(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20220511BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20220511BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60C9/08 N
B60C15/00 M
B60C15/06 B
(21)【出願番号】P 2018137730
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末野 順也
(72)【発明者】
【氏名】羽山 晃平
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030620(JP,A)
【文献】特開平10-035219(JP,A)
【文献】特開平09-066711(JP,A)
【文献】特開2016-068662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に延びるコアと、当該コアよりも径方向外側に位置するエイペックスとを有する一対のビードと、
トレッド及び前記トレッドの端に連なる一対のサイドウォールの内側において、一方のビードから他方のビードに向かって延びるカーカスと、
径方向において前記サイドウォールの内側に位置する一対のクリンチと、
前記カーカスと前記クリンチとの間に位置する一対のゴム補強層と
を備え、
前記カーカスが、一方のコアと他方のコアとを架け渡す本体部と、前記本体部に連なり前記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部とを有するカーカスプライを備え、
前記コアと前記エイペックスとの境界の軸方向中心から当該エイペックスの外端までの長さが10mm以上15mm以下であり、
正規リムに組み込まれ、内圧が正規内圧に調整された状態において、
前記トレッドと前記サイドウォールとの境界部分から前記エイペックスの外端までのゾーンに位置する本体部の形状が単一の円弧で表され、当該円弧の直径が前記カーカスの断面高さの75%以上90%以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
正規リムに組み込まれ、正規内圧の10%に内圧が調整された状態において、
前記エイペックスの内側面に沿って延びる本体部が軸方向に対して傾斜し、当該本体部が軸方向に対してなす角度が45°以上50°以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
ビードベースラインから前記ゴム補強層の外端までの径方向距離が、タイヤ断面高さの35%以上45%以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム補強層の最大厚さが2mm以上4mm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記エイペックスの複素弾性率E
*aが70MPa以上130MPa以下であり、当該エイペックスの損失正接LTaが0.18以下である、請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記クリンチの複素弾性率E
*cが7MPa以上13MPa以下であり、当該クリンチの損失正接LTcが0.08以下である、請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
ビードベースラインから前記折り返し部の端までの径方向距離が、20mm以上30mm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記カーカスプライが並列した多数のカーカスコードを含み、それぞれのカーカスコードの繊度が1500dtex以上1700dtex以下である、請求項1から7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム補強層の複素弾性率E
*rが前記クリンチの複素弾性率E
*cよりも大きい、請求項1から8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記クリンチの損失正接LTcが前記ゴム補強層の損失正接LTrよりも小さい、請求項1から9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記ゴム補強層の複素弾性率E
*rが前記エイペックスの複素弾性率E*aと同等である、又は当該エイペックスの複素弾性率E
*aよりも小さい、請求項1から10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ゴム補強層の損失正接LTrが前記エイペックスの損失正接LTaと同等である、又は当該エイペックスの損失正接LTaよりも小さい、請求項1から11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのビードは、コア及びエイペックスにより構成される。エイペックスには、硬質な架橋ゴムが用いられる。剛性確保のために通常、30mm~40mmほどの長さを有するエイペックスが採用される。
【0003】
環境への配慮から、タイヤにおいては、軽量化と、転がり抵抗の低減とが求められている。そこで、5mm~15mmほどの長さを有する小さなエイペックスの採用が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第一エイペックスと、この第一エイペックスよりも軸方向外側に位置する第二エイペックスとを備えるビードが開示されている。第一エイペックスが前述の小さなエイペックスである。第二エイペックスは、この第一エイペックスの軸方向外側において、カーカスとクリンチとの間に挟まれている。この特許文献1では、第二エイペックスの形状を整えて、耐久性等の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤの質量及び転がり抵抗を低減するために、ビードのエイペックスに、小さなエイペックスを採用すると、ビードの部分の剛性低下は否めない。前述の特許文献1のようにカーカスとクリンチとの間に第二エイペックスを設ければ、剛性の向上が見込まれる。しかしこの場合、小さなエイペックスを採用したことによる質量及び転がり抵抗の低減効果が薄れてしまう。そこで、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減を図れる技術の確立が求められている。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減を図るために、鋭意検討したところ、トレッドとサイドウォールとの境界部分からエイペックスの外端までのゾーンに位置するカーカスプライの本体部が特定の形状を有する場合に、この本体部が剛性の確保と、質量及び転がり抵抗の低減とに貢献できることを見出し、本発明を完成するに至っている。
【0009】
本発明に係る好ましい空気入りタイヤは、
周方向に延びるコアと、当該コアよりも径方向外側に位置するエイペックスとを有する一対のビードと、
トレッド及び前記トレッドの端に連なる一対のサイドウォールの内側において、一方のビードから他方のビードに向かって延びるカーカスと、
径方向において前記サイドウォールの内側に位置する一対のクリンチと、
前記カーカスと前記クリンチとの間に位置する一対のゴム補強層と
を備える。前記カーカスは、一方のコアと他方のコアとを架け渡す本体部と、前記本体部に連なり前記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部とを有するカーカスプライを備える。前記コアと前記エイペックスとの境界の軸方向中心から当該エイペックスの外端までの長さは10mm以上15mm以下である。正規リムに組み込まれ、内圧が正規内圧に調整された状態において、
前記トレッドと前記サイドウォールとの境界部分から前記エイペックスの外端までのゾーンに位置する本体部の形状は単一の円弧で表され、当該円弧の直径は前記カーカスの断面高さの75%以上90%以下である。
【0010】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、このタイヤが正規リムに組み込まれ、正規内圧の10%に内圧が調整された状態において、前記エイペックスの内側面に沿って延びる本体部は軸方向に対して傾斜し、当該本体部が軸方向に対してなす角度は45°以上50°以下である。
【0011】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、ビードベースラインから前記ゴム補強層の外端までの径方向距離はタイヤ断面高さの35%以上45%以下である。
【0012】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ゴム補強層の最大厚さは2mm以上4mm以下である。
【0013】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記エイペックスの複素弾性率E*aは70MPa以上130MPa以下であり、当該エイペックスの損失正接LTaは0.18以下である。
【0014】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記クリンチの複素弾性率E*cは7MPa以上13MPa以下であり、当該クリンチの損失正接LTcは0.08以下である。
【0015】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、ビードベースラインから前記折り返し部の端までの径方向距離は20mm以上30mm以下である。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記カーカスプライは並列した多数のカーカスコードを含み、それぞれのカーカスコードの繊度は1500dtex以上1700dtex以下である。
【0017】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ゴム補強層の複素弾性率E*rは前記クリンチの複素弾性率E*cよりも大きい。
【0018】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記クリンチの損失正接LTcは前記ゴム補強層の損失正接LTrよりも小さい。
【0019】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ゴム補強層の複素弾性率E*rは前記エイペックスの複素弾性率E*aと同等である、又は当該エイペックスの複素弾性率E*aよりも小さい。
【0020】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ゴム補強層の損失正接LTrは前記エイペックスの損失正接LTaと同等である、又は当該エイペックスの損失正接LTaよりも小さい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の空気入りタイヤでは、従来のタイヤに比べて小さなエイペックスが採用されるとともに、カーカスとクリンチとの間にゴム補強層が設けられる。そして、このタイヤが正規リムに組み込まれ、内圧が正規内圧に調整された状態において、トレッドとサイドウォールとの境界部分からエイペックスの外端までのゾーンに位置する本体部の形状は単一の円弧で表され、この円弧の直径はカーカスの断面高さの75%以上90%以下である。
【0022】
このタイヤでは、トレッドとサイドウォールとの境界部分からエイペックスの外端までのゾーンに位置する本体部が、特に、ビードの部分のボリュームの低減に寄与する。このタイヤでは、ゴム補強層を採用したにもかかわらず、質量及び転がり抵抗の低減が図られる。さらにビードの部分においてこの本体部をゴム補強層が支持するので、面内ねじり剛性の低下が抑えられる。このタイヤでは、必要な剛性が確保される。
【0023】
本発明によれば、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0027】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0028】
図1において、タイヤ2はリムRに組み込まれている。このリムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整されている。このタイヤ2には、荷重はかけられていない。
【0029】
本発明においては、タイヤ2をリムR(正規リム)に組み込み、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整され、このタイヤ2に荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ2及びタイヤ2各部の寸法並びに角度は、正規状態で測定される。
【0030】
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0031】
本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0032】
本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0033】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムR(正規リム)のリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0034】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、一対のチェーファー12、カーカス14、ベルト16、バンド18、インナーライナー20及び一対のゴム補強層22を備える。
【0035】
トレッド4は、その外面において路面と接触する。トレッド4の外面はトレッド面24である。このトレッド4には、溝26が刻まれている。このタイヤ2では、トレッド4は、ベース部4aと、このベース部4aの径方向外側に位置するキャップ部4bとを備える。ベース部4aは、接着性が考慮された架橋ゴムからなる。キャップ部4bは、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
【0036】
図1において、符号PEはこのタイヤ2の赤道である。この赤道は、溝26がないと仮定して得られる仮想トレッド面24と赤道面との交点である。両矢印HSは、ビードベースラインからこの赤道PEまでの径方向距離である。この径方向距離HSは、このタイヤ2の断面高さ(JATMA等参照)である。
【0037】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端からカーカス14に沿って径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、カーカス14を保護する。このタイヤ2では、サイドウォール6とトレッド4との間にウィング28が配置される。
【0038】
それぞれのクリンチ8は、径方向においてサイドウォール6の内側に位置する。
図1に示されるように、クリンチ8の一部はリムRのフランジFRと接触する。クリンチ8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0039】
図1において、符号PWはこのタイヤ2の軸方向外端である。この外端PWは、サイドウォール6及びクリンチ8の外面、すなわち、このタイヤ2のサイド面Sに模様や文字等の装飾がないと仮定して得られる、仮想サイド面Sに基づいて特定される。一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。この外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置である。
【0040】
ビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10は、コア30と、エイペックス32とを備える。コア30は、周方向に延びる。
図1に示されるように、コア30は矩形状の断面形状を有する。コア30は、スチール製のワイヤーを含む。エイペックス32は、コア30よりも径方向外側に位置する。
図1に示されたタイヤ2の断面において、エイペックス32は径方向外向きに先細りである。このタイヤ2では、エイペックス32は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0041】
それぞれのチェーファー12は、ビード10の径方向内側に位置する。
図1に示されるように、チェーファー12の少なくとも一部はリムRのシートSRと接触する。このタイヤ2では、チェーファー12は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0042】
カーカス14は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス14は、一方のビード10から他方のビード10に向かって延びる。カーカス14は、少なくとも1枚のカーカスプライ34を含む。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ34からなる。
【0043】
図示されないが、カーカスプライ34は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このタイヤ2のカーカス14は、ラジアル構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
【0044】
このタイヤ2では、カーカスプライ34はそれぞれのコア30の周りにて折り返される。このカーカスプライ34は、一方のコア30と他方のコア30とを架け渡す本体部36と、この本体部36に連なりそれぞれのコア30の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部38とを有する。このタイヤ2では、この折り返し部38の端40は軸方向において外側からゴム補強層22で覆われる。
【0045】
ベルト16は、トレッド4の径方向内側において、カーカス14と積層される。このタイヤ2では、ベルト16は2枚のベルトプライ42からなる。
【0046】
図示されていないが、それぞれのベルトプライ42は並列された多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは、赤道面に対して傾斜する。このベルトコードが赤道面に対してなす角度は10°以上35°以下である。このタイヤ2では、ベルトコードの材質はスチールである。
【0047】
バンド18は、径方向においてトレッド4とベルト16との間に位置する。バンド18は、ベルト16全体を覆う。このバンド18は、ジョイントレス構造を有する。図示されないが、バンド18は螺旋状に巻き回されたバンドコードを含む。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。
【0048】
インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置する。インナーライナー20は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー20は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0049】
それぞれのゴム補強層22は、架橋ゴムからなる。このゴム補強層22は、軸方向において、エイペックス32の外側に位置する。このゴム補強層22は、カーカス14とクリンチ8との間に位置する。
図1に示されるように、ゴム補強層22は、エイペックス32の外端PAの部分において最大の厚さを有する。このゴム補強層22は、この最大の厚さを有する部分から径方向内向きに先細りである。このゴム補強層22の内端44は、径方向においてコア30の近傍に位置する。このゴム補強層22は、この最大の厚さを有する部分から径方向外向きに先細りである。このゴム補強層22の外端46は、径方向において、クリンチ8の外端48と最大幅を示す位置PWとの間に位置する。
【0050】
図1において、符号PMはコア30とエイペックス32との境界の軸方向中心である。符号PAは、エイペックス32の外端である。両矢印LAは、境界の軸方向中心PMからエイペックス32の外端PAまでの長さである。この長さLAは、エイペックス32の長さである。
【0051】
このタイヤ2では、エイペックス32の長さLAは10mm以上15mm以下である。従来のタイヤでは、エイペックスの長さは通常、30~40mmの範囲で設定される。このタイヤ2のエイペックス32は小さい。このエイペックス32は、軽量化に寄与する。このエイペックス32は、転がり抵抗の低減に寄与する。
【0052】
図1において、符号CVで示された地点、符号CWで示された地点及び符号CAで示された地点は、カーカスプライ34の一部をなす本体部36の内面上の特定の位置を表す。地点CVは、ベルト16の端50を通り、径方向に延びる基準線(図示されず)とこの内面との交点である。この地点CVは、ベルト16の端50に対応する。地点CWは、最大幅位置PWを通り、軸方向に延びる基準線(図示されず)とこの内面との交点である。この地点CWは、最大幅位置PWに対応する。地点CAは、エイペックス32の外端PAを通り、径方向に延びる基準線(図示されず)とこの内面との交点である。この地点CAは、エイペックス32の外端PAに対応する。
【0053】
このタイヤ2では、トレッド4とサイドウォール6との境界部分、すなわちバットレスBからエイペックス32の外端PAまでのゾーンに位置する、本体部36の形状は、この本体部36の内面に基づいて特定される。このタイヤ2では、この本体部36の形状は、地点CV、地点CW及び地点CAを通る単一の円弧で表される。本発明においては、地点CV、地点CW及び地点CAを通る円弧の法線に沿って計測される、円弧から内面までの距離が、この円弧の長さの3%以内にある場合に、本体部36の形状が、地点CV、地点CW及び地点CAを通る単一の円弧で表されたと判断される。
【0054】
図1において、矢印Rは本体部36の形状を表す円弧の直径である。符号PCは、カーカス14の内面と赤道面との交点である。この交点PCは、この内面の径方向外端である。両矢印HCは、ビードベースラインからこの径方向外端PCまでの径方向距離である。本発明においては、この距離HCがカーカス14の断面高さである。
【0055】
このタイヤ2では、従来のタイヤに比べて小さなエイペックス32が採用されるとともに、カーカス14とクリンチ8との間にゴム補強層22が設けられる。そして、このタイヤ2が正規リムに組み込まれ、内圧が正規内圧に調整された状態において、バットレスBからエイペックス32の外端PAまでのゾーンに位置する本体部36の形状は単一の円弧で表され、この円弧の直径Rはカーカス14の断面高さHCの75%以上90%以下である。
【0056】
このタイヤ2では、バットレスBからエイペックス32の外端PAまでのゾーンに位置する本体部36が、特に、ビード10の部分のボリュームの低減に寄与する。このタイヤ2では、ゴム補強層22を採用したにもかかわらず、質量及び転がり抵抗の低減が図られる。さらにビード10の部分において本体部36をゴム補強層22が支持するので、面内ねじり剛性の低下が抑えられる。このタイヤ2では、必要な剛性が確保される。このタイヤ2では、良好な操縦安定性が維持される。このタイヤ2は、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0057】
前述したように、このタイヤ2では、バットレスBからエイペックス32の外端PAまでのゾーンに位置する本体部36の形状は単一の円弧で表される。このためサイドウォール6からクリンチ8に至る部分、すなわち、サイド部は全体的に撓む。このサイド部には局所的に歪が集中することが抑えられるので、このタイヤ2では、耐久性の向上も図られる。
【0058】
図2は、
図1に示されたタイヤ2の断面の一部を示す。この
図2には、タイヤ2のビード10の部分が示される。この
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0059】
図2において、符号PBはエイペックス32の径方向高さが半分となる位置に対応するエイペックス32の内側面52上の位置である。実線BAは、この位置PBとエイペックス32の外端PAとを通る直線である。この実線BAは、軸方向に対して傾斜する。
【0060】
ビード10の部分においては、カーカスプライ34の本体部36は、エイペックス32の内側面52に沿ってコア30からこのエイペックス32の外端PAに向かって延びる。
図2に示されるように、このタイヤ2では、本体部36は軸方向に対して傾斜する。本発明においては、このエイペックス32の内側面52に沿って延びる本体部36の傾斜方向は、前述の実線BAの傾斜方向によって特定される。
【0061】
図2において、実線ALはコア30とエイペックス32との境界の軸方向中心PMを通り軸方向に延びる直線である。符号θで表される角度は、実線BAが実線ALに対してなす角度である。本発明においては、ビード10の部分において、エイペックス32の内側面52に沿って延びる本体部36が軸方向に対してなす角度は、この角度θで表される。
【0062】
本発明においては、前述の角度θは、タイヤ2がリムR(正規リム)に組み込まれ、このタイヤ2の内圧が正規内圧の10%に調整され、そしてこのタイヤ2に荷重がかけられていない状態で測定される。図示されないが、このタイヤ2の製造では、モールドのキャビティ面にローカバー(未架橋状態のタイヤ2)を押し付けることによりタイヤ2が成形される。前述の状態におけるタイヤ2の外面は、モールドのキャビティ面に表わされたタイヤ2の外面に相当する。
【0063】
前述したように、このタイヤ2では、エイペックス32の内側面52に沿って延びる本体部36は、軸方向に対して傾斜する。特に、このタイヤ2では、ビード10の部分において、本体部36が軸方向に対してなす角度θは45°以上が好ましく、50°以下が好ましい。この角度θが45°以上に設定されることにより、本体部36が面内ねじり剛性の低下を抑制することに寄与する。このタイヤ2では、必要な剛性が確保される。この角度θが50°以下に設定されることにより、この本体部36がビード10の部分のボリュームの低減に寄与する。このタイヤ2では、質量及び転がり抵抗が低減される。
【0064】
さらにこのタイヤ2では、本体部36が軸方向に対してなす角度θを45°から50°の範囲に設定することは、正規状態のタイヤ2において、バットレスBからエイペックス32の外端PAまでのゾーンに位置する本体部36を、その形状が円弧を描くように構成することに貢献する。このゾーンにおいて、形状が円弧で表された本体部36は、前述したように、ビード10の部分のボリュームを低減することと、面内ねじり剛性の低下を抑えることとに貢献する。このタイヤ2では、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0065】
前述したように、このタイヤ2では、エイペックス32は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、剛性確保の観点から、エイペックス32の複素弾性率E*aは70MPa以上が好ましく、130MPa以下が好ましい。発熱の抑制の観点から、このエイペックス32の損失正接LTaは0.18以下が好ましい。
【0066】
本発明においては、エイペックス32等のタイヤ2の構成部材の複素弾性率及び損失正接(tanδとも称される。)は、JIS K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメーターを用いて下記の条件にて測定される。
初期歪み=10%
振幅=±1%
周波数=10Hz
変形モード=引張
測定温度=70℃
【0067】
このタイヤ2では、クリンチ8は軟質な架橋ゴムからなる。剛性確保の観点から、このクリンチ8の複素弾性率E*cは7MPa以上が好ましい。柔軟性を確保し、良好な耐久性を維持する観点から、このクリンチ8の複素弾性率E*cは13MPa以下が好ましい。発熱抑制の観点から、このクリンチ8の損失正接LTcは0.08以下が好ましい。
【0068】
このタイヤ2では、ゴム補強層22は小さなエイペックス32とともにビード10の部分の剛性に寄与する。この観点から、このゴム補強層22の複素弾性率E*rは60MPa以上が好ましい。柔軟性を確保し、良好な耐久性を維持する観点から、このゴム補強層22の複素弾性率E*rは100MPa以下が好ましい。発熱の抑制の観点から、ゴム補強層22の損失正接LTrは、0.16以下が好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、ゴム補強層22の複素弾性率E*rはエイペックス32の複素弾性率E*aと同等であるか、又は、このエイペックス32の複素弾性率E*aよりも小さいのが好ましい。このタイヤ2では、ゴム補強層22によって面内ねじり剛性の向上を図るとともに、エイペックス32がビード10の部分の剛性に貢献する。このタイヤ2では、剛性が十分に確保されるので、良好な操縦安定性が得られる。この観点から、ゴム補強層22の複素弾性率E*rはエイペックス32の複素弾性率E*aよりも小さいのがより好ましい。具体的には、エイペックス32の複素弾性率E*aとゴム補強層22の複素弾性率E*rとの差(E*a-E*r)は、0MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましい。ゴム補強層22の剛性とエイペックス32の剛性との乖離が抑えられ、良好な耐久性が維持される観点から、この差(E*a-E*r)は50MPa以下が好ましい。
【0070】
このタイヤ2では、好ましくは、ゴム補強層22の損失正接LTrはエイペックス32の損失正接LTaと同等である、又は、このエイペックス32の損失正接LTaよりも小さい。このゴム補強層22を用いることにより、ビード10の部分において、変形に伴う発熱が抑えられる。このタイヤ2では、ゴム補強層22は転がり抵抗の低減に寄与する。この観点から、ゴム補強層22の損失正接LTrはエイペックス32の損失正接LTaよりも小さいのがより好ましい。具体的には、エイペックス32の損失正接LTaとゴム補強層22の損失正接LTrとの差(LTa-LTr)は、0.00以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。ゴム補強層22の損失正接LTrは小さいほど好ましいので、転がり抵抗の低減の観点において、この差(LTa-LTr)は大きいほど好ましい。
【0071】
このタイヤ2では、剛性を確保しながら、転がり抵抗の低減が達成される観点から、ゴム補強層22の損失正接LTrはエイペックス32の損失正接LTaと同等である、又はエイペックス32の損失正接LTaよりも小さく、そして、このゴム補強層22の複素弾性率E*rはエイペックス32の複素弾性率E*aと同等である、又はエイペックス32の複素弾性率E*aよりも小さいのがより好ましい。このタイヤ2では、このゴム補強層22の損失正接LTrはエイペックス32の損失正接LTaよりも小さく、そして、このゴム補強層22の複素弾性率E*rはエイペックス32の複素弾性率E*aよりも小さいのがさらに好ましい。
【0072】
このタイヤ2では、ゴム補強層22の複素弾性率E
*rはクリンチ8の複素弾性率E
*cよりも大きい。このゴム補強層22はクリンチ8よりも硬質である。このゴム補強層22は、ビード10の部分の剛性に寄与する。
図2に示されるように、コア30と最大幅位置PWとの間において、ゴム補強層22は径方向内側から本体部36を支持する。このタイヤ2では、ゴム補強層22は面内ねじり剛性の確保に寄与する。この観点から、このタイヤ2では、ゴム補強層22の複素弾性率E
*rとクリンチ8の複素弾性率E
*cとの差(E
*r-E
*c)は50MPa以上が好ましい。ゴム補強層22の剛性とクリンチ8の剛性との乖離が抑えられ、良好な耐久性が維持される観点から、この差(E
*r-E
*c)は90MPa以下が好ましい。
【0073】
このタイヤ2では、クリンチ8はゴム補強層22よりも軸方向外側に位置する。クリンチ8はゴム補強層22よりも変形の程度が大きい部分に位置する。このタイヤ2では、クリンチ8の損失正接LTcはゴム補強層22の損失正接LTrよりも小さいのが好ましい。これにより、発熱が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、クリンチ8は転がり抵抗の低減に寄与する。この観点から、ゴム補強層22の損失正接LTrとクリンチ8の損失正接LTcとの差(LTr-LTc)は0,01以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。クリンチ8の損失正接LTcは小さいほど好ましいので、転がり抵抗の低減の観点において、この差(LTr-LTc)は大きいほど好ましい。
【0074】
このタイヤ2では、剛性を確保しながら、転がり抵抗の低減が達成される観点から、ゴム補強層22の複素弾性率E*rはクリンチ8の複素弾性率E*cよりも大きく、そしてクリンチ8の損失正接LTcはゴム補強層22の損失正接LTrよりも小さいのが好ましい。
【0075】
このタイヤ2では、クリンチ8の複素弾性率E*cはエイペックス32の複素弾性率E*aよりも小さい。クリンチ8はエイペックス32よりも軟質である。このクリンチ8は、正規状態のタイヤ2において、バットレスBからエイペックス32の外端PAまでのゾーンに位置する本体部36を、その形状が円弧を描くように構成することに貢献する。このタイヤ2では、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減を図ることができる。この観点から、エイペックス32の複素弾性率E*aとクリンチ8の複素弾性率E*cとの差(E*a-E*c)は60MPa以上が好ましい。エイペックス32の剛性とクリンチ8の剛性との乖離が抑えられ、良好な耐久性が維持される観点から、この差(E*a-E*c)は100MPa以下が好ましい。
【0076】
このタイヤ2では、クリンチ8の損失正接LTcはエイペックス32の損失正接LTaよりも小さい。このクリンチ8では、エイペックス32に比して、変形に伴う発熱が抑えられる。このクリンチ8は、転がり抵抗の低減に寄与する。この観点から、エイペックス32の損失正接LTaとクリンチ8の損失正接LTcとの差(LTa-LTc)は0.05以上が好ましい。クリンチ8の損失正接LTcは小さいほど好ましいので、転がり抵抗の低減の観点において、この差(LTa-LTc)は大きいほど好ましい。
【0077】
図2において、両矢印HRはビードベースラインからゴム補強層22の外端46までの径方向距離である。両矢印HFは、ビードベースラインから折り返し部38の端40までの径方向距離である。
【0078】
このタイヤ2では、ビードベースラインからゴム補強層22の外端46までの径方向距離HRはタイヤ2の断面高さHSの35%以上が好ましく、45%以下が好ましい。この断面高さHSに対する径方向距離HRの比率が35%以上に設定されることにより、ゴム補強層22が剛性の確保に効果的に寄与する。この比率が45%以下に設定されることにより、ゴム補強層22のボリュームが適切に維持される。このゴム補強層22は質量及び転がり抵抗の低減に寄与する。
【0079】
このタイヤ2では、ビードベースラインから折り返し部38の端40までの径方向距離HFは20mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。この径方向距離HFが20mm以上に設定されることにより、折り返し部38が剛性の確保に効果的に寄与する。この径方向距離HFが30mm以下に設定されることにより、折り返し部38による質量への影響が抑えられる。さらに折り返し部38の端40を起点とした損傷が防止されるので、良好な耐久性が維持される。
【0080】
前述したように、このタイヤ2では、ゴム補強層22はエイペックス32の外端PAの部分において最大の厚さを有する。
図2において、両矢印tはゴム補強層22の最大厚さである。この最大厚さは、ゴム補強層22の外側面54の法線に沿って計測される厚さの最大値で表される。
【0081】
このタイヤ2では、ゴム補強層22の最大厚さtは2mm以上が好ましく、4mm以下が好ましい。この最大厚さtが2mm以上に設定されることにより、ゴム補強層22が剛性の確保に効果的に寄与する。この最大厚さtが4mm以下に設定されることにより、ゴム補強層22のボリュームが適切に維持される。このゴム補強層22は質量及び転がり抵抗の低減に寄与する。
【0082】
前述したように、このタイヤ2では、カーカスプライ34は並列した多数のカーカスコードを含む。このタイヤ2では、それぞれのカーカスコードの繊度は1500dtex以上が好ましく、1700dtex以下が好ましい。このカーカスコードの繊度が1500dtex以上に設定されることにより、カーカスプライ34が剛性の確保に効果的に寄与する。この繊度が1700dtex以下に設定されることにより、カーカスプライ34による質量及び転がり抵抗への影響が抑えられる。
【0083】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
【0084】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=205/55R16)を得た。
【0087】
この実施例1では、カーカスの断面高さHCに対する本体部の形状を表す円弧の直径Rの比率(R/HC)は80%であった。エイペックスの長さLAは10mmであった。タイヤ断面高さHSに対するビードベースラインからゴム補強層の外端までの径方向距離HRの比率(HR/HS)は40%であった。ゴム補強層の最大厚さtは3mmであった。ビードベースラインから折り返し部の端までの径方向距離HFは25mmであった。カーカスコードの繊度は1100dtexであった。
【0088】
この実施例1では、エイペックスの損失正接LTaは0.15であり、複素弾性率E*aは100MPaであった。クリンチの損失正接LTcは0.05であり、複素弾性率E*cは10MPaであった。ゴム補強層の損失正接LTrは0.10であり、複素弾性率E*rは70MPaであった。
【0089】
[比較例1]
ゴム補強層を設けず、比率(R/HC)及び長さLAを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。この比較例1は、従来のタイヤである。
【0090】
[実施例2-3及び比較例2-3]
比率(R/HC)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-3及び比較例2-3のタイヤを得た。
【0091】
[実施例4-6]
エイペックスの複素弾性率E*rを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4-6のタイヤを得た。
【0092】
[実施例7]
エイペックスの損失正接LTaを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7のタイヤを得た。
【0093】
[実施例8]
クリンチの損失正接LTcを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8のタイヤを得た。
【0094】
[実施例9]
カーカスコードの繊度を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例9のタイヤを得た。
【0095】
[質量]
試作タイヤの質量を計測した。その結果が、下記の表1及び2に指数で示されている。数値が小さいほど軽量である。
【0096】
[転がり抵抗]
試作タイヤを正規リムに組み込み、内圧を210kPaに調整した。転がり抵抗試験機を用い、転がり抵抗(RR)を測定した。荷重は、4.8kNに設定された。速度は、80km/hに設定された。この結果が、下記の表1及び2に指数で示されている。数値が小さいほど、転がり抵抗は小さい。この転がり抵抗に関する評価では、指数が95以下になることが目標に設定された。
【0097】
[面内ねじり剛性]
試作タイヤを正規リムに組み込み、内圧を250kPaに調整した。面内ねじり剛性試験機を用い、タイヤのトレッド面を固定し、リムを周方向に0.8°回転させた時の反力を測定した。この結果が、下記の表1及び2に指数で示されている。数値が大きいほど、面内ねじり剛性は高い。この面内ねじり剛性に関する評価では、指数が95以上になることが目標に設定された。
【0098】
【0099】
【0100】
表1及び2に示されるように、実施例は、比較例に比して評価が高い。特に、実施例では、剛性を確保しながら、質量及び転がり抵抗の低減が達成されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明された剛性を確保しながら質量及び転がり抵抗の低減を図る技術は、種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0102】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
14・・・カーカス
16・・・ベルト
18・・・バンド
22・・・ゴム補強層
24・・・トレッド面
30・・・コア
32・・・エイペックス
34・・・カーカスプライ
36・・・本体部
38・・・折り返し部
40・・・折り返し部38の端
44・・・ゴム補強層22の内端
46・・・ゴム補強層22の外端
48・・・クリンチ8の外端
50・・・ベルト16の端
52・・・エイペックス32の内側面
54・・・ゴム補強層22の外側面