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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電源装置及び機器システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20220511BHJP
   H02H 9/00 20060101ALI20220511BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20220511BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20220511BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H02J1/00 306G
H02H9/00 B
H02J1/00 309Z
H05K5/06 B
H02B1/28 L
H02B3/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018080959
(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2019193362
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 等
(72)【発明者】
【氏名】望月 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 康寛
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-070297(JP,U)
【文献】特開2017-216831(JP,A)
【文献】米国特許第05050060(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00-1/16
H02H 9/00
H05K 5/06
H02B 1/28
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質安全防爆がなされている機器である本安機器に電力を供給する電源装置であって、
危険場所に設置される耐圧防爆用電線管が接続される第1接続部と、前記本安機器が接続される第2接続部とを有する耐圧容器と、
前記耐圧容器内に収容され、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限して前記第2接続部に接続された前記本安機器に供給するバリア装置と、
を備え
前記バリア装置は、絶縁バリアを備え、
前記絶縁バリアは、直流電力を交流電力に変換する発振回路と、
前記発振回路から一次側に供給される交流電力を二次側に伝達する絶縁トランスと、
前記絶縁トランスの二次側に伝達された交流電力を整流する整流回路と、
前記整流回路で整流された電力を制限する制限回路と、
を備える電源装置。
【請求項2】
前記耐圧容器は、前記第2接続部を複数備え、
前記制限回路は、前記第2接続部に対応して複数設けられる、
請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記バリア装置は、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される交流電力を直流電力に変換して前記絶縁バリアに供給する電力変換部を備える、請求項1又は請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
本質安全防爆がなされている機器である本安機器に電力を供給する電源装置であって、
危険場所に設置される耐圧防爆用電線管が接続される第1接続部と、前記本安機器が接続される第2接続部とを有する耐圧容器と、
前記耐圧容器内に収容され、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限して前記第2接続部に接続された前記本安機器に供給するバリア装置と、
を備え、
前記バリア装置は、絶縁バリアと、
前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される交流電力を直流電力に変換して前記絶縁バリアに供給する電力変換部と、
を備える電源装置。
【請求項5】
前記耐圧容器は、前記第1接続部を複数備え、
前記電力変換部は、前記第1接続部に対応して複数設けられ、
複数の前記電力変換部の各々の直流電力を、複数のダイオードを介して前記絶縁バリアに並列接続する接続回路を備える、
請求項3又は請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
前記第1接続部及び前記第2接続部には耐圧パッキン金具が設けられており、
前記耐圧防爆用電線管及び前記本安機器は、前記耐圧パッキン金具を介して接続される、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
本質安全防爆がなされている機器である本安機器と、
危険場所に設置される耐圧防爆用電線管に接続され、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限して前記本安機器に供給する請求項1から請求項6の何れか一項に記載の電源装置と、
を備える機器システム。
【請求項8】
前記耐圧防爆用電線管の一部に取り付けられ、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して前記電源装置へ供給される電力を遮断するか否かを切り換えるスイッチを備える請求項7記載の機器システム。
【請求項9】
前記本安機器は、アンテナが取り外し可能に構成され、前記アンテナに接続可能であるとともに前記本安機器の外部に突出した接続端子を有する無線機器である、請求項7又は請求項8記載の機器システム。
【請求項10】
本質安全防爆がなされている機器である本安機器と、
危険場所に設置される耐圧防爆用電線管が接続される第1接続部と、前記本安機器が接続される第2接続部とを有する耐圧容器と、前記耐圧容器内に収容され、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限して前記第2接続部に接続された前記本安機器に供給するバリア装置と、を備える電源装置と、
前記耐圧防爆用電線管の一部に取り付けられ、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して前記電源装置へ供給される電力を遮断するか否かを切り換えるスイッチと、
を備える機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等においては、分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されており、高度な自動操業が実現されている。この分散制御システムは、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)を制御するコントローラが、幾つかの制御ループ毎に分散配置される制御システムである。近年では、フィールド機器とコントローラとが通信線又は通信バス等を介して有線接続された分散制御システム以外に、フィールド機器とコントローラとが無線接続された分散制御システムも実現されている。
【0003】
このような分散制御システムで用いられるフィールド機器のうち、可燃性のガスが用いられる場所のような危険場所に設置されるフィールド機器は、防爆規格を満たすように設計される。ここで、主な防爆規格として耐圧防爆規格及び本質安全防爆規格が挙げられる。耐圧防爆規格では、機器を耐圧容器で覆い、内部で爆発が生じても外部の可燃性ガス等に引火させない構造にすることが要求される。本質安全防爆規格では、本質安全回路(本安回路)を使用することにより、可燃性のガスに点火させない構造にすることが要求される。尚、上記の本質安全回路は、正常時及び異常時の双方において、温度が可燃性のガスの発火温度以下に維持され、仮に電気的な火花が発生したとしても、そのエネルギーが可燃性のガスの着火エネルギー以下になるような回路である。
【0004】
以下の特許文献1には、耐圧容器を使用せずに防爆規格を満たすように構成されたフィールド機器が開示されている。具体的に、以下の特許文献1に開示されたフィールド機器は、防爆構造容器内に設けられた送受信手段と、防爆構造容器の外壁の一部を貫通突出して設けられたアンテナコネクタとを接続する接続線上に、アンテナコネクタの中心導体の電位を所定の電位に保つショートスタブ手段を設けることで防爆規格を満たすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-115121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、危険場所に設置されたフィールド機器に対して、非危険場所に設けられた電源からフィールド機器を動作させるための電力供給が必要になる場合がある。例えば、上述したフィールド機器とコントローラとが無線接続された分散制御システムで用いられるフィールド機器(無線フィールド機器)を電池で動作させたくない場合である。無線フィールド機器を電池によって動作させる場合には、定期的な電池交換が必要になるところ、このような電池交換を行いたくない場合には、非危険場所に設けられた電源からフィールド機器を動作させるための電力供給が必要になる。
【0007】
非危険場所に設けられた電源から危険場所に設置されたフィールド機器に電力を供給する場合には、非危険場所にバリア(安全保持器)を設置し、電源から供給される電力(電気エネルギー)をバリアによって制限し、制限された電力(電気エネルギー)を危険場所に設置された無線フィールド機器に供給するという手段が採用される。尚、上記のバリアには、特別な接地を必要としない絶縁バリア以外に、A種接地(例えば、直径2.6[mm]以上の軟銅線等を用い、接地抵抗値が10[Ω]以下にされる接地)が必要となる非絶縁のツェナーバリアを用いることができる。
【0008】
上記の手段が採用される場合において、非危険場所におけるバリアの設置位置と、危険場所におけるフィールド機器の設置位置とが離れている場合には、専用の電源配線が必要になるため、コストの大幅な上昇を招いてしまうという問題がある。また、バリアからフィールド機器に供給される直流電力の電圧は、例えば24[V]前後であり、配線が長くなる場合には、配線抵抗による電圧降下を小さくするために太い配線を使用する必要があるため、更なるコストの上昇を招いてしまうという問題がある。また、配線抵抗による電圧降下の大きさによっては、フィールド機器に供給される直流電力の電圧がフィールド機器の動作可能な電圧を下回ってしまい、フィールド機器を動作させることができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大幅なコストの上昇を招くことなく危険場所に設置された機器を動作させることができる電源供給が可能な電源装置及び機器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による電源装置は、本質安全防爆がなされている機器である本安機器(10、10A)に電力を供給する電源装置(20、20A、20B)であって、危険場所(A1)に設置される耐圧防爆用電線管(CD7、CD12)が接続される第1接続部(22)と、前記本安機器が接続される第2接続部(23)とを有する耐圧容器(21)と、前記耐圧容器内に収容され、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線(L7、L12)を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限して前記第2接続部に接続された前記本安機器に供給するバリア装置(26、26A、26B)と、を備える。
また、本発明の一態様による電源装置は、前記バリア装置が、絶縁バリア(50、50A)を備える。
また、本発明の一態様による電源装置は、前記絶縁バリアが、直流電力を交流電力に変換する発振回路(51)と、前記発振回路から一次側に供給される交流電力を二次側に伝達する絶縁トランス(52)と、前記絶縁トランスの二次側に伝達された交流電力を整流する整流回路(53、53A)と、前記整流回路で整流された電力を制限する制限回路(54)と、を備える。
また、本発明の一態様による電源装置は、前記耐圧容器が、前記第2接続部を複数備え、前記制限回路が、前記第2接続部に対応して複数設けられる。
また、本発明の一態様による電源装置は、前記バリア装置が、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される交流電力を直流電力に変換して前記絶縁バリアに供給する電力変換部(40)を備える。
また、本発明の一態様による電源装置は、前記耐圧容器が、前記第1接続部を複数備え、前記電力変換部が、前記第1接続部に対応して複数設けられ、複数の前記電力変換部の各々の直流電力を、複数のダイオード60a、60bを介して前記絶縁バリアに並列接続する接続回路(60)を備える。
また、本発明の一態様による電源装置は、前記第1接続部及び前記第2接続部には耐圧パッキン金具(FP)が設けられており、前記耐圧防爆用電線管及び前記本安機器が、前記耐圧パッキン金具を介して接続される。
本発明の一態様による機器システムは、本質安全防爆がなされている機器である本安機器(10、10A)と、危険場所(A1)に設置される耐圧防爆用電線管(CD7、CD12)に接続され、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限して前記本安機器に供給する上記の何れかに記載の電源装置と、を備える。
また、本発明の一態様による機器システムは、前記耐圧防爆用電線管の一部に取り付けられ、前記耐圧防爆用電線管に収容された電線を介して前記電源装置へ供給される電力を遮断するか否かを切り換えるスイッチ(30、30A)を備える。
また、本発明の一態様による機器システムは、前記本安機器が、アンテナ(17)が取り外し可能に構成され、前記アンテナに接続可能であるとともに前記本安機器の外部に突出した接続端子を有する無線機器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大幅なコストの上昇を招くことなく危険場所に設置された機器を動作させることができる電源供給が可能である、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態による機器システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態による電源装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態による機器システムの全体構成を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態による電源装置の内部構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第3実施形態による機器システムの全体構成を示す図である。
図6】本発明の第3実施形態による電源装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による電源装置及び機器システムについて詳細に説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
〈機器システム〉
図1は、本発明の第1実施形態による機器システムの全体構成を示す図である。図1に示す通り、本実施形態の機器システム1は、無線フィールド機器10(本安機器、無線機器)、電源装置20、及びタンブラスイッチ30(スイッチ)を備えており、プラントの危険場所A1に設置されて、プラントの非危険場所A2に設けられた商用電源等の電源PSから供給される電力を用いて無線フィールド機器10を動作させるものである。
【0015】
ここで、機器システム1が設置されるプラントとしては、化学等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等がある。尚、機器システム1が設置されるプラントは、これらに制限される訳ではない点に注意されたい。
【0016】
まず、機器システム1の詳細を説明する前に、機器システム1が設置されている場所の周囲の状況について説明する。図1に示す通り、機器システム1が設置されるプラントの危険場所A1には、耐圧防爆用分電盤110、耐圧防爆用接続箱120、タンブラスイッチ130、耐圧防爆用照明器具140,150が設置されており、プラントの非危険場所A2に設けられた電源PSから供給される電力を用いて耐圧防爆用照明器具140,150による照明がなされる。
【0017】
耐圧防爆用分電盤110は、耐圧防爆がなされた分電盤である。図1に例示する耐圧防爆用分電盤110は、1つの入力端111と3つの出力端112とを有する。耐圧防爆用分電盤110の入力端111は、非危険場所A2に設けられた電源PSに接続されている。耐圧防爆用分電盤110の1つの出力端112は、耐圧防爆用接続箱120に接続されており、耐圧防爆用分電盤110のもう1つの出力端112は、耐圧防爆用照明器具140に接続されている。尚、耐圧防爆用分電盤110の残りの出力端112は、閉止栓CPが取り付けられて未使用とされている。
【0018】
耐圧防爆用接続箱120は、耐圧防爆がなされた接続箱である。図1に例示する耐圧防爆用接続箱120は、1つの入力端121と2つの出力端122とを有する。耐圧防爆用接続箱120の入力端121は、耐圧防爆用分電盤110の1つの出力端112に接続されている。耐圧防爆用接続箱120の一方の出力端122は、タンブラスイッチ130に接続されており、他方の出力端122は、タンブラスイッチ30に接続されている。
【0019】
タンブラスイッチ130は、つまみ等の操作子を備えており、操作子が操作されることよって、入力端131と出力端132との間がオン状態又はオフ状態になるスイッチである。タンブラスイッチ130の入力端131は、耐圧防爆用接続箱120の一方の出力端122に接続され、タンブラスイッチ130の出力端132は、耐圧防爆用照明器具150に接続されている。このタンブラスイッチ130は、耐圧防爆用照明器具150を点灯又は消灯するために用いられる。耐圧防爆用照明器具140,150は、耐圧防爆がなされた照明である。
【0020】
電源PSと耐圧防爆用分電盤110とを接続する電線L1は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1に収容されている。耐圧防爆用分電盤110と耐圧防爆用接続箱120とを接続する電線L2は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD2に収容されており、耐圧防爆用接続箱120とタンブラスイッチ130とを接続する電線L3は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD3に収容されている。また、耐圧防爆用分電盤110と耐圧防爆用照明器具140とを接続する電線L4は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD4に収容されており、タンブラスイッチ130と耐圧防爆用照明器具150とを接続する電線L5は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD5に収容されている。
【0021】
耐圧防爆用分電盤110の入力端111及び出力端112、耐圧防爆用接続箱120の入力端121及び出力端122、タンブラスイッチ130の入力端131及び出力端132には、耐圧パッキン金具FPがそれぞれ設けられている。耐圧防爆用厚鋼電線管CD1~CD5の端部は、耐圧パッキン金具FPに固定される。例えば、耐圧防爆用厚鋼電線管CD2の一端は、耐圧防爆用分電盤110の1つの出力端112に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定され、他端は、耐圧防爆用接続箱120の入力端121に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定される。尚、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1の一端は、耐圧防爆用分電盤110の入力端111に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定されるが、他端は、可燃性ガスが非危険場所A2に流入するのを防止するために封止材SLによって封止される。
【0022】
このように、機器システム1が設置されている危険場所A1には、耐圧防爆がなされた配電設備(耐圧防爆用分電盤110、耐圧防爆用接続箱120、タンブラスイッチ130、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1~CD5,電線L1~L5等)が設けられており、この配電設備を介して供給される電力を用いて耐圧防爆用照明器具140,150による照明がなされる。本実施形態の機器システム1は、このような配電設備を介して供給される電力を用いて無線フィールド機器10を動作させるものである。
【0023】
次に、機器システム1の詳細について説明する。前述の通り、機器システム1は、無線フィールド機器10、電源装置20、及びタンブラスイッチ30を備える。無線フィールド機器10は、防水容器11、本安回路12、本安電源端子13、入力端14、RFコネクタ15、同軸ケーブル16、及びアンテナ17等を備えており、上記の配電設備によって配電され、タンブラスイッチ30及び電源装置20を介して供給される電力を用いて動作し、無線信号の送受信を行う。尚、RFコネクタ15は、耐圧防爆に対応した構造を有するものを用いることができる。
【0024】
ここで、無線フィールド機器10としては、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、プラント内の状況や対象物を撮影するカメラやビデオ等の撮像機器、プラント内の異音等を収集したり警報音等を発したりするマイクやスピーカ等の音響機器、各機器の位置情報を出力する位置検出機器、その他のプラントの現場に設置される機器等が挙げられる。
【0025】
無線フィールド機器10は、無線信号の送受信を行う無線回路等の各種回路が形成された本安回路12、及び電源装置20に接続されて電源装置20から本安回路12に供給される電力を受電する本安電源端子13が、防水容器11の内部に収容された構造の本質安全防爆規格を満たす機器である。この無線フィールド機器10の防水容器11には、入力端14と本安回路12に接続されたRFコネクタ15とが設けられている。入力端14は、本安電源端子13に近接する位置に設けられている。RFコネクタ15には同軸ケーブル16を介してアンテナ17が接続される。
【0026】
ここで、アンテナ17は、同軸ケーブル16を介してRFコネクタ15に接続することも、同軸ケーブル16を介することなくRFコネクタ15に直接接続することも可能である。同軸ケーブル16をRFコネクタ15から取り外した場合、或いはRFコネクタ15に直接接続されたアンテナ17をRFコネクタ15から取り外した場合に、RFコネクタ15の中心導体(接続端子)が外部に剥き出しの状態になる。つまり、無線フィールド機器10は、アンテナ17に接続可能であるとともに、無線フィールド機器10の外部(防水容器11の外部)に突出した接続端子を有する。このため、無線フィールド機器10は、本安回路12を設けて本質安全防爆規格を満たすようにされている。
【0027】
電源装置20は、耐圧容器21、入力端22(第1接続部)、出力端23(第2接続部)、耐圧側電源端子24、本安側出力端子25、及びバリア装置26を備えており、上述の配電設備によって配電され、タンブラスイッチ30を介して供給される電力を用いて、無線フィールド機器10が動作するために必要な電力を生成する。例えば、電圧が90~240[V]程度の電力を、本質安全防爆規格を満たす電力(例えば、電圧が12[V]程度、電流が50[mA]程度)に制限して、無線フィールド機器10が動作するために必要な電力を生成する。
【0028】
電源装置20は、タンブラスイッチ30が接続される耐圧側電源端子24、無線フィールド機器10が接続される本安側出力端子25、及び耐圧側電源端子24と本安側出力端子25との間に設けられ、無線フィールド機器10が動作するために必要な電力を生成するバリア装置26が、耐圧容器21の内部に収容された構造の耐圧防爆規格を満たす機器である。電源装置20の耐圧容器21には、耐圧側電源端子24に近接する位置に入力端22が設けられており、本安側出力端子25に近接する位置に出力端23が設けられている。尚、電源装置20に設けられたバリア装置26の詳細については後述する。
【0029】
タンブラスイッチ30は、タンブラスイッチ130と同様に、つまみ等の操作子を備えており、操作子が操作されることによって、入力端31と出力端32との間がオン状態又はオフ状態になるスイッチである。タンブラスイッチ30の入力端31は、耐圧防爆用接続箱120に接続され、例えばメンテナンス時に無線フィールド機器10への電源供給を遮断する場合にオフ状態にされる。
【0030】
耐圧防爆用接続箱120とタンブラスイッチ30とを接続する電線L6は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD6に収容され、タンブラスイッチ30と電源装置20とを接続する電線L7は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD7(耐圧防爆用電線管)に収容される。これに対し、電源装置20と無線フィールド機器10とを接続する電線L8は、保護管PTに収容される。電源装置20で生成されて、電線L8を介して無線フィールド機器10に供給される電力は、本質安全防爆規格を満たすものであり、電線L8を耐圧防爆用厚鋼電線管に収容して耐圧防爆にする必要が無いことから、電線L8は保護管PTに収容される。
【0031】
無線フィールド機器10の入力端14には防水パッキンWPが設けられている。これに対し、電源装置20の入力端22及び出力端23には、耐圧パッキン金具FPがそれぞれ設けられている。同様に、タンブラスイッチ30の入力端31及び出力端32には、耐圧パッキン金具FPがそれぞれ設けられている。
【0032】
耐圧防爆用厚鋼電線管CD6の一端は、耐圧防爆用接続箱120の他方の出力端122に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定され、他端は、タンブラスイッチ30の入力端31に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定される。耐圧防爆用厚鋼電線管CD7の一端は、タンブラスイッチ30の出力端32に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定され、他端は、電源装置20の入力端22に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定される。保護管PTの一端は、無線フィールド機器10の入力端14に設けられた防水パッキンWPに固定され、他端は電源装置20の出力端23に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定される。
【0033】
このように、機器システム1は、電源装置20、タンブラスイッチ30、及び電線管(耐圧防爆用厚鋼電線管CD6,CD7)が耐圧防爆構造とされて耐圧防爆用接続箱120の他方の出力端122に接続される。そして、電源装置20の本安側出力端子25から無線フィールド機器10は、本質的安全防爆規格を満たすようにされている。このようにするのは、電源装置20と無線フィールド機器10とを接続する電線L8の長さを極力短くすることができる。これにより、専用の電源配線が不要になるとともに、電圧降下を小さくするための太い配線も不要となることから、大幅なコストの上昇を招くことなく危険場所A1に設置された無線フィールド機器10に対する電源供給を行うことができる。また、配線抵抗による電圧降下によって、無線フィールド機器10を動作させることができなくなることを防止できる。
【0034】
〈電源装置〉
図2は、本発明の第1実施形態による電源装置の内部構成を示すブロック図である。図2(a)に示す通り、電源装置20のバリア装置26は、AC/DC電源40(電力変換部)と絶縁バリア50とを備える。AC/DC電源40は、耐圧側電源端子24から供給される交流電力を直流電力に変換する。例えば、AC/DC電源40は、電圧が90~240[V]程度の交流電力を、電圧が24[V]の直流電力に変換する。尚、AC/DC電源40から出力される直流電力の電圧を幾つにするかは、絶縁バリア50の電気的な特性との兼ね合いで決定される。絶縁バリア50は、AC/DC電源40から出力される直流電力を、本質安全防爆規格を満たす電力(例えば、電圧が12[V]程度、電流が50[mA]程度)に制限する。
【0035】
図2(b)に示す通り、絶縁バリア50は、発振回路51、絶縁トランス52、整流回路53、及びエネルギー制限回路54(制限回路)を備える。発振回路51は、AC/DC電源40から出力される直流電力を交流電力に変換する回路である。例えば、発振回路51は、直流電力を数百[kHz]~1[MHz]程度の周波数を有する交流電力に変換する。絶縁トランス52は、電気的に絶縁された一次側巻線及び二次側巻線を備えており、発振回路51から一次側巻線に供給される交流電力を二次側巻線に伝達する。整流回路53は、絶縁トランス52の二次側巻線に伝達された交流電力を整流する。エネルギー制限回路54は、整流回路53で整流された電力(電気エネルギー)を制限する。図2(c)に示す通り、エネルギー制限回路54は、例えば抵抗R、3つのツェナーダイオードTD、及びヒューズFを備える構成のものを用いることができる。
【0036】
ここで、バリア装置26の絶縁バリア50を、ツェナーバリアに代えることも可能である。但し、ツェナーバリアを用いる場合には、A種接地(例えば、直径2.6[mm]以上の軟銅線等を用い、接地抵抗値が10[Ω]以下にされる接地)が必要になることから現場での作業が難しくなる。絶縁バリア50を備えるバリア装置26は、A種接地を必要としないことから、ツェナーバリアを用いる場合よりも現場での作業の面で有利である。
【0037】
〈機器システムの動作〉
非危険場所A2に設けられた電源PSの電力(交流電力)は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1に収容された電線L1、耐圧防爆用分電盤110、耐圧防爆用厚鋼電線管CD2に収容された電線L2、耐圧防爆用接続箱120、及び耐圧防爆用厚鋼電線管CD6に収容された電線L6を順に介してタンブラスイッチ30に供給される。
【0038】
タンブラスイッチ30に供給された電力(交流電力)は、タンブラスイッチ30がオン状態である場合には、耐圧防爆用厚鋼電線管CD7に収容された電線L7を介して電源装置20に供給される。電源装置20に供給された電力(交流電力)は、耐圧側電源端子24からバリア装置26に入力され、AC/DC電源40によって直流電力に変換された後に絶縁バリア50に供給される。
【0039】
絶縁バリア50に供給された直流電力は、発振回路51によって一旦交流電力に変換されて絶縁トランス52の一次側巻線に供給される。この交流電力は、絶縁トランス52の二次側巻線に伝達されて整流回路53で整流された後に、エネルギー制限回路54で、本質安全防爆規格を満たす電力(電気エネルギー)に制限される。そして、本質安全防爆規格を満たす電力(直流電力)が、保護管PTに収容された電線L8を介して無線フィールド機器10に供給される。このようにして、プラントの非危険場所A2に設けられた電源PSから供給される電力を用いて無線フィールド機器10が動作する。
【0040】
以上の通り、本実施形態では、耐圧防爆用厚鋼電線管CD7に収容された電線L7を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限するバリア装置26と、バリア装置26を収容する耐圧容器21とを備える電源装置20を危険場所A1に設置し、本質安全防爆規格を満たす電力を電源装置20から無線フィールド機器10に供給するようにしている。このため、電源装置20と無線フィールド機器10とを接続する電線L8の長さを極力短くすることができる。これにより、専用の電源配線が不要になるとともに、電圧降下を小さくするための太い配線も不要となることから、大幅なコストの上昇を招くことなく危険場所A1に設置された無線フィールド機器10に対する電源供給を行うことができる。また、配線抵抗による電圧降下によって、無線フィールド機器10を動作させることができなくなることを防止できる。
【0041】
〔第2実施形態〕
〈機器システム〉
図3は、本発明の第2実施形態による機器システムの全体構成を示す図である。尚、図3においては、図1に示した構成に相当する構成については同一の符号を付してある。また、図3においては、図示を簡略化するために、図1に示した耐圧防爆用分電盤110、耐圧防爆用接続箱120、タンブラスイッチ130、耐圧防爆用照明器具140,150、耐圧防爆用厚鋼電線管CD2~CD6の図示を省略している。尚、図3では、電線L1がタンブラスイッチ30に接続されて、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1の一端が、タンブラスイッチ30の入力端31に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定されているとしている。
【0042】
図3に示す通り、本実施形態の機器システム2は、図1に示す電源装置20に代えて電源装置20Aを設け、無線フィールド機器10Aを追加した構成である。このような機器システム2は、電源装置20Aが、タンブラスイッチ30を介して供給される電力を用いて、無線フィールド機器10及び無線フィールド機器10Aが動作するために必要な電力を生成するようしたものである。
【0043】
無線フィールド機器10Aは、無線フィールド機器10とは、アンテナ17が防水容器11に固定されて交換が不可である点が異なる。電源装置20Aは、図1に示す電源装置20とは、バリア装置26に代えてバリア装置26Aを備えており、複数の出力端23及び複数の本安側出力端子25を備える点が異なる。電源装置20Aに設けられた一方の本安側出力端子25に無線フィールド機器10が接続され、他方の本安側出力端子25に無線フィールド機器10Aが接続される。
【0044】
無線フィールド機器10と電源装置20Aとを接続する電線L8及び無線フィールド機器10Aと電源装置20Aとを接続する電線L9はそれぞれ保護管PTに収容される。電線L8を収容する保護管PTの一端は、無線フィールド機器10の入力端14に設けられた防水パッキンWPに固定され、他端は電源装置20Aの一方の出力端23に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定される。電線L9を収容する保護管PTの一端は、無線フィールド機器10Aの入力端14に設けられた防水パッキンWPに固定され、他端は電源装置20Aの他方の出力端23に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定される。
【0045】
〈電源装置〉
図4は、本発明の第2実施形態による電源装置の内部構成を示すブロック図である。図4(a)に示す通り、電源装置20Aのバリア装置26Aは、図2(a)に示すバリア装置26に設けられた絶縁バリア50を、複数の本安側出力端子25を有する絶縁バリア50Aに代えた構成である。図4(b)に示す通り、絶縁バリア50Aは、図2(b)に示す絶縁バリア50の整流回路53を整流回路53Aに代え、エネルギー制限回路54を複数設けた構成である。複数設けられたエネルギー制限回路54には、整流回路53Aから同じ大きさの直流電圧が供給される。エネルギー制限回路54は、図2(c)に示す構成のものを用いることができる。尚、本実施形態において、バリア装置26Aに設けられたAC/DC電源40は、直流電圧(例えば、100[V]の直流電圧)で動作させても良い。
【0046】
〈機器システムの動作〉
非危険場所A2に設けられた電源PSの電力(交流電力)は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1に収容された電線L1を介してタンブラスイッチ30に供給される。タンブラスイッチ30に供給された電力(交流電力)は、タンブラスイッチ30がオン状態である場合には、耐圧防爆用厚鋼電線管CD7に収容された電線L7を介して電源装置20Aに供給される。電源装置20Aに供給された電力(交流電力)は、耐圧側電源端子24からバリア装置26Aに入力され、AC/DC電源40によって直流電力に変換された後に絶縁バリア50Aに供給される。
【0047】
絶縁バリア50Aに供給された直流電力は、発振回路51によって一旦交流電力に変換されて絶縁トランス52の一次側巻線に供給される。この交流電力は、絶縁トランス52の二次側巻線に伝達されて整流回路53で整流された後に2分岐される。2分岐された電力は、各々のエネルギー制限回路54で本質安全防爆規格を満たす電力(電気エネルギー)に制限される。そして、本質安全防爆規格を満たす電力(直流電力)が、保護管PTに収容された電線L8を介して無線フィールド機器10に供給されるとともに、保護管PTに収容された電線L9を介して無線フィールド機器10Aに供給される。このようにして、プラントの非危険場所A2に設けられた電源PSから供給される電力を用いて無線フィールド機器10,10Aが動作する。
【0048】
以上の通り、本実施形態においては、耐圧防爆用厚鋼電線管CD7に収容された電線L7を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限するバリア装置26Aと、バリア装置26Aを収容する耐圧容器21とを備える電源装置20Aを危険場所A1に設置し、本質安全防爆規格を満たす電力を電源装置20から無線フィールド機器10,10Aに供給するようにしている。このため、電源装置20と無線フィールド機器10,10Aとを接続する電線L8,L9の長さを極力短くすることができる。これにより、専用の電源配線が不要になるとともに、電圧降下を小さくするための太い配線も不要となることから、大幅なコストの上昇を招くことなく危険場所A1に設置された無線フィールド機器10,10Aに対する電源供給を行うことができる。また、配線抵抗による電圧降下によって、無線フィールド機器10を動作させることができなくなることを防止できる。また、出力端23及びエネルギー制限回路54を複数設けたので、1台の電源装置20Aで複数台の無線フィールド機器10,10Aに電源を供給できる。
【0049】
〔第3実施形態〕
〈機器システム〉
図5は、本発明の第3実施形態による機器システムの全体構成を示す図である。尚、図5においては、図3と同様に、図1に示した構成に相当する構成については同一の符号を付してある。また、図5においては、図3と同様に、図1に示した耐圧防爆用分電盤110、耐圧防爆用接続箱120、タンブラスイッチ130、耐圧防爆用照明器具140,150、耐圧防爆用厚鋼電線管CD2~CD6の図示を省略している。
【0050】
図5に示す通り、本実施形態の機器システム3は、図1に示す電源装置20に代えて電源装置20Bを設け、タンブラスイッチ30Aを追加した構成である。このような機器システム3は、電源装置20Bが、非危険場所A2に設けられた電源PSからタンブラスイッチ30を介して供給される電力に加えて、非危険場所A2に設けられた電源PS1からタンブラスイッチ30Aを介して供給される電力を用いて、無線フィールド機器10が動作するために必要な電力を生成するようしたものである。つまり、本実施形態の機器システム3は、電源の冗長化を可能としたものである。
【0051】
電源装置20Bは、図1に示す電源装置20とは、バリア装置26に代えてバリア装置26Bを備えており、複数の入力端22及び耐圧側電源端子24を備える点が異なる。電源装置20Bに設けられた一方の耐圧側電源端子24にタンブラスイッチ30が接続され、他方の耐圧側電源端子24にタンブラスイッチ30Aが接続される。タンブラスイッチ30Aは、タンブラスイッチ30と同様の構成である。
【0052】
図5に示す例では、電線L1がタンブラスイッチ30に接続されて、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1の一端が、タンブラスイッチ30の入力端31に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定されているとしている。また、電源PS1とタンブラスイッチ30Aとが電線L11によって接続されており、タンブラスイッチ30Aと電源装置20Bとが電線L12によって接続されているとしている。
【0053】
電線L11は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD11に収容され、電線L12は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD12(耐圧防爆用電線管)に収容されている。耐圧防爆用厚鋼電線管CD11の一端は、タンブラスイッチ30Aの入力端31に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定されるが、他端は、可燃性ガスが非危険場所A2に流入するのを防止するために封止材SLによって封止される。耐圧防爆用厚鋼電線管CD12の一端は、タンブラスイッチ30Aの出力端32に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定され、他端は、電源装置20Bの入力端22に設けられた耐圧パッキン金具FPに固定される。
【0054】
〈電源装置〉
図6は、本発明の第3実施形態による電源装置の内部構成を示すブロック図である。図6に示す通り、電源装置20Bのバリア装置26Bは、図2(a)に示すバリア装置26に設けられたAC/DC電源40を複数設け、接続回路60を追加した構成である。接続回路60は、カソードが接続された2つのダイオード60a,60bを備える。ダイオード60aのアノードは一方のAC/DC電源40の出力端T11に接続され、ダイオード60bのアノードは、他方のAC/DC電源40の出力端T11に接続される。尚、2つのダイオードのカソードは、絶縁バリア50の入力端T21に接続される。つまり、接続回路60は、複数設けられたAC/DC電源40の各々の出力端T11を、ダイオード60a,60bを介して絶縁バリア50に並列接続する回路である。尚、AC/DC電源40の各々の出力端T12は、絶縁バリア50の入力端T22に接続される。
【0055】
〈機器システムの動作〉
非危険場所A2に設けられた電源PSの電力(交流電力)は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD1に収容された電線L1を介してタンブラスイッチ30に供給され、タンブラスイッチ30がオン状態である場合に、耐圧防爆用厚鋼電線管CD7に収容された電線L7を介して電源装置20Bに供給される。また、非危険場所A2に設けられた電源PS1の電力(交流電力)は、耐圧防爆用厚鋼電線管CD11に収容された電線L11を介してタンブラスイッチ30Aに供給され、タンブラスイッチ30Aがオン状態である場合に、耐圧防爆用厚鋼電線管CD12に収容された電線L12を介して電源装置20Bに供給される。
【0056】
電源装置20Bに供給された各々の電力(交流電力)は、それぞれ異なる耐圧側電源端子24からバリア装置26Bに入力され、複数のAC/DC電源40によって個別に直流電力に変換される。各々のAC/DC電源40によって個別に変換された直流電流は、接続回路60を介して絶縁バリア50に供給される。絶縁バリア50に供給された直流電力は、発振回路51(図2(b)参照)によって一旦交流電力に変換されて絶縁トランス52の一次側巻線に供給される。この交流電力は、絶縁トランス52の二次側巻線に伝達されて整流回路53で整流された後に、エネルギー制限回路54で、本質安全防爆規格を満たす電力(電気エネルギー)に制限される。そして、本質安全防爆規格を満たす電力(直流電力)が、保護管PTに収容された電線L8を介して無線フィールド機器10に供給される。このようにして、プラントの非危険場所A2に設けられた電源PS,PS1から供給される電力を用いて無線フィールド機器10が動作する。
【0057】
以上の通り、本実施形態においては、耐圧防爆用厚鋼電線管CD7に収容された電線L7を介して供給される電力、及び耐圧防爆用厚鋼電線管CD12に収容された電線L12を介して供給される電力を、本質安全防爆規格を満たす電力に制限するバリア装置26Bと、バリア装置26Bを収容する耐圧容器21とを備える電源装置20Bを危険場所A1に設置し、本質安全防爆規格を満たす電力を電源装置20Bから無線フィールド機器10に供給するようにしている。このため、電源装置20Bと無線フィールド機器10とを接続する電線L8の長さを極力短くすることができる。これにより、専用の電源配線が不要になるとともに、電圧降下を小さくするための太い配線も不要となることから、大幅なコストの上昇を招くことなく危険場所A1に設置された無線フィールド機器10に対する電源供給を行うことができる。
【0058】
また、配線抵抗による電圧降下によって、無線フィールド機器10を動作させることができなくなることを防止できる。更に、タンブラスイッチ30,30Aの切り替えによって電源PS,PS1の何れか一方を用いる運用を行う場合において、例えば電源PSが故障したときに、タンブラスイッチ30をオフ状態にしてタンブラスイッチ30Aをオン状態にすることで、電源PS1から電源装置20Bに電源供給できる。
【0059】
以上、本発明の実施形態による電源装置及び機器システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記第1~第3実施形態のうちの少なくとも2つが組み合わされた構成であっても良い。第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることで、電源PSの電力を、耐圧防爆用分電盤110や耐圧防爆用接続箱120からタンブラスイッチ30を介して電源装置20Aに供給する構成とすることができる。また、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせることで、複数の入力端22と複数の出力端23とを備える構成の電源装置を得ることができる。この電源装置は、具体的に、複数の耐圧側電源端子24、複数のAC/DC電源40、及び接続回路60(図6参照)と、複数のエネルギー制限回路54及び複数の本安側出力端子25を有する絶縁バリア50A(図4参照)とを備える構成である。
【0060】
また、上記実施形態では、本質安全防爆規格を満たす機器(本安機器)が、無線フィールド機器10,10Aである場合を例に挙げて説明したが、本安機器は、無線フィールド機器10,10A以外の機器であっても良い。このような機器としては、例えば、外部配線の切り離しが行われて、電極が外部に剥き出しの状態になるような機器や4-20mA出力の本安伝送器等が挙げられる。4-20mA出力の本安伝送器の場合、本安伝送器を本安無線機器に接続し、本安伝送器の4-20mAの出力信号(4-20mAアナログ信号や4-20mAアナログ信号に重畳されるHART通信信号)を本安無線機器で無線信号に変換して伝送するといった使用方法が可能である。このような本安伝送器や本安無線機器に対し、本発明の電源装置から電力を供給しても良い。
【符号の説明】
【0061】
1~3 機器システム
10,10A 無線フィールド機器
17 アンテナ
20,20A,20B 電源装置
21 耐圧容器
22 入力端
23 出力端
26,26A,26B バリア装置
30,30A タンブラスイッチ
40 AC/DC電源
50,50A 絶縁バリア
51 発振回路
52 絶縁トランス
53,53A 整流回路
54 エネルギー制限回路
60 接続回路
60a,60b ダイオード
A1 危険場所
CD7,CD12 耐圧防爆用厚鋼電線管
FP 耐圧パッキン金具
L7,L12 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6