(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/029 20060101AFI20220511BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220511BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20220511BHJP
A61B 5/087 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61B5/029
A61B5/113
A61B5/1455
A61B5/087
(21)【出願番号】P 2018057116
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅川 英之
(72)【発明者】
【氏名】赤松 学
(72)【発明者】
【氏名】逆井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】小澤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】松下 和征
(72)【発明者】
【氏名】湯川 浩平
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-231012(JP,A)
【文献】特開2012-239668(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190413(WO,A1)
【文献】特開2011-217792(JP,A)
【文献】特開2016-140553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/029
A61B 5/113
A61B 5/1455
A61B 5/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸の停止期間を規定する規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸を再開するよう再開通知を通知する通知手段と、
前記被測定者の呼吸の再開によって前記被測定者の体内に取り込まれた酸素が予め定められた部位に達するまでの時間を表す酸素循環時間を測定する測定手段と、
前記被測定者の呼吸の有無を検知する検知手段と、を備え、
前記通知手段は、前記検知手段で前記被測定者の呼吸の停止が検知されてからの経過時間が前記規定時間に達した場合に、前記再開通知を通知する
生体情報測定装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記通知手段による前記再開通知の通知後に前記検知手段によって前記被測定者の呼吸が検知された場合に、前記酸素循環時間を測定する
請求項
1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記被測定者の鼻口における空気の流れによって前記被測定者の呼吸の有無を検知する
請求項
1又は請求項
2記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記被測定者における脈波の振幅の変化によって前記被測定者の呼吸の有無を検知する
請求項
1又は請求項
2記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記被測定者の胸部の動きによって前記被測定者の呼吸の有無を検知する
請求項
1又は請求項
2記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
呼吸の停止期間を規定する規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸を再開するよう再開通知を通知する通知手段と、
前記被測定者の呼吸の再開によって前記被測定者の体内に取り込まれた酸素が予め定められた部位に達するまでの時間を表す酸素循環時間を測定する測定手段と、
前記被測定者、又は前記被測定者の生体情報を測定する測定者の操作によって通知される情報であって、前記被測定者の呼吸が停止したこと示す情報を受け付ける受付手段
と、を備え、
前記通知手段は、前記受付手段で前記被測定者の呼吸が停止したこと示す情報を受け付けてからの経過時間が前記規定時間に達した場合に、前記再開通知を通知す
る
生体情報測定装置。
【請求項7】
前記測定手段は、前記再開通知の通知後に前記受付手段によって前記被測定者が呼吸を開始したこと示す情報を受け付けた場合に、前記酸素循環時間を測定する
請求項
6記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記測定手段は、前記通知手段により前記再開通知が通知されてから前記被測定者が呼吸を再開するまでの期間が予め定めた期間以内の場合に、前記酸素循環時間を測定する
請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
前記測定手段は、前記通知手段により前記再開通知が通知されてから前記被測定者が呼吸を再開するまでの期間が予め定めた期間を超えた場合、前記酸素循環時間の測定を中止する
請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項10】
呼吸の停止期間を規定する規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸を再開するよう再開通知を通知する通知手段と、
前記被測定者の呼吸の再開によって前記被測定者の体内に取り込まれた酸素が予め定められた部位に達するまでの時間を表す酸素循環時間を測定する測定手段と、を備え、
前記通知手段は、前記被測定者が呼吸を停止するよう前記被測定者に呼吸の停止通知を通知し、前記停止通知を通知してからの経過時間が前記規定時間に達した場合に、前記再開通知を通知
し、
前記測定手段は、前記通知手段によって前記再開通知が通知された後から、更に予め定めた時間が経過した後に、前記酸素循環時間を測定す
る
生体情報測定装置。
【請求項11】
前記通知手段は、前記停止通知を通知するまでの残り時間を前記被測定者に通知する
請求項
10記載の生体情報測定装置。
【請求項12】
前記通知手段は、前記被測定者の呼吸の停止中に前記規定時間に達するまでの残り時間を前記被測定者に通知する
請求項1~請求項
11の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項13】
前記規定時間が前記被測定者の各々に対して調整される
請求項1~請求項
12の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項14】
前記測定手段は、前記被測定者の予め定められた部位における血中の酸素濃度を示す酸素飽和度を用いて、前記酸素循環時間を測定する
請求項1~請求項
13の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項15】
前記測定手段は、前記被測定者の予め定められた部位として、前記被測定者の指における血中の酸素濃度を示す酸素飽和度を用いて、前記酸素循環時間を測定する
請求項
14記載の生体情報測定装置。
【請求項16】
前記被測定者、又は前記被測定者の生体情報を測定する測定者の操作を受け付ける入力装置と、
前記再開通知を表示する表示装置と、を備えた
請求項1~請求項
15の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1~請求項
16の何れか1項に記載の生体情報測定装置の各手段として機能させるための生体情報測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、呼吸の気流の時間変化を示す気流信号、及び、酸素飽和度の時間変化を示す酸素飽和度信号を取得する信号取得部と、前記気流信号における第一時刻と、前記第一時刻での呼吸再開に対応した酸素飽和度の上昇を示す前記酸素飽和度信号における第二時刻との時間差に基づいて血液の酸素循環時間を測定する循環時間算出部とを有する循環時間測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、体内に取り込んだ酸素が予め定めた部位まで運搬されるのに要する時間を示す酸素循環時間を用いて生体情報を測定する測定手法の開発が進められている。
【0005】
酸素循環時間は例えば酸素飽和度から推定されるが、酸素飽和度を用いて酸素循環時間を測定する場合、体内に取り込んだ酸素による酸素飽和度の上昇が検知されるように、被測定者は酸素循環時間の測定前に息を止め、酸素飽和度を予め低下させておくことが好ましい。
【0006】
しかしながら、被測定者における実際の呼吸の停止期間が短すぎると酸素飽和度の変化量が小さくなる傾向を示すため、酸素循環時間の測定が困難になる場合がある。また、呼吸の停止期間が長くなるにつれ酸素飽和度の変化量が大きくなる傾向を示すため、酸素循環時間の測定がしやすくなるが、呼吸の停止期間が必要以上に長すぎると、呼吸を無理にこらえようとした影響により、例えば脈波等が通常とは異なる値を示すようになり、酸素循環時間が正しく測定されない場合がある。
【0007】
本発明は、呼吸停止中の被測定者に呼吸の再開時期を通知しない場合と比較して、被測定者における呼吸の停止期間のばらつきが抑制された状態で酸素循環時間を測定することができる生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の生体情報測定装置の発明は、呼吸の停止期間を規定する規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸を再開するよう再開通知を通知する通知手段と、前記被測定者の呼吸の再開によって前記被測定者の体内に取り込まれた酸素が予め定められた部位に達するまでの時間を表す酸素循環時間を測定する測定手段と、前記被測定者の呼吸の有無を検知する検知手段と、を備え、前記通知手段は、前記検知手段で前記被測定者の呼吸の停止が検知されてからの経過時間が前記規定時間に達した場合に、前記再開通知を通知する。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記測定手段は、前記通知手段による前記再開通知の通知後に前記検知手段によって前記被測定者の呼吸が検知された場合に、前記酸素循環時間を測定する。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記検知手段は、前記被測定者の鼻口における空気の流れによって前記被測定者の呼吸の有無を検知する。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記検知手段は、前記被測定者における脈波の振幅の変化によって前記被測定者の呼吸の有無を検知する。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記検知手段は、前記被測定者の胸部の動きによって前記被測定者の呼吸の有無を検知する。
【0014】
請求項6記載の発明は、呼吸の停止期間を規定する規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸を再開するよう再開通知を通知する通知手段と、前記被測定者の呼吸の再開によって前記被測定者の体内に取り込まれた酸素が予め定められた部位に達するまでの時間を表す酸素循環時間を測定する測定手段と、前記被測定者、又は前記被測定者の生体情報を測定する測定者の操作によって通知される情報であって、前記被測定者の呼吸が停止したこと示す情報を受け付ける受付手段と、を備え、前記通知手段は、前記受付手段で前記被測定者の呼吸が停止したこと示す情報を受け付けてからの経過時間が前記規定時間に達した場合に、前記再開通知を通知する。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記測定手段は、前記再開通知の通知後に前記受付手段によって前記被測定者が呼吸を開始したこと示す情報を受け付けた場合に、前記酸素循環時間を測定する。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記測定手段は、前記通知手段により前記再開通知が通知されてから前記被測定者が呼吸を再開するまでの期間が予め定めた期間以内の場合に、前記酸素循環時間を測定する。
【0017】
請求項9記載の発明は、前記測定手段は、前記通知手段により前記再開通知が通知されてから前記被測定者が呼吸を再開するまでの期間が予め定めた期間を超えた場合、前記酸素循環時間の測定を中止する。
【0018】
請求項10記載の発明は、呼吸の停止期間を規定する規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸を再開するよう再開通知を通知する通知手段と、前記被測定者の呼吸の再開によって前記被測定者の体内に取り込まれた酸素が予め定められた部位に達するまでの時間を表す酸素循環時間を測定する測定手段と、を備え、前記通知手段は、前記被測定者が呼吸を停止するよう前記被測定者に呼吸の停止通知を通知し、前記停止通知を通知してからの経過時間が前記規定時間に達した場合に、前記再開通知を通知し、前記測定手段は、前記通知手段によって前記再開通知が通知された後から、更に予め定めた時間が経過した後に、前記酸素循環時間を測定する。
【0022】
請求項11記載の発明は、前記通知手段は、前記停止通知を通知するまでの残り時間を前記被測定者に通知する。
【0023】
請求項12記載の発明は、前記通知手段は、前記被測定者の呼吸の停止中に前記規定時間に達するまでの残り時間を前記被測定者に通知する。
【0024】
請求項13記載の発明は、前記規定時間が前記被測定者の各々に対して調整される。
【0025】
請求項14記載の発明は、前記測定手段は、前記被測定者の予め定められた部位における血中の酸素濃度を示す酸素飽和度を用いて、前記酸素循環時間を測定する。
【0026】
請求項15記載の発明は、前記測定手段は、前記被測定者の予め定められた部位として、前記被測定者の指における血中の酸素濃度を示す酸素飽和度を用いて、前記酸素循環時間を測定する。
【0027】
請求項16記載の発明は、前記被測定者、又は前記被測定者の生体情報を測定する測定者の操作を受け付ける入力装置と、前記再開通知を表示する表示装置と、を備える。
【0028】
請求項17記載の生体情報測定プログラムの発明は、コンピュータを、請求項1~請求項16の何れか1項に記載の生体情報測定装置の各手段として機能させる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1、17記載の発明によれば、呼吸停止中の被測定者に呼吸の再開時期を通知しない場合と比較して、被測定者における呼吸の停止期間のばらつきが抑制された状態で酸素循環時間を測定することができる、という効果を有する。
また、検知手段による呼吸の有無の検知結果に従って、被測定者に呼吸の再開通知を通知することができる、という効果を有する。
【0031】
請求項2記載の発明によれば、被測定者の呼吸の再開に合わせて酸素循環時間の測定を開始することができる、という効果を有する。
【0032】
請求項3記載の発明によれば、被測定者における実際の呼吸状態から呼吸の有無を検知することができる、という効果を有する。
【0033】
請求項4記載の発明によれば、被測定者の顔に検知手段を装着することなく、呼吸の有無を検知することができる、という効果を有する。
【0034】
請求項5記載の発明によれば、被測定者の外観から呼吸の有無を検知することができる、という効果を有する。
【0035】
請求項6記載の発明によれば、被測定者の呼吸の有無を検知する検知手段を用いることなく、呼吸の有無を検知することができる、という効果を有する。
【0036】
請求項7記載の発明によれば、被測定者が申告した呼吸の再開に合わせて酸素循環時間の測定を開始することができる、という効果を有する。
【0037】
請求項8記載の発明によれば、呼吸の停止期間が規定時間に対して予め定めた時間を超えた状態で、被測定者の酸素循環時間を測定する場合と比較して、酸素循環時間を正しく測定することができる、という効果を有する。
【0038】
請求項9記載の発明によれば、誤った酸素循環時間が測定されることを回避することができる、という効果を有する。
【0039】
請求項10記載の発明によれば、生体情報測定装置における酸素循環時間の測定に合わせて被測定者の呼吸の停止及び再開を指示することができる、という効果を有する。
また、被測定者の呼吸状態を確認することなく、酸素循環時間の測定を開始することができる、という効果を有する。
また、呼吸の再開通知が通知された後に引き続いて酸素循環時間の測定を開始する場合と比較して、酸素循環時間を正しく測定することができる、という効果を有する。
【0043】
請求項11記載の発明によれば、事前の通知なしに呼吸の停止通知を通知する場合と比較して、被測定者における呼吸の停止起点を、生体情報測定装置で呼吸の停止期間を計測し始める開始起点に合わせやすくすることができる、という効果を有する。
【0044】
請求項12記載の発明によれば、事前の通知なしに呼吸の再開通知を通知する場合と比較して、被測定者における呼吸の再開起点を、生体情報測定装置で計測される呼吸の停止期間の終了に合わせやすくすることができる、という効果を有する。
【0045】
請求項13記載の発明によれば、全ての被測定者に対して規定時間を一律に設定する場合と比較して、各々の被測定者の酸素循環時間を正しく測定することができる、という効果を有する。
【0046】
請求項14記載の発明によれば、酸素飽和度から酸素循環時間を測定することができる、という効果を有する。
【0047】
請求項15記載の発明によれば、指よりも心臓から近い場所にある部位における血中の酸素飽和度を用いる場合と比較して、酸素循環時間を正しく測定することができる、という効果を有する。
【0048】
請求項16記載の発明によれば、生体情報測定装置があれば、入力装置及び表示装置を別途用意することなく操作を受け付け、かつ、再開通知を表示することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】血中の酸素飽和度の測定例を示す模式図である。
【
図2】生体に吸収される光の吸光量の変化例を示すグラフである。
【
図3】酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各波長に対する光の吸光量の一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る生体情報測定装置の構成例を示す図である。
【
図5】発光素子及び受光素子の配置例を示す図である。
【
図6】発光素子及び受光素子の他の配置例を示す図である。
【
図8】呼吸の停止及び再開に伴う血中の酸素飽和度の変化例を示す図である。
【
図9】生体情報測定装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
【
図10】第1実施形態及び第2実施形態に係る生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態に係る生体情報測定装置の構成例を示す図である。
【
図12】第3実施形態に係る生体情報測定装置の構成例を示す図である。
【
図13】第3実施形態に係る生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】第3実施形態に係る生体情報測定処理の流れの他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、機能が同じ構成要素及び処理には全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する。
【0051】
<第1実施形態>
生体情報測定装置10は生体8に関する情報(生体情報)のうち、特に循環器系に関する生体情報を測定する装置である。循環器系とは、例えば血液のような体液を体内で循環させながら輸送するための器官群を総称するものである。
【0052】
循環器系に関する生体情報には複数の指標が存在するが、血液を血管に送り出す心臓の状態を示す指標の1つとして、例えば心臓から拍出される血液量を表す心拍出量(CO:Cardiac Output)が挙げられる。
【0053】
心拍出量が基準値より低下すると例えば左心不全の疑いがあり、心拍出量が基準値より増加すると例えば右心不全の疑いがあることが知られているなど、心拍出量は様々な心臓疾患の検査、又は投薬効果の確認に利用されている。
【0054】
心拍出量の測定方法には、例えば心拍出量の測定対象者である被測定者の肺動脈に、先端にバルーンが付いたカテーテルを挿入し、バルーンを膨張及び収縮させながら血中の酸素飽和度を測定し、測定した酸素飽和度から心拍出量を算出する方法が用いられる。ここで血中の酸素飽和度とは、血中の酸素濃度を示す指標の一例であり、血液中のヘモグロビンがどの程度酸素と結合しているかを示す指標であり、血中の酸素飽和度が低下するにつれて、例えば貧血等の症状が発生しやすくなることを示すものである。
【0055】
しかしながら、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法では、被測定者の血管にカテーテルを挿入する必要があるため外科的処置が必要となり、他の測定方法に比べて被測定者における侵襲性が高くなる。
【0056】
したがって、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法よりも被測定者の負担が少なくなるように、被測定者の脈波から得られる酸素飽和度を用いて心拍出量を測定する方法が研究されている。脈波とは、心臓による血液の送り出しに伴う血管の拍動変化を示す指標である。
【0057】
まず、
図1を参照して、生体情報のうち、血中の酸素飽和度の測定方法について説明する。
【0058】
図1に示すように、血中の酸素飽和度は、被測定者の体(生体8)に向けて発光素子1から光を照射し、受光素子3で受光した、被測定者の体内に張り巡らされている動脈4、静脈5、及び毛細血管6等で反射又は透過した光の強さ、すなわち反射光又は透過光の受光量を用いて測定される。
【0059】
図2は、例えば生体8に吸収される光量の変化量を示す概念図である。
図2に示すように、生体8における吸光量は、時間の経過と共に変動する傾向が見られる。
【0060】
更に、生体8における吸光量の変動に関する内訳について見てみると、主に動脈4によって吸光量が変動し、静脈5及び静止組織を含むその他の組織では、動脈4に比べて吸光量が変動しないとみなせる程度の変動量であることが知られている。これは、心臓から拍出された動脈血は脈波を伴って血管内を移動するため、動脈4が動脈4の断面方向に沿って経時的に伸縮し、動脈4の厚みが変化するためである。なお、
図2において、矢印94で示される範囲が、動脈4の厚みの変化に対応した吸光量の変動量を示す。
【0061】
図2において、時刻t
aにおける受光量をI
a、時刻t
bにおける受光量をI
bとすれば、動脈4の厚みの変化による光の吸光量の変化量ΔAは、(1)式で表される。
【0062】
(数1)
ΔA=ln(Ib/Ia)・・・(1)
【0063】
これに対して、
図3は、動脈4を流れる酸素と結合したヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)及び酸素と結合していないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)の各波長に対する光の吸光量の一例を示す図である。
図3において、グラフ96が酸化ヘモグロビンにおける光の吸光量を表し、グラフ97が還元ヘモグロビンにおける光の吸光量を表す。
【0064】
図3に示すように、酸化ヘモグロビンは還元ヘモグロビンと比較して、約850nm近辺の波長を有する赤外線(infrared:IR)領域99の光を吸収しやすく、還元ヘモグロビンは酸化ヘモグロビンと比較して、特に約660nm近辺の波長を有する赤色領域98の光を吸収しやすいことが知られている。
【0065】
更に、酸素飽和度は、異なる波長における吸光量の変化量ΔAの比率と比例関係があることが知られている。
【0066】
したがって、他の波長の組み合わせに比べて、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとで吸光量の差が現われやすい赤外光(IR光)と赤色光を用いて、IR光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔARedとの比率をそれぞれ算出することで、(2)式によって酸素飽和度Sが算出される。なお、(2)においてkは比例定数である。
【0067】
(数2)
S=k(ΔARed/ΔAIR)・・・(2)
【0068】
すなわち、血中の酸素飽和度を算出する場合、それぞれ異なる波長の光を照射する複数の発光素子1を生体8に照射する。具体的には、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1を生体8に用いる。この場合、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1との発光期間は重複してもよいが、望ましくは発光期間が重複しないよう発光させる。そして、各々の発光素子1による反射光又は透過光を受光素子3で受光して、各受光時点における受光量から(1)式及び(2)式、又は、これらの式を変形して得られる公知の式を算出することで、酸素飽和度が測定される。
【0069】
上記(1)式を変形して得られる公知の式として、例えば(1)式を展開して、光の吸光量の変化量ΔAを(3)式のように表してもよい。
【0070】
(数3)
ΔA=lnIb-lnIa・・・(3)
【0071】
また、(1)式は(4)式のように変形することができる。
【0072】
(数4)
ΔA=ln(Ib/Ia)=ln(1+(Ib-Ia)/Ia) ・・・(4)
【0073】
通常、(Ib-Ia)≪Iaであることから、ln(Ib/Ia)≒(Ib-Ia)/Iaが成り立つため、(1)式の代わりに、光の吸光量の変化量ΔAとして(5)式を用いてもよい。
【0074】
(数5)
ΔA≒(Ib-Ia)/Ia ・・・(5)
【0075】
以降では、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1とを区別して説明する必要がある場合、IR光を照射する発光素子1を「発光素子1A」といい、赤色光を照射する発光素子1を「発光素子1B」ということにする。
【0076】
こうした方法によれば、発光素子1及び受光素子3を被測定者の体表に近づけることで血中の酸素飽和度が測定されるため、血管にカテーテルを挿入して血中の酸素飽和度を測定するよりも被測定者の負担が少なくなる。
【0077】
そして、測定された被測定者の酸素飽和度を用いて、生体情報測定装置10は後述する方法により心拍出量を算出する。
【0078】
図4は、生体情報測定装置10の構成例を示す図である。
図4に示すように、生体情報測定装置10は光電センサ11、脈波処理部12、呼吸波形抽出部13、酸素飽和度測定部14、タイマ15、通知部16、酸素循環時間測定部17、及び心拍出量測定部18を含む。
【0079】
光電センサ11は、約850nmの波長を中心波長とするIR光を照射する発光素子1A、約660nmの波長を中心波長とする赤色光を照射する発光素子1B、及びIR光及び赤色光を受光する受光素子3を備える。
【0080】
図5に光電センサ11における発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3の配置例を示す。
図5に示すように、発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3は、生体8の一方の面に向かって並べて配置される。この場合、受光素子3は、生体8の毛細血管6等で反射されたIR光及び赤色光を受光する。
【0081】
しかしながら、発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3の配置は、
図5の配置例に限定されない。例えば、
図6に示すように、発光素子1A及び発光素子1Bと、受光素子3とをそれぞれ生体8を挟んで対向する位置に配置するようにしてもよい。この場合、受光素子3は、生体8を透過したIR光及び赤色光を受光する。
【0082】
ここでは一例として、発光素子1A及び発光素子1Bは、例えばVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)のような面発光レーザ素子として説明するが、これに限らず、端面発光レーザ素子であってもよい。また、発光素子1A及び発光素子1BはLED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0083】
光電センサ11には、被測定者の体の部位に光電センサ11を取り付けるための図示しないクリップが備えられており、IR光及び赤色光が光電センサ11から外部に漏れないように、光電センサ11は図示しないクリップによって被測定者の体表に接触するように取り付けられる。被測定者の生体8で反射又は透過したIR光及び赤色光を受光素子3でできるだけ正確に受光するためには、光電センサ11を被測定者の体表に接触するように配置することが好ましいが、被測定者の生体8で反射したIR光及び赤色光、又は被測定者の生体8を透過したIR光及び赤色光が受光素子3で受光される範囲内で、光電センサ11を体表から離した位置に取り付けてもよい。
【0084】
光電センサ11は、受光素子3で受光したIR光及び赤色光のそれぞれの受光量を例えば電圧値に変換して脈波処理部12に通知する。
【0085】
発光素子1A及び発光素子1Bからは予め定めた光量が照射されているため、光電センサ11で受光したIR光及び赤色光のそれぞれの受光量から、生体8におけるIR光及び赤色光の吸光量が得られる。
【0086】
したがって、脈波処理部12は、光電センサ11から受け付けたIR光及び赤色光のそれぞれの受光量を用いて、IR光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号と、赤外光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号をそれぞれ生成する。脈波処理部12は、受け付けたIR光及び赤色光のそれぞれの受光量に対応する電圧値が、脈波信号の生成に適した予め定めた範囲に含まれるように電圧値を増幅する。そして、脈波処理部12は、公知のフィルタ等を用いてノイズ成分を除去したそれぞれの脈波信号を生成する。
【0087】
脈波処理部12は生成したそれぞれの脈波信号を、呼吸波形抽出部13及び酸素飽和度測定部14に通知する。
【0088】
呼吸波形抽出部13は脈波処理部12から脈波信号を受け付けると、脈波信号から被測定者の呼吸状態を表す呼吸波形を抽出する。
【0089】
具体的には、呼吸波形抽出部13は、IR光から得られた脈波信号と赤色光から得られた脈波信号のうち、何れか一方の脈波信号の予め定めた期間(例えば1分)における極大値及び極小値を検出し、検出した各々の極大値を接続する線(ピーク線)又は検出した各々の極小値を接続する線(ボトム線)を被測定者の呼吸波形として抽出する。
【0090】
図7は、呼吸波形抽出部13によって脈波信号から抽出された呼吸波形の一例を示す図である。
【0091】
なお、呼吸波形抽出部13では、IR光から得られた脈波信号を用いて呼吸波形を抽出する。これは、
図3に示したように、IR光は赤色光に比べて酸化ヘモグロビンに吸収されやすいため、動脈4の厚みの変化に対する脈波信号の振幅が赤色光から得られた脈波信号の振幅より大きくなる傾向が見られる。したがって、IR光から得られた脈波信号から抽出した呼吸波形は、赤色光から得られた脈波信号から抽出した呼吸波形よりも波形の変動が明確になり、精度の高い呼吸波形が得られるためである。
【0092】
呼吸波形抽出部13は、脈波信号から抽出した呼吸波形を参照して、例えば呼吸の停止及び呼吸の再開といった被測定者の呼吸状態を通知部16に通知する。
【0093】
なお、光電センサ11で検知される受光量によって、被測定者における脈波信号が得られ、脈波信号から被測定者の呼吸状態が検知されるため、光電センサ11を含む生体情報測定装置10は、被測定者の呼吸の有無を検知する検知手段の一例と言える。
【0094】
酸素飽和度測定部14は、脈波処理部12から脈波信号を受け付けると、受け付けた脈波信号から被測定者の酸素飽和度を測定する。具体的には、酸素飽和度測定部14は脈波信号を用いて、動脈4の厚みの変化によるIR光の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光の吸光量の変化量ΔARedとをそれぞれ(1)式に従って算出する。そして、酸素飽和度測定部14は、算出した変化量ΔAIRと変化量ΔARedを用いて、例えば(2)式から被測定者の酸素飽和度を測定し、測定した酸素飽和度を酸素循環時間測定部17に通知する。
【0095】
以降では一例として、酸素飽和度測定部14が被測定者の酸素飽和度を測定する例について説明するが、酸素飽和度測定部14は、被測定者の酸素飽和度の時間変化を示す値であればどのような値を測定してもよい。例えば、酸素飽和度測定部14は、酸素飽和度の逆数、又は変化量ΔARedと変化量ΔAIRの比率といった、酸素飽和度の時間変化と相関関係を有する値を測定してもよい。
【0096】
通知部16は、呼吸波形抽出部13から被測定者の呼吸の停止が通知されると、タイマ15を起動し、呼吸の停止期間が予め定めた規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸を再開するよう伝える再開通知を通知する。
【0097】
図8のグラフは、被測定者の特定の部位における血中の酸素飽和度の変化例を示しており、横軸は時間を表し、縦軸は酸素飽和度の逆数を表している。
【0098】
被測定者が時刻t0で呼吸を停止すると、被測定者における血中の酸素飽和度が減少し始める。被測定者が呼吸を停止する期間として予め定めた規定時間の経過後(時刻t1)に被測定者が呼吸を再開しても、呼吸の再開により血中に取り込まれた酸素が肺から特定の部位まで到達するのには時間がかかるため、時刻t1の後も被測定者における血中の酸素飽和度は減少する。そのうち、呼吸の再開により血中に取り込まれた酸素が肺から特定の部位まで到達するため、被測定者における血中の酸素飽和度は増加に転じる。血中の酸素飽和度が減少から増加に転じる箇所を「変曲点」といい、変曲点が現れた時刻を時刻t2とすれば、酸素循環時間は時刻t1と時刻t2の差分によって表される。
【0099】
すなわち、酸素循環時間とは、肺から特定の部位まで酸素が運搬されるのに要する時間を表し、「酸素運搬時間」とも呼ばれる。
【0100】
酸素飽和度から測定される酸素循環時間は、呼吸の停止期間のばらつきによって測定精度もばらつく傾向があるため、呼吸の停止期間を規定した規定時間が設けられている。
【0101】
規定時間は、生体情報測定装置10における酸素循環時間の測定精度が高くなるように、生体情報測定装置10の実機による実験や生体情報測定装置10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められている値である。
【0102】
したがって、通知部16は、被測定者における呼吸の停止期間が規定時間に近づくように呼吸の再開通知を被測定者に通知すると共に、酸素循環時間測定部17にも被測定者の呼吸が再開したことを通知する。
【0103】
酸素循環時間測定部17は、通知部16から被測定者の呼吸が再開したことを受け付けると、呼吸の再開を受け付けた時刻を時刻t1として記憶する。そして、酸素循環時間測定部17は、酸素飽和度測定部14で測定される酸素飽和度を監視して、酸素飽和度の変曲点を検出する。酸素循環時間測定部17は、酸素飽和度の変曲点を検出した時刻を時刻t2として記憶し、時刻t1と時刻t2の差分で表される時間を酸素循環時間として測定する。なお、「変曲点を検出」するとは、酸素循環時間の測定に実質的に影響がない範囲で、変曲点から多少ずれた位置を検出する場合を含む。
【0104】
そして、酸素循環時間測定部17は、測定した酸素循環時間を心拍出量測定部18に通知する。このように酸素循環時間測定部17は、酸素循環時間を測定する測定手段の一例である。
【0105】
なお、酸素循環時間の測定部位は、被測定者における光電センサ11の取り付け位置によって決定されるが、本実施の形態では一例として、光電センサ11を被測定者の末梢部位に装着する。より具体的には指先に装着し、肺から指先まで酸素が運搬される場合の酸素循環時間を測定する。これは、他の部位に比べて肺からの距離が長くとれることにより酸素循環時間が長くなることから、他の部位に光電センサ11を取り付けた場合と比較して、精度の高い酸素循環時間が得られるためである。なお、「末梢部位」とは、被測定者の体の首、肩、股関節よりも末梢側にある部位をいう。
【0106】
したがって、肺から指先までの酸素循環時間を、特にLFCT(Lung to Finger Circulation Time)ということがある。本実施の形態においても、光電センサ11を被測定者の指先に取り付け、酸素循環時間測定部17でLFCTを測定する例について説明するが、光電センサ11の取り付け部位は指先に限られない。得られる酸素循環時間の測定誤差が予め定めた範囲内に含まれるような部位であれば、被測定者の何れの部位に光電センサ11を取り付けてもよい。なお、「指先」とは被測定者の手の指先を指すが、足の指先に光電センサ11を取り付けてもよい。
【0107】
心拍出量測定部18は酸素循環時間測定部17から受け付けたLFCTを用いて、被測定者の心拍出量を測定する。心拍出量は、例えばLFCTと心拍出量の関係を表す予め求められた演算式によって算出される。
【0108】
なお、心拍出量測定部18は心拍出量の他に、心拍出量に関する情報を測定してもよい。「心拍出量に関する情報」とは、心拍出量と相関関係が認められる情報であり、例えば心係数及び1回拍出量等が含まれる。
【0109】
「心係数」とは、被測定者の体格差による心拍出量の違いを補正するため、被測定者の心拍出量を被測定者の体表面積で割った値である。また、「1回拍出量」とは、心臓が1回の収縮によって動脈4へ拍出する血液の量を示す値であり、心拍出量を被測定者の1分間の心拍数で割ることで求められる。
【0110】
上述した生体情報測定装置10は、例えばコンピュータを用いて構成される。
図9は、コンピュータ20を用いて構成された生体情報測定装置10における電気系統の要部構成例を示す図である。
【0111】
コンピュータ20は、本実施の形態に係る通知手段、測定手段及び検知手段として機能するCPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、不揮発性メモリ24、及び入出力インターフェース(I/O)25を備える。そして、CPU21、ROM22、RAM23、不揮発性メモリ24、及びI/O25がバス26を介して各々接続されている。なお、コンピュータ20で用いられるオペレーションシステムに制限はない。
【0112】
不揮発性メモリ24は、不揮発性メモリ24に供給される電力が遮断されても記憶した情報を維持する記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクであってもよい。
【0113】
I/O25には、例えば光電センサ11、入力ユニット27、表示ユニット28、及び通信ユニット29が接続される。
【0114】
光電センサ11はI/O25と有線又は無線によって接続される。なお、生体情報測定装置10と光電センサ11とが分離されるように、それぞれを別体として構成してもよく、生体情報測定装置10と光電センサ11とが一体化されるように、それぞれを同じ筺体に収容する構成としてもよい。
【0115】
入力ユニット27は、例えば生体情報測定装置10のユーザの指示を受け付けてCPU21に通知する入力装置である。入力ユニット27には、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、及びマウス等が含まれる。ここで生体情報測定装置10のユーザとは、例えば被測定者及び生体情報測定装置10を操作する例えば医療従事者等の操作者が含まれる。
【0116】
表示ユニット28は、例えばCPU21で処理された情報を視覚的に生体情報測定装置10のユーザに表示する表示装置である。表示ユニット28には、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)、及びプロジェクタ等の表示装置が用いられる。
【0117】
なお、表示ユニット28は必ずしも生体情報測定装置10に必要なユニットではなく、例えば呼吸の再開通知等、生体情報測定装置10から通知される情報を生体情報測定装置10のユーザに報知するものであればどのような種類のユニットがI/O25に接続されてもよい。
【0118】
例えば、生体情報測定装置10から通知される情報を生体情報測定装置10のユーザに音声で通知する場合、表示ユニット28の代わりに例えばスピーカーユニットを接続してもよい。また、生体情報測定装置10から通知される情報を生体情報測定装置10のユーザに体感を通して通知する場合、表示ユニット28の代わりに例えば振動ユニットを接続してもよい。更には、例えば表示ユニット28及びスピーカーユニットのように複数のユニットを用いて、生体情報測定装置10から通知される情報を生体情報測定装置10のユーザに通知してもよい。
【0119】
通信ユニット29は、例えばインターネット等の通信回線と生体情報測定装置10を接続する通信プロトコルを備え、通信回線に接続される他の外部装置と生体情報測定装置10との間でデータ通信を行う。通信ユニット29における通信回線への接続形態は有線であっても無線であってもよい。生体情報測定装置10が通信回線に接続される他の外部装置とデータ通信を行う必要がなければ、必ずしもI/O25に通信ユニット29を接続する必要はない。
【0120】
なお、I/O25に接続されるユニットは上述した例に限られず、例えば印字ユニット等、他のユニットをI/O25に接続してもよい。
【0121】
次に、
図10を用いて、生体情報測定装置10の動作について説明する。
【0122】
図10は、被測定者の指先に光電センサ11が取り付けられた状態で、生体情報測定装置10のユーザから入力ユニット27を介して心拍出量の測定指示を受け付けた場合に、CPU21によって実行される生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。生体情報測定装置10は心拍出量の測定指示を受け付けると、少なくとも心拍出量の測定が終了するまで被測定者の酸素飽和度を測定し続けるものとする。
【0123】
生体情報測定処理を規定する生体情報測定プログラムは、例えば生体情報測定装置10のROM22に予め記憶されている。生体情報測定装置10のCPU21は、ROM22に記憶される生体情報測定プログラムを読み込み、生体情報測定処理を実行する。
【0124】
まず、ステップS10において、CPU21は、光電センサ11によって検知された脈波信号から得られる呼吸波形を参照し、心拍出量の測定に伴い被測定者が呼吸を停止したか否かを判定する。
【0125】
被測定者が呼吸を停止していないと判定される場合にはステップS10の処理を繰り返し実行して、被測定者の呼吸波形を監視する。一方、被測定者が呼吸を停止したと判定される場合にはステップS20に移行する。
【0126】
一例として、CPU21は、脈波の振幅の変化によって被測定者の呼吸の有無を検知するが、被測定者の呼吸の有無を検知する方法はこれに限られない。
【0127】
例えば、被測定者の鼻口に気流の流れを検知する気流センサ、又は風量を検知する風量センサを取り付け、呼吸の有無を直接検知するようにしてもよい。また、被測定者が呼吸した場合、体内で温められた空気が鼻口から排出されることから、被測定者の鼻口に温度センサを取り付けることによっても、被測定者の呼吸の有無が直接検知される。更に、呼吸に伴い被測定者の胸部の位置が変動することから、カメラで被測定者の胸部を撮影した映像を解析したり、被測定者の胸部に変位計を取り付けたりすることで、被測定者の呼吸の有無が検知される。
【0128】
このように、被測定者における呼吸の有無の検知に用いられる気流センサ、風量センサ、温度センサ、カメラ、及び変位計も、光電センサ11と同じく検知手段の一例である。
【0129】
ステップS20において、CPU21はタイマ15を起動して呼吸の停止期間の測定を開始する。ここで呼吸の停止期間の測定方法に制限はなく、CPU21は、例えばCPU21に内蔵されるタイマ機能を用いて呼吸の停止期間を測定してもよいし、生体情報測定装置10とは個別に用意された、I/O25に接続される外部のタイマユニットを用いて呼吸の停止期間を測定してもよい。
【0130】
ステップS30において、CPU21はタイマ15のタイマ値を参照して、呼吸の停止期間が規定時間に達したか否かを判定する。呼吸の停止期間が規定時間に達していない場合にはステップS30の処理を繰り返し実行して、被測定者における呼吸の停止期間を監視する。一方、呼吸の停止期間が規定時間に達した場合にはステップS40に移行する。
【0131】
この場合、被測定者の呼吸を再開させるため、ステップS40においてCPU21は、呼吸の再開通知を被測定者に通知する。具体的には、生体情報測定装置10に表示ユニット28が接続されている場合、CPU21は、例えば呼吸を再開するよう促すメッセージや図を表示ユニット28に表示する。また、生体情報測定装置10にスピーカーユニットが接続されている場合、CPU21は、例えば呼吸を再開するよう促す音声をスピーカーユニットから出力する。
【0132】
ステップS50において、CPU21は、光電センサ11によって検知された脈波信号から得られる呼吸波形を参照し、被測定者が呼吸を実際に再開したか否かを判定する。
【0133】
被測定者が呼吸を再開していないと判定される場合にはステップS50の処理を繰り返し実行して、被測定者の呼吸波形を監視する。一方、被測定者が呼吸を再開したと判定される場合にはステップS60に移行する。
【0134】
なお、被測定者における呼吸の有無の検知に気流センサ、風量センサ、温度センサ、カメラ、又は変位計が用いられている場合には、CPU21はこれらのセンサ値の変化から被測定者の呼吸の再開を検知すればよい。
【0135】
なお、ステップS40では、呼吸の停止期間が規定時間に達するタイミングに合わせて呼吸の再開通知を被測定者に通知したが、呼吸の再開通知が突然通知されると、被測定者は呼吸の再開通知を受けてから実際に呼吸を再開するまで遅れが生じることがある。したがって、CPU21は呼吸の停止期間中に、あとどのくらい呼吸を停止していればよいかを被測定者に知らせるため、規定時間に達するまでの残り時間を表示ユニット28に逐次表示して、被測定者に呼吸の停止期間の終了時期を事前に通知してもよい。
【0136】
被測定者の呼吸の再開に伴い、ステップS60において、CPU21は被測定者の呼吸の再開を検知した時点の時刻t1を取得して、取得した時刻t1をRAM23に記憶する。
【0137】
ここで時刻情報の取得方法に制限はなく、CPU21は、例えばCPU21に内蔵される時計機能を用いて時刻情報を取得してもよいし、生体情報測定装置10とは個別に用意された、I/O25に接続される外部の時計ユニットから時刻情報を取得してもよい。また、CPU21は、通信ユニット29を介して、通信回線に接続される外部装置の一例である時刻サーバから時刻情報を取得してもよい。更に、タイマ15を用いてもよい。
【0138】
なお、呼吸の再開を検知した時点とは、呼吸の再開を検知した瞬間の一点のみを意味するのではなく、呼吸の再開を検知した時刻以降の予め定めた期間や、検知に関連する信号処理等が行われる遅れ時間等も含む期間をいう。
【0139】
ステップS70において、CPU21は、光電センサ11によって検知された脈波信号から得られる酸素飽和度を参照し、酸素飽和度の変曲点を検知したか否か、換言すれば、酸素飽和度が減少から回復に転じたか否かを判定する。
【0140】
酸素飽和度が減少し続け、変曲点が検知されない場合にはステップS70の処理を繰り返し実行して、酸素飽和度の変化を監視する。一方、酸素飽和度の変曲点が検知された場合にはステップS80に移行する。
【0141】
ステップS80において、CPU21は、酸素飽和度の変曲点を検知した時点の時刻t2を取得して、取得した時刻t2をRAM23に記憶する。なお、酸素飽和度の変曲点を検知した時点とは、酸素飽和度の変曲点を検知した瞬間の一点のみを意味するのではなく、酸素飽和度の変曲点を検知した時刻以降の予め定めた期間や、検知に関連する信号処理等が行われる遅れ時間等も含む期間をいう。
【0142】
CPU21は、時刻t2とステップS60でRAM23に記憶した時刻t1の差分をLFCTとして取得する。
【0143】
ステップS90において、CPU21は、ステップS80で取得したLFCTを用いて、例えば(6)式から心拍出量を測定する。更に、CPU21は、測定した心拍出量を用いて心拍出量に関する情報を算出してもよい。
【0144】
以上により、
図10に示した生体情報測定処理を終了する。
【0145】
LFCTが精度よく測定される呼吸の停止期間は、例えば被測定者の年齢、性別、及び体調等によって変化する。したがって、生体情報測定装置10のユーザが入力ユニット27を介して生体情報測定装置10に設定した被測定者の情報に基づいて、CPU21は、呼吸の停止期間を規定する規定時間を被測定者毎に調整してもよい。また、生体情報測定装置10のユーザが規定時間を調整してもよい。
【0146】
規定時間は例えば1秒単位で設定してもよく、例えば15秒、20秒、及び25秒のように、予め用意した複数の時間から選択された時間を規定時間として設定してもよい。規定時間の設定単位に制限はなく、例えばミリ秒単位であっても5秒単位であってもよい。
【0147】
設定した被測定者毎の規定時間は例えば不揮発性メモリ24に記憶され、心拍出量の測定指示に先立って、被測定者の名前又は患者番号といった被測定者を識別する情報が生体情報測定装置10に入力されると、CPU21は、被測定者に対応付けられた規定時間を
図10のステップS30の判定に用いるようにする。
【0148】
なお、
図10のステップS50に示したように、CPU21は、被測定者が呼吸を実際に再開するのを待ってからLFCTの測定を開始するが、生体情報測定装置10から被測定者に呼吸の再開通知を通知してから被測定者の呼吸が再開されるまでの期間が遅れると、呼吸の停止期間が規定時間よりも長くなり、呼吸の停止期間を規定時間に合わせた場合と比較してLFCTの測定精度が低くなることがある。
【0149】
したがって、呼吸の再開通知を通知してから被測定者の呼吸が再開されるまでの期間が、予め定めた期間である許容遅延期間以内の場合に、CPU21はLFCTを測定するようにしてもよい。換言すれば、CPU21は、呼吸の再開通知を通知してから被測定者の呼吸が再開されるまでの期間が許容遅延期間を超えた場合、
図10のステップS60以降の処理の実行を中止して、LFCTを測定することなく
図10に示す生体情報測定処理を終了してもよい。
【0150】
このように第1実施形態に係る生体情報測定装置10によれば、光電センサ11のセンサ値から得られる脈波を用いて被測定者の呼吸状態及び血中の酸素飽和度を測定し、被測定者の呼吸状態及び血中の酸素飽和度から心拍出量を測定する。
【0151】
また、生体情報測定装置10は、規定時間に合わせて被測定者に呼吸の再開通知を通知する。
【0152】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る生体情報測定装置10は、光電センサ11を用いて被測定者の呼吸状態を測定し、呼吸の停止を検知した場合に呼吸の停止期間の測定を開始し、呼吸の再開を検知した場合に酸素循環時間の測定を開始した。
【0153】
しかしながら、光電センサ11のような呼吸の有無を検知する検知手段を用いなくても、被測定者の呼吸状態が得られる場合がある。
【0154】
第2実施形態では、光電センサ11のような呼吸の有無を検知する検知手段を用いることなく被測定者の呼吸状態を測定し、規定時間の終了に合わせて呼吸の再開通知を通知する生体情報測定装置10Aについて説明する。
【0155】
図11は、生体情報測定装置10Aの構成例を示す図である。
図11に示す生体情報測定装置10Aの構成例が
図4に示した生体情報測定装置10の構成例と異なる点は、呼吸波形抽出部13が削除され、代わりに受付部19が追加された点である。また、上記変更に伴って、通知部16が通知部16Aに置き換えられている。
【0156】
なお、入力ユニット27には、被測定者が呼吸の停止及び呼吸の再開を生体情報測定装置10Aに通知するために操作する入力部材が含まれている。ここでは一例として、被測定者はボタンを押下して、呼吸の停止及び呼吸の再開を生体情報測定装置10Aに通知するものとして説明を行う。
【0157】
入力ユニット27は、被測定者によるボタンの操作状況を受付部19に通知する。
【0158】
受付部19は、入力ユニット27から通知されるボタンの操作状況によって、被測定者の呼吸状態を受け付ける受付手段の一例である。具体的には、呼吸の停止に対応付けられたボタンが押下された場合、受付部19は被測定者の呼吸が停止したとみなす。また、呼吸の再開に対応付けられたボタンが押下された場合、受付部19は被測定者の呼吸が再開されたとみなす。
【0159】
そして、受付部19は、例えば呼吸の停止及び呼吸の再開といった被測定者の呼吸状態を通知部16Aに通知する。
【0160】
通知部16Aは、受付部19から被測定者の呼吸の停止が通知されると、タイマ15を起動し、呼吸の停止期間が規定時間に達した場合、呼吸停止中の被測定者に呼吸の再開通知を通知する。また、通知部16Aは、受付部19から被測定者の呼吸の再開が通知されると、酸素循環時間測定部17にも被測定者の呼吸が再開されたことを通知する。
【0161】
上述した生体情報測定装置10Aは第1実施形態に係る生体情報測定装置10と同じく、例えばコンピュータを用いて構成される。この場合の生体情報測定装置10Aにおける電気系統の要部構成例は、
図9に示した生体情報測定装置10における電気系統の要部構成例と同じになる。
【0162】
また、生体情報測定装置10Aにおける生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートも、
図10に示した生体情報測定装置10における生体情報測定処理の流れの一例を示したフローチャートと同じになる。
【0163】
ただし、
図10のステップS10において、生体情報測定装置10が光電センサ11によって検知された脈波信号から得られる呼吸波形を参照し、被測定者が呼吸を停止したか否かを判定したのに対して、生体情報測定装置10Aでは、呼吸の停止に対応付けられたボタンの押下状態を参照して、被測定者が呼吸を停止したか否かを判定する。また、
図10のステップS50において、生体情報測定装置10が光電センサ11によって検知された脈波信号から得られる呼吸波形を参照し、被測定者が呼吸を再開したか否かを判定したのに対して、生体情報測定装置10Aでは、呼吸の再開に対応付けられたボタンの押下状態を参照して、被測定者が呼吸を再開したか否かを判定する。
【0164】
なお、被測定者の呼吸状態を生体情報測定装置10Aに通知するボタンは、被測定者の呼吸状態を確認した医療従事者等の生体情報の測定者が、被測定者に代わって操作してもよい。
【0165】
なお、第1実施形態で説明した生体情報測定処理に関する各種変形例の内容は、生体情報測定装置10Aにも適用される。
【0166】
このように第2実施形態に係る生体情報測定装置10Aによれば、被測定者又は生体情報の測定者による被測定者の呼吸状態の申告に基づいて、規定時間に合わせて被測定者に呼吸の再開通知を通知し、被測定者の心拍出量を測定する。
【0167】
<第3実施形態>
第1実施形態に係る生体情報測定装置10及び第2実施形態に係る生体情報測定装置10Aでは、被測定者の呼吸状態に合わせて呼吸の停止期間の測定及びLFCTの測定を開始した。
【0168】
第3実施形態では、生体情報測定装置が通知する指示に被測定者が呼吸状態を合わせることで、被測定者の呼吸状態を確認することなく呼吸の停止期間の測定及びLFCTの測定を開始し、被測定者の心拍出量を測定する生体情報測定装置10Bについて説明する。
【0169】
図12は、生体情報測定装置10Bの構成例を示す図である。
図12に示す生体情報測定装置10Bの構成例が
図4に示した生体情報測定装置10の構成例と異なる点は、呼吸波形抽出部13が削除され、通知部16が通知部16Bに置き換えられた点である。
【0170】
通知部16Bは、心拍出量の測定指示を受け付けると、予め定めたルールに従って呼吸の停止通知を通知すると共にタイマ15を起動し、タイマ15のタイマ値が規定時間に達した場合に、呼吸の再開通知を被測定者に通知すると共に、酸素循環時間測定部17にも被測定者の呼吸が再開したことを通知する。
【0171】
ここで「予め定めたルール」とは、例えば心拍出量の測定指示を受け付けてn秒(nは0以上の整数)後に呼吸の停止通知を通知するといった、呼吸の停止通知の通知タイミングを定めたルールである。なお、呼吸の停止通知の通知タイミングを定めるn秒の値は「待機時間」と呼ばれ、生体情報測定装置10Bのユーザによって変更される値である。
【0172】
酸素循環時間測定部17は、通知部16Bから被測定者の呼吸が再開したことを受け付けた場合にLFCTの測定を開始し、心拍出量測定部18によって被測定者の心拍出量が得られる。
【0173】
上述した生体情報測定装置10Bは第1実施形態に係る生体情報測定装置10と同じく、例えばコンピュータを用いて構成される。この場合の生体情報測定装置10Bにおける電気系統の要部構成例は、
図9に示した生体情報測定装置10における電気系統の要部構成例と同じになる。
【0174】
次に、
図13を用いて、生体情報測定装置10Bの動作について説明する。
【0175】
図13は、生体情報測定装置10Bが起動した場合に、CPU21によって実行される生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0176】
被測定者の指先には光電センサ11が取り付けられ、生体情報測定装置10Bは心拍出量の測定指示を受け付けると、少なくとも心拍出量の測定が終了するまで被測定者の酸素飽和度を測定し続けるものとする。また、生体情報測定装置10Bにおける待機時間は予めn秒に設定されているものとする。
【0177】
生体情報測定処理を規定する生体情報測定プログラムは、例えば生体情報測定装置10BのROM22に予め記憶されている。生体情報測定装置10BのCPU21は、ROM22に記憶される生体情報測定プログラムを読み込み、生体情報測定処理を実行する。
【0178】
図13に示す生体情報測定処理のフローチャートが、
図10に示した第1実施形態及び第2実施形態に係る生体情報測定処理のフローチャートと異なる点は、被測定者の呼吸の停止を検知するステップS10、及び被測定者の呼吸の再開を検知するステップS50が削除され、ステップS2~S8、S15、及びS25が追加された点である。
【0179】
まず、ステップS2において、CPU21は、入力ユニット27を介して生体情報測定装置10Bのユーザから心拍出量の測定指示を受け付けたか否かを判定する。
【0180】
心拍出量の測定指示を受け付けていないと判定される場合にはステップS2の処理を繰り返し実行して、ユーザからの指示を監視する。一方、心拍出量の測定指示を受け付けたと判定される場合にはステップS4に移行する。
【0181】
ステップS4において、CPU21はタイマ15を起動して待機時間の測定を開始する。
【0182】
ステップS6において、CPU21は、タイマ15のタイマ値が待機時間に達したか否かを判定する。
【0183】
タイマ15のタイマ値が待機時間に達していない場合、ステップS8に移行し、ステップS8においてCPU21は、待機時間が終了するまでの残り時間を被測定者に通知する。待機時間が終了するまでの残り時間の被測定者への通知方法に制限はなく、例えば生体情報測定装置10Bに表示ユニット28が接続されている場合には、待機時間が終了するまでの残り時間を表示ユニット28に表示する。生体情報測定装置10Bにスピーカーユニットが接続されている場合には、待機時間が終了するまでの残り時間を音声で被測定者に通知する。また、生体情報測定装置10Bに振動ユニットが接続されている場合には振動ユニットを振動させ、待機時間が終了するまでの残り時間を被測定者の体感を通して被測定者に通知する。
【0184】
そして、ステップS6に移行し、再びタイマ15のタイマ値が待機時間に達したか否かを判定する処理を繰り返す。
【0185】
一方、ステップS6の判定処理でタイマ15のタイマ値が待機時間に達したと判定された場合には、ステップS15に移行する。
【0186】
心拍出量の測定指示を受け付けてからの時間が待機時間を経過したことにより、ステップS15において、CPU21はタイマ15を停止し、呼吸の停止通知を被測定者に通知する。これにより、CPU21は被測定者が呼吸を停止させたものとみなして、既に説明したステップS20を実行し、再びタイマ15を起動して呼吸の停止期間の測定を開始する。すなわち、生体情報測定装置10Bは、被測定者における呼吸の停止を確認することなく、呼吸の停止期間の測定を開始する。
【0187】
そして、ステップS30で呼吸の停止期間が規定時間に達したと判定されるまで、CPU21は、ステップS25においてステップS8で説明した通知方法を用いて、規定時間が終了するまでの残り時間を被測定者に通知する。
【0188】
また、CPU21は、生体情報測定装置10、10Aとは異なり、呼吸の再開通知を通知した後、被測定者の呼吸の再開を確認することなくステップS60を実行して、引き続きLFCTの測定を開始する。
【0189】
以降は、既に説明したステップS70~S90が実行され、被測定者の心拍出量が測定される。以上により、
図13に示した生体情報測定処理を終了する。
【0190】
なお、ステップS8及びS25では、それぞれ待機時間が終了するまでの残り時間、及び規定時間が終了するまでの残り時間を通知するようにしたが、残り時間の表現方法に制限はない。例えば残り時間10秒前から通知を行う場合、“10”→“9”→、・・・、→“1”→“0”というように、残り時間をカウントダウン形式で被測定者に通知してもよい。また、例えば残り時間10秒前から通知を行う場合、“0”→“1”→、・・・、→“9”→“10”というように、残り時間をカウントアップ形式で被測定者に通知してもよい。
【0191】
なお、第1実施形態で説明した生体情報測定処理に関する各種変形例の内容は、生体情報測定装置10Bにも適用される。ただし、生体情報測定装置10Bでは呼吸の再開通知を通知した後、被測定者の呼吸の再開を確認することなくLFCTの測定を開始する。したがって、呼吸の再開通知を通知してから被測定者の呼吸が実際に再開されるまでの期間が許容遅延期間内か否かを判定して、当該期間が許容遅延期間を超えた場合、LFCTを測定することなく
図13に示す生体情報測定処理を終了する変形例は適用されない。
【0192】
しかしながら、被測定者は、生体情報測定装置10Bから呼吸の再開通知が通知されたとしても、呼吸の再開通知が通知されたことを認識してから呼吸を再開することになるため、生体情報測定装置10Bが再開通知を通知してから実際に呼吸が再開されるまで、遅延時間が発生することが考えられる。
【0193】
したがって、生体情報測定装置10Bでは、この遅延時間を考慮してLFCTの測定を行うようにしてもよい。
【0194】
図14は、呼吸の再開に伴う遅延時間を考慮した生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0195】
図14に示すフローチャートが
図13に示した生体情報測定処理のフローチャートと異なる点は、ステップS40とステップS60の間に、ステップS45及びステップS55が追加された点である。
【0196】
ステップS40で呼吸の再開通知を通知した後、ステップS45において、CPU21は、タイマ15を起動する。
【0197】
ステップS55において、CPU21は、ステップS40で起動したタイマ15のタイマ値が、予め定めた遅延時間に達したか否かを判定する。当該遅延時間は、呼吸の再開通知を通知してから実際に被測定者の呼吸が再開されるまでの標準時間を表し、複数の被測定者に対する生体情報測定装置10Bの実機を用いた実験により予め求められる値である。
【0198】
ステップS55の判定処理において、タイマ15のタイマ値が遅延時間に達していない場合にはステップS55の処理を繰り返し実行して、タイマ15のタイマ値を監視する。一方、タイマ15のタイマ値が遅延時間に達した場合にはステップS60に移行して、LFCTの測定を開始する。すなわち、
図14に示す生体情報測定処理を実行する生体情報測定装置10Bは、呼吸の再開通知を通知してから飽和酸素度の変曲点が検知されるまでの時間より遅延時間だけ短い時間をLFCTとして測定する。
【0199】
ここでは一例として呼吸の再開の遅延について説明したが、同じことは呼吸の停止にもいえる。したがって、
図14におけるステップS45及びステップS55の処理を、ステップS15とステップS20の間に追加してもよい。この場合の遅延時間は、呼吸の停止通知を通知してから実際に被測定者の呼吸が停止されるまでの標準時間を表し、複数の被測定者に対する生体情報測定装置10Bの実機を用いた実験により予め求められる値である。
【0200】
このように第3実施形態に係る生体情報測定装置10Bによれば、被測定者の呼吸状態を確認することなく呼吸の停止期間の測定及びLFCTの測定を開始し、被測定者の心拍出量を測定する。
【0201】
以上、各実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は各実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で各実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【0202】
また、各実施の形態では、一例として生体情報測定処理をソフトウエアで実現する形態について説明したが、
図10、
図13、及び
図14に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)に実装し、ハードウエアで処理させるようにしてもよい。この場合、検出処理の高速化が図られる。
【0203】
また、上述した各実施の形態では、生体情報測定プログラムがROM12にインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る生体情報測定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば、本発明に係る生体情報測定プログラムを、CD(Compact Disc)-ROM、又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、本発明に係る生体情報測定プログラムを、USBメモリ及びフラッシュメモリ等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。更に、生体情報測定装置10、10A、10Bは通信ユニット29を介して、通信回線に接続された外部装置から本発明に係る生体情報測定プログラムを取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0204】
1(1A、1B)・・・発光素子
3・・・受光素子
4・・・動脈
5・・・静脈
6・・・毛細血管
8・・・生体
10(10A、10B)・・・生体情報測定装置
11・・・光電センサ
12・・・脈波処理部
13・・・呼吸波形抽出部
14・・・酸素飽和度測定部
15・・・タイマ
16(16A、16B)・・・通知部
17・・・酸素循環時間測定部
18・・・心拍出量測定部
19・・・受付部
20・・・コンピュータ
21・・・CPU
22・・・ROM
23・・・RAM
24・・・不揮発性メモリ
27・・・入力ユニット
28・・・表示ユニット
29・・・通信ユニット
98・・・赤色領域
99・・・赤外線領域