(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】回転炉
(51)【国際特許分類】
F27B 7/34 20060101AFI20220511BHJP
F27B 7/08 20060101ALI20220511BHJP
F27B 7/06 20060101ALI20220511BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
F27B7/34
F27B7/08
F27B7/06
F27D7/02 A
(21)【出願番号】P 2018106794
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2020-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道内 真人
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082880(JP,A)
【文献】特公昭48-017968(JP,B1)
【文献】特開2002-005575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/00-21/14
F27D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の筐体と、
前記筐体の内径より小さい外径を有する円筒形状であり、前記筐体の中心軸を取り囲み、かつ前記筐体内に設置される断熱部材と、
前記筐体内において前記断熱部材の一端および他端に設置され、前記中心軸を取り囲み、かつ前記断熱部材の内径よりも小さい径の1対の貫通孔を有する1対の隔壁板と、
前記1対の貫通孔に支持されると共に摺動可能に設置され、かつ内部に処理物が装入される回転管と、
前記断熱部材の内壁と、前記1対の隔壁板と、前記回転管の外壁とで区画される空間に設けられ、かつグラファイトから構成された発熱体と、
前記回転管の内部に反応ガスを導入するための反応ガス導入口と、
前記筐体の内部からガスを排気するための排気口と、
前記空間にパージガスを導入するためのパージガス導入口とを備え、
前記ガスは、前記反応ガスと前記パージガスとを含んでいる、回転炉。
【請求項2】
前記筐体の一端および他端に設けられ、かつ前記筐体内を気密状態にするための1対の気密
扉を備える、請求項1に記載の回転炉。
【請求項3】
前記反応ガスは、水素を含有する、請求項2に記載の回転炉。
【請求項4】
前記パージガスは、不活性ガスである、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の回転炉。
【請求項5】
前記1対の隔壁板の各々と、前記回転管との間には、前記パージガスを前記空間から排出するための隙間が設けられている、
請求項1から請求項4
のいずれか1項に記載の回転炉。
【請求項6】
前記処理物は、金属酸化物を含有する、請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載の回転炉。
【請求項7】
前記発熱体は、1600℃以上2400℃以下で発熱するように構成されている、請求項1
から請求項6のいずれか1項に記載の回転炉。
【請求項8】
前記回転管は、一方の開口部から前記処理物を連続的に装入されると共に、他方の開口部から熱処理後の前記処理物を連続的に排出するように構成されている、請求項1
から請求項7のいずれか1項に記載の回転炉。
【請求項9】
前記回転管は、複数に分割可能に構成されている、請求項1
から請求項8のいずれか1項に記載の回転炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-299010号公報(特許文献1)、特開2002-3885号公報(特許文献2)および特開2001-262147号公報(特許文献3)には、バーナー等の熱風を熱源とする回転炉が開示されている。また特開平3-252306号公報(特許文献4)および特開昭55-90406号公報(特許文献5)には、棒状のグラファイトからなる発熱体を回転体の内部に設置した回転炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-299010号公報
【文献】特開2002-3885号公報
【文献】特開2001-262147号公報
【文献】特開平3-252306号公報
【文献】特開昭55-90406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バーナー等の熱風を熱源とする連続炉においては熱量が不足するため、たとえば1600℃以上の高温で熱処理を行うことが困難である。たとえば1600℃以上の高温で処理するための熱処理炉には、熱源としてグラファイト製の発熱体を選択することが一般的である。
【0005】
しかしながら、高温でグラファイトが反応性ガス(たとえば水素、二酸化炭素など)にさらされると、グラファイトが反応性ガスと反応して損耗する。また処理物がグラファイトと反応する材料の場合には、処理物がグラファイトと接触することで、グラファイトが損耗する。そのため、従来の連続炉においては、グラファイト製の発熱体の損耗により短期でのメンテナンスが必要となり、長期に安定して操炉することができなかった。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、長期に安定して操炉可能な回転炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る回転炉は、筐体と、断熱部材と、1対の隔壁板と、回転管と、発熱体とを備えている。筐体は、円筒形状である。断熱部材は、筐体の内径より小さい外径を有する円筒形状であり、筐体の中心軸を取り囲み、かつ筐体内に設置されている。1対の隔壁板は、筐体内において断熱部材の一端および他端に設置され、中心軸を取り囲み、かつ断熱部材の内径よりも小さい径の1対の貫通孔を有している。回転管は、1対の貫通孔に支持されると共に摺動可能に設置され、かつ内部に処理物が装入される。発熱体は、断熱部材の内壁と、1対の隔壁板と、回転管の外壁とで区画される空間に設けられ、かつグラファイトから構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、長期に安定して操炉可能な回転炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る回転炉の構成を示す断面模式図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った断面模式図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面模式図である。
【
図4】第2実施形態に係る回転炉の構成を示す断面模式図である。
【
図5】第3実施形態に係る回転炉の構成を示す断面模式図である。
【
図6】第4実施形態に係る回転炉が有する回転管の組み立て前の構成を示す断面模式図である。
【
図7】第4実施形態に係る回転炉が有する回転管の組み立て後の構成を示す断面模式図である。
【
図8】第5実施形態に係る回転炉が有する回転管の組み立て前の構成を示す断面模式図である。
【
図9】第5実施形態に係る回転炉が有する回転管の組み立て後の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
【0011】
(1)本開示に係る回転炉100は、筐体1と、断熱部材2と、1対の隔壁板3と、回転管4と、発熱体6とを備えている。筐体1は、円筒形状である。断熱部材2は、筐体1の内径より小さい外径を有する円筒形状であり、筐体1の中心軸Aを取り囲み、かつ筐体1内に設置されている。1対の隔壁板3は、筐体1内において断熱部材2の一端および他端に設置され、中心軸Aを取り囲み、かつ断熱部材2の内径よりも小さい径の1対の貫通孔31d、32dを有している。回転管4は、1対の貫通孔31d、32dに支持されると共に摺動可能に設置され、かつ内部に処理物が装入される。発熱体6は、断熱部材2の内壁と、1対の隔壁板3と、回転管4の外壁とで区画される空間5に設けられ、かつグラファイトから構成されている。
【0012】
上記(1)に係る回転炉100によれば、発熱体6を回転管4の外側に設けることにより、回転管4の内部に装入される処理物が発熱体6に接触することを抑制することができる。また発熱体6を、断熱部材2の内壁と1対の隔壁板3と回転管4の外壁とで区画される空間5に設けることにより、反応性のガスを使用する場合においても、発熱体6が反応性のガスと反応することを抑制することができる。そのため、発熱体6の損耗を抑制することができる。結果的に、長期に安定して操炉可能な回転炉100を提供することができる。
【0013】
(2)上記(1)に係る回転炉100は、筐体1の一端および他端に設けられ、かつ筐体1内を気密状態にするための1対の気密扉7と、回転管4の内部に反応ガスを導入するための反応ガス導入口8と、筐体1の内部からガスを排気するための排気口9とを備えていてもよい。これにより、反応ガスを流しながら処理物を処理することができる。
【0014】
(3)上記(2)に係る回転炉100において、反応ガスは、水素を含有していてもよい。水素ガスは約1200℃以上でグラファイトと反応してメタンを生成する。そのため、従来の回転炉100においては、発熱体6の損耗が激しくなり、水素を使用することができなかった。上記(2)に係る回転炉100によれば、反応ガスが水素を含有している場合であっても、発熱体6の損耗を抑制することができる。そのため、反応ガスとして水素を使用することができる。
【0015】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに係る回転炉100は、空間5にパージガスを導入するためのパージガス導入口10を備えていてもよい。パージガスは、不活性ガスであってもよい。発熱体6が設置された空間5を不活性ガスで満たすことにより、反応ガスが発熱体6と反応することをさらに抑制することができる。結果として、発熱体6をさらに長寿命化することができる。
【0016】
(5)上記(4)に係る回転炉100において、1対の隔壁板3の各々と、回転管4との間には、パージガスを空間5から排出するための隙間13が設けられていてもよい。発熱体6が設置された空間5における圧力を当該空間5の外部の圧力よりも高くして、パージガスを当該空間5から排出することで、反応ガスが発熱体6と反応することをさらに抑制することができる。結果として、発熱体6をさらに長寿命化することができる。
【0017】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに係る回転炉100において、処理物は、金属酸化物を含有していてもよい。処理物が酸化物を含有する場合、熱処理で酸化物がグラファイト製の発熱体6から炭素を奪い、発熱体6を損耗させる可能性がある。上記(1)~(5)のいずれかに係る回転炉100によれば、処理物が金属酸化物を含有している場合であっても、発熱体6の損耗を抑制することができる。
【0018】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに係る回転炉100において、発熱体6は、1600℃以上2400℃以下で発熱するように構成されていてもよい。グラファイトの損耗は約1600℃以上から激しくなるため、従来はこの温度域で動作するグラファイト製の回転炉100がなかった。上記(1)~(6)のいずれかに係る回転炉100によれば、この温度域で動作するグラファイト製の回転炉100を提供することができる。
【0019】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに係る回転炉100において、回転管4は、一方の開口部から処理物を連続的に装入されると共に、他方の開口部から熱処理後の処理物を連続的に排出するように構成されていてもよい。グラファイト製の発熱体6の損耗を抑制できることにより、連続で処理物を処理した場合であっても、長期に安定して操炉することができる。
【0020】
(9)上記(1)~(8)のいずれかに係る回転炉100において、回転管4は、複数に分割可能に構成されていてもよい。処理物と直接触れる回転管4の損耗部を交換可能とすることにより、回転管4の全体を交換する必要性がなくなる。そのため、メンテナンス費用を抑制することができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0022】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る回転炉100の構成について説明する。
【0023】
図1に示されるように、第1実施形態に係る回転炉100は、筐体1と、断熱部材2と、1対の隔壁板3と、回転管4と、発熱体6と、1対の気密扉7と、反応ガス導入口8と、排気口9とを主に有している。筐体1は、円筒形状である。筐体1は、筐体内壁1dと、筐体外壁1cと、筐体一方端部1aと、筐体他方端部1bとを有している。筐体内壁1dは、1対の隔壁板3に接している。筐体一方端部1aには、一対の気密扉7の一方が設置されている。筐体他方端部1bには、一対の気密扉7の他方が設置されている。
【0024】
断熱部材2は、筐体1内に設置されている。断熱部材2は、筐体1の中心軸Aを取り囲んでいる。断熱部材2は、筐体1の内径(第1直径D1)より小さい外径(第2直径D2)を有する円筒形状である。断熱部材2を構成する材料は、たとえばグラファイトファイバーである。具体的には、断熱部材2は、たとえば繊維状グラファイトフェルトの積層成形材により構成されている。断熱部材2は、断熱部材内壁2dと、断熱部材外壁2cと、断熱部材一方端部2aと、断熱部材他方端部2bとを有している。断熱部材内壁2dは、回転管4から離間している。断熱部材外壁2cは、筐体内壁1dから離間している。
【0025】
図1に示されるように、1対の隔壁板3は、筐体1内において断熱部材2の一端および他端に設置されている。1対の隔壁板3は、中心軸Aを取り囲んでいる。1対の隔壁板3は、断熱部材2の内径(第3直径D3)よりも小さい径(第4直径D4)の1対の貫通孔31d、32dを有している。具体的には、1対の隔壁板3は、第1板31と、第2板32とを有している。断熱部材2は、第1板31と、第2板32との間に設置されている。1対の隔壁板3を構成する材料は、たとえばCIP(Cold Isostatic Pressing)成形により製造された等方性グラファイトである。
【0026】
第1板31は、第1貫通孔31dと、第1板外壁31cと、第1板一方端部31aと、第1板他方端部31bとを有している。第1貫通孔31dは、回転管4を取り囲んでいる。第1板外壁31cは、筐体内壁1dに接している。第1板他方端部31bは、断熱部材一方端部2aに接している。第2板32は、第2貫通孔32dと、第2板外壁32cと、第2板一方端部32aと、第2板他方端部32bとを有している。第2貫通孔32dは、回転管4を取り囲んでいる。第2板外壁32cは、筐体内壁1dに接している。第2板一方端部32aは、断熱部材他方端部2bに接している。
【0027】
回転管4は、1対の貫通孔に支持されると共に摺動可能に設置されている。具体的には、回転管4は、第1貫通孔31dと、第2貫通孔32dとにより支持されている。回転管4は、第1貫通孔31dおよび第2貫通孔32dの各々に挿通されている。回転炉100を用いて処理物を処理する際、回転管4の内部には処理物(図示せず)が装入される。回転管4は、回転管内壁4dと、回転管外壁4cと、回転管一方端部4aと、回転管他方端部4bとを有している。回転管外壁4cの一部は、第1貫通孔31dおよび第2貫通孔32dの各々において摺動可能な状態で接している。回転管4を構成する材料は、たとえばグラファイト(押出材)である。
【0028】
発熱体6は、断熱部材内壁2dと、1対の隔壁板3と、回転管外壁4cとで区画される空間5に設けられている。具体的には、発熱体6は、第1板他方端部31bと、第2板一方端部32aとの間に配置されている。発熱体6は、回転管外壁4cの外側であって、かつ断熱部材内壁2dの内側に配置されている。発熱体6は、グラファイトから構成されている。具体的には、発熱体6は、たとえばCIP成形により製造された等方性グラファイトである。発熱体6には、図示しない電源に接続されており、発熱体6に電力を供給可能に構成されている。
【0029】
発熱体6は、たとえば1600℃以上2400℃以下で発熱するように構成されている。発熱体6の温度の下限は、特に限定されないが、たとえば1650℃以上であってもよいし、1700℃以上であってもよい。発熱体6の温度の上限は、特に限定されないが、たとえば2350℃以下であってもよいし、2300℃以下であってもよい。
【0030】
図1に示されるように、1対の気密扉7は、筐体1の一端および他端に設けられている。1対の気密扉7は、筐体1内を気密状態にするためのものである。1対の気密扉7は、第1扉71と、第2扉72とを有している。第1扉71は、筐体一方端部1aに取り付けられている。第2扉72は、筐体他方端部1bに取り付けられている。筐体1は、第1扉71と、第2扉72との間に配置されている。
【0031】
反応ガス導入口8は、回転管4の内部に反応ガスを導入するためのものである。反応ガス導入口8の一端は、筐体1の外部に位置しており、図示しない反応ガス供給部に繋がっている。反応ガス導入口8の他端は、回転管4の内部に繋がっている。反応ガス導入口8は、たとえばL型状に折れ曲がっている。反応ガス導入口8は、たとえば第1配管81と、第2配管82とを有している。第2配管82は、第1配管81に繋がっている。第2配管82は、たとえば筐体1の中心軸Aに沿って延在するように配置されている。第1配管81は、第2配管82は、たとえば筐体1の中心軸Aに対して垂直な方向に延在するように配置されていてもよい。
【0032】
排気口9は、筐体1の内部からガスを排気するためのものである。排気口9は、たとえば筐体1に設けられている。具体的には、排気口9の一端は、たとえば筐体内壁1dに設けられていてもよい。排気口9の他端は、筐体1の外部に位置している。排気口9は、たとえば筐体1を貫通するように設けられている。なお、筐体1の内部から排出されるガスは、たとえば反応ガスである。当該ガスは、後述するパージガスを含んでいてもよい。
【0033】
第1実施形態に係る回転炉100は、パージガス導入口10を有していてもよい。パージガス導入口10は、断熱部材内壁2dと、1対の隔壁板3と、回転管外壁4cとで区画される空間5にパージガスを導入するためのものである。具体的には、パージガス導入口10の一端は、たとえば断熱部材内壁2dに設けられていてもよい。パージガス導入口10の他端は、筐体1の外部に位置している。パージガス導入口10は、たとえば筐体1および断熱部材2の各々を貫通するように設けられている。パージガスは、たとえば窒素などの不活性ガスである。
【0034】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面模式図である。
図2に示されるように、中心軸Aに対して垂直な断面において、回転管4、発熱体6、断熱部材2および筐体1の各々は、たとえばリング状である。発熱体6は、回転管4を取り囲んでいる。断熱部材2は、発熱体6を取り囲んでいる。筐体1は、断熱部材2を取り囲んでいる。
図2に示されるように、発熱体6は、回転管4から離間している。断熱部材2は、発熱体6から離間している。筐体1は、断熱部材2から離間している。回転管4の回転軸は、たとえば筐体1の中心軸Aと一致している。発熱体6および断熱部材2の各々の中心軸は、たとえば筐体1の中心軸Aと一致している。
【0035】
図3は、
図1のIII-III線に沿った断面模式図である。
図3に示されるように、中心軸Aに対して垂直な断面において、一対の隔壁板3の各々は、たとえばリング状である。一対の隔壁板3の各々は、回転管4を取り囲んでいる。
図3に示されるように、一対の隔壁板3の各々の内壁は、全周囲において、回転体外壁に接していてもよい。同様に、一対の隔壁板3の各々の外壁は、全周囲において、筐体内壁1dに接していてもよい。一対の隔壁板3の各々の中心軸は、たとえば筐体1の中心軸Aと一致している。
【0036】
次に、回転炉100を用いた熱処理時の動作について説明する。
まず、図示しない電源を用いて、グラファイト製の発熱体6が給電される。これにより、発熱体6は、たとえば1600℃以上2400℃以下の温度で発熱する。発熱体6の発熱により回転管4の外壁が加熱されると共に、その熱が回転管内壁4dに伝熱される。次に、筐体1の外部から回転管4の内部に反応ガス導入口8を介して反応ガスが供給される。供給された反応ガスは、回転管4の内部を流れる。具体的には、反応ガスは、反応ガス導入口8から排気口9に向かって流れる。
【0037】
反応ガスは、筐体1に設けられた排気口9から排気される。反応ガスは処理物の目的とする反応に合わせて適宜選択される。水素による還元反応を目的とする場合には水素を含有する反応ガスが選択される。また窒素による窒化反応を目的とする場合には窒素を含有する反応ガスが選択される。
【0038】
反応ガスが回転管4の内部に供給されている間、発熱体6を設置した空間5には筐体1の外部からパージガスが導入されている。パージガスの流れについて本発明では特に限定しないが、例えば筐体1に設けられたパージガス排気口9を介して、パージガスが排気されてもよい。具体的には、パージガスは、パージガス導入口10から発熱体6を設置した空間5に導入され、その後パージガス排気口9から排気されてもよい。このような構成とすることで、発熱体6を回転管4の内部の雰囲気から防護することができる。
【0039】
回転管4は、たとえば一方の開口部から処理物を連続的に装入されると共に、他方の開口部から熱処理後の処理物を連続的に排出するように構成されている。一方の開口部は、たとえば回転管一方端部4aに設けられている。他方の開口部は、たとえば回転管他方端部4bに設けられている。反応ガスとパージガスとが導入されている回転炉100において、図示しない処理物供給機構から回転管4の内部に処理物が連続的に供給される。処理物の種類は、特に限定されないが、処理物はたとえば金属酸化物を含有していてもよい。本実施形態の回転炉100においては、金属酸化物と、当該金属酸化物を還元するための炭素とを含有する処理物を好適に扱うことができる。具体例を挙げれば、処理物は、チタン酸化物と、それを還元炭化するための炭素とを含有している。
【0040】
処理物は、たとえば回転管一方端部4aから回転管4の内部に供給される。処理物は、回転管4の内部に供給されたのち、図示しない回転機構によって回転駆動される回転管4の内壁を転動することで、回転管4の一端から他端に向けて移動することとなる。処理物は、回転管4の内部を移動しながら発熱体6から熱を供給される。これにより、狙いの熱処理反応が達成される。熱処理された処理物は、たとえば回転管他方端部4bから回転管4の外部に排出され、図示しない処理物回収機構により筐体1の外部で回収される。
【0041】
回転管4は、水平面に対して傾斜していてもよい。回転管一方端部4aは、回転管他方端部4bよりも高い位置に配置されていてもよい。回転管4が傾斜している場合、回転管4の回転に伴って処理物は回転管内壁4dとの摩擦で周方向へ上昇し、その後に重力により内壁に沿って滑落しながら軸方向の下方へ移動する。別の観点から言えば、処理物は、中心軸Aの周りを回転しながら回転管一方端部4aから回転管他方端部4bに向かって移動する。なお、回転管4は、水平面に対して平行であってもよい。回転管4が傾斜していなくとも、回転管4の内壁にらせん状のガイド部材を設けることにより、処理物を軸方向に移動させることができる。
【0042】
この一連の熱処理動作の際、回転管4の内部に発熱体6を設けていると、処理物(一例では酸化チタンを含有)が発熱体6に接触した際、発熱体6を構成する炭素が処理物と反応することにより、発熱体6が損耗する。また反応ガスが水素を含有している場合、発熱体6を構成する炭素が水素と反応してメタンを生成することにより、発熱体6が損耗する。これに対して、第1実施形態の回転炉100においては、発熱体6を回転管外壁4cと隔壁板3と断熱部材内壁2dとで区画された空間5に設けたことで、発熱体6が処理物や反応ガスに接触することを抑制することができる。結果として、処理物や反応ガスとの反応によって、発熱体6が損耗することを抑制することができる。
【0043】
次に、第1実施形態に係る回転炉100の作用効果について説明する。
第1実施形態に係る回転炉100によれば、発熱体6を回転管4の外側に設けることにより、回転管4の内部に装入される処理物が発熱体6に接触することを抑制することができる。また発熱体6を、断熱部材2の内壁と1対の隔壁板3と回転管4の外壁とで区画される空間5に設けることにより、反応性のガスを使用する場合においても、発熱体6が反応性のガスと反応することを抑制することができる。そのため、発熱体6の損耗を抑制することができる。結果的に、長期に安定して操炉可能な回転炉100を提供することができる。
【0044】
また第1実施形態に係る回転炉100は、筐体1の一端および他端に設けられ、かつ筐体1内を気密状態にするための1対の気密扉7と、回転管4の内部に反応ガスを導入するための反応ガス導入口8と、筐体1の内部からガスを排気するための排気口9とを備えていてもよい。これにより、反応ガスを流しながら処理物を処理することができる。
【0045】
さらに第1実施形態に係る回転炉100において、反応ガスは、水素を含有していてもよい。第1実施形態に係る回転炉100によれば、反応ガスが水素を含有している場合であっても、発熱体6の損耗を抑制することができる。そのため、反応ガスとして水素を使用することができる。
【0046】
さらに第1実施形態に係る回転炉100は、空間5にパージガスを導入するためのパージガス導入口10を備えていてもよい。パージガスは、不活性ガスであってもよい。発熱体6が設置された空間5を不活性ガスで満たすことにより、反応ガスが発熱体6と反応することをさらに抑制することができる。結果として、発熱体6をさらに長寿命化することができる。
【0047】
さらに第1実施形態に係る回転炉100において、処理物は、金属酸化物を含有していてもよい。処理物が酸化物を含有する場合、熱処理で酸化物がグラファイト製の発熱体6から炭素を奪い、発熱体6を損耗させる可能性がある。第1実施形態に係る回転炉100によれば、処理物が金属酸化物を含有している場合であっても、発熱体6の損耗を抑制することができる。
【0048】
さらに第1実施形態に係る回転炉100において、発熱体6は、1600℃以上2400℃以下で発熱するように構成されていてもよい。第1実施形態に係る回転炉100によれば、この温度域で動作するグラファイト製の回転炉100を提供することができる。
【0049】
さらに第1実施形態に係る回転炉100において、回転管4は、一方の開口部から処理物を連続的に装入されると共に、他方の開口部から熱処理後の処理物を連続的に排出するように構成されていてもよい。グラファイト製の発熱体6の損耗を抑制できることにより、連続で処理物を処理した場合であっても、長期に安定して操炉することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る回転炉100の構成について説明する。第2実施形態に係る回転炉100は、主に1対の隔壁板3の各々と回転管4との間に隙間13が設けられている構成において、第1実施形態に係る回転炉100と異なっており、その他の構成ついては、第1実施形態に係る回転炉100と同様である。以下、主に第1実施形態に係る回転炉100と異なる構成を中心に説明する。
【0051】
図4は、第2実施形態に係る回転炉100の構成を示す断面模式図である。当該断面模式図は、
図1のIII-III線の位置に対応する。
図4に示されるように、1対の隔壁板3の各々と回転管4との間に、隙間13が設けられていてもよい。当該隙間13は、パージガスを回転管外壁4cと隔壁板3と断熱部材内壁2dとで区画された空間5から排出するためのものである。1対の隔壁板3の各々の内径は、回転管4の外径よりも大きくてもよい。1対の隔壁板3の各々の中心軸は、筐体1の中心軸Aからずれていてもよい。
【0052】
図4に示されるように、回転管4の底部(鉛直下方部分)において回転管4は一対の隔壁板3の各々に接していてもよい。回転管4の頂部(鉛直上方部分)において回転管4は一対の隔壁板3の各々から離間していてもよい。一対の隔壁板3の各々の内壁は、回転体外壁の一部に接しており、残りの部分からは離間している。隙間13の大きさは、回転管4の頂部から底部に向かうにつれて単調に小さくなっていてもよい。
【0053】
第2実施形態に係る回転炉100によれば、1対の隔壁板3の各々と、回転管4との間には、パージガスを空間5から排出するための隙間13が設けられている。発熱体6が設置された空間5における圧力を当該空間5の外部の圧力よりも高くして、パージガスを当該空間5から排出することで、反応ガスが発熱体6と反応することをさらに抑制することができる。結果として、発熱体6をさらに長寿命化することができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る回転炉100の構成について説明する。第3実施形態に係る回転炉100は、主に隙間13の形状において、第2実施形態に係る回転炉100と異なっており、その他の構成ついては、第2実施形態に係る回転炉100と同様である。以下、第2実施形態に係る回転炉100と異なる構成を中心に説明する。
【0055】
図5は、第3実施形態に係る回転炉100の構成を示す断面模式図である。当該断面模式図は、
図1のIII-III線の位置に対応する。
図5に示されるように、1対の隔壁板3の各々と回転管4との間に設けられている隙間13の形状は、たとえば略三角形である。当該隙間13の数は、たとえば3個である。当該隙間13は、1対の隔壁板3の各々の内壁に設けられた凹部により形成される。1対の隔壁板3の各々の内壁から外壁に向かうにつれて、凹部の幅は小さくなっていてもよい。1対の隔壁板3の各々の内径は、回転管4の外径よりも同じであってもよい。1対の隔壁板3の各々の中心軸Aは、筐体1の中心軸Aと一致していてもよい。
【0056】
図5に示されるように、隙間13は、回転管4の頂部(鉛直上方部分)に対向する位置に設けられていてもよい。隙間13は、回転管4の頂部(鉛直上方部分)に対向する位置から±90°回転した位置に設けられていてもよい。隙間13は、回転管4の底部(鉛直下方部分)に対向する位置には設けられていなくてもよい。なお、上述した隙間13の形状および個数は、あくまでも例示であり、上述した実施形態に限定されない。第3実施形態に係る回転炉100は、第2実施形態に係る回転炉100と同様の作用効果を奏する。
【0057】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る回転炉100の構成について説明する。第4実施形態に係る回転炉100は、回転管4が複数に分割可能に構成されている構成において、第1実施形態に係る回転炉100と異なっており、その他の構成ついては、第1実施形態に係る回転炉100と同様である。以下、第1実施形態に係る回転炉100と異なる構成を中心に説明する。
【0058】
図6は、第4実施形態に係る回転炉100が有する回転管4の組み立て前の構成を示す断面模式図である。
図6に示されるように、回転管4は、第1部材11と、第2部材12とを有している。第1部材11は、第2部材12に締結可能に構成されている。具体的には、第1部材11は、第1管部11aと、第1ネジ部11bとを有している。第1ネジ部11bは、第1管部11aに連なっている。第1ネジ部11bは、たとえば雄ネジである。同様に、第2部材12は、第2管部12bと、第2ネジ部12aとを有している。第2ネジ部12aは、第2管部12bに連なっている。第2ネジ部12aは、たとえば雌ネジである。
【0059】
図7は、第4実施形態に係る回転炉100が有する回転管4の組み立て後の構成を示す断面模式図である。第1ネジ部11bが第2ネジ部12aに締結されることにより、第1部材11が第2部材12に締結される。第1部材11の第1管部11aは、回転管一方端部4aを構成する。第2部材12の第2管部12bは、回転管他方端部4bを構成する。軸方向において、第1部材11の長さは、第2部材12の長さよりも短くてもよい。第1部材11は、処理物が投入される開口部を形成している。
【0060】
第4実施形態に係る回転炉100によれば、回転管4は、複数に分割可能に構成されている。処理物と直接触れる回転管4の損耗部を交換可能とすることにより、回転管4の全体を交換する必要性がなくなる。そのため、メンテナンス費用を抑制することができる。
【0061】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る回転炉100の構成について説明する。第5実施形態に係る回転炉100は、回転管4がネジではなく嵌合によって組み立てられる構成において、第4実施形態に係る回転炉100と異なっており、その他の構成ついては、第4実施形態に係る回転炉100と同様である。以下、第4実施形態に係る回転炉100と異なる構成を中心に説明する。
【0062】
図8は、第5実施形態に係る回転炉100が有する回転管4の組み立て前の構成を示す断面模式図である。
図8に示されるように、回転管4は、第1部材11と、第2部材12とを有している。第1部材11は、第2部材12と嵌合可能に構成されている。具体的には、第1部材11は、管状である。第2部材12は、第2管部12bと、第3管部12cとを有している。第3管部12cは、第2管部12bに連なっている。第3管部12cの外径は、第2管部12bの外径と同じである。第3管部12cの内径は、第2管部12bの内径よりも小さい。第1部材11の外径は、第2管部12bの内径とほぼ同じである。第3管部12cの内径は、第1部材11の外径よりも小さい。
【0063】
図9は、第5実施形態に係る回転炉100が有する回転管4の組み立て後の構成を示す断面模式図である。第1部材11の外壁が第2管部12bの内壁に嵌め合わされることにより、第1部材11が第2部材12に締結される。第1部材11は、第3管部12cの端部に接していてもよい。第1部材11は、回転管一方端部4aを構成する。第2部材12の第3管部12cは、回転管他方端部4bを構成する。第5実施形態に係る回転炉100は、第4実施形態に係る回転炉100と同様の作用効果を奏する。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 筐体
1a 筐体一方端部
1b 筐体他方端部
1c 筐体外壁
1d 筐体内壁
2 断熱部材
2a 断熱部材一方端部
2b 断熱部材他方端部
2c 断熱部材外壁
2d 断熱部材内壁
3 1対の隔壁板(隔壁板)
4 回転管
4a 回転管一方端部
4b 回転管他方端部
4c 回転管外壁
4d 回転管内壁
5 空間
6 発熱体
7 気密扉
8 反応ガス導入口
9 排気口(パージガス排気口)
10 パージガス導入口
11 第1部材
11a 第1管部
11b 第1ネジ部
12 第2部材
12a 第2ネジ部
12b 第2管部
12c 第3管部
13 隙間
31 第1板
31a 第1板一方端部
31b 第1板他方端部
31c 第1板外壁
31d 第1貫通孔
32 第2板
32a 第2板一方端部
32b 第2板他方端部
32c 第2板外壁
32d 第2貫通孔
71 第1扉
72 第2扉
81 第1配管
82 第2配管
100 回転炉
A 中心軸
D1 第1直径
D2 第2直径
D3 第3直径
D4 第4直径