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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】車両の側部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220511BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220511BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220511BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220511BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B60J5/00 M
B60J5/04 X
B60K1/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018093166
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019199116
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】村岡 修二
(72)【発明者】
【氏名】松田 大和
(72)【発明者】
【氏名】竹林 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊之
(72)【発明者】
【氏名】波多野 和久
(72)【発明者】
【氏名】山田 守英
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-362414(JP,A)
【文献】特開平5-155358(JP,A)
【文献】特開2003-25846(JP,A)
【文献】特開2014-198971(JP,A)
【文献】特開2017-77841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0251042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0023830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60J 5/00
B60J 5/04
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向に所定間隔を隔てて車両前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、
該サイドシルの車両上方に形成されるとともに、乗員が乗降する乗降口を開閉自在に覆う観音開き式のサイドドアとを備えた車両の側部車体構造であって、
前記サイドシルが、
車幅方向に沿った縦断面において、断面略ハット状のサイドシルアウタにおける車両上方へ起立した部分と、断面略ハット状のサイドシルインナにおける車両上方へ起立した部分とで形成された上側フランジ部を備え、
前記サイドドアが、
前記乗降口の後部を覆うリヤドアを備え、
前記リヤドアに車幅方向で対向する前記上側フランジ部をリヤドア対向フランジ部分とし、該リヤドア対向フランジ部分よりも車両前方の前記上側フランジ部をフロントドア対向フランジ部分として、
前記リヤドア対向フランジ部分が、
フロントドア対向フランジ部分における車両上下方向の長さよりも長い車両上下方向の長さを有する形状に形成され、
車幅方向に沿った縦断面において、上端が前記リヤドア対向フランジ部分に接合されるとともに、前記サイドシルインナとで閉断面をなすガセット部材を備えた
車両の側部車体構造。
【請求項2】
前記リヤドアが、
車両上下方向に延びるセンターピラーを備え、
前記ガセット部材が、
前記センターピラーの下部と略同じ車両前後方向の位置に配設された
請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
前記サイドシルアウタの上面に、前記リヤドアに設けたラッチが係合するストライカを備え、
前記ガセット部材が、
車両前後方向において、前記ストライカと略同じ位置に配設された
請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
前記ストライカが、
前記サイドシルアウタの上面に連結されるストライカ基部と、
前記リヤドアの前記ラッチが係合するストライカ本体とで構成され、
前記サイドシルアウタの上面に、前記リヤドアの車幅方向内側への移動を規制するキャッチャピンを備え、
該キャッチャピンが、
前記ストライカ本体に隣接するとともに、前記ストライカ基部に一体形成された
請求項3に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
前記サイドシルインナが、
前記ガセット部材が配設されるインナ前部と、
該インナ前部の後端に連結されたインナ後部とで構成され、
前記ガセット部材が、
前記インナ前部と前記インナ後部との境界に重なり合う形状に形成された
請求項2から請求項4のいずれか1つに記載の車両の側部車体構造。
【請求項6】
前記サイドシルの間に配設されるとともに、車両の床面をなすフロアパネルと、
該フロアパネルの車両下方に配設された車載バッテリとを備え、
該車載バッテリが、
前記ガセット部材と略同じ車両前後方向の位置において、前記サイドシルインナに最も近接するように配設された
請求項2から請求項5のいずれか1つに記載の車両の側部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば乗員が乗降する乗降口が観音開き式のサイドドアで覆われたような車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、車両の側部に設けた乗員が乗降する乗降口は、車体に開閉自在に支持されたサイドドアで覆われている。このサイドドアとしては、例えば、特許文献1のように、乗降口の前端縁をなす車体に開閉自在に支持されたフロントドアと、乗降口の後端縁をなす車体に開閉自在に支持されたリヤドアとで構成された、所謂、観音開き式のサイドドアが知られている。
【0003】
このような観音開き式のサイドドアは、車幅方向内側への押圧荷重に対する剛性が低くなり易い。このため、観音開き式のサイドドアを有する車両は、車両の側部に被衝突物が衝突した際、乗降口の前部と後部とを仕切るように車体に接合されたセンターピラーを有する車両に比べて、サイドドアが車室内側へ大きく変形するおそれがあった。
【0004】
そこで、観音開き式のサイドドアを有する車両では、例えば車両上下方向に延びるセンターピラーをリヤドアの前端近傍に内蔵することで、車幅方向内側への押圧荷重に対するリヤドアの剛性を向上して、側突時におけるリヤドアの変形を抑制している。
【0005】
しかしながら、車幅方向内側への押圧荷重に対するサイドシルの剛性や機械的強度が十分でない場合、車幅方向内側への押圧荷重が作用したリヤドアをサイドシルが安定して支持できないおそれがある。このため、車幅方向内側への押圧荷重に対するリヤドアの剛性を向上した場合であっても、側突時における車室内へのリヤドアの侵入を十分に抑制できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-341553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、側突時における車室内へのリヤドアの侵入を抑制できる車両の側部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車両の車幅方向に所定間隔を隔てて車両前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、該サイドシルの車両上方に形成されるとともに、乗員が乗降する乗降口を開閉自在に覆う観音開き式のサイドドアとを備えた車両の側部車体構造であって、前記サイドシルが、車幅方向に沿った縦断面において、断面略ハット状のサイドシルアウタにおける車両上方へ起立した部分と、断面略ハット状のサイドシルインナにおける車両上方へ起立した部分とで形成された上側フランジ部を備え、前記サイドドアが、前記乗降口の後部を覆うリヤドアを備え、前記リヤドアに車幅方向で対向する前記上側フランジ部をリヤドア対向フランジ部分とし、該リヤドア対向フランジ部分よりも車両前方の前記上側フランジ部をフロントドア対向フランジ部分として、前記リヤドア対向フランジ部分が、フロントドア対向フランジ部分における車両上下方向の長さよりも長い車両上下方向の長さを有する形状に形成され、車幅方向に沿った縦断面において、上端が前記リヤドア対向フランジ部分に接合されるとともに、前記サイドシルインナとで閉断面をなすガセット部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明により、側突時における車室内へのリヤドアの侵入を抑制することができる。
具体的には、フロントドア対向フランジ部分における車両上下方向の長さに対してリヤドア対向フランジ部分における車両上下方向の長さが長く形成されているため、車両の側部車体構造は、リヤドア対向フランジ部分がフロントドア対向フランジ部分と略同じ車両上下方向の長さの場合に比べて、リヤドアとサイドシルとの接触面積を大きく確保することができる。
【0010】
さらに、サイドシルインナとで閉断面をなすガセット部材を備えたことにより、車両の側部車体構造は、上側フランジ部を車幅方向内側から支持することができる。この際、車両の側部車体構造は、車幅方向に沿った縦断面において、サイドシルインナとガセット部材とで形成された閉断面の断面積を、リヤドア対向フランジ部分がフロントドア対向フランジ部分と略同じ車両上下方向の長さの場合に比べて大きく確保することができる。
【0011】
これにより、車両の側部車体構造は、リヤドア対向フランジ部分をガセット部材によって支持できるとともに、サイドシルにおけるリヤドアと対向する部分を、ガセット部材によって補強することができる。
【0012】
このため、車幅方向内側への押圧荷重がサイドシルに作用した際、車両の側部車体構造は、車幅方向内側へのリヤドア対向フランジ部分の倒れ変形と、車幅方向内側へのサイドシルの変形とを抑制することができる。
従って、車両の側部車体構造は、側突時における車室内へのリヤドアの侵入を抑制することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記リヤドアが、車両上下方向に延びるセンターピラーを備え、前記ガセット部材が、前記センターピラーの下部と略同じ車両前後方向の位置に配設されてもよい。
この発明により、車両の側部車体構造は、側突時における車幅方向内側へのリヤドアの変形を抑えて、車室内へのリヤドアの侵入をより抑制することができる。
【0014】
具体的には、リヤドアがセンターピラーを備えたことにより、車両の側部車体構造は、リヤドアの剛性を向上することができる。
さらに、ガセット部材がセンターピラーの下部と略同じ車両前後方向の位置に配設されているため、車両の側部車体構造は、側突時の側突荷重を、センターピラー、及びガセット部材を介して、サイドシルに安定して伝達することができる。
【0015】
これにより、車両の側部車体構造は、側突時における車幅方向内側へのリヤドアの変形をより抑制することができる。
従って、車両の側部車体構造は、リヤドアにセンターピラーを備えたことにより、側突時における車幅方向内側へのリヤドアの変形を抑えて、車室内へのリヤドアの侵入をより抑制することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記サイドシルアウタの上面に、前記リヤドアに設けたラッチが係合するストライカを備え、前記ガセット部材が、車両前後方向において、前記ストライカと略同じ位置に配設されてもよい。
【0017】
この発明により、車両の側部車体構造は、車幅方向内側への押圧荷重がリヤドアを介してストライカに作用した際、車幅方向内側へのストライカの変位を、サイドシルインナとガセット部材とで形成された閉断面によって抑えることができる。このため、車両の側部車体構造は、側突時における車室内へのリヤドアの侵入をより確実に抑制することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記ストライカが、前記サイドシルアウタの上面に連結されるストライカ基部と、前記リヤドアの前記ラッチが係合するストライカ本体とで構成され、前記サイドシルアウタの上面に、前記リヤドアの車幅方向内側への移動を規制するキャッチャピンを備え、該キャッチャピンが、前記ストライカ本体に隣接するとともに、前記ストライカ基部に一体形成されてもよい。
【0019】
この発明により、車両の側部車体構造は、ストライカ本体とキャッチャピンとを別体で構成した場合に比べて、サイドシルアウタに対するストライカ本体、及びキャッチャピンの組付け性を向上できるとともに、組付け工数を低減することができる。
【0020】
さらに、車幅方向内側への押圧荷重がリヤドアを介してキャッチャピンに作用した際、車両の側部車体構造は、車幅方向内側へのキャッチャピンの変位を、サイドシルインナとガセット部材とで形成された閉断面によって抑えることができる。このため、車両の側部車体構造は、側突時における車室内へのリヤドアの侵入をより確実に抑制することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記サイドシルインナが、前記ガセット部材が配設されるインナ前部と、該インナ前部の後端に連結されたインナ後部とで構成され、前記ガセット部材が、前記インナ前部と前記インナ後部との境界に重なり合う形状に形成されてもよい。
【0022】
この発明により、車両の側部車体構造は、サイドシルインナがインナ前部とインナ後部とに分割された場合であっても、インナ前部とインナ後部との境界における剛性をガセット部材によって確保することができる。
【0023】
このため、車両の側部車体構造は、車幅方向外側からの押圧荷重に対して、インナ前部とインナ後部との境界が最弱部となることを防止できる。
従って、車両の側部車体構造は、サイドシルインナがインナ前部とインナ後部とに分割された場合であっても、側突時におけるリヤドアの車室内への侵入を安定して抑制することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記サイドシルの間に配設されるとともに、車両の床面をなすフロアパネルと、該フロアパネルの車両下方に配設された車載バッテリとを備え、該車載バッテリが、前記ガセット部材と略同じ車両前後方向の位置において、前記サイドシルインナに最も近接するように配設されてもよい。
【0025】
この発明により、車両の側部車体構造は、車幅方向内側への変形がガセット部材によって抑制されたサイドシルによって、車幅方向内側への押圧荷重が車載バッテリに直接的に作用することを防止できる。このため、車両の側部車体構造は、例えば、駆動用モータに電力を供給するような車載バッテリを、フロアパネルの車両下方により多く配設することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、側突時における車室内へのリヤドアの侵入を抑制できる車両の側部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】右側面視における車両の側部車体の外観を示す側面図。
図2】底面視における車両の外観を示す底面図。
図3図2中のA-A矢視断面図。
図4】リヤドアを取外した状態における側部車体の外観を示す側面図。
図5図3中のB-B矢視断面図。
図6図1中のC-C矢視断面図。
図7図6中のD-D矢視断面図。
図8図6中のE-E矢視断面図。
図9】車幅方向内側から見たガセット部材の外観を示す外観斜視図。
図10図6中のF-F矢視断面図。
図11】別の実施形態におけるガセット部材の外観を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の車両1は、乗員が乗降する車室の車両後方に荷室が設けられるとともに、荷室の車両後方がバックドア(リフトゲートともいう)により開閉可能に覆われた、所謂ハッチバック型の車両である。このような車両1の側部車体構造について、図1から図10を用いて説明する。
【0029】
なお、図1は右側面視における車両1の側部車体の側面図を示し、図2は底面視における車両1の底面図を示し、図3図2中のA-A矢視断面図を示し、図4はリヤドア9を取外した状態における側部車体の側面図を示し、図5図3中のB-B矢視断面図を示している。
【0030】
さらに、図6図1中のC-C矢視断面図を示し、図7図6中のD-D矢視断面図を示し、図8図6中のE-E矢視断面図を示し、図9は車幅方向内側から見たガセット部材40の外観斜視図を示し、図10図6中のF-F矢視断面図を示している。
また、図示を明確にするため、図1中において、リヤドア9のドアアウタパネル92の図示を省略している。
【0031】
また、図中において、矢印Fr及びRrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。
さらに、矢印Rh及びLhは幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。加えて、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0032】
車両1の側部車体は、図1及び図2に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル2と、サイドシル2の後端から車両後方へ延びる左右一対のリヤサイドフレーム3と、サイドシル2の車両上方で車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール4と、リヤサイドフレーム3の後端から車両後方下方へ延びる左右一対のリヤピラー5とを備えている。
【0033】
さらに、車両1の側部車体は、図1及び図3に示すように、後輪(図示省略)を車両上方から覆う左右一対のリヤホイールハウス6と、リヤホイールハウス6とともに、車両後部の側壁をなす左右一対のリヤサイドパネル7と、リヤサイドパネル7における車幅方向外側の前端近傍に接合されるとともに、リヤサイドパネル7とで車両上下方向に延びる閉断面をなす左右一対のサイドピラー8とを備えている。
【0034】
なお、詳細な図示を省略するが、車両1の側部車体は、ルーフサイドレール4の前端から車両後方下方へ延びる左右一対のフロントピラーと、サイドシル2の前端、及びフロントピラーの前端を車両上下方向に連結する左右一対のヒンジピラーとを備えているものとする。
【0035】
そして、車両1の側部車体は、図3及び図4に示すように、サイドシル2と、ルーフサイドレール4と、サイドピラー8と、フロントピラーと、ヒンジピラーとで囲われた開口を、乗員が乗降する乗降口Sとして構成している。この乗降口Sは、図4に示すように、車両後方側に配設されたリヤドア9と、リヤドア9の車両前方に配設されたフロントドア(図示省略)とで構成されたサイドドアによって、開閉自在に覆われている。
【0036】
また、本実施形態の車両1は、図2図3、及び図5に示すように、左右のサイドシル2を連結して、車両1の床面をなすフロアパネル10の車両下方に、例えば、走行用モータに電力を供給する車載バッテリ11と、車載バッテリ11が載置固定されるバッテリトレイ12とが配設されている。
【0037】
車載バッテリ11は、図2及び図5に示すように、左右のサイドシル2の間におけるフロアパネル10の前端から後端に至る車両前後方向の長さと、サイドシル2の車両前後方向略中央と略同じ車両前後方向の位置よりも車両後方部分が最もサイドシル2に近接する車幅方向の長さを有する底面視略矩形に構成されている。
【0038】
一方、バッテリトレイ12は、図2図3、及び図5に示すように、底面視において、車載バッテリ11よりも大きい面積を有する底面視略多角形状であって、車両上方が開口した略ボックス状に形成されている。
このバッテリトレイ12は、図2に示すように、左右一対の第1連結ブラケット13、左右一対の第2連結ブラケット14、及び左右一対の第3連結ブラケット15を介して、左右のサイドシル2に連結されている。
【0039】
具体的には、左右の第1連結ブラケット13は、図2に示すように、サイドシル2の車両前後方向略中央よりも車両前方の位置において、バッテリトレイ12とサイドシル2(後述するサイドシルインナ26のインナ下面部27d)とを車幅方向に連結している。
また、左右の第2連結ブラケット14は、図2に示すように、サイドシル2の車両前後方向略中央の位置において、バッテリトレイ12とサイドシル2(後述するサイドシルインナ26のインナ下面部27d)とを車幅方向に連結している。
【0040】
また、左右の第3連結ブラケット15は、図2及び図5に示すように、サイドシル2の後端近傍の位置において、バッテリトレイ12とサイドシル2(後述するサイドシルインナ26のインナ側面部28c)とを、第4連結ブラケット16を介して車幅方向に連結している。
【0041】
引き続き、上述した車両1の側部車体を構成する各構成要素のうち、サイドシル2、及びリヤドア9について詳述する。
まず、本実施形態のサイドドアは、リヤドア9が、ドアヒンジ17を介してサイドピラー8に開閉自在に支持され、フロントドアが、ドアヒンジを介してヒンジピラーに開閉自在に支持された、所謂、観音開き式のサイドドアである。なお、リヤドア9は、フロントドアが開いている状態で開閉可能に構成されているものとする。
【0042】
このようなサイドドアのリヤドア9は、図1及び図6に示すように、乗降口Sの後部を覆うパネル部材であるドアインナパネル91と、ドアインナパネル91に対して車幅方向外側に位置するとともに、車両1の外観意匠面をなすドアアウタパネル92と、ドアインナパネル91に接合されたセンターピラー93とで構成されている。
【0043】
ドアインナパネル91は、図1図4、及び図6に示すように、車室内の車両前後方向略中央に配設された第1フロアクロスメンバ18と略同じ車両前後方向の位置に、前端縁の下端が位置するとともに、上端縁、後端縁、及び下端縁が、それぞれ、ルーフサイドレール4、サイドピラー8、及びサイドシル2に車幅方向で重畳する形状に形成されている。
【0044】
なお、第1フロアクロスメンバ18は、その詳細な説明を省略するが、左右のサイドシル2を車幅方向に連結するとともに、フロアパネル10とで車幅方向に延びる閉断面をなす形状に形成されている。
【0045】
さらに、ドアインナパネル91は、図6及び図7に示すように、乗降口Sを覆うドア側面部911の下端から車幅方向外側に延設されたドア底部912を有している。
このドア底部912は、図7に示すように、サイドシル2の上端(後述する上側フランジ部22におけるリヤドア対向部分22aの上端)よりも車両下方、かつサイドシル2の上面(後述するサイドシルアウタ25のアウタ上面部25b)よりも車両上方の位置に配設されている。なお、ドア底部912の上面には、図6及び図7に示すように、センターピラー93と略同じ車両前後方向の範囲を補強するレインフォースメント94が接合されている。
【0046】
加えて、ドア底部912には、図6に示すように、サイドシル2に設けたストライカ30が車幅方向に挿通可能な切欠き開口であるストライカ開口部912aと、キャッチャピン33が車幅方向に挿通可能な切欠き開口であるピン開口部912bとが車両前後方向に所定間隔を隔てて開口形成されている。なお、ストライカ30、及びキャッチャピン33については、後ほど詳述する。
【0047】
センターピラー93は、図1及び図6に示すように、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状であって、ドアインナパネル91のドア側面部911における車幅方向外側の面に接合されることで、車両上下方向に延びる閉断面を形成している。
【0048】
なお、センターピラー93の下端は、図7に示すように、レインフォースメント94を挟んで、ドア底部912における車幅方向外側の縁端から車両下方へ延設された部分に接合されている。
【0049】
また、左右のサイドシル2は、図4及び図5に示すように、リヤホイールハウス6の前部下端、リヤサイドパネル7の前部下端、及びサイドピラー8の下端に後端が接合され、前端が図示を省略したヒンジピラーの下端に接合されている。
【0050】
このサイドシル2は、図7に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、断面略矩形の閉断面である閉断面部21と、閉断面部21の上面における車幅方向略中央から車両上方へ立設された上側フランジ部22と、閉断面部21の下面における車幅方向略中央から車両下方へ立設された下側フランジ部23とを有する断面形状に形成されている。
【0051】
なお、サイドシル2の上側フランジ部22は、図4に示すように、リヤドア9と対向する部分であるリヤドア対向部分22aと、フロントドアが対向する部分であるフロントドア対向部分22bとが、車両後方からのこの順番で一体形成されている。
【0052】
そして、上側フランジ部22のリヤドア対向部分22aは、図4に示すように、側面視において、フロントドア対向部分22bにおける車両上下方向の長さよりも長い車両上下方向の長さを有する形状に形成されている。換言すると、上側フランジ部22のリヤドア対向部分22aは、側面視において、フロントドア対向部分22bの上端よりも車両上方に上端が位置する形状に形成されている。
【0053】
より詳しくは、サイドシル2は、図6に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のサイドシルアウタ25と、車幅方向内側に突出した断面略ハット状のサイドシルインナ26とを、車幅方向に接合して、車両前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0054】
サイドシルアウタ25は、図6に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、サイドシルインナ26とで上側フランジ部22をなすアウタ上側フランジ部25aと、アウタ上側フランジ部25aの下端から車幅方向外側へ延設したアウタ上面部25bと、アウタ上面部25bにおける車幅方向外側の縁端から車両下方へ延設したアウタ側面部25cと、アウタ側面部25cの下端から車幅方向内側へ延設したアウタ下面部25dと、アウタ下面部25dにおける車幅方向内側の縁端から車両下方へ延設したアウタ下側フランジ部25eとで一体形成されている。
【0055】
このサイドシルアウタ25のアウタ上面部25bには、図4及び図6に示すように、リヤドア9が係合するストライカ30が連結されている。
より詳しくは、ストライカ30は、図4、及び図6から図8に示すように、サイドシル2のアウタ上面部25bに連結されるストライカ基部31と、リヤドア9に設けたラッチ(図示省略)が係合するストライカ本体32と、ストライカ本体32よりも車両後方に配設されたキャッチャピン33とで一体形成されている。
【0056】
ストライカ基部31は、図4に示すように、側面視において車両上方に突出した側面視略ハット状形状の部分を、車両前後方向に2つ並置した形状に形成されている。このストライカ基部31における車両上方へ突出した部分には、図4に示すように、車両前方側にストライカ本体32が連結され、車両後方側にキャッチャピン33が連結されている。
【0057】
そして、ストライカ基部31は、図6に示すように、平面視において、ドアインナパネル91とセンターピラー93とで形成された閉断面内に、ストライカ本体32、及びキャッチャピン33が位置するように、サイドシルアウタ25のアウタ上面部25bに連結されている。
【0058】
換言すれば、ストライカ基部31は、センターピラー93の下端と略同じ車両前後方向の位置に、ストライカ本体32、及びキャッチャピン33が位置するように、サイドシルアウタ25のアウタ上面部25bに連結されている。
【0059】
なお、ストライカ基部31は、図4図7、及び図8に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、サイドシルアウタ25とで閉断面をなすストライカレインフォースメント34を介して、サイドシルアウタ25に連結されている。
【0060】
ストライカ本体32は、図6及び図7に示すように、正面視において、車両上方に突出した正面視略門型形状であって、リヤドア9に設けたラッチが係合可能な形状に形成されている。
【0061】
キャッチャピン33は、図6及び図8に示すように、ストライカ基部31から車両上方に延びる略円柱状の部分と、車両上下方向に所定の厚みを有する略円板状の部分とで一体形成されている。このキャッチャピン33は、リヤドア9の車幅方向内側への移動を規制する規制部材として設けられている。
【0062】
また、サイドシルインナ26は、図3図6、及び図9に示すように、第1フロアクロスメンバ18と、第1フロアクロスメンバ18に対して車両後方に所定間隔を隔てて配設された第2フロアクロスメンバ19との間における車両前後方向の所定位置で、上側フランジ部22のリヤドア対向部分22aを分割するように、車両前方に位置するインナ前部27と、インナ前部27に対して車両後方に位置するインナ後部28とで構成されている。
【0063】
なお、第2フロアクロスメンバ19は、その詳細な説明を省略するが、左右のサイドシル2を車幅方向に連結するとともに、フロアパネル10とで車幅方向に延びる閉断面をなす形状に形成されている。
【0064】
インナ前部27は、図7及び図8に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、サイドシルアウタ25とで上側フランジ部22をなすインナ上側フランジ部27aと、インナ上側フランジ部27aの下端から車幅方向内側へ延設されたインナ上面部27bと、インナ上面部27bにおける車幅方向内側の縁端から車両下方へ延設されたインナ側面部27cと、インナ側面部27cの下端から車幅方向外側へ延設されたインナ下面部27dと、インナ下面部27dにおける車幅方向外側の縁端から車両下方へ延設されたインナ下側フランジ部27eとで一体形成されている。
【0065】
インナ後部28は、図8に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、サイドシルアウタ25とで上側フランジ部22をなすインナ上側フランジ部28aと、インナ上側フランジ部28aの下端から車幅方向内側へ延設されたインナ上面部28bと、インナ上面部28bにおける車幅方向内側の縁端から車両下方へ延設されたインナ側面部28cと、インナ側面部28cの下端から車幅方向外側へ延設されたインナ下面部28dと、インナ下面部28dにおける車幅方向外側の縁端から車両下方へ延設されたインナ下側フランジ部28eとで一体形成されている。
【0066】
上述したインナ前部27、及びインナ後部28とは、図8から図10に示すように、車両上下方向、及び車幅方向に重なり合う車両前後方向の長さで形成されている。
具体的には、インナ前部27は、図6及び図10に示すように、前端がヒンジピラーに接合されるとともに、キャッチャピン33よりも車両後方に後端が位置する車両前後方向の長さを有する形状に形成されている。
【0067】
一方、インナ後部28は、図6及び図10に示すように、キャッチャピン33と略同じ車両前後方向の位置に前端が位置するとともに、リヤホイールハウス6の前部下端、リヤサイドパネル7の前部下端、及びサイドピラー8の下端の接合部分に後端が位置する車両前後方向の長さを有する形状に形成されている。
【0068】
このため、インナ前部27の後端近傍と、インナ後部28の前端近傍とは、図8及び図10に示すように、後述するガセット部材40を挟んで、車両上下方向、及び車幅方向に重なり合うとともに、ガセット部材40を介して互いに接合されている。
【0069】
詳述すると、サイドシルインナ26のインナ前部27は、図8及び図10に示すように、インナ上側フランジ部27aが、サイドシルアウタ25のアウタ上側フランジ部25aに接合され、インナ下側フランジ部27eが、サイドシルアウタ25のアウタ下側フランジ部25eに接合されている。
【0070】
そして、インナ後部28は、図8及び図10に示すように、インナ上側フランジ部28aの上部が、インナ前部27におけるインナ上側フランジ部27aの上部に直接的に接合されるとともに、インナ上側フランジ部28aの下部が、後述するガセット部材40を挟んで、インナ前部27におけるインナ上側フランジ部27aの下部に接合されている。
【0071】
さらに、インナ後部28は、図8及び図10に示すように、インナ上面部28bが、ガセット部材40を挟んで、インナ前部27におけるインナ上側フランジ部27aの上面に接合され、インナ側面部28cの上部が、ガセット部材40を挟んで、インナ前部27におけるインナ側面部27cの上部に接合されている。
【0072】
加えて、インナ後部28は、図8及び図10に示すように、インナ側面部28cの下部が、インナ前部27におけるインナ側面部27cの下部に直接的に接合され、インナ下面部28dが、インナ前部27におけるインナ下面部27dの下面に直接的に接合され、インナ下側フランジ部28eが、インナ前部27におけるインナ下側フランジ部27eに直接的に接合されている。
【0073】
このようなサイドシルインナ26には、図6及び図9に示すように、センターピラー93の下部と略同じ車両前後方向の位置において、サイドシル2の上側フランジ部22におけるリヤドア対向部分22aに接合されるとともに、インナ前部27とで閉断面をなすガセット部材40が配設されている。
【0074】
このガセット部材40は、図6に示すように、センターピラー93における車幅方向外側に突出した部分の前端と略同じ車両前後方向の位置から、キャッチャピン33よりも車両後方に至る車両前後方向の長さを有する形状に形成されている。このため、ガセット部材40は、図8及び図10に示すように、その後端近傍が、重ね合わせたインナ前部27の後端近傍、及びインナ後部28の前端近傍に、重なり合う車両前後方向の長さを有する形状に形成されている。
【0075】
具体的には、ガセット部材40は、図7から図10に示すように、インナ前部27のインナ上側フランジ部27aに接合される上側接合部41と、インナ前部27のインナ側面部27cに接合される下側接合部42と、上側接合部41、及び下側接合部42の間で車両上方に膨出した膨出部分43aを有するガセット上面部43とで一体形成されている。
【0076】
上側接合部41の後端近傍は、図7図8、及び図10に示すように、車幅方向に重ね合わせたインナ前部27のインナ上側フランジ部27aと、インナ後部28のインナ上側フランジ部28aとの間に介在する形状に形成されている。
【0077】
そして、上側接合部41の後端近傍は、車幅方向に重ね合わせたインナ前部27のインナ上側フランジ部27aと、インナ後部28のインナ上側フランジ部28aとの間に介在する状態で、インナ前部27を介して、サイドシルアウタ25のアウタ上側フランジ部25aに接合されている。
【0078】
下側接合部42の後端近傍は、図7図8、及び図10に示すように、車幅方向に重ね合わせたインナ前部27のインナ側面部27cと、インナ後部28のインナ側面部28cとの間に介在可能な形状に形成されている。
【0079】
そして、下側接合部42の後端近傍は、車幅方向に重ね合わせたインナ前部27のインナ側面部27cと、インナ後部28のインナ側面部28cとの間に介在する状態で、インナ前部27に接合されている。
【0080】
ガセット上面部43は、図10に示すように、その前端近傍がインナ前部27のインナ上面部27bに接合され、後端近傍が、車両上下方向に重ね合わせたインナ前部27のインナ上面部27bとインナ後部28のインナ上面部28bとの間に介在する状態で、インナ前部27に接合されている。
【0081】
さらに、ガセット上面部43の膨出部分43aは、図7に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、インナ前部27のインナ上側フランジ部27aと、インナ前部27のインナ上面部27bとで、正面視略三角形状の閉断面形状をなすよう形成されている。
【0082】
より詳しくは、ガセット上面部43の膨出部分43aは、図6図7、及び図10に示すように、車両上方へ突出するように湾曲した側面視略円弧状であって、車幅方向に沿った縦断面において、インナ前部27におけるインナ上側フランジ部27aの上部と、インナ前部27におけるインナ側面部27cの上端との間に架設されるように車両上方へ膨出した形状に形成されている。
【0083】
なお、膨出部分43aは、ストライカ30のストライカ本体32と略同じ車両前後方向の位置に、その上端が位置するように車両上方へ膨出した形状に形成されている。
さらに、この膨出部分43aには、図6及び図10に示すように、車両上方に突出するとともに、車幅方向に沿って延びるビードが、車両前後方向に所定間隔を隔てて3つ形成されている。
【0084】
以上のように、車両1の車幅方向に所定間隔を隔てて車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル2と、サイドシル2の車両上方に形成されるとともに、乗員が乗降する乗降口Sを開閉自在に覆う観音開き式のサイドドアとを備えた車両1の側部車体構造は、サイドシル2が、車幅方向に沿った縦断面において、断面略ハット状のサイドシルアウタ25のアウタ上側フランジ部25aと、断面略ハット状のサイドシルインナ26のインナ上側フランジ部27a,28aとで形成された上側フランジ部22を備え、サイドドアが、乗降口Sの後部を覆うリヤドア9を備え、リヤドア9に車幅方向で対向する上側フランジ部22をリヤドア対向部分22aとし、リヤドア対向部分22aよりも車両前方の上側フランジ部22をフロントドア対向部分22bとして、リヤドア対向部分22aが、フロントドア対向部分22bにおける車両上下方向の長さよりも長い車両上下方向の長さを有する形状に形成され、車幅方向に沿った縦断面において、上端がリヤドア対向部分22aに接合されるとともに、サイドシルインナ26とで閉断面をなすガセット部材40を備えたことにより、側突時における車室内へのリヤドア9の侵入を抑制することができる。
【0085】
具体的には、フロントドア対向部分22bにおける車両上下方向の長さに対してリヤドア対向部分22aにおける車両上下方向の長さが長く形成されているため、車両1の側部車体構造は、リヤドア対向部分22aがフロントドア対向部分22bと略同じ車両上下方向の長さの場合に比べて、リヤドア9とサイドシル2との接触面積を大きく確保することができる。
【0086】
さらに、サイドシルインナ26とで閉断面をなすガセット部材40を備えたことにより、車両1の側部車体構造は、上側フランジ部22を車幅方向内側から支持することができる。この際、車両1の側部車体構造は、車幅方向に沿った縦断面において、サイドシルインナ26とガセット部材40とで形成された閉断面の断面積を、リヤドア対向部分22aがフロントドア対向部分22bと略同じ車両上下方向の長さの場合に比べて大きく確保することができる。
【0087】
これにより、車両1の側部車体構造は、リヤドア対向部分22aをガセット部材40によって支持できるとともに、サイドシル2におけるリヤドア9と対向する部分を、ガセット部材40によって補強することができる。
【0088】
このため、車幅方向内側への押圧荷重がサイドシル2に作用した際、車両1の側部車体構造は、車幅方向内側へのリヤドア対向部分22aの倒れ変形と、車幅方向内側へのサイドシル2の変形とを抑制することができる。
従って、車両1の側部車体構造は、側突時における車室内へのリヤドア9の侵入を抑制することができる。
【0089】
また、リヤドア9が、車両上下方向に延びるセンターピラー93を備え、ガセット部材40が、センターピラー93の下部と略同じ車両前後方向の位置に配設されたことにより、車両1の側部車体構造は、側突時における車幅方向内側へのリヤドア9の変形を抑えて、車室内へのリヤドア9の侵入をより抑制することができる。
【0090】
具体的には、リヤドア9がセンターピラー93を備えたことにより、車両1の側部車体構造は、リヤドア9の剛性を向上することができる。
さらに、ガセット部材40がセンターピラー93の下部と略同じ車両前後方向の位置に配設されているため、車両1の側部車体構造は、側突時の側突荷重を、センターピラー93、及びガセット部材40を介して、サイドシル2に安定して伝達することができる。
【0091】
これにより、車両1の側部車体構造は、側突時における車幅方向内側へのリヤドア9の変形をより抑制することができる。
従って、車両1の側部車体構造は、リヤドア9にセンターピラー93を備えたことにより、側突時における車幅方向内側へのリヤドア9の変形を抑えて、車室内へのリヤドア9の侵入をより抑制することができる。
【0092】
また、サイドシルアウタ25の上面に、リヤドア9に設けたラッチが係合するストライカ30を備え、ガセット部材40が、車両前後方向において、ストライカ30と略同じ位置に配設されたことにより、車両1の側部車体構造は、車幅方向内側への押圧荷重がリヤドア9を介してストライカ30に作用した際、車幅方向内側へのストライカ30の変位を、サイドシルインナ26とガセット部材40とで形成された閉断面によって抑えることができる。このため、車両1の側部車体構造は、側突時における車室内へのリヤドア9の侵入をより確実に抑制することができる。
【0093】
また、ストライカ30が、サイドシルアウタ25の上面に連結されるストライカ基部31と、リヤドア9のラッチが係合するストライカ本体32とで構成され、サイドシルアウタ25の上面に、リヤドア9の車幅方向内側への移動を規制するキャッチャピン33を備え、キャッチャピン33が、ストライカ本体32に隣接するとともに、ストライカ基部31に一体形成されたことにより、車両1の側部車体構造は、ストライカ本体32とキャッチャピン33とを別体で構成した場合に比べて、サイドシルアウタ25に対するストライカ本体32、及びキャッチャピン33の組付け性を向上できるとともに、組付け工数を低減することができる。
【0094】
さらに、車幅方向内側への押圧荷重がリヤドア9を介してキャッチャピン33に作用した際、車両1の側部車体構造は、車幅方向内側へのキャッチャピン33の変位を、サイドシルインナ26とガセット部材40とで形成された閉断面によって抑えることができる。このため、車両1の側部車体構造は、側突時における車室内へのリヤドア9の侵入をより確実に抑制することができる。
【0095】
また、サイドシルインナ26が、ガセット部材40が配設されるインナ前部27と、インナ前部27の後端に連結されたインナ後部28とで構成され、ガセット部材40が、インナ前部27とインナ後部28との境界に重なり合う形状に形成されたことにより、車両1の側部車体構造は、サイドシルインナ26がインナ前部27とインナ後部28とに分割された場合であっても、インナ前部27とインナ後部28との境界における剛性をガセット部材40によって確保することができる。
【0096】
このため、車両1の側部車体構造は、車幅方向外側からの押圧荷重に対して、インナ前部27とインナ後部28との境界が最弱部となることを防止できる。
従って、車両1の側部車体構造は、サイドシルインナ26がインナ前部27とインナ後部28とに分割された場合であっても、側突時におけるリヤドア9の車室内への侵入を安定して抑制することができる。
【0097】
また、サイドシル2の間に配設されるとともに、車両1の床面をなすフロアパネル10と、フロアパネル10の車両下方に配設された車載バッテリ11とを備え、車載バッテリ11が、ガセット部材40と略同じ車両前後方向の位置において、サイドシルインナ26に最も近接するように配設されたことにより、車両1の側部車体構造は、車幅方向内側への変形がガセット部材40によって抑制されたサイドシル2によって、車幅方向内側への押圧荷重が車載バッテリ11に直接的に作用することを防止できる。このため、車両1の側部車体構造は、例えば、駆動用モータに電力を供給するような車載バッテリ11を、フロアパネル10の車両下方により多く配設することができる。
【0098】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のサイドシルアウタにおける車両上方へ起立した部分は、実施形態のサイドシルアウタ25のアウタ上側フランジ部25aに対応し、
以下同様に、
サイドシルインナにおける車両上方へ起立した部分は、サイドシルインナ26のインナ上側フランジ部27a、及びインナ上側フランジ部28aに対応し、
リヤドア対向フランジ部分は、リヤドア対向部分22aに対応し、
フロントドア対向フランジ部分は、フロントドア対向部分22bに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0099】
例えば、上述した実施形態において、車両上方へ膨出した形状のガセット部材40を、サイドシルインナ26に備えた側部車体構造としたが、これに限定せず、サイドシルインナ26とで閉断面をなすガセット部材であれば、適宜の形所としてもよい。
【0100】
例えば、別の実施形態におけるガセット部材50の外観斜視図を示す図11のように、車両上方へ突出した正面視略三角形状の突出部51が、車両前後方向に所定間隔を隔てた位置に2つ配設されたガセット部材50としてもよい。このような構成のガセット部材50であっても、インナ前部27のインナ上側フランジ部27a、及びインナ上面部27bと、ガセット部材50の突出部51とで、車幅方向に延びる閉断面を形成できるため、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0101】
また、重なり合ったインナ前部27の後端とインナ後部28の前端との間に、ガセット部材40の後端が介在した状態において、インナ前部27の後端、ガセット部材40の後端、及びインナ後部28の前端を一体的に接合した構成としたが、これに限定せず、インナ前部27の後端とインナ後部28の前端との重なり合った部分の上面または下面に対して、ガセット部材40の後端をさらに重ね合わせた状態で、インナ前部27、インナ後部28、及びガセット部材40を一体的に接合した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…車両
2…サイドシル
9…リヤドア
10…フロアパネル
11…車載バッテリ
22…上側フランジ部
22a…リヤドア対向部分
22b…フロントドア対向部分
25…サイドシルアウタ
25a…アウタ上側フランジ部
26…サイドシルインナ
27…インナ前部
27a…インナ上側フランジ部
28…インナ後部
28a…インナ上側フランジ部
30…ストライカ
31…ストライカ基部
32…ストライカ本体
33…キャッチャピン
40…ガセット部材
50…ガセット部材
93…センターピラー
S…乗降口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11