(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20220511BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220511BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60C11/12 C
B60C11/12 A
B60C11/03 300B
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2018078600
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】森 一真
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-044718(JP,A)
【文献】特開2017-074844(JP,A)
【文献】特開2004-106747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックが形成されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記ブロックには、前記ブロックをタイヤ軸方向に横断する第1サイプ
と、前記ブロックのタイヤ軸方向の少なくとも一方の端部から延び、かつ、前記ブロック内で終端する第2サイプとが設けられ、
前記第1サイプは、ジグザグ状に延びる第1要素と、直線状に延びる第2要素とを含み、
前記第1要素と前記第2要素とは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異な
り、
前記第2サイプと前記第1要素とは、互いに平行に延びている、
タイヤ。
【請求項2】
前記第2サイプは、前記ブロックのタイヤ軸方向の両方の端部からそれぞれ延びている、請求項
1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第2要素は、タイヤ軸方向に隣接する前記第2サイプの間に位置している、請求項
1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ブロックには、タイヤ軸方向の少なくとも一方の端部に、前記ブロックの内側へ凹む凹部が設けられ、
前記第2サイプは、前記凹部から延びている、請求項
1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
ブロックが形成されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記ブロックには、前記ブロックをタイヤ軸方向に横断する第1サイプが設けられ、
前記第1サイプは、ジグザグ状に延びる第1要素と、直線状に延びる第2要素とを含み、
前記第1要素と前記第2要素とは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異な
り、
前記ブロックは、第1ブロックと第2ブロックとを含み、
前記第1ブロックの前記第1要素と前記第2ブロックの前記第1要素とは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異なる、
タイヤ。
【請求項6】
前記第2ブロックの前記第1要素のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1ブロックの前記第1要素のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい、請求項
5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第2ブロックのタイヤ周方向長さは、前記第1ブロックのタイヤ周方向長さに等しく、
前記第2ブロックの前記第2要素のタイヤ周方向長さは、前記第1ブロックの前記第2要素のタイヤ周方向長さよりも小さい、請求項
5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1ブロックは、屈曲して延びる第1横溝により区分される、請求項
5ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第2ブロックは、直線状に延びる第2横溝により区分され、
前記第2横溝と前記第2ブロックの前記第1要素とは、互いに平行に延びている、請求項
5ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部には、タイヤ赤道の両側に隣接してタイヤ周方向に延びるクラウン縦溝と、前記クラウン縦溝とトレッド端との間でタイヤ周方向に延びるショルダー縦溝とが設けられ、
前記第1ブロックは、前記クラウン縦溝の間に区分され、
前記第2ブロックは、前記クラウン縦溝と前記ショルダー縦溝との間に区分される、請求項
5ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第2要素のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1要素のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい、請求項
1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第2要素のタイヤ軸方向に対する角度は、60~80°である、請求項
1ないし11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記トレッド部は、前記ブロックの複数個がタイヤ周方向に並べられたブロック列を有し、
前記ブロック列は、前記ブロックを区分する横溝を有し、
前記横溝には、タイヤ周方向に隣接する前記ブロックの間をつなぐタイバーが設けられる、請求項
1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ路面での操縦安定性能と雪上性能とを両立し得るタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雪上路面での操縦安定性能(以下、「雪上性能」という。)を向上させたタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1は、トレッド面に形成されたブロックに、当該ブロックの両側面を切欠いた内ブロック凹部と、内ブロック凹部を継ぐサイピングとを設けたタイヤにおいて、雪上性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のタイヤは、内ブロック凹部と内ブロック凹部を継ぐサイピングとによりブロックの剛性が低下しており、ドライ路面における操縦安定性能において、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ドライ路面での操縦安定性能と雪上性能とを両立し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ブロックが形成されたトレッド部を有するタイヤであって、前記ブロックには、前記ブロックをタイヤ軸方向に横断する第1サイプが設けられ、前記第1サイプは、ジグザグ状に延びる第1要素と、直線状に延びる第2要素とを含み、前記第1要素と前記第2要素とは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異なることを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第2要素のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1要素のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きいのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第2要素のタイヤ軸方向に対する角度は、60~80°であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記ブロックには、前記ブロックのタイヤ軸方向の少なくとも一方の端部から延び、かつ、前記ブロック内で終端する第2サイプが設けられ、前記第2サイプと前記第1要素とは、互いに平行に延びているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第2サイプは、前記ブロックのタイヤ軸方向の両方の端部からそれぞれ延びているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第2要素は、タイヤ軸方向に隣接する前記第2サイプの間に位置しているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記ブロックには、タイヤ軸方向の少なくとも一方の端部に、前記ブロックの内側へ凹む凹部が設けられ、前記第2サイプは、前記凹部から延びているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記ブロックの複数個がタイヤ周方向に並べられたブロック列を有し、前記ブロック列は、前記ブロックを区分する横溝を有し、前記横溝には、タイヤ周方向に隣接する前記ブロックの間をつなぐタイバーが設けられるのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記ブロックは、第1ブロックと第2ブロックとを含み、前記第1ブロックの前記第1要素と前記第2ブロックの前記第1要素とは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異なるのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記第2ブロックの前記第1要素のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1ブロックの前記第1要素のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さいのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記第2ブロックのタイヤ周方向長さは、前記第1ブロックのタイヤ周方向長さに等しく、前記第2ブロックの前記第2要素のタイヤ周方向長さは、前記第1ブロックの前記第2要素のタイヤ周方向長さよりも小さいのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ブロックは、屈曲して延びる第1横溝により区分されるのが望ましい。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、前記第2ブロックは、直線状に延びる第2横溝により区分され、前記第2横溝と前記第2ブロックの前記第1要素とは、互いに平行に延びているのが望ましい。
【0019】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部には、タイヤ赤道の両側に隣接してタイヤ周方向に延びるクラウン縦溝と、前記クラウン縦溝とトレッド端との間でタイヤ周方向に延びるショルダー縦溝とが設けられ、前記第1ブロックは、前記クラウン縦溝の間に区分され、前記第2ブロックは、前記クラウン縦溝と前記ショルダー縦溝との間に区分されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタイヤにおいて、ブロックには、前記ブロックをタイヤ軸方向に横断する第1サイプが設けられ、前記第1サイプは、ジグザグ状に延びる第1要素と、直線状に延びる第2要素とを含んでいる。このような第1サイプは、形状の異なる第1要素と第2要素とを含んでいるので、ブロックの剛性を維持し、ドライ路面でのタイヤの操縦安定性能を向上させることができる。
【0021】
本発明のタイヤにおいて、第1要素と第2要素とは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異なっている。このような第1要素及び第2要素は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にエッジ効果を発揮し、タイヤの雪上性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のタイヤのトレッド部の一実施形態を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2を示す展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、及び、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。本実施形態のタイヤ1は、例えば、小型トラック用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、走行時に路面に接地するトレッド部2を有している。トレッド部2には、ブロック3が形成されるのが望ましい。
【0025】
図2は、ブロック3の拡大図である。
図2に示されるように、ブロック3には、ブロック3をタイヤ軸方向に横断する第1サイプ4が設けられるのが望ましい。本実施形態の第1サイプ4は、ジグザグ状に延びる第1要素4Aと、直線状に延びる第2要素4Bとを含んでいる。このような第1サイプ4は、形状の異なる第1要素4Aと第2要素4Bとを含んでいるので、ブロック3の剛性を維持し、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能を向上させることができる。
【0026】
ここで、ジグザグ状に延びるとは、少なくとも一部が一方向への傾斜とその逆方向への傾斜とからなる屈曲部を交互に繰り返しつつ一定の方向に延びるものであって、その方向は、ジグザグ状の振幅の平均値をつないだ方向として規定される。また、直線状に延びるとは、屈曲部を含むことなく一定の方向に延びるものであって、直線と、一方向へ湾曲するものとを含み、湾曲する場合の方向は、両端点をつなぐ方向として規定される。
【0027】
本実施形態の第1要素4Aと第2要素4Bとは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異なっている。このような第1要素4A及び第2要素4Bは、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にエッジ効果を発揮し、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0028】
より好ましい態様として、本実施形態の第1要素4Aは、ジグザグ要素4aと直線要素4bとを含んでいる。直線要素4bは、例えば、ジグザグ要素4aの両側に配されている。このような第1要素4Aは、第1要素4A内に形状の異なる要素を含んでいるので、ブロック3の剛性の低下を抑制し得る。
【0029】
第1要素4Aは、例えば、ブロック3のタイヤ軸方向の両方の端部3aから延び、タイヤ軸方向に対して一定の角度θ1で傾斜している。第2要素4Bは、例えば、両方の端部3aから延びる第1要素4Aをつなぎ、タイヤ軸方向に対して角度θ1とは異なる角度θ2で傾斜している。第2要素4Bのタイヤ軸方向に対する角度θ2は、第1要素4Aのタイヤ軸方向に対する角度θ1よりも大きいのが望ましい。このような第1サイプ4は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にエッジ効果を発揮し得る。
【0030】
第2要素4Bのタイヤ軸方向に対する角度θ2は、好ましくは、60~80°である。第2要素4Bの角度θ2が60°よりも小さいと、タイヤ軸方向のエッジ効果が低減し、雪上路面走行時の旋回性能が向上しないおそれがある。第2要素4Bの角度θ2が80°よりも大きいと、タイヤ軸方向の剛性が低下し、ドライ路面走行時の操縦安定性能が向上しないおそれがある。
【0031】
ブロック3には、ブロック3のタイヤ軸方向の少なくとも一方の端部3aから延び、かつ、ブロック3内で終端する少なくとも1本の第2サイプ5が設けられるのが望ましい。本実施形態の第2サイプ5は、ブロック3のタイヤ軸方向の両方の端部3aからそれぞれ2本ずつ延びている。このような第2サイプ5は、ブロック3の剛性を低下させることなく、タイヤ周方向にエッジ効果を発揮し、雪上路面走行時のトラクション性能を向上させている。
【0032】
第2サイプ5は、ジグザグ状の延びるのが望ましい。第2サイプ5は、例えば、ジグザグ要素5aと直線要素5bとを含んでいる。本実施形態の第2サイプ5は、ブロック3の端部3aから延びる直線要素5bと、直線要素5bから延びるジグザグ要素5aとを含んでいる。このような第2サイプ5は、形状の異なる要素を含んでいるので、ブロック3の剛性の低下を抑制し得る。
【0033】
第2サイプ5と第1要素4Aとは、互いに平行に延びているのが望ましい。すなわち、第2サイプ5のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、好ましくは、第1要素4Aの角度θ1に等しい。このような第2サイプ5と第1要素4Aとは、互いに協働して、タイヤ1の雪上性能を向上させている。
【0034】
第2要素4Bは、タイヤ軸方向に隣接する第2サイプ5の間に位置している。このような第2サイプ5と第2要素4Bとは、互いに連通していないので、ブロック3の剛性低下が抑制されている。
【0035】
ブロック3には、タイヤ軸方向の少なくとも一方の、本実施形態では両方の端部3aに、ブロック3の内側へ凹む凹部6が設けられている。このような凹部6は、その内部に雪柱を形成し、これをせん断することで、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0036】
上述の第2サイプ5は、例えば、この凹部6から延びている。このようなブロック3は、凹部6から延びる第2サイプ5がブロック3を横断していないので、凹部6によるブロック3の剛性低下が抑制され得る。
【0037】
図3は、トレッド部2の拡大図である。
図3に示されるように、トレッド部2は、例えば、ブロック3の複数個がタイヤ周方向に並べられたブロック列7を有している。本実施形態のブロック列7は、ブロック3を区分する横溝8を有している。このような横溝8は、その内部に雪柱を形成し、これをせん断することで、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0038】
図2に示されるように、横溝8は、少なくとも一方の、本実施形態では両方の端部8bにおいて、タイヤ軸方向に対して角度θ4で傾斜している。横溝8の角度θ4は、好ましくは、第1要素4Aの角度θ1に等しい。このような横溝8と第1要素4Aとは、互いに協働して、タイヤ1の雪上性能を向上させている。
【0039】
横溝8とブロック3の端部3aとの鋭角を構成する角部には、面取部8cが設けられるのが望ましい。このような面取部8cは、ブロック3の部分的な応力の集中を緩和させ、タイヤ1の耐久性能を向上させ得る。
【0040】
図3に示されるように、横溝8には、タイヤ周方向に隣接するブロック3の間をつなぐタイバー9が設けられるのが望ましい。このようなタイバー9は、ブロック3の剛性を向上させ、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能をより向上させることができる。
【0041】
本実施形態のタイバー9は、横溝8の溝底からタイヤ半径方向外側に突出している。タイバー9の溝底からの高さは、好ましくは、横溝8の溝深さの20%~40%である。タイバー9の高さが溝深さの20%よりも小さいと、ブロック3の剛性が低下し、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能が向上しないおそれがある。タイバー9の高さが溝深さの40%よりも大きいと、横溝8の溝面積が低下し、タイヤ1の雪上性能が向上しないおそれがある。
【0042】
本実施形態のタイバー9は、横溝8のタイヤ軸方向の中央部8aに設けられている。タイバー9には、例えば、その長手方向に沿って、横溝サイプ10が設けられている。このような横溝サイプ10は、雪上路面走行時に横溝8の変形を促進し、排雪性能を向上させることができる。
【0043】
タイバー9は、例えば、横溝8のタイヤ軸方向の両方の端部8bに設けられていてもよい。このような、タイバー9は、ブロック3の凹部6に伴う剛性低下をより効果的に抑制することができる。
【0044】
図1に示されるように、トレッド部2は、タイヤ周方向に延びる複数の縦溝11が設けられることにより、複数のブロック列7が区分されるのが望ましい。複数の縦溝11は、例えば、タイヤ赤道Cの両側に隣接してタイヤ周方向に延びるクラウン縦溝12と、クラウン縦溝12とトレッド端Teとの間でタイヤ周方向に延びるショルダー縦溝13とを含んでいる。
【0045】
複数のブロック列7は、例えば、クラウン縦溝12の間に区分される第1ブロック列7Aと、クラウン縦溝12とショルダー縦溝13との間に区分される第2ブロック列7Bとを含んでいる。
【0046】
ブロック3は、例えば、第1ブロック列7Aに並べられる第1ブロック3Aと第2ブロック列7Bに並べられる第2ブロック3Bとを含んでいる。
図2は、第1ブロック3Aの拡大図である。
図2に示されるように、本実施形態の第1ブロック3Aには、上述の第1サイプ4、第2サイプ5及び凹部6が設けられている。
【0047】
図4は、第2ブロック3Bの拡大図である。
図4に示されるように、第2ブロック3Bには、上述の第1ブロック3Aと同様に、第1サイプ14、第2サイプ15及び凹部16が設けられるのが望ましい。
【0048】
本実施形態の第2ブロック3Bの第1サイプ14は、上述の第1ブロック3Aの第1サイプ4と同様に、ジグザグ状に延びる第1要素14Aと、直線状に延びる第2要素14Bとを含んでいる。第2ブロック3Bの第1要素14Aは、上述の第1ブロック3Aの第1要素4Aと同様に、例えば、ジグザグ要素14aと、ジグザグ要素14aの両側に配される直線要素14bとを含んでいる。
【0049】
図3に示されるように、第1ブロック3Aの第1要素4Aと第2ブロック3Bの第1要素14Aは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が異なるのが望ましい。本実施形態の第2ブロック3Bの第1要素14Aのタイヤ軸方向に対する角度θ5は、第1ブロック3Aの第1要素4Aの角度θ1よりも小さい。
【0050】
第1ブロック3Aの第2要素4Bと第2ブロック3Bの第2要素14Bは、タイヤ軸方向に対して同一の方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が等しいのが望ましい。本実施形態の第2ブロック3Bの第2要素14Bのタイヤ軸方向に対する角度θ6は、第1ブロック3Aの第2要素4Bの角度θ2に等しい。
【0051】
第2ブロック3Bのタイヤ周方向長さL2は、第1ブロック3Aのタイヤ周方向長さL1に等しいのが望ましい。一方、本実施形態の第2ブロック3Bの第2要素14Bのタイヤ周方向長さL4は、第1ブロック3Aの第2要素4Bのタイヤ周方向長さL3よりも小さい。
【0052】
このような第2ブロック3Bは、第1ブロック3Aよりも剛性が大きい。一方、第2ブロック3Bは、第1ブロック3Aに対して、タイヤ赤道Cから離れた位置に設けられているので、第1ブロック3Aよりも路面接地時の接地長が小さい。このため、第1ブロック3Aと第2ブロック3Bとは、剛性と接地長との積を一定に保つことができ、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能を向上させている。
【0053】
図4に示されるように、第2ブロック3Bの第2サイプ15は、第2ブロック3Bのタイヤ軸方向の少なくとも一方の端部3aからジグザグ状に延び、かつ、第2ブロック3B内で終端するのが望ましい。第2ブロック3Bの第2サイプ15は、第2ブロック3B内に少なくとも1本、本実施形態では、両方の端部3aからそれぞれ2本ずつ設けられている。第2ブロック3Bの第2サイプ15は、上述の第1ブロック3Aの第2サイプ5と同様に、例えば、ジグザグ要素15aと直線要素15bとを含んでいる。
【0054】
第2ブロック3Bの第2サイプ15のタイヤ軸方向に対する角度θ7は、好ましくは、第2ブロック3Bの第1要素14Aの角度θ5に等しい。このような第2ブロック3Bの第2サイプ15と第1要素14Aとは、互いに協働して、タイヤ1の雪上性能を向上させている。
【0055】
第2ブロック3Bの凹部16は、タイヤ軸方向の少なくとも一方の、本実施形態では両方の端部3aから第2ブロック3Bの内側へ凹むように設けられるのが望ましい。このような第2ブロック3Bの凹部16は、その内部に雪柱を形成し、これをせん断することで、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0056】
第2ブロック3Bの第2サイプ15は、例えば、第2ブロック3Bの凹部16から延びている。このような第2ブロック3Bは、凹部16から延びる第2サイプ15が第2ブロック3Bを横断していないので、第2ブロック3Bの剛性の低下が抑制され得る。
【0057】
図3に示されるように、第2ブロック3Bの凹部16は、クラウン縦溝12を介して、第1ブロック3Aの凹部6とタイヤ周方向に交互に配されるのが望ましい。このような第1ブロック3A及び第2ブロック3Bは、剛性分布を均一化させることで、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能を向上させている。
【0058】
横溝8は、例えば、第1ブロック列7Aに配され、第1ブロック3Aを区分する第1横溝8Aと、第2ブロック列7Bに配され、第2ブロック3Bを区分する第2横溝8Bとを含んでいる。
【0059】
本実施形態の第1横溝8Aには、上述のタイバー9が設けられている。第1横溝8Aは、屈曲して延びるのが望ましい。本実施形態では、第1横溝8Aのタイバー9が屈曲している。このような第1横溝8Aは、雪上路面走行時の排雪性能が優れており、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0060】
図4に示されるように、本実施形態の第2横溝8Bは、直線状に延びている。第2横溝8Bと第2ブロック3Bの第1要素14Aとは、互いに平行に延びるのが望ましい。すなわち、第2横溝8Bのタイヤ軸方向に対する角度θ8は、好ましくは、第2ブロック3Bの第1要素14Aの角度θ5に等しい。このような第2横溝8Bと第2ブロック3Bの第1要素14Aとは、互いに協働して、タイヤ1の雪上性能を向上させている。
【0061】
第2横溝8Bと第2ブロック3Bの端部3aとの鋭角を構成する角部には、面取部8cが設けられるのが望ましい。このような面取部8cは、第2ブロック3Bの部分的な応力の集中を緩和させ、タイヤ1の耐久性能を向上させ得る。
【0062】
図3に示されるように、第2横溝8Bには、上述の第1横溝8Aと同様に、タイヤ周方向に隣接する第2ブロック3Bの間をつなぐタイバー17が設けられるのが望ましい。このような第2横溝8Bのタイバー17は、第2ブロック3Bの剛性を向上させ、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能をより向上させることができる。
【0063】
本実施形態の第2横溝8Bのタイバー17は、第2横溝8Bの溝底からタイヤ半径方向外側に突出している。第2横溝8Bのタイバー17の溝底からの高さは、好ましくは、第2横溝8Bの溝深さの20%~40%である。タイバー17の高さが溝深さの20%よりも小さいと、第2ブロック3Bの剛性が低下し、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能が向上しないおそれがある。タイバー17の高さが溝深さの40%よりも大きいと、第2横溝8Bの溝面積が低下し、タイヤ1の雪上性能が向上しないおそれがある。
【0064】
本実施形態の第2横溝8Bのタイバー17は、上述の第1横溝8Aのタイバー9と同様に、第2横溝8Bのタイヤ軸方向の中央部8aに設けられている。第2横溝8Bのタイバー17には、例えば、その長手方向に沿って、横溝サイプ18が設けられている。このような第2横溝8Bのタイバー17は、雪上路面走行時に第2横溝8Bの変形を促進し、排雪性能を向上させることができる。
【0065】
第2横溝8Bのタイバー17は、上述の第1横溝8Aのタイバー9と同様に、例えば、第2横溝8Bのタイヤ軸方向の両方の端部8bに設けられていてもよい。このような、第2横溝8Bのタイバー17は、ブロック3の凹部6に伴う剛性低下をより効果的に抑制することができる。
【0066】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、ショルダー縦溝13とトレッド端Teとの間に区分されるショルダーブロック列20が設けられている。ショルダーブロック列20は、例えば、ショルダーブロック21と、ショルダーブロック21を区分するショルダー横溝22とを有している。
【0067】
ショルダーブロック21には、ジグザグ状に延びる少なくとも1本、本実施形態では2本のショルダーサイプ23が設けられている。このようなショルダーサイプ23は、タイヤ周方向のエッジ効果を発揮することができ、雪上路面走行時のトラクション性能を向上させている。
【0068】
ショルダーサイプ23は、例えば、ジグザグ要素23aと直線要素23bと屈曲要素23cとを含んでいる。このようなショルダーサイプ23は、屈曲要素23cによりタイヤ軸方向のエッジ効果を発揮することができ、雪上路面走行時の旋回性能をより向上させることができる。
【0069】
本実施形態のショルダーサイプ23は、ショルダー縦溝13から順に、直線要素23b、ジグザグ要素23a、直線要素23b、屈曲要素23c、直線要素23b、ジグザグ要素23a及び直線要素23bが並んでいる。屈曲要素23cは、タイヤ軸方向において、例えば、ショルダーサイプ23の中央付近に設けられている。このようなショルダーサイプ23は、屈曲要素23cによる剛性低下が抑制され、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能を向上させている。
【0070】
ショルダーサイプ23のジグザグ要素23aは、例えば、タイヤ半径方向にジグザグ形状を維持しつつ、ショルダーサイプ23の長さ方向の一方側及び他方側に変位する構造、いわゆるミウラ折り構造を有している。このようなショルダーサイプ23は、ジグザグ要素23aの向き合う壁面の凹凸が互いに噛み合うことにより、ショルダーブロック21の剛性を飛躍的に高めることができる。
【0071】
ショルダー横溝22には、タイヤ周方向に隣接するショルダーブロック21の間をつなぐショルダータイバー24が設けられるのが望ましい。このようなショルダータイバー24は、ショルダーブロック21の剛性を向上させ、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能をより向上させることができる。
【0072】
ショルダータイバー24は、例えば、その高さが異なる第1タイバー24Aと第2タイバー24Bとを含んでいる。本実施形態の第1タイバー24Aは、ショルダー縦溝13に隣接して設けられている。第2タイバー24Bは、第1タイバー24Aのタイヤ軸方向外側に設けられ、かつ、第1タイバー24Aの溝底からの高さよりも大きい高さを有するのが望ましい。
【0073】
第1タイバー24Aの溝底からの高さは、好ましくは、ショルダー横溝22の溝深さの20%~40%である。第2タイバー24Bの溝底からの高さは、好ましくは、ショルダー横溝22の溝深さの80%~90%である。このようなショルダータイバー24は、ショルダーブロック21の剛性とショルダー横溝22の溝面積とを両立し、タイヤ1のドライ路面での操縦安定性能と雪上性能とをバランスよく向上させている。
【0074】
このようなショルダータイバー24は、ショルダーブロック21の剛性を第1ブロック3A及び第2ブロック3Bよりも大きくすることができる。一方、ショルダーブロック21は、第1ブロック3A及び第2ブロック3Bに対して、タイヤ赤道Cから離れた位置に設けられているので、第1ブロック3A及び第2ブロック3Bよりも路面接地時の接地長が小さい。このため、ショルダーブロック21、第1ブロック3A及び第2ブロック3Bは、剛性と接地長との積を一定に保つことができ、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能をより向上させている。
【0075】
本実施形態の第2タイバー24Bは、タイヤ軸方向において、少なくともショルダーサイプ23の屈曲要素23cと同じ位置に設けられている。このような第2タイバー24Bは、ショルダーブロック21の屈曲要素23cによる剛性低下を抑制し、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能をより向上させることができる。
【0076】
第2タイバー24Bのタイヤ軸方向長さL6は、好ましくは、第1タイバー24Aのタイヤ軸方向長さL5の0.4~2.4倍である。第2タイバー24Bのタイヤ軸方向長さL6が第1タイバー24Aのタイヤ軸方向長さL5の0.4倍よりも小さいと、ショルダーブロック21の剛性が低下し、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能が向上しないおそれがある。第2タイバー24Bのタイヤ軸方向長さL6が第1タイバー24Aのタイヤ軸方向長さL5の2.4倍よりも大きいと、ショルダー横溝22の溝面積が低下し、タイヤ1の雪上性能が向上しないおそれがある。
【0077】
ショルダータイバー24には、例えば、その長手方向に沿って、ショルダー横溝サイプ25が設けられている。このようなショルダータイバー24は、ブロック3の剛性の過度な上昇を緩和し、剛性分布を均一化させることで、ドライ路面でのタイヤ1の操縦安定性能を向上させている。
【0078】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0079】
図1の基本パターンを有するタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。各テストタイヤの操縦安定性能及び雪上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下のとおりである。
【0080】
タイヤサイズ:265/70R17
リムサイズ:17×8.0JJ
空気圧:270kPa
テスト車両:後輪駆動の小型トラック
タイヤ装着位置:全輪
【0081】
<操縦安定性能>
テストタイヤが装着されたテスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど操縦安定性能が優れていることを示す。
【0082】
<雪上性能>
テストタイヤが装着されたテスト車両で雪上路面を走行したときの操縦安定性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど雪上性能が優れていることを示す。
【0083】
テストの結果が表1に示される。
【0084】
【0085】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に対して、ドライ路面での操縦安定性能と雪上性能とをバランスよく両立していることが確認できた。
【符号の説明】
【0086】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ブロック
4 第1サイプ
4A 第1要素
4B 第2要素