(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】穿刺器具
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
A61M37/00 500
(21)【出願番号】P 2018068280
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩満 一彦
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-535587(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097837(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/005359(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の部材である外筒と、
基板、および前記基板の一方の主面から突出する突起部を備え、前記外筒の内部に収納され、前記外筒の内部において前記基板が前記外筒の長さ方向と直交する面に平行な状態で移動することができるマイクロニードルとを含み、
前記外筒は、内周面に前記マイクロニードルの一部と接触して、前記マイクロニードルが長さ方向へ移動することを規制する規制部を備え、
前記外筒の前記規制部は、前記内周面から突出して前記長さ方向に並んで形成された2つの凸部であって、前記外筒の前記2つの凸部の間に前記基板の側面の一部が突出した凸部が位置することにより前記マイクロニードルの移動が規制され、
前記規制部により前記突起部の突出する方向への移動が規制された前記マイクロニードルに、前記基板の他方の主面から前記一方の主面へ所定の大きさの以上の力を加えることで、前記マイクロニードルが前記規制部を乗り越えて前記移動の規制が解除される、穿刺器具。
【請求項2】
筒状の部材である外筒と、
基板、および前記基板の一方の主面から突出する突起部を備え、前記外筒の内部に収納され、前記外筒の内部において前記基板が前記外筒の長さ方向と直交する面に平行な状態で移動することができるマイクロニードルとを含み、
前記外筒は、内周面に前記マイクロニードルの一部と接触して、前記マイクロニードルが長さ方向へ移動することを規制する規制部を備え、
前記外筒の前記規制部は、前記内周面から突出する凸部であり、
前記基板は、側面の一部が厚み方向に並んで突出した2つの凸部を備え、前記基板の前記2つの凸部の間に前記外筒の前記凸部が位置することにより前記マイクロニードルの移動が規制され、
前記規制部により前記突起部の突出する方向への移動が規制された前記マイクロニードルに、前記基板の他方の主面から前記一方の主面へ所定の大きさの以上の力を加えることで、前記マイクロニードルが前記規制部を乗り越えて前記移動の規制が解除される、穿刺器具。
【請求項3】
筒状の部材である外筒と、
基板、および前記基板の一方の主面から突出する突起部を備え、前記外筒の内部に収納され、前記外筒の内部において前記基板が前記外筒の長さ方向と直交する面に平行な状態で移動することができるマイクロニードルとを含み、
前記外筒は、内周面に前記マイクロニードルの一部と接触して、前記マイクロニードルが長さ方向へ移動することを規制する規制部を備え、
前記外筒の前記規制部は、前記内周面から突出する凸部であり、
前記基板は、側面が周方向にわたって窪んだ溝状の凹部を備え、前記基板の前記凹部内に前記外筒の前記凸部が位置することにより前記マイクロニードルの移動が規制され、
前記規制部により前記突起部の突出する方向への移動が規制された前記マイクロニードルに、前記基板の他方の主面から前記一方の主面へ所定の大きさの以上の力を加えることで、前記マイクロニードルが前記規制部を乗り越えて前記移動の規制が解除される、穿刺器具。
【請求項4】
前記外筒は、前記突起部の先端が前記外筒の開口面から一定の距離以上突出しないように前記マイクロニードルの移動を規制する返し部を開口端に備える、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の穿刺器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、化粧品、美容用途等に用いるマイクロニードルを用いた穿刺器具に関する。皮膚に穿刺するマイクロニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を人体に投与する方法としては、経口投与、注射器による皮膚真皮層または静脈への穿刺、皮膚表面への軟膏剤の塗布による局部真皮層への投与、皮膚表面への貼付け方法による局部真皮層への投与、などの方法が挙げられる(特許文献1、2参照)。
【0003】
この中で、皮膚内に薬剤を投与する器具として、近年、複数の微小な針である突起部を備えたマイクロニードルの開発が進められてきた。マイクロニードルの材料には穿刺によって針形状体の一部が折れて体内に残留しても悪影響がないように、生体内で溶解または残留しても無害なものが選択されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/058162号
【文献】特開2006-334419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロニードルは、微小な針を皮膚に穿刺するために、穿刺方法については検討の余地があった。それ故、本発明はより簡便な方法で、安定的にマイクロニードルを穿刺するための穿刺器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一局面としては、筒状の部材である外筒と、基板、および基板の一方の主面から突出する突起部を備え、外筒の内部に収納され、外筒の内部において基板が外筒の長さ方向と直交する面に平行な状態で移動することができるマイクロニードルとを含み、外筒は、内周面にマイクロニードルの一部と接触して、マイクロニードルが長さ方向へ移動することを規制する規制部を備え、外筒の規制部は、内周面から突出して長さ方向に並んで形成された2つの凸部であって、外筒の2つの凸部の間に基板の側面の一部が突出した凸部が位置することによりマイクロニードルの移動が規制され、規制部により突起部の突出する方向への移動が規制されたマイクロニードルに、基板の他方の主面から一方の主面へ所定の大きさの以上の力を加えることで、マイクロニードルが規制部を乗り越えて移動の規制が解除される、穿刺器具とした。
【0007】
本発明の他の局面としては、筒状の部材である外筒と、基板、および基板の一方の主面から突出する突起部を備え、外筒の内部に収納され、外筒の内部において基板が外筒の長さ方向と直交する面に平行な状態で移動することができるマイクロニードルとを含み、外筒は、内周面にマイクロニードルの一部と接触して、マイクロニードルが長さ方向へ移動することを規制する規制部を備え、外筒の規制部は、内周面から突出する凸部であり、基板は、側面の一部が厚み方向に並んで突出した2つの凸部を備え、基板の2つの凸部の間に外筒の凸部が位置することによりマイクロニードルの移動が規制され、規制部により突起部の突出する方向への移動が規制されたマイクロニードルに、基板の他方の主面から一方の主面へ所定の大きさの以上の力を加えることで、マイクロニードルが規制部を乗り越えて移動の規制が解除される、穿刺器具とした。
【0008】
本発明の他の局面としては、筒状の部材である外筒と、基板、および基板の一方の主面から突出する突起部を備え、外筒の内部に収納され、外筒の内部において基板が外筒の長さ方向と直交する面に平行な状態で移動することができるマイクロニードルとを含み、外筒は、内周面にマイクロニードルの一部と接触して、マイクロニードルが長さ方向へ移動することを規制する規制部を備え、外筒の規制部は、内周面から突出する凸部であり、基板は、側面が周方向にわたって窪んだ溝状の凹部を備え、基板の凹部内に外筒の凸部が位置することによりマイクロニードルの移動が規制され、規制部により突起部の突出する方向への移動が規制されたマイクロニードルに、基板の他方の主面から一方の主面へ所定の大きさの以上の力を加えることで、マイクロニードルが規制部を乗り越えて移動の規制が解除される、穿刺器具とした。
【0010】
また、外筒は、突起部の先端が外筒の開口面から一定の距離以上突出しないようにマイクロニードルの移動を規制する返し部を開口端に備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の穿刺器具は、外筒の内部に収納されたマイクロニードルに所定の大きさの以上の力を加えることで、マイクロニードルが規制部を乗り越えて移動の規制が解除されることを特徴とする。したがって、本構成の穿刺器具によれば、マイクロニードルを一定の押圧力以上で穿刺することが可能となる。このため、簡便な方法で、安定的にマイクロニードルを穿刺できる穿刺器具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の穿刺器具(第1の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図
【
図2】本発明の穿刺器具(第1の実施形態)に用いる外筒の斜視図
【
図3】本発明の穿刺器具(第1の実施形態)の使用説明図
【
図4】本発明の穿刺器具(第2の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図
【
図5】本発明の穿刺器具(第2の実施形態)に用いる外筒の斜視図
【
図6】本発明の穿刺器具(第2の実施形態)の使用説明図
【
図7】本発明の穿刺器具(第3の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図
【
図8】本発明の穿刺器具(第3の実施形態)に用いる外筒の斜視図
【
図9】本発明の穿刺器具(第3の実施形態)の使用説明図
【
図10】本発明の穿刺器具(第4の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図
【
図11】本発明の穿刺器具(第4の実施形態)に用いる外筒の斜視図
【
図12】本発明の穿刺器具(第4の実施形態)の使用説明図
【
図13】本発明の穿刺器具(第5の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図
【
図14】本発明の穿刺器具(第5の実施形態)に用いる外筒の斜視図
【
図15】本発明の穿刺器具(第5の実施形態)の使用説明図
【
図16】本発明の穿刺器具(第6の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図
【
図17】本発明の穿刺器具(第6の実施形態)に用いる外筒の斜視図
【
図18】本発明の穿刺器具(第6の実施形態)の使用説明図
【
図19】本発明の穿刺器具(第7の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図
【
図20】本発明の穿刺器具(第7の実施形態)に用いる外筒の斜視図
【
図21】本発明の穿刺器具(第7の実施形態)の使用説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る穿刺器具について説明する。
図1、
図2、
図3に本発明の穿刺器具(第1の実施形態)について示した。
図1は、本発明の穿刺器具(第1の実施形態)に用いるマイクロニードルの斜視図である。
図2は、本発明の穿刺器具(第1の実施形態)に用いる外筒の斜視図である。
図3は、本発明の穿刺器具(第1の実施形態)の使用説明図(断面模式図)である。
【0014】
図1に、本発明の穿刺器具(第1の実施形態)に用いるマイクロニードル1について示した。マイクロニードル1は、第1の面11Aと第2の面11Bとからなる主面を備える基板11の第1の面11Aに突起部12を備える。突起部12は、1本でも良いし、複数本でもよい。
【0015】
マイクロニードル1の突起部12は、皮膚Sに穿刺される領域である。突起部12は、穿刺することが可能であれば、その形状は、円錐形状であってもよいし、角錐形状であってもよい。また、突起部12は、例えば、円柱形状や角柱形状のように、先端が尖っていない形状であってもよい。また、突起部12は、例えば、円柱に円錐が積層された形状のように、2以上の立体が結合した形状であってもよい。要は、突起部12は皮膚Sを刺すことが可能な形状であればよく、形状は限定されない。また、突起部12の側壁には、括れや段差が形成されていてもよいし、溝や孔が形成されていてもよい。
【0016】
マイクロニードル1の突起部12の高さHは、基板11の厚さ方向、すなわち、基板の第1の面11Aと直交する方向における、第1の面11Aから突起部12の先端までの長さである。突起部12の長さHは、10μm以上3000μm以下であることが好ましい。
【0017】
突起部12の幅Dは、基板11の第1の面11Aに沿った方向、すなわち、第1の面11Aと平行な方向における突起部12の長さの最大値である。例えば、突起部12が正四角錐形状や正四角柱形状を有するとき、基板11の第1の面11Aにて、突起部12の底部によって区画された正方形における対角線の長さが、突起部12の幅Dである。また、例えば、突起部12が円錐形状や円柱形状を有するとき、突起部12の底部によって区画された円の直径が、突起部12の幅Dである。突起部12の幅Dは、1μm以上1mm以下であることが好ましい。突起部12の幅Dに対する長さHの比であるアスペクト比A(A=H/D)は、1以上10以下であることが好ましい。
【0018】
マイクロニードル1が備える突起部12の数は、1以上であれば特に限定されない。マイクロニードル1が複数の突起部12を備える場合、複数の突起部12は、基板11の第1の面11Aに規則的に並んでいてもよいし、不規則に並んでいてもよい。例えば、複数の突起部12は、格子状や同心円状に配列される。
【0019】
マイクロニードル1は基板11の側面が突出した凸部P1を備える。凸部P1は基板11の側面に周方向に全周にわたって延伸するように設けられていてもよいし、周方向に間欠的に設けられても良い。凸部P1は凸曲面で形成されることが好ましい。凸部P1を凸曲面で形成することにより、後述する第1の状態から第2の状態への変化をスムーズにおこなうことができる。
【0020】
マイクロニードル1の基板11は円盤形であっても良いし、角板形であってもよいし、限定されるものではない。また、マイクロニードル1の基板11の大きさは、取り扱いの大きさの点から最大径φが0.4mm以上20.0mm以下の範囲内であることが好ましい。なお、最大径は側面が突出した凸部P1を含めた径である。
【0021】
図2に、本発明の穿刺器具(第1の実施形態)に用いる外筒2について示した。外筒2は、マイクロニードル1を内部に移動可能に収納するとともに、マイクロニードル1の穿刺方向(外筒2の長さ方向)への動きを規制することができる筒状の部材である。
図2に示すように、外筒2の内部において、マイクロニードル1は、基板11が外筒2の長さ方向と直交する面に平行な状態で移動することができるように収納される。
【0022】
外筒2は内周面に、マイクロニードル1の一部と接触することにより、マイクロニードル1の外筒2の長さ方向への動きを規制する規制部である凸部P2を備える。凸部P2は外筒2の内周面に周方向に全周にわたって延伸するように設けられていてもよいし、周方向に間欠的に設けられても良い。外筒2の内面に設ける凸部P2は凸曲面で形成されることが好ましい。凸部P2を凸曲面で形成することにより、後述する凸部P1による凸部P2の乗り越えをスムーズにおこなうことができる。凸部P1および凸部P2の高さは、後述するマイクロニードル1の移動の規制ができ、かつマイクロニードル1へ所定の大きさの力を加えることでの凸部P1の凸部P2の乗り越えがスムーズに行われる高さに設定される。
【0023】
図3に、穿刺器具(第1の実施形態)の使用説明図を示した。穿刺器具では、マイクロニードル1は、外筒2内で、外筒2の長さ方向に移動することによって、突起部12の先端が外筒2の第1の面11A側の開口部の端部を含む面である開口面を基準として内部に収納され、かつ凸部P1が外筒2の長さ方向において規制部である凸部P2と第2の面11B側の開口部との間に位置した第1の状態(
図3の(A))と、突起部12の先端が外筒2の開口面を基準として外部に存在する第2の状態(
図3の(B))との間で変化(移動)可能である。
【0024】
初めに、穿刺器具は、マイクロニードル1が第1の状態(
図3の(A))で、マイクロニードル1の突起部12が皮膚Sに対向するように設置される。第1の状態(
図3の(A))において、マイクロニードル1の基板11側面の凸部P1と外筒2の内周面の凸部P2は接触しており、これによりマイクロニードル1の第1の面11A側の開口部方向へ移動は規制される。
【0025】
次に、第1の状態(
図3の(A))において、マイクロニードル1に、矢印で示すように、基板11の第2の面11Bから外筒2の第1の面11Aへ向かって力を加える。具体的には、例えばマイクロニードル1の基板11の第2の面11Bを押圧する。押圧は、使用者の指等でおこなってもよいし、治具等でおこなってもよい。そして、穿刺器具は、マイクロニードル1の基板11の第2の面11Bを押圧した際に加えた力が一定の大きさを超えたときに第1の状態から第2の状態(
図3の(B))に変化することができる。すなわち、穿刺器具のマイクロニードル1は、マイクロニードル1の基板11の第2の面11Bを押圧した際に加えた力が一定の大きさを超えたときに、凸部P1が、外筒2の内周面に設けられた凸部P2を乗り越えることができる。この結果、第2の状態において、マイクロニードル1の突起部12を皮膚Sに穿刺される。
【0026】
このように、穿刺器具は、マイクロニードル1の基板11の第2の面11Bを押圧した際に加えた力が一定の大きさを超えたときにはじめて第1の状態から第2の状態に変化することを利用して、マイクロニードル1の突起部12に皮膚Sへの穿刺に必要な力を与えることができる。そのため、マイクロニードル1を一定の大きさ以上の力で皮膚Sに穿刺することが可能となり、マイクロニードル1の突起部12の皮膚Sへの穿刺を確実なものとすることができる。すなわち、簡便な方法で、安定的にマイクロニードル1を皮膚Sに穿刺することができる。なお、凸部P1に、凸部P2を乗り越えさせるためにマイクロニードル1に加える一定の大きさは、凸部P1および凸部P2の少なくともいずれかの高さにより調節することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態に係る穿刺器具について説明する。なお、他の実施形態の説明にあっては第1の実施形態からの変更点を中心に説明する。なお、本発明は、第1から第7の実施形態の記載の内容に限定されるものではない。
【0028】
図4、
図5、
図6に本発明の穿刺器具(第2の実施形態)について示した。
図4は、本発明の穿刺器具(第2の実施形態)に用いるマイクロニードル1の斜視図である。
図5は、本発明の穿刺器具(第2の実施形態)に用いる外筒2の斜視図である。
図6は、本発明の穿刺器具(第2の実施形態)の使用説明図(断面模式図)である。
【0029】
第2の実施形態にあっては、
図5に示す外筒2の形状が
図2に示す第1の実施形態の外筒2の形状と異なる。第2の実施形態あっては、外筒2の内面に長さ方向に並んで2つの凸部P2a、P2bが規制部として設けられている。
図6の(A)に示すように、外筒2の内面の2つ凸部P2a、P2bの間に基板11の側面の凸部P1が位置することにより、マイクロニードル1の移動が規制された状態が維持される。このため、皮膚Sへの穿刺前の第1の状態を安定的に維持することができるとともに、第1の実施形態と同様に安定的にマイクロニードル1を皮膚Sに穿刺することが可能となる。
【0030】
(第3の実施形態)
図7、
図8、
図9に本発明の穿刺器具(第3の実施形態)について示した。
図7は、本発明の穿刺器具(第3の実施形態)に用いるマイクロニードル1の斜視図である。
図8は、本発明の穿刺器具(第3の実施形態)に用いる外筒2の斜視図である。
図9は、本発明の穿刺器具(第3の実施形態)の使用説明図(断面模式図)である。
【0031】
第3の実施形態にあっては、
図7に示すマイクロニードル1の形状が
図1に示す第1の実施形態のマイクロニードル1の形状と異なる。第3の実施形態あっては、マイクロニードル1の基板11の側面が突出した、厚み方向に並ぶ2つの凸部P1a、P1bが設けられている。
図9の(A)に示すように、マイクロニードル1の基板11の側面の2つ凸部P1a、P1bの間に外筒の内面の凸部P2が位置することにより、マイクロニードル1の移動が規制された状態が維持される。このため、皮膚Sへの穿刺前の第1の状態を安定的に維持することができるとともに、第1の実施形態と同様に安定的にマイクロニードル1を皮膚Sに穿刺することが可能となる。
【0032】
(第4の実施形態)
図10、
図11、
図12に本発明の穿刺器具(第4の実施形態)について示した。
図10は、本発明の穿刺器具(第4の実施形態)に用いるマイクロニードル1の斜視図である。
図11は、本発明の穿刺器具(第4の実施形態)に用いる外筒2の斜視図である。
図12は、本発明の穿刺器具(第4の実施形態)の使用説明図(断面模式図)である。
【0033】
第4の実施形態にあっては、
図10に示すマイクロニードル1の形状が
図1に示す第1の実施形態のマイクロニードル1の形状と異なる。第4の実施形態あっては、マイクロニードル1は基板11の側面が周方向にわたって窪んだ溝状の凹部Q1備える。そして、
図12の(A)に示すように、凹部Q1内に外筒2の内面の凸部P2が位置することにより、マイクロニードル1の移動が規制された状態が維持される。凸部P2の高さは、マイクロニードル1の移動の規制ができ、かつマイクロニードル1の基板11に加えられた力が一定以上の大きさを超えたときに、凸部P2が凹部Q1から抜け出ることができる高さに設定される。このため、皮膚Sへの穿刺前の第1の状態を安定的に維持することができるとともに、第1の実施形態と同様に安定的にマイクロニードル1を皮膚Sに穿刺することが可能となる。
【0034】
(第5の実施形態)
図13、
図14、
図15に本発明の穿刺器具(第5の実施形態)について示した。
図13は、本発明の穿刺器具(第5の実施形態)に用いるマイクロニードル1の斜視図である。
図14は、本発明の穿刺器具(第5の実施形態)に用いる外筒2の斜視図である。
図15は、本発明の穿刺器具(第5の実施形態)の使用説明図(断面模式図)である。
【0035】
第5の実施形態にあっては、
図14に示す外筒2の形状が
図2に示す第1の実施形態の外筒2の形状と異なる。第5の実施形態あっては、外筒2は内面に周方向にわたって形成された溝状の凹部Q2を規制部として備える。そして、
図15の(A)にマイクロニードル1の基板の側面の凸部P1が、外筒2の内面の凹部Q2内に位置することにより、マイクロニードル1の移動が規制された状態が維持される。凹部Q2の深さは、マイクロニードル1の基板11に加えられた力が一定以上の大きさを超えたときに、マイクロニードル1の凸部P1が、凹部Q2から抜け出ることができる深さに設定される。このため、皮膚Sへの穿刺前の第1の状態を安定的に維持することができるとともに、第1の実施形態と同様に安定的にマイクロニードル1を皮膚Sに穿刺することが可能となる。
【0036】
(第6の実施形態)
図16、
図17、
図18に本発明の穿刺器具(第6の実施形態)について示した。
図16は、本発明の穿刺器具(第6の実施形態)に用いるマイクロニードル1の斜視図である。
図17は、本発明の穿刺器具(第6の実施形態)に用いる外筒2の斜視図である。
図18は、本発明の穿刺器具(第6の実施形態)の使用説明図(断面模式図)である。
【0037】
第6の実施形態にあっては、
図16に示すマイクロニードル1の形状が
図1に示す第1の実施形態のマイクロニードルの形状と異なる。第6の実施形態のマイクロニードルにあっては、基板11の側面が第1の面11Aに向かって拡がるテーパー形状となっている。そして、
図18の(A)に示すように、マイクロニードル1の第1の面11Aが凸部P2に接触することにより、マイクロニードル1の移動が規制された状態が維持される。このため、皮膚Sへの穿刺前の第1の状態を安定的に維持することができるとともに、第1の実施形態と同様に安定的にマイクロニードル1を皮膚Sに穿刺することが可能となる。このように、本発明のマイクロニードル1は、基板11の一部が外筒2の規制部に接触することで移動が規制されれば、側面が凸部P1または凹部Q1を有さなくても良い。
【0038】
さらに、第6の実施形態にあっては、
図17に示す外筒2の構成が
図2に示す第1の実施形態の外筒2の構成と異なる。第6の実施形態の外筒2は、第2の面11B側の開口部に保護カバー3を備える。保護カバー3を備えることにより、マイクロニードル1へのコンタミの付着等を防ぐことができる。なお、保護カバー3は、外筒2の第1の面11A側の開口部に設けてもよい。また、保護カバー3は、外筒2の第2の面11B側の開口部と第1の面11A側の開口部との両方に設けてもよい。
【0039】
(第7の実施形態)
図19、
図20、
図21に本発明の穿刺器具(第7の実施形態)について示した。
図19は、本発明の穿刺器具(第7の実施形態)に用いるマイクロニードル1の斜視図である。
図20は、本発明の穿刺器具(第7の実施形態)に用いる外筒2の斜視図である。
図21は、本発明の穿刺器具(第7の実施形態)の使用説明図(断面模式図)である。
【0040】
第7の実施形態にあっては、
図20に示す外筒2の形状が
図2に示す第1の実施形態の外筒2の形状と異なる。第7の実施形態あっては、外筒2は、第2の状態において、突起部12の先端が開口面から一定の距離以上突出しないようにマイクロニードル1の移動を規制する返し部R2を、第1の面11A側の開口端に備える。また、
図19に示すマイクロニードル1の形状が
図1に示す第1の実施形態のマイクロニードル1の形状と異なる。第7の実施形態あっては、マイクロニードル1は、側面に外筒2の返し部R2の形状に対応した段差形状を備える。
【0041】
外筒2が返し部R2を備えることで、本穿刺器具を使用する使用者が、穿刺の際に感じる打突感を低減することができる。本穿刺器具は、マイクロニードル1の基板11の第2の面11Bを押圧した際に押圧する力が一定の大きさを超えたときにはじめて第1の状態から前記第2の状態に変化することを利用して、マイクロニードル1の突起部12を皮膚Sへの穿刺に必要な力を与えることができる。そのため、マイクロニードル1を一定の大きさ以上の力で皮膚Sに穿刺することが可能となり、マイクロニードル1の突起部12の皮膚Sへの穿刺を確実なものとすることができる。ただし、使用者によっては本穿刺器具を使用して皮膚Sにマイクロニードル1を穿刺した際の衝撃を不快に感じる場合もある。このため、第7の実施形態の返し部R1を設けることにより、皮膚Sにマイクロニードルを穿刺した際の衝撃を低減させることができる。また、外筒2が返し部R2を備えることで、突起部12の穿刺深さを調整することが可能となる。
【0042】
[マイクロニードル材料等]
マイクロニードル1に用いられる材料については、生体適合性を有する材料から形成されることが好ましい。マイクロニードル1を構成する材料としては、例えば、シリコンや、ステンレス鋼、チタン、あるいはマンガン等の金属や、医療用シリコーン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート、あるいは環状オレフィンコポリマー等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、マイクロニードル1は、皮膚Sが有する水分によって溶解する材料、すなわち、水溶性材料から構成されていてもよい。水溶性材料としては、水溶性高分子や多糖類を用いることができる。水溶性高分子としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)、プルラン、アルギン酸塩、ペクチン、キトサン、キトサンサクシナミド、オリゴキトサンが挙げられる。また、多糖類としては、トレハロースやマルトースが挙げられる。水溶性材料から形成された突起部は、皮膚Sに刺された後、皮内で溶解する。なお、基板11と突起部12とは、互いに同一の材料から形成されてもよいし、互いに異なる材料から形成されてもよい。
【0043】
[外筒の材料等]
穿刺器具に用いる外筒2の材料としては、アルミニウムやステンレスの金属材料、ガラス等の無機材料、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、シリコーン等の樹脂材料を使用することができる。ただし、使用材料はこれらに限定されるものではない。例えば、外筒2の材料として樹脂材料を選択した場合、射出成形により外筒2を製造することができる。ただし、マイクロニードル1の製造方法は射出成形法に限定されるものではない。
【0044】
[保護カバーの材料等]
穿刺器具に用いる保護カバーの材料としては、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂カバーを使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、積層カバーを用いることもできる。保護カバーの外筒2への固定方法は、ヒートシールにより固定してもよいし、公知の接着剤により固定してもよい。
【実施例】
【0045】
<実施例>
精密機械加工によってシリコン基板を加工し、円錐形状の突起部12が、6列6行のマトリクス状に36本配列されているマイクロニードル1の原版を形成した。次に、上記原版の表面に、メッキ法によりニッケル膜を成膜した。そして、90℃に加熱した重量パーセント濃度30%の水酸化カリウム水溶液を用いたウェットエッチングにより原版を除去し、原版の凹凸が反転された、ニッケルから成る凹版を作製した。当該凹版を用い、射出成形法により
図1に示すポリプロピレン製のマイクロニードル1を成形した。ポリプロピレン製のマイクロニードル1は、基板11の外形が円柱形状であり、基板11の一方の面に36本の突起部を備え、基板11の側面に、全周にわたって凸部P1を備える。なお、突起部12の高さHは300μmであり、基板11の最大径φは20mmであった。
【0046】
一方、精密機械加工によって、
図2に示すポリカーボネート製の外筒2を成形した。外筒2は、円筒形状であり内面に全周にわたり凸部P2を備える。外筒2の内部にマイクロニードル1を挿入し設置すると、
図3の(A)に示すように、突起部12の先端が外筒2の開口部の開口面を基準として内部に収納され、かつ凸部P1が外筒2の長さ方向において規制部である凸部P2と第2の面11B側の開口部との間に位置した第1の状態とすることができた。第1の状態において、マイクロニードル1の基板11側面の凸部P1と外筒2内面の凸部P2とは接触しており、これによりマイクロニードル1は一定以上の外力無しで突起部12の先端が外筒の開口面を基準として外部に存在する第2の状態に移動することができない。
【0047】
第1の状態にある穿刺器具を人工皮膚の上に配置し、マイクロニードル1の基板11の第2の面11Bを指で押圧した。押圧の際は徐々に力を増加していった。すると、押圧する力が一定の大きさを超えたときに第1の状態から第2の状態(
図3(B))に変化し、マイクロニードル1の突起部12を人工皮膚に勢いよく穿刺することができた。
【0048】
<比較例>
比較例として、実施例で製造したマイクロニードル1を指でつまみながら人工皮膚に対し突起部12を穿刺した。比較例では、外筒2を用いず、マイクロニードル1単独で穿刺をおこなっている。
【0049】
実施例でマイクロニードル1を穿刺した後の人工皮膚と、比較例でマイクロニードル1穿刺した後の人工皮膚とを観察比較した。実施例の穿刺後の人工皮膚では36箇所の穿刺痕が均一に確認できたのに対し、比較例の穿刺後の人工皮膚では36箇所の穿刺痕が不均一な形状であることが確認された。比較例の穿刺後の人工皮膚では、小さい穿刺痕が散見された。実施例の穿刺器具を用いた穿刺方法は、マイクロニードル1を一定の押圧力以上で穿刺することが可能となり、マイクロニードル1の突起部12の皮膚Sへの穿刺を確実なものとすることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、穿刺器具等に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 マイクロニードル
11 基板
11A 第1の面(突起部形成面)
11B 第2の面(突起部非形成面)
12 突起部
2 外筒
3 保護カバー
P1、P2 凸部
Q1、Q2 凹部
R2 返し部