(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】後処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 45/18 20060101AFI20220511BHJP
B65H 31/10 20060101ALI20220511BHJP
B65H 29/20 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B65H45/18
B65H31/10
B65H29/20
(21)【出願番号】P 2018073829
(22)【出願日】2018-04-06
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】能宗 輝光
(72)【発明者】
【氏名】岸本 正尚
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143698(JP,A)
【文献】特開2014-015299(JP,A)
【文献】特開2006-219282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
B65H 37/00-37/06
B65H 45/00-45/30
B65H 29/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで処理トレイに用紙を一枚ずつ搬入する搬入ローラーと、
前記搬入ローラーで搬入された用紙を前記処理トレイ上の受入位置に一枚ずつ搬送する搬送部材と、
前記搬送部材で前記受入位置に搬送された用紙の束を、前記処理トレイ上の綴じ位置と、用紙の搬入方向において前記綴じ位置と隣接する中折り位置とに移動させる移動部材と、
前記綴じ位置において用紙の束を綴じる綴じ部と、前記中折り位置において用紙の束を中折りする中折り部と、を有する処理部と、を備え、
前記搬送部材は、回転軸と、前記回転軸から突出して前記処理トレイに搬入された用紙に接触するシート状の弾性部材で形成される接触片と、を有し、前記処理トレイ上での前記搬入方向において前記処理部の上流側と下流側とにそれぞれ配置されて、前記搬入ローラーの回転速度よりも速い速度で回転
し、
前記下流側に配置された前記搬送部材の前記接触片の長さは、前記上流側に配置された前記搬送部材の前記接触片の長さよりも長いことを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
前記上流側と前記下流側とにそれぞれ配置された前記搬送部材は、同期して回転することを特徴とする請求項1に記載の後処理装置。
【請求項3】
前記下流側に配置された前記搬送部材の回転速度は、前記上流側に配置された前記搬送部材の回転速度よりも速いことを特徴とする請求項1に記載の後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙束を綴じて中折りする後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブックレット等の製本作業に、用紙束を綴じて中折りする後処理装置が使用される場合がある。綴じ処理や中折り処理を正確に行うためには、用紙を確実に搬送して、整合された用紙束を形成する必要がある。
【0003】
後処理装置は、処理トレイに用紙を一枚ずつ搬入して所定位置に搬送する搬入ローラーと、所定位置に搬送されて形成された用紙の束を綴じる綴じ部と、綴じられた用紙の束を中折りする中折り部と、を備えている。用紙の種類等によっては、搬入ローラーによって所定位置に用紙を確実に搬送できない場合があるので、搬入ローラーによって搬入された用紙の所定位置への搬送をアシストする搬送部材が設けられる場合がある。
【0004】
特許文献1には、搬送部材として、駆動ローラと、駆動ローラに従動回転するピックアップローラと、を有するシート処理装置が開示されている。ピックアップローラは、駆動ローラにシート(用紙)を押圧して従動回転する押圧位置と、駆動ローラから離間した離間位置と、に変位するように設けられている。ピックアップローラは、シートがストッパに当接する(用紙が綴じ位置に搬送される)直前に押圧位置から離間位置に変位して、シートのオーバー搬送を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に記載のシート処理装置では、搬送部材と用紙との摩擦力が大きいので、用紙間の摩擦が大きい用紙の場合、先に搬送された用紙を一緒に搬送してしまい、所定位置において用紙の整合が乱れるという問題が生じる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、搬入された用紙を所定の位置に確実に搬送できる搬送部材を備える後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の後処理装置は、回転することで処理トレイに用紙を一枚ずつ搬入する搬入ローラーと、前記搬入ローラーで搬入された用紙を前記処理トレイ上の受入位置に一枚ずつ搬送する搬送部材と、前記搬送部材で前記受入位置に搬送された用紙の束を、前記処理トレイ上の綴じ位置と、用紙の搬入方向において前記綴じ位置と隣接する中折り位置とに移動させる移動部材と、前記綴じ位置において用紙の束を綴じる綴じ部と、前記中折り位置において用紙の束を中折りする中折り部と、を有する処理部と、を備え、前記搬送部材は、回転軸と、前記回転軸から突出して前記処理トレイに搬入された用紙に接触するシート状の弾性部材で形成される接触片と、を有し、前記処理トレイ上での前記搬入方向において前記処理部の上流側と下流側とにそれぞれ配置されて、前記搬入ローラーの回転速度よりも速い速度で回転することを特徴とする。
【0009】
本発明の後処理装置において、前記上流側と前記下流側とにそれぞれ配置された前記搬送部材は、同期して回転することを特徴としても良い。
【0010】
本発明の後処理装置において、前記下流側に配置された前記搬送部材の回転速度は、前記上流側に配置された前記搬送部材の回転速度よりも速いことを特徴としても良い。
【0011】
本発明の後処理装置において、前記下流側に配置された前記搬送部材の前記接触片の長さは、前記上流側に配置された前記搬送部材の前記接触片の長さよりも長いことを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シート状の弾性部材で形成される接触片で用紙を搬送することで、接触片が当接している用紙の搬送のみをアシストし、その下方の用紙は搬送されないので、重送や座屈を防いで用紙を確実に受入位置に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る後処理装置を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る後処理装置の中折り装置を模式的に示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る後処理装置において、中折り装置の処理トレイを示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る後処理装置において、搬送部材を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る後処理装置において、搬送部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る後処理装置を説明する。
【0015】
まず、
図1を参照して、後処理装置1の全体の構成を説明する。
図1は、後処理装置の全体の構成を模式的に示す正面図である。
図1の紙面手前側を後処理装置の前側とする。各図のFr、Rr、L、Rは後処理装置の前側、後側、左側、右側をそれぞれ示す。
【0016】
後処理装置1の本体部3には、一方の側面(右側面)の上部に用紙の受入口5が形成されている。本体部3の他方の側面(左側面)の上部と下部とには、それぞれ第1排出口7と第2排出口9とが形成されている。さらに、本体部3の上面には、第3排出口11が形成されている。第1排出口7の下方には、第1排出トレイ13が設けられ、第2排出口9の下方には、第2排出トレイ15が設けられ、第3排出口11の下方には、第3排出トレイ17が設けられている。本体部3の内部には、受入口5から第1排出口7に向かう搬送方向に沿って用紙を搬送する搬送経路21が設けられている。搬送経路21に沿って、用紙に対して穿孔処理を行うパンチ装置23と、用紙束をステープルで綴じるステープル装置25と、が設けられている。
【0017】
搬送経路21は、パンチ装置23とステープル装置25との間で、第1分岐経路27と第2分岐経路29とに分岐している。第1分岐経路27は、第3排出口11に向かうように形成されている。第2分岐経路29は、用紙を一時的に待避させる待避ドラム31に沿って設けられた待避経路33を介して下方に延びている。第2分岐経路29の下方には、用紙束を綴じて中折りする中折り装置41が設けられている。
【0018】
次に、中折り装置41について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は中折り装置の構成を模式的に示す正面図、
図3は中折り装置の処理トレイを示す斜視図である。
【0019】
中折り装置41は、本体部3の下部に設けられるベース部43と、第2分岐経路29とベース部43との間に設けられる搬入路45と、搬入路45の出口に設けられる搬入ローラー対47と、搬入ローラー対47の下方においてベース部43に設けられる処理トレイ49と、処理トレイ49の上方に配置される2つの搬送部材51U、51Dと、処理部52としての処理トレイ49の上方に設けられる綴じ部53及び処理トレイ49の上方及び下方に設けられる中折り部55と、中折り部55の上方に設けられる排出部57と、を備えている。
【0020】
ベース部43は、本体部3の他方の側面(左面)に向かって下方に傾斜する傾斜面43aを有している。
【0021】
搬入路45は、第2分岐経路29の出口とベース部43の傾斜面43aの上端部との間に、上下方向に沿って形成されている。搬入路45の下端部45aは、傾斜面43aに沿うように斜め左下方に傾斜している。搬入路45には、第2分岐経路29から用紙が搬入される。
【0022】
搬入ローラー対47は、駆動源(図示省略)で駆動されて回転する駆動ローラーと、駆動ローラーに従動して回転する従動ローラーと、を有している。駆動ローラーは、制御部59(
図1参照)によって制御されて回転する。搬入ローラー対47は、搬入路45の下端部45aの出口に配置されている。搬入ローラー対47は、搬入路45に搬入された用紙を、搬入路45から傾斜面43aの傾斜方向に沿うように斜め下方に送り出す。以降の説明において、搬入ローラー対47によって用紙が送り出される方向を搬送方向Yとする。
【0023】
処理トレイ49は、搬送方向Yの上流側に配置される上流側トレイ61と、上流側トレイ61の下流側に配置される下流側トレイ63と、を有している。上流側トレイ61と下流側トレイ63とには、搬送方向Yと直交する幅方向の中心に、搬送方向Yに沿ったスリット61aと63aが形成されている。上流側トレイ61と下流側トレイ63とは、ベース部43の傾斜面43aに、所定の隙間Dを開けて配置されている。
【0024】
上流側トレイ61には、移動部材としての上流側カーソル67が搬送方向Y及びその反対方向に沿ってスライド可能に支持されている。上流側トレイ61の搬送方向の上流側の端部と下流側端部との下方には、それぞれプーリ69A、69Bが回転可能に支持されている。一対のプーリ69A、69B間には、無端状ベルト71が巻き回されている。上流側カーソル67は、無端状ベルト71に取り付けられて、スリット61aを通って上流側トレイ61から上方に突き出している。一対のプーリ69A、69Bを回転させて無端状ベルト71を走行させることで、上流側カーソル67がスリットに沿って移動する。一対のプーリ69A、69Bは、制御部59で制御されて回転する。
【0025】
下流側トレイ63には、移動部材としての下流側カーソル75が搬送方向Y及びその反対方向に沿ってスライド可能に支持されている。下流側トレイ63の搬送方向の上流側の端部と下流側端部との下方には、それぞれプーリ77A、77Bが回転可能に支持されている。一対のプーリ77A、77B間には、無端状ベルト79が巻き回されている。下流側カーソル75は、無端状ベルト79に取り付けられて、スリット63aを通って下流側トレイ63から上方に突き出している。一対のプーリ77A、77Bを回転させて無端状ベルト79を走行させることで、下流側カーソル75がスリットに沿って移動する。一対のプーリ77A、77Bは、制御部59で制御されて回転する。
【0026】
さらに、上流側トレイ61と下流側トレイ63には、それぞれ一対の幅合わせ部材81、83が幅方向に沿って移動可能に支持されている。
【0027】
処理トレイ49には、搬入ローラー対47によって送り出された用紙が搬入される。この際、搬入された用紙の先端(下流側端部)が、下流側トレイ63から突き出している下流側カーソル75に当接して、用紙が受入位置に位置決めされるようになっている。
【0028】
次に、搬送部材51U、51Dについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は搬送部材を示す斜視図、
図5は搬送部材を示す側面図である。
【0029】
搬送部材51U、51Dは、同じ構成を有し、それぞれ回転軸91と、回転軸91に所定の間隔を開けて固定部材93によって固定される2つの接触片95と、を有している。回転軸91は、制御部59で制御されて回転する。接触片95は、縦長の長方形状のシート片であり、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の弾性部材で形成されている。固定部材93は、接触片95の長手方向の一端側の固定部95aを支持して、接触片95が回転軸91の接線方向に沿うように回転軸91に固定している。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、一方の搬送部材51U(以降、上流側搬送部材51Uとする)は、上流側トレイ61の搬送方向Yにおける中央よりもやや下流側の位置の上方に、回転軸91が幅方向と平行な姿勢で配置されている。他方の搬送部材51D(以降、下流側搬送部材51Dとする)は、下流側トレイ63の搬送方向Yにおける中央よりもやや上流側の位置に、回転軸91が幅方向と平行な姿勢で配置されている。各回転軸91は、接触片95の先端部95bが各トレイに接触可能な高さに支持されている。各回転軸91の一端には駆動源(図示省略)が接続されている。各回転軸91は、駆動源で駆動されて搬送方向(
図2~
図5の時計回り方向)に回転する。ここで、各搬送部材は、接触片95と回転軸91との固定部95aが、接触片95の先端部95bよりも回転軸91の回転方向Cの下流側となる姿勢をとっている。つまり、各搬送部材は、接触片95と回転軸91との固定部95aを先にして回転する。
【0031】
上流側の搬送部材51Uと下流側の搬送部材51Dとは、同じ姿勢、すなわち、回転軸91に対して接触片95が同じ向きに固定されている姿勢で、同期して回転する。制御部59は、搬送部材51U、51Dを、搬入ローラー対47よりも速い速度で回転させる。ただし、2つの接触片95は必ずしも同じ姿勢でなくともよい。
【0032】
再度
図2を参照して、綴じ部53は、用紙の中央部を閉じる中綴じステープラーであり、上流側の搬送部材51Uよりも下流側において、上流側トレイ61の上方に配置されている。ステープル装置は、制御部59で制御されたステープル処理を行う。
【0033】
中折り部55は、一対の中折りローラー101と、一対の中折りローラー101間のニップNに進退可能な折りブレード103と、を備えている。一対の中折りローラー101は、上流側トレイ61と下流側トレイ63との間の隙間Dの上方に、幅方向に沿って配置されている。上流側の中折りローラーは駆動源(省略)で駆動されて、
図2の時計回り方向に回転する。下流側の中折りローラーは、付勢部材(図示省略)によって上流側の中折りローラーに押圧されて、両ローラー101間にニップNを形成している。折りブレード103は、駆動機構(図示省略)によって駆動されて、隙間Dを通って、一対の中折りローラー101間のニップNに進退する。上流側の中折りローラーの駆動源及び駆動機構は、制御部59で制御されて駆動される。
【0034】
排出部57は、排出路111と、排出ローラー113と、を備えている。排出路111は、中折り部55の一対の中折りローラー101間のニップNの上方から、ベース部43の傾斜面43aの下方側に傾斜して第2排出口9へ向かうように形成されている。排出ローラー113は、排出路111の出口に回転可能に支持されている。排出ローラー113は、制御部59で制御されて回転する。
【0035】
次に、上記構成を有する中折り装置41によるブックレット形成作業について、
図1を主に参照して説明する。初期状態において、下流側カーソル75は、下流側の搬送部材51よりも下流側の受入位置へスライドしている。さらに、上流側カーソル67は、搬入ローラー対47よりも上流側へスライドしている。幅合わせ部材81、83は、用紙の幅方向の両側縁よりも外側の待機位置にスライドしている。
【0036】
第2分岐経路29から搬入路45に用紙が搬送されると、制御部59が搬入ローラー対47の駆動ローラーを回転させて、搬送された1枚目の用紙を搬入路45から処理トレイ49に送り出す。送り出された用紙は、処理トレイ49上を下流側カーソル75に向かってスライドする。この際、制御部59が2つの搬送部材51U、51Dの回転軸91を回転させる。これにより、処理トレイ49上での用紙の搬送がアシストされる。すなわち、接触片95の先端部が用紙に接触しながら回転することで、用紙が下流側へ送り出される。1枚目の用紙は、先端が下流側カーソル75に当接するまで搬送される。その後、下流側カーソル75を上流方向にスライドさせて用紙を上流側カーソル67に当接させる。これにより、用紙は、上流側カーソル67と下流側カーソル75とで搬送方向Yに整合される。次に、幅合わせ部材81、83を幅方向にスライドさせて用紙の両側縁に当接させる。これにより、用紙は幅方向に整合される。下流側カーソル75を上流方向にスライドさせる間、2つの搬送部材51U、51Dは、接触片95が用紙から離間するように回転している。用紙の整合後、下流側カーソル75を受入位置にスライドさせると共に、幅合わせ部材81、83を待機位置にスライドさせる。下流側カーソル75を受入位置にスライドさせる間、2つの搬送部材51U、51Dは回転して、用紙を下流側へ送り出している。
【0037】
その後、2枚目の用紙が搬入ローラー対47によって搬入路45から送り出される。送り出された用紙は、2つの搬送部材51U、51Dによって1枚目の用紙上を下流側カーソル75に向かって搬送される。この際、接触片95の先端部のみが用紙に当接するので、2枚目の用紙の搬送のみをアシストし、1枚目の用紙は、先端が下流側カーソル75に当接したままの状態が保たれる。その後、下流側カーソル75を上流方向にスライドさせて用紙束を上流側カーソル67に当接させて、上流側カーソル67と下流側カーソル75とで搬送方向Yにおいて用紙束を整合する。次に、幅合わせ部材81、83が幅方向にスライドさせて用紙束の両側縁に当接させて、幅合わせ部材81、83で用紙束を幅方向において整合する。下流側カーソル75を上流方向にスライドさせる間、2つの搬送部材51U、51Dは、接触片95が用紙束から離間するように回転している。このような下流側カーソル75と上流側カーソル67とによる搬送方向Yにおける整合と、幅合わせ部材81、83による幅方向における整合とは、用紙1枚毎に行われる。
【0038】
このように所定枚数(一例で20枚)の用紙が搬入路45から搬送されることで、処理トレイ49上に用紙束が形成される。なお、
図5の二点鎖線に示されるように、接触片95は、搬入される用紙Sの枚数が増えると弾性変形しながら回転する。このように接触片95が弾性変形することで、処理トレイ49に積載される用紙の厚さの増加を吸収できる。
【0039】
その後、用紙束の中央がステープラーで綴じられる。その後、制御部59が、一対のプーリ69A、69Bと一対のプーリ77A、77Bとを回転させて、上流側カーソル67と下流側カーソル75とを移動させて、用紙束を、処理トレイ49に沿って中折り位置に搬送する。つまり、搬送方向Yにおける用紙束の中央が、中折り部55の中折り位置(中折りローラー101のニップNに対応する位置)に達するまで、上流側カーソル67と下流側カーソル75とが下流方向に同時に移動する。この間、制御部59は、搬送部材51U、51Dの回転軸91を回転させて、接触片95を用紙束から離間させている。
【0040】
中折り位置において、折りブレード103が駆動機構によって駆動されて隙間Dを通って、一対の中折りローラー101のニップNに進出する。これにより、用紙束の中央部が折りブレード103でニップNに押し上げられ、用紙束は、上流側ローラーと下流側ローラーとで両側から押圧されて中折りされる。なお、下流側ローラーは、中折りされた用紙束の厚み分だけ付勢力に抗して移動する。
【0041】
折りブレード103は所定のタイミングで後退し、中折りローラー101の上流側ローラーと下流側ローラーとはさらに回転し、中折りされた用紙束は、中折りされた中央部を先にしてニップNから排出部57の排出路111に排出される。
【0042】
排出された用紙束は、排出ローラー113によって排出路111に沿って搬送され、第2排出口9から排出されて第2排出トレイ15に積載される。これにより、ブックレットが完成する。
【0043】
上記説明したように本発明の後処理装置1によれば、搬入ローラー対47から送り出された用紙の受入位置までの搬送を搬送部材51U、51Dでアシストするので、用紙を確実に受入位置に搬送することができる。さらに、シート状の接触片95の先端部で用紙を搬送するので、該接触片95が当接している用紙(最上位の用紙)の搬送のみをアシストし、その下方の用紙は搬送されないようになっている。したがって、用紙の重送や貼り付き、座屈を防ぐことができる。
【0044】
また、上流側カーソル67と下流側カーソル75とで用紙束を移動させる間、接触片95は用紙束から離間していることが好ましい。本実施形態の搬送部材51U、51Dでは、回転軸91を回転させることで接触片95を用紙束から容易に離間させることができる。一方、搬送部材51にローラーを使用した場合は、搬送部材51を移動させる機構が必要になってしまう。また、シート状の接触片95の方が、ローラーよりも低コストで形成できるという利点もある。
【0045】
さらに、搬送部材51U、51Dの回転速度は、搬入ローラー対47の回転速度よりも速いので、各搬送部材の接触片95が用紙に当たる回数が多くなり、用紙の搬送力を高めることができる。したがって、用紙の先端を下流側カーソル75に確実に当接させることができる。
【0046】
また、処理トレイ49に積載される用紙の枚数が増えると、回転軸91の回転中心と最上用紙と接触片95との当接位置との距離が短くなる。すなわち、
図5の二点鎖線で示されるように、最上用紙Snと接触片95との当接位置と、回転軸91の回転中心との間の距離rnは、一枚目の用紙S1と接触片95との当接位置と、回転軸91の回転中心との間の距離r1よりも短い。つまり、処理トレイ49に積載される用紙の枚数が増えると、搬送部材51U、51Dの周速度は遅くなる。搬送部材51U、51Dの回転速度が搬入ローラー対47の回転速度よりも遅くなると、搬送部材51U、51Dと搬入ローラー対47との間で用紙が座屈する虞がある。本実施形態では、積載される用紙の枚数が増えても、搬送部材51U、51Dの回転速度が搬入ローラー対47の回転速度よりも遅くならないように、制御部59が搬送部材51U、51Dの回転速度を予め設定している。詳細には、制御部59は、20枚の用紙が積載された場合の、接触片95と最上用紙との当接位置における搬送部材51U、51Dの周速度が、搬入ローラー対47の回転速度よりも速くなるように設定している。
【0047】
また、2つの搬送部材51U、51Dは同期して同じ速度で回転するので、用紙を円滑に搬送することができる。ただし、2つの搬送部材51U、51Dは、必ずしも完全に同期させる必要はなく、少しずれていても良い。
【0048】
次に、本実施形態の搬送部材51の変形例について説明する。
【0049】
第1の変形例においては、下流側の搬送部材51Dの回転速度が、上流側の搬送部材51Uの回転速度よりも速い。
【0050】
搬入ローラー対47が用紙を送り出す力は、搬入ローラー対47に近いほど強く、搬入ローラー対47から遠いほど弱くなる。このため、下流側の搬送部材51Dの回転速度を、上流側の搬送部材51Uの回転速度よりも速くすることで、搬入ローラー対47から遠い側、すなわち、下流側において、接触片95が用紙に当接する回数が増える。これにより、下流側において用紙の搬送力を高めることができ、用紙を安定して受入位置まで搬送できる。なお、この場合は、2つの搬送部材51U、51Dは同期して回転しない。
【0051】
第2の変形例においては、下流側の搬送部材51Dの接触片95の長さが、上流側の搬送部材51Uの接触片95の長さよりも長い。
【0052】
この例では、下流側の搬送部材51Dの接触片95の長さが、上流側の搬送部材51Uの接触片95の長さよりも長くすることで、接触片95と用紙との接触面積が、下流側の搬送部材51Dの方が上流側の搬送部材51Uよりも長くなる。したがって、搬入ローラー対47から遠い側、すなわち、下流側において、接触片95による用紙の搬送力を高めることができ、用紙を安定して受入位置まで搬送できる。なお、この場合は、2つの搬送部材51U、51Dは同期して回転する。
【0053】
また、下流側での搬入ローラー対47による用紙の送り出し力の低下を補うために、下流側の搬送部材51Dの数を、上流側の搬送部材51Uの数よりも多くしても良い。あるいは、下流側の搬送部材51Dの接触片95の数を、上流側の搬送部材51Uの接触片95の数よりも多くしても良い。さらには、下流側の搬送部材51Dの接触片95を、上流側の搬送部材51Uの接触片95よりも摩擦力の高い材料で形成してもよい。この場合も、下流側の搬送部材51Dによる用紙の搬送力を高めることができる。
【0054】
また、搬送部材51の回転速度を、用紙の状態や用紙の種類によって変更してもよい。一例として、水分を含んだ用紙やインクジェット方式で画像が形成された用紙のような、高い搬送力が必要な用紙の場合は、回転速度を速くすることが好ましい。
【0055】
また、本実施形態の後処理装置は、電子写真方式やインクジェット方式の画像形成装置に連結して、画像形成装置で画像が形成された用紙を用いてブックレットを形成することができる。あるいは、画像形成装置とは別の手段で形成された用紙を受け入れてブックレットを形成することもできる。
【0056】
さらに、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る後処理装置における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 後処理装置
47 搬入ローラー
49 処理トレイ
51U、51D 搬送部材
52 処理部
53 綴じ部
55 中折り部
67 上流側カーソル(移動部材)
75 下流側カーソル(移動部材)
91 回転軸
95 接触片