(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
B60K 17/06 20060101AFI20220511BHJP
F16H 61/28 20060101ALN20220511BHJP
F16H 63/20 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
B60K17/06 J
B60K17/06 E
F16H61/28
F16H63/20
(21)【出願番号】P 2018129037
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 宏光
(72)【発明者】
【氏名】江口 拓行
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105476(JP,A)
【文献】特開2018-071729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/06
F16H 61/28
F16H 63/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイナルドリブンギヤを収納する変速機ケースを有する変速機本体と、
前記変速機本体の変速動作を行うシフトアンドセレクト軸を有し、前記変速機本体に装着される変速装置と、を備え、
前記変速装置が、
油圧を発生するオイルポンプ、前記オイルポンプを駆動するモータ、および前記オイルポンプで加圧されたオイルを蓄圧して貯留するアキュムレータを有する油圧発生装置と、
前記油圧発生装置で用いるオイルを貯留するリザーバタンクと、を有する自動変速機であって、
前記変速機ケースは、前記ファイナルドリブンギヤの前方であって、前記変速機ケースの前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面に、開口部を有し、
前記変速装置は、前記開口部を覆う第1プレート部材を有し、
前記第1プレート部材は、
前記シフトアンドセレクト軸を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に、かつ、その前端部が
後端部よりも下方に位置する状態で前記変速機ケースに対して斜めの姿勢となるように支持し、
前記シフトアンドセレクト軸を軸方向に移動させるセレクトピストンを収納するセレクト油圧室と、前記セレクト油圧室の油圧を切り替えるセレクトソレノイドと、前記シフトアンドセレクト軸を軸周りに回転させるシフトピストンを収納する複数のシフト油圧室と、前記シフト油圧室の油圧を切り替える複数のシフトソレノイドとを有し、
前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室とにオイルを供給する第1オイル供給路と、前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室からオイルを排出する第1オイル回収路と、が前記第1プレート部材に形成され
、
前記変速装置は、前記第1プレート部材の上方かつ、前記変速機ケースの前端部側に第2プレート部材を有し、
前記第2プレート部材に、前記第1プレート部材にオイルを供給する第2オイル供給路と、前記第1プレート部材からオイルを回収する第2オイル回収路とが形成され、
前記第1オイル供給路に、前記第2プレート部材からオイルを受け取る第1オイル入口部が形成され、
前記第1オイル回収路に、前記第2プレート部材にオイルを送る第1オイル出口部が形成され、
前記第2オイル供給路に、前記第1オイル入口部と連通し、前記第1プレート部材にオイルを送る第2オイル出口部が形成され、
前記第2オイル回収路に、前記第1オイル出口部と連通し、前記第1プレート部材からオイルを受け取る第2オイル入口部が形成され、
前記油圧発生装置が前記第2プレート部材に設けられ、
前記第2プレート部材を前記第1プレート部材の真上より右側に偏って配置し、
前記第1プレート部材の左端部に、第1ソレノイドをその軸線が前記第1プレート部材に直交する方向を向くように配置し、
前記第1プレート部材の右端部に、第2ソレノイドをその軸線が左右方向を向くように配置したことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
ファイナルドリブンギヤを収納する変速機ケースを有する変速機本体と、
前記変速機本体の変速動作を行うシフトアンドセレクト軸を有し、前記変速機本体に装着される変速装置と、を備え、
前記変速装置が、
油圧を発生するオイルポンプ、前記オイルポンプを駆動するモータ、および前記オイルポンプで加圧されたオイルを蓄圧して貯留するアキュムレータを有する油圧発生装置と、
前記油圧発生装置で用いるオイルを貯留するリザーバタンクと、を有する自動変速機であって、
前記変速機ケースは、前記ファイナルドリブンギヤの前方であって、前記変速機ケースの前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面に、開口部を有し、
前記変速装置は、前記開口部を覆う第1プレート部材を有し、
前記第1プレート部材は、
前記シフトアンドセレクト軸を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に、かつ、その前端部が後端部よりも下方に位置する状態で前記変速機ケースに対して斜めの姿勢となるように支持し、
前記シフトアンドセレクト軸を軸方向に移動させるセレクトピストンを収納するセレクト油圧室と、前記セレクト油圧室の油圧を切り替えるセレクトソレノイドと、前記シフトアンドセレクト軸を軸周りに回転させるシフトピストンを収納する複数のシフト油圧室と、前記シフト油圧室の油圧を切り替える複数のシフトソレノイドとを有し、
前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室とにオイルを供給する第1オイル供給路と、前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室からオイルを排出する第1オイル回収路と、が前記第1プレート部材に形成され、
前記変速装置は、前記第1プレート部材の上方かつ、前記変速機ケースの前端部側に第2プレート部材を有し、
前記第2プレート部材に、前記第1プレート部材にオイルを供給する第2オイル供給路と、前記第1プレート部材からオイルを回収する第2オイル回収路とが形成され、
前記第1オイル供給路に、前記第2プレート部材からオイルを受け取る第1オイル入口部が形成され、
前記第1オイル回収路に、前記第2プレート部材にオイルを送る第1オイル出口部が形成され、
前記第2オイル供給路に、前記第1オイル入口部と連通し、前記第1プレート部材にオイルを送る第2オイル出口部が形成され、
前記第2オイル回収路に、前記第1オイル出口部と連通し、前記第1プレート部材からオイルを受け取る第2オイル入口部が形成され、
前記油圧発生装置が前記第2プレート部材に設けられ、
前記第2プレート部材は、前記変速機ケースの前端部において上下方向に延びる平面状の縦壁部と、前記縦壁部から直交して水平方向に延びる平面状の水平壁部とを有し、
前記アキュムレータは、その長軸方向が上下方向となる姿勢で前記縦壁部に配置され、
前記オイルポンプは、前記水平壁部の下面側に配置され、
前記モータは、前記オイルポンプと前記水平壁部を挟んで対向するように、前記水平壁部の上面側に配置され、
前記モータの上端部が、前記アキュムレータの上端部より低い位置に配置され、
前記リザーバタンクが、前記アキュムレータと前記モータの後方に取り付けられ、前記モータの上方に延びていることを特徴とす
る自動変速機。
【請求項3】
ファイナルドリブンギヤを収納する変速機ケースを有する変速機本体と、
前記変速機本体の変速動作を行うシフトアンドセレクト軸を有し、前記変速機本体に装着される変速装置と、を備え、
前記変速装置が、
油圧を発生するオイルポンプ、前記オイルポンプを駆動するモータ、および前記オイルポンプで加圧されたオイルを蓄圧して貯留するアキュムレータを有する油圧発生装置と、
前記油圧発生装置で用いるオイルを貯留するリザーバタンクと、を有する自動変速機であって、
前記変速機ケースは、前記ファイナルドリブンギヤの前方であって、前記変速機ケースの前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面に、開口部を有し、
前記変速装置は、前記開口部を覆う第1プレート部材を有し、
前記第1プレート部材は、
前記シフトアンドセレクト軸を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に、かつ、その前端部が後端部よりも下方に位置する状態で前記変速機ケースに対して斜めの姿勢となるように支持し、
前記シフトアンドセレクト軸を軸方向に移動させるセレクトピストンを収納するセレクト油圧室と、前記セレクト油圧室の油圧を切り替えるセレクトソレノイドと、前記シフトアンドセレクト軸を軸周りに回転させるシフトピストンを収納する複数のシフト油圧室と、前記シフト油圧室の油圧を切り替える複数のシフトソレノイドとを有し、
前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室とにオイルを供給する第1オイル供給路と、前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室からオイルを排出する第1オイル回収路と、が前記第1プレート部材に形成され、
前記変速装置は、前記第1プレート部材の上方かつ、前記変速機ケースの前端部側に第2プレート部材を有し、
前記第2プレート部材に、前記第1プレート部材にオイルを供給する第2オイル供給路と、前記第1プレート部材からオイルを回収する第2オイル回収路とが形成され、
前記第1オイル供給路に、前記第2プレート部材からオイルを受け取る第1オイル入口部が形成され、
前記第1オイル回収路に、前記第2プレート部材にオイルを送る第1オイル出口部が形成され、
前記第2オイル供給路に、前記第1オイル入口部と連通し、前記第1プレート部材にオイルを送る第2オイル出口部が形成され、
前記第2オイル回収路に、前記第1オイル出口部と連通し、前記第1プレート部材からオイルを受け取る第2オイル入口部が形成され、
前記油圧発生装置が前記第2プレート部材に設けられ、
前記第2プレート部材は、前記変速機ケースの前端部において上下方向に延びる平面状の縦壁部と、前記縦壁部から直交して水平方向に延びる平面状の水平壁部とを有し、
前記アキュムレータは、その長軸方向が上下方向となる姿勢で前記縦壁部に配置され、
前記オイルポンプは、前記水平壁部の下面側に配置され、
前記モータは、前記オイルポンプと前記水平壁部を挟んで対向するように、前記水平壁部の上面側に配置され、
前記モータの上端部が、前記アキュムレータの上端部より低い位置に配置され、
前記リザーバタンクが、前記アキュムレータと前記モータの後方に取り付けられ、前記モータの上方に延びて
おり、
前記リザーバタンクは、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とに跨がって配置され、前記第1プレート部材に固定される後側取付部と前記第2プレート部材に固定される前側取付部とを有しており、
前記リザーバタンクは、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とに連結されていることを特徴とす
る自動変速機。
【請求項4】
ファイナルドリブンギヤを収納する変速機ケースを有する変速機本体と、
前記変速機本体の変速動作を行うシフトアンドセレクト軸を有し、前記変速機本体に装着される変速装置と、を備え、
前記変速装置が、
油圧を発生するオイルポンプ、前記オイルポンプを駆動するモータ、および前記オイルポンプで加圧されたオイルを蓄圧して貯留するアキュムレータを有する油圧発生装置と、
前記油圧発生装置で用いるオイルを貯留するリザーバタンクと、を有する自動変速機であって、
前記変速機ケースは、前記ファイナルドリブンギヤの前方であって、前記変速機ケースの前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面に、開口部を有し、
前記変速装置は、前記開口部を覆う第1プレート部材を有し、
前記第1プレート部材は、
前記シフトアンドセレクト軸を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に、かつ、その前端部が後端部よりも下方に位置する状態で前記変速機ケースに対して斜めの姿勢となるように支持し、
前記シフトアンドセレクト軸を軸方向に移動させるセレクトピストンを収納するセレクト油圧室と、前記セレクト油圧室の油圧を切り替えるセレクトソレノイドと、前記シフトアンドセレクト軸を軸周りに回転させるシフトピストンを収納する複数のシフト油圧室と、前記シフト油圧室の油圧を切り替える複数のシフトソレノイドとを有し、
前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室とにオイルを供給する第1オイル供給路と、前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室からオイルを排出する第1オイル回収路と、が前記第1プレート部材に形成され、
前記変速装置は、前記第1プレート部材の上方かつ、前記変速機ケースの前端部側に第2プレート部材を有し、
前記第2プレート部材に、前記第1プレート部材にオイルを供給する第2オイル供給路と、前記第1プレート部材からオイルを回収する第2オイル回収路とが形成され、
前記第1オイル供給路に、前記第2プレート部材からオイルを受け取る第1オイル入口部が形成され、
前記第1オイル回収路に、前記第2プレート部材にオイルを送る第1オイル出口部が形成され、
前記第2オイル供給路に、前記第1オイル入口部と連通し、前記第1プレート部材にオイルを送る第2オイル出口部が形成され、
前記第2オイル回収路に、前記第1オイル出口部と連通し、前記第1プレート部材からオイルを受け取る第2オイル入口部が形成され、
前記油圧発生装置が前記第2プレート部材に設けられ、
前記第2プレート部材は、前記変速機ケースの前端部において上下方向に延びる平面状の縦壁部と、前記縦壁部から直交して水平方向に延びる平面状の水平壁部とを有し、
前記アキュムレータは、その長軸方向が上下方向となる姿勢で前記縦壁部に配置され、
前記オイルポンプは、前記水平壁部の下面側に配置され、
前記モータは、前記オイルポンプと前記水平壁部を挟んで対向するように、前記水平壁部の上面側に配置され、
前記モータの上端部が、前記アキュムレータの上端部より低い位置に配置され、
前記リザーバタンクが、前記アキュムレータと前記モータの後方に取り付けられ、前記モータの上方に延びており、
前記リザーバタンクは、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とに跨がって配置され、前記第1プレート部材に固定される後側取付部と前記第2プレート部材に固定される前側取付部とを有しており、
前記リザーバタンクは、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とに連結され
、
前記リザーバタンクの上面視で、前記前側取付部は、前記アキュムレータの中心と前記モータの中心との間、かつ、前記アキュムレータの中心と前記モータの中心との中間位置よりも前側に配置され、
前記リザーバタンクの中心は、前記アキュムレータおよび前記モータよりも後方に位置していることを特徴とす
る自動変速機。
【請求項5】
前記第2プレート部材を前記第1プレート部材の真上より右側に偏って配置し、
前記第1プレート部材の左端部に、第1ソレノイドをその軸線が前記第1プレート部材に直交する方向を向くように配置し、
前記第1プレート部材の右端部に、第2ソレノイドをその軸線が左右方向を向くように配置したことを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機としては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された自動変速機は、油圧発生装置と、クラッチアクチュエータと、変速アクチュエータと、制御装置とを変速機ケースの上方に配置している。これに加え、変速アクチュエータハウジングは、自動変速機の平面視で長辺と短辺とを有する矩形形状に形成され、かつ、長辺がシフトアンドセレクト軸と隣接して配置される。また、制御装置ハウジングは、自動変速機の平面視で長辺と短辺とを有する矩形形状に形成されている。そして、変速アクチュエータハウジングと制御装置ハウジングとを、長辺と長辺で密接し、かつ、長辺と長辺がエンジン取付け面と平行な方向に向くように配置した。
【0003】
これにより、特許文献1に記載された自動変速機は、変速アクチュエータハウジングと制御装置ハウジングとが互いの長辺同士で密接され、変速アクチュエータハウジングの短辺および制御装置ハウジングの短辺が車両左右方向を向くため、変速アクチュエータと制御装置の車両左右方向への突出量を小さくすることができ、自動変速機以外の車両構成部品の形状や配置を制約することなく車両に搭載することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された自動変速機においては、シフトアンドセレクト軸を変速機ケースに対して車両上下方向に向く姿勢で配置し、シフトセレクト軸の上端部に変速装置を連結している。このため、特許文献1に記載された自動変速機は、変速機ケースの最上部に変速装置を配置しており、変速装置の分だけ上下方向のサイズが大きくなっている。このため、前後方向だけでなく上下方向にもサイズを小型化できる自動変速機が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、前後方向と上下方向にサイズを小型化でき、変速装置の動作性を向上させることができる自動変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ファイナルドリブンギヤを収納する変速機ケースを有する変速機本体と、前記変速機本体の変速動作を行うシフトアンドセレクト軸を有し、前記変速機本体に装着される変速装置と、を備え、前記変速装置が、油圧を発生するオイルポンプ、前記オイルポンプを駆動するモータ、および前記オイルポンプで加圧されたオイルを蓄圧して貯留するアキュムレータを有する油圧発生装置と、前記油圧発生装置で用いるオイルを貯留するリザーバタンクと、を有する自動変速機であって、前記変速機ケースは、前記ファイナルドリブンギヤの前方であって、前記変速機ケースの前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面に、開口部を有し、前記変速装置は、前記開口部を覆う第1プレート部材を有し、前記第1プレート部材は、前記シフトアンドセレクト軸を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に、かつ、その前端部が後端部よりも下方に位置する状態で前記変速機ケースに対して斜めの姿勢となるように支持し、前記シフトアンドセレクト軸を軸方向に移動させるセレクトピストンを収納するセレクト油圧室と、前記セレクト油圧室の油圧を切り替えるセレクトソレノイドと、前記シフトアンドセレクト軸を軸周りに回転させるシフトピストンを収納する複数のシフト油圧室と、前記シフト油圧室の油圧を切り替える複数のシフトソレノイドとを有し、前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室とにオイルを供給する第1オイル供給路と、前記セレクト油圧室と前記シフト油圧室からオイルを排出する第1オイル回収路と、が前記第1プレート部材に形成され、前記変速装置は、前記第1プレート部材の上方かつ、前記変速機ケースの前端部側に第2プレート部材を有し、前記第2プレート部材に、前記第1プレート部材にオイルを供給する第2オイル供給路と、前記第1プレート部材からオイルを回収する第2オイル回収路とが形成され、前記第1オイル供給路に、前記第2プレート部材からオイルを受け取る第1オイル入口部が形成され、前記第1オイル回収路に、前記第2プレート部材にオイルを送る第1オイル出口部が形成され、前記第2オイル供給路に、前記第1オイル入口部と連通し、前記第1プレート部材にオイルを送る第2オイル出口部が形成され、前記第2オイル回収路に、前記第1オイル出口部と連通し、前記第1プレート部材からオイルを受け取る第2オイル入口部が形成され、前記油圧発生装置が前記第2プレート部材に設けられ、前記第2プレート部材を前記第1プレート部材の真上より右側に偏って配置し、前記第1プレート部材の左端部に、第1ソレノイドをその軸線が前記第1プレート部材に直交する方向を向くように配置し、前記第1プレート部材の右端部に、第2ソレノイドをその軸線が左右方向を向くように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、前後方向と上下方向にサイズを小型化でき、変速装置の動作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の、リザーバタンク等を取り外した状態の正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の上面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のライトケースを取り外した状態の右側面図である。
【
図6】
図6は、
図3の矢印A方向から見た変速装置の第1プレート部材の平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係る自動変速機の変速装置の油圧回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る自動変速機は、ファイナルドリブンギヤを収納する変速機ケースを有する変速機本体と、変速機本体の変速動作を行うシフトアンドセレクト軸を有し、変速機本体に装着される変速装置と、を備え、変速装置が、油圧を発生するオイルポンプ、オイルポンプを駆動するモータ、およびオイルポンプで加圧されたオイルを蓄圧して貯留するアキュムレータを有する油圧発生装置と、油圧発生装置で用いるオイルを貯留するリザーバタンクと、を有する自動変速機であって、変速機ケースは、ファイナルドリブンギヤの前方であって、変速機ケースの前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面に、開口部を有し、変速装置は、開口部を覆う第1プレート部材を有し、第1プレート部材は、シフトアンドセレクト軸を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に、かつ、その前端部が後端部よりも下方に位置する状態で変速機ケースに対して斜めの姿勢となるように支持し、シフトアンドセレクト軸を軸方向に移動させるセレクトピストンを収納するセレクト油圧室と、セレクト油圧室の油圧を切り替えるセレクトソレノイドと、シフトアンドセレクト軸を軸周りに回転させるシフトピストンを収納する複数のシフト油圧室と、シフト油圧室の油圧を切り替える複数のシフトソレノイドとを有し、セレクト油圧室とシフト油圧室とにオイルを供給する第1オイル供給路と、セレクト油圧室とシフト油圧室からオイルを排出する第1オイル回収路と、が第1プレート部材に形成され、変速装置は、第1プレート部材の上方かつ、変速機ケースの前端部側に第2プレート部材を有し、第2プレート部材に、第1プレート部材にオイルを供給する第2オイル供給路と、第1プレート部材からオイルを回収する第2オイル回収路とが形成され、第1オイル供給路に、第2プレート部材からオイルを受け取る第1オイル入口部が形成され、第1オイル回収路に、第2プレート部材にオイルを送る第1オイル出口部が形成され、第2オイル供給路に、第1オイル入口部と連通し、第1プレート部材にオイルを送る第2オイル出口部が形成され、第2オイル回収路に、第1オイル出口部と連通し、第1プレート部材からオイルを受け取る第2オイル入口部が形成され、油圧発生装置が第2プレート部材に設けられ、前記第2プレート部材を前記第1プレート部材の真上より右側に偏って配置し、前記第1プレート部材の左端部に、第1ソレノイドをその軸線が前記第1プレート部材に直交する方向を向くように配置し、前記第1プレート部材の右端部に、第2ソレノイドをその軸線が左右方向を向くように配置したことを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る自動変速機は、前後方向と上下方向にサイズを小型化でき、変速装置の動作性を向上させることができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る自動変速機について、図面を用いて説明する。
図1から
図8は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
図1から
図8において、上下前後左右方向は、車両に配置された状態の車両用変速機の上下前後左右方向とし、前後方向に対して直交する方向(車幅方向)が左右方向、車両用変速機の高さ方向が上下方向である。
【0012】
まず、構成を説明する。
図1において、自動変速機1は、自動車等の車両に搭載される車両用変速機であり、例えば、AMT(Automated Manual Transmission)から構成される。自動変速機1は、変速機本体1Aと、この変速機本体1Aの変速操作を行う変速装置31とを有している。
【0013】
自動変速機1は、変速機ケース2を備えている。変速機ケース2は、変速機本体1Aの筐体を構成しており、レフトケース3、ライトケース4およびエクステンションケース15を有している。ライトケース4の右端部にはエンジン5が連結されている。ライトケース4には流体継手からなる図示しないトルクコンバータが収容されている。トルクコンバータには、後述する入力軸8が連結されており、トルクコンバータは、エンジンの動力を入力軸8に伝達する。レフトケース3の左端部にはエクステンションケース15が連結されている。
【0014】
ここで、エンジン5は、クランク軸が車両の幅方向に延びるように配置される横置きエンジンから構成されており、本実施例の車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両である。
【0015】
レフトケース3には、
図5に示すように変速歯車機構7が収容されている。変速歯車機構7は、車両の幅方向に延びる入力軸8と、それぞれ入力軸8と平行に配置される前進用アイドル軸9、後進用アイドル軸10、中間軸11、出力軸12および後進軸13とを備えている。なお、
図5は、ライトケース4を取り外した状態を示しているが、変速歯車機構7は、レフトケース3の内方に位置している。
【0016】
レフトケース3には差動装置14が設けられている。差動装置14は、デフケース14Aと、デフケース14Aの外周部に取付けられたファイナルドリブンギヤ14Bとを有する。デフケースには図示しない左右のドライブシャフトの一端部が連結されており、ドライブシャフトの他端部側には図示しない左右の駆動輪が連結されている。
【0017】
入力軸8には複数の入力ギヤ21が設けられており、前進用アイドル軸9には複数のアイドルギヤ22が設けられている。
【0018】
後進用アイドル軸10には複数の後進アイドルギヤ23が設けられており、中間軸11には複数の中間ギヤ24が設けられている。出力軸12は複数の出力ギヤ25が設けられており、後進軸13には後進ギヤ26が設けられている。
【0019】
車両の前進時においては、入力軸8から出力軸12までの動力伝達経路は、入力軸8の動力が入力ギヤ21からアイドルギヤ22を介して中間軸11に伝達された後、中間軸11から中間ギヤ24および出力ギヤ25を介して出力軸12に伝達される第1の動力伝達経路を有する。第1の動力伝達経路において任意の変速段が成立可能となる。
【0020】
車両の前進時においては、入力軸8から出力軸12までの動力伝達経路は、入力軸8の動力が入力ギヤ21および出力ギヤ25を介して出力軸12に伝達される第2の動力伝達経路を有する。第2の動力伝達経路において任意の変速段が成立可能となる。
【0021】
出力軸12には図示しないファイナルドライブギヤが設けられており、ファイナルドライブギヤは、差動装置14のファイナルドリブンギヤ14Bに噛み合っている。これにより、車両の前進時において、エンジン5の動力は、出力軸12から差動装置14を介して左右の駆動輪に伝達される。
【0022】
車両の後進時において、入力軸8の動力は、入力ギヤ21から後進アイドルギヤ23および後進ギヤ26を介して後進軸13に伝達される。後進軸13には図示しないファイナルドライブギヤが設けられており、ファイナルドライブギヤは、差動装置14のファイナルドリブンギヤ14Bに噛み合っている。これにより、車両の後進時において、エンジン5の動力は、後進軸13から差動装置14を介して左右の駆動輪に伝達される。
【0023】
図1から
図4において、レフトケース3の上部には変速装置31が装着されている。レフトケース3の上部にはレフトケース3の前側から後側に向かって上方に傾斜する傾斜面3Aが設けられており、変速装置31は、傾斜面3Aに取付けられている。
【0024】
変速装置31は、第1プレート部材32と、シフトアンドセレクト軸33と、油圧発生装置34と、油圧回路35とを含んで構成されている。
【0025】
図7において、レフトケース3の傾斜面3Aには開口部3aが形成されており、第1プレート部材32は、開口部3aを覆うようにして傾斜面3Aに取付けられている。シフトアンドセレクト軸33は、第1プレート部材32の内部に設けられており、傾斜面3Aの傾斜方向と同方向に延びている。すなわち、シフトアンドセレクト軸33は、レフトケース3の前側から後側に向かって上方に傾斜している。
【0026】
図7において、第1プレート部材32には第1プレート部材32の下側の側壁32Aから下方に延びる筒状部32aと、上側の側壁32Bから上方に延びる筒状部32bとが設けられている。
【0027】
シフトアンドセレクト軸33の下部と上部は、それぞれ筒状部32a、32bに挿通されており、シフトアンドセレクト軸33は、セレクト操作に応じて第1プレート部材32に対して軸線方向に移動自在、かつ、変速操作に応じて第1プレート部材32に対して軸線周りに回転するように筒状部32a、32bに支持されている。
【0028】
図1において、油圧発生装置34は、アキュムレータ42、オイルポンプ43およびモータ44を備えている。油圧発生装置34のオイルポンプ43およびモータ44は、第1プレート部材32に一体に取付けられている。
【0029】
リザーバタンク41は、変速装置31の作動用のオイルを貯留している。オイルポンプ43は、モータ44によって駆動されることにより、リザーバタンク41に貯留されるオイルを加圧して、第1プレート部材32に一体に形成された後述するオイル通路を通してアキュムレータ42に供給する。
【0030】
アキュムレータ42は、オイルの圧力を蓄え、高圧のオイルを図示しない油圧通路を通して、第1プレート部材32に形成されたセレクト油圧室35a(
図7参照)、シフト油圧室35bおよびシフト油圧室35c(
図8参照)に供給する。
【0031】
油圧回路35は、セレクトソレノイド65、シフトソレノイド63およびシフトソレノイド64を有する。セレクトソレノイド65は、セレクト油圧室35aにオイルを供給または供給を停止するスイッチ機能を有する。
【0032】
シフトソレノイド63は、シフト油圧室35bにオイルを供給または供給を停止するスイッチ機能と、シフト油圧室35bに供給される油圧の大きさを調整する機能を有する。
【0033】
シフトソレノイド64は、シフト油圧室35cにオイルを供給または供給を停止するスイッチ機能と、シフト油圧室35cに供給される油圧の大きさを調整する機能を有する。
【0034】
図7において、シフトアンドセレクト軸33の外周部には図示しないピン部材によって筒状部材36が取付けられており、筒状部材36は、シフトアンドセレクト軸33と一体で移動する。
【0035】
シフトアンドセレクト軸33の上部と下部とは筒状部材36の上端と下端から上方および下方に突出しており、筒状部材36は、シフトアンドセレクト軸33の上部と下部を除いた中間部の外周部に取付けられている。
【0036】
図7に示すように、筒状部材36には第1のフィンガー部36A、第2のフィンガー部36B、シフトレバー36C、シフトガイド36D、ディテントカム36Eおよびマグネット36Fが一体に設けられている。
【0037】
第1のフィンガー部36A、第2のフィンガー部36Bおよびシフトレバー36Cは、筒状部材36の同一の側面、すなわち、レフトケース3の内方側の側面(
図7参照)においてシフトアンドセレクト軸33の軸方向に並んで設置されている。本実施例の第1のフィンガー部36Aおよび第2のフィンガー部36Bは、本発明のフィンガー部を構成する。
【0038】
ディテントカム36Eは、シフトアンドセレクト軸33を挟んでシフトレバー36Cと反対側で、かつ、シフトアンドセレクト軸33の軸方向においてシフトレバー36Cと同じ位置に設置されている。
【0039】
マグネット36Fおよびシフトガイド36Dは、シフトアンドセレクト軸33を挟んで第1のフィンガー部36Aおよび第2のフィンガー部36Bと反対側に設置されている。
【0040】
油圧回路35は、
図7に示すようにセレクトピストン45を有し、セレクトピストン45は、セレクト油圧室35aに摺動自在に設けられている。筒状部材36の上端には凹形状のばね受け36aが形成されており、ばね受け36aと側壁32Bの間にはコイルスプリング47が介装されている。
【0041】
セレクトピストン45の一端部は、シフトアンドセレクト軸33の下端に接触しており、セレクトソレノイド65がアキュムレータ42のオイルをセレクト油圧室35aに供給すると、セレクトピストン45の他端に油圧が作用する。これにより、セレクトピストン45がコイルスプリング47の付勢力に抗してシフトアンドセレクト軸33を上方に移動させる。
【0042】
セレクトソレノイド65がアキュムレータ42からセレクト油圧室35aにオイルの供給を停止すると、シフトアンドセレクト軸33がコイルスプリング47に付勢されて下方に移動する。このようにしてシフトアンドセレクト軸33がセレクト方向である軸線方向に移動する。
【0043】
油圧回路35は、図示しないシフトピストンを有する。シフトレバー36Cは、シフトピストンに嵌合されている。シフトピストンは、油圧回路35に摺動自在に設置されており、一端部がシフト油圧室35bに挿入され、他端部がシフト油圧室35cに挿入されている。
【0044】
シフトソレノイド63によってアキュムレータ42からシフト油圧室35bにオイルが供給されると、シフトピストンがシフト油圧室35c側に移動する。これにより、シフトピストンによってシフトレバー36Cが押圧され、シフトアンドセレクト軸33が一方に回転する。
【0045】
シフトソレノイド63によってアキュムレータ42からシフト油圧室35bに供給されるオイルが停止され、シフトソレノイド64によってシフト油圧室35cにオイルが供給されると、シフトピストンがシフト油圧室35b側に移動する。
【0046】
これにより、シフトピストンによってシフトレバー36Cが押圧され、シフトアンドセレクト軸33が他方向に回転する。このようにシフトアンドセレクト軸33は、シフトピストンによって軸線周りに回転する。
【0047】
図7において、第1のフィンガー部36Aは、第1のシフトヨーク51Aおよび第2のシフトヨーク51Bのそれぞれに形成された図示しない二股形状の嵌合部に選択的に嵌合され、第2のフィンガー部36Bは、第3のシフトヨーク51Cおよび第4のシフトヨーク51Dのそれぞれに形成された図示しない二股形状の嵌合部に選択的に嵌合される。
【0048】
図5において、第1のシフトヨーク51Aは、入力軸8と平行に延びる第1のシフタ軸52Aに連結されており、第1のシフタ軸52Aには第1のシフトフォーク53Aが連結されている。
【0049】
第1のシフトフォーク53Aは、中間軸11に設けられた図示しないスリーブに嵌合されている。中間軸11に設けられたスリーブは、一対の中間ギヤ24のいずれか一方を選択して中間軸11に連結する。
【0050】
第2のシフトヨーク51Bは、入力軸8と平行に延びる第2のシフタ軸52Bに連結されている。第2のシフタ軸52Bは、連結部52Cを介して入力軸8と平行に延びる第2のシフタ軸52Dに連結されており、第2のシフタ軸52Dには第2のシフトフォーク53Bが連結されている。
【0051】
第2のシフトフォーク53Bは、中間軸11に設けられた図示しないスリーブに嵌合されている。中間軸11に設けられたスリーブは、複数の中間ギヤ24の前記一対のギヤを除いた一対のギヤのいずれか一方を選択して中間軸11に連結する。
【0052】
第3のシフトヨーク51Cは、入力軸8と平行に延びる第3のシフタ軸52Eに連結されており、第3のシフタ軸52Eには第3のシフトフォーク53Cが連結されている。第3のシフトフォーク53Cは、入力軸8に設けられた図示しないスリーブに嵌合されている。入力軸8に設けられたスリーブは、一対の入力ギヤ21のいずれか一方を選択して入力軸8に連結する。
【0053】
第4のシフトヨーク51Dは、入力軸8と平行に延びる第4のシフタ軸52Fに連結されている。第4のシフタ軸52Fは、連結部52Gを介して入力軸8と平行に延びる第4のシフタ軸52Hに連結されており、第4のシフタ軸52Hには第4のシフトフォーク53Dが連結されている。
【0054】
第4のシフトフォーク53Dは、後進軸13に設けられた図示しないスリーブに嵌合されている。後進軸13に設けられたスリーブは、後進ギヤ26を後進軸13に連結する。
【0055】
図7において、変速装置31にはインタロックプレート37が設けられている。インタロックプレート37は、フィンガー部36Aが第1のシフトヨーク51Aまたは第2のシフトヨーク51Bと嵌合するときに、フィンガー部36Bが第3のシフトヨーク51Cおよび第4のシフトヨーク51Dと誤って嵌合することを防止し、フィンガー部36Bが第3のシフトヨーク51Cまたは第4のシフトヨーク51Dと嵌合するときに、フィンガー部36Aが第1のシフトヨーク51Aおよび第2のシフトヨーク51Bと誤って嵌合することを防止する。
【0056】
図7において、第1プレート部材32にはボス部32Cが設けられており、ボス部32Cにはディテントピン48が設けられている。ディテントピン48は、シフトアンドセレクト軸33の軸方向と直交する方向においてディテントカム36Eに対向している。
【0057】
ディテントピン48は、ボス部32Cに固定された筒状保持部48Aと、筒状保持部48Aに保持されたコイルスプリング48Bと、ボス部32Cに摺動自在に収容され、コイルスプリング48Bによってディテントカム36Eに押圧される移動体48Cとを有する。
【0058】
ディテントカム36Eとディテントピン48は、ディテント機構38を構成しており、ディテント機構38は、シフトアンドセレクト軸33が軸線方向および回転方向に移動するときに、ディテントカム36Eに沿って移動体48Cが転動する。
【0059】
ディテント機構38は、ディテントカム36Eが軸線方向および回転方向に移動するときに、移動体48Cをディテントカム36Eに押し付けるコイルスプリング48Bの押し付け力を作用させることによって、シフトアンドセレクト軸33に操作力を付与する。
【0060】
図7において、第1プレート部材32にはボス部32Dが設けられており、ボス部32Dにはガイドピン49が設けられている。ガイドピン49は、シフトアンドセレクト軸33の軸方向と直交する方向においてシフトガイド36Dに対向している。
【0061】
シフトガイド36Dにはシフトパターンに沿った形状のガイド溝36dが形成されており、ガイド溝36dにはガイドピン49の先端部49aが挿入されている。ガイド溝36dは、シフトアンドセレクト軸33がセレクト方向に移動するとともに、シフト方向に回転するのに伴ってガイドピン49に沿って移動する。
【0062】
変速終了後において、ガイドピン49の先端部49aが変速段に応じたガイド溝36dの壁面に当接する。これにより、シフトアンドセレクト軸33のセレクト方向およびシフト方向への移動量が規制されて、シフトアンドセレクト軸33がセレクト方向およびシフト方向にがたつくことが防止される。
【0063】
第1プレート部材32の外周部には位置センサ50が設けられており、位置センサ50は、シフトアンドセレクト軸33の軸方向においてマグネット36Fに対向している。
【0064】
具体的には、位置センサ50は、シフトアンドセレクト軸33がニュートラル位置に位置した状態においてマグネット36Fに対向している。位置センサ50は、シフトアンドセレクト軸33がニュートラル位置にあることを検出し、図示しない制御回路に検出信号を送信する。
【0065】
本実施例では、
図1、
図4、
図5に示すように、変速機ケース2は、ファイナルドリブンギヤ14Bの前方であって、変速機ケース2の前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面3Aに、開口部3aを有している。したがって、開口部3aは、その開口面が変速機ケース2の前端部から後端部に向かって斜め上方に傾斜するように変速機ケース2に形成されている。変速装置31は、開口部3aを覆う第1プレート部材32と、第1プレート部材32の上方かつ変速機本体1Aの前端部側に配置された第2プレート部材39とを有している。
【0066】
第1プレート部材32は、シフトアンドセレクト軸33を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に支持している。また、第1プレート部材32は、シフトアンドセレクト軸33の前端部が後端部よりも下方に位置する状態で変速機ケース2に対して斜めの姿勢となるように支持している。
【0067】
図6、
図7、
図8において、第1プレート部材32は、シフトアンドセレクト軸33を軸方向に移動させるセレクトピストン45を収納するセレクト油圧室35aと、セレクト油圧室35aの油圧を切り替えるセレクトソレノイド65と、シフトアンドセレクト軸33を軸周りに回転させるシフトピストン46を収納する複数のシフト油圧室35b、35cと、シフト油圧室35b、35cの油圧を切り替える複数のシフトソレノイド63、64とを有している。
【0068】
第1プレート部材32には、セレクト油圧室35aとシフト油圧室35b、35cとにオイルを供給する第1オイル供給路71と、セレクト油圧室35aとシフト油圧室35b、35cからオイルを排出する第1オイル回収路72とが形成されている。
【0069】
図1、
図2、
図3、
図4において、変速装置31は、第1プレート部材32の上方かつ、変速機ケース2の前端部側に第2プレート部材39を有している。油圧発生装置34は第2プレート部材39に設けられている。
【0070】
図8において、第2プレート部材39には、第1プレート部材32にオイルを供給する第2オイル供給路73と、第1プレート部材32からオイルを回収する第2オイル回収路74とが形成されている。第1オイル供給路71には、第2プレート部材39からオイルを受け取る第1オイル入口部71inが形成されている。第1オイル回収路72には、第2プレート部材39にオイルを送る第1オイル出口部72outが形成されている。
【0071】
また、第2オイル供給路73には、第1オイル入口部71inと連通し、第1プレート部材32にオイルを送る第2オイル出口部73outが形成されている。第2オイル回収路74に、第1オイル出口部72outと連通し、第1プレート部材32からオイルを受け取る第2オイル入口部74inが形成されている。
【0072】
図1、
図3において、第2プレート部材39は、変速機ケース2の前端部において上下方向に延びる平面状の縦壁部39Aと、縦壁部39Aから直交して水平方向に延びる平面状の水平壁部39Bとを有している。アキュムレータ42は、その長軸方向が上下方向となる姿勢で縦壁部39Aに配置されている。オイルポンプ43は、水平壁部39Bの下面側に配置されている。
【0073】
モータ44は、水平壁部39Bを挟んでオイルポンプ43と対向するように、水平壁部39Bの上面側に配置されている。モータ44の上端部は、アキュムレータ42の上端部より低い位置に配置されている。リザーバタンク41は、アキュムレータ42とモータ44の後方に取り付けられており、モータ44の上方に延びている。
【0074】
リザーバタンク41は、第1プレート部材32と第2プレート部材39とに跨がって配置されている。リザーバタンク41は、第1プレート部材32に固定される後側取付部41hと第2プレート部材39に固定される前側取付部41f、41gとを有している。リザーバタンク41は、第1プレート部材32と第2プレート部材39とに連結されている。
【0075】
図4に示すように、リザーバタンク41の上面視で、前側取付部41fは、アキュムレータ42の中心42cとモータ44の中心44cとの間、かつ、アキュムレータ42の中心42cとモータ44の中心44cとの中間位置よりも前側に配置されている。
【0076】
リザーバタンク41の中心41cは、アキュムレータ42およびモータ44よりも後方に位置している。
【0077】
リザーバタンク41は、アキュムレータ42の中心42cとモータ44の中心44cの間を前後方向に延びる縮小部41aと、縮小部41aの後端部から後方に延び、アキュムレータ42及びモータ44の後方に位置するように広がる拡大部41bとを有している。本実施例では、拡大部41bの高さ寸法を縮小部41aの高さ寸法より大きくしており、拡大部41bの後端部を第1プレート部材32の後端部に連結している。
【0078】
図1、
図3において、第2プレート部材39は第1プレート部材32の真上より右側に偏って配置されている。
【0079】
第1プレート部材32の左端部には、シフトソレノイド64、セレクトソレノイド65およびクラッチソレノイド66が、それらの軸線が第1プレート部材32に直交する方向を向くように配置されている。第1プレート部材32の左端部に配置されたシフトソレノイド64、セレクトソレノイド65およびクラッチソレノイド66は、本発明における第1ソレノイドを構成する。
【0080】
第1プレート部材32の右端部には、シフトソレノイド63およびブレーキソレノイド67が、それらの軸線が左右方向を向くように配置されている。第1プレート部材32の右端部に配置されたシフトソレノイド63およびブレーキソレノイド67は、本発明における第2ソレノイドを構成している。
【0081】
図3、
図4、
図5において、拡大部41bは、第1突出部41dと、第2突出部41eと、を有する。
【0082】
第1突出部41dは、第1プレート部材32と、第2プレート部材39(
図1、
図3参照)およびアキュムレータ42と、に挟まれる位置に突出している。
【0083】
第2突出部41eは、第1プレート部材32と、第2プレート部材39(
図1、
図3参照)およびモータ44と、に挟まれる位置に突出している。
【0084】
図4において、モータ44の中心44cが縮小部41aの右側に位置しており、アキュムレータ42の中心42cが縮小部41aの左側に位置している。
【0085】
ここで、リザーバタンク41の中心41c、アキュムレータ42の中心42cおよびモータ44の中心44cは、これらの重心を意味している。
【0086】
以上のように、本実施例では、変速機ケース2は、ファイナルドリブンギヤ14Bの前方であって、変速機ケース2の前端部の上部に設けられた前下がりの傾斜面3Aに、開口部3aを有し、変速装置31は、開口部3aを覆う第1プレート部材32を有している。
【0087】
第1プレート部材32は、シフトアンドセレクト軸33を、軸方向に移動可能、軸周りに回転可能に、かつ、その前端部が後端部よりも下方に位置する状態で変速機ケース2に対して斜めの姿勢となるように支持している。また、第1プレート部材32は、シフトアンドセレクト軸33を軸方向に移動させるセレクトピストン45を収納するセレクト油圧室35aと、セレクト油圧室35aの油圧を切り替えるセレクトソレノイド65と、シフトアンドセレクト軸33を軸周りに回転させるシフトピストン46を収納する複数のシフト油圧室35b、35cと、シフト油圧室35b、35cの油圧を切り替える複数のシフトソレノイド63、64とを有している。
【0088】
そして、セレクト油圧室35aとシフト油圧室35b、35cとにオイルを供給する第1オイル供給路71と、セレクト油圧室35aとシフト油圧室35b、35cからオイルを排出する第1オイル回収路72と、が第1プレート部材32に形成されている。
【0089】
これにより、シフトアンドセレクト軸33が斜めになるように第1プレート部材32を斜めに配置したことにより、変速機ケース2の前端部位にシフトアンドセレクト軸33を直立した姿勢で配置する場合と比較し、変速機ケース2の前端部位でのシフトアンドセレクト軸33の変速機ケース2からの突出量を抑制でき、自動変速機1を前後方向と上下方向に小型化できる。
【0090】
第1プレート部材32にオイル供給路およびオイル回収路を形成し、これらのオイル通路にソレノイドを直接配置するため、シフトアンドセレクト軸33にも近くなり、オイル通路を短縮できる。これにより、変速装置31の動作性を向上させることができる。
【0091】
また、車両走行時は、ファイナルドリブンギヤ14Bが
図5の矢印R方向に回転することで、ファイナルドリブンギヤ14Bが掻き上げたオイルが矢印Bの経路を通ってシフトアンドセレクト軸33およびその周囲に到達する。これにより、オイルによりシフトアンドセレクト軸33および第1から第4のシフトヨーク51A、51B、51C、51Dが潤滑されるので、自動変速機1の動作性を向上させることができる。
【0092】
この結果、前後方向と上下方向にサイズを小型化でき、変速装置31の動作性を向上させることができる。
【0093】
本実施例では、変速装置31は、第1プレート部材32の上方かつ、変速機ケース2の前端部側に第2プレート部材39を有しており、この第2プレート部材39に、第1プレート部材32にオイルを供給する第2オイル供給路73と、第1プレート部材32からオイルを回収する第2オイル回収路74とが形成されている。
【0094】
また、第1オイル供給路71に、第2プレート部材39からオイルを受け取る第1オイル入口部71inが形成され、第1オイル回収路72に、第2プレート部材39にオイルを送る第1オイル出口部72outが形成されている。また、第2オイル供給路73に、第1オイル入口部71inと連通し、第1プレート部材32にオイルを送る第2オイル出口部73outが形成され、第2オイル回収路74に、第1オイル出口部72outと連通し、第1プレート部材32からオイルを受け取る第2オイル入口部74inが形成されており、油圧発生装置34は第2プレート部材39に設けられている。
【0095】
これにより、仮に第1プレート部材32に油圧発生装置34を平面状に配置すると第1プレート部材32が大型化してしまうが、別途設けた第2プレート部材39に油圧発生装置34を配置したことにより、変速装置31を小型化することができる。
【0096】
また、第1プレート部材32の上方に第2プレート部材39を配置したことにより、変速装置31を小型化でき、かつ、オイル供給路およびオイル回収路を短縮できるので、変速装置31の動作性を向上させることができる。
【0097】
本実施例では、第2プレート部材39は、変速機ケース2の前端部において上下方向に延びる平面状の縦壁部39Aと、縦壁部39Aから直交して水平方向に延びる平面状の水平壁部39Bとを有している。また、アキュムレータ42は、その長軸方向が上下方向となる姿勢で縦壁部39Aに配置され、オイルポンプ43は、水平壁部39Bの下面側に配置され、モータ44は、オイルポンプ43と水平壁部39Bを挟んで対向するように、水平壁部39Bの上面側に配置され、モータ44の上端部が、アキュムレータ42の上端部より低い位置に配置されている。また、リザーバタンク41が、アキュムレータ42とモータ44の後方に取り付けられ、モータ44の上方に延びている。
【0098】
これにより、アキュムレータ42を上下方向の空間が長い変速機ケース2の前端部側に配置したことにより、自動変速機1の高さが抑えられ、自動変速機1を小型化することができる。
【0099】
また、アキュムレータ42およびモータ44の後方にある空間にリザーバタンク41を配置することができ、リザーバタンク41の高さを増大することなくリザーバタンク41の必要な容量を確保することができるため、自動変速機1の高さ方向の大きさを抑制でき、小型化することができる。
【0100】
本実施例では、リザーバタンク41は、第1プレート部材32と第2プレート部材39とに跨がって配置され、第1プレート部材32に固定される後側取付部41hと第2プレート部材39に固定される前側取付部41f、41gとを有しており、リザーバタンク41は、第1プレート部材32と第2プレート部材39とに連結されている。
【0101】
これにより、アキュムレータ42、オイルポンプ43、モータ44が取り付けられていることにより振動しやすい第2プレート部材39を、リザーバタンク41によって補強することができる。このため、第2プレート部材39を剛性向上のために大型化することを回避できるため、自動変速機1を小型化することができる。
【0102】
本実施例では、リザーバタンク41の上面視で、前側取付部41fは、アキュムレータ42の中心42cとモータ44の中心44cとの間、かつ、アキュムレータ42の中心42cとモータ44の中心44cとの中間位置よりも前側に配置されている。また、リザーバタンク41の中心41cは、アキュムレータ42およびモータ44よりも後方に位置している。
【0103】
ここで、本実施例では、第2プレート部材39は、アキュムレータ42、オイルポンプ43およびモータ44が取り付けられているため振動し易い。そこで、リザーバタンク41の前側取付部41fをアキュムレータ42とモータ44との間に配置したことにより、何れか一方に荷重が偏ることを防止できる。また、アキュムレータ42およびモータ44の後方にリザーバタンク41の中心41cを配置したことにより、前後方向においてアキュムレータ42とモータ44との重量バランスをとることができ、第2プレート部材39の振動を低減できる。
【0104】
したがって、第2プレート部材39を剛性向上のために大型化することを回避できるため、自動変速機1を小型化することができる。
【0105】
本実施例では、第2プレート部材39を第1プレート部材32の真上より右側に偏って配置し、第1プレート部材32の左端部に、第1ソレノイドとしてのシフトソレノイド64、セレクトソレノイド65およびクラッチソレノイド66を、その軸線が第1プレート部材32に直交する方向を向くように配置している。また、第1プレート部材32の右端部に、第2ソレノイドとしてのシフトソレノイド63およびブレーキソレノイド67を、その軸線が左右方向を向くように配置した。
【0106】
これにより、第1プレート部材32の左端部において第1プレート部材32と第2プレート部材39との間に隙間を形成でき、この隙間にシフトソレノイド64、セレクトソレノイド65およびクラッチソレノイド66を縦位置で配置できる。このため、シフトソレノイド64、セレクトソレノイド65およびクラッチソレノイド66が第1プレート部材32から横方向に突出することを防止でき、自動変速機1を小型化することができる。
【0107】
また、第1プレート部材32の右端部の第2ソレノイドとしてのシフトソレノイド63およびブレーキソレノイド67を、その軸線が左右方向を向くように配置したことにより、このシフトソレノイド63およびブレーキソレノイド67の上方に隙間を形成でき、この隙間を利用してリザーバタンク41の容積を拡大できる。このため、リザーバタンク41のサイズを自動変速機1の外側に拡大することなくリザーバタンク41の容積を確保でき、自動変速機1を小型化することができる。
【0108】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0109】
1...自動変速機、1A...変速機本体、2...変速機ケース、3A...傾斜面、3a...開口部、14B...ファイナルドリブンギヤ、31...変速装置、32...第1プレート部材、33...シフトアンドセレクト軸、34...油圧発生装置、35a...セレクト油圧室、35b...シフト油圧室、35c...シフト油圧室、39...第2プレート部材、39A...縦壁部、39B...水平壁部、41...リザーバタンク、41c...中心、41d...第1突出部、41e...第2突出部、41f...前側取付部、41h...後側取付部、42...アキュムレータ、43...オイルポンプ、44...モータ、45...セレクトピストン、46...シフトピストン、63...シフトソレノイド(第2ソレノイド)、64...シフトソレノイド(第1ソレノイド)、65...セレクトソレノイド(第1ソレノイド)、66...クラッチソレノイド(第1ソレノイド)、67...ブレーキソレノイド(第2ソレノイド)、71...第1オイル供給路、71in...第1オイル入口部、72...第1オイル回収路、72out...第1オイル出口部、73...第2オイル供給路、73out...第2オイル出口部、74...第2オイル回収路、74in...第2オイル入口部