(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ウインチドラム及びこれを備えたクレーン
(51)【国際特許分類】
B66D 1/30 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
B66D1/30 A
(21)【出願番号】P 2018028563
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】寺内 謙一
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-061778(JP,A)
【文献】特開昭61-033495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00 - 1/82
B66C 13/00 - 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープが巻き取られる巻胴を含むドラム本体と、
前記巻胴の幅方向の一端部に設けられた第1フランジであって、前記ロープに対して前記幅方向に対向する内側面及びその反対側の外側面を有し、前記ドラム本体に対して前記幅方向に変位可能に構成されたものと、
前記巻胴の前記幅方向の他端部に設けられた第2フランジと、
ボルトを含む規制部材と、を備え、
前記ボルトは、頭部と、前記頭部の内面から延びるとともに外周面に雄ねじが形成された軸部とを有し、前記雄ねじが前記ドラム本体に設けられた雌ねじに螺合されており、
前記規制部材は、前記第1フランジの前記外側面の一部によって構成される被規制面に対して前記幅方向外側に位置するとともに前記被規制面に当たることにより前記第1フランジの前記幅方向外側への変位を規制する規制面を有し、
前記規制部材は、前記ボルトを締め付け方向に回転させることにより前記規制面が前記幅方向内側に変位する一方で、前記ボルトを前記締め付け方向の反対方向に回転させることにより前記規制面が前記幅方向外側に変位するように構成さ
れ、
前記巻胴は、前記ロープが巻き取られる外周面を有する筒部と、前記筒部の前記幅方向の一端部から前記筒部の径方向外側に広がるフランジ部とを有し、
前記巻胴の前記筒部の前記外周面は、前記外周面に巻き取られる第1層の前記ロープを案内する案内溝を有し、
前記巻胴の前記フランジ部は、前記第1層を含む低層の前記ロープが前記幅方向に対向する内側面を有し、
前記第1フランジの前記内側面は、前記低層よりも層数の大きい高層の前記ロープが前記幅方向に対向する位置に設けられている、ウインチドラム。
【請求項2】
前記第1フランジは、前記巻胴の外側面に対向する対向壁部と、前記対向壁部から前記巻胴の径方向外側に広がるとともに前記内側面を含むフランジ本体とを有し、
前記対向壁部は、前記幅方向に貫通する貫通孔を有し、
前記巻胴は、当該巻胴の前記外側面に前記幅方向内側に穿孔されるとともに前記雌ねじが設けられたねじ穴を有し、
前記ボルトの前記軸部は、前記対向壁部の前記貫通孔に挿通され、
前記軸部の前記雄ねじは、前記巻胴の前記ねじ穴の前記雌ねじに螺合され、
前記被規制面は、前記対向壁部の外側面の少なくとも一部によって構成され、
前記ボルトの前記頭部の前記内面は、前記被規制面よりも前記幅方向外側において前記被規制面に対して前記幅方向に対向している、請求項1に記載のウインチドラム。
【請求項3】
前記ドラム本体は、前記巻胴の外側面及び前記第1フランジの前記外側面に対向した状態で前記巻胴に固定された対向部材をさらに含み、
前記対向部材は、前記幅方向に貫通するとともに前記雌ねじが設けられたねじ穴を有し、
前記ボルトの前記軸部の前記雄ねじは、前記対向部材の前記ねじ穴の前記雌ねじに螺合され、
前記ボルトの前記軸部の先端面は、前記被規制面よりも前記幅方向外側において前記被規制面に対して前記幅方向に対向している、請求項1に記載のウインチドラム。
【請求項4】
下部走行体と、この下部走行体の上に旋回可能に配置される上部旋回体とを備え、
前記上部旋回体には、請求項1~
3の何れか1項に記載のウインチドラムが搭載されているクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等に使用されるロープ巻き取り用のウインチドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン等に使用されるロープ巻き取り用のウインチドラムが知られている。このウインチドラムは、ロープ(ワイヤロープ)が多層に巻き取られる巻胴と、この巻胴における幅方向の両端部にそれぞれ設けられた一対のフランジとを備える。このウインチドラムでは、ロープは、第1層の第1列から最終列まで巻胴の外周面に順次巻き取られ、第2層以上のロープは、その下層のロープの上に順次巻き取られる。ウインチドラムでは、各層に巻き取られるロープの列数は予め設定されている。
【0003】
ところで、ロープの径は、公差を有しているので、公差の範囲内でばらつくことがある。また、ロープの径は、クレーンから吊り下げられる吊り荷の質量によっても多少変化する。さらに、ロープの径は、ロープが長期間使用されることによって摩耗して次第に減少する。また、鋳造によって作製されることが多いウインチドラムは寸法精度が高いとは言えないため、ウインチドラムにおける一対のフランジ間の距離は比較的大きなばらつきを有している。
【0004】
したがって、上記のようなばらつきに起因して、ウインチドラムに巻き取られたロープ間に隙間が形成されると、その層の上に巻き取られるロープがその下層に形成された前記隙間に落ち込んでロープが乱巻きの状態となる。また、上記のようなばらつきに起因して、予め設定されている列数に達する前にロープがその層に入らなくなると、その場合にもロープが乱巻きの状態となる。
【0005】
例えば特許文献1,2は、上記のような乱巻きを防止するための技術を開示している。特許文献1は、巻胴の外周面に平行溝と傾斜溝を交互にそれぞれ2箇所設けた螺旋状案内溝において、一方の傾斜溝区間のフランジの内壁面に突起部を形成するとともに、他方の傾斜溝区間のフランジの内壁面には凹部を形成したロープ巻取ドラムを開示している。特許文献2は、フランジの内壁面に平板状のアジャスタを取付穴を介して着脱可能に取り付けられるようにすると共に、前記アジャスタの板厚を変えることによって巻胴の幅を変更できるように構成したワイヤロープ巻取ドラムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-215683公報
【文献】実開昭58-67890公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のロープ巻取ドラムでは、フランジの内壁面に形成された凹部の深さは、予め設定されたものであるので、ロープの径のばらつきやフランジ間の距離のばらつきに応じて調節することはできない。
【0008】
また、特許文献2のワイヤロープ巻取ドラムでは、フランジの内壁面に取り付けられる平板状のアジャスタの板厚を変えることによって巻胴の幅を変更できるが、実際に準備できるアジャスタの数は有限であってある程度限られている。このため、特許文献2のワイヤロープ巻取ドラムでは、巻胴の幅は、段階的に調節可能であっても連続的に細かく調節することはできない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ロープの径のばらつきやフランジ間の距離のばらつきがあっても、フランジ間の距離を連続的に細かく調節することによってロープの乱巻きが生じるのを抑制することができるウインチドラム及びこれを備えたクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のウインチドラムは、ロープが巻き取られる巻胴を含むドラム本体と、前記巻胴の幅方向の一端部に設けられた第1フランジであって、前記ロープに対して前記幅方向に対向する内側面及びその反対側の外側面を有し、前記ドラム本体に対して前記幅方向に変位可能に構成されたものと、前記巻胴の前記幅方向の他端部に設けられた第2フランジと、ボルトを含む規制部材と、を備える。前記ボルトは、頭部と、前記頭部の内面から延びるとともに外周面に雄ねじが形成された軸部とを有し、前記雄ねじが前記ドラム本体に設けられた雌ねじに螺合されている。前記規制部材は、前記第1フランジの前記外側面の一部によって構成される被規制面に対して前記幅方向外側に位置するとともに前記被規制面に当たることにより前記第1フランジの前記幅方向外側への変位を規制する規制面を有する。前記規制部材は、前記ボルトを締め付け方向に回転させることにより前記規制面が前記幅方向内側に変位する一方で、前記ボルトを前記締め付け方向の反対方向に回転させることにより前記規制面が前記幅方向外側に変位するように構成されている。
【0011】
本発明のウインチドラムでは、規制面は、被規制面に当たることにより第1フランジの幅方向外側への変位を規制し、これにより、第1フランジが幅方向外側へ変位し得る最大限の位置(最大許容位置)を決めることができる。すなわち、規制面は、第1フランジの内側面と第2フランジの内側面との間の距離(フランジ間の距離)の最大許容値を決めることができる。そして、規制部材のボルトを締め付け方向に回転させることにより規制面が幅方向内側に変位すると、その変位量に応じてフランジ間の距離の最大許容値を小さくすることができる。また、規制部材のボルトを締め付け方向の反対方向に回転させることにより規制面が幅方向外側に変位すると、その変位量に応じてフランジ間の距離の最大許容値を大きくすることができる。すなわち、本発明では、ボルトの回転量に応じてフランジ間の距離の最大許容値を連続的に変化させることができる。したがって、本発明では、ロープの径のばらつきや鋳造の寸法精度に起因したフランジ間の距離のばらつきの大きさに応じて、フランジ間の距離を連続的に変化させて当該フランジ間の距離を細かく調節することができる。これにより、ウインチドラムに巻き取られたロープ間に形成された隙間に上層のロープが落ち込むことに起因してロープが乱巻きの状態となること、及び規定の列数に達する前にロープがその層に入らなくなることに起因してロープが乱巻きの状態となることを抑制することができる。
【0012】
(2)前記ウインチドラムにおいて、前記第1フランジは、前記巻胴の外側面に対向する対向壁部と、前記対向壁部から前記巻胴の径方向外側に広がるとともに前記内側面を含むフランジ本体とを有し、前記対向壁部は、前記幅方向に貫通する貫通孔を有し、前記巻胴は、当該巻胴の前記外側面に前記幅方向内側に穿孔されるとともに前記雌ねじが設けられたねじ穴を有し、前記ボルトの前記軸部は、前記対向壁部の前記貫通孔に挿通され、前記軸部の前記雄ねじは、前記巻胴の前記ねじ穴の前記雌ねじに螺合され、前記被規制面は、前記対向壁部の外側面の少なくとも一部によって構成され、前記ボルトの前記頭部の前記内面は、前記被規制面よりも前記幅方向外側において前記被規制面に対して前記幅方向に対向していてもよい。
【0013】
この態様では、被規制面は、対向壁部の外側面の少なくとも一部によって構成される。そして、当該被規制面に対して幅方向に対向するボルトの頭部の内面を規制面として利用することができる。また、ボルトの頭部と対向壁部との間にワッシャなどの他の部材が介在している場合、すなわち、ボルトの頭部の内面がワッシャなどの他の部材を介して被規制面に対して幅方向に対向している場合には、ワッシャなどの他の部材の内面を規制面として利用することができる。具体的には、ボルトの頭部を回転させると、巻胴のねじ穴に螺合されているボルトの軸部がねじ穴に対して進入又は後退するので、規制面を構成するボルトの頭部の内面や規制面を構成するワッシャなどの他の部材の内面が幅方向に変位する。この規制面の変位に応じて、第1フランジの幅方向外側の最大許容位置が決まり、これにより、フランジ間の距離の最大許容値が決まる。
【0014】
また、この態様では、ボルトの頭部の内面は、第1フランジの対向壁部の外側面の少なくとも一部によって構成される被規制面よりも幅方向外側に位置している。すなわち、ボルトは、その頭部が被規制面よりも幅方向外側に位置するように配置されている。したがって、この態様では、例えば特許文献2の
図3及び
図5に開示されているようにボルトの頭部を収容するための凹部をフランジの内側面に設ける必要がない。仮にフランジの内側面にボルトの頭部を収容する凹部が設けられると、巻胴にロープを巻き取るときや巻胴からロープを繰り出すときに、ロープが凹部の縁部分に接触してロープの摩耗が進行する可能性がある。この態様では、そのようなロープの摩耗が生じるのを防ぐことができる。
【0015】
また、この態様では、ボルトの頭部が被規制面よりも幅方向外側に位置するので、フランジ間の距離の調節作業をウインチドラムの幅方向外側から行うことができる。
【0016】
(3)前記ウインチドラムにおいて、前記ドラム本体は、前記巻胴の外側面及び前記第1フランジの前記外側面に対向した状態で前記巻胴に固定された対向部材をさらに含み、前記対向部材は、前記幅方向に貫通するとともに前記雌ねじが設けられたねじ穴を有し、前記ボルトの前記軸部の前記雄ねじは、前記対向部材の前記ねじ穴の前記雌ねじに螺合され、前記ボルトの前記軸部の先端面は、前記被規制面よりも前記幅方向外側において前記被規制面に対して前記幅方向に対向していてもよい。
【0017】
この態様では、被規制面よりも幅方向外側において被規制面に対して幅方向に対向するボルトの軸部の先端面を規制面として利用することができる。具体的には、ボルトの頭部を回転させると、対向部材のねじ穴に螺合されているボルトの軸部が当該ねじ穴に対して幅方向に変位するので、規制面を構成するボルトの軸部の先端面が幅方向に変位する。この規制面の変位に応じて、第1フランジの幅方向外側の最大許容位置が決まり、これにより、フランジ間の距離の最大許容値が決まる。
【0018】
(4)前記ウインチドラムにおいて、前記巻胴は、前記ロープが巻き取られる外周面を有する筒部と、前記筒部の前記幅方向の一端部から前記筒部の径方向外側に広がるフランジ部とを有し、前記巻胴の前記筒部の前記外周面は、前記外周面に巻き取られる第1層の前記ロープを案内する案内溝を有し、前記巻胴の前記フランジ部は、前記第1層を含む低層の前記ロープが前記幅方向に対向する内側面を有し、前記第1フランジの前記内側面は、前記低層よりも層数の大きい高層の前記ロープが前記幅方向に対向する位置に設けられている。
【0019】
この態様では、第1フランジと、巻胴の一部であるフランジ部とによってフランジ全体が構成されている。第1層を含む低層のロープが幅方向に対向する位置には巻胴のフランジ部の内側面が設けられており、第1フランジの内側面は、前記低層よりも層数の大きい高層のロープが幅方向に対向する位置に設けられている。したがって、この態様では、前記高層のロープに対応する位置において、フランジ間の距離を連続的に変化させて当該フランジ間の距離を細かく調節することができる。このような構成を採用する理由は次の通りである。
【0020】
巻胴の外周面に第1層のロープを案内する案内溝が設けられているウインチドラムでは、第1層のロープは、案内溝に入り込むことにより、当該第1層の第1列から最終列まで整然と巻き取られる。したがって、このタイプのウインチドラムでは、第1層においては、フランジ間の距離を調節しなくても、ロープは整然と巻き取られる。むしろ、第1層のロープに対応する位置において、フランジを幅方向に変位させてしまうと、案内溝を設けた利点が損なわれる可能性がある。また、ウインチドラムが鋳造によって作製される場合には、ウインチドラムの寸法精度は径方向外側にいくにつれて低下する傾向にある。このため、前記高層においては、ウインチドラムに巻き取られたロープ間に隙間が形成されるという問題や、規定の列数に達する前にロープがその層に入らなくなるという問題が生じやすい。すなわち、第1層を含む低層においては、当該低層よりも層数の大きい高層に比べて、フランジ間の距離を調節する必要性が低い。
【0021】
以上のことから、この態様では、第1フランジの内側面を高層に対応する位置に設けることによって当該高層に対応する位置においてフランジ間の距離を調節可能とする一方で、そのような調節が不要でかつそのような調節をしない方が好ましい低層に対応する位置には、巻胴のフランジ部の内側面を設けている。
【0022】
(5)本発明のクレーンは、下部走行体と、この下部走行体の上に旋回可能に配置される上部旋回体とを備え、前記上部旋回体には、上記のウインチドラムが搭載されている。
【0023】
本発明のクレーンでは、ロープの径のばらつきやフランジ間の距離のばらつきの大きさに応じて、フランジ間の距離を連続的に変化させて当該フランジ間の距離を細かく調節することができる。これにより、ウインチドラムに巻き取られたロープ間に形成された隙間に上層のロープが落ち込むことに起因してロープが乱巻きの状態となること、及び規定の列数に達する前にロープがその層に入らなくなることに起因してロープが乱巻きの状態となることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ロープの径のばらつきやフランジ間の距離のばらつきの大きさに応じて、フランジ間の距離を連続的に変化させて当該フランジ間の距離を細かく調節することができる。これにより、ウインチドラムに巻き取られたロープ間に形成された隙間に上層のロープが落ち込むことに起因してロープが乱巻きの状態となること、及び規定の列数に達する前にロープがその層に入らなくなることに起因してロープが乱巻きの状態となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンを示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るウインチドラムの概略を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るウインチドラムを示す断面図である。
【
図4】
図3の一部を拡大した断面図であって、第1実施形態に係るウインチドラムにおける第1フランジの位置を調節する機構を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るウインチドラムを示す側面図である。
【
図6】第1実施形態に係るウインチドラムの巻胴の外周面に設けられた案内溝の配置を説明するためのウインチドラムの展開図である。
【
図7】第1実施形態に係るウインチドラムにおいて第1フランジが巻胴に対して幅方向内側に変位するのを規制するストッパー機構を示す断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るウインチドラムにおける第1フランジの位置を調節する機構を示す断面図である。
【
図9】
第3形態に係るウインチドラムにおける第1フランジの位置を調節する機構を示す断面図である。
【
図10】
第4形態に係るウインチドラムにおける第1フランジの位置を調節する機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
[クレーン]
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン100の概略を示す側面図である。
図1に示すように、クレーン100は、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101上に配置された上部旋回体102とを備える。
【0028】
上部旋回体102は、下部走行体101上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された旋回フレーム103と、旋回フレーム103の前部に起伏可能となるように取り付けられたブーム104と、ブーム104の先端からロープR(ワイヤロープ)を介して吊り下げられたフック105と、ウインチ装置107とを備える。
【0029】
ウインチ装置107は、フック105に繋がるロープRの巻き取り又は繰り出しを行うことにより、フック105に吊作業のための昇降動作を行わせる装置である。ウインチ装置107は、ウインチドラム1と、油圧モータ、減速機などの図略の駆動源とを備えている。ウインチ装置107の配置位置は、例えば、旋回フレーム103におけるブーム104の取り付け部位の後方である。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に係るウインチドラム1の概略を示す斜視図である。
図2に示すように、ウインチドラム1は、ロープRの巻き取り又は繰り出しのために、前記駆動源によって回転軸Kの回りに回転する。ウインチドラム1は、クレーン100の車幅方向と回転軸Kとが一致するように、旋回フレーム103に支持されている。
【0031】
ロープRは、巻胴2から引き出されてブーム104の先端を経由し、そのブーム104の先端から垂下されてフック105を吊り下げている。ウインチドラム1は、回転軸K回りの一方の回転方向である巻取回転方向D1に回転することにより、ロープRを巻胴2に巻き取り、それによってフック105を上昇させる。また、ウインチドラム1は、巻取回転方向D1の反対方向D2(繰り出し回転方向D2)に回転することにより、ロープRを繰り出し、それによってフック105を降下させる。
【0032】
以下、本発明の第1~第2実施形態及び第3~第4形態に係るウインチドラム1について詳細に説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態に係るウインチドラム1を示す断面図である。
図4は、
図3の一部分を拡大したものであって、第1実施形態に係るウインチドラム1における第1フランジ3Aの位置を調節する機構を示す断面図である。
図5は、第1実施形態に係るウインチドラム1を示す側面図であり、ウインチドラム1を回転軸Kの軸方向に見たときの図である。
【0034】
図3に示すように、ウインチドラム1は、ロープRが多層に巻き取られる巻胴2を含むドラム本体11と、巻胴2における幅方向W(ウインチドラム1の回転軸Kの軸方向)の一端部に設けられた第1フランジ3Aと、巻胴2における幅方向Wの他端部に設けられた第2フランジ3Bと、規制部材10とを備える。第1実施形態では、ドラム本体11は、巻胴2によって構成されている。
【0035】
図3及び
図4に示すように、巻胴2は、ロープRが巻き取られる外周面211を有する筒部21と、筒部21の幅方向Wの一端部から筒部21の径方向外側に広がるフランジ部22とを有する。筒部21は、回転軸Kを中心とする円筒形状を有する部分であり、フランジ部22は、筒部21の前記一端部において筒部21の径方向外側に隣接する部分である。フランジ部22は、筒部21の前記一端部から径方向外側に円環状に広がる形状を有する。筒部21における幅方向Wの両端部には、側板26がそれぞれ設けられている。各側板26には、回転軸Kを中心とするシャフト27が設けられている。
【0036】
巻胴2のフランジ部22は、巻胴2に対して変位できないように構成されている。具体的には、巻胴2のフランジ部22は、例えば鋳造などの製法を用いて巻胴2の筒部21と一体的に成形されているので、筒部21に対する位置が固定されている。巻胴2のフランジ部22は、第1層L1と第2層L2により構成される低層のロープRが幅方向Wに対向する内側面221を有する。
【0037】
図3及び
図5に示すように、第1フランジ3Aは、回転軸Kを中心とする円環形状を有する。
図3及び
図4に示すように、第1フランジ3Aは、巻胴2のフランジ部22に隣接する位置に設けられている。第1フランジ3Aは、巻胴2のフランジ部22に対して幅方向Wに変位可能に構成されている。具体的には、第1フランジ3Aは、例えば鋳造などの製法を用いて巻胴2とは別体として成形されることにより、後述する位置調節機構によって巻胴2に対して変位可能に構成される。
【0038】
第1フランジ3Aは、ロープRが幅方向Wに対向する内側面321を有する。第1フランジ3Aの内側面321は、前記低層よりも層数の大きい高層(本実施形態では、第3層以上の層)のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられている。
【0039】
図4に示すように、第1フランジ3Aは、対向壁部31と、フランジ本体32とを有する。対向壁部31は、巻胴2の外側面であるフランジ部22の外側面222に対して幅方向Wに対向する位置に設けられている。第1フランジ3Aの対向壁部31は、巻胴2のフランジ部22よりも幅方向外側W2に位置している。対向壁部31は、フランジ本体32における幅方向外側W2の端部から径方向内側に円環状に広がる形状を有する。
【0040】
対向壁部31の内側面311と巻胴2のフランジ部22の外側面222との間には幅方向Wの隙間が形成されており、当該隙間の大きさの範囲内で第1フランジ3Aを幅方向内側W1に変位させることができる。また、後述するボルト6の軸部62の雄ねじ63と巻胴2のねじ穴23の雌ねじ24とが螺合している部分の幅方向Wの長さの範囲内で第1フランジ3Aを幅方向外側W2に変位させることができる。
【0041】
フランジ本体32は、第1フランジ3Aのうち、第1フランジ3Aの内側面321を含む部分である。第1フランジ3Aのフランジ本体32は、巻胴2のフランジ部22に対して径方向外側に隣接する位置に設けられている。フランジ本体32は、巻胴2のフランジ部22よりも径方向外側において、径方向外側に円環状に広がる形状を有する。
【0042】
したがって、第1実施形態では、第1フランジ3Aと、巻胴2の一部であるフランジ部22とによってフランジ全体が構成されている。
【0043】
第2フランジ3Bは、回転軸Kを中心とする円環形状を有する。第2フランジ3Bは、巻胴2に対して変位できないように構成されている。第2フランジ3Bは、例えば鋳造などの製法を用いて巻胴2と一体的に成形されているので、巻胴2に対する位置が固定されている。
図3に示すように、第2フランジ3Bは、ロープRが幅方向Wに対向する内側面323を有する。第2フランジ3Bは、第1層L1以上の層のロープR、すなわち全ての層のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられている。
【0044】
規制部材10は、第1フランジ3Aを巻胴2に対して幅方向Wに変位させるために設けられている。規制部材10は、複数のボルト6と、複数のワッシャ66とを含む。
【0045】
複数のボルト6(
図5に示す具体例では12個のボルト6)は、円環形状の第1フランジ3Aの周方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。
図4に示すように、各ボルト6は、頭部61と、頭部61の内面64から延びるとともに外側面に雄ねじ63が形成された軸部62とを有する。各ボルト6の頭部61の内面64は、幅方向内側W1を向いている。各ボルト6の頭部61の内面64は、第1フランジ3Aの外側面(具体的には、第1フランジ3Aの対向壁部31の外側面312)に対してワッシャ66を介して幅方向Wに対向している。
【0046】
各ボルト6の軸部62には、ワッシャ66が挿通されている。各ワッシャ66は、幅方向内側W1に向いた内面67を有している。各ワッシャ66の内面67は、第1フランジ3Aの外側面(具体的には、第1フランジ3Aの対向壁部31の外側面312)に対して幅方向Wに対向している。各ワッシャ66の内面67は、後述する規制面S1を構成している。なお、ボルト6の頭部61と第1フランジ3Aの対向壁部31との間にワッシャ66などの他の部材が介在していない場合には、規制面S1は、ボルト6の頭部61の内面64によって構成される。
【0047】
図6は、第1実施形態に係るウインチドラム1の巻胴2の外周面211に設けられた案内溝4の配置を説明するためのウインチドラム1の展開図である。
【0048】
図3、
図4及び
図6に示すように、第1実施形態に係るウインチドラム1は、いわゆるリーバス式のウインチドラムである。リーバス式のウインチドラム1では、巻胴2の外周面211に案内溝4が設けられている。第1層L1のロープRは、案内溝4に入り込むことにより、整然と巻き取られる。
図4においては、ロープRが第1層L1から第5層L5まで巻き取られた状態を例示している。
【0049】
図6に示すように、案内溝4は、第1平行部P1に設けられた平行案内溝4と、第1交差部C1に設けられた傾斜案内溝4と、第2平行部P2に設けられた平行案内溝4と、第2交差部C2に設けられた傾斜案内溝4とを含む。第1平行部P1、第1交差部C1、第2平行部P2及び第2交差部C2は、巻胴2の外周面211においてその周方向にこの順に並んでいる。
【0050】
第1平行部P1の平行案内溝4及び第2平行部P2の平行案内溝4は、巻胴2の外周面211の周方向に平行な溝である。第1交差部C1における傾斜案内溝4及び第2交差部C2における傾斜案内溝4は、巻胴2の外周面211の周方向に対して傾斜した溝である。これらの交差部C1,C2の傾斜案内溝4は、同じ方向に傾斜している。
【0051】
具体的に、第1交差部C1における傾斜案内溝4は、ロープRが巻胴2に巻き取られるときに、第1層L1のロープRが傾斜案内溝4に入り込むことにより、ロープRの位置を1/2ピッチ(おおよそロープRの半径)だけ第2フランジ3B側に移動させる。同様に、第2交差部C2における傾斜案内溝4は、ロープRが巻胴2に巻き取られるときに、第1層L1のロープRが傾斜案内溝4に入り込むことにより、ロープRの位置を1/2ピッチ(おおよそロープRの半径)だけ第2フランジ3B側に移動させる。したがって、ロープRが巻胴2を一周することにより、ロープRの位置は、1ピッチ(おおよそロープRの直径)だけ第2フランジ3B側に移動することになる。
【0052】
また、第2交差部C2における最終列4Eは、ロープRの巻き取り時には案内溝4の幅が1ピッチから1/2ピッチまで減少するように構成されている。したがって、第1層L1の最終列4Eの案内溝4に入り込んでいたロープRは、巻き取りが進むにつれて最終列4Eの案内溝4に入らなくなり、第2層L2の第1列に押し上げられる。
【0053】
第1平行部P1及び第2平行部P1においては、
図4に示すように上層のロープR(例えば第3層L3のロープR)は、その下層(例えば第2層L2)にあって互いに隣り合う2つのロープRと平行に配置されており、これらの下層のロープRによって形成される谷間の真上に位置する。すなわち、第1平行部P1及び第2平行部P2においては、上層のロープRは、その直下の下層のロープRに対して1/2ピッチだけずれた位置にある。
【0054】
一方、第1交差部C1においては、上層のロープは、平面視したときに、下層のロープと交差するように配置されている。同様に、第2交差部C2においては、上層のロープは、平面視したときに、下層のロープと交差するように配置されている。
【0055】
図6に示す具体例では、第1平行部P1は、周方向において、巻胴2の外周面211のうちの1/3を占める領域に設けられている。第2平行部P2は、周方向において、巻胴2の外周面211のうちの他の1/3を占める領域に設けられている。第1交差部C1は、周方向において、巻胴2の外周面211のうちの1/6を占める領域に設けられている。第2交差部C2は、周方向において、巻胴2の外周面211のうちの他の1/6を占める領域に設けられている。この場合、巻胴2の外周面211における回転軸Kに垂直な断面において、第1平行部P1の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は120度であり、第2平行部P2の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は120度である。また、第1交差部C1の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は60度であり、第2交差部C2の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は60度である。
【0056】
ただし、平行部P1,P2及び交差部C1,C2が設けられる範囲は、上記の具体例に限定されるものではない。一例を挙げると、巻胴2の外周面211における回転軸Kに垂直な断面において、第1平行部P1の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角を105度とし、第2平行部P2の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角を105度とし、第1交差部C1の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角を75度とし、第2交差部C2の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角を75度とすることもできる。
【0057】
図6に示すように、ウインチドラム1において、第1フランジ3Aの内側面321には、ロープキックと称されるロープガイド部5が第2フランジ3B側に突出して設けられている。第2フランジ3Bの内側面323には、同様のロープガイド部5が第1フランジ3A側に突出して設けられている。各ロープガイド部5の断面は三角形状を呈している。ロープガイド部5の機能は、次の通りである。例えば第2層L2の第1列にあるロープRが、第1層L1の最終列のロープRよりもフランジ寄りの位置から、ロープガイド部5に案内されて第1層L1の最終列のロープRの真上に移動し、さらに、ロープガイド部5に案内されることにより、第1層の最終列のロープRとその隣のロープRによって形成される谷間の真上に移動する。これにより、第2層のロープRが整然と巻き取られる。これらのロープガイド部5は、第1交差部C1にのみ設けられており、第2交差部C2、第1平行部P1及び第2平行部P2には設けられていない。
【0058】
上述したように、第1実施形態では、第1フランジ3Aと、巻胴2の一部であるフランジ部22とによってフランジ全体が構成されている。このような構成を採用する理由は次の通りである。
【0059】
図3及び
図4に示すように、巻胴2の外周面211に第1層L1のロープRを案内する案内溝4が設けられているウインチドラム1では、第1層L1のロープRは、案内溝4に入り込むことにより、第1層L1の第1列から最終列まで整然と巻き取られる。また、このウインチドラム1では、第2層L2の第1列や最終列に対応する部位に、これらの列のロープRを案内する凹部40(
図3参照)がフランジの内側面323に隣接して設けられている。したがって、このウインチドラム1では、第1層L1と第2層L2においては、幅方向Wの両端部に設けられる一対のフランジ3A,3B間の距離を調節しなくても、ロープRは整然と巻き取られる。また、ウインチドラム1が鋳造によって作製される場合において、ウインチドラム1の寸法精度は、径方向外側にいくにつれて低下する傾向にある。このため、第3層L3以上の高層においては、ウインチドラム1に巻き取られたロープR間に隙間が形成されるという問題や、規定の列数に達する前にロープRがその層に入らなくなるという問題が生じやすい。その一方で、第1層L1と第2層L2を含む低層においては、第3層L3以上の高層に比べて、一対のフランジ3A,3B間の距離を調節する必要性が低い。
【0060】
以上のことから、この第1実施形態では、巻胴2のフランジ部22に対して幅方向Wに変位可能に構成された第1フランジ3Aの内側面321を前記高層に対応する位置に設けることにより、当該高層に対応する位置において一対のフランジ3A,3B間の距離を調節可能としている。一方で、そのような調節が不要でかつそのような調節をしない方が好ましい前記低層に対応する位置には、巻胴2のフランジ部22の内側面221を設けている。
【0061】
次に、
図4を参照してウインチドラム1における第1フランジ3Aの位置を調節する機構(位置調節機構)について具体的に説明する。
【0062】
第1の実施形態では、上述したように各ワッシャ66の内面67は、当該位置調節機構における規制面S1を構成しており、第1フランジ3Aの対向壁部31の外側面312の一部は、当該位置調節機構における被規制面S2、すなわち規制面S1に押圧される被規制面S2を構成している。
【0063】
当該位置調節機構では、複数のボルト6を締め付け方向に回転させることにより、規制面S1(ワッシャ66の内面67)が被規制面S2(第1フランジ3Aの対向壁部31の外側面312の一部)を押圧して第1フランジ3Aを巻胴2に対して幅方向内側W1に変位させる。その一方で、複数のボルト6を締め付け方向の反対方向に回転させることにより、第1フランジ3Aが巻胴2に対して幅方向外側W2に変位するのを許容する。すなわち、
図4に示す位置調節機構は、巻胴2に対する第1フランジ3Aの幅方向Wの位置を調節するものである。これにより調節された位置においては、第1フランジ3Aは、巻胴2に対して幅方向外側W2に変位するのが規制される。すなわち、
図4に示す位置調節機構は、一対のフランジ3A,3B間の距離の最大許容値を規定するものである。
【0064】
第1フランジ3Aの対向壁部31は、当該対向壁部31を幅方向Wに貫通する複数の貫通孔313を有する。複数の貫通孔313は、
図5に示す複数のボルト6に対応する位置に形成されている。各貫通孔313には雌ねじは設けられていない。
【0065】
巻胴2のフランジ部22は、その外側面222から幅方向Wに穿孔された複数のねじ穴23を有する。各ねじ穴23の内面には雌ねじ24が形成されている。複数のねじ穴23は、
図5に示す複数のボルト6に対応する位置、すなわち複数の貫通孔313に対応する位置に形成されている。
図4に示すように、各ねじ穴23は、巻胴2のフランジ部22において、その外側面222から幅方向内側W1に向かってフランジ部22の厚みの途中まで穿孔された穴である。すなわち、各ねじ穴23は、フランジ部22を貫通する貫通孔ではない。各ねじ穴23は、フランジ部22の外側面222にのみ開口しており、フランジ部22の内側面221には開口していない。したがって、フランジ部22の内側面221は連続面によって構成されている。
【0066】
各ボルト6は、その頭部61が対向壁部31よりも幅方向外側W2に位置し、その軸部62が対向壁部31の貫通孔313に挿通され、軸部62の雄ねじ63がねじ穴23の雌ねじ24に螺合された状態で配置される。上述したようにボルト6の頭部61と対向壁部31との間にはワッシャ66が介在している。
【0067】
図7は、第1実施形態に係るウインチドラム1におけるストッパー機構を示す断面図である。このストッパー機構は、第1フランジ3Aが巻胴2に対して幅方向内側W1に変位するのを規制する機能を有する。すなわち、当該ストッパー機構は、一対のフランジ3A,3B間の距離の最小許容値を規定するものである。
図4に示す位置調節機構と
図7に示すストッパー機構の両方が設けられていることにより、第1フランジ3Aは、巻胴2に対して幅方向内側W1と幅方向外側W2に変位するのが規制される。
図7に示す機構の具体的な構成は次の通りである。
【0068】
図5及び
図7に示すように、ウインチドラム1は、複数のボルト7(
図5に示す具体例では4個のボルト7)を備える。複数のボルト7は、円環形状の第1フランジ3Aの周方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。
図7に示すように、各ボルト7は、頭部71と、頭部71の内面74から延びるとともに外周面に雄ねじ73が形成された軸部72とを有する。
【0069】
図7に示すように、第1フランジ3Aの対向壁部31は、当該対向壁部31を幅方向Wに貫通する複数のねじ穴314を有する。複数のねじ穴314は、
図5に示す複数のボルト7に対応する位置に形成されている。各ねじ穴314の内面には雌ねじ315が形成されている。
【0070】
各ボルト7は、その頭部71が対向壁部31よりも幅方向外側W2に位置し、その軸部72の雄ねじ73が対向壁部31のねじ穴314の雌ねじ315に螺合された状態で配置される。各ボルト7は、その軸部72の先端に位置する先端面75を有する。各ボルト7の軸部72の先端面75は、巻胴2のフランジ部22の外側面222に対して幅方向Wに対向している。
図7に示すように、軸部72の先端面75が巻胴2のフランジ部22の外側面222と当接する状態のときに、第1フランジ3Aは、巻胴2に対して幅方向内側W1に変位するのが規制される。
【0071】
当該ストッパー機構では、複数のボルト7を締め付け方向に回転させることにより、一対のフランジ3A,3B間の距離の最小許容値を大きくすることができ、複数のボルト7を締め付け方向の反対方向に回転させることにより、一対のフランジ3A,3B間の距離の最小許容値を小さくすることができる。
【0072】
以下、位置調節機構の動作について説明する。第1実施形態では、
図3に示すように、ロープRは、ウインチドラム1における巻胴2の外周面211に沿って、第2層L2まで整然と巻き取られる。そして、さらにロープRの巻き取りが継続され、第3層L3、第4層L4、第5層L5の順にロープRが巻き取られていく。
【0073】
そして、作業者は、例えば第3層L3のロープRが第1列から最終列まで巻き終わったときに、第3層L3における隣り合う2本のロープR間に比較的大きな隙間が形成されている場合には、位置調節機構を用いて一対のフランジ3A,3B間の距離を小さくする。一方、作業者は、例えば第3層L3において、予め設定されている規定の列数に達する前にロープRが第3層L3に入らなくなった場合には、位置調節機構を用いて一対のフランジ3A,3B間の距離を大きくする。位置調節機構の具体的な動作は次の通りである。
【0074】
図4を参照して、作業者は、一対のフランジ3A,3B間の距離を小さくする場合には、ボルト6の頭部61を工具によって締め付け方向に回転させる。これにより、ボルト6の軸部62が幅方向内側W1に向かって巻胴2のねじ穴23内にさらに進入する。このとき、ボルト6の頭部61の内面64は、ワッシャ66を幅方向内側W1に押圧し、ワッシャ66の内面67(規制面S1)は、被規制面S2を構成する対向壁部31の外側面222の一部を幅方向内側W1に押圧する。その結果、ボルト6の締め付け方向への回転量に応じた軸部62の進入量の分だけ第1フランジ3Aが幅方向内側W1に変位する。
【0075】
作業者は、例えば第3層L3においてロープR間に形成されていた前記隙間がほぼなくなるまで、上記のようにボルト6を締め付け方向へ回転させることにより、巻胴2に対して第1フランジ3Aを幅方向内側W1へ連続的に変位させる。これにより、一対のフランジ3A,3B間の距離が最適な大きさになるように細かく調節される。
図4では、上記のような位置調節によって第1フランジ3Aの内側面321が巻胴2のフランジ部22の内側面221よりも寸法Aだけ幅方向内側W1に位置している状態を示している。
【0076】
また、作業者は、一対のフランジ3A,3B間の距離を大きくする場合には、ボルト6の頭部61を工具によって締め付け方向の反対方向に回転させる。これにより、ボルト6の軸部62が巻胴2のねじ穴23に対して幅方向外側W2に向かって後退する。このとき、ボルト6の頭部61の内面64及びワッシャ66の内面67(規制面S1)は、軸部62の後退量と同じ距離だけ幅方向外側W2に変位する。このことは、締め付け方向の反対方向への回転量に応じた軸部62の後退量の分だけ第1フランジ3Aが巻胴2に対して幅方向外側W2に変位するのを許容する。
【0077】
巻胴2に対する幅方向外側W2への第1フランジ3Aの変位は、例えば、作業者が第1フランジ3Aを幅方向外側W2に引っ張ることによって行われる。また、巻胴2に対する幅方向外側W2への第1フランジ3Aの変位は、巻胴2に巻き取られているロープRが第1フランジ3Aに対して幅方向外側W2に及ぼす力によって自動的に行われる場合もある。このように、ボルト6の締め付け方向の反対方向へボルト6を回転させることにより、巻胴2に対して第1フランジ3Aを幅方向外側W2へ連続的に変位させる。これにより、一対のフランジ3A,3B間の距離が最適な大きさになるように細かく調節される。
【0078】
なお、
図4に示す位置調節機構による第1フランジ3Aの位置調節時には、
図7に示すストッパー機構において各ボルト7の軸部72の先端面75と巻胴2のフランジ部22の外側面222との間の隙間は、位置調節に支障がないように予め十分な大きさに広げられている。そして、当該位置調節機構によって第1フランジ3Aの位置が調節され、一対のフランジ3A,3B間の距離が最適な大きさに調節された後、
図7に示すストッパー機構において複数のボルト7を締め付け方向に回転させることにより、軸部72の先端面75を巻胴2のフランジ部22の外側面222に当接させる。これにより、第1フランジ3Aが上記最適位置から幅方向内側W1に変位しないように第1フランジ3Aの変位が規制される。
【0079】
一対のフランジ3A,3B間の距離を調節するタイミングは、上述した第3層L3のロープRが巻き終わったときに限られず、例えば
図4に示す第5層L5のロープRが巻き終わったときや、第7層のロープRが巻き終わったときのように奇数層のロープRが巻き終わったときであってもよく、全ての層が巻き終わったときであってもよい。また、一対のフランジ3A,3B間の距離の調節は、複数回行われてもよい。また、位置調節機構が巻胴2の幅方向Wの反対側に設けられている場合、すなわち第2フランジ3Bが巻胴2に対して変位可能に構成されている場合には、一対のフランジ3A,3B間の距離を調節するタイミングは、第4層L4以上の偶数層のロープRが巻き終わったときであってもよい。また、一対のフランジ3A,3B間の距離を調節するタイミングは、ウインチドラム1がロープを巻き取る前(巻き取り開始前)に行われてもよい。巻き取り開始前とは、例えばウインチドラム1の製品出荷前、ウインチドラム1の使用前、ウインチドラム1を用いた作業の作業前などを例示することができる。このように、第1実施形態に係るウインチドラム1では、一対のフランジ3A,3B間の距離の調節を、ウインチドラム1がロープRを巻き取る前(巻き取り開始前)、ロープRを巻き取る途中、ロープRを巻き取った後の何れにおいても行うことができる。
【0080】
また、第1実施形態では、ボルト6は、その頭部61が第1フランジ3Aの対向壁部31よりも幅方向外側W2に位置するように配置されている。したがって、ボルト6の頭部61を収容するための凹部を巻胴2のフランジ部22の内側面221や第1フランジ3Aのフランジ本体22の内側面321に設ける必要がない。このため、巻胴2のフランジ部22の内側面221は連続面によって構成され、また、第1フランジ3Aのフランジ本体22の内側面321のうち、少なくともロープRが幅方向Wに対向する部分は、連続面によって構成されている。これにより、巻胴2のフランジ部22にロープRを巻き取るときや巻胴2のフランジ部22からロープRを繰り出すときに、ロープRの摩耗が生じるのを防ぐことができる。
【0081】
第1実施形態では、
図4に示すように、上述の位置調節機構によって第1フランジ3Aの内側面321と巻胴2のフランジ部22の内側面221との間に寸法Aの分だけ幅方向Wに段差が形成される場合がある。当該段差は、回転軸Kを中心とする円形状に形成されるものであり、第1フランジ3Aと巻胴2のフランジ部22との境界部分の全周にわたって周方向に連続する均一な段差である。また、この段差の形成される方向はロープRの延びる方向とほぼ一致する。このため、当該段差は、上述したボルトの頭部を収容するための凹部と比較して、ロープRの摩耗に対する影響は小さい。
【0082】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係るウインチドラム1における第1フランジ3Aの位置を調節する機構を示す断面図である。
【0083】
第2実施形態に係るウインチドラム1は、巻胴2の一端部に設けられた位置調節機構の具体的構成が上述した第1実施形態とは異なっている。第2実施形態に係るウインチドラム1は、位置調節機構以外の構成については第1実施形態と同様である。したがって、以下では、第2実施形態については、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0084】
図8に示すように、第2の実施形態では、当該位置調節機構における規制面S1は、ボルト6の軸部62の先端面65によって構成されており、規制面S1に対向する被規制面S2は、第1フランジ3Aの外側面322の一部によって構成されている。また、第2実施形態では、ドラム本体11は、巻胴2と、対向部材9とによって構成され、規制部材10は、複数のボルト6によって構成されている。
【0085】
第1フランジ3Aは、巻胴2のフランジ部22に対して径方向外側に隣接する位置に設けられている。第1フランジ3Aは、第1実施形態のようなフランジ本体32を有する一方で、第1実施形態のような対向壁部31を有していない。
【0086】
対向部材9は、巻胴2のフランジ部22の外側面222及び第1フランジ3Aの外側面322に対して幅方向外側W2に配置されており、これらの外側面222,322に対向している。対向部材9は、例えば回転軸Kを中心とする円環形状を有している。
【0087】
対向部材9は、固定部材によって巻胴2に固定されている。固定部材は、対向部材9を巻胴2に固定することができるものであればよく、その具体的構成は特に限定されない。
図8に示す具体例では、対向部材9は、固定部材としてのボルト8によって巻胴2に固定されている。ボルト8は、頭部81と、頭部81の内面から延びるとともに外側面に雄ねじ83が形成された軸部82とを有する。
【0088】
対向部材9は、巻胴2のフランジ部22の外側面222に対して幅方向Wに対向する部位に幅方向Wに貫通する貫通孔95を有する。巻胴2の外側面222には、対向部材9に対向する部位にねじ穴28が形成されている。ねじ穴28の内面には雌ねじ29が形成されている。ねじ穴28は、巻胴2の外側面222から幅方向内側W1に向かって巻胴2のフランジ部22の厚みの途中まで穿孔された穴である。すなわち、各ねじ穴28は、フランジ部22を貫通する貫通孔ではない。各ねじ穴28は、フランジ部22の外側面222にのみ開口しており、フランジ部22の内側面221には開口していない。したがって、フランジ部22の内側面221は連続面によって構成されている。
【0089】
ボルト8は、その頭部81が対向部材9よりも幅方向外側W2に位置し、その軸部82が対向部材9の貫通孔95に挿通され、軸部82の雄ねじ83が巻胴2のねじ穴28の雌ねじ29に螺合された状態で配置される。ボルト8の頭部81と対向部材9との間にはワッシャ84が介在している。これにより、対向部材9は巻胴2に固定される。なお、ボルト8とそれに対応する貫通孔95及びねじ穴28は対向部材9の周方向に沿って複数設けられている。
【0090】
第2実施形態では、複数のボルト6は、
図5に示す第1実施形態と同様に、回転軸Kを中心とする周方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。
【0091】
対向部材9は、第1フランジ3Aの外側面322に対して幅方向Wに対向する部位に幅方向Wに貫通する複数のねじ穴93を有する。各ねじ穴93の内面には雌ねじ94が形成されている。複数のねじ穴93は、複数のボルト6に対応する位置に形成されている。
【0092】
各ボルト6は、その頭部61が対向部材9よりも幅方向外側W2に位置し、その軸部62の雄ねじ63が対向部材9のねじ穴93の雌ねじ94に螺合され、軸部82の先端面65が対向部材9よりも幅方向内側W1に位置した状態で配置される。
【0093】
対向部材9の内側面91と第1フランジ3Aの外側面322との間には幅方向Wの隙間が形成されており、当該隙間の大きさの範囲内で第1フランジ3Aを幅方向外側W2に変位させることができる。また、対向部材9の外側面92とボルト6の頭部61の内面64との間には幅方向Wの隙間が形成されており、当該隙間の大きさの範囲内で第1フランジ3Aを幅方向内側W1に変位させることができる。
【0094】
この第2実施形態では、対向部材9により幅方向外側W2に位置するボルト6の頭部61を工具などによって締め付け方向に回転させると、ボルト6の軸部62が幅方向内側W1に向かって対向部材9のねじ穴93内を移動する。対向部材9は巻胴2に固定されているので、ボルト6の軸部62が幅方向内側W1に移動することにより、規制面S1を構成するボルト6の軸部62の先端面65は、被規制面S2を構成する第1フランジ3Aの外側面322の一部に当接し、当該外側面322の一部を幅方向内側W1に押圧する。その結果、ボルト6の締め付け方向への回転量に応じた軸部62の移動量の分だけ第1フランジ3Aが幅方向内側W1に変位する。このようにボルト6の締め付け方向へのボルト6の回転量に応じて巻胴2に対して第1フランジ3Aを幅方向内側W1へ連続的に変位させる。これにより、一対のフランジ3A,3B間の距離が最適な大きさになるように細かく調節される。
【0095】
また、第2実施形態では、ボルト6の頭部61を工具などによって締め付け方向の反対方向に回転させると、ボルト6の軸部62が対向部材9のねじ穴93に対して幅方向外側W2に向かって後退する。これにより、規制面S1を構成するボルト6の軸部62の先端面65は、軸部62の後退量と同じ距離だけ幅方向外側W2に変位する。このことは、締め付け方向の反対方向への回転量に応じた軸部62の後退量の分だけ第1フランジ3Aが巻胴2に対して幅方向外側W2に変位するのを許容する。これにより、ボルト6の締め付け方向の反対方向へのボルト6の回転量に応じて巻胴2に対して第1フランジ3Aを幅方向外側W2へ連続的に変位させる。これにより、一対のフランジ3A,3B間の距離が最適な大きさになるように細かく調節される。
【0096】
また、第2実施形態では、ボルト6は、その頭部61が第1フランジ3Aの対向部材9よりも幅方向外側W2に位置するように配置される。したがって、上述したようにボルト6の頭部61を収容するための凹部を第1フランジ3Aの内側面321に設ける必要がないので、当該凹部に起因するロープRの摩耗が生じるのを防ぐことができる。
【0097】
[第
3形態]
図9は
、第3形態に係るウインチドラム1における第1フランジ3Aの位置を調節する機構を示す断面図である。
【0098】
図9に示すように、第
3形態に係るウインチドラム1では、巻胴2の外周面211には
図4に示す第1実施形態のような案内溝4は設けられていない。また、巻胴2は、第1実施形態のようなフランジ部22を有していない。したがって、第1フランジ3Aの内側面321は、第1層L1以上のロープR、すなわち全ての層のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられている。第
3形態に係るウインチドラム1は、これらの点が上述した第1実施形態とは異なっており、上記の点以外の構成については第1実施形態と同様である。したがって、以下では、第
3形態については、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0099】
図9に示すように、第
3形態では、巻胴2の外周面211に案内溝4が設けられていないため、ウインチドラム1に巻き取られたロープR間に隙間が形成されるという問題や、規定の列数に達する前にロープRがその層に入らなくなるという問題が、第1層L1を含む低層においても、第1,第2実施形態に比べて生じやすくなる。したがって、第1フランジ3Aの内側面321は、第1層L1以上の全ての層のロープRに対応する位置に設けられている。後述する第
4形態についても同様である。
【0100】
図9に示すように、第
3形態では、当該位置調節機構における規制面S1は、ボルト6の頭部61と第1フランジ3Aの対向壁部31との間に介在するワッシャ66の内面67によって構成されており、規制面S1に押圧される被規制面S2は、第1フランジ3Aの対向壁部31の外側面312の一部によって構成されている。
【0101】
巻胴2は、巻胴2の外側面である側板26の外側面222から幅方向Wに穿孔された複数のねじ穴23を有する。各ねじ穴23の内面には雌ねじ24が形成されている。複数のねじ穴23は、複数のボルト6に対応する位置(
図5に示す第1実施形態における複数のボルト6に対応する位置と同様の位置)に形成されている。
図9に示すように、各ねじ穴23は、巻胴2の側板26において、側板26の外側面222から幅方向内側W1に向かって側板26の厚みの途中まで穿孔された穴である。すなわち、各ねじ穴23は、側板26を貫通する貫通孔ではない。
【0102】
各ボルト6は、その頭部61が第1フランジ3Aの対向壁部31よりも幅方向外側W2に位置し、その軸部62が対向壁部31の貫通孔313に挿通され、軸部62の雄ねじ63がねじ穴23の雌ねじ24に螺合された状態で配置される。
【0103】
なお、第3形態に係る位置調節機構の動作については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0104】
[第
4形態]
図10は
、第4形態に係るウインチドラム1における第1フランジ3Aの位置を調節する機構を示す断面図である。
【0105】
図10に示すように、第
4形態に係るウインチドラム1では、巻胴2の外周面211には
図8に示す第2実施形態のような案内溝4は設けられていない。また、巻胴2は、第2実施形態のようなフランジ部22を有していない。したがって、第1フランジ3Aの内側面321は、第1層L1以上のロープR、すなわち全ての層のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられている。第
4形態に係るウインチドラム1は、これらの点が上述した第2実施形態とは異なっており、上記の点以外の構成については第2実施形態と同様である。
【0106】
なお、第4形態に係る位置調節機構の動作については、第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0107】
[その他の変形例]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を含む。
【0108】
上記の各実施形態では、第1フランジ3Aのみが巻胴2に対して幅方向Wに変位可能に構成され、第2フランジ3Bは、巻胴2に対して変位できないように構成されていたが、これに限られない。第1フランジ3A及び第2フランジ3Bの何れもが巻胴2に対して幅方向Wに変位可能に構成されていてもよい。この場合、第2フランジ3Bは、上述した第1フランジ3Aと同様の機構によって巻胴2に対して幅方向Wに変位可能に構成される。
【0109】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、巻胴2のフランジ部22の内側面221は、第1層L1と第2層L2のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられ、第1フランジ3Aの内側面321は、第3層L3以上のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられていたが、これに限られない。例えば、巻胴2のフランジ部22の内側面221は、第1層L1のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられ、第1フランジ3Aの内側面321は、第2層L2以上のロープRが幅方向Wに対向する位置に設けられていてもよい。
【0110】
上記の第1実施形態では、ウインチドラム1は、第1フランジ3Aが巻胴2に対して幅方向内側W1に変位するのを規制するストッパー機構(
図7参照)を備えていたが、このストッパー機構は、第2
実施形態及び第3~第
4形態に設けることもできる。なお、第1~第
2実施形態
及び第3~第4形態において、当該ストッパー機構は、省略することもできる。
【0111】
また、第1実施形態及び第3形態において、巻胴2に対する第1フランジ3Aの最適な位置が予め判明している場合には、対向壁部31の内側面311と巻胴2の外側面222との間に形成されている隙間には、板状の部材(スペーサー)を配置することもできる。これにより、第1フランジ3Aが前記最適位置から幅方向内側W1へ変位するのを規制することができる。
【0112】
第2実施形態及び第4形態では、対向部材9が円環形状である場合を例示したが、対向部材9は、円環形状に限られず、回転軸Kを中心とする周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の部材によって構成されていてもよく、この場合には各部材毎にボルト6及びボルト8が配置される。
【0113】
第1実施形態及び第3形態では、規制部材10が複数のボルト6と複数のワッシャ66とによって構成されていたが、複数のワッシャ66は省略可能である。また、規制部材10は、ボルト6及びワッシャ66以外に、さらに別の部材を含んでいてもよい。規制部材10を構成する部材のうち、当該別の部材の内面が最も幅方向内側W1に位置する場合には、当該別の部材の内面が規制面S1を構成する。すなわち、ボルト6の頭部61の内面64が被規制面S2に対して幅方向Wに対向するという状態には、ボルト6の頭部61の内面64と被規制面S2との間にワッシャ66などの他の部材を介さずにボルト6の頭部61の内面64が被規制面S2に対して幅方向Wに対向する場合だけでなく、ボルト6の頭部61の内面64と被規制面S2との間にワッシャ66などの他の部材を介してボルト6の頭部61の内面64が被規制面S2に対して幅方向Wに対向する場合も含まれる。
【0114】
第2実施形態及び第4形態において、ボルト6の軸部61の先端面65と被規制面S2(第1フランジ3Aの外側面322の一部)との間には、他の部材(例えば板状の部材)が介在していてもよい。すなわち、ボルト6の軸部61の先端面65が被規制面S2に対して幅方向Wに対向するという状態には、ボルト6の軸部61の先端面65と被規制面S2との間に他の部材を介さずにボルト6の軸部61の先端面65が被規制面S2に対して幅方向Wに対向する場合だけでなく、ボルト6の軸部61の先端面65と被規制面S2との間に他の部材を介してボルト6の軸部61の先端面65が被規制面S2に対して幅方向Wに対向する場合も含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 ウインチドラム
2 巻胴
21 筒部
211 巻胴の外周面
22 フランジ部
221 フランジ部の内側面(巻胴の内側面)
222 フランジ部の外側面(巻胴の外側面)
23 巻胴のねじ穴
24 ねじ穴の雌ねじ
3A 第1フランジ
3B 第2フランジ
31 対向壁部
311 対向壁部の内側面
312 対向壁部の外側面
313 対向壁部の貫通孔
32 フランジ本体
321 フランジ本体の内側面
322 フランジ本体の外側面
6 ボルト
61 頭部
62 軸部
63 雄ねじ
64 頭部の内面
65 軸部の先端面
66 ワッシャ
67 ワッシャの内面
9 対向部材
91 対向部材の内側面
92 対向部材の外側面
93 対向部材のねじ穴
94 対向部材のねじ穴の雌ねじ
10 規制部材
11 ドラム本体
R ロープ
S1 規制面
S2 被規制面
W 幅方向
W1 幅方向内側
W2 幅方向外側