(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】包装用積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220511BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220511BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B9/00 A
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018064823
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北原 吏里
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-298540(JP,A)
【文献】国際公開第01/019694(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170574(WO,A1)
【文献】特開2015-150836(JP,A)
【文献】特開2014-061681(JP,A)
【文献】特開2014-061934(JP,A)
【文献】特開2001-026067(JP,A)
【文献】特開2003-119316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D30/00-33/38
65/00-79/02
81/18-81/30
81/38
85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材上に、ガスバリア層と、ヒートシール性を有するポリエステルフィルム層とを、この順に積層してなる包装用積層フィルム
であって、
前期フィルム基材が延伸フィルムであり、
前記ガスバリア層が、無機化合物からなる無機化合物蒸着層と、水酸基含有高分子化合物と金属アルコキシドとシランカップリング剤またはそれらの加水分解物の少なくとも1種類以上を含む組成物からなる複合被膜層と、が順次積層されてなり、
ポリエステルが占める割合が総重量のうち90%以上であることを特徴とする包装用積層フィルム。
【請求項2】
ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材上に、ガスバリア層と、ヒートシール性を有するポリエステルフィルム層とを、この順に積層してなる包装用積層フィルムであって、
前期フィルム基材が延伸フィルムであり、
前記ガスバリア層が、ポリカルボン酸系重合体(A1)と、一般式R
1
Si(OR
2
)
3
で表されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有化合物(A2)とを、(A1:A2)=99.5:0.5~80.0:20.0の質量比(但し、前記ケイ素含有化合物の質量は前記シランカップリング剤換算の質量)で含有する第一のコーティング層と、多価金属化合物を含有する第二のコーティング層とからなり、
ポリエステルが占める割合が総重量のうち90%以上であることを特徴とする包装用積層フィルム。
【請求項3】
ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材上に、ガスバリア層と、ヒートシール性を有するポリエステルフィルム層とを、この順に積層してなる包装用積層フィルムであって、
前期フィルム基材が延伸フィルムであり、
前記ガスバリア層が、無機化合物からなる無機化合物蒸着層と、ポリカルボン酸系重合体(A1)と、一般式R
1
Si(OR
2
)
3
で表されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有化合物(A2)とを、(A1:A2)=99.5:0.5~80.0:20.0の質量比(但し、前記ケイ素含有化合物の質量は前記シランカップリング剤換算の質量)で含有する第一のコーティング層と、多価金属化合物を含有する第二のコーティング層とからなり、
ポリエステルが占める割合が総重量のうち90%以上であることを特徴とする包装用積層フィルム。
【請求項4】
前記ガスバリア層と、ヒートシール性を有するポリエステルフィルム層が一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤により貼りあわされてなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の包装用積層フィルム。
【請求項5】
前記ガスバリア層とポリエステルフィルム層との間に、印刷層を備えてなることを特徴とする前記請求項1~4のいずれかに記載の包装用積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する包装用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装には各種プラスチックフィルムや金属箔、紙などの材質を用いた包装用材料が使用されている。特に、食品・医薬品用途において長期間保存可能な包装形態として、水分や酸素による内容物の劣化を防ぐために、各種フィルムを積層して適したラミネート構成が設計される。
【0003】
例えばレトルト・ボイル用包材に要求される特性として、各種ガスバリア性、耐熱水性、保香性、耐衝撃性、耐圧性、突き刺し耐性、屈曲耐性などが挙げられる。耐熱水性にはポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、バリア性、保香性には(アルミ)AL箔、耐圧性、突き刺し耐性、屈曲耐性にはナイロン(Ny)フィルム、シール性として未延伸のオレフィンフィルムの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムなど、それぞれの特性をもったフィルムをラミネートし、PET/AL箔/Ny/CPPなどの構成で包装材料に用いられる。
【0004】
一方で、近年種々の環境問題から、各種プラスチック廃棄に関する法律が制定され、包装材料にもリサイクルのニーズが高まっている。マテリアルリサイクルは、プラスチック樹脂を分解することなく、高温で溶融して再利用するものであるため、リサイクル負荷が最も小さいが、不純物が含まれると除去が難しいため、フィルム製膜時に切り落とす端部や、射出成形時のランナーなど製造時の廃棄物リサイクル以外でマテリアルリサイクルを行うのは困難である。
【0005】
ケミカルリサイクルとしては一般に(1)原料化、(2)還元剤化、(3)ガス・油化、(4)サーマルリサイクルの4種類に分類できる。この中で原料化は、リサイクル前のプラスチック材料から原料モノマーを取り出す方法で、このモノマーを使って再度プラスチックを重縮合反応に利用することから、回収処理に伴う品質の低下が少なく、クローズドループのリサイクル方法として適している。
【0006】
ケミカルリサイクルの原料化方法としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)材料の場合は、エチレングリコールで解重合し、メタノールでエステル交換反応させテレフタル酸ジメチルを得る方法が広く知られ工業的にも実施されている。(特許文献1)
【0007】
しかし包装材料に用いられる積層ラミネートフィルムにおいては、各種材料の異なるフィルムが貼り合わされているため、ケミカルリサイクルの原料化は困難である。
例えば上述のボイル・レトルト用包材に用いられる一般的なラミネート構成であるPET/AL箔/Ny/CPPの場合、PET材料の原料化を行う反応中にナイロン系ポリマーなどが含有された場合、PETの原料にN含有化合物が混合し、品質に大きな問題を引き起こす。他のフィルムにおいても、ナイロンフィルムや、AL箔、オレフィンフィルムそれぞれを分離する工程が確立されていないため、ラミネート構成からなる包装材料はサーマルリサイクルか、もしくはリサイクルされずに埋め立てられているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題に鑑み、本発明においては、ガスバリア性、耐熱水性、保香性、耐衝撃性、耐圧性、突き刺し耐性、屈曲耐性などの要求特性を満たす包装材料を、ポリエステル材料のみを主材料とする積層フィルムで提供することで、リサイクルが容易であり、特にはポリエステルのケミカルリサイクルを容易に行うことが出来る包装用積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本発明の第一の発明は、
ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材上に、ガスバリア層と、ヒートシール性を有するポリエステルフィルム層とを、
この順に積層してなる包装用積層フィルムである。
【0011】
また、第二の発明は、
前記ガスバリア層が、無機化合物からなる無機化合物蒸着層と、水酸基含有高分子化合物と金属アルコキシドとシランカップリング剤またはそれらの加水分解物の少なくとも1種類以上を含む組成物からなる複合被膜層と、が順次積層されてなることを特徴とする請求項1記載の包装用積層フィルムである。
【0012】
また、第三の発明は、
前記ガスバリア層が、ポリカルボン酸系重合体(A1)と、一般式 R1Si(OR2)3で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有化合物(A2)の質量比(A1:A2)が99.5:0.5~80.0:20.0(但し、前記ケイ素含有化合物の質量は前記シランカップリング剤換算の質量)で含有する第一のコーティング層と、多価金属化合物を含有する第二のコーティング層とからなることを特徴とする請求項1記載の包装用積層フィルムである。
【0013】
また、第四の発明は、
前記ガスバリア層が、無機化合物からなる無機化合物蒸着層と、ポリカルボン酸系重合体(A1)と、一般式R1Si(OR2)3で表されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有化合物(A2)とを、(A1:A2)=99.5:0.5~80.0:20.0の質量比(但し、前記ケイ素含有化合物の質量は前記シランカップリング剤換算の質量)で含有する第一のコーティング層と、多価金属化合物を含有する第二のコーティング層とからなることを特徴とする請求項1記載の包装用積層フィルムである。
【0014】
また、第五の発明は、
前記ガスバリア層とポリエステルフィルム層との間に、印刷層を備えてなることを特徴とする前記請求項1~4のいずれかに記載の包装用積層フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
ポリエステル材料のみを主材料とする積層フィルムからなる包装材料を提供することで、単一材料によるリサイクルが容易であり、特にはポリエステルのケミカルリサイクルを容易に行うことができる。さらには、ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材を用いることで、包装材料に要求される、耐熱水性、耐衝撃性、耐圧性、突き刺し耐性、屈曲耐性を付与することができる。また、バリア性としてガスバリア層を積層し、シール性としてヒートシール性を有するポリエステルフィルムを積層することで、包装材料に要求される特性を満たす包装材料を、ポリエステル材料のみを主成分として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る基材にガスバリア層を積層したフィルムの一様態を示した模式図である。
【
図2】本発明に係る基材にガスバリア層を積層したフィルムの他の一様態を示した模式図である。
【
図3】本発明に係る基材にガスバリア層を積層したフィルムの他の一様態を示した模式図である。
【
図4】本発明に係る包装用積層フィルムの一様態を示した模式図である。
【
図5】本発明に係る包装用積層フィルムの他の一様態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面をもって説明する。
【0018】
(ガスバリアフィルム11)
図1は本実施形態に係るガスバリアフィルムの概略断面図である。
図1のガスバリアフィルム11においては、フィルム基材1の上に、密着層2、無機化合物蒸着層3、複合被膜層4が順次積層されており、無機化合物蒸着層3と複合被膜層4とでガスバリア層10aを形成している。以下に順次、これらの各層について説明する。
【0019】
フィルム基材1は、ブチレンテレフタラート(PBT)単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルムである。
【0020】
本発明に用いるフィルム基材1としては、キャスト方式による未延伸フィルムではなく、延伸フィルムが用いられる。未延伸PBTフィルムは強度や寸法安定性に問題があるため用途が限定されており、次工程のバリアフィルムを積層するためのフィルムとしては適していない。延伸方法としては、インフレーションによる延伸フィルム、または一軸延伸、二軸延伸PBTフィルムなど、寸法が安定されたフィルムが供給可能ならば、どの方法で製膜されたものでもかまわない。
【0021】
延伸PBTフィルムは、ガスバリア性、耐熱性、耐熱水性、保香性などの特性をもつ他、延伸PETフィルムよりも耐衝撃性、耐圧製、突き刺し耐性、屈曲耐性が高く、ナイロンフィルムに必要とされる物性をも併せもつため、PET基材よりも幅広い用途の包装材料に用いることが出来る。特に、後述するヒートシール性をもつポリエステルフィルムと組み合わせるためには、シーラントフィルムとして一般的に用いられるオレフィン系のものよりポリエステルフィルムは耐衝撃性、耐圧製、突き刺し耐性、屈曲耐性が低いため、フィルム基材1にこれらの特性を持たせて包装材料としての特性を発現させることが重要である。
【0022】
フィルム基材1の厚さは、特に限定されない。用途に応じて、6μm~200μm程度のものを使用することができる。
【0023】
またこのフィルム基材1には、この積層面にバリア性能を損なわない範囲でコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理、易接着層などのコート層を設けても構わない。
【0024】
密着層2は、フィルム基材1上に設けられ、フィルム基材1と無機蒸着層3の間の密着性能向上と、平面を平滑にすることで次工程の蒸着層を欠陥なく均一成膜し、高いバリア性を発現するという、二つの効果を得ることを目的とした層であって、アンカーコート剤
を含有する層である。本発明において密着層2は必須ではないが、包装材の使用用途によって適宜積層される。
【0025】
このような密着層2としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらのアンカーコート剤の中でも、耐熱性及び層間接着強度の観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0026】
本発明に係るガスバリア層10aのうち無機化合物蒸着層3には、Al、Siの少なくとも一種が含有されていることが好ましい。より具体的には、SiOx、AlOxで表わされる金属酸化物、もしくはその混合物を用いることができるが、窒素やアルミの単体原子を含有していても差し支えない。
【0027】
無機化合物蒸着層3の膜厚は、5nm以上100nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm未満であると、十分な水蒸気バリア性を得ることができない。また、100nmより大きいと、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生し、水蒸気バリア性が低下する。さらに、材料使用量の増加、膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し、経済的観点からも好ましくない。
【0028】
無機化合物蒸着層3は、単層膜でも多層膜でもよいが、少なくとも1層は真空成膜で形成されることが必要である。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
前記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。
【0030】
前記のスパッタリング法以降の方法ではプラズマを用いるが、DC(Direct Current)方式、RF(Radio Frequency)方式、MF(Middle Frequency)方式、DCパルス方式、RFパルス方式、DC+RF重畳方式等のプラズマの生成法を適用することができる。
【0031】
次に複合被膜層4について説明する。
図1のように、無機化合物蒸着層3の上に複合被膜層4を積層する。複合被覆層4はガスバリア性を有するため、下記式(1)で表わされる金属アルコキシド及びその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物から形成されることが好ましい。
M(OR
1)m(R
2)
n-m ・・・(1)
上記式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1~nの整数である。
【0032】
金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]、トリイソプロポキシアルミニウム[Al(O-iso-C3H7)3]等が挙げられる。
金属アルコキシドは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であることから、テトラエトキシシラン又はトリイソプロポキシアルミニウムであることが好ましい。
【0033】
金属アルコキシドの加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシランの加水分解物であるケイ酸(Si(OH)4)、及び、トリプロポキシアルミニウムの加水分解物である水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等が挙げられる。これらは、1種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。上記組成物における金属アルコキシド及びその加水分解物の含有量は、例えば、10~90質量%である。
【0034】
上記組成物はさらに水酸基含有高分子化合物を含んでいてもよい。水酸基含有高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びデンプン等の水溶性高分子が挙げられる。水酸基含有高分子化合物はバリア性の観点からポリビニルアルコールであることが好ましい。これらは、1種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。上記組成物における水酸基含有高分子化合物の含有量は、例えば、10~90質量%である。
【0035】
複合被膜層4の厚さは、50~1000nmであることが好ましく、100~500nmであることが好ましい。複合被膜層4の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0036】
(ガスバリアフィルム12)
図2は、本実施形態に係るガスバリアフィルムの概略断面図である。
図2のガスバリアフィルム12においては、フィルム基材1の上に密着層2を積層し、さらにポリカルボン酸系重合体(A1)と、一般式R
1Si(OR
2)
3で表されるシランカップリング剤とその加水分解物及びそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有化合物(A2)とを、質量比(A1:A2)が99.5:0.5~80.0:20.0(但し、前記ケイ素含有化合物の質量は前記シランカップリング剤換算の質量)で含有する第一のコーティング層(A)5と、多価金属化合物を含有する第二のコーティング層(B)6とを順次積層している。この第一のコーティング層(A)5と第二のコーティング層(B)6とで、ガスバリア層10bを形成している。
【0037】
以下に、第一のコーティング層(A)と、多価金属化合物を含有する第二のコーティング層(B)について説明する。
【0038】
[第一のコーティング層(A)]
ポリカルボン酸系重合体(以下、「ポリカルボン酸系重合体(A1)成分」と称する)と、一般式R1Si(OR2)3で表されるシランカップリング剤、その加水分解物およびそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種類のケイ素含有化合物(以下「ケイ素含有化合物A2」成分と称する)とを、質量比(A1:A2)が99.5:0.5~80.0:20.0で含有している。
ただし、R1はグリシジルオキシ基またはアミノ基を含む有機基であり、R2はアルキル基であり、3個のR2はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
また、前記ケイ素含有化合物成分(A2)の質量は前記シランカップリング剤換算の質量である。
【0039】
また、ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。
ポリカルボン酸系重合体(A1)成分としては、たとえばエチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。
前記エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらのポリカルボン酸系重合体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
ポリカルボン酸系重合体(A1)成分としては、上記の中でも、得られるガスバリア性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が好ましく、その中でもアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が特に好ましい。
【0041】
ポリカルボン酸系重合体(A1)成分の数平均分子量は、2,000~10,000,000の範囲が好ましく、5,000~1,000,000がより好ましい。数平均分子量が2,000未満では得られるガスバリア層は充分な耐水性を達成できず、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。一方、数平均分子量が10,000,000を超えると、塗工によって第一のコーティング層(A)を形成する前に、粘度が高くなり塗工性が損なわれる場合がある。
【0042】
ポリカルボン酸系重合体(A1)成分は、カルボキシ基の一部が予め塩基性化合物で中和されていても良い。ポリカルボン酸系重合体(A1)成分の有するカルボキシ基の一部を予め中和することにより、耐水性や耐熱性をさらに向上させることができる。
塩基性化合物として、多価金属化合物、一価金属化合物およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。多価金属化合物としては、第二のガスバリア層(B)の説明であげる多価金属化合物と同様のものが挙げられ、多価金属化合物である塩基性化合物としては、例えば酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。一価金属化合物である塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0043】
カルボキシ基の中和度として、第一のコーティング層(A)をポリカルボン酸系重合体(A1)成分と前記ケイ素含有化合物(A2)成分とを含有する第一のコーティング液(a)からなる塗膜を乾燥することにより形成する場合は、該第一のコーティング液(a)の塗工性や塗液安定性の観点から、30mol%以下であることが好ましく、25mol%以下でなることがより好ましい。ポリカルボン酸系重合体(A1)成分としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
前記ケイ素含有化合物(A2)成分は、一般式R1Si(OR2)3(ただし、R1はグリシジルオキシ基またはアミノ基を含む有機基であり、R2はアルキル基であり、3個のR2はそれぞれ同一であっても異なっていても良い)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物およびそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有化合物である。前記ケイ素含有化合物(A2)成分は、少量でも密着層2と第一のコーティング層(A)との密着性を向上させ、耐熱性、耐水性等を向上させる。
【0045】
前記一般式中、R1における有機基としては、例えば、グリシジルオキシアルキル基、アミノアルキル基等が挙げられる。R2のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。前記シランカップリング剤の具体例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルト
リエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0046】
前記ケイ素含有化合物(A2)成分は、前記シランカップリング剤自体であってもよく、該シランカップリング剤が加水分解した加水分解物でもよく、これらの縮合物であってもよい。加水分解物としては、前記一般式中の3つのOR2のうち少なくとも1つがOHとなったものが挙げられる。縮合物としては、少なくとも2分子の加水分解物のSi-OH同士が縮合してSi-O-Si結合を形成したものが挙げられる。なお、以下においては、シランカップリング剤の加水分解物が縮合したものを加水分解縮合物と記すことがある。
【0047】
前記ケイ素含有化合物(A2)成分としては、ゾルゲル法を用いて、シランカップリング剤(1)の加水分解および縮合反応を行ったものを用いることができる。通常、シランカップリング剤(1)は加水分解が容易に起こり、また、酸、アルカリ存在下では容易に縮合反応が起こるため、シランカップリング剤(1)のみ、その加水分解物のみ、またはそれらの縮合物のみで存在することは稀である。すなわち前記ケイ素含有化合物(A2)成分は、通常シランカップリング剤(1)、その加水分解物、およびこれらの縮合物が混在している。また、加水分解物には、部分加水分解物、完全加水分解物が含まれる。
【0048】
前記ケイ素含有化合物(A2)成分としては、少なくとも加水分解縮合物を含むことが好ましい。加水分解縮合物を製造する際の方法としては、シランカップリング剤(1)を上記ポリカルボン酸系重合体(A1)成分および水を含む液に直接混合してもよく、シランカップリング剤に水を加えることによって、加水分解およびそれに続く縮合反応を行い、ポリカルボン酸系重合体と混合する前に、加水分解縮合物を得てもよい。
【0049】
第一のコーティング層(A)はポリカルボン酸系重合体(A1)成分と、前記ケイ素含有化合物(A2)成分とを、質量比(A1:A2)が99.5:0.5~80.0:20.0で含有する。ただし、前記ケイ素含有化合物(A2)成分の質量は、前記シランカップリング剤(1)換算の質量である。
【0050】
つまり、前記ケイ素含有化合物(A2)成分は上記のとおり、通常シランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物が混在するが、前記ケイ素含有化合物(A2)成分の質量は、前記シランカップリング剤に換算した値、すなわちシランカップリング剤の仕込み量である。上記範囲であると、耐虐待性に優れるガスバリア積層体を得ることができる。
【0051】
さらに、前記ケイ素含有化合物(A2)成分が存在することにより、本発明のガスバリア層が酸に対する耐性を有する。シランカップリング剤として、R1がグリシジルオキシ基を含む有機基であるもの(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)を用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分と前記ケイ素含有化合物(A2)成分との質量比(A1:A2)は、99.5:0.5~90.0:10.0であることが好ましく、99.0:1.0~95.0:5.0であることが特に好ましい。
前記シランカップリング剤として、R1がアミノ基を含む有機基であるもの(γ-アミノプロピルトリメトキシシランや、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン)を用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分と前記ケイ素含有化合物(A2)成分との質量比(A1:A2)は、99.0:1.0~80.0:20.0であることが好ましく、95.0:5.0~80.0:20.0であることが特に好ましい。
【0052】
第一のコーティング層(A)には、各種の添加剤が含まれていてもよい。添加剤として
は可塑剤、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、アンチブロッキング剤、膜形成剤、粘着剤、酸素吸収剤等が挙げられる。例えば、可塑剤としては、公知の可塑剤から適宜選択して使用することが可能である。
該可塑剤の具体例としては、例えば、エチレングレコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、エリトリトール、グリセリン、乳酸、脂肪酸、澱粉、フタル酸エステルなどを例示することができる。これらは必要に応じて、混合物で用いてもよい。
【0053】
これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、グリセリン、澱粉が延伸性とガスバリア性の観点から好ましい。このような可塑剤が含まれる場合には、耐虐待性をさらに向上させることができる。添加剤として、ポリビニルアルコール等の水酸基を2つ以上有する化合物を含む場合、該化合物の水酸基と、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分のカルボキシ基の一部とがエステル結合を形成していてもよい。第一のコーティング層(A)に添加剤が含まれている場合には、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分と添加剤との質量比(ポリカルボン酸系重合体(A1)成分:添加剤)は通常70:30~99.9:0.1の範囲であり、80:20~98:2であることが好ましい。
【0054】
第一のコーティング層(A)の厚さは、ガスバリア性の観点から、好ましくは0.01~5μmの範囲であり、より好ましくは0.02~3μmの範囲であり、さらに好ましくは0.04~1.2μmの範囲である。なお、被膜層が第一のコーティング層(A)を複数含む場合でも、被膜層中の第一のコーティング層(A)の合計の好ましい厚さは上記と同じである。
【0055】
(第一のコーティング層(A)の形成方法)
第一のコーティング層(A)は通常、コーティング法により形成することができる。具体的には、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分と前記ケイ素含有化合物(A2)成分とを含有する第一のコーティング液(a)からなる塗膜を乾燥することにより形成できる。第一のコーティング液(a)に含まれるポリカルボン酸系重合体(A1)成分、前記ケイ素含有化合物(A2)成分としては、それぞれ前記と同様のものを用いることができる。
【0056】
第一のコーティング液(a)は、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分と、前記ケイ素含有化合物(A2)成分とを、99.5:0.5~80.0:20.0の質量比(ただし、前記ケイ素含有化合物(A2)成分の質量は、前記シランカップリング剤換算の質量である)。好ましい理由は前記と同じである。
【0057】
シランカップリング剤として、R1がグリシジルオキシ基を含む有機基であるもの(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)を用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分とケイ素含有化合物(A2)成分との質量比は、99.5:0.5~90.0:10.0であることが好ましく、99.0:1.0~95.0:5.0であることが特に好ましい。
【0058】
シランカップリング剤として、R1がアミノ基を含む有機基であるもの(γ-アミノプロピルトリメトキシシランや、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン)を用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分とケイ素含有化合物(A2)成分との質量比は、99.0:1.0~80.0:20.0であることが好ましく、95.0:5.0~80.0:20.0であることが特に好ましい。
なお、通常はコーティング液第一のコーティング液(a)に含まれるポリカルボン酸系重合体(A1)成分とケイ素含有化合物(A2)成分との質量比と、該第一のコーティング液(a)を用いて形成される第一のガスバリア層(A)におけるポリカルボン酸系重合体(A1)成分とケイ素含有化合物(A2)成分との質量比とは同様であるが、例えばポリカルボン酸系重合体(A1)成分と添加剤とが反応した場合や、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分とケイ素含有化合物(A2)成分とが反応した場合等には、異なる場合がある。
【0059】
第一のコーティング液(a)は、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分とケイ素含有化合物(A2)成分と必要に応じて含まれる添加剤とを、溶媒と混合することにより調整できる。
【0060】
第一のコーティング液(a)に用いる溶媒としては、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分およびケイ素含有化合物(A2)成分を溶解し得るものであれば特に限定は無いが、通常はシランカップリング剤の加水分解反応を行うための水が必要であることから、水、水との有機溶媒との混合溶媒等が好ましい。ポリカルボン酸系重合体(A1)成分の溶解性、コストの点では、水が最も好ましい。
【0061】
アルコール等の有機溶媒は、シランカップリング剤の溶解性、第一のコーティング液(a)の塗工性を向上する点で好ましい。有機溶媒としては、炭素数1~5のアルコールおよび炭素数3~5のケトンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒等を用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
水との有機溶媒との混合溶媒としては、上述した水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく、水と炭素数1~5のアルコールとの混合溶媒がより好ましい。混合溶媒としては、水が20~95質量%の量で存在し、有機溶媒が80~5質量%の量で存在する(ただし、水と有機溶媒との合計を100質量%とする)ものが好ましい。
【0062】
第一のコーティング液(a)においては、ガスバリア性および塗工性の観点から、第一のコーティング液(a)中のポリカルボン酸系重合体(A1)成分と、ケイ素含有化合物(A2)成分と、必要に応じて含まれる添加剤との合計含有量(固形分)が、第一のコーティング液(a)の総重量に対して、0.5~50質量%が好ましく、0.8~30質量%がより好ましく、1.0~20質量%が特に好ましい。
【0063】
この第一のコーティング液(a)を、第一のガスバリア層(A)として積層する面、すなわち密着層2上に塗工して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥することにより、第一のコーティング層(A)を形成できる。
【0064】
第一のコーティング液(a)の塗工方法としては、特に限定されず公知のコート法の中から適宜選択でき、例えばキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。第一のコーティング液(a)の塗工量は、形成する第一のコーティング層(A)の厚さに応じて設定される。
【0065】
第一のコーティング液(a)を塗工した後、乾燥により、塗液に含まれる第一のコーティング液(a)の溶媒を除去することによって、第一のコーティング層(A)が形成される。
【0066】
乾燥方法としては、特に限定は無く、例えば熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられる。これらの方法はいずれかを単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
このようにして形成される第一のガスバリア層(A)には、ポリカルボン酸系重合体(A1)成分とケイ素含有化合物(A2)成分とが含まれ、さらに、第一のコーティング液(a)に添加剤等の他の成分が含まれる場合には、当該他の成分が含まれている。第一のコーティング液(a)の添加剤として、ポリビニルアルコール等の水酸基を2つ以上有する化合物を用いた場合、上記乾燥、熟成処理、熱処理等の際に、該化合物の水酸基とポリカルボン酸系重合体(A1)成分のカルボキシ基の一部とが反応してエステル結合を形成してもよい。
【0067】
[第二のコーティング層(B)]
第二のコーティング層(B)は、多価金属化合物を含有する。多価金属化合物とは、金属イオンの価数が2以上の多価金属の化合物である。
多価金属としては、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの遷移金属;アルミニウム、ケイ素が挙げられる。多価金属としては、耐熱性、耐水性、透明性の観点から、カルシウムまたは亜鉛が特に好ましい。多価金属化合物としては、カルシウム化合物または亜鉛化合物が上述の理由より好ましい。
さらに多価金属化合物としては、例えば多価金属の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩)もしくは無機酸塩、多価金属酸化物のアンモニウム錯体もしくは2~4級アミン錯体、またはそれらの炭酸塩もしくは有機酸塩が挙げられる。これらの多価金属化合物の中でも、ガスバリア性、高温水蒸気や熱水に対する耐性、製造性の観点から、アルカリ土類金属、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムまたはケイ素の酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩または酢酸塩、銅または亜鉛のアンモニウム錯体またはそれらの炭酸塩を用いることが好ましい。これらの中でも、工業的生産性の観点から、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸カルシウムが好ましく、酸化亜鉛または炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0068】
第二のコーティング層(B)を、多価金属化合物を含有する第二のコーティング液(b)からなる塗膜を乾燥することにより形成する場合、多価金属化合物の形態は、粒子状であっても、非粒子状であっても、溶解していてもよいが、分散性、ガスバリア性、生産性の観点からは、粒子状であることが好ましい。また、このような粒子の平均粒子径は特に限定されないが、ガスバリア性、コーティング適性の観点から、平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく,0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0069】
第二のコーティング層(B)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、多価金属化合物のほかに、各種添加物を含有してもよい。該添加物としては、例えば、第二のコーティング層(B)を、多価金属化合物を含有する第二のコーティング液(b)からなる塗膜を乾燥することにより形成する場合、第二のコーティング液(b)に用いる溶媒に可溶または分散可能な樹脂、該溶媒に可溶または分散可能な分散剤、界面活性剤、柔軟材、安定剤、膜形成剤、増粘剤等を含有してもよい。上記の中でも、第二のコーティング液(b)に用いる溶媒に可溶または分散可能な樹脂を含有することが好ましい。これにより、第二のコーティング液(b)の塗工性、製膜性が向上する。このような樹脂としては、例えばアルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0070】
また、第二のコーティング液(b)に用いる溶媒に可溶または分散可能な分散剤を含有することが好ましい。これにより、多価金属化合物の分散性が向上する。該分散剤として、アニオン系界面活性剤や、ノニオン系界面活性剤を用いることができる。
該界面活性剤としては、(ポリ)カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルフォコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、芳香族リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ソルビタンアルキルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の各種界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
第二のコーティング層(B)に添加剤が含まれている場合には、多価金属化合物と添加剤との質量比(多価金属化合物:添加剤)は、30:70~99:1の範囲内であることが好ましく、50:50~98:2の範囲内であることが好ましい。
【0072】
第二のコーティング層(B)の厚さは、ガスバリア性の観点から、好ましくは0.01~5μmの範囲であり、より好ましくは0.03~3μmの範囲であり、さらに好ましくは0.1~1.2μmの範囲である。なお、被膜層が第二のコーティング層(B)を複数含む場合でも、被膜層中の第二のコーティング層(B)の合計の好ましい厚さは上記と同じである。
【0073】
(第二のコーティング層(B)の形成方法)
第二のコーティング層(B)の形成方法としては、例えば、コーティング法、ディッピング法等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点からコーティング法が好ましい。以下、コーティング法により第二のコーティング層(B)を形成する場合について説明する。
【0074】
コーティング法による第二のコーティング層(B)の形成は、具体的には多価金属化合物を含有する第二のコーティング液(b)からなる塗膜を乾燥することにより形成できる。
【0075】
第二のコーティング液(b)に含まれる多価金属化合物としては、前記と同様なものを用いることができ、カルシウム化合物または亜鉛化合物が好ましい。
【0076】
第二のコーティング液(b)は必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、多価金属化合物のほかに各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤としては、例えば、第二のコーティング液(b)に用いる溶媒に可溶または分散可能な樹脂、該溶媒に可溶または分散可能な分散剤、その他の界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤などが挙げられる。
上記の中でも、第二のコーティング液(b)には、第二のコーティング液(b)の塗工性、成膜性を向上させる目的で、第二のコーティング液(b)に用いる溶媒に可溶または分散可能な樹脂を混合して用いることが好ましい。このような樹脂としては、前記第二のコーティング層(B)が含有してもよい各種添加剤として挙げたものと同様のものが挙げられる。
また、添加剤として、多価金属化合物の分散性を向上させる目的で、第二のコーティン
グ液(b)に用いる溶媒に可溶または分散可能な分散剤を混合して用いることが好ましい。該分散剤としては、第二のコーティング層(B)が含有してもよい各種添加剤として前記で挙げたものと同様のものが挙げられる。第二のコーティング液(b)に添加剤が含まれている場合には、多価金属化合物と添加剤との質量比(多価金属化合物:添加剤)は、30:70~99:1の範囲内であることが好ましく、50:50~98:2の範囲内であることがより好ましい。
【0077】
第二のコーティング液(b)に用いる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。また、これらの溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合しても良い。これらの中でも、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また、生産性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。なお、第一のコーティング液(a)から形成される第一のガスバリア層(A)は耐水性が優れているために、第二のコーティング液(b)に用いる溶媒として水を用いることができる。
【0078】
この第二のコーティング液(b)を、第二のコーティング層(B)を積層する面、例えば第一のコーティング層(A)上などに塗工して塗膜を形成し、該塗布膜を乾燥することにより第二のコーティング層(B)を形成できる。
【0079】
第二のコーティング液(b)の塗工方法としては、特に限定されず公知のコート法の中から適宜選択でき、例えばキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0080】
第二のコーティング液(b)の塗工量は、形成する第二のガスバリア層(B)の厚さに応じて設定される。第二のコーティング液(b)を塗工した後、乾燥により塗膜に含まれる第二のコーティング液(b)の溶媒を除去することによって、第二のガスバリア層(B)が形成される。
【0081】
乾燥方法としては、特に限定は無く、例えば熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられる。これらの方法はいずれかを単独で用いても2種以上を組み合わせてもよい。乾燥温度として特に限定は無いが、溶媒として上述した水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合には、通常50℃~160℃が好ましい。また、乾燥の際の圧力は通常、常圧または減圧下で行い、設備簡便性の観点から常圧で行うことが好ましい。このようにして形成される第二のコーティング層(B)には、多価金属化合物が含まれ、さらに、第二のコーティング液(b)に添加剤等の他の成分が含まれる場合には、該当他の成分が含まれる。
【0082】
(ガスバリアフィルム13)
図3は本実施形態に係るガスバリアフィルムの概略断面図である。
図3のガスバリアフィルム13においては、フィルム基材1の上に密着層2、無機化合物蒸着層3が積層され、さらに、ポリカルボン酸系重合体と、一般式R
1Si(OR
2)
3で表されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有化合物とを、99.5:0.5~80.0:20.
0の質量比(但し、前記ケイ素含有化合物の質量は前記シランカップリング剤換算の質量である)で含有する第一のコーティング層(A)5、多価金属化合物を含有する第二のコーティング層(B)6を順次積層している。この第一のコーティング層(A)5と第二のコーティング層(B)6とで、ガスバリア層10cを形成している。これらのコーティング層は、前述のものと同様である。
【0083】
次に、ガスバリアフィルムを用いた包装用の積層体フィルムについて説明する。
【0084】
(包装用積層体フィルム)
図4は、本発明の一実施形態に係る包装用積層フィルムの概略断面図である。
図4の包装用積層フィルム100は、ガスバリア層10とヒートシール性を有するポリエステルフィルム30が、接着剤層20を介して積層されている。ヒートシール性を有するポリエステルフィルム30は、即ちシーラント層として用いられる。
ガスバリア層10は、前述の
図1~
図3で示したガスバリア層10a、10b、10cのいずれの構成も適用できる。また、ガスバリア層10はこれらの構成に限るものではない。
【0085】
ヒートシール性を有するポリエステルフィルム30は、非晶性のポリエステルフィルムでも良いし、テレフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、コモノマーを重合しヒートシール性を持たせたポリエステルフィルムでもよいし、ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とすることでヒートシール性を付与するポリエステルフィルムでもよい。これらは単層でも良いし、包材に必要とされる性能によって多層押し出しフィルムでも良い。
【0086】
ヒートシール性を有するポリエステルフィルム30の厚みは、機械的性質とヒートシール性とのバランスにより、20~500μmであることが好ましい。さらには30μm以上がより好ましく、300μm以下、より好ましくは150μm以下が好ましい。
【0087】
包装用の積層フィルム形成方法としては、バリアフィルムとシーラントフィルムを一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤で貼りあわせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼りあわせるノンソルベントドライラミネート法、上述した樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼りあわせるエキストルージョンラミネート法等、いずれも公知の積層方法により形成することができるが、後述する熱水加熱処理、特に120℃以上の高温熱水処理に対して好ましいのはドライラミネート法である。85℃以下の温度での処理であれば、ラミネート方式を問わず用いることは可能である。
【0088】
また本発明においては、積層フィルムを包装用に用いるために、印刷層を設けても一向にかまわない。一般的にはバリアフィルムとヒートシール性を有するポリエステルフィルムの間に印刷層を設け、さらには印刷層はバリアフィルムのガスバリア層の上に積層される。
【0089】
図5は、本発明の一実施形態に係る包装用積層フィルムの概略断面図であって、印刷層を有する包装用積層フィルム110の構成を示す。これは、フィルム基材1上に、密着層2、無機化合物蒸着層3、複合被膜層4が積層され、その上に印刷層40が形成されており、さらにその上に接着剤層20を介してヒートシール性を有するポリエステルフィルム層30が積層されている。
【0090】
上記の包装用積層フィルムにおいて、ポリエステルが占める割合が総重量のうち90%以上であることがリサイクルには望ましい。つまり、接着剤層や印刷層、ガスバリア層などポリエステル材料以外の原料からなる層の総重量が全体の重量に対し10%未満、より
好ましくは5%以下であれば、単一材料からなる物質とみなされ、リサイクルが容易となる。
【実施例】
【0091】
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。
まず、各材料について説明する。
【0092】
密着層2は、以下の手順で調製した。
塗液1:三井化学(株)製接着剤溶液 主剤:タケラックA-525(内 ウレタン樹脂の前駆体50質量%、酢酸エチル50質量%)/硬化剤:タケネートA-52(内 ウレタン樹脂の硬化剤55質量%、酢酸エチル45質量%)/溶媒:酢酸エチル
これらの成分を、A-525:A-52:酢酸エチル=9:1:165(固形分濃度3質量%)で配合して塗液1を調製した。
【0093】
複合被膜層4は、以下の手順で調製した。
塗液2:テトラエトキシシラン10.4質量部と塩酸(濃度:0.1N)89.6質量部とを混合して、混合液を30分間撹拌し、テトラエトキシシランの加水分解溶液を得た。一方、ポリビニルアルコールを水/イソプロピルアルコールの混合溶媒(水/イソプロピルアルコール(質量比)=90:10)中に溶解させ、3質量%のポリビニルアルコール溶液を得た。テトラエトキシシランの加水分解溶液60質量部とポリビニルアルコール溶液40質量部とを混合し、複合被膜組成物である塗液2を得た。
【0094】
第一のコーティング液(a)は以下の手順で調製した。
塗液3:数平均分子量200,000のPAA(ポリアクリル酸)水溶液(東亞合成製アロンA-10H、固形分濃度25質量%)/GPTMS(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)/溶剤:水、イソプロピルアルコール(IPA)
これらの成分を、アロンA-10H:GPTMS:水:IPA=10:0.17:66:7(固形分濃度15質量%)で配合して塗液3を調製した。
なお、GPTMS(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)は信越化学工業製のものを使用した。
【0095】
第二のコーティング液(b)は下記の手順で調製した。
塗液4:酸化亜鉛含有樹脂組成物:K035A(住友大阪セメント製 酸化亜鉛(ZnO)16.6質量%、ウレタン樹脂の前駆体1.74質量%、分散剤1.66質量%、トルエン72質量%、メチルエチルケトン8質量%)/硬化剤:C-320(内 ウレタン樹脂の硬化剤75質量%、酢酸エチル25質量%)/溶媒:トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、IPA
これらの成分を、K035A:C-320:トルエン:MEK:IPA=100:3:24:3:3(固形分濃度15質量%)で配合して塗液4を調製した。
【0096】
以上の材料を用いて、以下の実施例及び比較例の包装用積層フィルムを作製した。
【0097】
(実施例1)
フィルム基材である二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT、厚み15μm)のコロナ処理側にグラビアコートを用いて、密着層として上記塗液1の液をグラビアロールコート法にて、厚み0.1g/m
2になるよう塗布、加熱乾燥して硬化させた。次に無機化合物蒸着層として電子ビーム式真空蒸着法により、酸素を導入しながらアルミを蒸発させ、厚み10nmのAlOx蒸着膜を形成した。次いで複合被膜層として塗液2を、厚み0.3g/m
2になるよう塗布、加熱乾燥し、
図1に示す構成の透明なガスバリアフィルムを得た。
【0098】
次に、得られたガスバリアフィルムのガスバリア層の上に、ヒートシールPET(NS-PET:中本パックス製、厚さ20μm)を2液型の接着剤(三井化学 A525/A52)を用いてドライラミネート法によってラミネートし、〔透明ガスバリアフィルム/接着剤層(4g/m2)/ヒートシールPET〕の構成を有する本発明の包装用積層フィルムを得た。
【0099】
(実施例2)
フィルム基材である二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT、厚み15μm)のコロナ処理側にグラビアコートを用いて、密着層として上記塗液1の液をグラビアロールコート法にて塗工し、ポリエステル樹脂を0.1g/m
2硬化させた。
次いで第一のコーティング液(a)として塗液3を塗布、過熱乾燥させ、次に第二のコーティング液(b)として塗液4を塗布、加熱乾燥させ、密着層(0.1g/m
2)/PAA(0.4g/m
2)/ZnO(ZnOとして、0.4g/m
2)からなる透明なガスバリアフィルムを得た以外は実施例1と同様にして、
図2に示す構成の本発明の包装用積層フィルムを得た。
【0100】
(実施例3)
フィルム基材である二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT、厚み15μm)のコロナ処理側にグラビアコートを用いて、密着層として上記塗液1の液をグラビアロールコート法にて塗工し、ポリエステル樹脂を0.1g/m
2硬化させた。
次に無機化合物蒸着層として電子ビーム式真空蒸着法により、酸素を導入しながらアルミを蒸発させ、厚み10nmのAlOx蒸着膜を形成した。次いで第一のコーティング液(a)として塗液3を塗布、過熱乾燥させ、次に第二のコーティング液(b)として塗液4を塗布、加熱乾燥させ、密着層(0.1g/m
2)/AlOx蒸着膜/PAA(0.4g/m
2)/ZnO(ZnOとして、0.4g/m
2)からなる透明なガスバリアフィルムを得た以外は実施例1と同様にして、
図3に示す構成の本発明の包装用積層フィルムを得た。
【0101】
(実施例4)
実施例1において得られたガスバリアフィルムのガスバリア層の上に、非晶性PET(ハイトロンPG タマポリ製 厚さ30μm)を2液型の接着剤(三井化学 A525/A52)を用いてドライラミネート法によってラミネートし、〔透明ガスバリアフィルム/接着剤層(4g/m2)/非晶性PET〕の構成を有する比較例の包装用積層フィルムを得た。
【0102】
(比較例)
実施例1において得られたガスバリアフィルムのガスバリア層の上に、CPP(S 東セロ製 厚さ20μm)を2液型の接着剤(三井化学 A525/A52)を用いてドライラミネート法によってラミネートし、〔透明ガスバリアフィルム/接着剤層(4g/m2)/CPP〕の構成を有する比較例の包装用積層フィルムを得た。
【0103】
<ポリエステル材料率>
得られた包装用の積層フィルムのうち、ポリエステル材料であるバリアフィルムのフィルム基材とヒートシール性を有するポリエステルフィルムの占める割合を重量%で算出した。
【0104】
<包装用フィルムとしての評価>
得られた包装用の積層フィルムで10cm×15cmの3方シール袋を作成し、内容物として市販のビスケット菓子50gを入れて封をした後、ダンボール箱に10袋づつ入れ
て東京、大阪間の輸送を行った。輸送後にビスケットによる包装袋への外観ダメージを確認した。包装袋に孔がないものを○、孔が開いたものを×とした。
その結果を表1に示す。
【0105】
【0106】
表1に示すとおり、実施例1~4はポリエステル材料が占める割合が重量%において全体の90%以上であり、ポリエステル単一材料とみなすことが出来、ケミカルリサイクルへの適用性が高い。また包装用フィルムとしての評価においても、内容物の輸送試験にも十分に耐え、包装用フィルムとしての汎用性が見込まれる。
一方、CPPを用いた比較例のフィルムのポリエステル材料率は50%未満であり、ケミカルリサイクルの適用は困難である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の包装用積層フィルムによれば、ポリエステル材料のみを主材料とする積層フィルムからなる包装材料を提供することで、単一材料によるリサイクルが容易であり、特にはポリエステルのケミカルリサイクルを容易に行うことが出来る包装用の積層フィルムを提供できる。さらには、ブチレンテレフタラート単位を主たる構成単位とするポリエステル樹脂を含有するフィルム基材を用いることで、包装材料に要求される、耐熱水性、耐衝撃性、耐圧性、突き刺し耐性、屈曲耐性を付与し、バリア性としてガスバリア層を積層し、シール性としてヒートシール性を有するポリエステルフィルムを積層することで、包装材料に要求される特性を満たす包装材料を、ポリエステル材料のみを主成分として提供することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 フィルム基材
2 密着層
3 無機化合物蒸着層
4 複合被膜層
5 第一のコーティング層(A)
6 第二のコーティング層(B)
10 ガスバリア層
10a、10b、10c ガスバリア層
11、12、13 ガスバリアフィルム
20 接着剤層
30 ヒートシール性を有するポリエステルフィルム層
40 印刷層
100、110 包装用積層フィルム