IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7070119画像処理装置、その制御方法、およびプログラム
<>
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図1
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図2
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図3
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図4
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図5
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図6
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図7
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図8
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図9
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図10
  • 特許-画像処理装置、その制御方法、およびプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】画像処理装置、その制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20220511BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20220511BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
B41J29/38
G03G21/00 384
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018110311
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019213154
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 晋弥
(72)【発明者】
【氏名】穐田 勝彦
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-029632(JP,A)
【文献】特開2005-227902(JP,A)
【文献】特開2015-049550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/38
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置であって、
ファイルを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備え、
前記記憶部は、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を格納し、
前記制御部は、前記ウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記優先度に従って、前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定し、
前記1つ以上の機能は、前記画像処理装置が生産性を保証している機能を含み、
前記情報は、生産性が保証されている前記機能が前記ウィルススキャンと並行して実行されないことを規定する、画像処理装置。
【請求項2】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置であって、
ファイルを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備え、
前記記憶部は、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を格納し、
前記制御部は、前記ウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記優先度に従って、前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定し、
前記優先度に関する情報は数値を含み、
前記制御部は、前記ウィルススキャンと並行して実行する要求を受けた前記機能の前記数値の合計が所与の閾値より低いことを条件として、当該機能を前記ウィルススキャンと並行して実行する、画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理装置が生産性を保証している機能の前記数値は、前記所与の閾値以上である、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置であって、
ファイルを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備え、
前記記憶部は、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を格納し、
前記制御部は、前記ウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記優先度に従って、前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定し、
コピー機能、スキャナー機能、およびプリント機能を実行する画像処理部をさらに備え、
前記制御部は、前記コピー機能、前記スキャナー機能、および前記プリント機能のうち少なくとも1つとは、前記ウィルススキャンを並行して実行しない画像処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記コピー機能、前記スキャナー機能、および前記プリント機能のうち少なくとも1つを、前記ウィルススキャンより優先して実行する、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記コピー機能、前記スキャナー機能、および前記プリント機能のうち少なくとも1つの機能の開始によって前記ウィルススキャンを中断した場合には、開始された前記機能の終了後に前記ウィルススキャンを再開する、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
情報の入力を受け付ける入力インターフェースを備え、
前記制御部は、前記入力インターフェースから入力された情報に従って前記優先度に関する情報を生成する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置の制御方法であって、
前記画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部と、前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備え、
前記ウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を前記記憶部にから読出し、前記優先度に従って前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップを含み、
前記1つ以上の機能は、前記画像処理装置が生産性を保証している機能を含み、
前記情報は、生産性が保証されている前記機能が前記ウィルススキャンと並行して実行されないことを規定する、画像処理装置の制御方法。
【請求項9】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置の制御方法であって、
前記画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部と、前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備え、
前記ウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を前記記憶部にから読出し、前記優先度に従って前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップを含み、
前記優先度に関する情報は数値を含み、
前記ウィルススキャンと並行して実行する要求を受けた前記機能の前記数値の合計が所与の閾値より低いことを条件として、当該機能が前記ウィルススキャンと並行して実行される、画像処理装置の制御方法。
【請求項10】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置の制御方法であって、
前記画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部と、前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備え、
前記ウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を前記記憶部にから読出し、前記優先度に従って前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップを含み、
コピー機能、スキャナー機能、およびプリント機能を実行する画像処理部をさらに備え、
前記コピー機能、前記スキャナー機能、および前記プリント機能のうち少なくとも1つとは、前記ウィルススキャンを並行しては実行されない、画像処理装置の制御方法。
【請求項11】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置のコンピューターによって実行されるプログラムであって、
前記画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部を備え、
前記プログラムは、前記コンピューターに、
前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を前記記憶部にから読出し、前記優先度に従って前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップと、
決定された前記タイミングに従って前記ウィルススキャンを実行するステップと、を実行させ
前記1つ以上の機能は、前記画像処理装置が生産性を保証している機能を含み、
前記情報は、生産性が保証されている前記機能が前記ウィルススキャンと並行して実行されないことを規定する、プログラム。
【請求項12】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置のコンピューターによって実行されるプログラムであって、
前記画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部を備え、
前記プログラムは、前記コンピューターに、
前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を前記記憶部にから読出し、前記優先度に従って前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップと、
決定された前記タイミングに従って前記ウィルススキャンを実行するステップと、を実行させ
前記優先度に関する情報は数値を含み、
前記ウィルススキャンと並行して実行する要求を受けた前記機能の前記数値の合計が所与の閾値より低いことを条件として、当該機能が前記ウィルススキャンと並行して実行される、プログラム。
【請求項13】
1つ以上の機能を実行する画像処理装置のコンピューターによって実行されるプログラムであって、
前記画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部を備え、
前記プログラムは、前記コンピューターに、
前記記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンと前記1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、前記1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を前記記憶部にから読出し、前記優先度に従って前記ウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップと、
決定された前記タイミングに従って前記ウィルススキャンを実行するステップと、を実行させ
コピー機能、スキャナー機能、およびプリント機能を実行する画像処理部をさらに備え、
前記コピー機能、前記スキャナー機能、および前記プリント機能のうち少なくとも1つとは、前記ウィルススキャンを並行しては実行されない、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、その制御方法、およびプログラムに関し、特に、画像処理装置におけるウィルススキャンの開始タイミングに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MFP(Multi-Functional Peripheral)等の画像処理装置がネットワークに接続する機能を備えるようになっている。このことから、ネットワーク上への意図せぬデータ流出等を確実に回避するために、画像処理装置においてもウィルススキャンが実行されるようになっている。ウィルススキャンは、プロセッサーなどのリソースを消費する。このため、画像処理装置は、パーソナルコンピューター等と同様に、ウィルススキャンの実行中にはパフォーマンスが低下し、プリント機能等の画像処理装置の本来の機能が提供できない事態が生じ得る。
【0003】
一般的な情報処理装置について、ウィルススキャン実行によるパフォーマンス低下に関し、従来、種々の技術が提案されている。たとえば、特開2012-141839号公報(特許文献1)は、ウィルススキャンの開始時にユーザーの許可を必要とする監視端末を開示する。特開2009-064271号公報(特許文献2)は、複数のディスクを備える情報処理装置が、1つのディスクが使用されていない期間、または、ディスクの使用率が閾値より低い期間に、ウィルススキャンを実行する技術を開示している。特表2015-508927号公報(特許文献3)は、システムのアイドル時間にウィルススキャンを実行する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-141839号公報
【文献】特開2009-064271号公報
【文献】特表2015-508927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように一般的な情報処理装置については種々の提案がなされている一方で、画像処理装置におけるウィルススキャンの開始タイミングについては、まだまだ検討を必要とされている。
【0006】
本開示は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、画像処理装置において、ウィルススキャンの適切な実行タイミングを決定するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従うと、1つ以上の機能を実行する画像処理装置が提供される。画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部と、記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備える。記憶部は、1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を格納する。制御部は、ウィルススキャンと1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、優先度に従って、ウィルススキャンを実行するタイミングを決定する。
【0008】
1つ以上の機能は、画像処理装置が生産性を保証している機能を含んでいてもよい。情報は、生産性が保証されている機能がウィルススキャンと並行して実行されないことを規定してもよい。
【0009】
優先度に関する情報は数値を含んでもよい。制御部は、ウィルススキャンと並行して実行する要求を受けた機能の数値の合計が所与の閾値より低いことを条件として、当該機能をウィルススキャンと並行して実行してもよい。
【0010】
画像処理装置が生産性を保証している機能の数値は、所与の閾値以上であってもよい。
画像処理装置は、情報の入力を受け付ける入力インターフェースを備えていてもよい。制御部は、入力インターフェースから入力された情報に従って優先度に関する情報を生成してもよい。
【0011】
画像処理装置は、コピー機能、スキャナー機能、およびプリント機能を実行する画像処理部をさらに備えていてもよい。制御部は、コピー機能、スキャナー機能、およびプリント機能のうち少なくとも1つとは、ウィルススキャンを並行して実行しないように構成されていてもよい。
【0012】
制御部は、コピー機能、スキャナー機能、およびプリント機能のうち少なくとも1つを、ウィルススキャンより優先して実行してもよい。
【0013】
制御部は、コピー機能、スキャナー機能、およびプリント機能のうち少なくとも1つの機能の開始によってウィルススキャンを中断した場合には、開始された機能の終了後にウィルススキャンを再開してもよい。
【0014】
本開示の他の局面に従うと、1つ以上の機能を実行する画像処理装置の制御方法が提供される。制御対象の画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部と、記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンを実行する制御部とを備える。制御方法は、ウィルススキャンと1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を記憶部にから読出し、優先度に従ってウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップを含む。
【0015】
本開示のさらに他の局面に従うと、1つ以上の機能を実行する画像処理装置のコンピューターによって実行されるプログラムが提供される。画像処理装置は、ファイルを格納する記憶部を備える。プログラムは、コンピューターに、記憶部に格納されたファイルのウィルススキャンと1つ以上の機能とを並行して実行する要求を受けた場合に、1つ以上の機能のそれぞれに対して設定された優先度に関する情報を記憶部にから読出し、優先度に従ってウィルススキャンを実行するタイミングを決定するステップと、決定されたタイミングに従ってウィルススキャンを実行するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ウィルスチェックと各種の機能とが並行して実行することを要求された場合のウィルスチェックの実行(開始、一時停止、および/または再開)のタイミングが、当該機能に対して設定された優先度に従って決定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示に係る画像処理装置の外観を示す図である。
図2図1の画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】CPU20の機能的な構成の一例を示す図である。
図4】並列実行可否情報の一例を示す図である。
図5】ウィルススキャンの実行要求が発生した場合に、CPU20(ウィルススキャン機能20B)が実行する処理のフローチャートである。
図6】ウィルススキャンの実行中に機能の実行要求が発生した場合にCPU20が実行する処理のフローチャートである。
図7】ステップS26において一時停止されたウィルススキャンを再開するためにCPU20が実行する処理のフローチャートである。
図8】各機能の重要度情報の一例を示す図である。
図9】重要度情報に基づいたウィルススキャンの実行態様の一例を説明するための図である。
図10】ウィルススキャンの実行態様の他の例を説明するための図である。
図11】ウィルススキャンの実行態様のさらに他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ、画像処理装置の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0019】
[1.画像処理装置の構成]
図1は、本開示に係る画像処理装置の外観を示す図である。図2は、図1の画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【0020】
画像処理装置1の一例は、MFP、すなわち、コピー、ネットワークプリンティング、スキャナー、FAX、またはドキュメントサーバーなどの機能を集約した装置である。画像処理装置1は、操作パネル11、スキャナー装置13、プリンター装置14、ステープル、パンチ等の処理を行うフィニッシャー装置15、通信インターフェース16、ドキュメントフィーダー17、給紙装置18、CPU(Central Processing Unit)20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、記憶部23、および、USB(Universal Serial Bus)インターフェース23Aを含む。
【0021】
操作パネル11は、操作装置11aとディスプレイ11bとを含む。操作装置11aは、数字、文字、および記号などを入力するための複数のキー、投稿文を作成したいときに押下されるコメントキー、押下された各種のキーを認識するセンサ、および認識したキーを示す信号をCPU20に送信する送信用回路を含む。
【0022】
ディスプレイ11bは、メッセージまたは指示を与えるための画面、ユーザーが設定内容および処理内容を入力するための画面、および、画像処理装置1で形成された画像および処理の結果を示す画面などを表示する。ディスプレイ11bは、タッチパネルであってもよい。すなわち、ディスプレイ11bと操作装置11aの少なくとも一部とが一体的に構成されていてもよい。ディスプレイ11bはユーザーが指で触れたタッチパネル上の位置を検知し、検知結果を示す信号をCPU20に送信する機能を備えている。
【0023】
画像処理装置1は、通信インターフェース16を介して、外部機器(たとえば、パーソナルコンピューター)と通信可能である。外部機器には、画像処理装置1に対して指令を与えるためのアプリケーションプログラムおよびドライバがインストールされていてもよい。これにより、ユーザーは、外部機器を使用して、画像処理装置1を遠隔的に操作できる。
【0024】
スキャナー装置13は、写真、文字、絵などの画像情報を原稿から光電的に読取って画像データを取得する。取得された画像データ(濃度データ)は、図示しない画像処理部においてデジタルデータに変換され、周知の各種画像処理を施された後、プリンター装置14や通信インターフェース16に送られ、画像の印刷やデータの送信に供されるか、または、後の利用のために記憶部23に格納される。
【0025】
プリンター装置14は、スキャナー装置13により取得された画像データ、通信インターフェース16により外部機器から受信した画像データ、または記憶部23に格納されている画像を、用紙またはフィルムなどの記録シートに印刷する。給紙装置18は、画像処理装置1本体の下部に設けられており、印刷対象の画像に適した記録シートをプリンター装置14に供給するために用いられている。プリンター装置14によって画像が印刷された記録シートつまり印刷物は、フィニッシャー装置15を通って、モード設定に応じてステープル、パンチなどの処理を行い、トレイ24に排出される。
【0026】
通信インターフェース16は、送信部および受信部を含み、PCおよびFAX端末とデータのやりとりを行うための装置である。通信インターフェース16の一例は、NIC(Network Interface Card)、モデム、または、TA(Terminal Adapter)などが用いられる。
【0027】
CPU20は、画像処理装置1の全体を統括的に制御し、通信機能、プリント機能、スキャン機能、ファイル送信機能、およびブラウザー機能等の基本機能を使用可能に制御する。
【0028】
ROM21は、CPU20の動作プログラム等を格納するメモリーである。
RAM22は、CPU20が動作プログラムに基づいて動作する際の作業領域を提供するメモリーであり、CPU20は、ROM21等から動作プログラムをロードするとともに種々のデータをロードして、作業を行う。
【0029】
記憶部23は、例えばハードディスクドライブ(HDD)などの不揮発性の記憶デバイスにより構成されており、各種のアプリケーション、スキャナー装置13で読み取られた原稿の画像データ等が記憶されている。
【0030】
USBインターフェース23Aは、画像処理装置1に対して着脱可能なUSBメモリー23Xのインターフェースである。CPU20は、USBインターフェース23Aを介して、USBメモリー23Xに格納された情報を読出す。CPU20は、また、USBインターフェース23Aを介して、USBメモリー23Xに情報を書き込む。
【0031】
[2.機能構成]
図3は、CPU20の機能的な構成の一例を示す図である。
【0032】
図3に示されるように、CPU20は、制御部20A、ウィルススキャン機能20B、機能(X)20X、機能(Y)20Y、および機能(Z)20Zとして機能する。それぞれの機能は、たとえば、CPU20が各機能に対応するプログラムモジュールを実行することによって実現される。
【0033】
制御部20Aは、画像処理装置1の動作を制御し、たとえば、ジョブの開始・中断・再開のタイミングを調整する。ウィルススキャン機能20Bは、記憶部23に対するウィルススキャンを実行する。これにより、記憶部23内の各ファイルのウィルスチェックが実行される。
【0034】
機能(X)20X,機能(Y)20Y,機能(Z)20Zのそれぞれは、画像処理装置1がユーザーに提供するサービスを実現するための機能である。機能(X)20Xは、たとえばコピー機能を実現するために、スキャナー装置13、プリンター装置14、ドキュメントフィーダー17、および給紙装置18を制御する。機能(Y)20Yは、たとえばスキャン機能を実現するために、スキャナー装置13、およびドキュメントフィーダー17を制御する。機能(Z)20Zは、たとえばプリント機能を実現するために、プリンター装置14、および給紙装置18を制御する。なお、画像処理装置1が提供する機能の数および種類は、図3に示されたものに限定されない。
【0035】
[3.並列実行可否情報]
図4は、並列実行可否情報の一例を示す図である。本実施の形態において、並列実行可否情報は、たとえば記憶部23に格納され、画像処理装置1における各機能に対して設定された優先度を規定する情報の一例である。図4の並列実行可否情報は、画像処理装置1の機能として、図3を参照して説明された「コピー」「プリント」「スキャン」の他に、「省エネ状態移行」「省エネ状態からの復帰」「Fax受信」「Fax送信」「E-mail受信」「ボックスファイル操作(記憶部23に格納されたファイルに対する操作)」を含む。「省エネ状態」とは、画像処理装置1の待機状態(画像処理装置1内の一部の要素への電力の供給が停止された状態。スリープモード。)を意味する。
【0036】
並列実行可否情報は、各機能に「可能」または「不可」を関連付ける。「可能」は、画像処理装置1の機能がウィルススキャンと並行して実行されることが可能であることを表わす。「不可」は、画像処理装置1の機能がウィルススキャンと並行して実行されることが許容されないことを表わす。図3の例では、「省エネ状態移行」「省エネ状態からの復帰」および「コピー」に対して「不可」が設定され、それ以外の機能に対して「可能」が設定されている。
【0037】
画像処理装置1において、CPU20は、操作パネル11等を介して入力された情報に従って、並列実行可否情報における各機能の設定(「可能」または「不可」)を更新することができる。これにより、ユーザーに、各機能の実行態様の調整を許容する。たとえば、ユーザーが画像処理装置1のコピーだけは一定の生産性を維持したいと考えた場合、ユーザーは、コピー機能の優先度が高くなるように並列実行可否情報を更新する。
【0038】
並列実行可否情報は、画像処理装置1について所与の生産性が保証されている機能については、優先度が高くなるように設定されていてもよい。たとえば、メーカーが、画像処理装置1のコピー機能について、1分間に所与の枚数を処理することを保証している場合、並列実行可否情報は、コピー機能の優先度が高くなるように設定される。
【0039】
図3の例では、「不可」は高い優先度に対応し、「可能」は低い優先度に対応する。
画像処理に関する機能(コピー機能、プリント機能、および、スキャン機能)については、高い優先度が設定されることが好ましい。これら3つの機能の全て、または、少なくとも一つは、ウィルススキャンよりも優先して実行され得る。すなわち、CPU20は、3つの機能のうち少なくとも一つは、ウィルススキャンとは並行して実行されないように構成されていてもよい。
【0040】
特に、コピー機能は高い優先度が設定されることが好ましい。コピー機能の実行は、多くの場合、ユーザーが画像処理装置1を直接操作することによって開始される。すなわち、コピー機能の実行が指示されるとき、多くの場合、ユーザーは画像処理装置1の前で当該コピー機能の完了を待っている。このようなユーザーのストレスを高めないために、コピー機能の優先度は高く設定され得る。
【0041】
[4.処理の流れ]
(ウィルススキャン実行要求処理)
図5は、ウィルススキャンの実行要求が発生した場合に、CPU20(ウィルススキャン機能20B)が実行する処理のフローチャートである。図5の処理は、たとえばCPU20が所与のプログラムを実行することによって実現される。ウィルススキャンの実行要求は、たとえば予め設定された時刻の到来、操作パネル11に対する開始要求の入力、等によって発生する。図5を参照して、当該処理の流れを説明する。
【0042】
ステップS10にて、CPU20は、実行中の機能を抽出する。すなわち、CPU20は、現在、どの機能が実行中であるかを特定する。
【0043】
ステップS12にて、CPU20は、ステップS10において実行中であることを特定した機能のそれぞれの情報を並列実行可否情報において照会する。
【0044】
ステップS14にて、CPU20は、ウィルススキャンが実行可能であるか否かを判断する。一例では、CPU20は、ステップS10において実行中であることが特定されたすべての機能が、並列実行可否情報において「許可」に関連付けられている場合には、ウィルススキャンが実行可能であると判断し、少なくとも一つの機能が「不可」に関連付けられている場合には、ウィルススキャンが実行不可であると判断する。CPU20は、ウィルススキャンが実行可能であると判断すると(ステップS14にてYES)、図5の処理を終了してウィルススキャンを開始し、そうでなければ(ステップS14にてNO)、ステップS10へ制御を戻す。
【0045】
図5を参照して説明された処理によれば、ウィルススキャンの実行要求が発生したときに既に実行している機能がある場合、CPU20は、実行中の全ての機能の並列実行可否情報が「許可」となるか、または、実行中の機能が全て終了するのを待って、ウィルススキャンを開始する。
【0046】
(機能実行要求時の処理)
図6は、ウィルススキャンの実行中に機能の実行要求が発生した場合にCPU20が実行する処理のフローチャートである。図6の処理は、機能の実行要求が発生したときに開始され、たとえばCPU20が所与のプログラムを実行することによって実現される。
【0047】
ステップS20にて、CPU20は、ウィルススキャンの実行中であるか否かを判断する。CPU20は、ウィルススキャンの実行中であると判断すると(ステップS20にてYES)、ステップS22へ制御を進め、そうでなければ(ステップS20にてNO)、図6の処理を終了して要求された機能を開始する。
【0048】
ステップS22にて、CPU20は、要求された機能について、並列実行可否情報を参照する。
【0049】
ステップS24にて、CPU20は、要求された機能が並列実行可否情報において「可能」に関連付けられているか否かを判断する。CPU20は、要求された機能が「可能」に関連付けられていると判断すると(ステップS24にてYES)、図6の処理を終了して要求された機能を開始し、そうでなければ(ステップS24にてNO)、ステップS26へ制御を進める。
【0050】
ステップS26にて、CPU20は、ウィルススキャンを一時停止した後、図6の処理を終了して要求された機能を開始する。
【0051】
(機能実行完了時の処理)
図7は、ステップS26において一時停止されたウィルススキャンを再開するためにCPU20が実行する処理のフローチャートである。図7の処理は、たとえば、画像処理装置1において機能が終了したときに開始される。図7の処理は、たとえばCPU20が所与のプログラムを実行することによって実現される。
【0052】
ステップS30にて、CPU20は、ウィルススキャンが一時停止中であるか否かが判断される。一例では、CPU20は、ステップS26にてウィルススキャンを一時停止するときに、所与のフラグ(一時停止フラグ)をセットしてもよい。ステップS30にて、CPU20は、一時停止フラグがセットされているか否かを判断してもよい。CPU20は、ウィルススキャンが一時停止中であると判断すると(ステップS30にてYES)、ステップS32へ制御を進め、そうでなければ(ステップS30にてNO)、図7の処理を終了する。
【0053】
ステップS32にて、CPU20は、実行中の機能を抽出する。たとえば、プリント機能とスキャン機能とが実行されていた状態から、スキャン機能のみが終了したことにより図7の処理が開始されると、ステップS32では、プリント機能が実行中の機能として抽出される。
【0054】
ステップS34にて、CPU20は、ステップS32にて抽出された機能の情報を並列実行可否情報にて照会する。
【0055】
ステップS36にて、CPU20は、ウィルススキャンが実行可能であるか否かを判断する。CPU20は、たとえば、ステップS32にて抽出された機能のすべてが並列実行可否情報にて「可能」に関連付けられている場合には、ウィルススキャンが実行可能であると判断する。CPU20は、たとえば、ステップS32にて抽出された機能のうち少なくとも1つが並列実行可否情報にて「不可」に関連付けられている場合には、ウィルススキャンが実行不可であると判断する。CPU20は、ウィルススキャンが実行可能であると判断すると(ステップS36にてYES)、ステップS38へ制御を進め、そうでなければ(ステップS36にてNO)、そのまま図7の処理を終了する。その後、この時点で実行中の機能が終了すると、CPU20は、再度図7の処理を開始する。
【0056】
ステップS38にて、CPU20は、ウィルススキャンを再開する。
[5.重要度情報]
図8は、各機能の重要度情報の一例を示す図である。重要度情報とは、画像処理装置1における各機能の重要度を数値で表す。図8の例では、「省エネ状態移行」「省エネ状態からの復帰」および「コピー」に関連付けられている数値は10である。また、「プリント」には6が、「スキャン」には4が、「Fax受信」には3が、「Fax送信」には2が、「E-mail受信」および「ボックスファイル操作」には1が、それぞれ関連付けられている。
【0057】
CPU20は、ウィルスチェックの実行の可否を、並列実行可否情報の代わりに、または、並列実行可否情報に加えて、重要度情報に基づいて判断してもよい。一例では、CPU20は、実行中の機能の重要度の合計が「10」未満であればウィルスチェックを実行し、実行中の機能の重要度の合計が「10」以上であればウィルスチェックの開始を待つ。この例では、「10」はウィルスチェックの開始についての閾値の一例である。
【0058】
重要度情報は、画像処理装置1において生産性を保証している機能の重要度として、上記閾値以上の数値を有していることが好ましい。これにより、当該機能がウィルスチェックと並行して実行されることが確実に回避される。一例では、画像処理装置1では、コピー機能についての生産性が保証されており、重要度情報は、コピー機能の重要度として上記閾値と同じ値(10)を含む。
【0059】
図9は、重要度情報に基づいたウィルススキャンの実行態様の一例を説明するための図である。図9には、ウィルススキャンのプロセスとして、プロセスPV11が示される。図9には、さらに、コピー機能のプロセスとしてプロセスPC11が、スキャン機能のプロセスとしてプロセスPS11が、プリント機能のプロセスとしてプロセスPP11,PP12が、示される。
【0060】
まず、CPU20は、ウィルススキャンのプロセスPV11を開始する。
その後、CPU20は、プリントのプロセスPP11を開始する。プリント機能の重要度は「6」である。他に実行されている機能は無い。したがって、プロセスPP11の開始時点の重要度の合計は「6」であり、閾値「10」より小さい。このため、CPU20は、プロセスPV11を続行する。これにより、プロセスPP11とプロセスPV11とが並行して実行される。
【0061】
プロセスPP11の終了後、CPU20は、スキャン機能のプロセスPS11を開始する。スキャン機能の重要度は「4」である。他に実行されている機能は無い。したがって、プロセスPS11の開始時点の重要度の合計は「4」であり、閾値「10」より小さい。このため、CPU20は、プロセスPV11を続行する。これにより、プロセスPS11とプロセスPV11とが並行して実行される。
【0062】
その後、CPU20は、プロセスPS11の実行中に、プリント機能のプロセスPP12を開始する。これにより、実行中の機能の重要度の合計は「10」になる。これにより、CPU20は、ウィルススキャンのプロセスPV11を一時停止させる。
【0063】
CPU20は、プロセスPP12の完了後、ウィルススキャンのプロセスPV11を再開する。その後、プロセスPS11が終了する。
【0064】
その後、CPU20は、コピー機能のプロセスPC11を開始する。コピー機能の重要度は「10」である。したがって、CPU20は、ウィルススキャンのプロセスPV11を一時停止する。CPU20は、プロセスPC11の終了後、プロセスPV11を再開する。
【0065】
[6.ウィルススキャンが優先して実行される例(1)]
CPU20は、所与の状況下では、各機能よりもウィルススキャンを優先させてもよい。図10は、ウィルススキャンの実行態様の他の例を説明するための図である。所与の状況の一例は、ユーザーがウィルススキャンを優先するように画像処理装置1を設定した場合である。
【0066】
図10には、スキャン機能のプロセスPS21と、プリント機能のプロセスPP21と、ウィルススキャンのプロセスPV21とが示される。
【0067】
図10の例では、まず、CPU20は、ウィルススキャンのプロセスPV21を開始する。その後、スキャン要求を受けても、CPU20は、プロセスPV21の実行中であるため、当該要求に応じたスキャン機能のプロセスPS21の開始をウィルススキャンのプロセスPV21の終了後まで遅らせる。
【0068】
また、CPU20は、プリント要求を受けても、CPU20は、プロセスPV21の実行中であるため、当該要求に応じたプリント機能のプロセスPP21の開始をウィルススキャンのプロセスPV21の終了後まで遅らせる。
【0069】
[7.ウィルススキャンが優先して実行される例(2)]
CPU20は、所与の状況下で、同時に実行する機能を調整する。図11は、ウィルススキャンの実行態様のさらに他の例を説明するための図である。図11には、スキャン機能のプロセスPS31と、プリント機能のプロセスPP31,PP32と、ウィルススキャンのプロセスPV31とが示されている。
【0070】
画像処理装置1では、ウィルススキャンと同時に実行される機能の数を制限する。たとえば、画像処理装置1は、ウィルススキャンの実行中、所与の数(たとえば、1)の機能のみ実行することを許容してもよい。
【0071】
まず、CPU20は、ウィルススキャンのプロセスPV31を開始する。その後、プリント機能のプロセスPP31を開始する。他に実行中の機能は無いため、CPU20は、プロセスPV31とプロセスPP31とを並行して実行する。
【0072】
プロセスPP31の終了後、CPU20は、スキャン要求に従ってプロセスPS31を開始する。他に実行中の機能が無いので、CPU20は、プロセスPS31とプロセスPV31とを並行して実行する。
【0073】
その後、プリント要求を受けると、CPU20は、当該要求に応じたプロセスPP32の開始を後回しにする。既にプリント機能が実行されているためである。CPU20は、スキャン機能のプロセスPS31の完了後、プロセスPP32を開始する。
【0074】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 画像処理装置、11 操作パネル、11a 操作装置、11b ディスプレイ、13 スキャナー装置、14 プリンター装置、15 フィニッシャー装置、16 通信インターフェース、17 ドキュメントフィーダー、18 給紙装置、20 CPU、20A 制御部、20B ウィルススキャン機能。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11