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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】水性再剥離粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20220511BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220511BHJP
   C09J 11/06 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/38
C09J11/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018132906
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012017
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大島 由照
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163127(JP,A)
【文献】特開2004-107545(JP,A)
【文献】特開2014-214219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー粒子と、粒子型硬化剤とを含有する水性再剥離粘着剤であって、前記アクリル系ポリマー粒子は、モノマー混合物および粘着付与樹脂の乳化重合物であり、前記粒子型硬化剤の平均粒子径は1~100nmであり、前記モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマーを含有し、多官能モノマーを含有しない、水性再剥離粘着剤。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は100~500nmである、請求項1記載の水性再剥離粘着剤。
【請求項3】
さらに、アミノ基含有化合物を有する、請求項1または2記載の水性再剥離粘着剤。
【請求項4】
前記アミノ基含有化合物が、第2級アミンまたは第3級アミンである、請求項3記載の水性再剥離粘着剤。
【請求項5】
アミノ基含有化合物のアミノ基とアクリル系ポリマー粒子のカルボキシル基のモル比が0.1/1~5/1である、請求項3または4記載の水性再剥離粘着剤。
【請求項6】
一液型で用いられる請求項1~いずれか1項記載の水性再剥離粘着剤。
【請求項7】
40℃で90日間経過後の粘度変化率が0%以上10%未満である、請求項1~いずれか1項記載の水性再剥離粘着剤。
【請求項8】
基材、および請求項1~いずれか1項記載の水性再剥離粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性再剥離粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤は、マスキングテープ、両面テープ、表面保護フィルム、包装用テープ等、様々な用途で用いられている。そして、環境対策、省資源、安全性などの観点から有機溶剤を使用しない水性粘着剤が盛んに使用されている。このような水性粘着剤は、低コストかつ諸物性を満足し易いアクリル系粘着剤が、主にラベル用途で用いられている。
【0003】
このラベル用途の課題は、金属板やプラスチック板等の被着体へ貼り合わせた直後と比較して、貼り合わせ経過後の粘着力が上昇してしまうことで再剥離性が低下することが挙げられる。再剥離性が低下することで、被着体からの引き剥がしが困難となる問題が発生する。
【0004】
そこで特許文献1では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマー、多官能性モノマーとを含むモノマー混合物を、アニオン型反応性乳化剤の存在下に、乳化重合させて得たエマルジョンと、オキサゾリン系架橋剤とを含む再剥離型水性粘着剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマーとのモノマー混合物を反応性乳化剤および連鎖移動剤の存在下、乳化重合してなるポリマーエマルションを含む、水性粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-256789号公報
【文献】特許2006-045410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の水性粘着剤は、アクリルエマルジョン自体の凝集力が高いため、基材に対する密着性が十分ではなく、また、特許文献2の水性粘着剤は、乳化重合時に連鎖移動剤を用いていることからポリマーエマルション自体の凝集力が低いため、被着体に貼り合わせた後の粘着力が上昇してしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、硬化剤混合後の粘着剤の保存安定性が良好であり、かつ貼り合せ経時後の粘着力上昇を抑制し、再剥離性が良好な粘着シートが得られる水性再剥離粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水性再剥離粘着剤は、アクリル系ポリマー粒子と、粒子型硬化剤とを含有し、前記アクリル系ポリマー粒子は、モノマー混合物および粘着付与樹脂の乳化重合物であり、前記モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマーを含有し、多官能モノマーを含有しない水性再剥離粘着剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアクリル系ポリマー粒子、および粒子型硬化剤を使用した粘着シートは、凝集力が非常に高い。一般に、硬化剤は水に不溶の疎水性原料から構成されているが、水性粘着剤に用いるためには、硬化剤に親水性の原料を添加する必要がある。これにより、親水性の原料の比率が高い場合は水溶化できるため、粘着剤との硬化反応を均一に進行する一方、粘着剤との反応に寄与しない親水性原料の比率が増加してしまい、被着体に貼り合わせた後の粘着力が上昇しやすく、糊残りが発生するなど再剥離性も低下してしまう。一方で、親水性の原料の比率が低い場合は、硬化剤が、粒子型硬化剤となり、粘着剤との硬化反応は均一に進行しにくい。
このように、本発明の再剥離粘着剤は、粘着剤との反応に寄与しない親水性の原料である粒子型硬化剤の含有比率が低いため、貼り合わせ後の粘着力上昇を抑制でき、良好な再剥離性を得ることができた。さらに、硬化剤混合後の粘着剤の粘度変化を抑制でき、一液型でも安定に使用可能な粘着剤を得ることができた。
【0011】
本発明により、硬化剤混合後の粘着剤の保存安定性が良好でありながら、被着体に貼り合わせ後の粘着力上昇を抑制し、再剥離性が良好な粘着シートが得られる水性再剥離粘着剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を詳細に説明する前に用語を定義する。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルを含む。モノマーは、エチレン性不飽和二重結合含有単量体である。被着体は、粘着シートを貼付する相手方である。密着性は、粘着剤層の基材に対する密着性をいう。
【0013】
《水性再剥離粘着剤》
本発明の水性再剥離粘着剤は、アクリル系ポリマー粒子と、粒子型硬化剤とを含有し、前記アクリル系ポリマー粒子は、モノマー混合物および粘着付与樹脂の乳化重合物であり、前記モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマーを含有し、多官能モノマーを含有しない。
モノマー混合物と粘着付与樹脂を含有する混合物の乳化重合物であるアクリル系ポリマー粒子に、粒子型硬化剤と、必要に応じてアミノ基含有化合物、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、増粘剤等のその他添加剤を加えることで、水性再剥離粘着剤を得ることができる。
アクリル系ポリマー粒子と粒子型硬化剤を含む乳化重合物に、必要に応じてアミノ基含有化合物、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、増粘剤等のその他添加剤を加えることで、水性再剥離粘着剤を得ることができる。
【0014】
また、本発明の水性再剥離粘着剤は、硬化剤混合後の粘着剤の保存安定性が良好であるため、一液型水性再剥離粘着剤として好適に用いることができる。
水性再剥離粘着剤の40℃で90日間経過後の粘度変化率は、0%以上10%未満であることが好ましく、より好ましくは、0%以上5%未満である。粘度変化率が0%以上10%未満であることで保存安定性が良好となり、二液型粘着剤のように硬化剤混合後の粘着剤をその日に使い切る工程が不要となる。さらに、二液型粘着剤で通常行なっている、粘着剤の塗工前に硬化剤を混合する配合工程が不要となり、塗工時の作業性が良好となる。

粘度変化率(%)=[(40℃90日間後の粘度)/(初期粘度)-1]×100の絶対値
【0015】
<アクリル系ポリマー粒子>
本発明におけるアクリル系ポリマー粒子は、少なくとも、アクリル系モノマーの混合物および粘着付与樹脂を乳化重合して得ることができる乳化重合物である。アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマーを含有し、多官能モノマーを含有しないモノマー混合物を用いる。
このモノマー混合物を、粘着付与樹脂の存在下で乳化重合することで、本発明のアクリル系ポリマー粒子が得られる。
また、アクリル系ポリマー粒子は、乳化重合後に、アミノ基含有化合物を加えることが好ましい。アミノ基含有化合物を加えることで、硬化剤混合後の粘着剤の保存安定性がより良好で、貼り合せ経時後の粘着力上昇抑制、再剥離性がより良好な粘着シートが得られるために好ましい。
乳化重合する際において、その他に消泡剤、レベリング剤、溶剤、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の各種樹脂を用いてもよい。
【0016】
[モノマー混合物]
本発明のモノマー混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマーを含有し、多官能モノマーを含有しない。
多官能モノマーは、重合可能な二重結合を2個以上有しているため重合時に架橋反応を起こす。そのため得られるアクリル系ポリマー粒子の架橋度が高くなり、得られる粘着シートの金属板等の被着体に貼り合わせ後の粘着力上昇を抑制できる一方、基材に対する密着性は低下する。そのため、粘着シートを金属板等の被着体に貼り合わせ後、被着体から引きはがした際に糊残りが発生する問題点が生じるためである。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えばエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独または2種類以上併用できる
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー混合物100重量%中に、50~99.5重量%含むことが好ましく、70~99重量%がより好ましい。50~99.5重量%含むことで粘着剤層を形成した際の粘着力、タックおよび再剥離性を得やすくなる。
【0019】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびマレイン酸ブチル等が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、単独または2種類以上併用できる。なお、カルボキシル基含有モノマーは酸無水物基含有モノマーを包含する。
【0020】
カルボキシル基含有モノマーは、モノマー混合物中に0.5~5重量%含むことが好ましく、0.8~2重量%がより好ましい。0.5~5重量%含むことで粘着力および再剥離性がより向上する。
【0021】
モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマー以外の「その他モノマー」を使用できる。例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、およびメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレートなどの公知の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。その他モノマーは、単独または2種類以上併用できる。
【0022】
本発明のアクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は、100~500nmが好ましく、150~450nmがより好ましい。平均粒子径は100~500nmにすることで、アクリル系ポリマー粒子の安定性を向上できる。
ここで平均粒子径とは、動的光散乱型装置「Nanоtrack Wave(マイクロトラック・ベル(株)社製)」で測定した際の、累積50%粒子径の体積平均径である。
【0023】
[粘着付与樹脂]
粘着付与樹脂は、アクリル樹脂に添加することで粘着性を発現させたり、粘着力性能を向上できる樹脂である。さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマーを含有するモノマー混合物に添加して乳化重合を行なうと連鎖移動反応を引き起こすことができる。
【0024】
本発明では、所望の溶剤不溶分、および重量平均分子量を得るために、乳化重合の際、粘着付与樹脂を用いる。一般に、乳化重合で得られるアクリル系ポリマー粒子は分子量が非常に大きく、テトラヒドロフランのような溶解力のある溶剤を用いても難溶であるが、粘着付与樹脂を用いることで、溶剤に可溶な成分を、増加させることができる。
【0025】
このように、粘着付与樹脂は、連鎖移動効果が大きく、アクリル系ポリマー粒子の分子量調節が容易になるだけでなく、粘着剤層を形成した際の密着性を向上できる。
分子量を調節するために、チオール基や水酸基を有する化合物のような連鎖移動剤を用いる場合では、アクリル系ポリマー粒子の凝集力が低くなり、被着体に貼り合わせた後の粘着力が上昇してしまう場合があるが、粘着付与樹脂を用いた場合には、連鎖移動効果が穏やかに進行するため、アクリル系ポリマー粒子の凝集力を低下させることなく、再剥離性に優れた粘着剤とすることができる。
【0026】
粘着付与樹脂は、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、芳香族系石油樹脂、および脂肪族系石油樹脂等からなる群より選択される1種以上を使用することが好ましい。さらに、基材への密着性の観点から、粘着付与樹脂の軟化点は80℃以下が好ましい。ロジン系樹脂は、例えば天然ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、不均化ロジン、および不均化ロジンエステル等が挙げられる。テルペン系樹脂は、例えばα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、および水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。芳香族系石油樹脂は、例えばスチレンオリゴマー、およびα-メチルスチレン・スチレン共重合体等が挙げられる。
粘着付与樹脂は、単独または2種類以上併用できる
【0027】
粘着付与樹脂は、モノマー混合物100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~8重量部がより好ましい。0.1重量部以上用いることで、粘着剤層を形成した際の密着性が良好になる。10重量部以下用いることで、アクリル系ポリマー粒子を高分子量に設計でき、粘着剤層を形成した際の凝集力がより増大する。
【0028】
本発明でアクリル系ポリマー粒子は、上記モノマー混合物と粘着付与樹脂を乳化重合して得る。乳化重合で使用する乳化剤は、アニオン性乳化剤およびノニオン性乳化剤から適宜選択して使用する。また乳化剤は、ラジカル重合性の官能基を有する反応性乳化剤であってもよいし、ラジカル重合性の官能基を有さない非反応性乳化剤であってもよく、両者を併用することもできる。耐水白化性の観点から、反応性乳化剤を使用するのがより好ましい。
【0029】
本発明において乳化剤の中で、反応性乳化剤は、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有するアニオン性の乳化剤である。例えば、スルホコハク酸エステル系乳化剤、アルキルフェノールエーテル系乳化剤等が挙げられる。
【0030】
非反応性アニオン性乳化剤は、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0031】
非反応性ノニオン性乳化剤はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシ多環フェニルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
乳化剤は、単独または2種類以上使用できる。
【0032】
前記乳化剤のなかでも、良好な重合安定性が得られるため反応性または非反応性のアニオン性乳化剤を使用するのが好ましく、特に反応性のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類がより好ましく、炭素数が9~14のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩がさらに好ましい。乳化剤はモノマー混合物100重量部に対して0.5~3重量部使用するのが好ましい。
【0033】
乳化重合に使用する重合開始剤は、水溶性重合開始剤を使用することが好ましい。
水溶性重合開始剤は、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕-プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕等が挙げられる。これらの中でも過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
また重合開始剤は、レドックス系重合開始剤(酸化剤と還元剤を併用する)として使用できる。酸化剤は、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p-メタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。また、還元剤は、例えば亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が挙げられる。これらの中でも重合反応性に優れるため、酸化剤:過硫酸カリウムまたは過硫酸ナトリウムと、還元剤:亜硫酸ナトリウムまたは酸性亜硫酸ナトリウムとを組み合わせて使用することが好ましい。
【0035】
重合開始剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.01~0.5重量部を使用することが好ましく、0.02~0.3重量部がより好ましい。0.01~0.5重量部であることで重合反応性および水性再剥離粘着剤の機械安定性をより向上できる。
【0036】
本発明で乳化重合は、例えばモノマーを乳化して乳化物を形成してから合成することが好ましい(プレ乳化法)。乳化重合の方法は、前記乳化物の全量を予め反応容器中に仕込んでから反応する方法、または前記乳化物の一部を反応容器中に仕込んで、前記乳化物の残分を数回に分けて添加または連続滴下する方法等公知の方法を使用できる。
【0037】
また、アクリル系ポリマー粒子は、そのゲル分率を30~70%に調整することが好ましい。ゲル分率を前記範囲にすることで密着性、粘着力および再剥離性を高いレベルで得ることができる
【0038】
なお、ゲル分率の算出は以下の方法で行なうことができる。アクリル系共ポリマー粒子をポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)上に塗工し、乾燥後の厚さが約20g/mになるように乾燥被膜を形成する(塗工物という)。得られた塗工物を200メッシュのステンレス網で包み込み、次いでそれを酢酸エチルに投入し23℃で72時間浸漬した後、乾燥して酢酸エチルを除去する。そして浸漬前の乾燥被膜の重量に対する、浸漬後の乾燥被膜の重量の割合(重量%)を求めたものを酢酸エチルに対するゲル分率という。ゲル分率は下記数式に従い求める。
数式1 ゲル分率(%)=(浸漬前の乾燥被膜重量-PETフィルムの重量)/(浸漬後の乾燥被膜重量-PETフィルムの重量)×100
【0039】
<粒子型硬化剤>
本発明の水性再剥離粘着剤は、粒子型硬化剤を含む。粒子型硬化剤とは、形態が水分散型のエマルションであり、硬化剤の外観が不透明で硬化剤が平均粒子径を有するものである。
粒子型硬化剤を用いることにより、粒子型硬化剤の親水基部分が疎水性の硬化剤を保護することで乳化重合物中での粒子型硬化剤とアクリル系ポリマーのカルボキシル基の反応を抑制することができる。そのため、本発明の粘着剤は、エマルションを塗工、乾燥することで、粒子型硬化剤の粒子構造が崩壊して速やかに反応が進行する。粒子型硬化剤は架橋反応に関与しない親水性成分が少ないため架橋密度が高くなり、得られる粘着シートの経時後の粘着力上昇が低い、優れた再剥離粘着剤が得られる。
【0040】
粒子型硬化剤の平均粒子径は、1~100nmが好ましく、1~50nmがより好ましい。粒子型硬化剤の平均粒子径を100nm以下にすることで、粒子型硬化剤とアクリル系ポリマーのカルボキシル基の硬化反応がより進行しやすく、再剥離性が向上する。粒子型硬化剤の平均粒子径の測定方法は、アクリル系ポリマーと同じである。
【0041】
粒子型硬化剤は、例えばアジリジン系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン型等が挙げられる。これらの中でもポットライフが長く、基材との密着性が向上する面からカルボジイミド系化合物が好ましい。粒子型硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。
【0042】
硬化剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01~8重量部が好ましく、0.01~5重量部配合することが好ましく、0.03~2.5重量部がより好ましい。0.01~5重量部の配合により、基材との密着性および凝集力がより向上する。
【0043】
<アミノ基含有化合物>
本発明の水性再剥離粘着剤は、さらにアミノ基含有化合物を含むことができる。アミノ基含有化合物を用いることで、得られた粘着シートの平滑性が向上するため、貼り合わせ経過後の粘着力を抑制でき、再剥離性に優れたものとすることができる。さらに、水性再剥離粘着剤を配合する際、粒子型硬化剤と、アクリル系ポリマー粒子のカルボキシル基との硬化反応を抑制でき、水性再剥離粘着剤の粘度上昇を抑制し、粘度の変化を抑えることができるために好ましい。
【0044】
アミノ基含有化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
これらの中でも、2級アミン、または3級アミンが、立体的な傘高い構造のため、アクリル系ポリマー粒子のカルボキシル基との硬化反応の抑制効果がより大きいことから好ましい。
【0045】
アミノ基含有化合物の添加量は、アミノ基含有化合物のアミノ基と、アクリル系ポリマー粒子とのカルボキシル基のモル比が0.1/1~5/1であることが好ましく、0.25/1~2.5/1がより好ましい。添加量をアクリル系ポリマー粒子とのカルボキシル基のモル比が0.1/1~5/1にすることで、水性再剥離粘着剤の安定性を向上できる。
【0046】
本発明の水性再剥離粘着剤は、乳化重合後に粘着付与樹脂を配合できる。粘着付与樹脂の配合により粘着力の調整が容易になる。
【0047】
<水性再剥離粘着剤の製造方法>
本発明のアクリル系ポリマー粒子は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマーを含有するモノマー混合物、粘着付与樹脂、水、乳化剤からなる乳化物の存在下に開始剤を用いて乳化重合させ、アクリル系ポリマー粒子とすることができる。ここでの乳化物は、乳化重合前のモノマー混合物、粘着付与樹脂、水、乳化剤のことであり、乳化物を乳化重合することで、乳化重合物が得られる。
粘着付与樹脂はモノマー混合物に溶解させて使用するため、乳化重合後、粘着付与樹脂からなる粒子とアクリル系ポリマー粒子が分離して存在せずに、粘着付与樹脂がアクリル系ポリマー粒子内に一体となって組み込むことができる。
得られたアクリル系ポリマー粒子にアミノ基含有化合物、粒子型硬化剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、増粘剤等のその他添加剤を加えることで、水性再剥離粘着剤を得ることができる。
本発明の再剥離粘着剤は、硬化剤混合後の保存安定性が良好であるため、一液型で用いられる水性再剥離粘着剤として、好適に使用することができる。
【0048】
《粘着シート》
本発明の粘着シートは、基材と、水性再剥離粘着剤の硬化物である粘着剤層とを備える。
製造方法を例示すると(1)剥離性シートに水性再剥離粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、次いで基材上に粘着剤層を転写する方法。および(2)基材に水性再剥離粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、次いで剥離性シートを貼り合わせる方法。等が挙げられる。
【0049】
塗工方法は、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等公知の方法が挙げられる。塗工に際し、乾燥を行うことが通常である。乾燥は、特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線ヒーターおよび減圧法等公知の方法を適宜選択して使用できる。乾燥温度は通常60~180℃程度である。
【0050】
粘着剤層の厚さは、一般的に5~100μm程度であり、10~50μmがより好ましい。
【0051】
基材は、例えば紙、セロハン、プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材、偏光板などの光学フィルム等の板材またはシートが挙げられる。前記基材は、単独または複数の積層体であっても良い。また、前記基材は、裏面(粘着剤層と接しない面)に剥離処理、または帯電防止処理をすることができる。また基材は、公知の易接着処理を行うことで粘着剤層との密着性を向上できる。
【0052】
基材の厚さは、一般的に10~100μm程度であり、30~80μmがより好ましい。
【0053】
本発明の粘着シートの被着体は、素材として例えば、金属、ガラス、プラスチックフィルム、ゴム、木材、ダンボール、紙および塗料コート面など幅広い素材に使用できる。
【0054】
本発明の粘着シートの用途は、特に限定されないが、例えば各種ラベル用、マスキングテープ用途やプロテクトフィルム用途等の再剥離が必要な用途に好適に使用できる。
【実施例
【0055】
次に、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、以下の説明において、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0056】
(実施例1)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート98.5部、カルボキシ基含有モノマーとしてアクリル酸1.5部に、粘着付与樹脂としてピコラスチックA-5(スチレン系樹脂、イーストマンケミカル社製)1.0部を添加し溶解した。さらにアニオン系反応性乳化剤として「アクアロンKH-10」(ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩 第一工業製薬社製)1.0部、および脱イオン水25.1部を加えて攪拌し乳化物を得た。得られた乳化物を滴下ロートに入れた。
別途、撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水を45.6部、上記乳化物のうちの1.0部を仕込み、フラスコ内部を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を70℃まで加熱した。その後濃度10%過硫酸アンモニウムを添加して、反応を開始した。内温を70℃に保持したまま、上記乳化物を180分かけて滴下した後に、さらに撹拌しながら内温を70℃に保持したまま1時間反応を継続した。その後内温を65℃に冷却し、酸化剤の「パーブチルH-69」(日本油脂社製)の濃度10%水溶液1.0部、還元剤の「エルビットN」(扶桑化学工業社製)の濃度10%水溶液1.0部をそれぞれ10分おきに3回添加し、さらに1時間反応を継続した。
その後、冷却し、不揮発分濃度50%、平均粒子径300nmのアクリル系ポリマー粒子である乳化重合物を得た。尚、このアクリル系ポリマー粒子のゲル分率は40%であった。
【0057】
次に、アクリル系ポリマー粒子を含有する乳化重合物100部に対し、中和剤としてトリエチルアミンを2部、消泡剤としてSNデフォーマー364(サンノプコ社製)を0.3部、防腐剤としてユニケムフレックスBN-202(ユニオンケミカル社製)を0.05部、レベリング剤として「ペレックスOT-P」(花王社製)0.2部を加え、架橋剤としてカルボジイミド系粒子型硬化剤のカルボジライトE-05(粒子径45nm、不揮発分40%、日清紡ケミカル社製)を1.25部加え、さらにアルカリ増粘剤で増粘し、水性再剥離粘着剤を得た。
得られた水性再剥離粘着剤を乾燥後の厚さが20μmになるようにコンマコーターを使用して剥離性シート上に塗工し、100℃の乾燥オーブンで75秒間乾燥した後、市販のPETフィルムを貼り合わせて粘着シートを得た。
後述する試験方法で性能を評価し、その結果を表1に示した。
【0058】
(実施例2~20、比較例1~7)
実施例1の配合を表1の原料および配合量(重量部)に変更した以外は、実施例1と同様にして、水性再剥離粘着剤および粘着シートを得た。
また、乳化重合時の内温、滴下速度、反応時間等を適宜調整することにより、それぞれ表に示す平均粒子径のアクリル系粒子ポリマー粒子を得た。
【0059】
表1の略称は下記の通りである。
・EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
・BA:アクリル酸ブチル
・MMA:メタクリル酸メチル
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
・A-5:「ピコラスチックA-5」(スチレン系樹脂、イーストマンケミカル社製)
・KE364C:「KE364C」(ロジン系樹脂、荒川化学社製)
・OTG:チオグリコール酸オクチル
・KH-10:「アクアロンKH-10」(アニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩 不揮発分100%、第一工業製薬社製)
・RA9612:「ニューコールRA9612」(アニオン系非反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩 不揮発分25% 日本乳化剤社製)
・E-05:「カルボジライトE-05(カルボジイミド系粒子型硬化剤、粒子径45nm、不揮発分40%、日清紡ケミカル社製)」
・K-2010E:「エポクロスK-2010E」(オキサゾリン系粒子型硬化剤、粒子径208nm、不揮発分100%、日本触媒社製)
・DZ-22E:「ケミタイトDZ-22E」(アジリジン系粒子型硬化剤、粒子径700nm、揮発分100%、日本触媒社製)
・SV-02:「カルボジライトSV-02(カルボジイミド系溶液型硬化剤、不揮発分40%、日清紡ケミカル社製)」
・EX-313:「デナコールEX-313」(エポキシ系溶液型硬化剤、不揮発分100%、ナガセケムテックス社製)
・PZ-33:「ケミタイトPZ-33」(アジリジン系溶液型硬化剤、揮発分100%、日本触媒社製)
・TEN:トリエチルアミン
・TEA:トリエタノールアミン
・DEA:ジエチルアミン
・PA:モノプロピルアミン
【0060】
[試験方法]
(1)常温粘着力
得られた粘着シートを23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、JIS Z 0237に準拠して、試料から剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を表面を研磨したステンレス鋼板(以下、SUSという)に貼付け、2kgロールを1往復して、24時間直後の粘着力を測定した。なお粘着力の測定は引張試験機を用いて、剥離速度:300mm/分、剥離角180゜で行った。
【0061】
(2)高温粘着力
得られた粘着シートを23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、試料から剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を表面を研磨したステンレス鋼板(以下、SUSという)に貼付け、2kgロールを1往復して、圧着後に試料を40℃雰囲気下のオーブンで7日間放置後、オーブンから取り出して2時間後、23℃50%RH雰囲気下で粘着力を測定した。なお粘着力の測定は引張試験機を用いて、剥離速度:300mm/分、剥離角180゜で行った。また、下記の式より粘着力の上昇率を算出した。
粘着力維持率(%)=[(高温粘着力)/(常温粘着力)-1]×100
粘着力維持率の判定は、下記の基準で評価した。

◎:粘着力維持率50%以下。非常に良好。
○:粘着力維持率50%以上100%未満。良好。
△:粘着力維持率100%以上、200%未満。実用可。
×:粘着力維持率200%%以上。実用不可。
【0062】
(3)再剥離性
得られた粘着シートを23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、試料の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層をSUSに貼付け、2kgロールで1往復して圧着した。圧着後の試料を40℃雰囲気下のオーブンで7日間放置後、オーブンから取り出して2時間後、23℃50%RH雰囲気下で、引張試験機を用いて、試料をSUSから300mm/分の速さで180゜方向に剥離して、SUS表面に粘着剤層に由来する汚染が付着しているか否かを目視により下記の基準で評価した。

◎:SUS表面がきれいだった。非常に良好。
○:SUS表面にわずかに汚染が付着していたが、良好。
△:SUS表面に汚染の付着がやや多かったが、実用上問題ない。
×:SUS表面に汚染の付着が非常に多かった。実用不可。
【0063】
(4)耐水白化性
得られた粘着シートから剥離性シートを剥がし、PETフィルムを貼り合せ、40℃のイオン交換水に24時間浸漬した。浸漬前後の濁度をヘイズメーター(NDH5000W、日本電色工業社製)で測定した。

◎:浸漬前後の濁度変化が0.5未満。非常に良好。
○:浸漬前後の濁度変化が0.5以上1.0未満。良好。
△:浸漬前後の濁度変化が1.0以上1.5未満。実用上問題ない。
×:浸漬前後の濁度変化が1.5以上。実用不可。
【0064】
(5)粘度変化率
得られた水性再剥離粘着剤を40℃で90日間放置させ、放置前後の粘度をB型粘度計で測定した。また、下記の式より粘度変化率を算出した。
粘度変化率(%)=[(40℃90日間後の粘度)/(初期粘度)-1]×100の絶対値
粘度変化率の判定は、下記の基準で評価した。

◎:粘度上昇率0%以上5%未満。非常に良好。
○:粘度上昇率5%以上10%未満。良好。
△:粘度上昇率10%以上20%未満。実用可。
×:粘度上昇率20%以上。実用不可。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】