(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ゴム被覆ヘッド及びゴム被覆コードの製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/154 20190101AFI20220511BHJP
B29C 48/34 20190101ALI20220511BHJP
B29K 19/00 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
B29C48/154
B29C48/34
B29K19:00
(21)【出願番号】P 2018130910
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 光輝
(72)【発明者】
【氏名】下川 和成
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-016254(JP,A)
【文献】特開2011-025445(JP,A)
【文献】特開2012-148530(JP,A)
【文献】特開2005-280458(JP,A)
【文献】特開2001-023445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
B29K 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続供給されてくる少なくとも1本のコードの外面に、未加硫ゴムを被覆するためのゴム被覆ヘッドであって、
ケーシングを含み、
前記ケーシングには、ゴム押出機のゴム押出口に接続されるゴム入口と、前記ゴム入口から第1軸線の方向に延びかつ端部で終端するゴム供給空間と、前記コードが前記ゴム供給空間を前記第1軸線と交差する向きに通過するためのコード案内孔とが設けられており、
前記ゴム供給空間は、前記ゴム入口と前記コード案内孔とを除いて閉じた空間を形成しており、
前記ゴム供給空間は、
前記端部側に向かって、前記第1軸線と直交する向きの断面積が漸減する端部側空間
と、
前記ゴム入口側と前記端部側空間との間で、前記第1軸線と直交する向きの断面積が一定である入口側空間とからなる、
ゴム被覆ヘッド。
【請求項2】
前記入口側空間と前記端部側空間との間に、前記コード案内孔が設けられている、請求項1記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項3】
前記コード案内孔は、前記入口側空間と前記端部側空間との境界部に設けられている、請求項2に記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項4】
連続供給されてくる少なくとも1本のコードの外面に、未加硫ゴムを被覆するためのゴム被覆ヘッドであって、
ケーシングを含み、
前記ケーシングには、ゴム押出機のゴム押出口に接続されるゴム入口と、前記ゴム入口から第1軸線の方向に延びかつ端部で終端するゴム供給空間と、前記コードが前記ゴム供給空間を前記第1軸線と交差する向きに通過するためのコード案内孔とが設けられており、
前記ゴム供給空間は、前記ゴム入口と前記コード案内孔とを除いて閉じた空間を形成しており、
前記ゴム供給空間は、前記端部側に向かって、前記第1軸線と直交する向きの断面積が漸減する端部側空間を含み、
前記端部側空間は、少なくとも第1空間と第2空間とに分岐した部分を含む、
ゴム被覆ヘッド。
【請求項5】
前記第1空間及び前記第2空間は、それぞれ、前記第1軸線を含む断面において、前記端部側に凸となる円弧部を含む、請求項4に記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項6】
前記コード案内孔は、前記コードが前記端部側空間を通過するように形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項7】
連続供給されてくる少なくとも1本のコードの外面に、未加硫ゴムを被覆するためのゴム被覆コードの製造装置であって、
ゴム押出口から前記未加硫ゴムを押し出すためのゴム押出機と、
前記ゴム押出口に接続された請求項1ないし6のいずれかに記載のゴム被覆ヘッドと、
前記ゴム被覆ヘッドの前記コード案内孔に、前記コードを連続して供給するコード供給装置とを含む、
ゴム被覆コードの製造装置。
【請求項8】
前記コードは、タイヤ用のビードワイヤーである請求項7記載のゴム被覆コードの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードの外面に未加硫ゴムを被覆したゴム被覆コードを製造するためのゴム被覆ヘッド、及び、ゴム被覆コードの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ワイヤーに未加硫のゴムを被覆するためのゴム押出機を具えたビード製造装置を提案している。この製造装置は、順次供給されてくるワイヤーを、ゴム押出機の押出ヘッド内に引張り通すことで、ワイヤーにゴムを被覆させたビードワイヤーを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の押出ヘッドには、ヘッド内のゴムを大気中に放出させるためのリリーフ弁が設けられている。放出されたゴムの一部は、例えば、廃棄、又は、ワイヤーの被覆に再利用される。
【0005】
しかしながら、ゴムの廃棄は、ビードワイヤーの製造コストが上昇を招く。一方、ヘッド外部に放出されたゴムは、物性変化や焼けが発生していることがあるため、その再利用は、ビードワイヤーの品質低下を招くおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ゴム被覆コードの製造コストを低減しつつ、ゴム被覆コードの品質を維持しうるゴム被覆ヘッド及びゴム被覆コードの製造装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、連続供給されてくる少なくとも1本のコードの外面に、未加硫ゴムを被覆するためのゴム被覆ヘッドであって、ケーシングを含み、前記ケーシングには、ゴム押出機のゴム押出口に接続されるゴム入口と、前記ゴム入口から第1軸線の方向に延びかつ端部で終端するゴム供給空間と、前記コードが前記ゴム供給空間を前記第1軸線と交差する向きに通過するためのコード案内孔とが設けられており、前記ゴム供給空間は、前記ゴム入口と前記コード案内孔とを除いて閉じた空間を形成しており、前記ゴム供給空間は、前記端部側に向かって、前記第1軸線と直交する向きの断面積が漸減する端部側空間を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記コード案内孔は、前記コードが前記端部側空間を通過するように形成されていてもよい。
【0009】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記端部側空間は、少なくとも第1空間と第2空間とに分岐した部分を含んでもよい。
【0010】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記第1空間及び前記第2空間は、それぞれ、前記第1軸線を含む断面において、前記端部側に凸となる円弧部を含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記ゴム供給空間は、前記ゴム入口側に、前記端部側に向かって、前記第1軸線と直交する向きの断面積が一定である入口側空間を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記入口側空間と前記端部側空間との間に、前記コード案内孔が設けられていてもよい。
【0013】
本発明は、連続供給されてくる少なくとも1本のコードの外面に、未加硫ゴムを被覆するためのゴム被覆コードの製造装置であって、ゴム押出口から前記未加硫ゴムを押し出すためのゴム押出機と、前記ゴム押出口に接続された請求項1ないし6のいずれかに記載のゴム被覆ヘッドと、前記ゴム被覆ヘッドの前記コード案内孔に、前記コードを連続して供給するコード供給装置とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る前記ゴム被覆コードの製造装置において、前記コードは、タイヤ用のビードワイヤーであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴム被覆ヘッドは、ケーシングを含む。前記ケーシングには、ゴム押出機のゴム押出口に接続されるゴム入口と、前記ゴム入口から第1軸線の方向に延びかつ端部で終端するゴム供給空間と、前記コードが前記ゴム供給空間を前記第1軸線と交差する向きに通過するためのコード案内孔とが設けられている。したがって、本発明のゴム被覆ヘッドは、前記コード案内孔に前記コードを通過させることで、前記コードの外面を前記未加硫ゴムで被覆することができる。
【0016】
前記ゴム供給空間は、前記ゴム入口と前記コード案内孔とを除いて閉じた空間を形成している。また、前記ゴム供給空間は、前記端部側に向かって、前記第1軸線と直交する向きの断面積が漸減する端部側空間を含んでいる。したがって、本発明のゴム被覆ヘッドは、前記端部側空間内の前記未加硫ゴムの圧力を、前記端部側空間以外の他の空間内の前記未加硫ゴムの圧力に比べて高くすることができる。これにより、本発明のゴム被覆ヘッドは、前記ゴム押出機から供給される前記未加硫ゴムの流れとは別のゴムの流れを発生させることができるため、前記未加硫ゴムを前記ゴム供給空間内で循環させることができる。この結果、前記未加硫ゴムが前記ゴム供給空間内に滞留することを防ぎ、前記ゴム供給空間内でのゴム焼けや物性変化を防止できる。したがって、本発明のゴム被覆ヘッドは、前記コードの外面に、前記未加硫ゴムを被覆させたゴム被覆コードの品質を維持することができる。さらに、本発明のゴム被覆ヘッドは、前記未加硫ゴムを大気中に放出することなく前記ゴム供給空間内で循環させることができるため、前記ゴム被覆コードの製造コストの上昇を抑えうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のゴム被覆装置の一例を説明する斜視図である。
【
図2】ゴム押出機及びゴム被覆ヘッドの一例を示す斜視図である。
【
図3】シリンダー及びスクリュー軸の一例を示す断面図である。
【
図5】ゴム被覆ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明の他の実施形態のゴム被覆ヘッドの一例を示すの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明のゴム被覆装置の一例を説明する斜視図である。本実施形態のゴム被覆コードの製造装置(以下、単に「製造装置」ということがある。)1は、連続供給されてくる少なくとも1本のコード2の外面に、未加硫ゴム3を被覆して、ゴム被覆コード4を製造するためものである。コード2としては、未加硫ゴム3が被覆されるものであれば、特に限定されない。本実施形態のコード2としては、タイヤ用のビードワイヤーである場合が例示される。
【0019】
本実施形態の製造装置1は、ゴム押出機6と、ゴム被覆ヘッド7と、コード供給装置8とを含んで構成されている。さらに、本実施形態の製造装置1には、コード回収装置11、供給速度測定装置12、及び、制御装置13が含まれている。なお、製造装置1は、このような構成に限定されるわけではなく、例えば、これらとは異なる他の装置が追加されてもよい。
【0020】
図2は、ゴム押出機6及びゴム被覆ヘッド7の一例を示す斜視図である。
図3は、シリンダー15及びスクリュー軸16の一例を示す断面図である。ゴム押出機6は、シリンダー15と、スクリュー軸16(
図3に示す)とを含んで構成される。
【0021】
シリンダー15は、円筒状に形成されている。このシリンダー15は、基部18(
図2及び
図3に示す)に支持されている。
図3に示されるように、シリンダー15の内部には、未加硫ゴム3を流すためのチャンバー17が設けられている。本実施形態のチャンバー17は、シリンダー15の長手方向に沿って水平にのびている。
【0022】
シリンダー15の押出方向D1の上流側には、未加硫ゴム3が連続して投入される投入口19が設けられている。一方、シリンダー15の押出方向D1の下流側には、未加硫ゴム3を押し出される(吐出される)ゴム押出口20が設けられている。このゴム押出口20には、ゴム被覆ヘッド7のゴム入口45が接続される。
【0023】
シリンダー15には、シリンダー15内の未加硫ゴム3の圧力を測定するための圧力センサー21が設けられている。本実施形態の圧力センサー21は、シリンダー15の内部において、ゴム押出口20側に設けられている。未加硫ゴム3の圧力の測定結果は、圧力センサー21に接続されている制御装置13(
図1及び
図4に示す)に送信される。
【0024】
スクリュー軸16は、シリンダー15のチャンバー17の内部に配されており、水平にのびている。本実施形態では、第1駆動装置22によって、スクリュー軸16を水平軸回りに回転させている。
【0025】
第1駆動装置22がスクリュー軸16を回転駆動させることで、投入口19に投入された未加硫ゴム3は、ゴム押出口20に向かって定量的に押し出される。ゴム押出口20に押し出された未加硫ゴム3は、ゴム被覆ヘッド7のゴム入口45を介して、ゴム被覆ヘッド7のゴム供給空間46に供給される。
【0026】
本実施形態の第1駆動装置22は、スクリュー軸16の回転数を調節可能な減速機付きモータとして構成されている。これにより、ゴム押出機6は、未加硫ゴム3の押出速度を調節することができる。本実施形態において、スクリュー軸16の回転数の制御は、第1駆動装置22に接続されている制御装置13(
図1及び
図4に示す)によって行われる。
【0027】
図1に示されるように、コード供給装置8は、ゴム被覆ヘッド7のコード案内孔47(
図3に示す)に、コード2を連続して供給するためのものである。コード供給装置8は、第1リール(巻き枠)23と、第1リール23を回転可能に支持する第1支持部24とを含んで構成されている。コード供給装置8から供給されるコード2は、例えば、ガイドローラ28を介して、ゴム被覆ヘッド7のコード案内孔47(
図3に示す)に案内される。
【0028】
第1リール23には、未加硫ゴム3が被覆される前のコード(ビードワイヤー)2が、予め巻き付けられている。第1リール23の個数は、例えば、未加硫ゴム3を同時に被覆させるコード2の本数に応じて設定される。本実施形態のコード供給装置8には、4個の第1リール23が設けられている。これらの第1リール23は、第1支持部24に取り外し可能に支持される。本実施形態の第1支持部24は、各第1リール23を、水平軸回りに回転可能に支持している。コード2の供給が完了した第1リール23は、第1支持部24から取り外される。そして、コード2が巻き付けられた新たな第1リール23が、第1支持部24に取り付けられる。
【0029】
コード回収装置11は、ゴム被覆コード4を回収するためのものである。コード回収装置11は、ゴム被覆コード4を巻き取るための第2リール25と、第2リール25を回転可能に支持する第2支持部26と、第2リール25を回転駆動させる第2駆動装置27とを含んで構成されている。
【0030】
第2リール25の個数は、例えば、ゴム被覆コード4の本数に応じて設定される。本実施形態では、4個の第2リール25が設けられている。これらの第2リール25は、第2支持部26に取り外し可能に支持される。本実施形態の第2支持部26は、各第2リール25を、水平軸回りに回転可能に支持している。本実施形態の第2駆動装置27は、各第2リール25を水平軸回りに回転させる。
【0031】
第2リール25には、第1リール23のコード2の先端側がそれぞれ固定される。そして、第2駆動装置27が第2リール25を回転させることで、ゴム被覆コード4を巻き取ることができる。このコード回収装置11によるゴム被覆コード4(コード2)の巻き取りによって、コード供給装置8は、第1リール23を回転させながら、ゴム被覆ヘッド7のコード案内孔47に、コード2を連続して供給することができる。ゴム被覆コード4の巻き取りが完了した第2リール25は、第2支持部26から取り外される。そして、ゴム被覆コード4を巻き取る前の新たな第2リール25が、第2支持部26に取り付けられる。
【0032】
本実施形態の第2駆動装置27は、第2リール25の回転数を調節可能な減速機付きモータとして構成されている。これにより、第2リール25の回転によるゴム被覆コード4の巻き取り速度(即ち、コード供給装置8からのコード2の供給速度)を調節することができる。本実施形態において、第2リール25の回転数の制御は、第2駆動装置27に接続されている制御装置13(
図1及び
図4に示す)によって実行される。
【0033】
本実施形態の供給速度測定装置12は、ゴム被覆コード4の巻き取り速度(コード2の供給速度)を測定するためのものである。供給速度測定装置12は、ゴム被覆コード4のガイドローラ29の回転速度を計測可能な速度センサー30として構成されている。
【0034】
本実施形態のガイドローラ29は、ゴム被覆ヘッド7によって未加硫ゴム3が被覆されたゴム被覆コード4を、コード回収装置11に案内するためのものである。ガイドローラ29の個数は、例えば、ゴム被覆コード4の本数に応じて設定される。本実施形態では、4個のガイドローラ29が設けられている。本実施形態では、各ガイドローラ29に、速度センサー30がそれぞれ設けられている。
【0035】
ガイドローラ29は、ゴム被覆コード4(コード2)の供給速度に対応する角速度で回転する。供給速度測定装置12(速度センサー30)は、ガイドローラ29の回転速度を計測することで、ゴム被覆コード4(コード2)の供給速度を測定することができる。測定結果は、速度センサー30に接続されている制御装置13(
図1及び
図4に示す)に送信される。
【0036】
図4は、制御装置13の一例を示す概念図である。制御装置13は、CPU(中央演算装置)からなる演算部31と、制御手順が予め記憶されている記憶部32と、記憶部32から制御手順を読み込む作業用メモリ33とを含んで構成されている。さらに、制御装置13には、処理結果等を表示するための表示部や、作業者が操作するための操作部が設けられてもよい。
【0037】
演算部31には、ゴム押出機6の圧力センサー21、及び、供給速度測定装置12の速度センサー30が接続されている。これにより、制御装置13は、
図3に示したシリンダー15内の未加硫ゴム3のゴム圧力、及び、
図1に示したゴム被覆コード4(コード2)の供給速度が入力される。さらに、演算部31には、ゴム押出機6の第1駆動装置22、及び、コード回収装置11の第2駆動装置27が接続されている。これにより、制御装置13は、
図3に示した未加硫ゴム3の押出速度、及び、
図1に示したゴム被覆コード4の巻き取り速度(コード2の供給速度)を制御することができる。
【0038】
ゴム被覆コード4の巻き取り速度(コード2の供給速度)が大きいほど、短時間に未加硫ゴム3がコード2に被覆されるため、ゴム押出機6(ゴム被覆ヘッド7)内の未加硫ゴム3の圧力が短時間に低下する。したがって、ゴム被覆コード4の巻き取り速度と、未加硫ゴム3の圧力とを適切に制御する必要がある。本実施形態の制御装置13は、ゴム被覆コード4の巻き取り速度から、ゴム押出機6(ゴム被覆ヘッド7)内の未加硫ゴム3の圧力を予測して、未加硫ゴム3の押出速度を制御している。これにより、製造装置1は、未加硫ゴム3の圧力変動の予測結果に基づいて、未加硫ゴム3の圧力が一定に維持されるように、未加硫ゴム3の押出速度を調整することができる。したがって、製造装置1は、急な圧力変動に伴う未加硫ゴム3の被覆不良や、未加硫ゴム3の圧力の増大に伴うゴム焼け等を効果的に防ぐことができる。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、ゴム被覆ヘッド7は、連続供給されてくる少なくとも1本のコード2の外面に、未加硫ゴム3を被覆するためのものである。ゴム被覆ヘッド7は、ケーシング36を含んで構成されている。
図5は、ゴム被覆ヘッド7の一例を示す分解斜視図である。
図6は、
図2のA-A断面図である。
図7は、
図2のB-B断面図である。なお、
図6及び
図7は、ゴム被覆ヘッド7のみを示している。
【0040】
本実施形態のケーシング36は、第1部分37と、第2部分38とを含んで構成されている。第1部分37と第2部分38とが一体に固定されることにより、
図2に示すケーシング36が形成される。本実施形態のケーシング36は、正面視及び側面視において、矩形状に形成されている。
【0041】
本実施形態のケーシング36には、一対の凹部41、41と、一対の貫通孔42、42とが設けられている。
【0042】
図7に示されるように、一対の凹部41、41は、ゴム入口45から第1軸線L1と直交する方向(ケーシング36の幅方向)において、ケーシング36の中央部の両側で上下に貫通している。本実施形態の一対の凹部41、41は、第1部分37と第2部分38とに跨って設けられている。さらに、一対の凹部41、41は、第1軸線L1の方向(ケーシング36の奥行方向)において、コード案内孔47よりも大きく形成されている。このような凹部41、41は、ゴム被覆コード4の通過によってコード案内孔47から僅かに漏れ出た未加硫ゴム3(
図3に示す)を収容することができるため、コード案内孔47が未加硫ゴム3で詰まるのを防ぐことができる。
【0043】
図5及び
図7に示されるように、一対の貫通孔42、42は、ケーシング36の第1軸線L1の方向(ケーシング36の奥行方向)にのびている。本実施形態の一対の貫通孔42、42は、凹部41、41を介して貫通している。これらの貫通孔42、42には、例えば、ボルト等の固着具43(
図2に示す)が挿入される。この固着具43が、ゴム押出機6のゴム押出口20(
図3に示す)側に締結されることにより、第1部分37と第2部分38とを一体に固定しつつ、ゴム被覆ヘッド7を、ゴム押出機6のゴム押出口20に接続することができる。
【0044】
図5、
図6及び
図7に示されるように、ケーシング36は、ゴム入口45と、ゴム供給空間46と、コード案内孔47とを含んで構成される。
図7に示されるように、本実施形態のゴム入口45、ゴム供給空間46、及び、コード案内孔47は、第1軸線L1と直交する方向において、ケーシング36の中央部(本実施形態では、一対の凹部41、41間)に設けられている。
【0045】
ゴム入口45は、ケーシング36において、押出方向D1(
図3に示す)の上流側(第1軸線L1の方向の一方側)で開口している。
図3に示されるように、ゴム入口45は、ゴム押出機6のゴム押出口20に接続される。ゴム入口45の形状は、例えば、ゴム押出機6のゴム押出口20の形状に基づいて形成される。
図5に示されるように、本実施形態のゴム入口45は、正面視において、上下方向に縦長の楕円形状に形成されている。
【0046】
図6及び
図7に示されるように、ゴム供給空間46は、ゴム入口45から第1軸線L1の方向に延び、かつ、端部48で終端している。本実施形態のゴム供給空間46は、ゴム入口45とコード案内孔47とを除いて閉じた空間を形成している。
【0047】
本実施形態のゴム供給空間46は、入口側空間51と、端部側空間52とを含んで構成されている。入口側空間51と、端部側空間52とは、第1軸線L1の方向で連通している。本実施形態の入口側空間51は、ケーシング36の第1部分37、及び、第2部分38のゴム入口45側に形成されている。一方、端部側空間52は、ケーシング36の第2部分38の端部48側に形成されている。このように、ゴム被覆ヘッド7は、ケーシング36が第1部分37及び第2部分38に分解されることにより、ゴム供給空間46を入口側空間51及び端部側空間52に分解できるため、加工性及びメンテナンス性を向上しうる。
【0048】
図8は、ゴム供給空間46を示す斜視図である。
図6~
図8に示されるように、入口側空間51は、ゴム入口45と端部側空間52との間を、第1軸線L1の方向に延びている。本実施形態の入口側空間51は、ゴム入口45側から端部48側に向かって、第1軸線L1と直交する向きの断面積S1(
図8に示す)が一定に設定されている。これにより、入口側空間51は、ゴム押出機6から押し出された未加硫ゴム3(
図3に示す)を、ゴム入口45側から端部48(端部側空間52)側に向かって、円滑に案内することができる。
【0049】
端部側空間52は、入口側空間51と、端部48との間を、第1軸線L1の方向にのびている。本実施形態の端部側空間52は、第1空間53と第2空間54とに分岐した部分を含んで構成されている。なお、端部側空間52は、第1空間53と第2空間54との2つの分岐した部分を含んで構成されているが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、端部側空間52は、3つ以上に分岐した部分を含んでもよい。
【0050】
本実施形態の端部側空間52は、第1空間53及び第2空間54が実質的に同一形状に形成されている。なお、実質的に同一とは、製造時の誤差を許容するものである。また、本実施形態の端部側空間52は、第1空間53及び第2空間54が上下に並べて形成されているが、特に限定されるわけではなく、例えば、入口側空間51の形状に合わせて、左右に並べて配置されてもよい。
【0051】
端部側空間52は、第1空間53及び第2空間54について、入口側空間51から端部48側に向かって、第1軸線L1と直交する向きの断面積S2(
図8に示す)が漸減している。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、端部側空間52内の未加硫ゴム3(
図3に示す)の圧力を、端部側空間52以外の空間(本実施形態では、入口側空間51)内の未加硫ゴム3の圧力に比べて高くすることができる。
【0052】
一般に、流体(未加硫ゴム3を含む)は、圧力が高い部分から低い部分へと流れる性質を有している。したがって、ゴム被覆ヘッド7は、ゴム押出機6から供給される未加硫ゴム3の流れF1(
図6及び
図7に示す)とは別に、端部側空間52から入口側空間51に向くゴムの流れF2(
図6及び
図7に示す)を発生させることができる。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3を、ゴム供給空間46内で循環させることができる。
【0053】
さらに、流体(未加硫ゴム3を含む)は、圧力が高い部分の流速が、圧力が低い部分の流速に比べて大きくなる性質を有している。したがって、ゴム被覆ヘッド7は、端部側空間52での未加硫ゴム3の流速を相対的に大きくできるため、未加硫ゴム3をゴム供給空間46内で効率良く循環させることができる。
【0054】
このように、ゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3をゴム供給空間46内で循環させることができるため、未加硫ゴム3がゴム供給空間46内に滞留することを防ぎ、ゴム供給空間46内でのゴム焼けや物性変化を防止できる。したがって、ゴム被覆ヘッド7(ゴム被覆ヘッド7を用いた製造装置1)は、コード2の外面に、未加硫ゴム3を被覆させたゴム被覆コード4の品質を維持することができる。さらに、本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3を大気中に放出することなく、ゴム供給空間46内で循環させることができる。このため、ゴム被覆ヘッド7(ゴム被覆ヘッド7を用いた製造装置1)は、ゴム被覆コード4(
図1に示す)の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0055】
図6に示されるように、本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、少なくとも第1空間53と第2空間54とに分岐した部分において、未加硫ゴム3を独立して循環させることができる。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3がゴム供給空間46内に滞留することを効果的に防ぐことができるため、ゴム供給空間46内でのゴム焼けや物性変化を最小限に抑えることができる。
【0056】
本実施形態の第1空間53及び第2空間54は、それぞれ、
図6及び
図7に示した第1軸線L1を含む断面において、端部48側に凸となる円弧部56を含むのが望ましい。一般に、流体(未加硫ゴム3を含む)は、物体(壁)の形状に沿って流れる性質を有している。したがって、第1空間53及び第2空間54は、未加硫ゴム3を円弧部56に沿って円滑に流すことができるため、未加硫ゴム3の滞留を防ぐことができる。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3のゴム焼けや物性変化を効果的に防止できる。このような作用を効果的に発揮させるために、円弧部56の曲率半径は、8mm~12mmが望ましい。本実施形態では、
図6に示した第1軸線L1を含む垂直断面、及び、
図7に示した第1軸線L1を含む水平断面の双方に、円弧部56が形成されているが、いずれか一方のみに円弧部56が形成されるものでもよい。
【0057】
図5及び
図7に示されるように、コード案内孔47は、コード供給装置8(
図1に示す)から供給されたコード2が、ゴム供給空間46を、第1軸線L1と交差する向きに通過するためのものである。本実施形態のコード案内孔47は、第1軸線L1と直交する向きにコード2を通過させている。
【0058】
本実施形態のコード案内孔47は、コード流れ方向D2において、ゴム供給空間46に対して一方側で開口する第1案内孔61と、ゴム供給空間46に対して他方側で開口する第2案内孔62とを含んで構成される。第1案内孔61と第2案内孔62とは、コード流れ方向D2に沿って、コード2を連通可能に配置されている。
【0059】
第1案内孔61は、コード供給装置8(
図1に示す)から供給されたコード2を、ゴム供給空間46の中に案内するためのものである。
図5及び
図6に示されるように、第1案内孔61は、側面視において円形状に形成されている。第1案内孔61の個数は、例えば、未加硫ゴム3を同時に被覆させるコード2の本数に応じて設定される。本実施形態では、4個の第1案内孔61が設けられている。
【0060】
本実施形態の第1案内孔61は、上下方向に並べて配置されている。なお、第1案内孔61は、互いに位置ずれして配置されてもよい。
図5及び
図7に示されるように、本実施形態の第1案内孔61は、コード流れ方向D2の一方側(上流側)に設けられた凹部41及び孔部65を介して、ケーシング36の外部に連通している。孔部65は、各第1案内孔61にコード2を一括して案内できるように、上下方向にのびている。本実施形態の孔部65は、側面視おいて、縦長の楕円状に形成されている。なお、孔部65は、このような形状に限定されるわけではなく、第1案内孔61の配置に応じて形成されるのが望ましい。
【0061】
第2案内孔62は、ゴム供給空間46で未加硫ゴムが被覆されたゴム被覆コード4を排出するためのものである。第2案内孔62は、側面視において円形状に形成されている。ゴム被覆コード4の外径は、未加硫ゴム3が被覆される前のコード2の外径よりも大きくなる。このため、第2案内孔62の第2内径R4(
図5に示す)は、第1案内孔61の第1内径R3(
図5に示す)よりも大きく設定されている。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、第2案内孔62にゴム被覆コード4を通過させる際に、ゴム被覆コード4の未加硫ゴム3が第2案内孔62に付着するのを防ぐことができる。第2案内孔62の個数は、例えば、未加硫ゴム3を同時に被覆させるコード2の本数に応じて設定される。本実施形態では、4個の第2案内孔62が設けられている。
【0062】
本実施形態の第2案内孔62は、第1案内孔61と同様に、上下方向に並べて配置されている。なお、第2案内孔62は、互いに位置ずれして配置されてもよい。本実施形態の第2案内孔62は、コード流れ方向D2の他方側(下流側)に設けられた凹部41及び孔部65を介して、ケーシング36の外部に連通している。孔部65は、各第2案内孔62から排出されたゴム被覆コード4を一括して排出できるように、上下方向にのびている。本実施形態の孔部65は、側面視おいて、縦長の楕円状に形成されている。なお、孔部65は、このような形状に限定されるわけではなく、第2案内孔62の配置に応じて形成されるのが望ましい。
【0063】
本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、凹部41、41及び孔部65、65を介して、コード案内孔47にコード2を通過させることで、コード2の外面を未加硫ゴム3で被覆することができる。本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3が滞留することによるゴム供給空間46内でのゴム焼けや物性変化を防止できるため、高品質な未加硫ゴム3をコード2に被覆させることができる。未加硫ゴム3が被覆されたゴム被覆コード4は、第2案内孔62から排出される。
【0064】
コード2に未加硫ゴム3をより確実に被覆させるためには、ゴム供給空間46において、未加硫ゴム3の流速が早い部分に、コード2を通過させるのが望ましい。本実施形態では、端部側空間52での未加硫ゴム3の流速が相対的に大きくなる。このため、コード案内孔47は、コード2の少なくとも一部が、端部側空間52を通過するように形成されるのが望ましい。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、コード2に未加硫ゴム3を確実に被覆させることができる。
【0065】
図6に示されるように、未加硫ゴム3の流速は、入口側空間51と端部側空間52との間の境界部63が最も大きくなる。このため、コード案内孔47は、境界部63に設けられるのが望ましい。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、コード2に未加硫ゴム3を確実に被覆することができる。
【0066】
図5及び
図6に示されるように、本実施形態のコード案内孔47は、ケーシング36の第1部分37と第2部分38とに跨って形成されている。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、コード案内孔47を第1部分37及び第2部分38に分解して形成できるため、コード案内孔47の加工性を高めることができる。
【0067】
これまでの実施形態では、
図6に示されるように、端部側空間52が、少なくとも第1空間53と第2空間54とに分岐した部分を含む態様について説明したが、このような態様に限定されない。
図9は、本発明の他の実施形態のゴム被覆ヘッド7の断面図である。
図9に示されるように、端部側空間52には、分岐した部分が含まれなくてもよい。このような端部側空間52では、分岐した部分を含まなくても、第1軸線L1と直交する向きの断面積(図示省略)が端部48側に向かって漸減しているため、これまでの実施形態と同様に、未加硫ゴム3をゴム供給空間46内で循環させることができる。したがって、この実施形態のゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3がゴム供給空間46内に滞留することを防ぎ、ゴム供給空間46内でのゴム焼けや物性変化を防止できる。
【0068】
これまでの実施形態のゴム供給空間46は、入口側空間51と、端部側空間52とが含まれる態様が例示されたが、このような態様に限定されない。ゴム供給空間46は、ゴム入口45側から端部48側に向かって、第1軸線L1と直交する向きの断面積Sが漸減する端部側空間52のみで構成されてもよい。このようなゴム供給空間46は、端部48側の未加硫ゴム3の圧力を、ゴム入口45側の未加硫ゴム3の圧力に比べて高くすることができるため、これまでの実施形態と同様に、未加硫ゴム3をゴム供給空間46内で循環させることができる。したがって、この実施形態のゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3がゴム供給空間46内に滞留することを防ぎ、ゴム供給空間46内でのゴム焼けや物性変化を防止できる。
【0069】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0070】
図2及び
図5~
図7に示した基本構造を有するゴム被覆ヘッド、及び、
図1に示したゴム被覆装置が試作された(実施例)。そして、実施例のゴム被覆ヘッドにコードを連続供給して、コードの外面に未加硫ゴムを被覆したゴム被覆コードが製造された。
【0071】
比較のために、ヘッド内のゴムを大気中に放出させるためのリリーフ弁を有する上記特許文献1の押出しヘッド、及び、ゴム被覆装置が試作された(比較例)。そして、比較例のゴム被覆ヘッドにコードを連続供給して、コードの外面に未加硫ゴムを被覆したゴム被覆コードが製造された。
【0072】
実施例及び比較例について、ゴム被覆コードの品質及び製造コストが比較された。共通仕様は次のとおりである。
ゴム被覆コード:ビードワイヤー
ゴム被覆ヘッドに同時に供給されるコードの本数:3本
【0073】
テストの結果、実施例は、比較例に比べて、ゴム供給空間内でのゴム焼けや物性変化を防止でき、ゴム付き不良によるゴム被覆コードの廃棄を比較例に対して20%低減することができた。さらに、実施例は、未加硫ゴムを大気中に放出することなくゴム供給空間内で循環させることができるため、製造コストを比較例に比べて約20%低減することができた。したがって、実施例は、比較例に比べて、ゴム被覆コードの製造コストを低減しつつ、ゴム被覆コードの品質を維持することができた。
【符号の説明】
【0074】
2 コード
7 ゴム被覆ヘッド
36 ケーシング
45 ゴム入口
46 ゴム供給空間
47 コード案内孔
52 端部側空間