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特許7069910音響機器、サーバ、音響システム、音響機器の制御方法およびサーバの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】音響機器、サーバ、音響システム、音響機器の制御方法およびサーバの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/52 20060101AFI20220511BHJP
   H04R 29/00 20060101ALI20220511BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H03F1/52
H04R29/00 310
H04R3/00 101Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018053821
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019169756
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五藤 三貴
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087938(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164380(WO,A1)
【文献】特開平11-215683(JP,A)
【文献】特開2009-038561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/52
H04R 29/00
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバとネットワークを介して接続されるネットワークインタフェースと、
前記ネットワークインタフェースを介して受信したオーディオ信号を増幅するアンプと、
前記アンプへ供給される電力の、または前記アンプの出力の電流値及び電圧値を検出する検出回路と、
前記検出回路で検出した前記電流値及び前記電圧値を取得し、前記電流値及び前記電圧値解析のために前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信する送信部と、
を備えた、音響機器。
【請求項2】
前記ネットワークインタフェースを介して受信したオーディオ信号に対して信号処理を行なう信号処理部を備え、
前記信号処理部は、前記電流値及び前記電圧値を取得し、前記電流値及び前記電圧値を前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信することにより、前記送信部を構成する、
請求項1に記載の音響機器。
【請求項3】
前記アンプに電力を供給する電源ユニットを備え、
前記送信部は、前記電源ユニットが供給する前記電流値および前記電圧値を取得し、前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信する、
請求項1または請求項2に記載の音響機器。
【請求項4】
前記電源ユニットに交流電力を供給する電力供給部を備え、
前記送信部は、前記電力供給部が供給する前記交流電力の前記電流値および前記電圧値を取得し、前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信する、
請求項3に記載の音響機器。
【請求項5】
前記電流値及び前記電圧値を解析する解析部をさらに備える
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の音響機器。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の音響機器と、前記ネットワークを介して接続されるネットワークインタフェースと、
ネットワークインタフェースを介して、前記音響機器から送信された、前記電流値および前記電圧値を前記音響機器から受信する、受信部と、
前記受信部で受信した前記電流値及び前記電圧値を解析する解析部と、
を備えるサーバ。
【請求項7】
前記解析部の解析結果に基づいて、前記音響機器のパラメータを制御する制御部を備えた、
請求項6に記載のサーバ。
【請求項8】
前記解析部は、急峻なピーク特性を有するインピーダンスの周波数特性を高精度解析する
請求項6または請求項7に記載のサーバ。
【請求項9】
音響機器およびサーバを備え、
前記音響機器は、
前記サーバとネットワークを介して接続される第1ネットワークインタフェースと、
前記第1ネットワークインタフェースを介して受信したオーディオ信号を増幅するアンプと、
前記アンプへ供給される電力の、または前記アンプの出力の電流値及び電圧値を検出する検出回路と、
前記検出回路で検出した、前記電流値及び前記電圧値を取得し、前記電流値及び前記電圧値を前記第1ネットワークインタフェースを介して送信する送信部と、
を備え、
前記サーバは、
前記音響機器と前記ネットワークを介して接続される第2ネットワークインタフェースと、
前記第2ネットワークインタフェースを介して、前記音響機器の前記電流値及び前記電圧値を前記音響機器から受信する、受信部と、
前記受信部で受信した前記電流値及び前記電圧値を解析する解析部と、
を備えた、
音響システム。
【請求項10】
サーバとネットワークを介して接続されるネットワークインタフェースを介して受信したオーディオ信号をアンプで増幅し、
前記アンプへ供給される電力の、または前記アンプの出力の電流値及び電圧値を検出し、
検出した前記電流値及び前記電圧値を取得し、
前記電流値及び前記電圧値解析のために前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信する、
音響機器の制御方法。
【請求項11】
前記ネットワークインタフェースを介して受信したオーディオ信号に対して信号処理を行う信号処理部により、前記電流値及び前記電圧値を取得し、前記電流値及び前記電圧値を前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信する、
請求項10に記載の音響機器の制御方法。
【請求項12】
前記アンプに電力を供給する電源ユニットが供給する前記電流値および前記電圧値を取得し、
前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信する、
請求項10または請求項11に記載の音響機器の制御方法。
【請求項13】
前記電源ユニットに交流電力を供給する電力供給部の前記電流値および前記電圧値を取得し、
前記ネットワークインタフェースを介して前記サーバに送信する、
請求項12に記載の音響機器の制御方法。
【請求項14】
前記電流値及び前記電圧値を解析する、
請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の音響機器の制御方法。
【請求項15】
請求項1乃至5の何れかに記載の音響機器に前記ネットワークを介して接続されるネットワークインタフェースを介して、前記音響機器から送信された、前記音響機器の前記電流値と前記電圧値を前記音響機器から受信し、
受信した前記電流値及び前記電圧値を解析する、
サーバの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、オーディオ信号を入力または出力する音響機器、サーバ、音響システム、音響機器の制御方法およびサーバの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、DSP(Digital Signal Processor)6の信号をエミュレータ10に出力することで、エミュレータ10がDSP6のデバッグを行なうことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平07-111686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音響機器は、使用中に音を止めないことが重要である。つまり、音響機器は、音が止まるような不具合が発生するか否かを予測することが重要である。特許文献1には、不具合の発生を予測することは開示されていない。
【0005】
この発明の一実施形態は、音響機器の不具合を予測するための情報を、該音響機器の外部から確認することができる音響機器、サーバ、音響システム、音響機器の制御方法、およびサーバの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
音響機器は、ネットワークインタフェースと、前記ネットワークインタフェースを介して受信したオーディオ信号を増幅するアンプと、前記アンプの出力値を取得し、該出力値を前記ネットワークインタフェースを介して送信する送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明の一実施形態は、音響機器の不具合を予測するための情報を、該音響機器の外部から確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】音響機器1の構成を示すブロック図である。
図2】音響機器1の動作を示すフローチャートである。
図3】音響機器1と、該音響機器1に接続されるミキサ11と、からなる音響システム100の構成を示すブロック図である。
図4】ミキサ11の構成を示すブロック図である。
図5】ミキサ11の動作を示すフローチャートである。
図6】スピーカ13の構成を示すブロック図である。
図7】アンプ109のより詳細な構成を示すブロック図である。
図8】変形例1に係るアンプ109の詳細な構成を示すブロック図である。
図9】変形例2に係るアンプ109の詳細な構成を示すブロック図である。
図10】変形例3に係るアンプ109の詳細な構成を示すブロック図である。
図11】インピーダンスの周波数特性を示す図である。
図12】インピーダンスの周波数特性を示す図である。
図13】音響システムの構成を示すブロック図である。
図14】ミキサ11の構成を示すブロック図である。
図15】信号処理部106で算出したインピーダンスの周波数特性を示した図である。
図16】信号処理部204で算出したインピーダンスの周波数特性を示した図である。
図17】ミキサ11の表示器201における表示例を示す図である。
図18】無音時に電源を遮断するアンプ109の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態である音響機器1の構成を示すブロック図である。図2は、音響機器1の動作を示すフローチャートである。図3は、音響機器1と、該音響機器1に接続されるミキサ11と、からなる音響システム100の構成を示すブロック図である。図4は、ミキサ11の構成を示すブロック図である。図5は、ミキサ11の動作を示すフローチャートである。
【0010】
音響機器1は、ネットワークインタフェース(I/F)103、アンプ109、および送信部150を備えている。ネットワークI/F103は、ネットワークを介して外部の装置(例えばミキサ11)からオーディオ信号を受信する(S11)。ネットワークI/F103は、受信したオーディオ信号をアンプ109に入力する。なお、図1では省略されているが、音響機器1は、デジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換するD/A変換器を備えている。
【0011】
なお、音響機器1は、ネットワークI/F103が受信したオーディオ信号を処理する信号処理部(DSP:Disital Signal Processor)を備えていてもよい。
【0012】
アンプ109は、入力されたアナログオーディオ信号を増幅して出力する(S12)。アナログオーディオ信号は、不図示のスピーカに入力され、音として出力される。
【0013】
送信部150は、アンプ109の出力値を取得する(S13)。送信部150は、例えば、アンプ109に設けられた電流センサまたは電圧センサを介して、アンプ109の出力値の一例である電流値または電圧値を取得する。
【0014】
送信部150は、取得したアンプ109の出力値を、ネットワークI/F103を介して送信する(S14)。例えば、送信部150は、ネットワークを介して接続されるミキサ11に、該出力値を送信する。
【0015】
ミキサ11は、図4に示す様に、ネットワークI/F205と、解析部210と、を備えている。ネットワークI/F205は、該出力値を受信する(S21)。つまり、ネットワークI/F205は、受信部に相当する。解析部210は、受信した出力値を解析する(S22)。ミキサ11は、解析部210の解析結果により、音響機器1に不具合が生じる可能性があるか否かを予測する。例えば、電圧値が異常に高い値を示す、または電流値が異常に高い値を示した場合には、音響機器1において音が止まるような不具合が生じる可能性がある。
【0016】
この様にして、本発明の一実施形態は、音響機器1の不具合を予測するための情報を、該音響機器1の外部(例えばミキサ11)から確認することができる。
【0017】
次に、図6は、スピーカ13の構成を示すブロック図である。スピーカ13は、音響機器1の具体例の1つである。
【0018】
スピーカ13は、表示器101、ユーザインタフェース(I/F)102、ネットワークインタフェース(I/F)103、フラッシュメモリ104、RAM105、信号処理部106、CPU107、D/A変換器108、アンプ109、スピーカユニット111、電源ユニット131、およびAC供給部132を備えている。
【0019】
表示器101、ユーザI/F102、ネットワークI/F103、フラッシュメモリ104、RAM105、信号処理部106、CPU107、D/A変換器108、アンプ109、および信号処理部106は、バス151に接続されている。スピーカユニット111は、アンプ109に接続されている。
【0020】
電源ユニット131は、アンプ109を駆動するための電力(直流電力)を供給する。なお、電源ユニット131は、スピーカ13の各構成に対して電力を供給してもよい。例えば、電源ユニット131は、CPU107が駆動するための電力を供給してもよい。
【0021】
AC供給部132は、電源ユニット131に交流電力を供給する電力供給部である。AC供給部132は、設備用の交流電源または電源車等に接続される。AC供給部132は、これら設備用の交流電源または電源車等から交流電力を受け、該交流電力を電源ユニット131に供給する。
【0022】
表示器101は、例えばLCD(LiquidCrystal Display)またはOLED(Organic Light-Emitting Diode)等からなり、種々の情報を表示する。ユーザI/F102は、スイッチ、摘まみ、またはタッチパネル等からなり、ユーザの操作を受け付ける。ユーザI/F102がタッチパネルである場合、該ユーザI/F102は、表示器101とともに、GUI(Graphical User Interface以下略)を構成する。
【0023】
CPU107は、記憶媒体であるフラッシュメモリ104に記憶されているプログラムをRAM105に読み出して、所定の機能を実現する。例えば、CPU107は、表示器101にユーザの操作を受け付けるための画像を表示し、ユーザI/F102を介して、当該画像に対する選択操作等を受け付けることで、GUIを実現する。
【0024】
なお、CPU107が読み出すプログラムは、自装置内のフラッシュメモリ104に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU107は、該サーバから都度プログラムをRAM105に読み出して実行すればよい。
【0025】
ネットワークI/F103は、ネットワークを介して外部の装置(例えばミキサ11)からオーディオ信号を受信する(図2のS11と同じ動作である)。
【0026】
信号処理部106は、各種信号処理を行なうためのDSPから構成される。信号処理部106は、ネットワークI/F103を介して入力されたオーディオ信号に、ミキシング、イコライジング、またはコンプレッシング等の信号処理を施す。信号処理部106は、信号処理後のオーディオ信号を、D/A変換器108に出力する。
【0027】
D/A変換器108は、入力したオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換する。アンプ109は、該アナログオーディオ信号を増幅して出力する(図2のS12と同じ動作である)。アナログオーディオ信号は、スピーカユニット111に入力され、音として出力される。
【0028】
図7は、アンプ109のより詳細な構成を示すブロック図である。アンプ109は、増幅素子90と、電流電圧(VI)検出回路91と、を備えている。増幅素子90は、電源ユニット131に接続される。増幅素子90は、電源ユニット131からの電力供給を受けることにより、D/A変換器108から出力されるアナログオーディオ信号を増幅して出力する。
【0029】
VI検出回路91は、増幅素子90の後段に接続され、増幅素子90の出力値の一例である電流値および電圧値を検出する。信号処理部106は、VI検出回路91から、電流値および電圧値を取得する(図2のS13と同じ動作である)。信号処理部106は、取得した出力値をネットワークI/F103を介して送信する(図2のS14と同じ動作である)。つまり、この例では、信号処理部106は、アンプ109の出力値を取得し、該出力値をネットワークI/F103を介して送信することにより、図1に示した送信部150を構成する。
【0030】
この例では、ネットワークI/F103を介してオーディオ信号を受信して処理するDSPによって送信部150が構成される。したがって、音響機器1は、別途、アンプ109の出力値を送信するための新たなハードウェアを備える必要がない。また、送信部150は、CPU107が読み出すソフトウェアの動作により構成されてもよい。この場合も、音響機器1は、別途、出力値を送信するための新たなハードウェアを備える必要なく、アンプ109の出力値を送信することができる。
【0031】
図8は、変形例1に係るアンプ109の詳細な構成を示すブロック図である。変形例1に係るアンプ109は、VI検出回路91に代えて、VI検出回路901を備えている。その他の構成は、図7に示したブロック図と同じ構成である。
【0032】
VI検出回路901は、電源ユニット131とアンプ109との間に接続される。VI検出回路901は、電源ユニット131がアンプ109に供給する直流電力の値(電流値および電圧値)を検出する。信号処理部106は、VI検出回路901から、電源ユニット131の電流値および電圧値を取得する。信号処理部106は、取得した電源ユニット131の電流値および電圧値をネットワークI/F103を介して送信する。つまり、この例では、信号処理部106は、電源ユニット131からの電流値および電圧値を取得し、ネットワークI/F103を介して送信する。
【0033】
これにより、解析部210は、電源ユニット131が供給する直流電力に起因する不具合が生じる可能性があるか否かを予測することができる。例えば、電源ユニット131における各種部品に不具合が生じると、電圧値が低下したり、電流値が低下したりする可能性がある。したがって、電源ユニット131の電圧値が異常に低い値を示す、または電流値が異常に低い値を示した場合には、音響機器1において音が止まるような不具合が生じる可能性がある。
【0034】
したがって、変形例1は、音響機器1の不具合を予測するための情報として、電源ユニット131の直流電力の状態を、該音響機器1の外部(例えばミキサ11)から確認する。
【0035】
図9は、変形例2に係るスピーカ13の詳細な構成を示すブロック図である。変形例2に係るスピーカ13は、VI検出回路902を備えている。
【0036】
VI検出回路902は、AC供給部132と電源ユニット131との間に接続される。VI検出回路902は、AC供給部132が電源ユニット131に供給する交流電力の値(電流値および電圧値)を検出する。信号処理部106は、VI検出回路902から、AC供給部132の電流値および電圧値を取得する。信号処理部106は、取得したAC供給部132の電流値および電圧値をネットワークI/F103を介して送信する。つまり、この例では、信号処理部106は、AC供給部132の出力する交流電力の電流値および電圧値を取得し、ネットワークI/F103を介して送信する。
【0037】
これにより、解析部210は、AC供給部132の交流電力に起因する不具合が生じる可能性があるか否かを予測することができる。例えば、設備側の電源の電圧が異常に低下した場合、音響機器1において音が止まるような不具合が生じる可能性がある。
【0038】
よって、変形例2は、音響機器1の不具合を予測するための情報として、AC供給部132の交流電力の状態を、該音響機器1の外部(例えばミキサ11)から確認する。
【0039】
なお、図7図8、および図9に示した構成は、それぞれ単独でも実現可能であるが、図7図8、および図9に示した構成を組み合わせることも可能である。
【0040】
次に、図10は、変形例3に係るアンプ109の詳細な構成を示すブロック図である。変形例3に係るアンプ109は、信号処理部106が解析部110Aを備えている。その他の構成は、図7に示したブロック図と同じ構成である。
【0041】
なお、図10の例では、信号処理部106が解析部110Aの機能を実現しているが、別のハードウェアにより解析部110Aを構成してもよい。また、CPU107がソフトウェアにより解析部110Aの機能を実現してもよい。
【0042】
解析部110Aは、VI検出回路91で検出されたアンプ109の電流値および電圧値を解析する。解析部110Aは、例えば、解析の一例として、インピーダンスの周波数特性を算出する。解析部110Aは、電流値および電圧値から算出されるインピーダンスの時間軸の信号を、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)によって周波数軸の信号に変換する。解析部110Aは、当該インピーダンスの周波数特性を出力する。解析結果は、図10に示す様にネットワークI/F103を介して外部の装置に出力されるか、またはCPU107によって表示器101に表示される。
【0043】
図11は、インピーダンスの周波数特性を示す図である。グラフの横軸は周波数(Hz)であり、縦軸はインピーダンス(Ω)である。アンプ109を含む一般的なアンプは、各部品の電気特性、あるいはスピーカユニットの部品(例えばスピーカコーンおよびエンクロージャ)の機械的特性等により、インピーダンスに共振点が生じる。図10の例では、100Hz付近に共振点が存在する。
【0044】
そして、スピーカユニット111に不具合が生じると、アンプ109のインピーダンスが短時間に急激に変化する可能性がある。例えば、図12に示す様に、特異的にインピーダンスが高い周波数(特異点)が生じると、電流が流れなくなり、アンプ109がスピーカを制動できない状態となる。また、特異的にインピーダンスが低い周波数(特異点)が生じると、スピーカコーンが瞬時的に最大振幅に達して、該スピーカコーンが振動できない状態となる。これらの状態が継続すると、アンプ109またはスピーカユニット111に不具合が生じて、音が止まる可能性がある。
【0045】
したがって、音響機器1は、インピーダンスの周波数特性を算出して、解析結果として外部に出力する(または表示器101に表示する)。これにより、ユーザは、インピーダンスの周波数特性を見ることで、音が止まる不具合が発生するか否かを、事前に予測することができる。または、CPU107は、上記のような特異点が生じた場合に、表示器101に警告表示を行なう等することで、ユーザは、音が止まる可能性の不具合が発生するか否かを、事前に予測することができる。
【0046】
次に、図13は、音響システム100Aの構成を示すブロック図である。音響システム100Aは、ミキサ11、複数のスイッチ(スイッチ12A、スイッチ12B)、および複数のスピーカ(スピーカ13A~スピーカ13F)を備えている。
【0047】
各機器は、ネットワークケーブルを介して接続されている。例えば、ミキサ11は、スイッチ12Aに接続されている。スイッチ12Aは、スイッチ12Bおよびスピーカ13Aに接続されている。スイッチ12Bは、スイッチ12Aおよびスピーカ13Dに接続されている。スピーカ13A、スピーカ13B、およびスピーカ13Cは、スイッチ12Aに、デイジーチェーンで接続されている。また、スピーカ13D、スピーカ13E、およびスピーカ13Fも、スイッチ12Bに、デイジーチェーンで接続されている。ただし、機器間の接続は、図13に示す態様に限るものではない。また、各機器は、ネットワークで接続される必要はなく、例えばUSBケーブル、HDMI(登録商標)、またはMIDI等の通信線で接続されていてもよいし、デジタルオーディオケーブルで接続されていてもよい。
【0048】
ミキサ11は、サーバの一例である。ミキサ11は、ネットワークで接続されている他の機器からオーディオ信号を入力する、または他の機器に対してオーディオ信号を出力する。スピーカ13A~スピーカ13Fは、音響機器の一例であり、スピーカ13と同じ構成および機能を有する。なお、サーバは、ミキサ11に限らない。例えば、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置も、サーバの一例である。また、オーディオの録音、編集、またはミキシング等の作業を行なうためのハードウェアまたはソフトウェアからなるシステム(DAW:Digital Audio Workstation)も、サーバの一例である。
【0049】
図14は、ミキサ11の構成を示すブロック図である。ミキサ11は、表示器201、ユーザI/F202、オーディオI/O(Input/Output)203、信号処理部(DSP)204、ネットワークI/F205、CPU206、フラッシュメモリ207、およびRAM208を備えている。これら構成は、バス271を介して接続されている。
【0050】
CPU206は、ミキサ11の動作を制御する制御部である。CPU206は、記憶媒体であるフラッシュメモリ207に記憶された所定のプログラムをRAM208に読み出して実行することにより各種の動作を行なう。例えば、CPU206は、ネットワークI/F205を介して、スピーカ13A~スピーカ13Fから各アンプの電流値および電圧値を受信する。
【0051】
なお、CPU206が読み出すプログラムも、自装置内のフラッシュメモリ207に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU206は、該サーバから都度プログラムをRAM208に読み出して実行すればよい。
【0052】
信号処理部204は、各種信号処理を行なうためのDSPから構成される。信号処理部204は、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介して入力されるオーディオ信号に、ミキシング、イコライジング、またはコンプレッシング等の信号処理を施す。信号処理部204は、信号処理後のオーディオ信号を、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介して、スピーカ13A等の他の機器に出力する。
【0053】
また、信号処理部204は、CPU206から、各アンプの電流値および電圧値を入力する。信号処理部204は、解析部210を構成する。信号処理部204の解析部210は、スピーカ13A~スピーカ13Fから各アンプの出力値(アンプ109の電流値および電圧値)を解析する。信号処理部204の解析部210も、例えば、インピーダンスの周波数特性を算出する。ただし、信号処理部204は、スピーカ13A~スピーカ13Fの信号処理部106よりも高性能であり、高い解析機能を有する。そのため、信号処理部204は、スピーカ13A~スピーカ13Fの信号処理部106よりも高い分解能で、インピーダンスの周波数特性を算出することができる。これにより、信号処理部204は、不具合につながる可能性のある特異点を、高精度に求めることができる。
【0054】
図15は、信号処理部106で算出したインピーダンスの周波数特性を示した図であり、図16は、信号処理部204で算出したインピーダンスの周波数特性を示した図である。
【0055】
図15および図16に示す様に、信号処理部106および信号処理部204が算出するインピーダンスの周波数特性は、デジタル信号であるため、離散値である。離散値の数、すなわち分解能は、DSPにより実現されるデジタルフィルタのタップ数に依存し、DSPのリソースに依存する。ミキサ11の信号処理部204は、多数のチャンネルのオーディオ信号を処理するために、高性能かつ多数のDSPから実現される。一方で、スピーカ13に設けられた信号処理部106は、ミキサ11から送信された1または数チャンネル分のオーディオ信号を処理するため、ミキサ11の信号処理部204のDSPよりも相対的に性能が低いDSPが用いられる。そのため、図15および図16に示す様に、信号処理部106が算出するインピーダンスの周波数特性は、ミキサ11の信号処理部204が算出するインピーダンスの周波数特性よりも分解能が低くなる。したがって、信号処理部106が算出したインピーダンスの周波数特性では、急峻なピーク特性(高いQ値)を有する共振周波数を抽出できない可能性がある。これに対して、図16に示す様に、信号処理部204が算出したインピーダンスの周波数特性は、分解能が高いために、急峻なピーク特性を有する共振周波数も的確に抽出することができる。
【0056】
この様にして、ミキサ11は、各スピーカからアンプの出力値を受信し、各スピーカでは算出することができない程度の高精度な解析を行なうことができる。特に、インピーダンスが短時間で急激に変化する場合、各スピーカ単体では抽出できない程度の急峻な特性が生じる可能性があるが、ミキサ11により高精度な解析を行なうことで、ユーザは、不具合が生じる可能性を事前に予測することができる。
【0057】
また、ミキサ11では、ユーザは、複数のスピーカの解析結果を一覧することができる。例えば、ミキサ11は、図17に示す様に、ミキサ11の表示器201において複数のスピーカ13A、スピーカ13B、スピーカ13C,およびスピーカ13Dのインピーダンスの周波数特性を表示する。
【0058】
この場合、ユーザは、設置された複数のスピーカから、不具合が生じる可能性のあるスピーカを容易に特定することができる。そのため、ユーザは、スピーカの設置数が多くなった場合でも、どのスピーカにどのオーディオ信号を送信させて、どの様な信号処理をさせるか、容易に設定し直すことができる。例えば、あるスピーカ(第1のスピーカ)において不具合が生じる可能性が高いと判断した場合に、ミキサ11の設定を変更して、別のスピーカ(第2のスピーカ)に対して第1のスピーカに設定されていたバスを、第2のスピーカに置き換えることで、第2のスピーカから当該バスのオーディオ信号を出力させることができる。
【0059】
また、ユーザは、表示器201の表示を見て、特定のスピーカでのみ不具合が生じる可能性が高いのか、あるいは複数のスピーカにおいて連動して不具合が生じる可能性が高いのか、判断することができる。例えば、図17に示す様に、複数のスピーカ13A、スピーカ13B、スピーカ13C,およびスピーカ13Dにおいて、同じ様な特異点が生じた場合、ミキサ11のユーザは、各スピーカに個別の問題が生じているのではなく、複数の機器に連動して生じる問題であるとわかる。そのため、設備側の電源に起因する問題や、スピーカが設置されている空間の問題、あるいは複数のスピーカを搭載する設備(例えばアレイ状に設置するためのラック)の問題、等の様に、複数の機器に共通する原因を絞り込むことができる。
【0060】
また、上述の様に、ミキサ11のユーザは、特定のスピーカに不具合が生じる可能性が高いと判断した場合には、特定のスピーカに送信するオーディオ信号を別のスピーカに送信する設定を行なう等して、適切な対応を取ることができる。また、ミキサ11のCPU206は、所定周波数帯域内に急峻に高い値を示すインピーダンス特性(Q値の高いピーク)が存在する場合に、当該スピーカに送信するオーディオ信号を、別のスピーカに送信する動作を行なってもよい。この場合、CPU206は、解析部の解析結果に基づいて、音響機器のパラメータを制御する制御部として機能する。
【0061】
なお、本実施形態では、インピーダンスの周波数特性を算出する例を示したが、解析は、インピーダンスの周波数特性の算出に限るものではない。例えば、平均電流値、平均電圧値を求めてもよいし、瞬時値と平均値とを対比してもよい。アンプ109の出力値は、交流信号であるため、交流信号の解析に用いられる手法は、どの様な手法であっても適用することができる。
【0062】
また、アンプの出力値(電圧値および電流値)は、アナログオーディオ信号そのものであるため、音としての解析が可能である。ユーザは、アンプの出力値(電圧値および電流値)を音として聞くことで、例えばノイズ音が大きい場合に不具合が生じる可能性が高いと判断することができる。
【0063】
なお、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0064】
例えば、図18は、消費電力の低減のために、無音時に電源を遮断するアンプ109の構成を示すブロック図である。図18において、アンプ109は、増幅素子90、VI検出回路91、入力検出回路95、およびスイッチ50を備えている。
【0065】
入力検出回路95は、増幅素子90の前段に接続され、増幅素子90に入力されるオーディオ信号のレベルを検出する。CPU107は、入力検出回路95の検出結果に基づいてオーディオ信号が入力されているか否かを判断する。例えば、CPU107は、入力検出回路95で検出されるオーディオ信号のレベルが所定値以上である場合に、オーディオ信号が入力されていると判断する。CPU107は、オーディオ信号のレベルが所定値未満である場合に、オーディオ信号が入力されていないと判断する。CPU107は、オーディオ信号が入力されていないと判断した場合に、スイッチ50をオフにして、増幅素子90の電源を遮断する。これにより、CPU107は、無駄な消費電力を低減する。
【0066】
一方、CPU107は、スイッチ50をオフにした場合でも、VI検出回路91で検出した電圧値が所定の閾値を超える場合、スイッチ50をオンにする。増幅素子90の電源が遮断されると、スピーカユニットのコーンは、自由に振動する。したがって、スピーカユニットのコーンは、他のスピーカからの放音の影響で振動する場合がある。スピーカユニットのコーンが振動すると、逆起電力によって、増幅素子90に損傷を与える可能性がある。特に、大規模空間におけるPA(Public Address)システムの場合、複数のスピーカを多数、隣接して設置する。また、各スピーカの音量は非常に大きくなる。したがって、複数のスピーカ間の振動が互いに大きく影響を及ぼし合うことになる。
【0067】
そこで、CPU107は、増幅素子90の電源を遮断していても、VI検出回路91で検出した電圧値が所定の閾値を超える場合、スイッチ50をオンにして、電源をオンする。増幅素子90に電源が供給されると、スピーカユニットのコーンは、当該電源の電力(出力信号の電力)によって動作が制御される。これにより、スピーカユニットのコーンが振動することで生じる逆起電力によって増幅素子90の損傷を防止する。
【0068】
そして、図13に示したように、各スピーカの出力値をミキサ11に送信する場合、ミキサ11において、各スピーカの逆起電力を監視することができる。この場合、ミキサ11は、逆起電力が所定値を越えたスピーカに対して、電源をオンする指示を送信する。この様に、アンプの出力値を外部に出力することで、ユーザは、サーバから各スピーカの状態を監視することができる。音響機器は、消費電力を低減しながらも、不具合が生じることを未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
11…ミキサ
12A,12B…スイッチ
13,13A、13B,13C,13D,13E,13F…スピーカ
50…スイッチ
90…増幅素子
91…VI検出回路
95…入力検出回路
100…音響システム
101…表示器
102…ユーザI/F
103…ネットワークI/F
104…フラッシュメモリ
105…RAM
106…信号処理部
107…CPU
108…D/A変換器
109…アンプ
110A…解析部
111…スピーカユニット
131…電源ユニット
132…AC供給部
150…送信部
151…バス
201…表示器
202…ユーザI/F
203…オーディオI/F
204…信号処理部
205…ネットワークI/F
206…CPU
207…フラッシュメモリ
208…RAM
210…解析部
271…バス
901,902…VI検出回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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