(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】分析用液監視装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01N30/26 E
(21)【出願番号】P 2018029665
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】磯井 卓哉
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059895(JP,A)
【文献】特開2012-018126(JP,A)
【文献】特開2000-298122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139451(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析に使用すべき分析用液としての液が収容されている容器の重量を計測する重量計と、
前記分析用液の密度ρを記憶する密度記憶部と、
前記分析において前記容器内の液を使用して減少させる減少動作があったときに、前記減少動作における前記容器内の液の減少した体積Vを割り出すとともに、前記分析用液を減少させる減少動作の前後における前記容器の重量の変化量ΔMを前記重量計の計測値に基づいて求め、
割り出した前記減少した体積V、求めた前記変化量ΔM
、及び前記密度記憶部に記憶されている前記分析用液の密度ρに基づいて、
前記減少動作において使用された前記容器内の液が正しい前記分析用液であるか否かを判定するように構成されている分析用液判定部と、を備えた分析用液視装置。
【請求項2】
前記分析用液判定部は、前記減少動作の前後における前記容器の重量の
前記変化量ΔMを前記減少動作における前記容器内の液の
前記減少した体積Vで除算して前記容器に収容されている液の密度ρ’を求め、求めた密度ρ’と前記密度記憶部に記憶されている前記分析用液の密度ρとを比較し、両者が一致するか否かにより
前記減少動作において使用された前記容器内の液が正しい前記分析用液であるか否かを判定するように構成されている、請求項1に記載の分析用液監視装置。
【請求項3】
前記分析用液判定部は、前記減少動作の前後における前記容器の重量の
前記変化量ΔMを前記密度記憶部に記憶されている前記分析用液の密度ρで除算
することによって前記減少動作における前記容器内の液の減少した体積
の計算値V’を求め、
前記体積の計算値V’と
割り出した前記減少した体積Vとを比較し、両者が一致するか否かにより
前記減少動作において使用された前記容器内の液が正しい前記分析用液であるか否かを判定するように構成されている、請求項1に記載の分析用液監視装置。
【請求項4】
分析に使用すべき分析用液としての液が収容されている容器の重量を計測する重量計と、
前記分析用液の密度ρを記憶する密度記憶部と、
前記分析用液を減少させる減少動作の前後における前記容器の重量の変化量ΔMを前記重量計の計測値に基づいて求め、求めた前記変化量ΔM、前記減少動作における前記容器内の液の減少した体積V、及び前記密度記憶部に記憶されている前記分析用液の密度ρに基づいて、前記減少動作において使用された前記容器内の液が正しい前記分析用液であるか否かを判定するように構成されている分析用液判定部と、を備え、
複数の液が互いに異なる分析用液としてそれぞれ収容されている複数の容器があり、
前記重量計は前記複数の容器のそれぞれの重量を計測するものであり、
前記密度記憶部はそれぞれの前記分析用液の密度ρを記憶するものであり、
前記分析用液判定部は、前記減少動作の前後における前記複数の容器のそれぞれの重量の変化量ΔMを前記密度記憶部に記憶されているそれぞれの前記分析用液の密度ρで除算して前記減少動作における前記複数の容器内の液の計算上の減少した体積V’の比率を求め、求めた計算上の体積V’の比率と前記減少動作における前記複数の容器内の液のそれぞれの減少した体積Vの比率とを比較し、両者が一致するか否かにより
前記減少動作において使用された前記容器内の液が正しい前記分析用液であるか否かを判定するように構成されている
、分析用液監視装置。
【請求項5】
前記分析用液判定部によって前記減少動作において
使用された液が正しい前記分析用液
でないと判定されたときに、ユーザに対する警告を発するように構成された警告発生部をさらに備えている、請求項1から4のいずれか一項に記載の分析用液監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフなどの分析装置で使用される分析用液を監視するための分析用液監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフなどの分析装置では、従来から、分析に使用される液(以下、分析用液)の残量を液面センサ等によって検知することがよく行なわれている(特許文献1参照。)。分析用液の残量を検知することによって、分析用液の補充・交換のタイミングを知るだけでなく、分析用液が予定された量だけ正確に使用されているか否か、すなわち分析用液を用いた所定の動作が正常に行なわれたか否かの検証を行なうことができる。
【0003】
また、分析用液を送液する送液ポンプの動作量から送液の総量を計算し、その結果に基づいて分析用液の残量や廃液容器内の液量を監視することも行なわれている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-192424号公報
【文献】特開2000-298122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析装置では複数種類の分析用液が一般的に使用される。ユーザは、分析用液を収容した複数の容器をそれぞれ所定の位置に設置したり所定の配管と接続したりする必要がある。設置する分析用液の種類や分析用液への配管接続が間違っていると、移動相の組成が本来のものと異なってしまったり本来使用すべき分析用液とは別の液が使用されたりして、分析を正常に実施することができなくなる。
【0006】
特許文献1や特許文献2に示されているような液量の監視方法では、分析用液の設置や配管接続が正しくなされているか否かを考慮していない。そのため、分析用液の設置や配管接続に間違いがあっても、液の減少量が予定された使用量と一致していれば異常として検知されない。
【0007】
また、分析用液を収容している容器の形状によっては、容器内の液面高さと収容されている分析用液の体積量とが比例しない場合があり、そのような場合には液面センサで正確な残量を測定することが不可能である。
【0008】
そこで、本発明は、分析用液の設置や配管接続に間違いがあったときにそれを異常として検知することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
既述のように、分析に関する動作である液を使用したときにその液の減少量をその体積にのみ基づいて監視しても、その液が本来使用されるべき分析用液であったか否かについては判断することはできない。しかし、分析用液はその種類によって密度が異なることがほとんどであり、ある一定の体積だけ使用されたときに減少する重量は分析用液の種類によって異なる。このことを利用すれば、正しい種類の分析用液が正しい量だけ使用されたか否かを判断することが可能となる。本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、分析用液としての液が収容されている容器の重量に関する情報と分析用液の密度ρの情報を用いて、分析用液が正常に使用されているか否かを判定することを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明に係る分析用液視装置は、分析に使用すべき分析用液としての液が収容されている容器の重量を計測する重量計と、前記分析用液の密度ρを記憶する密度記憶部と、前記分析用液を減少させる減少動作の前後における前記容器の重量の変化量ΔMを前記重量計の計測値に基づいて求め、求めた前記変化量ΔM、前記減少動作における前記容器内の液の減少した体積V、及び前記密度記憶部に記憶されている前記分析用液の密度ρに基づいて、前記減少動作において前記分析用液の使用が正常になされたか否かを判定するように構成されている分析用液判定部と、を備えている。
【0011】
なお、本願における「分析用液」とは、分析装置において使用される種々の液の総称であり、移動相として送液される溶媒、洗浄液、試料に添加される試薬などが含まれる。
【0012】
分析用液の使用が正常な場合とは、その分析用液を減少させる減少動作(例えば、移動相溶媒としての送液動作や洗浄液としての送液動作、試料への試薬の添加動作)において本来使用されるべき分析用液が予定通りに使用されている場合である。逆にいえば、分析用液の使用が正常でない場合とは、その分析用液を減少させる減少動作において実際に使用された液が本来使用されるべき分析用液とは異なる液であった場合や、分析装置が正常に動作していなかった場合などである。実際に使用された液が本来使用されるべき分析用液とは異なる液となってしまう原因としては、ユーザによる分析用液の設置や配管接続の間違いなどが考えられる。
【0013】
分析用液の使用が正常になされたか否かを判定するために、前記分析用液判定部が、分析用液としての液が収容されている容器の重量の変化量ΔM、及び分析用液の密度ρをどのように用いるかについては、種々の態様が考えられる。その一例として、前記分析用液判定部は、前記減少動作の前後における前記容器の重量の変化量ΔMを前記減少動作における前記容器内の液の減少した体積Vで除算して前記容器に収容されている液の密度ρ’を求め、求めた密度ρ’と前記密度記憶部に記憶されている前記分析用液の密度ρとを比較し、両者が一致するか否かにより前記減少動作において前記分析用液の使用が正常になされたか否かを判定するように構成されている態様が挙げられる。
【0014】
また、前記分析用液判定部の別の態様として、前記減少動作の前後における前記容器の重量の変化量ΔMを前記密度記憶部に記憶されている前記分析用液の密度ρで除算して前記減少動作における前記容器内の液の減少した体積V’を求め、求めた体積V’と前記減少動作における前記容器内の液の減少した体積Vとを比較し、両者が一致するか否かによって前記減少動作において前記分析用液の分析用液が正常になされたか否かを判定するように構成されている態様が挙げられる。
【0015】
これらの態様は、分析用液を減少させる減少動作において減少すべき分析用液の体積Vを予め設定された分析プログラム等から割り出すことができる場合に有効である。例えば、分析装置が送液ポンプの動作量に基づいて分析用液の送液量を計算する機能を有する場合には、ある減少動作において消費される分析用液の体積Vを分析装置の機能を用いて割り出すことができる。
【0016】
また、分析用液を減少させる減少動作において消費される分析用液の体積Vを正確に把握できないような場合もある。そのような場合でも、複数種類の分析用液を用いるグラジエント送液などでは、その動作で消費される分析用液の体積比率を分析プログラムから割り出すことができ、その比率を用いて分析用液の使用が正常になされたか否かを判定することができる。
【0017】
すなわち、前記重量計は前記複数の容器のそれぞれの重量を計測するものであり、前記密度記憶部はそれぞれの前記分析用液の密度ρを記憶するものであり、前記分析用液判定部は、前記減少動作の前後における前記複数の容器のそれぞれの重量の変化量ΔMを前記密度記憶部に記憶されているそれぞれの前記分析用液の密度ρで除算して前記減少動作にける前記複数の容器内の液の計算上の(実際のものと一致するとは限らない)減少した体積V’の比率を求め、求めた計算上の体積V’の比率と、前記減少動作における前記複数の容器内の液の減少した体積Vの比率、すなわち、前記減少動作において規定されている各分析用液の使用比率と、を比較し、両者が一致するか否かにより前記減少動作において前記分析用液の使用が正常になされたか否かを判定するように構成されている。これにより、前記減少動作における各分析用液の減少体積Vを正確に割り出すことができなくても、各容器の重量の変化量ΔMと各分析用液の密度ρによって求められる各容器内の液の計算上の減少体積の比率を、分析プログラム上の分析用液の使用比率と比較することによって、分析用液が正常に使用されているか否かを判定できる。
【0018】
また、本発明に係る分析用液監視装置では、前記分析用液判定部によって前記減少動作において前記分析用液の使用が正常になされていないと判定されたときに、ユーザに対する警告を発するように構成された警告発生部をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、分析用液の設置や配管接続の間違いや分析装置の異常動作が発生していることをユーザが容易に認識することができ、迅速に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る分析用液監視装置では、分析用液としての液が収容されている容器の重量に関する情報と分析用液の密度ρの情報を用いるので、例えば、移動相溶媒や洗浄液としての送液動作、試料への試薬の添加動作といった分析用液の減少動作において本来使用されるべき液が予定通りに使用されているか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】分析用液監視装置の一実施例を示す概略構成図である。
【
図2】分析用液の監視動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】分析用液の監視動作の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る分析用液監視装置の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、分析システム1に組み込まれた分析用液監視装置の構成の一例を示している。分析システム1は分析装置2とシステム管理装置10によって構成されている。システム管理装置10は専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現される。
【0023】
分析装置2は、例えば液体クロマトグラフのように複数の液を用いて分析を行なうものである。分析装置2には、分析に用いられる分析用液A~Dとしての液を収容した容器6a~6dが規定されたとおりに設置されるようになっている。分析用液A~Dを収容した容器6a~6dが正しく設置されていれば、分析装置2が、送液ポンプを用いて又はサンプリングニードルを用いて、分析に関する動作においてそれぞれ必要な分析用液を容器6a~6dのいずれかから吸入して使用することができる。容器6a~6dを設置するとは、容器6a~6dのそれぞれを所定の位置に設置したり、又は所定の配管と接続したりすることである。
【0024】
容器6a~6dに収容されるべき分析用液A~Dとしては、例えば、液体クロマトグラフの分析流路中で送液される移動相としての溶媒のほか、分析流路内を洗浄するための洗浄液、試料に添加される試薬や希釈液等が挙げられる。
【0025】
分析システム1は、移動相の送液といった分析用液を減少させるような動作において、正しい分析用液が予定通り使用されているか否かを監視するための分析用液監視装置4を備えている。この実施例では、分析用液監視装置4が、重量計8a~8dとシステム管理装置10によって実現される。重量計8a~8dはそれぞれ、容器6a~6dの重量を計測するものであり、例えば電子天秤によって実現される。
【0026】
システム管理装置10には、密度記憶部12、分析用液判定部14、及び警告発生部16が設けられている。密度記憶部12は、システム管理装置10に設けられた記憶装置の一部の記憶領域によって実現される機能であり、分析用液判定部14及び警告発生部16は、マイクロコンピュータなどの演算素子がプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0027】
密度記憶部12は、分析装置2に設置されるべき各分析用液A~Dの密度に関する情報を記憶する。
【0028】
分析用液判定部14は、ある分析用液を減少させる減少動作(例えば、移動相の送液動作や洗浄液による洗浄動作)があったときに、その分析用液に対応する容器のある時点における重量M1とその容器内の液の減少を測定するのに十分な時間が経過した時点における重量M2との差分ΔM、その減少動作において使用されるべき分析用液の密度ρ、及びその減少動作において消費された分析用液の体積V(若しくはその比率)を用いて、当該減少動作において正しい分析用液が予定通りに使用されたか否かについて判定を行なうように構成されている。
【0029】
分析用液判定部14は、上記の判定を、例えば分析開始時に実行することができる。分析用液判定部14は、予め設定された分析プログラムから各分析用液A~Dの使用割合を取得する。分析において、例えば分析用液AとBを用いてグラジエント送液が行われる場合、分析用液判定部14は、グラジエント送液の開始時点の容器6a、6bのそれぞれの重量MA0、MB0の計測値を取得し、メモリー素子等に記憶させておく。そして、グラジエント送液が開始されてから一定の時間が経過した後で、容器6a、6bのそれぞれの重量MA1、MB1の計測値を取得し、それぞれの差分MA0-MA1、MB0-MB1を計算することで、各容器6a、6bの重量の変化量ΔMA、ΔMBを求める。
【0030】
分析装置2が各移動相の送液量を測定する機能を備えている場合や分析プログラムから各容器6a、6b内の液の消費量を割り出すことができる場合、分析用液判定部14は、各容器6a、6b内の液の減少した実際の体積VA,VBを割り出す。さらに、分析用液判定部14は、各容器6a,6bの重量の変化量ΔMA、ΔMBをそれぞれ減少した体積VA,VBで除算することにより、各容器6a、6b内の液の密度ρ’A、ρ’Bを求め、それらを密度記憶部12に記憶されている分析用液A、Bの密度ρA、ρBと比較する。容器6a、6bにそれぞれ分析用液A、Bが正しく収容されている場合はρ’A=ρA、ρ’B=ρBとなるので、分析用液判定部14はρ’A=ρA、ρ’B=ρBとなったときに「正常」と判定する。一方で、ρ’A≠ρA及び/又はρ’B≠ρBとなった場合には、密度の不一致となった容器に本来設置されるべき分析用液とは別の液が収容されていると判断することができる。このような場合、分析用液判定部14は「異常」と判定する。なお、密度が一致するか否かは、各分析用液の密度に誤差を加味して設定された範囲(例えば、分析用液の密度ρ±10%)内に計算で求めた密度ρ’が入っているか否かによって判断することができる。
【0031】
また、各容器6a、6b内の液の使用量を割り出すことができない場合、分析用液判定部14は、分析プログラムから分析用液A、Bの使用比率VA:VBを取得し、その使用比率を用いて分析用液の使用が正常か否かを判定することができる。この場合、分析用液判定部14は、各容器6a,6bの重量の変化量ΔMA、ΔMBをそれぞれ分析用液A、Bの密度ρA、ρBで除算し、各容器6a、6b内の液の減少した計算上の体積V’A、V’Bを求める。そして、その比率V’A:V’Bを分析プログラムから取得した分析用液A、Bの使用比率VA:VBと比較し、両者が一致するか否かにより「正常」か「異常」かを判定する。
【0032】
警告発生部16は、分析用液判定部14によって「異常」と判定されたときにユーザに対して警告を発するように構成されている。警告は、例えばシステム管理装置10に接続されているモニタに異常がある旨を表示させることで行なってもよいし、警告音を発生させることによって行なってもよい。
【0033】
また、分析用液判定部14によって「異常」と判定されたときには、上記の警告に加えて又は警告に代えて、システム管理装置10から分析装置2に対して実行中の動作を中断させる指令が送信されるように構成されていてもよい。
【0034】
分析用液監視装置による分析用液監視動作の一例を、
図1とともに
図2のフローチャートを用いて説明する。この動作は、分析装置2の動作において消費される各分析用液A~Dの量を割り出すことができる場合に有効な動作である。ここでは、分析用液Aを例に説明する。
【0035】
まず、分析用液判定部14は、分析用液Aを消費する動作のある時点(例えば動作の開始時点)における分析用液Aに対応する容器6aの重量M1を重量計8aから取得する(ステップS1)。その後、容器6aの重量の減少を測定することが可能な程度に十分な時間が経過した時点での容器6aの重量M2を重量計8aから取得し(ステップS2)、容器6aの重量の変化量ΔMAを求める(ステップS3)。
【0036】
分析用液判定部14は、分析装置2の機能を用いて又は分析プログラムに基づく計算によって、容器6aの重量がΔMAだけ減少するまでの減少動作中に消費された容器6a内の液の量を求める(ステップS4)。求められた液の消費量は、減少動作中における容器6a内の液の減少した体積VAに相当する。分析用液判定部14は、重量減少量ΔMAを求めた体積VAで除算することにより、容器6a内の液の密度ρ’Aを求め(ステップS5)、求めた密度ρ’Aを密度記憶部12に記憶されている分析用液Aの密度ρAと比較する(ステップS6)。両者が一致していれば「正常」と判定し(ステップS7)、両者が一致しなければ「異常」と判定する(ステップS8)。
【0037】
分析用液判定部14が「異常」と判定した場合、警告発生部16はユーザに対して「異常」であることを知らせるための警告を発する(ステップS9)。
【0038】
分析用液監視装置による分析用液監視動作の他の例を、
図1とともに
図3のフローチャートを用いて説明する。この動作は、分析装置2の動作において消費される各分析用液A~Dの量を割り出すことができない場合に特に有効な動作である。ここでは、分析用液AとBを使用する場合を例として説明する。
【0039】
まず、分析用液判定部14は、分析用液A、Bを消費する動作のある時点(例えば動作の開始時点)における分析用液A、Bに対応する容器6a、6bの重量MA1、MB1を重量計8a、8bから取得する(ステップS101)。その後、容器6a、6bの重量の減少を測定することが可能な程度に十分な時間が経過した時点での容器6a、6bの重量MA2、MB2を重量計8a、8bから取得し(ステップS102)、容器6a、6bの重量の変化量ΔMA、ΔMBを求める(ステップS103)。
【0040】
次に、分析用液判定部14は、各容器6a,6bの重量の変化量ΔMA、ΔMBをそれぞれ分析用液A、Bの密度ρA、ρBで除算し、各容器6a、6b内の液の減少した計算上の体積V’A、V’Bを求め(ステップS104)、その比率V’A:V’Bを求める(ステップS105)。さらに、分析用液判定部14は、分析用液A、Bの使用比率VA:VBを分析プログラムから取得し(ステップS106)、計算上の比率V’A:V’Bを使用比率VA:VBと比較する(ステップS107)。両者が一致していれば「正常」と判定し(ステップS108)、両者が一致しなければ「異常」と判定する(ステップS109)。
【0041】
分析用液判定部14が「異常」と判定した場合、警告発生部16はユーザに対して「異常」であることを知らせるための警告を発する(ステップS110)。
【0042】
このように、以上において説明した分析用液監視装置4は、設置されている容器6a~6d内の液がある程度減少した時点で、その減少の前後における容器6a~6dの重量の変化量ΔM、対応する分析用液の密度ρ、及びその減少動作における容器6a~6d内の液の消費量若しくはその使用比率に基づいて、その動作において使用されるべき分析用液が予定通り使用されているか否かを判定することができる。これにより、例えばユーザが分析用液A~Dの設置や配管接続を間違えていた場合でも、分析用液を消費する何らかの動作が開始されたときにそれを異常として検知することができる。
【符号の説明】
【0043】
1,1-1~1-n 分析システム
2 分析装置
4 分析用液監視装置
6a~6d 容器
8a~8d 重量計
10 システム管理装置
12 密度記憶部
14 分析用液判定部
16 警告発生部