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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/12 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
F04B53/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018100542
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019203480
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青野 智和
(72)【発明者】
【氏名】原田 智夫
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-090402(JP,A)
【文献】特表2011-503414(JP,A)
【文献】特開2011-038423(JP,A)
【文献】特開2008-309130(JP,A)
【文献】特開2011-214520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/10-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一シリンダと、
前記第一シリンダ内で当該第一シリンダの軸方向に往復することにより前記第一シリンダとの間に設けられる第一室を拡大および縮小するピストンサブアセンブリと、
を備えたピストンポンプであって、
前記ピストンサブアセンブリは、
前記軸方向に沿う円柱状のプランジャと、
前記プランジャの前記軸方向の一端の第一端面と前記プランジャの第一外周面における当該第一端面との隣接領域とを覆うように前記プランジャと固定され、前記第一外周面の外側の入口から前記プランジャ外で前記第一端面の外側の出口に至る吸入通路と、前記出口に位置された第一吸入チェック弁の第一弁座と、が設けられた、キャップと、
前記キャップとは別の部材であり、前記第一室から前記第一シリンダと前記ピストンサブアセンブリとの間の隙間を介した作動液の漏れを抑制するシール部材と、
を有し、
前記キャップは、
前記第一端面および前記隣接領域を覆うカバーと、
前記カバーとは異なる部材であり前記第一端面および前記隣接領域を覆うカバーと前記プランジャとの間に少なくとも部分的に介在し、前記吸入通路を構成する第一開口が設けられたスペーサと、
を有し
前記ピストンサブアセンブリを前記軸方向に往復可能に収容し、前記ピストンサブアセンブリとの間に、前記第一室とは反対側である前記吸入通路の入口と繋がるとともに前記ピストンサブアセンブリの移動に応じて前記第一室の拡大に伴って縮小し前記第一室の縮小に伴って拡大する第二室を構成する第二シリンダと、
吸入ポートから前記第二室または前記吸入通路への作動液の流れを許容し、前記第二室または前記吸入通路から前記吸入ポートへの作動液の流れを阻止する第二吸入チェック弁と、
をさらに備え、
前記第二吸入チェック弁は、
前記カバーに設けられ、前記第一端面とは反対側を向いた環状の第二弁座と、
前記第二シリンダの内周面と前記軸方向に摺動可能に接した状態で、前記第二弁座と接し当該第二弁座と前記第二シリンダの内周面との間に設けられた環状の第二開口を閉じる閉弁位置と前記第一端面から離れる方向に前記閉弁位置から離間した開弁位置との間を移動可能に、前記スペーサの外周を取り囲むように設けられた環状の第二弁体と、
を有し、
前記スペーサには、前記第二弁体が前記開弁位置にある状態で前記第二開口と前記第二室および前記吸入通路のうち少なくとも一方とを接続する第三開口が設けられ、
前記第二室の拡大に伴い、前記第二弁体は前記開弁位置に位置し、作動液は前記吸入ポートから前記第二開口および前記第三開口を経由して前記第二室および前記吸入通路に流入し、
前記第二室の縮小に伴い、前記第二弁体は前記閉弁位置に位置し、作動液が前記第二室および前記吸入通路から前記第三開口および前記第二開口を介して前記吸入ポートへ流れるのが阻止されるとともに、作動液が前記第二室から前記吸入通路および前記第一吸入チェック弁を介して前記第一室へ流入する、
ピストンポンプ。
【請求項2】
前記キャップは、金属材料で構成され、
前記シール部材は、合成樹脂材料で構成された、請求項1に記載のピストンポンプ。
【請求項3】
前記スペーサは、折り曲げられた板状であり、前記キャップと前記第一端面との間に位置され板状部位が折り曲げられた折曲部を有した、請求項1または請求項2に記載のピストンポンプ。
【請求項4】
前記シール部材は、前記第一吸入チェック弁の第一弁体を前記第一弁座とは反対側から付勢する付勢部材を保持する保持部を有した、請求項1~のうちいずれか一つに記載のピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円柱ピストンの一端に別部材の大径ピストンが被せられたピストンサブアセンブリを備えたピストンポンプが、知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1のピストンポンプでは、大径ピストンに、作動液の通路と、吸入チェック弁の弁座と、シリンダとの間のクリアランスをシールするシール部と、が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-214520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のピストンポンプでは、大径ピストンについて、シール部におけるシール性の確保と、作動液による加圧に対する剛性や強度の確保とを両立できる材質を設定するのが難しい場合があった。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、例えば、より好適な材質によって構成することが可能なピストンサブアセンブリを備えるなど、より不都合の少ない新規な構成のピストンポンプを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のピストンポンプは、例えば、第一シリンダと、上記第一シリンダ内で当該第一シリンダの軸方向に往復することにより上記第一シリンダとの間に設けられる第一室を拡大および縮小するピストンサブアセンブリと、を備えたピストンポンプであって、上記ピストンサブアセンブリは、上記軸方向に沿う円柱状のプランジャと、上記プランジャの上記軸方向の一端の第一端面と上記プランジャの第一外周面における当該第一端面との隣接領域とを覆うように上記プランジャと固定され、上記第一外周面の外側の入口から上記プランジャ外で上記第一端面の外側の出口に至る吸入通路と、上記出口に位置された第一吸入チェック弁の第一弁座と、が設けられた、キャップと、上記キャップとは別の部材であり、上記第一室から上記第一シリンダと上記ピストンサブアセンブリとの間の隙間を介した作動液の漏れを抑制するシール部材と、を有する。前記キャップは、前記第一端面および前記隣接領域を覆うカバーと、前記カバーとは異なる部材であり前記第一端面および前記隣接領域と前記プランジャとの間に少なくとも部分的に介在し、前記吸入通路を構成する第一開口が設けられたスペーサと、を有し、前記ピストンサブアセンブリを前記軸方向に往復可能に収容し、前記ピストンサブアセンブリとの間に、前記第一室とは反対側である前記吸入通路の入口と繋がるとともに前記ピストンサブアセンブリの移動に応じて前記第一室の拡大に伴って縮小し前記第一室の縮小に伴って拡大する第二室を構成する第二シリンダと、吸入ポートから前記第二室または前記吸入通路への作動液の流れを許容し、前記第二室または前記吸入通路から前記吸入ポートへの作動液の流れを阻止する第二吸入チェック弁と、をさらに備え、前記第二吸入チェック弁は、前記カバーに設けられ、前記第一端面とは反対側を向いた環状の第二弁座と、前記第二シリンダの内周面と前記軸方向に摺動可能に接した状態で、前記第二弁座と接し当該第二弁座と前記第二シリンダの内周面との間に設けられた環状の第二開口を閉じる閉弁位置と前記第一端面から離れる方向に前記閉弁位置から離間した開弁位置との間を移動可能に、前記スペーサの外周を取り囲むように設けられた環状の第二弁体と、を有し、前記スペーサには、前記第二弁体が前記開弁位置にある状態で前記第二開口と前記第二室および前記吸入通路のうち少なくとも一方とを接続する第三開口が設けられ、前記第二室の拡大に伴い、前記第二弁体は前記開弁位置に位置し、作動液は前記吸入ポートから前記第二開口および前記第三開口を経由して前記第二室および前記吸入通路に流入し、前記第二室の縮小に伴い、前記第二弁体は前記閉弁位置に位置し、作動液が前記第二室および前記吸入通路から前記第三開口および前記第二開口を介して前記吸入ポートへ流れるのが阻止されるとともに、作動液が前記第二室から前記吸入通路および前記第一吸入チェック弁を介して前記第一室へ流入する。
【0007】
このような構成によれば、例えば、キャップとシール部材とが別部材であるため、キャップとシール部材とが一体に構成された場合に比べて、ピストンサブアセンブリをより好適な材質によって構成することが可能となる。
【0008】
また、このような構成によれば、例えば、キャップが一つの部材によって構成された場合に比べて、ピストンサブアセンブリの製造の手間やコストが低減されやすい。
【0009】
また、このような構成によれば、例えば、上記ピストンサブアセンブリに対して第一室の吸入工程において第二室から第一室へ作動液を供給する機構を組み込むことができる。
【0010】
また、上記ピストンポンプでは、上記キャップは、金属材料で構成され、上記シール部材は、合成樹脂材料で構成される。このような構成によれば、例えば、剛性や強度を確保しやすく、かつシール性を確保しやすいピストンサブアセンブリを得ることができる。
【0011】
また、上記ピストンポンプは、例えば、上記スペーサは、折り曲げられた板状であり、上記キャップと上記第一端面との間に位置され板状部位が折り曲げられた折曲部を有する。このような構成によれば、例えば、ピストンサブアセンブリ内の吸入通路の流路断面をより大きくすることを可能とする部位を、折曲部として比較的容易に得ることができるため、ピストンサブアセンブリの製造の手間やコストが低減されやすい。
【0012】
また、上記ピストンポンプでは、例えば、上記シール部材は、上記第一吸入チェック弁の第一弁体を上記第一弁座とは反対側から付勢する付勢部材を保持する保持部を有する。このような構成によれば、例えば、保持部がシール部材とは別部品として設けられた場合に比べて、部品点数が減り、製造の手間やコストが低減されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のピストンポンプの例示的かつ模式的な断面図である。
図2図2は、実施形態のピストンポンプに含まれるピストンサブアセンブリの例示的かつ模式的な断面図である。
図3図3は、実施形態のピストンポンプに含まれるキャップの例示的かつ模式的な分解斜視図である。
図4図4は、実施形態のピストンポンプに含まれるスペーサの図3とは別の方向から見た例示的かつ模式的な斜視図である。
図5図5は、実施形態のピストンポンプに含まれるピストンサブアセンブリの図3のV-V位置における断面位置での例示的かつ模式的な断面図である。
図6図6は、実施形態のピストンポンプに含まれるスペーサの打抜形状の金属板における配置を示す例示的かつ模式的な図である。
図7図7は、実施形態のピストンポンプに含まれるスペーサの成形工程を示す例示的かつ模式的な図である。
図8図8は、実施形態のピストンポンプの例示的かつ模式的な断面図であって、吸入工程を示す図である。
図9図9は、実施形態のピストンポンプの例示的かつ模式的な断面図であって、吐出工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。
【0015】
また、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。また、以下では、説明の便宜上、ピストンポンプ1の第一シリンダ30やプランジャ110等の各部位の中心線Cに沿う軸方向を単に軸方向と称する。また、カム2により押圧されたプランジャ110が移動する方向を軸方向の前方と称し、これを各図中では矢印Xで示す。また、リターンスプリング101により押圧されたプランジャ110がカム2に近付くように戻る方向、すなわちカム2によるプランジャ110の押圧方向とは逆方向を、軸方向の後方と称する。また、中心線Cの径方向を単に径方向と称し、中心線Cの周方向を単に周方向と称することがある。
【0016】
図1は、ピストンポンプ1の断面図である。図1に示されるように、ピストンポンプ1は、ハウジング10、第一吸入チェック弁20、第一シリンダ30、吐出チェック弁40、およびピストンサブアセンブリ100を備えている。
【0017】
ピストンサブアセンブリ100は、カム2によって軸方向(方向X)の前方(図1の上方)に押圧されるとともに、リターンスプリング101によって軸方向の後方(図1の下方)に付勢されている。カム2の外周2aの位置は、カム2の回転に伴って軸方向(図1の上下方向)に反復的に変化する。このような構成により、ピストンサブアセンブリ100は、カム2の回転に伴って、第一シリンダ30の軸方向(方向X)に繰り返し往復する。
【0018】
ピストンサブアセンブリ100の軸方向での反復的な往復に伴い、当該ピストンサブアセンブリ100と第一シリンダ30との間に設けられる第一室R1は、拡大と縮小とを交互に繰り返す。ピストンサブアセンブリ100が軸方向の後方へ移動し第一室R1が拡張されるのに伴い、作動液は吸入ポート11dからピストンポンプ1内に設けられる通路を経由して第一室R1内へ吸入される(吸入工程)。吸入工程において、第一吸入チェック弁20は開弁し、吐出チェック弁40は閉弁する。他方、ピストンサブアセンブリ100が軸方向の前方へ移動し第一室R1が縮小されるのに伴い、作動液は第一室R1からピストンポンプ1内に設けられる通路を経由して吐出ポート11fへ吐出される(吐出工程)。吐出工程において、第一吸入チェック弁20は閉弁し、吐出チェック弁40は開弁する。
【0019】
ハウジング10は、ボディ11とプラグ12とを有している。ボディ11には、ピストンポンプ1の構成部品を収容する収容孔11aが設けられている。収容孔11aは、中心線Cを中心とする有底円筒状の形状を有している。収容孔11aの底壁11bには、軸方向に貫通する貫通孔11cが設けられ、この貫通孔11cをピストンサブアセンブリ100のプランジャ110が貫通している。また、収容孔11aの内周面には、吸入ポート11dが開口された環状溝11eが設けられるとともに、当該環状溝11eよりも軸方向前方に吐出ポート11fが開口されている。
【0020】
プラグ12は、収容孔11aの軸方向前方の開口端を塞いでいる。プラグ12は、フランジ12aを有し、ボディ11の当該フランジ12aとの隣接部分が加締められることにより、プラグ12がボディ11に固定されている。なお、プラグ12の固定方法は加締めには限定されない。また、プラグ12には、軸方向後方に向けて開口された凹部12bが設けられており、当該凹部12bには第一シリンダ30や吐出チェック弁40の一部が収容されている。
【0021】
図2は、ピストンサブアセンブリ100の断面図である。図2に示されるように、ピストンサブアセンブリ100は、プランジャ110、キャップ120、および第一吸入チェック弁20を有している。
【0022】
プランジャ110は、略円柱状の形状を有するとともに、円筒面としての外周面110a、軸方向後方の円形平坦面としての端面110b(図1)、および軸方向前方の円形平坦面としての端面110cを有している。外周面110aおよび端面110b,110cは、外面の一例である。プランジャ110は、例えば、鉄系材料のような金属材料によって構成されている。プランジャ110は、例えば、ニードルベアリング用のニードルであってもよい。
【0023】
キャップ120は、プランジャ110の軸方向前方の端部(一端)に固定され、端面110cと、外周面110aのうち端面110cに隣接した略円筒面状の端部外周110dと、を覆っている。端面110cは第一端面の一例であり、端部外周110dは隣接領域の一例である。キャップ120は、カバー121とスペーサ122とを有している。キャップ120は、例えば、鉄系材料のような金属材料によって構成されている。
【0024】
図3は、キャップ120の分解斜視図であり、図4は、キャップ120を構成するスペーサ122を図3とは反対側から見た斜視図である。図2,3に示されるように、カバー121は、ボディ121a、突起121b、およびフランジ121cを有している。ボディ121aは、有底円筒状の形状を有し、略円筒状の周壁121dと、略円板状かつ環状の頂壁121eとを有している。
【0025】
図2に示されるように、略円筒状の突起121bは、頂壁121eの内縁から、周壁121dから離れるように突出している。また、突起121bの頂壁121eとは反対側の先端からは、径方向内方と軸方向後方との間の斜め方向に頂壁121eに近付くように延びた環状の内向きフランジ121fが突出している。内向きフランジ121fの軸方向前方の外面121gは、略円錐内面であり、第一吸入チェック弁20の第一弁体21の弁座として機能する。外面121gは、第一弁座の一例である。
【0026】
フランジ121cは、周壁121dの頂壁121eとは反対側の端縁121hから径方向外方に突出している。
【0027】
カバー121は、全体的に略一定の厚さを有している。カバー121は、例えば、鉄系材料のような金属材料によって構成されている。また、カバー121は、例えば、金属板の絞り加工や曲げ加工のようなプレス加工によって成形されうる。
【0028】
また、図2に示されるように、スペーサ122は、カバー121とプランジャ110との間に挟まれている。
【0029】
図3,4に示されるように、スペーサ122は、ベース122aと複数の脚122bとを有している。ベース122aは、略円板状かつ環状の形状を有している。ベース122aの外縁の4箇所から、脚122bが突出している。四つの脚122bは、周方向に略90°間隔で配置されている。脚122bは、略一定の幅で軸方向に沿って延びている。脚122bは、略帯状かつ板状の形状を有している。脚122bは、周壁とも称されうる。また、互いに隣接する二つの脚122bの間には切欠122cが設けられている。言い換えるとスペーサ122の周壁には、ベース122aの反対側からベース122aに近付くように軸方向に延びた複数の(四つの)切欠122cが設けられている。切欠122cは開口とも称されうる。なお、脚122bおよび切欠122cの数は、四つより少なくてもよいし、四つより多くてもよい。
【0030】
図2~4に示されるように、ベース122aと脚122bとの間には、折曲部122dが設けられている。折曲部122dは、脚122bの根元が部分的につづら折り状に密着して折り畳まれることにより構成されている。具体的には、脚122bのそれぞれが、ベース122aとの境界部分においてベース122aの外縁において径方向内方に向けて略180°折り曲げられ、さらにベース122aの内縁と軸方向に略重なる位置で径方向外方に向けて略180°折り曲げられ、さらにベース122aの外縁と軸方向に略重なる位置で軸方向にベース122aから離れるように略90°折り曲げられることにより、折曲部122dと脚122bの軸方向に延びる部位122b1とが成形されている。四つの折曲部122dは、周方向に略90°間隔で配置されている。なお、折曲部122dの数は、四つより少なくてもよいし、四つより多くてもよい。
【0031】
また、脚122bのベース122aとは反対側の先端には、径方向外方に突出した爪122eが設けられている。爪122eは、突起や外向き突起とも称されうる。
【0032】
スペーサ122は、全体的に略一定の厚さを有している。スペーサ122は、例えば、鉄系材料のような金属材料によって構成されている。また、スペーサ122は、例えば、金属板の曲げ加工のようなプレス加工によって成形されうる。
【0033】
図2,3に示されるように、スペーサ122は、プランジャ110の端面110cおよび端部外周110dを覆うように被せられ、カバー121は、スペーサ122を介してプランジャ110の端面110cおよび端部外周110dを覆うようにスペーサ122に被せられている。プランジャ110、スペーサ122、およびカバー121は、圧入により一体化されている。図2に示されるように、プランジャ110、スペーサ122、およびカバー121が一体化されたピストンサブアセンブリ100において、ベース122aは、プランジャ110の端面110cとカバー121の頂壁121eとの間に挟まれ、脚122b(部位122b1)は、プランジャ110の端部外周110dとカバー121の周壁121dとの間に挟まれている。
【0034】
図2に示されるように、カバー121のフランジ121cと、スペーサ122の爪122eとの間には、スペーサ122を取り囲む環状のシール部材51が位置されている。シール部材51は、ベースリング51aとシールリップ51bとを有している。シールリップ51bは、環状の形状を有し、ベースリング51aの外縁から軸方向後方に延びるとともに僅かに径方向外方に延びている。図1に示されるように、シールリップ51bの外周は第二シリンダ60の内周面60aと接している。シール部材51は、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0035】
シール部材51は、シールリップ51bが第二シリンダ60の内周面60aと接した状態で、フランジ121cと接した位置と爪122eと接した位置との間で軸方向に移動可能に設けられている。シール部材51は、フランジ121cと接した状態において、第二シリンダ60とピストンサブアセンブリ100との間の環状の隙間g2(クリアランス)を閉じ、当該隙間g2を介した第二室R2から吸入ポート11dへの作動液の逆流を抑制する。他方、シール部材51が爪122eと接した状態では、フランジ121cと爪122eとの間にスペーサ122の切欠122c(図3)が開口しているため、当該切欠122cを介して第二室R2と吸入ポート11dとが繋がる。
【0036】
図5は、ピストンサブアセンブリ100の一部の、図3のV-V位置における断面図である。図5に示されるように、端部外周110dとカバー121との間であり、かつ互いに周方向に隣接する二つの脚122b(図3参照)の間には、隙間c1が設けられる。また、端面110cとベース122aとの間であり、かつ互いに周方向に隣接する二つの折曲部122d(図3参照)の間には、隙間c2が設けられる。これら隙間c1および隙間c2は互いに繋がるとともに端面110cとカバー121(突起121b)との間の隙間c3と繋がっている。プランジャ110とカバー121との間には、言い換えるとピストンサブアセンブリ100の内部には、スペーサ122がプランジャ110とカバー121との間に部分的に介在することによって構成された隙間c1,c2,c3により、プランジャ110の外周面110aおよび端面110c(外面)に沿って延びる通路100aが構成される。通路100aは、外周面110aの外側の入口100a1と、端面110cの外側の出口100a2との間で延びている。入口100a1は、カバー121の端縁121hとプランジャ110の外周面110aとの間であり、出口100a2は、第一吸入チェック弁20の第一弁座としての外面121gと第一弁体21とのシール領域と隣接する。通路100aは、第一室R1(図1)への吸入通路の一例である。隙間c1,c2(通路100a)を構成するスペーサ122の切欠122c(図3,4)は、第一開口の一例である。また、図2,5を参照すれば明らかとなるように、折曲部122dが設けられることにより、プランジャ110の端面110cとカバー121の頂壁121eとの間におけるスペーサ122の軸方向の厚さが増大し、折曲部122dが設けられない構成と比較して、隙間c2の軸方向の高さ、すなわち通路100aの断面積が増大されうることが、理解できよう。折曲部122dの折曲回数が大きいほど隙間c2が大きくなる。
【0037】
図6は、金属板Pにおけるスペーサ122の当初の打抜形状122Pの配置を示す図である。図6において、打ち抜かれる部位には、ハッチングが施されている。また、図7は、スペーサ122の成形工程を示す図である。スペーサ122は、金属板Pの曲げ加工のようなプレス加工によって成形される。
【0038】
図6に示されるように、金属板Pには、なるべく無駄領域が小さくなるよう、複数の打抜形状122Pが効率的に配置される。打抜形状122Pは、円環部122fと当該円環部122fから径方向外方に十字状に延びる複数の(四つの)延部122gとを有している。円環部122fはベース122aとなり、延部122gは折曲部122dおよび脚122bとなる。
【0039】
折曲部122dおよび脚122bの折り曲げは、打抜形状122Pが金属板Pに接続された状態で実行される。打抜形状122Pは、複数のブリッジ122hを介して金属板Pに接続されている。ブリッジ122hは、円環部122fと金属板Pとの間を繋いでいる。
【0040】
図7のS1に示されるように、まずは、プレス(曲げ)により、延部122gにV字状の凹部122iを形成する。凹部122iの底部122jと二つの頂部122kとが、折曲部122dにおける屈曲位置となる。
【0041】
次に図7のS2に示されるように、プレス(曲げ)により、底部122jの折曲角度が180°となり、二つの頂部122kの折曲角度が90°となり、二つの頂部122kが互いに接したT字状となるよう、延部122gを折り曲げる。
【0042】
次に図7のS3~S5に示されるように、段階的なプレス(曲げ)により、二つの頂部122kのうち円環部122fから遠い頂部122kの折曲角度を90°に維持しながら、円環部122fに近い頂部122kの折曲角度が180°となるよう、延部122gを折り曲げる。
【0043】
最後にブリッジ122hを切断することにより、成形されたスペーサ122が金属板Pから切り離される。スペーサ122のベース122aおよび脚122bは、板状の形状を有しており、板状部位とも称されうる。なお、S2~S5に示される折り曲げた部位同士を密着させる折り畳み加工は、ヘミング加工とも称されうる。
【0044】
また、図2に示されるように、ピストンサブアセンブリ100は、第一吸入チェック弁20を有している。第一吸入チェック弁20は、通路100aから第一室R1への作動液の流入を許容し、第一室R1から通路100aへの作動液の流出(逆流)を阻止する。第一吸入チェック弁20は、上述した第一弁座として機能する外面121gおよび第一弁体21の他、コイルスプリング22およびホルダ23を有している。第一弁体21は、略球状の形状を有しており、例えば、鋼球あるいは合成樹脂のボールである。
【0045】
コイルスプリング22の巻回中心は中心線Cと略一致している。コイルスプリング22は第一弁体21とホルダ23との間に弾性的に圧縮された状態で挟まれており、第一弁体21を軸方向後方へ付勢している。コイルスプリング22により第一弁体21は外面121gに弾性的に押圧されている。コイルスプリング22は、付勢部材の一例である。
【0046】
ホルダ23は、キャップ120と隣接して設けられている。ホルダ23は、ベース23aとカバー23bとを有している。ベース23aは、軸方向と交差した姿勢で設けられており、略円板状かつ環状の形状を有している。ベース23aの中央に設けられた開口23cにカバー121の突起121bが圧入され、これによりホルダ23がキャップ120に固定されている。ベース23aは、フランジとも称されうる。ホルダ23は、キャップ120とは別の部材であり、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。なお、ホルダ23とキャップ120とは、圧入によって固定されなくてもよく、圧入以外の結合手段によって固定されてもよいし、互いに固定されることなくリターンスプリング101の弾性反発力(付勢力)や第一室R1内の作動液の圧力によって軸方向に互いに接して一体的に移動するよう構成されてもよい。
【0047】
カバー23bは、側壁23dと頂壁23eとを有している。側壁23dは、ベース23aの内縁から軸方向前方に延びている。側壁23dには、軸方向に延びたスリット状の複数の開口23fが設けられている。言い換えると、ベース23aの内縁(開口23fの周縁)には、軸方向前方に延びた板状の複数の側壁23dが周方向に間隔(開口23f)をあけて設けられている。開口23fは、背面開口やサイド開口とも称されうる。側壁23dの軸方向前方の端部に、軸方向前方に開口した有底凹部を有した略カップ状の頂壁23eが設けられている。頂壁23eには、軸方向後方に突出した突起23gが設けられており、当該突起23gは、コイルスプリング22のコイル内に挿入されている。コイルスプリング22の軸方向前方の端部は、側壁23d、頂壁23e、および突起23gによって保持されている。カバー23bは、コイルスプリング22を保持する保持部の一例である。
【0048】
ベース23aの外縁には、軸方向前方に延びるとともに僅かに径方向外方に延びた環状のシールリップ23hが設けられている。図1に示されるように、シールリップ23hの外周は第一シリンダ30の内周面30aと接している。シールリップ23hは、第一室R1から第一シリンダ30とピストンサブアセンブリ100との間の環状の隙間g1(クリアランス)を介した吸入ポート11dへの作動液の漏れを抑制するシール部として機能する。ホルダ23は、シール部材の一例である。
【0049】
第一シリンダ30は、ボディ11(ハウジング10)の収容孔11a内に、軸方向前方に寄せて収容されており、ピストンサブアセンブリ100との間に第一室R1を構成する。第一シリンダ30は、ピストンサブアセンブリ100を、軸方向に往復可能に収容する。第一シリンダ30は、周壁31と頂壁32とを有しており、軸方向後方に向けて開口された略有底円筒状の形状を有している。周壁31は、略円筒状である。頂壁32は、軸方向と交差した略円板状の形状を有し、周壁31の軸方向前方の端部に接続されている。
【0050】
リターンスプリング101は、中心線Cを巻回中心とするコイルスプリングであり、ホルダ23と頂壁32との間に弾性的に圧縮された状態で挟まれており、ホルダ23すなわちピストンサブアセンブリ100を軸方向後方へ付勢している。リターンスプリング101は、付勢部材の一例である。
【0051】
リターンスプリング101と頂壁32との間には、軸方向と交差した姿勢でフィルタプレート102が挟まれている。フィルタプレート102には、軸方向に貫通して作動液が通る複数の貫通孔が設けられている。貫通孔の大きさは、トラップする塵芥のサイズに応じて設定される。
【0052】
頂壁32には、吐出チェック弁40が設けられている。吐出チェック弁40は、第一室R1から吐出ポート11fへの作動液の流出を許容し、吐出ポート11fから第一室R1への作動液の流入(逆流)を阻止する。吐出チェック弁40は、第三弁体41と、コイルスプリング42と、ホルダ43と、を有している。第三弁体41は、略球状の形状を有しており、例えば、鋼球あるいは合成樹脂のボールである。頂壁32の中央には、開口32aが設けられており、当該開口32aの軸方向前方の開口縁32bが、第三弁座として機能している。
【0053】
コイルスプリング42の巻回中心は中心線Cと略一致している。コイルスプリング42は第三弁体41とホルダ43との間に弾性的に圧縮された状態で挟まれており、第三弁体41を軸方向後方に付勢している。コイルスプリング42により第三弁体41は開口縁32bに弾性的に押圧されている。コイルスプリング42は、付勢部材の一例である。
【0054】
ホルダ43は、軸方向後方に開口した有底凹部を有しており、頂壁32に設けられた円柱状の突起32cの外周に圧入され、これによりホルダ43が第一シリンダ30に固定されている。ホルダ43は、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0055】
第二シリンダ60は、ボディ11(ハウジング10)の収容孔11a内に、軸方向後方に寄せて収容されており、ピストンサブアセンブリ100との間に第二室R2を形成する。第二シリンダ60は、ピストンサブアセンブリ100を軸方向に往復可能に収容する。第二室R2は、通路100aに対して第一室R1の反対側に位置されて通路100aの入口100a1と繋がっており、第一吸入チェック弁20の開弁状態において、通路100aを介して第一室R1と繋がる。ピストンサブアセンブリ100が軸方向前方(図1の上方)へ移動すると、第一室R1が縮小されるとともに第二室R2が拡大される。逆に、ピストンサブアセンブリ100が軸方向後方(図1の下方)へ移動すると、第一室R1が拡大されるとともに第二室R2が縮小される。
【0056】
第二シリンダ60は、周壁61と底壁62とを有しており、軸方向後方に向けて開口された略有底円筒状の形状を有している。周壁61は、略円筒状である。底壁62は、略円錐状の形状を有し、中心線Cを中心とし軸方向前方に向けて広がっている。底壁62の中央には開口62aが設けられており、当該開口62aをプランジャ110が貫通している。
【0057】
収容孔11aにおいて、第二シリンダ60の底壁62と底壁11bとの間には、プランジャ110を囲う環状のシール部材13およびバックアップリング14が嵌められており、当該シール部材13は、第二室R2から収容孔11aとプランジャ110との間の環状の隙間g3(クリアランス)を介したカム室R3への作動液の漏れを抑制するシール部として機能する。
【0058】
また、図1,2に示されるように、シール部材51、第二シリンダ60の内周面60a、カバー121のフランジ121c、および切欠122c(図3参照)が設けられたスペーサ122(の脚122b)は、第二吸入チェック弁50として機能することができる。第二吸入チェック弁50は、吸入ポート11dから第二室R2への作動液の流入を許容し、第二室R2から吸入ポート11dへの作動液の流出(逆流)を阻止する。当該構造において、シール部材51は、第二弁体として機能し、フランジ121c(の軸方向後方の端面)は第二弁座として機能する。シール部材51は、第二シリンダ60の内周面60aと接している。よって、シール部材51は、フランジ121cと接した状態においては、当該内周面60aとフランジ121cとの間の環状の隙間g2における作動液の通過を阻止する。この状態では、第二室R2および通路100aから吸入ポート11dへの作動液の流出(逆流)が阻止される。また、シール部材51は、爪122eと接した状態においては、内周面60aとフランジ121cとの間の隙間g2が開き、さらにフランジ121cと爪122eとの間において切欠122cが露出するため、吸入ポート11dと通路100aとが、内周面60aとフランジ121cとの間の隙間g2および切欠122cを介して繋がる。この状態では、吸入ポート11dから第二室R2および通路100aへの作動液の流入が許容される。爪122eは、シール部材51の開弁方向への移動を制限するストッパとして機能している。切欠122cは、第三開口の一例であり、隙間g2は第二開口の一例である。なお、切欠122cは、第一開口および第三開口の双方として機能するが、これには限定されず、第一開口および第三開口は、スペーサ122またはカバー121に、それぞれ独立した穴や、切欠、凹部等として設けられてもよい。
【0059】
図8は、ピストンポンプ1の吸入工程において、ピストンサブアセンブリ100が軸方向後方(図8の下方)へ移動している状態を示す作動図である。なお、図8の左半分は、図1と同じ断面位置での断面図であり、図8の右半分は、図5と同じ断面位置での断面図である。この場合、第一室R1は拡張されるとともに、第二室R2は縮小される。第二室R2の縮小に伴い、シール部材51は軸方向前方へ移動してカバー121のフランジ121cと接した位置Pcに移動し、これにより第二吸入チェック弁50は閉弁する。位置Pcは閉弁位置の一例である。そして、第一室R1の拡大および第二室R2の縮小に伴って、第二室R2内の作動液は、通路100aおよび開弁状態となる第一吸入チェック弁20を経由して第一室R1内へ流入する。
【0060】
図9は、ピストンポンプ1の吐出工程において、ピストンサブアセンブリ100が軸方向前方(図9の上方)へ移動している状態を示す作動図である。なお、図9の左半分は、図1と同じ断面位置での断面図であり、図9の右半分は、図5と同じ断面位置での断面図である。この場合、第一室R1は縮小されるとともに、第二室R2は拡大される。第二室R2の拡大に伴い、シール部材51は軸方向後方へ移動してスペーサ122の爪122eと接した位置Poに移動し、これにより第二吸入チェック弁50は開弁し、作動液が吸入ポート11dから第二室R2および通路100a内に流入する。すなわち、吐出工程において、通路100aおよび第二室R2には、作動液が充填される。位置Poは開弁位置の一例である。また、第一室R1の縮小に伴って、第一室R1内の作動液は、開弁状態となる吐出チェック弁40を介して吐出ポート11fへ流出する。
【0061】
以上、説明したように、本実施形態では、ピストンサブアセンブリ100は、キャップ120とは別に、シールリップ23hを有したホルダ23(シール部材)を有している。このような構成によれば、例えば、キャップ120と、ホルダ23とを異なる材質によって構成することができるため、キャップ120とホルダ23とが一体に構成された場合に比べて、ピストンサブアセンブリ100をより好適な材質によって構成することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、キャップ120は金属材料で構成され、シールリップ23hを有したホルダ23は合成樹脂材料で構成されている。このような構成によれば、例えば、キャップ120を金属材料で構成することによりピストンサブアセンブリ100の剛性や強度を確保しやすくなるとともに、ホルダ23を合成樹脂材料で構成することによりシールリップ23h(シール部)を含むホルダ23によるシール性を確保しやすくなる。
【0063】
また、本実施形態では、キャップ120は、カバー121とスペーサ122とを有している。このような構成によれば、例えば、キャップ120が一つの部材によって構成された場合に比べて、通路100a(吸入通路)が構成されやすくなったり、圧入によってプランジャ110、カバー121、およびスペーサ122を一体化できたりするなど、ピストンサブアセンブリ100の製造の手間やコストが低減されやすい。また、カバー121およびスペーサ122のうち少なくとも一方を金属板からのプレス成形によって製造することにより、他の方法によって製造する場合に比べて、手間やコストが低減されやすい。
【0064】
また、本実施形態では、スペーサ122は、キャップ120とプランジャ110の端面110c(第一端面)との間に位置された折曲部122dを有している。このような構成によれば、例えば、通路100aの流路断面を拡大可能な折曲部122dをプレス成形(折曲成形)等によって比較的容易に得ることができるため、ピストンサブアセンブリ100の製造の手間やコストが低減されやすい。
【0065】
また、本実施形態では、キャップ120(カバー121およびスペーサ122)に、シール部材51、フランジ121c(第二弁座)、および切欠122c(第三開口)を設けることにより、ピストンサブアセンブリ100に、第一室R1の吸入工程において第二室R2から作動液を供給する機構を組み込むことができる。よって、例えば、低温時のような作動液の粘度が高い場合にあっても、第一室R1により確実に作動液を供給できるようになり、ひいてはピストンポンプ1の作動液の吐出量の不足が回避されやすい。
【0066】
また、本実施形態では、ホルダ23(シール部材)は、第一吸入チェック弁20のコイルスプリング22を保持するカバー23b(保持部)を有している。このような構成によれば、保持部がホルダ23とは別部品として設けられた場合に比べて、部品点数が減り、製造の手間やコストが低減されやすい。
【0067】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0068】
例えば、キャップは、一部品であってもよい。また、通路は、キャップに構成された穴や、溝によって構成されてもよい。また、吸入通路の断面を大きくするためにスペーサに設けられた折曲部に替えて、キャップのカバーまたはスペーサに、突起が設けられてもよい。また、キャップは金属材料には限定されない。
【0069】
また、スペーサに設けられる折曲部は、部分的にスペーサの軸方向の高さを大きくすることによりプランジャの第一端面とスペーサのベースまたはカバーの頂壁との間の隙間を大きくすることができる構成であればよく、上記実施形態の構成には限定されない。また、折曲部の折曲形状や折曲方向は上記実施形態には限定されない。また、折曲部は、つづら折り状に折り畳まれなくてもよく、V字状、隙間があるU字状、波状等に折り曲げられてもよい。また、折曲部は、スペーサの脚とは別に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…ピストンポンプ、11d…吸入ポート、20…第一吸入チェック弁、21…第一弁体、22…コイルスプリング(付勢部材)、23…ホルダ(シール部材)、23b…カバー(保持部)、30…第一シリンダ、50…第二吸入チェック弁、51…シール部材(第二弁体)、60…第二シリンダ、100…ピストンサブアセンブリ、100a…通路(吸入通路)、100a1…入口、100a2…出口、110…プランジャ、110a…外周面(第一外周面)、110c…端面(第一端面)、110d…端部外周(隣接領域)、120…キャップ、121…カバー、121c…フランジ(第二弁座)、121g…外面(第一弁座)、122…スペーサ、122c…切欠(第一開口、第三開口)、122d…折曲部、g2…隙間(第二開口)、Pc…位置(閉弁位置)、Po…位置(開弁位置)、R1…第一室、R2…第二室、X…方向(軸方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9