(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】熱転写受像シート
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20220511BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B41M5/52 400
B41M5/50 420
(21)【出願番号】P 2018033599
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮内 康寛
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198419(JP,A)
【文献】特開2016-182682(JP,A)
【文献】特開2009-078387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/50-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面の上に、少なくとも多孔質フィルム層、下引き層、及び染料受容層がこの順に積層された熱転写受像シートであって、
前記多孔質フィルム層は、発泡フィルムの片面又は両面にスキン層を設けた複合フィルムからなり、前記多孔質フィルム層の前記染料受容層側の前記スキン層は粒子を含有して表面凹凸を有し、
前記染料受容層側から測定したうねり曲線の最大谷深さWvが1.80μm以下であり、且つ、前記染料受容層側から測定したマルテンス硬さが30N/mm
2以上140N/mm
2以下である熱転写受像シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写方式のプリンタに使用される熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱転写記録媒体は、熱転写方式のプリンタに使用され、サーマルリボンと呼ばれるインクリボンのことである。この熱転写記録媒体は、基材の一方の面に熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層)を設けた構成となっている。ここで熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクが昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)して、熱転写受像シートに転写されるものである。
【0003】
現在、熱転写方式の中でも昇華転写方式の熱転写記録媒体は、プリンタの高機能化に伴い、各種画像を簡便にフルカラーに形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物の耐久性を求める声も大きくなり、近年では基材シートの同じ側に、印画物の耐久性を付与する保護層等を重ならないように設けた複数の熱転写層を持つ熱転写記録媒体がかなり普及してきている。
【0004】
そのような状況の中、用途の多様化と普及拡大に伴い、高速印画プリンタに使用されても高画質の熱転写記録媒体が求められるようになってきた。このような要求に対して、熱転写受像シートにおいては、断熱層と中間層を設けず、塩化ビニル系樹脂、遊離脂肪酸を含有するワックス、架橋剤及び中空粒子を含有する塗工液を、塗工乾燥して画像受容層を形成した、画像均一性に優れた熱転写受容シートが特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に提案されている熱転写受容シートは、断熱層と中間層を設けないことによる低コスト化は確認できたものの、本発明者らが特許文献1の熱転写受容シートを用いて高速印画プリンタにて印画を行ったところ、画像受容層に含有される中空粒子の影響で、画質に問題があることがわかった。
【0007】
これまで染料受容層等によって画質に優れた熱転写受像シートが報告されているが、昨今の高速印画プリンタに使用されても、高画質の印画物を得ることができる熱転写受像シートは見出されていない状況である。
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、高速印画プリンタに使用されても画質に優れる熱転写受像シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る熱転写受像シートは、基材の一方の面の上に、少なくとも多孔質フィルム層、下引き層、及び染料受容層がこの順に積層された熱転写受像シートであって、染料受容層側から測定したうねり曲線の最大谷深さWvが1.80μm以下であり、且つ、染料受容層側から測定したマルテンス硬さが30N/mm2以上140N/mm2以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る熱転写受像シートは、高速印画プリンタに使用されても画質に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る熱転写受像シートの一実施形態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、
図1を参照しながら詳細に説明する。
図1に示す本実施形態の熱転写受像シート1は、少なくとも基材2、多孔質フィルム層3、下引き層4、及び染料受容層5を備えている。
【0012】
基材2は、従来公知のもので対応でき、例えば、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルム、及び、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、樹脂ラミネート紙などの紙類等を単独で、又は組み合わされた複合体として使用可能である。
基材2の厚さは、印画物としてのコシ、強度、耐熱性等を考慮して、25μm以上250μm以下の範囲が好ましいが、50μm以上200μm以下の範囲がより好ましい。
【0013】
次に、多孔質フィルム層3は、従来公知のもので対応でき、例えば、発泡ポリプロピレンフィルム、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム等の発泡フィルムなどを用いたもの、発泡フィルムの片面又は両面にスキン層を設けた複合フィルムを用いたものを挙げることができる。この中でも特に、発泡フィルムの片面又は両面にスキン層を設けた複合フィルムを用いることが好ましい。
多孔質フィルム層3の厚さは、10μm以上80μm以下の範囲が好ましく、20μm以上60μm以下の範囲がより好ましい。
【0014】
下引き層4は、従来公知のもので対応でき、少なくともバインダ樹脂と白色顔料を含有する。
下引き層4に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0015】
下引き層4に用いられる白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク、カオリン等の公知の無機顔料が使用できるが、この中でも特に酸化チタンがより好ましい。
また、下引き層4には、前記性能を損なわない範囲であれば、イソシアネート化合物等の架橋剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤を使用することができる。
【0016】
下引き層4の厚さは、0.1μm以上6μm以下の範囲が好ましく、0.2μm以上5μm以下の範囲がより好ましい。下引き層4の厚さが0.1μm未満であると、多孔質フィルム層3又は/及び染料受容層5との密着性に問題を抱える不安がある。一方、下引き層4の厚さが6μm超の場合には、密着性等の性能は十分であることから、コストを考慮すると6μm以下であることが好ましい。
【0017】
染料受容層5は、従来公知のもので対応でき、少なくともバインダ樹脂と離型剤を含有する。
染料受容層5に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、ポリブタジエン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、あるいはこれらの変性樹脂等を挙げることができるが、特に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。
【0018】
染料受容層5に用いられる離型剤としては、例えばシリコーン系オイル、フッ素系オイル、リン酸エステル系オイルといった各種オイルや、界面活性剤や、金属酸化物、シリカ等の各種フィラー、ワックス類等が使用できる。これらは単独、あるいは2種以上を混合しても良い。中でも、シリコーンオイルを使用することが好ましい。
染料受容層5の厚さは、0.1μm以上10μm以下の範囲が好ましいが、0.2μm以上8μm以下程度の範囲がより好ましい。また、必要に応じて架橋剤、酸化防止剤、蛍光染料や、公知の添加剤を含有しても良い。
【0019】
基材2、多孔質フィルム層3、下引き層4には、接着性の向上のため、必要に応じて従来公知の各種処理を施しても良い。例えば、基材2にはコロナ処理、多孔質フィルム層3には易接着処理、下引き層4にはコロナ処理を施すことで、接着性を向上させることができる。
【0020】
以上のような本実施形態の熱転写受像シート1は、染料受容層5側から測定したうねり曲線の最大谷深さWvが1.80μm以下であり、且つ、染料受容層5側から測定したマルテンス硬さが30N/mm2以上140N/mm2以下であるという特徴がある。ここで、うねり曲線の最大谷深さWvは、ISO 4287:1997に規定されたものであり、マルテンス硬さは、ISO 14577に規定されたものである。
【0021】
染料受容層5側から測定したうねり曲線の最大谷深さWvを1.80μm以下とする方法としては、使用する基材2、多孔質フィルム層3、下引き層4、染料受容層5の表面状態を従来公知の各種方法にて調整する方法が挙げられる。例えば、基材2に表面状態の異なる基材を用いたり、多孔質フィルム層3の染料受容層5側のスキン層に粒子を含有させたり、下引き層4の白色顔料のサイズ及び/又は量を調整したり、染料受容層5の表面をエンボス加工するか又は粒子を含有させることが挙げられる。
染料受容層5側から測定したうねり曲線の最大谷深さWvが1.80μmよりも大きいと、印画物にモトルムラと呼ばれる濃淡ムラが発生してしまうおそれがあるため、うねり曲線の最大谷深さWvは1.80μm以下とする必要がある。
【0022】
染料受容層5側から測定したマルテンス硬さを30N/mm2以上140N/mm2以下とするためには、多孔質フィルム層3及び下引き層4の弾性を調整する必要がある。断熱層として多孔質フィルム層3ではなく中空粒子とバインダ樹脂からなる中空粒子層を用いた際には、マルテンス硬さは140N/mm2よりも大きくなってしまう。マルテンス硬さが140N/mm2より大きくなるとクッション性が不足するため、染料受容層5の表面の凹凸をプリンタの印圧にて平滑にすることができず、結果として印画物にモトルムラが発生してしまうおそれがある。
【0023】
また、下引き層4のバインダ樹脂として、例えばSBR樹脂のような弾性率の低い樹脂を使用すると、マルテンス硬さは30N/mm2よりも小さくなってしまう。マルテンス硬さが30N/mm2より小さくなると、印画時にプリンタの印圧にてサーマルヘッドが熱転写受像シートに食い込むような形になり、印画シワ等が発生してしまうため、高画質の印画物を得ることができなくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態の熱転写受像シート1は、染料受容層5側から測定したうねり曲線の最大谷深さWvが1.80μm以下であり、且つ、染料受容層5側から測定したマルテンス硬さが30N/mm2以上140N/mm2以下である必要がある。
【0024】
本実施形態の熱転写受像シート1は、必要に応じて、基材2の染料受容層5を設ける側とは反対側に、背面押出樹脂層、背面フィルム層、背面層、文字や図柄等を付与する印刷を設けても良く、その積層順等は適宜選択される。また、その際に使用される材料は、従来公知のもので対応できる。
【0025】
下引き層4と染料受容層5には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種補助剤が適宜添加される。下引き層4と染料受容層5は、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート、ダイコート等の公知のウェットコーティング法によって、所定の塗工液を各層毎、あるいは2層以上を同時に塗工、乾燥して得ることができる。
【実施例】
【0026】
以下に、各実施例及び各比較例について説明するが、本発明は以下の各実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
両面にコロナ処理を施した厚さ約142μmのキャストコート紙(王子製紙株式会社製ミラーコート・ゴールド、坪量127.9g/m2)を基材として使用し、その一方の面に、溶融押し出し法により厚さ30μmの背面押出樹脂層を形成した。背面押出樹脂層の形成には、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製LC600A)を用いた。
【0027】
次に、基材の背面押出樹脂層側とは反対側の面と、厚さ38μmの発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製クリスパーK-1211)の一方の面とを、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製LC600A)の押出サンドイッチラミネーションにて貼り合わせた。
【0028】
発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの基材側とは反対側の面に、下記の下引き層塗布液-1を、乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。さらに、その下引き層の上に、下記の染料受容層塗布液を、乾燥後の厚みが3μmとなるように塗布、乾燥することで、染料受容層を形成し、実施例1の熱転写受像シートを得た。
【0029】
<下引き層塗布液-1>
ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製バイロン220) : 7.5部
酸化チタン(RDDI SACHTLEBEN社製、粒径450nm):7.5部
メチルエチルケトン :42.5部
トルエン :42.5部
【0030】
<染料受容層塗布液>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 :19.5部
(日信化学工業株式会社製ソルバインC)
アミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製KF-393) : 0.5部
メチルエチルケトン :40.0部
トルエン :40.0部
【0031】
(実施例2)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、基材の背面押出樹脂層側とは反対側の面に貼り合わせた発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを、厚さ75μmの発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製クリスパーK-1212)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写受像シートを得た。
【0032】
(実施例3)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、基材の背面押出樹脂層側とは反対側の面に貼り合わせた発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを、厚さ30μmの発泡ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製エコネージュNW-2)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱転写受像シートを得た。
【0033】
(実施例4)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、基材を厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製S-10)とし、基材と発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム間をドライラミネートにて接着した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱転写受像シートを得た。
【0034】
(実施例5)
実施例2で作製した熱転写受像シートにおいて、基材を厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製S-10)とし、基材と発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム間をドライラミネートにて接着した以外は、実施例2と同様にして、実施例5の熱転写受像シートを得た。
【0035】
(実施例6)
実施例3で作製した熱転写受像シートにおいて、基材を厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製S-10)とし、基材と発泡ポリプロピレンフィルム間をドライラミネートにて接着した以外は、実施例3と同様にして、実施例6の熱転写受像シートを得た。
【0036】
(実施例7)
実施例4で作製した熱転写受像シートにおいて、基材の背面押出樹脂層側とは反対側の面に貼り合わせた発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの染料受容層側のスキン層に粒子を含有させた、表面凹凸を有する発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムとした以外は、実施例4と同様にして、実施例7の熱転写受像シートを得た。
【0037】
(実施例8)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、下引き層を下記組成の下引き層塗布液-2を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の熱転写受像シートを得た。
【0038】
<下引き層塗布液-2>
ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製バイロン220) : 7.5部
酸化チタン(RDO SACHTLEBEN社製、粒径290nm): 7.5部
メチルエチルケトン :42.5部
トルエン :42.5部
【0039】
(実施例9)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、下引き層を下記組成の下引き層塗布液-3を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例9の熱転写受像シートを得た。
【0040】
<下引き層塗布液-3>
ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製バイロン220) : 4.0部
酸化チタン(RDO SACHTLEBEN社製、粒径290nm):12.0部
メチルエチルケトン :42.0部
トルエン :42.0部
【0041】
(実施例10)
実施例4で作製した熱転写受像シートにおいて、染料受容層側からエンボス加工し、うねり曲線の最大谷深さWvを1.80となるように調整し、実施例10の熱転写受像シートを得た。
【0042】
(比較例1)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、両面にコロナ処理を施した厚さ約149μmの上質紙(日本製紙株式会社製しらおい、坪量127.9g/m2)を基材として使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写受像シートを得た。
【0043】
(比較例2)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、染料受容層側にも溶融押し出し法により厚さ30μmの押出樹脂層を形成した。押出樹脂層の形成には、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製LC600A)を用いた。そして、押出樹脂層上に、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層する代わりに、乾燥後の膜厚が20μmとなるように下記の中空粒子断熱層塗布液を塗工し、断熱層を形成した。これらの点以外は実施例1と同様にして、比較例2の熱転写受像シートを得た。
【0044】
<中空粒子断熱層塗布液>
ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製SN) :55.0部
中空粒子(ダウケミカル日本株式会社製AF-1055) :30.0部
純水 :11.0部
エポキシ架橋剤 : 4.0部
(ナガセケムテックス株式会社製カルボジライトE-02)
【0045】
(比較例3)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、下引き層を下記組成の下引き層塗布液-4を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の熱転写受像シートを得た。
【0046】
<下引き層塗布液-4>
SBR樹脂 :15.6部
(日本エイアンドエル株式会社製SR-104、固形分48質量%)
酸化チタン(堺化学工業株式会社製A-110、粒径150nm) : 7.5部
水 :76.9部
【0047】
(比較例4)
実施例4で作製した熱転写受像シートにおいて、染料受容層側からエンボス加工し、うねり曲線の最大谷深さWvを2.50となるように調整し、比較例4の熱転写受像シートを得た。
【0048】
実施例1~10及び比較例1~4の熱転写受像シートのうねり曲線の最大谷深さWv及びマルテンス硬さを、表1に示す。なお、熱転写受像シートの表面のうねり曲線の最大谷深さWvは、株式会社小坂研究所製の接触式の微細形状測定機ET4000を用い、ISO 4287:1997に規定の方法に準じて測定した。また、熱転写受像シートの表面のマルテンス硬さは、フィッシャー社製の微小硬さ試験機ピコデンターHM500を用い、ISO 14577に規定の方法に準じて測定した。
【0049】
【0050】
実施例1~10及び比較例1~4の熱転写受像シートと、熱転写記録媒体と、解像度300×300DPIの高速印画サーマルプリンタ(印画速度:2.0msec/line)とを使用して、昇華転写方式の印画(グレーベタ)を行った。熱転写記録媒体は以下のようにして作製した。
【0051】
<熱転写記録媒体の作製方法>
一方の面に易接着処理を施した厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として使用し、その他方の面(非易接着処理面)に、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように下記組成の耐熱滑性層塗布液を塗布し、乾燥させて、耐熱滑性層付き基材を得た。次に、耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように下記組成の熱転写層塗布液を塗布し、乾燥させて熱転写層を形成し、熱転写記録媒体を得た。
【0052】
<耐熱滑性層塗布液>
シリコーン系アクリルグラフトポリマー :50.0部
(東亜合成株式会社製US-350)
メチルエチルケトン :50.0部
【0053】
<熱転写層塗布液>
C.I.ソルベントブルー36 : 2.5部
C.I.ソルベントブルー63 : 2.5部
ポリビニルアセタール樹脂 : 5.0部
トルエン :45.0部
メチルエチルケトン :45.0部
【0054】
得られた各印画物について、画質の評価を行なった。画質の評価基準は、以下の通りである。すなわち、印画物の濃度が均一である場合には、画質が優れていると評価し、表1においては○印で示した。また、印画物に濃淡ムラが発生した場合には、画質が実用上問題があると評価し、表1においては×印で示した。
【0055】
表1に示す結果から分かるように、染料受容層側から測定したうねり曲線の最大谷深さWvを1.80μm以下、且つ、染料受容層側から測定したマルテンス硬さを30N/mm2以上140N/mm2以下に調整することにより、画質に優れた熱転写受像シートを作製することができる。
【0056】
これに対して、比較例1の熱転写受像シートは、基材をマットコート紙に変更することにより、うねり曲線の最大谷深さWvが2.30μmとなってしまったため、画質に優れた熱転写受像シートを得ることができなかった。
比較例2の熱転写受像シートは、断熱層を中空粒子にて形成したことにより、うねり曲線の最大谷深さWvが2.00μm、マルテンス硬さが180N/mm2となってしまったため、画質に優れた熱転写受像シートを得ることができなかった。
【0057】
比較例3の熱転写受像シートは、下引き層にSBR樹脂を用いたことにより、マルテンス硬さが20N/mm2となってしまったため、画質に優れた熱転写受像シートを得ることができなかった。
比較例4の熱転写受像シートは、エンボス加工にてうねり曲線の最大谷深さWvが2.50μmとなってしまったため、画質に優れた熱転写受像シートを得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の熱転写受像シートは、昇華転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速化、高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラーで形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 ・・・熱転写受像シート
2 ・・・基材
3 ・・・多孔質フィルム層
4 ・・・下引き層
5 ・・・染料受容層