受けて被写体の画像を取得するCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、撮像素子から電気信号として送られた撮像画像を示すデータをデジタルデータに変換するA/D(Analog/Digital)変換器と、を備える。撮像部17は、塗布装置10が塗布対象30上を移動した際に、塗布対象30の表面を撮像し、撮像によって得られた撮像画像を制御部11に供給する。撮像部17は、撮像手段として機能する。
【0023】
画像処理部18は、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の画像処理用のプロセッサと、処理される画像を一時的に保存するバッファメモリと、を備え、制御部11の制御のもと、撮像部17による撮像により得られた撮像画像を処理する。例えば、画像処理部18は、周知の画像認識手法を用いて、撮像画像に対してエッジ認識、文字認識、オブジェクト認識等の認識処理を実行する。
【0024】
塗布部(インクヘッド)19は、塗布対象30の表面にインクを塗布することにより印刷を実行する塗布機構(印刷機構)である。塗布部19は、インクタンクに充填されたインクを微滴化し、塗布対象30に対してインクを直接に吹き付けるインクジェット方式で塗布対象30の表面にインクを塗布する。塗布部19は、塗布手段として機能する。
【0025】
一例として、塗布部19は、サーマル方式によってインクを吐出する。具体的に説明すると、塗布部19には、複数のノズルが主走査方向(X方向)及び副走査方向(Y方向)に沿って配列されている。複数のノズル内のインクは、ヒータによって加熱されることで気泡を生じ、生じた気泡によって、複数のノズルのそれぞれから塗布対象30へ向けて(鉛直下向きに)インクが吐出される。このような原理によって、塗布部19は、塗布対象30の表面にインクを塗布する。
【0026】
図3に、塗布装置10の下側の面、すなわち塗布対象30側に向けられる面を示す。また、図4に、塗布対象30上を移動している塗布装置10を横から見た状態を示す。なお、図4では、塗布装置10において移動検出部16の光学センサ、撮像部17のレンズ、塗布部19のノズル、及びインクタンク19aが設けられている位置を破線で示している。図3及び図4に示すように、移動検出部16の光学センサ、撮像部17のレンズ、及び塗布部19のノズルは、塗布装置10が走査されている塗布対象30の表面に向けられるように、塗布装置10の下側に向けて設けられている。
【0027】
また、図4に示すように、撮像部17は、塗布装置10の移動方向(進行方向)における前方側に設けられており、移動方向における幅Wの範囲の領域を撮像する。そして、塗布部19のノズルは、撮像部17のレンズよりも、移動方向において距離Lだけ後方の位置に設けられている。すなわち、塗布装置10は、塗布部19が設けられた位置から撮像部17が設けられた位置に向けた方向に移動し、移動検出部16は、塗布対象30上におけるこのような移動方向への塗布装置10の移動を検出する。
【0028】
このような撮像部17と塗布部19の配置により、撮像部17は、塗布対象30上におけるインクが塗布される領域を、塗布部19によるインクの塗布に先立って撮像する。塗布部19は、撮像部17が撮像した位置に、当該位置を撮像部17が撮像してから塗布装置10が距離Lだけ移動したタイミングで到達する。
【0029】
図5及び図6に、塗布装置10が塗布対象30上の塗布面31にインクを塗布する様子を示す。撮像部17は、塗布装置10が塗布対象30上を移動している際に、塗布対象30上における塗布面31を撮像する。ここで、塗布面31とは、塗布対象の塗布対象30の表面(塗布面)において、塗布装置10によりインクが塗布される領域である。例えば図5に示すように、塗布対象30上に「ABC」との文字が描かれた領域にインクを塗布することをユーザが所望する場合、図5において破線で示す「ABC」との文字を含む領域が塗布面31に相当する。
【0030】
塗布面31にインクを塗布する場合、ユーザは、図5に示すように、塗布装置10における撮像部17が設けられた側の端部を塗布面31の端部に合わせるようにして、塗布装置10を塗布対象30上に配置する。この状態で、ユーザは、塗布装置10を走査させて塗布面31上を横断させると、撮像部17による塗布面31の撮像と、塗布部19による塗布面31へのインクの塗布と、が実行される。
【0031】
塗布部19は、撮像部17により撮像された塗布面31の撮像画像に基づいて、塗布面31にインクを塗布する。具体的に説明すると、塗布部19は、移動検出部16により検出された塗布装置10の移動に応じて、撮像部17により撮像された塗布面31における輝度の分布に基づくパターンで、塗布面31にインクを塗布する。
【0032】
ここで、塗布面31における輝度の分布とは、塗布面31における色の濃淡の位置分布を意味する。例えば図5に示したように塗布面31に少なくとも1つの文字が描かれている場合には、文字が描かれた文字部分は色が濃い(すなわち黒に近い)ため相対的に輝度が低く、塗布面31における文字部分以外の背景部分は色が薄い(すなわち白に近い)ため相対的に輝度が高い。塗布部19は、このような塗布面31内の輝度の分布に基づいて決定される塗布パターンで、塗布面31にインクを塗布する。
【0033】
より詳細に説明すると、塗布部19は、(1)塗布面31における背景部分にインクを塗布することで背景画像を印刷する。具体的には図6に示すように、塗布部19は、予め印刷された「ABC」との文字の周辺の背景部分に、所望の色(図6では斜線で示している)のインクを塗布することにより、背景画像を印刷する。或いは、塗布部19は、(2)塗布面31に予め描かれた「ABC」との文字の文字部分にインクを塗布することで、文字部分の濃度又は色を変更しても良いし、塗布対象30と同色のインクを文字部分に塗布することで文字を消すようにしても良い。更には、塗布部19は、(3)文字部分と背景部分との間の境界にインクを塗布することで、縁取りをしても良い。このような(1)背景画像を印刷するか、(2)文字部分の濃度又は色を変更するか、或いは(3)縁取りをするかの設定は、ユーザがユーザインタフェース13を操作して変更することができる。以下では、「ABC」との文字が描かれた塗布面31にインクを塗布して背景画像を印刷する処理を例にとって、塗布装置10による塗布処理について説明する。
【0034】
図7に、塗布装置10の機能的な構成を示す。図7に示すように、塗布装置10は、機能的に、撮像制御部110と、画像データ生成部120と、塗布制御部130と、を備える。制御部11において、CPUがROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、これら各部として機能する。
【0035】
撮像制御部110は、撮像部17による撮像を制御する。具体的に説明すると、撮像制御部110は、ユーザによって塗布装置10が塗布対象30上を走査されている際に、予め規定された撮像タイミングで撮像部17に撮像させる。撮像部17による撮像タイミングは、塗布装置10が塗布対象30上を走査されている際において、規定時間が経過する毎に成立する。規定時間は、例えば数ミリ秒から数100ミリ秒程度の値に予め設定されている。撮像制御部110は、制御部11が撮像部17と協働することによって実現される。撮像制御部110は、撮像制御手段として機能する。
【0036】
撮像部17は、撮像制御部110による制御のもと、塗布装置10が塗布対象30上を移動している際において、規定時間が経過する毎に繰り返し撮像を実行する。これにより、撮像部17は、塗布装置10が塗布対象30上を移動している際に、それぞれが塗布面31のうちの一部の領域である複数の領域を順に撮像する。言い換えると、撮像部17による1回の撮像で可能な撮像範囲は、塗布装置10の移動方向における幅Wの範囲に限られる。そのため、撮像部17は、塗布面31の全体を一度に撮像せずに、部分的な領域に分けて撮像する。
【0037】
具体的に説明すると、撮像部17は、撮像開始時からの経過時間が0である第1の撮像タイミングにおいて、図8に示すように、撮像部17のレンズは、塗布面31内の一方側の端部付近に位置している。このとき、撮像部17は、塗布面31のうちの第1の領域32aを撮像する。第1の領域32aは、図8において太線で囲った領域であって、塗布面31内の一方側の端部において、塗布装置10の移動方向(Y方向)における幅Wの領域である。なお、撮像開始時には、塗布部19のノズルは塗布面31の外部に位置しているため、塗布部19によるインクの塗布は開始されない。
【0038】
第1の領域32aを撮像した後、塗布装置10は、塗布面31上を一方側から他方側に向けて移動する。例えば塗布装置10の移動速度をVと表すと、撮像開始から時間T1が経過した第2の撮像タイミングにおいて、撮像部17のレンズは、図9に示すように、撮像開始位置から距離(V×T1)だけ移動する。このとき、撮像部17は、塗布面31のうちの第2の領域32bを撮像する。第2の領域32bは、第1の領域32aと同様に幅Wの領域であって、第1の領域32aよりも他方側に位置する領域である。
【0039】
更に図10に示すように、撮像開始から時間T1より大きい時間T2が経過した第3の撮像タイミングにおいて、撮像部17は、塗布面31のうちの第3の領域32cを撮像する。第3の領域32cは、第1の領域32a及び第2の領域32bと同様に幅Wの領域であって、第2の領域32bよりも更に他方側に位置する領域である。なお、以下では、塗布面31内の複数の領域32a,32b,32c…のそれぞれを区別せず称する場合には、領域32と総称する。
【0040】
このように、撮像部17は、塗布装置10が塗布面31上を移動している間、規定の撮像タイミングが到来する毎に撮像を実行することにより、塗布面31内における幅Wの複数の領域32a,32b,32c…を順に撮像する。撮像部17により撮像された撮像画像は、撮像された領域32の位置情報に対応付けられて、記憶部12に記憶される。位置情報は、移動検出部16により検出された、撮像開始時からの塗布装置10の移動量によって定められる。
【0041】
図7に戻って、画像データ生成部120は、撮像部17により撮像された塗布面31における輝度の分布に基づいて、塗布面31にインクを塗布するパターン(塗布パターン)を決定し、決定した塗布パターンを示す画像データを生成する。塗布パターンとは、塗布面31内におけるインクの分布の態様であって、塗布面31内におけるインクを塗布する位置と、各位置に塗布するインクの色及び濃度と、によって表される。言い換えると、画像データ生成部120は、塗布パターンとして、塗布面31内のどの位置にどの色のインクをどれだけの濃度で塗布するかを決定する。
【0042】
画像データ生成部120は、撮像部17により撮像された塗布面31の撮像画像に基づいて、塗布パターンを決定する。具体的に説明すると、画像データ生成部120は、撮像部17により複数の領域32a,32b,32c…のうちのいずれかの領域が撮像されると、当該撮像された領域32における輝度の分布に基づいて塗布パターンを決定し、画像データを生成する。
【0043】
図11に、撮像部17が塗布面31内の領域32a,32b,32c…を順に撮像することによって得られた撮像画像40a,40b,40c…を示す。画像データ生成部120は、このような塗布面31内の一部を撮像した撮像画像40a,40b,40c…を、周知の画像処理アルゴリズムに従って解析する。
【0044】
具体的に説明すると、画像データ生成部120は、撮像画像40a,40b,40c…のそれぞれについて、画像内の各位置における輝度を計算する。そして、画像データ生成部120は、撮像画像40a,40b,40c…のそれぞれにおいて輝度が閾値よりも低い部分(すなわち相対的に濃い部分)と輝度が閾値よりも高い部分(すなわち相対的に薄い部分)とを識別する。その結果、画像データ生成部120は、輝度が閾値よりも低い部分を文字部分であると識別し、輝度が閾値よりも高い部分を背景部分であると識別する。
【0045】
このようにして文字部分と背景部分とを識別すると、画像データ生成部120は、識別した結果に基づいて塗布パターンを決定する。例えば、塗布面31における「ABC」との文字部分以外の背景部分に所望の色のインクを塗布する場合、画像データ生成部120は、撮像画像40a,40b,40c…のそれぞれにおいて、背景部分に所望の色のインクを塗布し、文字部分にどの色のインクも塗布しない、との塗布パターンを決定する。
【0046】
このようにして塗布パターンを決定すると、画像データ生成部120は、決定した塗布パターンを示す画像(塗布画像)を生成する。具体的には図11に示すように、画像データ生成部120は、第1の領域32aの撮像画像40aからは塗布画像41aを生成し、第2の領域32bの撮像画像40bからは塗布画像41bを生成し、第3の領域32cの撮像画像40cからは塗布画像41cを生成する。
【0047】
なお、図11では、理解を容易にするために、塗布画像41a,41b,41c…における背景部分に塗布するインクの色を斜線で示している。以下では、撮像画像40a,40b,40c…のそれぞれを区別せず称する場合には、撮像画像40と総称する。同様に、塗布画像41a,41b,41c…のそれぞれを区別せず称する場合には、塗布画像41と総称する。
【0048】
このように、画像データ生成部120は、撮像部17により撮像画像40が得られる毎に、当該撮像画像40に基づいて、当該撮像画像40が撮像された領域に塗布するインクのパターンを示す塗布画像41を生成する。塗布画像41を生成すると、画像データ生成部120は、生成された塗布画像41に基づいてノズルデータ42を生成する。ノズルデータ42は、画像データ生成部120により決定された塗布パターンで、塗布部(インクヘッド)19のノズルから塗布面31にインクを塗布するためのデータである。
【0049】
例えば図11に示すように、撮像画像40a,40b,40c…からそれぞれ塗布画像41a,41b,41c…が生成された場合、画像データ生成部120は、塗布画像41a,41b,41c…を、重複する部分を取り除いて繋ぎ合わせることにより、ノズルデータ42を生成する。このとき、画像データ生成部120は、塗布面31上における塗布装置10の移動に合わせて塗布部19がインクを塗布することができるように、塗布画像41a,41b,41c…におけるY方向の位置情報を、ノズルデータ42では撮像開始時からの塗布装置10の移動量に変換して表現する。このように、ノズルデータ42は、塗布部19におけるインクを吐出するノズルの位置とその際のインクの色及び濃度とを、塗布装置10の塗布対象30上での移動量に応じて定めた画像データである。
【0050】
画像データ生成部120は、新たな塗布画像41が生成されると、新たに生成された塗布画像41によってノズルデータ42を生成する。そして、画像データ生成部120は、塗布画像41a,41b,41c…が順に生成される毎に、新たに生成された塗布画像41によって既存のノズルデータ42を繰り返し更新していく。画像データ生成部120は、制御部11が画像処理部18と協働することによって実現される。画像データ生成部120は、画像データ生成手段として機能する。
【0051】
塗布制御部130は、塗布部19によるインクの塗布を制御する。具体的に説明すると、塗布制御部130は、移動検出部16によって塗布装置10の移動が検出されると、検出された移動に合わせて、画像データ生成部120により生成されたノズルデータ42の内容を塗布部19に出力する。そして、塗布制御部130は、塗布部19の通電ドットを制御し、塗布部19のノズルからインクを吐出させる。これにより、印刷が実行される。塗布制御部130は、制御部11が塗布部19と協働することによって実現される。塗布制御部130は、塗布制御手段として機能する。
【0052】
塗布部19は、塗布制御部130による制御のもと、移動検出部16により検出された塗布装置10の移動に応じて、塗布面31に、撮像部17により撮像された塗布面31の撮像画像40に基づくパターンでインクを塗布する。より詳細には、塗布部19は、撮像部17による塗布面31の撮像が開始されると、塗布装置10の移動によって塗布部19が塗布面31における撮像部17によって撮像された領域に到達した場合に、移動検出部16により検出された塗布装置10の移動に応じて、塗布面31にインクを塗布する。
【0053】
具体的に説明すると、図8から図10に示したように、撮像部17が塗布面31上に位置していても、塗布部19が塗布面31に位置していない場合には、塗布面31にインクを塗布することはできない。そのため、塗布部19は、撮像部17による塗布面31の撮像が開始された後、塗布部19の位置が塗布面31に到達するまでの間は、ノズルからインクを塗布しない。
【0054】
その後、塗布部19は、塗布部19の位置が塗布面31上に到達したタイミングで、塗布面31にインクの塗布を開始する。具体的に説明すると、塗布部19は、移動検出部16により、撮像部17による塗布面31が開始された位置から、塗布部19が設けられた位置と撮像部17が設けられた位置との間の距離Lの移動が検出されると、塗布面31に基づいてインクの塗布を開始する。
【0055】
例えば図12に、撮像開始から時間T3が経過したタイミングにおいて、塗布部19のノズルの位置が、塗布面31の一方側の端部に位置する第1の領域32aに到達した状態を示す。このタイミングにおいて、撮像部17は、塗布面31内における第1の領域32aとは別の領域32dを撮像している。領域32dは、第1の領域32aに対して、同じ側の端部同士を比較して距離Lだけ離れた領域である。塗布部19は、図12に示すようにノズルの位置が第1の領域32aに到達すると、第1の領域32aの撮像画像40aに基づいて生成された塗布画像41aに従って、第1の領域32aにインクの塗布を開始する。これにより、第1の領域32aに塗布画像41aが印刷される。
【0056】
更に図13に、撮像開始から時間T3より大きい時間T4が経過したタイミングにおいて、塗布部19のノズルの位置が第2の領域32bに到達した状態を示す。このタイミングにおいて、撮像部17は、塗布面31内における、第2の領域32bに対して距離Lだけ離れた領域32eを撮像している。一方で、塗布部19は、塗布面31内におけるノズルが通過した位置、すなわち図13において斜線で示す部分にはインクの塗布を完了している。塗布部19は、図13に示すようにノズルの位置が第2の領域32bに到達すると、第2の領域32bの撮像画像40bに基づいて生成された塗布画像41bに従って、第2の領域32bにインクの塗布を開始する。これにより、第2の領域32bに塗布画像41bが印刷される。
【0057】
このように、塗布部19は、塗布装置10の移動によって塗布部19が、撮像部17により撮像された複数の領域32a,32b,32c…のそれぞれに到達すると、塗布部19が到達した領域32に、当該領域32における輝度の分布に基づくパターンでインクを塗布する。画像データ生成部120は、複数の領域32a,32b,32c…のそれぞれについて、撮像部17により撮像された領域32に塗布部19が到達するまでの間、すなわち塗布装置10が距離Lを移動している間に、当該領域32の撮像画像40から塗布画像41を生成する処理と、生成された塗布画像41からノズルデータ42を生成する処理と、を実行する。塗布部19は、塗布面31上における塗布装置10の移動量に応じて、画像データ生成部120により生成されたノズルデータ42に従って塗布面31にインクを塗布していく。
【0058】
最終的に、図14に示すように、撮像開始から時間T5が経過したタイミングにおいて塗布部19のノズルの位置が塗布面31の他方側の端部に到達すると、塗布面31へのインクの塗布が完了する。これにより、図14の例では、塗布面31における「ABC」との文字の背景部分に背景画像が印刷される。
【0059】
以上のように構成される塗布装置10において実行される塗布処理の流れについて、図15を参照して説明する。
【0060】
ユーザは、塗布対象30上の所望の塗布面31にインクを塗布することを望む場合、塗布装置10のユーザインタフェース13を操作して印刷開始ボタンを押下し、撮像部17のレンズが設けられた位置を塗布面31の端部に合わせるようにして塗布装置10を塗布面31上に置く。そして、ユーザは、塗布装置10の下側の面を塗布対象30に接触させながら、塗布装置10を、塗布部19のノズルが設けられた位置から撮像部17のレンズが設けられた位置に向けた方向に、すなわち+Y方向に走査させる。このような状態において、図15に示す塗布処理は開始する。
【0061】
塗布処理が開始すると、制御部11は、塗布装置10の移動を検出する(ステップS1)。具体的に説明すると、制御部11は、塗布対象30上における塗布装置10の走査が開始されると、移動検出部16を介して、塗布対象30上における塗布装置10の移動量と移動の向きとを検出する。
【0062】
塗布装置10の移動を検出すると、第1に、制御部11は、撮像のタイミングが到来したか否かを判定する(ステップS2)。具体的に説明すると、撮像のタイミングは、塗布装置10が塗布対象30上を移動している最中に規定時間が経過する毎に到来する。そのため、制御部11は、塗布装置10が塗布対象30上の移動を開始してから規定時間が経過する毎に、撮像のタイミングが到来したと判定する。
【0063】
撮像のタイミングが到来すると(ステップS2;YES)、制御部11は、撮像制御部110として機能し、撮像を実行する(ステップS21)。具体的に説明すると、制御部11は、撮像部17を制御して、塗布面31内において撮像部17で撮像可能な範囲である幅Wの領域32を撮像する。これに対して、撮像のタイミングが到来していない場合(ステップS2;NO)、制御部11は、ステップS21の撮像処理をスキップする。
【0064】
第2に、制御部11は、新たな撮像画像40が有るか否かを判定する(ステップS3)。具体的に説明すると、制御部11は、ステップS2において塗布面31内におけるいずれかの領域32を撮像することにより、未だ塗布画像41を生成していない撮像画像40が新たに得られたか否かを判定する。
【0065】
新たな撮像画像40が有る場合(ステップS3;YES)、制御部11は、画像データ生成部120として機能し、新たな撮像画像40に基づいて、塗布画像41を生成する(ステップS31)。例えば図11に示した撮像画像40a,40b,40c…のうちの1つが新たな撮像画像40として得られた場合、制御部11は、当該新たな撮像画像40における輝度の分布に基づいて、塗布面31のうちの当該新たな撮像画像40を撮像した領域に塗布するインクの塗布パターンを決定する。そして、制御部11は、決定した塗布パターンを示す塗布画像41として、例えば図11に示した塗布画像41a,41b,41c…のうちの1つを生成する。
【0066】
塗布画像41を生成すると、制御部11は、更に画像データ生成部120として機能し、生成した塗布画像41に基づいて、ノズルデータ42を生成する(ステップS32)。具体的に説明すると、制御部11は、既に生成された塗布画像41と新たに生成された塗布画像41とを繋ぎ合わせることにより、例えば図11に示したノズルデータ42を生成する。これにより、制御部11は、塗布画像41のデータを、塗布部19が塗布面31にインクを塗布するためのデータに変換する。
【0067】
一方で、ステップS3において新たな撮像画像40が無いと判定した場合(ステップS3;NO)、制御部11は、ステップS31における塗布画像41の生成処理、及びステップS32におけるノズルデータ42の生成処理をスキップする。
【0068】
第3に、制御部11は、移動検出部16により、塗布対象30上の塗布面31における塗布装置10の移動を検出したか否かを判定する(ステップS4)。図8から図10に示したように、塗布面31における移動を検出していない場合、すなわち塗布面31の撮像開始から塗布部19のノズルの位置が塗布面31に到達するまでの間は、塗布面31にインクを塗布することができない。そのため、塗布面31における塗布装置10の移動を検出していない場合(ステップS4;NO)、制御部11は、ステップS41の処理をスキップし、塗布面31にインクを塗布しない。
【0069】
これに対して、塗布面31における塗布装置10の移動を検出した場合(ステップS4;YES)、制御部11は、塗布制御部130として機能し、塗布装置10の移動に応じてインクを塗布する(ステップS41)。具体的に説明すると、制御部11は、移動検出部16によって塗布面31上における塗布装置10の移動が検出される毎に、ステップS32で生成されたノズルデータ42に従った塗布パターンで、塗布面31にインクを塗布する。
【0070】
例えば図12に示したように塗布部19が第1の領域32aに位置している場合には、制御部11は、第1の領域32aの撮像画像40aに基づいて決定された塗布パターンで、第1の領域32aにインクを塗布する。また、図13に示したように塗布部19が第2の領域32bに位置している場合には、制御部11は、第2の領域32bの撮像画像40bに基づいて決定された塗布パターンで、第2の領域32bにインクを塗布する。このようにして、制御部11は、塗布面31内における各領域32に、各領域32上における塗布装置10の移動量に応じてインクを塗布する。
【0071】
その後、制御部11は、塗布面31に対する塗布処理が終了したか否かを判定する(ステップS5)。具体的に説明すると、制御部11は、例えばユーザがユーザインタフェース13を操作して終了ボタンを押下した場合に、塗布処理が終了したと判定する。或いは、制御部11は、塗布装置10を塗布対象30の塗布面から離間させた場合等にも、塗布処理が終了したと判定しても良い。
【0072】
塗布処理が終了していない場合(ステップS5;NO)、制御部11は、処理をステップS1に戻す。そして、制御部11は、撮像のタイミングが到来する毎に撮像処理を実行し、新たな撮像画像40が得られる毎に塗布画像41及びノズルデータ42の生成処理を実行し、塗布面31における塗布装置10の移動を検出する毎にインクを塗布する処理を実行する。制御部11は、このような処理を塗布面31に対するインク塗布が終了するまで繰り返す。最終的に、インク塗布が終了すると(ステップS5;YES)、図15に示した塗布処理は終了する。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る塗布装置10は、塗布対象の塗布対象30上における塗布面31を撮像し、塗布対象30上における自装置の移動に応じて、塗布面31に、撮像された塗布面31における輝度の分布に基づくパターンでインクを塗布する。これにより、本実施形態に係る塗布装置10は、自装置によって印刷された文字等に限らず、塗布対象30上に予め存在する文字等の輝度の分布に基づいてインクを塗布することができる。
【0074】
特に、本実施形態に係る塗布装置10は、塗布面31を撮像する処理と、撮像画像40に基づいて塗布画像41及びノズルデータ42を生成する処理と、インクを塗布する処理と、を実行する機能を1つの装置内に備える。そして、本実施形態に係る塗布装置10は、これら3ステップの処理を、塗布装置10が塗布面31上を一方向に移動している間に実施する。その結果、ユーザが塗布装置10を把持して塗布面31上を走査させるという簡単な操作で、塗布対象30上に予め印刷された文字等の位置に精度良く合わせるようにして、インクを塗布することができる。
【0075】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0076】
例えば、上記実施形態では、塗布面31として「ABC」との文字が予め印刷された領域を例にとって説明した。しかしながら、本発明において、塗布面31は、このような文字が印刷された領域に限らない。例えば、塗布面31として、文字以外にも記号、図形等が予め印刷された領域が選ばれても良いし、模様、絵柄等が予め描かれた領域が選ばれても良い。或いは、塗布面31として、塗布対象30上における汚れ、染み等が存在する領域が選ばれても良い。このように、領域内の輝度の分布を示す画像データを撮像部17の撮像によって取得可能なものであれば、塗布対象30上のどのような領域を塗布面31として設定しても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、塗布部19は、塗布面31において輝度が閾値よりも高い部分にインクを塗布することで、塗布面31における背景部分に背景画像を印刷することを例にとって説明した。しかしながら、本発明において、塗布部19は、背景画像を印刷することに限らず、塗布面31における文字等の部分にインクを塗布することで、予め塗布面31に存在する文字等の色又は濃度を変更しても良い。
【0078】
具体的に説明すると、画像データ生成部120は、塗布面31における輝度が閾値よりも低い部分に所望の色のインクを所望の濃度で塗布するように、塗布パターンを決定する。例えば、塗布面31に予め印刷された文字等を濃くする場合には、画像データ生成部120は、塗布面31における輝度が閾値よりも低い部分に、当該輝度よりも更に低い輝度のインクを塗布するように塗布パターンを決定する。一方で、塗布面31に予め印刷された文字等を薄くする場合、又は塗布面31内に存在する染み、汚れ等を薄くする場合には、画像データ生成部120は、塗布面31における輝度が閾値よりも低い部分に、当該輝度よりも高い輝度のインクを塗布するように、塗布パターンを決定する。そして、塗布部19は、画像データ生成部120により決定された塗布パターンでインクを塗布する。
【0079】
或いは、塗布部19は、塗布面31における文字等の周縁部分にインクを塗布することで、文字等の縁取りをしても良い。この場合、画像データ生成部120は、塗布面31における輝度が閾値よりも高い部分と輝度が閾値よりも低い部分との間の境界部分に所望の色のインクを所望の濃度で塗布するように、塗布パターンを決定する。そして、塗布部19は、画像データ生成部120により決定された塗布パターンでインクを塗布する。
【0080】
上記実施形態では、塗布装置10は、撮像部17により撮像された塗布面31の撮像画像40a,40b,40c…に基づいて塗布画像41a,41b,41c…及びノズルデータ42を生成する画像データ生成部120の機能を備えていた。しかしながら、本発明において、塗布装置10が画像データ生成部120の機能を備えず、塗布装置10の外部の装置が画像データ生成部120の機能を備えていても良い。外部の装置とは、無線又は有線による通信を介して塗布装置10と接続されるパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置、又は、インターネット等の広域ネットワークを介して塗布装置10と接続されるサーバである。
【0081】
塗布装置10が画像データ生成部120の機能を備えない場合、塗布装置10は、撮像部17により撮像された塗布面31の撮像画像40a,40b,40c…のデータを、通信部15を介して外部の装置に送信する。外部の装置は、上記実施形態で説明した画像データ生成部120の機能により、塗布装置10から受信した撮像画像40a,40b,40c…に基づいて塗布画像41a,41b,41c…及びノズルデータ42を生成し、生成したノズルデータ42を塗布装置10に送信する。塗布装置10は、通信部15を介して外部の装置からノズルデータ42を受信し、受信したノズルデータ42に従って塗布面31にインクを塗布する。或いは、塗布画像41a,41b,41c…からノズルデータ42を生成する処理は、外部の装置が実行せず、塗布装置10が実行しても良い。この場合、塗布装置10は、外部の装置から塗布画像41a,41b,41c…を受信し、受信した塗布画像41a,41b,41c…からノズルデータ42を生成し、生成したノズルデータ42に従って塗布面31にインクを塗布する。このように、画像データ生成部120の機能の少なくとも一部を外部の装置が備えることで、塗布装置10で実行される処理量を減らすことができるため、塗布装置10の構成をより簡略化することができる。
【0082】
上記実施形態では、撮像部17は、塗布面31内の複数の領域32を、塗布装置10が塗布対象30上を移動している際において規定時間が経過する毎に繰り返し撮像した。しかしながら、本発明において、撮像部17は、塗布面31内の複数の領域32を、塗布装置10が塗布対象30上を移動している際において移動検出部16により規定距離の移動が検出される毎に繰り返し撮像しても良い。言い換えると、撮像部17による撮像のタイミングを、時間の経過により規定する代わりに、塗布対象30上における塗布装置10の移動量によって規定しても良い。
【0083】
この場合、規定距離は、撮像部17により撮像可能な領域の、塗布装置10の塗布対象30上での移動方向における幅Wに相当する距離であっても良い。言い換えると、撮像部17は、塗布面31内の複数の領域32を、塗布装置10が塗布対象30上を移動している際において移動検出部16により幅Wに相当する距離の移動が検出される毎に撮像しても良い。このように、撮像部17による撮像可能な範囲を塗布装置10が移動する毎に撮像部17が撮像することで、撮像される複数の領域32が互いに重複しないようにできる。そのため、塗布面31内の撮像画像40を効率良く取得することができ、画像データ生成部120及び画像データ生成部120における処理量を減らすことができる。
【0084】
上記実施形態では、塗布装置10は、塗布対象30上を予め規定された方向、具体的には塗布装置10において塗布部19が設けられた位置から撮像部17が設けられた位置に向けた方向(+Y方向)に移動している際に、塗布面31を撮像し、塗布面31にインクを塗布した。しかしながら、本発明において、塗布装置10は、塗布対象30上において予め規定された方向以外の方向に移動している際に、上記実施形態で説明した処理を実行しても良い。言い換えると、ユーザが塗布装置10を、XY平面における任意の方向に走査させながら、塗布対象30上の任意の位置の領域に、当該領域における輝度の分布に基づくパターンでインクを塗布しても良い。
【0085】
具体的に説明すると、塗布装置10が塗布対象30上を任意の方向に移動している際に、移動検出部16は、塗布装置10の移動量と移動の向きとを検出する。撮像部17は、塗布装置10が塗布対象30上を任意の方向に移動している間、規定の撮像タイミングが到来する毎に塗布対象30上の領域を撮像する。撮像部17により得られた撮像画像は、撮像された領域の位置情報に対応付けて記憶部12に記憶される。ここで、位置情報は、XY平面における2次元座標によって表される位置情報であって、移動検出部16により検出された、撮像開始からの塗布装置10の移動量及び移動の向きに基づいて定められる。塗布部19は、塗布部19のノズルの位置が撮像部17により撮像された領域に到達したタイミングで、当該領域に、当該領域における輝度の分布に基づくパターンでインクを塗布する。このように、撮像部17により撮像された塗布対象30上の領域に塗布部19の位置が到達したタイミングで塗布部19がインクを塗布できるようにすれば、塗布装置10は、+Y方向に限らず塗布対象30上のどのような方向に移動しても良い。
【0086】
上記実施形態では、塗布部19は、サーマル方式によって塗布部19からインクを吐出した。しかしながら、本発明において、塗布部19は、サーマル方式に限らず、他の方式によりインクを吐出しても良い。例えば、塗布部19は、ピエゾ素子を用いたピエゾ方式によりインクを吐出して、塗布対象30に印刷対象の画像を印刷しても良い。また、塗布部19は、インクジェット方式に限らず、熱転写方式等、他の方式により塗布対象30にインクを塗布しても良い。また、塗布装置10の形状は、図1に示したような四角柱状に限らず、どのような形状をしていても良い。また、撮像部17は、カメラであることに限らず、塗布面31における輝度の分布を検出可能な光学センサ等であっても良い。言い換えると、撮像部17に限らず、塗布装置10の塗布対象30上における移動の際に、光学センサ等によって塗布面31における輝度の分布を検出しても良い。
【0087】
上記実施形態では、制御部11において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって、撮像制御部110、画像データ生成部120及び塗布制御部130の各部として機能した。しかしながら、本発明において、制御部11は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、撮像制御部110、画像データ生成部120及び塗布制御部130の各部として機能しても良い。この場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現しても良いし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現しても良い。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現しても良い。
【0088】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた塗布装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る塗布装置として機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した塗布装置10による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る塗布装置として機能させることができる。また、本発明に係る塗布方法は、塗布装置を用いて実施できる。
【0089】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0091】
(付記1)
塗布対象上における自装置の移動を検出する移動検出手段と、
前記自装置の移動の際に前記塗布対象の塗布面を撮像する撮像手段と、
前記移動検出手段により検出された前記移動に応じて、前記塗布面に、前記撮像手段によって撮像された前記塗布面の画像に基づいてインクを塗布する塗布手段と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
(付記2)
前記塗布手段は、前記撮像手段による前記塗布面の撮像が開始されると、前記自装置の移動によって前記塗布手段が前記塗布面における前記撮像手段によって撮像された領域に到達した場合に、前記移動検出手段により検出された前記移動に応じて、前記塗布面にインクを塗布する、
ことを特徴とする付記1に記載の塗布装置。
(付記3)
前記移動検出手段は、前記自装置において前記塗布手段が設けられた位置から前記撮像手段が設けられた位置に向けた方向への前記移動を検出し、
前記塗布手段は、前記移動検出手段により、前記撮像手段による前記塗布面の撮像が開始された位置から、前記塗布手段が設けられた前記位置と前記撮像手段が設けられた前記位置との間の距離の前記移動が検出されると前記塗布面の画像に基づいてインクの塗布を開始する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の塗布装置。
(付記4)
前記撮像手段により撮像された前記塗布面における輝度の分布に基づくパターンを決定し、決定した前記パターンを示す画像データを生成する画像データ生成手段、を更に備え、
前記塗布手段は、前記移動検出手段により検出された前記移動に応じて、前記塗布面に、前記画像データ生成手段により生成された前記画像データに従ってインクを塗布する、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の塗布装置。
(付記5)
前記画像データ生成手段は、前記撮像手段により撮像された前記塗布面において前記輝度が閾値よりも高い部分と前記輝度が前記閾値よりも低い部分とを識別し、識別した結果に基づいて前記パターンを決定する、
ことを特徴とする付記4に記載の塗布装置。
(付記6)
前記画像データ生成手段は、前記塗布面における前記輝度が前記閾値よりも高い部分にインクを塗布するように、前記パターンを決定する、
ことを特徴とする付記5に記載の塗布装置。
(付記7)
前記画像データ生成手段は、前記塗布面における前記輝度が前記閾値よりも低い部分にインクを塗布するように、前記パターンを決定する、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の塗布装置。
(付記8)
前記画像データ生成手段は、前記塗布面における前記輝度が前記閾値よりも高い部分と前記輝度が前記閾値よりも低い部分との間の境界部分にインクを塗布するように、前記パターンを決定する、
ことを特徴とする付記5から7のいずれか1つに記載の塗布装置。
(付記9)
前記撮像手段は、前記自装置が前記塗布対象上を移動している際に、それぞれが前記塗布面のうちの一部の領域である複数の領域を順に撮像し、
前記塗布手段は、前記自装置の移動によって前記塗布手段が、前記撮像手段により撮像された前記複数の領域のそれぞれに到達すると、前記塗布手段が到達した領域に、当該領域における輝度の分布に基づいてインクを塗布する、
ことを特徴とする付記1から8のいずれか1つに記載の塗布装置。
(付記10)
前記撮像手段は、前記複数の領域のそれぞれを、前記自装置が前記塗布対象上を移動している際において規定時間が経過する毎に繰り返し撮像する、
ことを特徴とする付記9に記載の塗布装置。
(付記11)
前記撮像手段は、前記複数の領域のそれぞれを、前記自装置が前記塗布対象上を移動している際において前記移動検出手段により規定距離の前記移動が検出される毎に繰り返し撮像する、
ことを特徴とする付記9又は10に記載の塗布装置。
(付記12)
塗布装置によるインクの塗布方法であって、
塗布対象上における前記塗布装置の移動を検出し、
前記塗布装置の移動の際に前記塗布対象の塗布面を撮像し、
検出された前記移動に応じて、前記塗布面に、撮像された前記塗布面の画像に基づいてインクを塗布する、
ことを特徴とする塗布方法。
(付記13)
塗布装置のコンピュータを、
塗布対象上における前記塗布装置の移動を検出する移動検出手段、
前記塗布装置の移動の際に前記塗布対象の塗布面を撮像する撮像手段、
前記移動検出手段により検出された前記移動に応じて、前記塗布面に、前記撮像手段により撮像された前記塗布面の画像に基づいてインクを塗布する塗布手段、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0092】
10…塗布装置、11…制御部、12…記憶部、13…ユーザインタフェース、14…電源部、15…通信部、16…移動検出部、17…撮像部、18…画像処理部、19…塗布部(インクヘッド)、19a…インクタンク、30…塗布対象、31…塗布面、32,32a,32b,32c,32d,32e…領域、40,40a,40b,40c…撮像画像、41,41a,41b,41c…塗布画像、42…ノズルデータ、110…撮像制御部、120…画像データ生成部、130…塗布制御部
図1
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