(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電動車両のペダル制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20220511BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20220511BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220511BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L15/00 J
B60L58/12
H02J7/00 P
H02J7/00 X
(21)【出願番号】P 2018025272
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和貴
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英司
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283968(JP,A)
【文献】特表2006-509484(JP,A)
【文献】特開2001-278017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 15/00
B60L 58/12
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに蓄電された電力を用いて駆動する電動車両に設けられるペダルの制御装置であって、
前記バッテリの残存出力容量を推定する残存出力推定部と、
前記電動車両に設けられ、踏み込み初期位置から踏み込み限界位置の間で操作可能なアクセルペダルと、
前記残存出力容量に基づいて前記アクセルペダルの前記踏み込み初期位置を変更する初期位置変更部と、
を備えることを特徴とする電動車両のペダル制御装置。
【請求項2】
前記初期位置変更部は、前記残存出力容量が少ないほど前記アクセルペダルの前記踏み込み初期位置を車両上方に変更する、
ことを特徴とする請求項1記載の電動車両のペダル制御装置。
【請求項3】
前記アクセルペダルは、
運転者の足と接する踏み込み板と、
先端に前記踏み込み板が取り付けられたアームと、
所定の支持点において前記アームを前記電動車両の本体に対して揺動可能に支持する支持軸と、を備え、
前記初期位置変更部は、前記残存出力容量少ないほど前記踏み込み板の位置を前記支持点方向に近づける、
ことを特徴とする請求項1または2記載の電動車両のペダル制御装置。
【請求項4】
前記アームの前記支持軸に対する揺動範囲は、前記踏み込み初期位置を変更する前と前記踏み込み初期位置を変更した後とで変化しない、
ことを特徴とする請求項3記載の電動車両のペダル制御装置。
【請求項5】
前記初期位置変更部は、連続的に変化する前記残存出力容量に対して前記踏み込み初期位置を段階的に変更する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の電動車両のペダル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のペダル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリに蓄電された電力を用いて駆動する電動車両では、バッテリの充電率を示すSOC(State of charge)が表示され、満充電状態に対する現在の残存容量を運転者に報知している。
また、例えば下記特許文献1には、走行用駆動源としてモータを備えた車両の当該モータに電力を供給する電池の電池残量情報に基づいて、この車両が備えるアクセルペダルの反力を設定する技術が開示されている。車両用制御装置は、電池の電池残量情報に基づいてアクセルペダル反力を設定することで、電池の電池残量の状態を運転者に知らせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、運転者はSOC表示によってバッテリの充電率を把握可能であるものの、車両の走行状態によってはSOC表示を確認できない場合がある。また、電動車両は、バッテリの残存容量が少なくなってくると満充電状態(高SOC)の車両出力を維持し続けることは困難となり出力制限が行われるが、SOC表示では出力制限が実施される否かが分かりにくいという課題がある。
また、上述した特許文献1のようにアクセルペダルの反力を用いる方法が提案されているものの、アクセル操作を行わないとバッテリの充電率を認識することができない。また、ペダル反力により通常時と運転フィーリングが異なる場合があり、改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、バッテリの残存出力容量を運転者が直感的に認識可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる電動車両は、バッテリに蓄電された電力を用いて駆動する電動車両に設けられるペダルの制御装置であって、前記バッテリの残存出力容量を推定する残存出力推定部と、前記電動車両に設けられ、踏み込み初期位置から踏み込み限界位置の間で操作可能なアクセルペダルと、前記残存出力容量に基づいて前記アクセルペダルの前記踏み込み初期位置を変更する初期位置変更部と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明にかかる電動車両は、前記初期位置変更部は、前記残存出力容量が少ないほど前記アクセルペダルの前記踏み込み初期位置を車両上方に変更する、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかる電動車両は、前記アクセルペダルは、運転者の足と接する踏み込み板と、先端に前記踏み込み板が取り付けられたアームと、所定の支持点において前記アームを前記電動車両の本体に対して揺動可能に支持する支持軸と、を備え、前記初期位置変更部は、前記残存出力容量少ないほど前記踏み込み板の位置を前記支持点方向に近づける、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかる電動車両は、前記アームの前記支持軸に対する揺動範囲は、前記踏み込み初期位置を変更する前と前記踏み込み初期位置を変更した後とで変化しない、ことを特徴とする。
請求項5の発明にかかる電動車両は、前記初期位置変更部は、連続的に変化する前記残存出力容量に対して前記踏み込み初期位置を段階的に変更する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、バッテリの残存出力容量に基づいてアクセルペダルの踏み込み初期位置を変更するので、運転者はSOC表示を目視することなくバッテリの残存出力容量を直感的に把握することができ、車両運転時の利便性を向上させる上で有利となる。
請求項2の発明によれば、残存出力容量が少ないほど踏み込み初期位置を車両上方に近づけるので、高い出力を要求する操作が行いにくくなり、バッテリの出力可能容量に見合った運転操作を促す上で有利となる。
請求項3の発明によれば、支持軸がアームを支持する支持点の位置を変化させることによりアクセルペダルの踏み込み初期位置を変化させるので、バッテリの出力可能容量を運転者に直感的に認識させることができる。
請求項4の発明によれば、アームの支持軸に対する揺動範囲が、踏み込み初期位置を変更する前後で変化しないので、アクセルペダルの操作可能範囲を制限してバッテリの残存出力容量を直感的に把握する上で有利となる。
請求項5の発明によれば、連続的に変化するバッテリの残存出力容量に対して踏み込み初期位置を段階的に変更するので、操作可能範囲を連続的に変更するのと比較して運転者が残存出力容量の減少に気づきやすくなり、その時々のバッテリの限界出力に合わせた運転動作を促す上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態にかかる電動車両10の構成を示す図である。
【
図2】アクセルペダル24の周辺構成を模式的に示す説明図である。
【
図3】アクセルペダル24の踏み込み状態を模式的に示す説明図である。
【
図4】残存出力容量と操作可能範囲との関係を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態2におけるアクセルペダル24の周辺構成を模式的に示す説明図である。
【
図6】実施の形態2におけるアクセルペダル24の周辺構成を模式的に示す説明図である。
【
図8】支持位置が変更されたアクセルペダル24の状態を示す図である。
【
図9】アーム同士の連結位置が変更されたアクセルペダル24の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態1)
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる電動車両の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかるペダル制御装置10の構成を示す図である。
本実施の形態では、ペダル制御装置10が搭載された電動車両が駆動源としてモータ22のみを搭載した電気自動車であるものとして説明する。なお、電動車両として、例えばモータとエンジンとを駆動源として搭載したハイブリッド自動車を用いてもよい。
【0009】
ペダル制御装置10は、バッテリ20、モータ22、アクセルペダル24、アクセルペダルセンサ26、ペダル移動部28A、ECU30を備える。
バッテリ20は、モータ22の駆動用電力を蓄積する。バッテリ20は、図示しない外部充電器から供給される外部電力、または後述するモータ22の回生運転により発生する回生電力により充電される。
【0010】
モータ22は、バッテリ20に蓄積された駆動用電力を用いて稼働し、電動車両の駆動輪(図示なし)を回転させることにより、電動車両を駆動する。
また、モータ22は、減速時に回生運転を行うことにより発電機として機能する。回生運転により発生した電力はバッテリ20に蓄積される。
なお、バッテリ20とモータ22との間には、図示しないインバータが設けられている。
【0011】
アクセルペダル24は、電動車両に対する加速要求時に操作される操作部であり、運転席の足元に設けられている。運転者は、電動車両を加速させたい場合にはアクセルペダル24を踏み込み、加速を解除(または加速の度合いを低減)したい場合にはアクセルペダル24の踏み込みを解除(または踏み込み量を小さく)する。アクセルペダル24は、後述するように踏み込み初期位置から踏み込み限界位置の間で操作可能である。
アクセルペダルセンサ26は、アクセルペダル24の位置を検出し、アクセルペダル24に対する操作量(アクセル踏み込み量)を検出する。
なお、この他電動車両に対する減速要求時に操作される操作部として、図示しないブレーキペダルおよびブレーキセンサが設けられている。
【0012】
図2は、アクセルペダル24の周辺構成を模式的に示す説明図である。
図2に示すように、アクセルペダル24は、運転者の足Uと接する踏み込み板242と、先端に踏み込み板242が取り付けられたアーム244と、アームを電動車両の本体に対して揺動可能に支持する支持軸246とを備える。
本実施の形態では、電動車両の床面F1から起立する壁面F2にアクセルペダルセンサ26のケース260が取り付けられており、このケース260からアクセルペダル24の支持軸246が車幅方向に突出している。
【0013】
支持軸246とアーム244とは一体となっており、運転者が足Uで踏み込み板242を踏み込むと、
図2Aに示すように、支持軸246の回転中心O周りにアーム244が移動し、支持軸246が回転する。アクセルペダルセンサ26は、回転中心O周りのアーム244の回転量θx(支持軸246の回転量)を検出することにより、アクセルペダル24に対する操作量を検出する。
図2Aの例では、アクセルペダル24の踏み込み初期位置P1から踏み込まれ、点線で示す位置P2まで移動している。なお、視認性の観点から位置P2における運転者の足Uは図示を省略している。本実施の形態では、このような移動量を表す指標として、支持軸246の回転中心O周りの回転量θxを用いる。
また、アクセルペダルセンサ26のケース260内には、支持軸246を踏み込み初期位置における角度状態に復帰させる部材が収納されており、運転者が踏み込み板242の踏み込みを解除すると、アクセルペダル24は踏み込み初期位置P1へと復帰する。
【0014】
なお、アーム244にはストッパ248が取り付けられている。運転者による踏み込み板242の踏み込み量が大きくなると、
図2Bに示すようにストッパ248が壁面F2のクッション材25に接触してそれ以上の踏み込みができなくなる。すなわち、ストッパ248および壁面F2によりアクセルペダル24の踏み込み限界位置P3が規制される。
なお、アクセルペダル24等の構成は
図2に示すものに限らず、従来公知の様々な構造を適用可能である。
【0015】
図1の説明に戻り、ペダル移動部28Aは、アクセルペダル24の踏み込み初期位置P1を移動させる移動機構である。
本実施の形態では、ペダル移動部28Aは、後述する初期位置変更部36の制御により支持軸246の回転中心に対するアーム244の角度を変化させる角度変更機構である。なお、本実施の形態では、ペダル移動部28Aはアクセルペダルセンサ26のケース260内に収容されており、支持軸246を回転中心O周りに任意の回転位置に移動可能とする。
ペダル移動部28Aは、支持軸246を回転中心O周りに回転させることにより、例えば
図3に示すように、踏み込み初期位置P1にあるアクセルペダル24のアーム角度θ0を紙面時計回りに+θm移動させる。これにより、アクセルペダル24は位置P1’に移動する。移動後の位置P1’が、新たな踏み込み初期位置となる。
なお、アーム角度は、支持軸246を通り床面F1に平行な線分Lとアーム244とがなす角度とした。
【0016】
図1の説明に戻り、ECU(Electronic Control Unit)30は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などによって構成され、電動車両の稼働状態を制御する。
なお、説明の便宜上、本実施の形態では後述する各処理を単一のECU30が実行するものとして説明するが、実際には車両全体を統括する車両ECUや、バッテリ20の状態を監視するBMU(Battery Management Unit)、モータ22の稼働を制御するMCU(Motor Control Unit)などの各制御部が協調して各処理を実行する。
【0017】
ECU30は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、出力制御部32、残存出力推定部34、初期位置変更部36として機能する。
出力制御部32は、運転者によるアクセルペダル24の操作量に基づいて、モータ22の出力、すなわち電動車両の出力を制御する。出力制御部32は、アクセルペダルセンサ26の検出値を取得し、アクセルペダル24の操作量(踏み込み量)が大きいほどモータ22の出力を大きくする。
【0018】
残存出力推定部34は、バッテリ20の残存出力容量、すなわち現在のバッテリ20が出力可能な電力量を推定する。残存出力推定部34は、バッテリ20に入出力される電流量や充電時のバッテリ電圧等からバッテリ20の充電率(SOC)を推定する。加えて、バッテリ20の温度(環境温度)やバッテリ20の劣化状態などを加味して、バッテリ20の残存出力容量を推定する。本実施の形態では、残存出力容量を、例えば新品状態のバッテリ20がSOC100%の場合の出力容量(最大出力容量)に対する比率として算出する。
【0019】
初期位置変更部36は、バッテリ20の残存出力容量に基づいて電動車両10が備えるアクセルペダル24の踏み込み初期位置を変更する。より詳細には、初期位置変更部36は、バッテリ20の残存出力容量が少ないほどアクセルペダル24の踏み込み初期位置を踏み込み限界方向に近づける。これにより、アクセルペダル24の操作可能範囲が小さくなる。
ここで、バッテリ20の残存出力容量が少なくなると、残存出力容量が大きい場合と比較してモータ22に供給可能な電力量が少なくなり、運転者が要求するモータ出力を実現できない場合がある。例えば最大出力容量時には50Ahの出力を30秒行うことが可能な場合でも、残存出力容量が最大出力容量の50%の状態(以下、単に「残存出力容量が50%の状態」という)では、50Ahの出力を行える時間は例えば15秒程度となる。
このため、初期位置変更部36は、残存出力容量が少ないほどアクセルペダル24の踏み込み初期位置を踏み込み限界方向に近づけて操作可能範囲を小さく制限する。以下、操作可能範囲の制限とは、最大出力容量時におけるアクセルペダル24の操作可能範囲(最大操作可能範囲)と比較して、操作可能範囲を狭めるものである。
アクセルペダル24の踏み込み初期位置を変更することにより、運転者はバッテリ20の状態(残存出力容量)をSOC表示を目視しなくても直感的に認識することができ、例えば急激な加速を控えたり、減速時に回生制動を多様するなどの対応を取ることができる。また、アクセルペダル24の踏み込み初期位置が変更されるので、運転者はアクセルペダル24を踏み込まずとも、足をおいた段階で、バッテリ20の状態(残存出力容量)を認識することができる。更に、残存出力容量はバッテリ20の劣化状態を反映しているため、SOC表示と比較してより精度よくバッテリ20の状態を把握することができる。
なお、例えば回生運転などにより残存出力容量が大きくなった場合、初期位置変更部36はアクセルペダル24の踏み込み初期位置を元の位置に近づける。すなわち、踏み込み初期位置を踏み込み限界位置から遠ざける方向に移動させる。
【0020】
図3を例に説明すると、例えばバッテリ20が最大出力容量である時の踏み込み初期位置をP1とする。このとき、アクセルペダル24のアーム角度はθ0である。
最大出力容量よりも残存出力容量が少なくなると、初期位置変更部36は、ペダル移動部28Aにより支持軸246を回転中心O周りに時計回りに移動させる。この移動量は残存出力容量が少なくなるほど大きくする。例えば、残存出力容量が最大出力容量C0よりも少ないCxとなった場合、初期位置変更部36は、アクセルペダル24のアーム角度が(θ0+θm)となるように支持軸246を回転させるようペダル移動部28Aを制御する。これにより、アクセルペダル24は位置P1’に移動する。移動後の位置P1’が、新たな踏み込み初期位置となる。
踏み込み初期位置がP1にある場合とP1’にある場合とを比較すると、アクセルペダル24が踏み込み限界位置P3に到るまでの距離、すなわち操作可能範囲は、踏み込み初期位置がP1’にある場合の方が短い(
図3中θ2<θ1)。よって、残存出力容量が少ないほどアクセルペダル24の操作可能範囲が制限される(小さくなる)ことになる。
【0021】
なお、初期位置変更部36は、連続的に変化する残存出力容量に対して踏み込み初期位置を段階的に変更するようにしてもよい。
図5は、残存出力容量と踏み込み初期位置との関係を模式的に示す図である。
図5では縦軸に踏み込み初期位置の移動量、横軸に残存出力容量を示す。より詳細には、縦軸はバッテリ20が最大出力容量C0にあるときの踏み込み初期位置(基準踏み込み初期位置)からの移動量を示す。
残存出力容量が最大出力容量C0にあるときは、アクセルペダル24の移動量は0、すなわち基準踏み込み初期位置にある。残存出力容量がC1(<C0)に減少するまでは、アクセルペダル24は基準踏み込み初期位置に保たれる。残存出力容量がC1に減少すると、アクセルペダル24の踏み込み初期位置がN1移動する。
このように、一般に残存出力容量は連続的に変化するのに対して、アクセルペダル24の踏み込み初期位置は段階的に変化するように設定されている。すなわち、走行中残存出力容量の減少に従って緩やかにアクセルペダル24の位置が変化するのではなく、一定時間走行後、不意にアクセルペダル24の位置が変化することとなる。
このような方法により、運転者が残存出力容量の減少に気づきやすくなり、その時々のバッテリ20の限界出力に合わせた運転動作を促す上で有利となる。
【0022】
以上説明したように、実施の形態1にかかるペダル制御装置10によれば、バッテリ20の残存出力容量に基づいてアクセルペダル24の踏み込み初期位置を変更するので、バッテリ20の残存出力容量を運転者がアクセルペダル24に足を置いた時点で認識させることができ、アクセルペダル24を操作した時点で残存出力容量が認識できる場合と比較して運転操作をスムーズに行う上で有利となる。
また、実施の形態1にかかるペダル制御装置10によれば、連続的に変化するバッテリ20の残存出力容量に対して踏み込み初期位置を段階的に変更するので、踏み込み初期位置を連続的に制限するのと比較して運転者が残存出力容量の減少に気づきやすくなり、その時々のバッテリ20の限界出力に合わせた運転動作を促す上で有利となる。
【0023】
(実施の形態2)
実施の形態1では、バッテリ20の残存出力容量が少ないほどアクセルペダル24の踏み込み初期位置を踏み込み限界位置に近づけた。実施の形態2では、アクセルペダル24のアーム244を支持軸246に対して移動させることにより、踏み込み初期位置を上下方向に変化させる。
なお、実施の形態2においてペダル制御装置10の構成(
図1参照)は実施の形態1とほぼ同様であるが、ペダル移動部28Aが支持位置変更部28Bとなる点が異なる。以下の実施の形態では、実施の形態1と同様の箇所には実施の形態1と同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0024】
図5および
図6は、実施の形態2におけるアクセルペダル24の周辺構成を模式的に示す説明図(
図5は側面視図、
図6は正面図)である。
実施の形態1と同様、アクセルペダル24は、運転者の足と接する踏み込み板242と、先端に踏み込み板242が取り付けられたアーム244と、アーム244を電動車両の本体に対して揺動可能に支持する支持軸246とを備える。アーム244は支持軸246から下方斜め後方に延びている。
ここで、実施の形態2では支持軸246とアーム244とが別体となっており、支持点S0において支持軸246がアーム244を支持している。そして、支持点S0のアーム244の延在方向上の位置を変更する支持位置変更部28Bが設けられている。
【0025】
図7は、支持位置変更部28Bの断面図(
図6のA-A断面図)である。
支持位置変更部28Bは、ケース280、モータ282、モータ出力軸284、ピニオンギア286を備える。
ケース280は、支持軸246と一体となっている。運転者による踏み込みなどによりアーム244が支持軸246の回転中心Oに対して回転した場合、ケース280と支持軸246とが一体となって回転する。ケース280内には、上下方向に延びる空間280Aが形成されており、空間280A内にアーム244が挿通されている。
モータ282は、後述する初期位置変更部36の制御により稼働し、モータ出力軸284を回転させる。モータ出力軸284にはピニオンギア286が挿通されており、モータ出力軸284が回転することにより、ピニオンギア286も回転する。
アーム244の背面側にはラックギア244Aが形成されており、ラックギア244Aはピニオンギア286と嵌合している。
よって、モータ282の稼働によりモータ出力軸284およびピニオンギア286が回転すると、ピニオンギア286と嵌合するラックギア244Aがアーム244の延在方向に沿って移動する。これにより、アーム244をその延在方向に沿って移動させることができる。
なお、支持位置変更部28Bの構成は上記に限らず、従来公知の様々な機構を採用可能である。
【0026】
実施の形態2では、初期位置変更部36は、バッテリ20の残存出力容量が少ないほど支持点S0の位置を踏み込み板242方向に近づける。これにより、踏み込み板242が車両上方に移動し、運転者の足Uに対する踏み込み板242の接触位置が変化する。
図8は、支持位置変更部28Bにより支持位置が変更されたアクセルペダル24の状態を模式的に示す図であり、
図8Aは相対的に残存出力容量が多い状態(例えば最大出力容量時)、
図8Bは相対的に残存出力容量が少ない状態を示す。
アーム244の両端のうち、踏み込み板242が取り付けられた端部をE1、端部E1と反対側の端部をE2とすると、
図8Aでは、支持点S0の位置はE2のごく近くとなっている。一方、
図8Bでは、
図8Aと比較して支持点S0の位置が踏み込み板242に近い位置にあり、
図8Aと比較して踏み込み板242が上方に位置している。
踏み込み板242の中心点を運転者の踏み込み力の力点、支持点S0を支点とすると、
図8Aにおける支点-力点間距離D1は、
図8Bにおける支点-力点間距離D2と比較して大きくなっている。踏み込み初期位置P1から踏み込み限界位置P3までの距離、すなわちアクセルペダル24の操作可能範囲は、支点-力点間距離を半径とする円弧の弧となる。
ここで、本実施の形態では、踏み込み限界位置におけるストッパ248の位置がアクセルペダル24の踏み込み初期位置の変更前と変更後とで上下方向にのみ移動するようになっている、すなわち踏み込み限界位置において支持軸246とストッパ248を結ぶ線が鉛直方向に延びるように配置されているので、踏み込み初期位置と踏み込み限界位置におけるアーム244がなす角度(回転量)が、アクセルペダル24の踏み込み初期位置の変更前と変更後とで変化しない。このため、支点-力点間距離が短くなると、必然的に支点-力点間距離を半径とする円弧の弧の長さも短くなり、すなわちアクセルペダル24の操作可能範囲が小さくなる。
図9Aと
図9Bとを比較すると、
図9Bの方がアクセルペダル24の操作可能範囲が小さくなっている。
【0027】
このように、実施の形態2によれば、支持点S0の位置を変化させることによりアクセルペダル24の踏み込み初期位置を上下方向に変更するので、運転者の足Uに対する踏み込み板242の接触位置が変化し、アクセルペダル24の踏み込み初期位置が変更されたことを、より認識させやすくなる。
また、支点-力点間距離が変化することにより、てこの原理により踏み込み板242を所定距離移動させる際に必要な踏み込み力が変化する。具体的には、支点-力点間距離D1が相対的に長い
図8Aと比較して、支点-力点間距離D2が相対的に短い
図8Bでは、アクセル操作に必要な踏力が大きくなる。このような踏力の変化からも、運転者はバッテリ20の残存出力容量の減少度合いを認識することができる。
更に、アクセルペダル24の踏み込み初期位置を上下方向に変更することでアクセルペダル24の操作可能範囲が小さくなるので、運転者はアクセルペダル24の操作を通しても出力制限が行われていることを認識することができる。
実施の形態2によれば、これらの効果を、1つのアクチュエータ(ペダル移動部28A)のみを用いた簡単な構成で得ることができる。
【0028】
(実施の形態3)
実施の形態2では、アクセルペダル24のアーム244を支持軸246に対して移動させることにより、アクセルペダル24の踏み込み初期位置を上下方向に変化させたが、
図9のように、アーム部分を2つに分割し、踏み込み板242に近い方のアームの位置を変更することによりアクセルペダル24の踏み込み初期位置を上下方向に変更しても良い。
【0029】
実施の形態3では、アクセルペダル24の踏み込み初期位置の変更前と変更後でストッパ248の位置が変化しないようになっている、すなわち位置が変更されない側(支持軸246側)のアームにストッパ248を設けているので、踏み込み初期位置と踏み込み限界位置におけるアーム244がなす角度が、アクセルペダル24の踏み込み初期位置の変更前と変更後とで変化しない。この状態で、支点-力点間距離が短くなるので、必然的に支点-力点間距離を半径とする円弧の弧の長さも短くなり、すなわちアクセルペダル24の操作可能範囲が小さくなる。
実施の形態3によれば、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 ペダル制御装置
20 バッテリ
22 モータ
24 アクセルペダル
242 踏み込み板
244 アーム
246 支持軸
248 ストッパ
25 クッション材
26 アクセルペダルセンサ
28A ペダル移動部
28B 支持位置変更部
30 ECU
32 出力制御部
34 残存出力推定部
36 初期位置変更部