IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

特許7070000車両用インストルメントパネル開口部周辺構造
<>
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図1
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図2
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図3
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図4
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図5
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図6
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図7
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図8
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図9
  • 特許-車両用インストルメントパネル開口部周辺構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】車両用インストルメントパネル開口部周辺構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/06 20060101AFI20220511BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20220511BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60R7/06 G
B62D25/08 J
B60K37/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018076182
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019182235
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成冨 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 暁人
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168999(JP,A)
【文献】特開2004-345489(JP,A)
【文献】特開2016-113067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00-7/14
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するインストルメントパネルと、該開口部に取付けられる所定部品とを備える車両用インストルメントパネル開口部周辺構造において、当該周辺構造はさらに、
前記開口部の上縁に車両前側から取付けられ該上縁に沿って車幅方向に差し渡される長尺状の板状部材と、
前記板状部材の両端部それぞれに車幅方向に位置調整可能に取付けられ前記所定部品を案内する一対の樹脂部材とを備えることを特徴とする車両用インストルメントパネル開口部周辺構造。
【請求項2】
前記所定部品は前記開口部に開閉自在に取付けられるグローブボックスであって、該グローブボックスには、該グローブボックスの閉状態で車両前方に突出する車幅方向に離間して配置された一対のリブが形成されていて、
前記一対の樹脂部材には、前記開口部の車幅方向中央に向かって膨出し前記一対のリブにそれぞれ当接する一対の当接部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用インストルメントパネル開口部周辺構造。
【請求項3】
前記一対の樹脂部材には、互いに面する一対の側壁部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用インストルメントパネル開口部周辺構造。
【請求項4】
当該周辺構造はさらに、
車両両側面に差し渡され前記インストルメントパネルが取付けられるステアリングサポートメンバと、
前記ステアリングサポートメンバに接合され該ステアリングサポートメンバから下方に延び前記一対の樹脂部材の車両前側にそれぞれ固定される一対のブラケットとを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用インストルメントパネル開口部周辺構造。
【請求項5】
前記インストルメントパネルはさらに、前記開口部の両側縁にそれぞれ形成され車両前方に突出し前記一対の樹脂部材にそれぞれ固定される一対の取付部を有することを特徴とする請求項4に記載の車両用インストルメントパネル開口部周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用インストルメントパネル開口部周辺構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、インストルメントパネルと、インストルメントパネルの開口部に取付けられる所定部品とを備えている。なお所定部品としては、例えば被収納物を収納するグローブボックスなどがある。
【0003】
インストルメントパネルは樹脂製であるため、成形時などに開口部がねじれるなど変形する場合があり得る。特許文献1には、グローブボックスが取付けられるインストルメントパネルの開口に枠状のフレーム部材を取り付けることで、開口を補強する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-338079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構造では、インストルメントパネルの開口に、枠状のフレーム部材が取付けられている。しかしインストルメントパネルの成形時などに開口の一部がねじれるなど変形した場合、この変形に追従して開口にフレーム部材を確実に取付けて開口を補強することは、困難になる可能性がある。またインストルメントパネルの開口が変形した場合、開口に取付けられるグローブボックスなどの所定部品を適切な位置に案内することも困難となる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、インストルメントパネルの開口部が変形した場合であっても、開口部を補強しつつ、開口部に取付けられる所定部品を適切な位置に案内できる車両用インストルメントパネル開口部周辺構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用インストルメントパネル開口部周辺構造の代表的な構成は、開口部を有するインストルメントパネルと、開口部に取付けられる所定部品とを備える車両用インストルメントパネル開口部周辺構造において、周辺構造はさらに、開口部の上縁に車両前側から取付けられ上縁に沿って車幅方向に差し渡される長尺状の板状部材と、板状部材の両端部それぞれに車幅方向に位置調整可能に取付けられ所定部品を案内する一対の樹脂部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インストルメントパネルの開口部が変形した場合であっても、開口部を補強しつつ、開口部に取付けられる所定部品を適切な位置に案内できる車両用インストルメントパネル開口部周辺構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る車両用インストルメントパネル開口部周辺構造を示す図である。
図2図1の車両用インストルメントパネル開口部周辺構造の要部を示す図である。
図3図2(a)のリンフォース組立部品を示す図である。
図4図3(b)の一方の樹脂部材の各矢視図である。
図5図3(a)の板金部材の一端部および一方の樹脂部材の一部を模式的に示す図である。
図6図3(b)の他方の樹脂部材の各矢視図である。
図7図3(a)の板金部材の他端部および他方の樹脂部材の一部を模式的に示す図である。
図8図1のグローブボックスを分解して示す図である。
図9図1の車両用インストルメントパネル開口部周辺構造のA-A断面を示す図である。
図10図2(a)の車両用インストルメントパネル開口部周辺構造のB-B断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用インストルメントパネル開口部周辺構造の代表的な構成は、開口部を有するインストルメントパネルと、開口部に取付けられる所定部品とを備える車両用インストルメントパネル開口部周辺構造において、周辺構造はさらに、開口部の上縁に車両前側から取付けられ上縁に沿って車幅方向に差し渡される長尺状の板状部材と、板状部材の両端部それぞれに車幅方向に位置調整可能に取付けられ所定部品を案内する一対の樹脂部材とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、インストルメントパネルの開口部の上縁を板状部材で補強できる。また板状部材の両端部に取付けられた一対の樹脂部材は、車幅方向に個別に位置調整可能である。このため、インストルメントパネルの開口部が成形時などにねじれるなど変形した場合であっても、開口部の上縁を板状部材で補強しつつ、上記の変形に応じて一対の樹脂部材を車幅方向に位置調整し、所定部品を案内する上で適切な位置に配置できる。
【0012】
上記の所定部品は開口部に開閉自在に取付けられるグローブボックスであって、グローブボックスには、グローブボックスの閉状態で車両前方に突出する車幅方向に離間して配置された一対のリブが形成されていて、一対の樹脂部材には、開口部の車幅方向中央に向かって膨出し一対のリブにそれぞれ当接する一対の当接部が形成されているとよい。
【0013】
上記したように、一対の樹脂部材は、板状部材の両端部に対して車幅方向に位置調整可能に取付けられている。このため、一対の樹脂部材の車幅方向の位置を調整することで、開口部の車幅方向中央に向かって膨出した一対の当接部の位置も調整可能となる。よって、グローブボックスの一対のリブに対して、一対の当接部を確実に当接させてグローブボックスの開閉動作を案内することができる。したがって上記構成によれば、インストルメントパネルの開口部とグローブボックスとの間隙(見切り)を一定に保ち、見栄えを向上させることができる。
【0014】
上記の一対の樹脂部材には、互いに面する一対の側壁部が形成されているとよい。上記構成によれば、インストルメントパネルの開口部とグローブボックスとの間隙の奥側に、一対の樹脂部材の側壁部が位置する。このため、グローブボックスが開状態であっても、インストルメントパネル内部を乗員から隠すことができ、見栄えを向上させることができる。
【0015】
上記の周辺構造はさらに、車両両側面に差し渡されインストルメントパネルが取付けられるステアリングサポートメンバと、ステアリングサポートメンバに接合されステアリングサポートメンバから下方に延び一対の樹脂部材の車両前側にそれぞれ固定される一対のブラケットとを備えるとよい。
【0016】
これにより、所定部品(例えばグローブボックス)の開閉時の衝撃や、温度変化などによるインストルメントパネルや樹脂部材の変形に伴う応力を、樹脂部材に固定された一対のブラケットを介して、ステアリングサポートメンバにまで伝達できる。このため、これらの衝撃や応力は、剛性の高いステアリングサポートメンバに伝達されて分散される。したがって上記構成によれば、これらの衝撃や応力が発生した場合であっても、所定部品とインストルメントパネルの開口部との間隙を一定に保つことができる。また、剛性の高いステアリングサポートメンバにインストルメントパネルが取付けられることで、開口部の成形時での変形を、ステアリングサポートメンバの組付時に矯正できる。
【0017】
上記のインストルメントパネルはさらに、開口部の両側縁にそれぞれ形成され車両前方に突出し一対の樹脂部材にそれぞれ固定される一対の取付部を有するとよい。
【0018】
これにより、一対の樹脂部材には、ステアリングサポートメンバに接合された一対のブラケットが固定されているだけでなく、インストルメントパネルの開口部の両側縁に形成された取付部も固定されている。よって上記の衝撃や応力は、一対の樹脂部材を経由して、剛性の高いステアリングサポートメンバまで確実に伝達され分散される。したがって、上記構成によれば、所定部品とインストルメントパネルの開口部との間隙をより確実に一定に保つことができる。
【実施例
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る車両用インストルメントパネル開口部周辺構造を示す図である。以下、各図に示す矢印Xは車両前方を示し、矢印Yは車幅方向外側を示している。
【0021】
車両用インストルメントパネル開口部周辺構造(以下、周辺構造)100は、車室前部の意匠面(内装部分)を構成する樹脂製のインストルメントパネル102を備える。インストルメントパネル102のうち、特に助手席に対面する位置には、開口部104が形成されている。
【0022】
インストルメントパネル102の開口部104には、所定部品として例えば被収納物を収納する樹脂製のグローブボックス106が開閉自在に取付けられている。なお図中では、グローブボックス106が閉状態であるときの周辺構造100を例示している。
【0023】
グローブボックス106は、被収納物を収納する本体部108と、本体部108を覆うリッド110とを含む。グローブボックス106において、本体部108とリッド110とは溶着などにより互いに固定された別部材であり、本体部108とリッド110とで例えばロック機構112を挟み込んでいる。
【0024】
グローブボックス106の本体部108の下部には、係合部114、116が設けられている。またインストルメントパネル102の開口部104の下縁118には、軸部120、122が形成されている。係合部114、116は、軸部120、122に接した状態でそれぞれ係合する。このようにして、グローブボックス106は、インストルメントパネル102の軸部120、122に対して回転可能となり、開口部104に開閉自在に取付けられる。
【0025】
ここでインストルメントパネル102は樹脂製であるため、成形時などに開口部104がねじれるなど変形する場合があり得る。このため、インストルメントパネル102の変形に追従して開口部104を確実に補強することが望ましい。また、グローブボックス106のリッド110が乗員に対面する部材となるため、リッド110とインストルメントパネル102の開口部104との間隙(見切り)を一定に保ち、見栄えを向上させることが望ましい。
【0026】
そこで本実施例の周辺構造100では、インストルメントパネル102の開口部104が変形した場合であっても、開口部104を補強しつつ、開口部104に取付けられるグローブボックス106を適切な位置に案内することが可能な構成を採用した。
【0027】
図2は、図1の周辺構造100の要部を示す図である。周辺構造100はさらに、図2(a)示すリンフォース組立品124と、図2(b)に示すステアリングサポートメンバ126とを備える。なお図2(a)は、インストルメントパネル102およびリンフォース組立品124を車両前側の斜めから見た状態を示している。図2(b)は、ステアリングサポートメンバ126を車両後側の斜めから見た状態を示している。
【0028】
リンフォース組立品124は、長尺状の板状部材(ここでは一例として板金部材128)と、板金部材128にそれぞれ取付けられた一対の樹脂部材130、132とを備える。なお板状部材は、金属製に限らず耐久性の高い樹脂製であってもよい。板金部材128は、インストルメントパネル102の開口部104の上縁134に車両前側から取付けられ、上縁134に沿って車幅方向に差し渡される。
【0029】
インストルメントパネル102の開口部104の上縁134には、複数(ここでは4つ)の取付部136が形成されている。取付部136は、車幅方向に離間して配置されていて、車両前方に突出している。また開口部104の両側縁138、140には、車両前方に突出した一対の取付部142、144がそれぞれ形成されている。さらに開口部104の下縁118には、一対の取付部142、144の下方に位置する一対の取付部146、148がそれぞれ形成されている。
【0030】
板金部材128は、複数(ここでは4つ)の貫通孔150を有していて、これらの貫通孔150にスクリュー152を通し、さらに開口部104の上縁134の取付部136に圧入することで、開口部104の上縁134に車両前側から取付けられる。
【0031】
一対の樹脂部材130、132は、それぞれ貫通孔154、156を有する。一対の樹脂部材130、132は、貫通孔154、156にスクリュー158を通し、さらに開口部104の両側縁138、140の一対の取付部142、144に圧入することで、開口部104の両側縁138、140に取付けられる。また一対の樹脂部材130、132は、貫通孔154、156よりも上方に位置する貫通孔160、162をそれぞれ有する。
【0032】
ステアリングサポートメンバ126には、図2(b)に示すように、ステアリングサポートメンバ126から下方に延びる一対のブラケット164、166が接合されている。ブラケット164、166は、下端部168、170に形成された貫通孔172、174と、下端部168、170よりも上方に形成された貫通孔176、178をそれぞれ有する。なおブラケット164、166の貫通孔176、178の下方付近には、他の貫通孔176a、178aが形成されている。
【0033】
一対のブラケット164、166の貫通孔176、178には、図2(b)に示すスクリュー180が車両前側からそれぞれ通される。さらにスクリュー180は、車両前側から一対の樹脂部材130、132の貫通孔160、162に通されて固定される。このようにして、ステアリングサポートメンバ126に接合された一対のブラケット164、166は、一対の樹脂部材130、132の車両前側にそれぞれ固定される。
【0034】
また一対のブラケット164、166は、下端部168、170の貫通孔172、174に車両前側からスクリューなどを通し、開口部104の下縁118の一対の取付部146、148に例えば圧入することで、開口部104の下縁118に取付けられる。すなわち、一対のブラケット164、166は、一対の樹脂部材130、132だけでなく、インストルメントパネル102の開口部104の下縁118にも固定されている。そして一対の樹脂部材130、132は、板金部材128だけでなく、一対のブラケット164、166に加え、インストルメントパネル102の開口部104の両側縁138、140にも固定されている。
【0035】
図3は、図2(a)のリンフォース組立部品124を示す図である。図3(a)は、図2(a)のリンフォース組立品124のC矢視図である。図3(b)は、図3(a)のリンフォース組立品124の分解斜視図である。
【0036】
一対の樹脂部材130、132のうち、一方の樹脂部材130は、図3(a)に示すように板金部材128の一端部182に矢印Dに示すように車幅方向に位置調整可能に取付けられている。他方の樹脂部材132は、板金部材128の一端部184に矢印Eに示すように車幅方向に位置調整可能に取付けられている。なお板金部材128の中央には、ストライカーバー186が固定されている。ストライカーバー186は、グローブボックス106のロック機構112(図9(a)参照)と係合する。
【0037】
板金部材128の一端部182には、図3(b)に示すように車幅方向に長い長穴188と、長穴188から車幅方向に離間した第1貫通孔190とが設けられている。一方の樹脂部材130には、長穴188に挿入されるボス192と、第2貫通孔194とが設けられている。第2貫通孔194は、第1貫通孔190を包含するように第1貫通孔190に重なる位置にある。さらに、板金部材128の一端部182は、板金部材128の第1貫通孔190および一方の樹脂部材130の第2貫通孔194を貫通するスクリューなどの締結部材196により、一方の樹脂部材130と締結される。
【0038】
一方、板金部材128の他端部184には、図3(b)に示すように車幅方向に長い長穴198と、長穴198から車幅方向に離間した第1貫通孔200とが設けられている。他方の樹脂部材132には、長穴198に挿入されるボス202と、第2貫通孔204とが設けられている。第2貫通孔204は、第1貫通孔200を包含するように第1貫通孔200に重なる位置にある。さらに、板金部材の他端部184は、板金部材128の第1貫通孔200および他方の樹脂部材132の第2貫通孔204を貫通するスクリューなどの締結部材206により、他方の樹脂部材132と締結される。
【0039】
図4は、図3(b)の一方の樹脂部材130の各矢視図である。図4(a)、図4(b)および図4(c)は、それぞれ樹脂部材130のH矢視図、I矢視図およびJ矢視図である。
【0040】
樹脂部材130には、図4(a)に示すように、開口部104に面する側壁部208と、当接部210とが形成されている。当接部210は、側壁部208から開口部104の車幅方向中央に向かって膨出した部位である。また樹脂部材130の前壁212には、ボス214が形成されている。ボス214は、図2(b)に示すブラケット164の貫通孔176aに挿入される。
【0041】
さらに樹脂部材130は、前壁212から上壁216を介して連続する後壁218を有する。後壁218には、上記のボス192および第2貫通孔194が形成されている。樹脂部材130は、図4(b)に示すように、側壁部208の周囲から前壁212、上壁216および後壁218が連続して立設していて、いわゆる箱形状を形成している。なお図4(c)に示すように前壁212の下端220は、切り欠かれている。
【0042】
図5は、図3(a)の板金部材128の一端部182および一方の樹脂部材130の一部を模式的に示す図である。図5(a)は、上方から見た状態を示す模式図である。図5(b)は、図3)のF矢視図である。
【0043】
板金部材128の一端部182に形成された長穴188は、図5(a)に示すように車幅方向に長い。このため、樹脂部材130に形成されたボス192は、長穴188に挿入された状態で長穴188に対して車幅方向に移動可能であり、移動することで樹脂部材130の車幅方向の位置調整が可能になっている。
【0044】
そして樹脂部材130に形成された第2貫通孔194は、長穴188に挿入されたボス192の位置すなわち樹脂部材130の車幅方向の位置に関係なく、板金部材128の一端部182に形成された第1貫通孔190を常に包含するほど径が大きい。したがって締結部材196は、第1貫通孔190および第2貫通孔194を貫通し、車幅方向の位置調整が行われた樹脂部材130を、板金部材128の一端部182に対して締結可能となる。なお締結部材196は、図5(b)に示す第2貫通孔194の周囲に配置された座金222に固定することで、樹脂部材130と板金部材128の一端部182とを締結してよい。このようにして、一方の樹脂部材130は、板金部材128の一端部182に車幅方向に位置調整可能に取付けられている。
【0045】
図6は、図3(b)の他方の樹脂部材132の各矢視図である。図6(a)、図6(b)および図6(c)は、それぞれ樹脂部材132のK矢視図、L矢視図およびM矢視図である。
【0046】
樹脂部材132には、図6(a)に示すように、開口部104に面する側壁部224と、当接部226とが形成されている。当接部226は、側壁部224から開口部104の車幅方向中央に向かって膨出した部位である。また樹脂部材の前壁228には、ボス230が形成されている。ボス230は、図2(b)に示すブラケット166の貫通孔178aに挿入される。
【0047】
さらに樹脂部材132は、前壁228から上壁232を介して連続する後壁234を有する。後壁234には、上記のボス202および第2貫通孔204が形成されている。樹脂部材132は、図6(b)に示すように、側壁部224の周囲から前壁228、上壁232および後壁234が立設していて、いわゆる箱形状を形成している。また後壁234の下端236は、図6(b)に示すように間隙238を介して前壁228に対向している。なお図6(c)に示すように前壁228および上壁232の一部は、切り欠かれている。
【0048】
図7は、図3(a)の板金部材128の他端部184および他方の樹脂部材132の一部を模式的に示す図である。図7(a)は、上方から見た状態を示す模式図である。図7(b)は、図3)のG矢視図である。
【0049】
板金部材128の他端部184に形成された長穴198は、図7(a)に示すように車幅方向に長い。このため、樹脂部材132に形成されたボス202は、長穴198に挿入された状態で長穴198に対して車幅方向に移動可能であり、移動することで樹脂部材132の車幅方向の位置調整が可能になっている。
【0050】
そして樹脂部材132に形成された第2貫通孔204は、長穴198に挿入されたボス202の位置すなわち樹脂部材132の車幅方向の位置に関係なく、板金部材128の他端部184に形成された第1貫通孔200を常に包含するほど径が大きい。したがって締結部材206は、第1貫通孔200および第2貫通孔204を貫通し、車幅方向の位置調整が行われた樹脂部材132を、板金部材128の他端部184に対して締結可能となる。なお締結部材206は、図7(b)に示す第2貫通孔204の周囲に配置された座金240に固定することで、樹脂部材132と板金部材128の他端部184とを締結してよい。このようにして、他方の樹脂部材132は、板金部材128の他端部184に車幅方向に位置調整可能に取付けられている。
【0051】
図8は、図1のグローブボックス106を分解して示す図である。図9は、図1の周辺構造100のA-A断面を示す図である。なおA-A線は、図8に示すリッド110にも対応させて示している。図9(a)は、奥行きまで示した状態のA-A断面図である。図9(b)は、図9(a)に示す鎖線で囲んだN領域、O領域をそれぞれ拡大して示すA-A断面図である。
【0052】
リッド110の裏面には、図8に示すように、本体部108側に突出し車幅方向に離間して配置された一対のリブ242、244が設けられている。本体部108は、被収納物を収納する収納部246と、フランジ248、250とを含む。フランジ248、250は、収納部246の側部252、254から車幅方向に延び、図9(a)に示すグローブボックス106の閉状態で、インストルメントパネル102の開口部104の側縁138、140にそれぞれ沿っている。またフランジ248、250には、図9(b)に示すように貫通孔256、258が形成されている。
【0053】
グローブボックス106は、本体部108の表面がリッド110の裏面により覆われ溶着などにより固定されると、図9(b)に示すように一対のリブ242、244が本体部108の貫通孔256、258に挿入された状態となる。一対のリブ242、244は、貫通孔256、258を通って本体部108から突出し、グローブボックス106の閉状態で車両前方に突出する。そして、一対のリブ242、244には、図9(b)に示すように一対の樹脂部材130、132の当接部210、226が当接している。
【0054】
一対の樹脂部材130、132は、上記したように板金部材128の両端部182、184に対して車幅方向に位置調整可能に取付けられている。このため、一対の樹脂部材130、132の車幅方向の位置を調整することで、開口部104の車幅方向中央に向かって膨出した一対の当接部210、226の位置も調整可能となる。
【0055】
よって、グローブボックス106の一対のリブ242、244に対して、一対の当接部210、226を確実に当接させてグローブボックス106の開閉動作を案内することができる。したがって周辺構造100によれば、インストルメントパネル102の開口部104とグローブボックス106との間隙(見切り)を一定に保ち、見栄えを向上させることができる。
【0056】
また一対の樹脂部材130、132には、図9(b)に示すように互いに面する一対の側壁部208、224が形成されている。このため、インストルメントパネル102の開口部104とグローブボックス106との間隙の奥側に、一対の樹脂部材130、132の側壁部208、224が位置することになる。したがって周辺構造100によれば、グローブボックス106が開状態であっても、インストルメントパネル102内部を乗員から隠すことができ、見栄えを向上させることができる。
【0057】
図10は、図2(a)の周辺構造100のB-B断面を示す図である。図示のように、周辺構造100では、リンフォース組立品124の板金部材128が、インストルメントパネル102の開口部104の上縁134に取付部136を介して取付けられている。さらに、樹脂部材130の前壁212には、ステアリングサポートメンバ126に接合されたブラケット164(図2(b)参照)が取付けられている。なおここでは図示を省略するが、樹脂部材132の前壁228には、上記したようにステアリングサポートメンバ126に接合されたブラケット166が取付けられている。
【0058】
本実施例の周辺構造100によれば、インストルメントパネル102の開口部104の上縁134に車両前側から板金部材128を取り付けることで、開口部104の上縁134を補強できる。また板金部材128の両端部182、184に取付けられた一対の樹脂部材130、132は、車幅方向に個別に位置調整可能である。このため、開口部104が成形時などにねじれるなど変形した場合であっても、開口部104の上縁134を板金部材128で補強しつつ、開口部104の変形に応じて一対の樹脂部材130、132を車幅方向に位置調整できる。したがって一対の樹脂部材130、132は、グローブボックス106を案内する上で適切な位置に配置できる。
【0059】
また周辺構造100では、ステアリングサポートメンバ126に接合された一対のブラケット164、166が、一対の樹脂部材130、132の車両前側にそれぞれ固定されている。よって、グローブボックス106の開閉時の衝撃や、温度変化などによるインストルメントパネル102や樹脂部材130、132の変形に伴う応力を、一対のブラケット164、166を介して、ステアリングサポートメンバ126にまで伝達できる。その結果、これらの衝撃や応力は、剛性の高いステアリングサポートメンバ126に伝達されて分散される。
【0060】
したがって周辺構造100によれば、これらの衝撃や応力が発生した場合であっても、インストルメントパネル102の開口部104とグローブボックス106との間隙を一定に保つことができる。また、剛性の高いステアリングサポートメンバ126にインストルメントパネル102が取付けられることで、開口部104の成形時での変形を、ステアリングサポートメンバ126の組付時に矯正することもできる。
【0061】
さらに周辺構造100では、一対の樹脂部材130、132には、一対のブラケット164、166が固定されているだけでなく、開口部104の両側縁138、140に形成された取付部142、144(図2(a)参照)にも固定されている。よって上記の衝撃や応力は、一対の樹脂部材130、132を経由して、剛性の高いステアリングサポートメンバ126まで確実に伝達され分散される。したがって、周辺構造100によれば、インストルメントパネル102の開口部104とグローブボックス106との間隙をより確実に一定に保つことができる。
【0062】
なお上記した一対の樹脂部材130、132は、箱形状を成しているため、いわゆるニーボルスターすなわち助手席側の乗員の膝がインストルメントパネル102に衝突した際の衝撃吸収部材として機能することもできる。このような場合、一例として樹脂部材132では、図6(b)に示す後壁234の下端236と前壁228との間隙238を調整することで、衝撃を受けたとき前壁228が変位して後壁234に接近するストローク量を調整でき、その結果、荷重吸収量を調整可能となる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、車両用インストルメントパネル開口部周辺構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
100…車両用インストルメントパネル開口部周辺構造、102…インストルメントパネル、104…開口部、106…グローブボックス、108…本体部、110…リッド、112…ロック機構、114、116…係合部、118…開口部の下縁、120、122…軸部、124…リンフォース組立品、126…ステアリングサポートメンバ、128…板金部材、130、132…樹脂部材、134…開口部の上縁、136…開口部の上縁の取付部、138、140…開口部の両側縁、142、144…開口部の両側縁の取付部、146、148…開口部の下縁の取付部、150…板金部材の貫通孔、152、158、180…スクリュー、154、156、160、162…樹脂部材の貫通孔、164、166…ブラケット、168、170…ブラケットの下端部、172、174、176、178…ブラケットの貫通孔、182…板金部材の一端部、184…板金部材の他端部、186…ストライカーバー、188、198…長穴、190、200…第1貫通孔、192、202…ボス、194、204…第2貫通孔、196、206…締結部材、208、224…側壁部、210、226…当接部、212、228…前壁、214、230…前壁のボス、216、232…上壁、218、234…後壁、220…前壁の下端、222、240…座金、236…後壁の下端、238…後壁の下端と前壁との間隙、242、244…一対のリブ、246…収納部、248、250…一対のフランジ、252、254…収納部の側部、256、258…フランジの貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10