(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】回転アクチュエータ及びロボット
(51)【国際特許分類】
H02K 7/10 20060101AFI20220511BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20220511BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H02K7/10 Z
B25J19/00 A
F16D63/00 H
(21)【出願番号】P 2018146310
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮎澤 優
(72)【発明者】
【氏名】奥田 健
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189081(JP,A)
【文献】特開2002-076095(JP,A)
【文献】実公昭27-010913(JP,Y1)
【文献】実開昭57-181905(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/10
B25J 19/00
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータを有するモータと、
停止している前記ロータの回転を規制するための回転規制機構と、を備え、
前記回転規制機構は、前記ロータに固定された円環状の回転側規制部材と、前記回転側規制部材の外周面に周方向に沿って形成された複数の突起部の間に挿入されて前記周方向における前記回転側規制部材の移動を規制する規制部材を含む規制ユニットと、前記規制部材を前記ロータの軸方向に移動させるための駆動機構と、を有し、
前記軸方向に垂直な面内において前記回転側規制部材の中心と前記規制部材との距離が可変となる一方向に前記規制ユニットを移動自在に支持する支持部を備え、
前記支持部は、前記規制ユニットを前記回転側規制部材側に向けて付勢する2つの付勢部材を備え、
前記2つの付勢部材の各々は、前記規制部材と前記回転側規制部材の中心とを結ぶ線を挟んで配置され、前記規制ユニットを前記回転側規制部材側に引っ張ることで前記規制ユニットを前記回転側規制部材側に向けて付勢する回転アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の回転アクチュエータであって、
前記一方向は、前記規制部材と前記回転側規制部材の中心とを結ぶ線に沿った方向である回転アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転アクチュエータであって、
前記規制ユニットは、固定部材に形成された線状突部又は線状溝部に配置され、前記線状突部又は前記線状溝部に係合する係合部を有しており、前記線状突部又は前記線状溝部と前記係合部とが係合して、前記線状突部又は前記線状溝部に沿って摺動案内されて前記一方向に移動し、
前記線状突部又は前記線状溝部の前記一方向と直交する方向の幅は、前記係合部の当該方向の幅と実質的に同じである回転アクチュエータ。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれか1項に記載の回転アクチュエータであって、
前記2つの付勢部材の各々は、前記一方向に対して同じ角度にて
配置されている回転アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の回転アクチュエータであって、
前記規制ユニットは、前記規制部材を前記軸方向に移動可能に支持する支持部材を備え、
前記付勢部材は、前記支持部材に固定されている回転アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の回転アクチュエータであって、
前記駆動機構は、前記規制部材に対し非固定の状態にて当接している回転アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の回転アクチュエータであって、
前記2つの付勢部材は2つの圧縮コイルバネであり、前記2つの圧縮コイルバネのバネ定数は同一である回転アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の回転アクチュエータによって構成される関節部を備えるロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと、停止しているモータの回転を規制する回転規制機構と、を備えてロボットなどの産業用機械に搭載可能な回転アクチュエータとそれを備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の産業用ロボットとして、支持部材としてのベースと、関節部を介してベースに連結される第1アームと、関節部を介して第1アームの先端側に連結される第2アームと、関節部を介して第2アームの先端側に連結される手首部と、を備えるものがある。また、この種の産業用ロボットでは、関節部は、ロータ及びステータを有するモータと、モータに連結される減速機と、ロータの停止状態を維持するための安全ブレーキと、を備えて関節部自体が回転アクチュエータとして構成されている。
【0003】
そして、このような産業用ロボットに搭載される回転アクチュエータとして、モータと、停止しているモータの回転を規制する回転規制機構と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1の回転アクチュエータでは、回転規制機構は、モータのロータに固定される円盤状の回転側規制部材と、回転側規制部材と係合してその回転移動を規制するピン状の固定側規制部材と、固定側規制部材をロータの軸方向へ移動させる駆動機構と、を備えている。また、この回転側規制部材の周縁には、ロータの径方向外側へ突出する複数の突起部が設けられる。そして、固定側規制部材の先端には、周方向で隣り合う上記突起部間に入り込んで回転側規制部材の回転移動を規制する円環状の規制部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の回転アクチュエータでは、突起部と規制部とが係合(衝突)することでロータを停止させる構造であるため、例えばモータの回転中に突起部の間に規制部が入り込む場合、ロータが停止するまで規制部にそのまま回転力が伝わり衝撃力として過度に負担がかかる。それにより、固定側規制部材が破損又は変形したりしてガタなどが経時的に発生して、その性能が十分に発揮できない可能性があり、耐久性の点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ロータの回転を規制するための回転規制機構の耐久性を向上させることができる回転アクチュエータとこれを備えるロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
ロータ及びステータを有するモータと、
停止している前記ロータの回転を規制するための回転規制機構と、を備え、
前記回転規制機構は、前記ロータに固定された円環状の回転側規制部材と、前記回転側規制部材の外周面に周方向に沿って形成された複数の突起部の間に挿入されて前記周方向における前記回転側規制部材の移動を規制する規制部材を含む規制ユニットと、前記規制部材を前記ロータの軸方向に移動させるための駆動機構と、を有し、
前記軸方向に垂直な面内において前記回転側規制部材の中心と前記規制部材との距離が可変となる一方向に前記規制ユニットを移動自在に支持する支持部を備える回転アクチュエータ。
【0009】
(1)の回転アクチュエータは、ロータの軸方向に垂直な面内において回転側規制部材の中心と規制部材との距離が可変となる一方向に規制ユニットを移動自在に支持する支持部を備える。そのため、規制ユニットの規制部材が回転側規制部材の中心に対し離間方向に移動可能であるので、ロータの回転中に規制ユニットの規制部材が回転側規制部材の隣り合う突起部間に入り込む際、規制ユニットの規制部材が突起部から受ける力の一部を逃がしてその衝撃力を緩和することができる。従って、規制ユニットの破損や変形などの発生を抑制して、回転規制機構の耐久性を向上させることができる。
【0010】
(2)
(1)記載の回転アクチュエータであって、
前記一方向は、前記規制部材と前記回転側規制部材の中心とを結ぶ線に沿った方向である回転アクチュエータ。
【0011】
(2)のように構成すると、規制ユニットは回転側規制部材の周方向に沿った仮想円の接線に対し垂直な方向に移動可能であるので、規制部材が回転側規制部材の突起部から受ける力の一部を効率的に逃がすことができる。
【0012】
(3)
(1)又は(2)記載の回転アクチュエータであって、
前記規制ユニットは、固定部材に形成された線状突部又は線状溝部に配置され、前記線状突部又は前記線状溝部に係合する係合部を有しており、前記線状突部又は前記線状溝部と前記係合部とが係合して、前記線状突部又は前記線状溝部に沿って摺動案内されて前記一方向に移動し、
前記線状突部又は前記線状溝部の前記一方向と直交する方向の幅は、前記係合部の当該方向の幅と実質的に同じである回転アクチュエータ。
【0013】
(3)のように構成すると、規制ユニットの一方向と直交する方向での位置が線状突部又は線状溝部により規制され、また、この線状突部又は線状溝部と規制ユニットの係合部との係合状態で嵌合隙間が小さく設けられるので、ガタの発生を抑制して規制部材の位置決めを精度良く行うことができる。
【0014】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載の回転アクチュエータであって、
前記支持部は、前記規制ユニットを前記回転側規制部材側に向けて付勢する少なくとも1つの付勢部材を備える回転アクチュエータ。
【0015】
(4)のように構成すると、規制ユニットは付勢部材により回転側規制部材側に向けて付勢されるので、規制ユニットが回転側規制部材から離間する方向に移動しても、その付勢力で回転側規制部材側に戻され、規制部材による規制を確実に行うことができる。
なお、付勢部材は、付勢力を発生するものであれば特に限定されるものではなく、例えば付勢力として弾性力を発生可能なバネやゴムなどが例示される。
【0016】
(5)
(4)記載の回転アクチュエータであって、
前記支持部は、2つの前記付勢部材を備え、
前記2つの付勢部材は、前記規制ユニットを前記回転側規制部材側に引っ張ることで前記規制ユニットを前記回転側規制部材側に向けて付勢する回転アクチュエータ。
【0017】
(5)のように構成すると、規制ユニットに対しロータの回転軸側に2つの付勢部材を配置できるので、回転アクチュエータの大型化を回避することができて好ましい。
【0018】
(6)
(5)記載の回転アクチュエータであって、
前記2つの付勢部材の各々は、前記一方向に対して同じ角度にて前記規制ユニットを引っ張っている回転アクチュエータ。
【0019】
(6)のように構成すると、引っ張り力(付勢力)の損失なく、ロータの回転軸に向かって規制ユニットを付勢することができる。また、2つの付勢部材を一方向に対して同じ角度で配置することでロータの回転軸に向かって付勢でき、例えば固定部材の線状突部又は線状溝部に沿ってバランス良く引っ張ることができる。
【0020】
(7)
(4)記載の回転アクチュエータであって、
前記支持部は、1つの前記付勢部材を備え、
前記付勢部材は、前記規制ユニットを前記一方向に押すことで前記規制ユニットを前記回転側規制部材側に向けて付勢する回転アクチュエータ。
【0021】
(7)のように構成すると、1つの付勢部材により規制ユニットを回転側規制部材に向けて付勢できるので構造を簡素化して製造コストを削減することができる。
【0022】
(8)
(4)から(7)のいずれか1つに記載の回転アクチュエータであって、
前記規制ユニットは、前記規制部材を前記軸方向に移動可能に支持する支持部材を備え、
前記付勢部材は、前記支持部材に固定されている回転アクチュエータ。
【0023】
(8)のように構成すると、付勢部材は支持部材に固定されるので、支持部材を付勢部材で付勢することで規制ユニットを安定して付勢することができる。
【0024】
(9)
(1)から(8)のいずれか1つに記載の回転アクチュエータであって、
前記駆動機構は、前記規制部材に対し非固定の状態にて当接している回転アクチュエータ。
【0025】
(9)のように構成すると、規制ユニットが移動する際、この移動に伴って駆動機構も移動する必要がないので、構造を簡素化して製造コストを削減することができる。
【0026】
(10)
(1)から(9)のいずれか1つに記載の回転アクチュエータによって構成される関節部を備えるロボット。
【0027】
(10)によれば耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ロータの回転を規制するための回転規制機構の耐久性を向上させることができる回転アクチュエータとロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの正面図である。
【
図2】(A)は
図1に示す産業用ロボットの斜視図であり、(B)は(A)に示す産業用ロボットが動作している様子を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すG部の構成を説明するための拡大図であり、(A)は規制ユニットが規制解除位置にある状態を示す拡大図であり、(B)は規制ユニットが規制位置になる状態を示す拡大図である。
【
図5】
図3に示す回転側規制部材、規制ユニット、支持部及び付勢部材の構成を説明するための上面から見た模式図である。
【
図6】
図3に示す規制ユニット及び固定部材をロータの径方向外側から見た模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る支持部及び付勢部材の変形例を説明するための上面から視た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態を説明する。
【0031】
(産業用ロボットの概略構成)
まず
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの構成についてその概略を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの正面図である。
図2(A)は
図1に示す産業用ロボットの斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)に示す産業用ロボットが動作している様子を示す斜視図である。
【0032】
図1及び
図2に示すように、本形態の産業用ロボット(以下「ロボット」ともいう)1は、所定の製品の組立や製造などに用いられる多関節ロボットであり、組立ラインや製造ラインに設置されて使用される。ロボット1は、複数の関節部2と、複数のアーム3と、を備えている。本形態では、ロボット1は、6個の関節部2と、2本のアーム3と、を備えている。
なお、以下の説明では、6個の関節部2のそれぞれを区別して表す場合、6個の関節部2のそれぞれを「第1関節部2A」、「第2関節部2B」、「第3関節部2C」、「第4関節部2D」、「第5関節部2E」及び「第6関節部2F」とする。また、以下の説明では、2本のアーム3のそれぞれを区別して表す場合、2本のアーム3のそれぞれを「第1アーム3A」及び「第2アーム3B」とする。
【0033】
また、ロボット1は、第1関節部2Aに相対回動可能に連結される支持部材4をさらに備えている。支持部材4は、フランジ部4aを有して鍔付きの円筒状に形成されている。支持部材4の内周側には、支持部材4の軸方向に貫通する貫通孔(図示省略)が形成されている。フランジ部4aは、円環状に形成されており、ロボット1のベースとして底面部分を構成している。また、アーム3は、細長い円筒状に形成されている。
【0034】
ロボット1では、第1関節部2Aと第2関節部2Bとが相対回動可能に連結され、第2関節部2Bと第1アーム3Aの基端とが固定されている。また、第1アーム3Aの先端と第3関節部2Cとが固定され、第3関節部2Cと第4関節部2Dとが相対回動可能に連結される。さらに、第4関節部2Dと第2アーム3Bの基端とが相対回動可能に連結され、第2アーム3Bの先端と第5関節部2Eとが固定され、第5関節部2Eと第6関節部2Fとが相対回動可能に連結されている。また、第6関節部2Fには、ハンドや工具などが相対回動可能に取付可能となっている。
【0035】
以下、関節部2の具体的な構成を説明する。なお、
図1に示すように、本形態では、第1関節部2Aと第2関節部2Bと第3関節部2Cとが同じ大きさで形成され、第4関節部2Dと第5関節部2Eと第6関節部2Fとが同じ大きさで形成されている。また、第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cの大きさは、第4関節部2D、第5関節部2E及び第6関節部2Fの大きさよりも大きく設けられている。ただし、第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cと、第4関節部2D、第5関節部2E及び第6関節部2Fとは、大きさが相違する点を除けば同様に構成されている。
【0036】
(関節部の構成)
次に、
図3~
図6を参照して、関節部2の構成について具体的に説明する。
図3は、
図1に示す関節部2の縦断面図である。
図4は、
図3に示すG部の構成を説明するための拡大図であり、
図4(A)は規制ユニット32が規制解除位置にある状態を示す拡大図であり、
図4(B)は規制ユニット32が規制位置になる状態を示す拡大図である。
図5は、
図3に示す回転側規制部材31、規制ユニット32、支持部71及び2つの圧縮コイルバネ(付勢部材)71bの構成を説明するための上面から見た模式図である。
図6は、
図3に示す規制ユニット32及び固定部材70をロータの径方向外側から見た模式図である。
なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図3のZ1方向側を「上」側とし、その反対側であるZ2方向側を「下」側とする。また、
図3のX1方向側を「左」側として、その反対側であるX2の方向側を「右」側とする。
【0037】
図3に示すように、関節部2は、モータ10と、モータ10に連結される減速機20と、モータ10の回転位置を検出するための位置検出機構60と、モータ10及び位置検出機構60が電気的に接続される回路基板Bと、モータ10と減速機20と位置検出機構60と回路基板Bとを収納するケース体80と、を含んで構成されており、関節部2自体が回転アクチュエータとして構成されている。
【0038】
モータ10は、径方向の中心に貫通孔が形成された中空モータであり、中空状の回転軸12を備えている。また、モータ10は、ロータ11とステータ14と、を備えている。また、減速機20は、径方向の中心に貫通孔が形成された中空減速機である。モータ10と減速機20とは上下方向で重なって配置されている。具体的には、モータ10が上側に配置され、減速機20が下側に配置されている。また、モータ10と減速機20とは同軸上に配置されている。
【0039】
本形態の減速機20は、中空波動歯車装置であり、剛性内歯歯車21と、可撓性外歯歯車22と、波動発生部23と、クロスローラベアリング26と、を備えている。波動発生部23は、モータ10の回転軸12に連結される中空状の入力軸24と、入力軸24の外周側に取り付けられるウエーブベアリング25と、を備えている。本形態では、剛性内歯歯車21が減速機20の出力軸となっている。
【0040】
また、関節部2は、停止しているロータ11の回転を規制する回転規制機構30と、モータ10の回転軸12及び減速機20の入力軸24の内周側に挿通される筒状の管状部材17と、剛性内歯歯車21に固定される出力側部材18と、をさらに備えている。
【0041】
モータ10は、前述したように、ロータ11とステータ14とを備えている。ロータ11は、回転軸12と、回転軸12に固定される駆動用磁石13と、を備えている。回転軸12は、上下方向に細長い略円筒状に形成されており、回転軸12の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、回転軸12の軸方向であるとともにロータ11の軸方向である。そして、駆動用磁石13は、円筒状に形成されている。駆動用磁石13の長さ(上下方向の長さ)は、回転軸12よりも短く設定されており、駆動用磁石13は回転軸12の下端側部分の外周面に固定されている。
【0042】
ステータ14は、全体として略円筒状に形成されており、駆動用磁石13の外周面を覆うように駆動用磁石13の外周側(径方向外側)に配置されている。回転軸12の上端側部分は、ステータ14の上端面よりも上側に突出している。このステータ14は、駆動用コイル(不図示)と、インシュレータを介して駆動用コイルが巻回される複数の突極を有するステータコア(不図示)と、を備えている。ステータコアの突極は、内周側に向かって突出するように形成されており、突極の先端面は、駆動用磁石13の外周面に対向している。モータ10は、ケース体80に固定されている。具体的には、ステータ14の外周面がケース体80に固定されている。
【0043】
減速機20は、前述したように、剛性内歯歯車21と、可撓性外歯歯車22と、波動発生部23と、クロスローラベアリング26と、を備えている。剛性内歯歯車21は、扁平な略円筒状に形成されており、剛性内歯歯車21の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、減速機20の出力軸である剛性内歯歯車21の軸方向となっている。そして、剛性内歯歯車21は、クロスローラベアリング26の内輪26aに固定されている。クロスローラベアリング26の外輪26bは、ケース体80の下端側部分に固定されており、剛性内歯歯車21は、クロスローラベアリング26を介してケース体80の下端側部分に回転可能に保持されている。
【0044】
可撓性外歯歯車22は、上端にフランジ部22aを有して鍔付きの略筒状に形成されている。フランジ部22aは、略円環状に形成されており、フランジ部22aの外周側部分は、ケース体80に固定されている。すなわち、減速機20は、ケース体80に固定されている。また、剛性内歯歯車21は、減速機20の下端側部分を構成している。可撓性外歯歯車22のフランジ部22aは、減速機20の上端側部分を構成している。剛性内歯歯車21の内周面には、内歯が形成されている。可撓性外歯歯車22の下端側の外周面には、剛性内歯歯車21の内歯と噛み合う外歯が形成されている。
【0045】
波動発生部23は、前述したように、入力軸24とウエーブベアリング25とを備えている。入力軸24は、全体として上下方向に細長い筒状に形成されており、入力軸24の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、入力軸24の、下端側部分以外の部分は、細長い略円筒状に形成されている。入力軸24の下端側部分は、入力軸24の軸方向から見たときの内周面の形状が円形状に形成されており、入力軸24の軸方向から見たときの外周面の形状が楕円形状となる楕円部24aとなっている。
【0046】
波動発生部23の入力軸24の上端側部分は、モータ10の回転軸12の下端側部分の内周側に挿入されて固定されている。具体的には、入力軸24の上端側部分は、回転軸12の、駆動用磁石13が固定された部分の内周側に挿入されて固定されている。回転軸12と入力軸24とは同軸上に配置されている。また、入力軸24の上端側部分は、接着により回転軸12に固定されている。
【0047】
上下方向における入力軸24の中心部分は、ベアリング16に回転可能に支持されている。ベアリング16は、ボールベアリングである。このベアリング16は軸受保持部材15に取り付けられ、軸受保持部材15はケース体80に固定されている。すなわち、入力軸24は、軸受保持部材15を介してケース体80に取り付けられるベアリング16に回転可能に支持されている。軸受保持部材15は、円環状かつ平板状に形成されており、可撓性外歯歯車22のフランジ部22aと上下方向で重なるようにケース体80に固定されている。
【0048】
ウエーブベアリング25は、可撓性の内輪(不図示)及び外輪(不図示)を備えたボールベアリングである。このウエーブベアリング25は、楕円部24aの外周面に沿って配置されており、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車22の、外歯が形成される下端側部分は、ウエーブベアリング25を囲むようにウエーブベアリング25の外周側に配置されており、この部分は、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車22の外歯は、楕円状に撓む可撓性外歯歯車22の下端側部分の長軸方向の2か所で、剛性内歯歯車21の内歯と噛み合っている。
【0049】
出力側部材18は、フランジ部18aと筒部18bとを有して鍔付きの略円筒状に形成されている。この出力側部材18は、出力側部材18の軸方向と上下方向とが一致するように配置されており、出力側部材18の内周側には、上下方向に貫通する貫通孔18cが形成されている。フランジ部18aは、平板状かつ円環状に形成されており、筒部18bの下端に繋がっている。フランジ部18aは、フランジ部18aの上面が剛性内歯歯車21の下面に接触するように剛性内歯歯車21に固定されている。また、フランジ部18aは、ケース体80の下端よりも下側に配置されており、ケース体80の外側に配置されている。
【0050】
筒部18bの上端側には、筒部18bの下端側部分よりも外径の小さい小径部18dが形成されており、筒部18bの上端側部分の外周側には、上下方向に直交する円環状の段差面18eが形成されている。小径部18dは、管状部材17の下端側部分の内周側に挿入されており、管状部材17の下端面は、段差面18eに対向している。また、貫通孔18cは、管状部材17の内周側に通じている。筒部18bの上端側部分は、減速機20の入力軸24の下端側部分の内周側に配置されている。筒部18bの外周面と入力軸24の下端側部分の内周面との間には、ベアリング19が配置されている。ベアリング19は、ボールベアリングである。
【0051】
管状部材17は、上下方向に細長い円筒状に形成されており、管状部材17の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。前述のように、管状部材17は、回転軸12及び入力軸24の内周側に挿通されている。管状部材17の上端面は、回転軸12の上端面よりも上側に配置され、管状部材17の下端面は、入力軸24の下端面よりも上側に配置されている。また、前述したように、管状部材17の下端側部分の内周側に出力側部材18の小径部18dが挿入されるとともに管状部材17の下端面が段差面18eに対向しており、管状部材17の下端側は、出力側部材18に保持されている。
【0052】
管状部材17の上端側は、保持部材50に保持されている。保持部材50は、支柱51に固定され、支柱51は、ケース体80に固定されている。すなわち、保持部材50は、支柱51を介してケース体80に固定されている。保持部材50は、管状部材17の上端側を保持する円筒状の保持部50aを備えている。保持部50aは、保持部50aの軸方向と上下方向とが一致するように配置されており、保持部50aの内周側には、上下方向に貫通する貫通孔50bが形成されている。
【0053】
保持部50aの下端側には、保持部50aの上端側よりも内径の大きい大径部50cが形成されており、保持部50aの下端側部分の内周側には、上下方向に直交する円環状の段差面50dが形成されている。管状部材17の上端側は大径部50cの内周側に挿入されており、管状部材17の上端面は段差面50dに対向している。また、貫通孔50bは、管状部材17の内周側に通じている。
【0054】
位置検出機構60は、モータ10のステータ14の上側に配置されている。この位置検出機構60は、回転軸12の上端側に固定されるスリット板61と、センサ62と、を備えている。センサ62は、互いに対向するように配置される発光素子と受光素子とを備える透過型の光学式センサである。センサ62は、エンコーダホルダとしての固定部材70に固定されている。
【0055】
固定部材70は、平板状かつ円環状に形成されており、ケース体80に固定されている。センサ62は固定部材70の径方向一方側(
図3中の左側)の部分の上側の面上に配置されており、固定部材70を介してケース体80に固定されている。また、
図5に示すように、後述する、規制ユニット32をスライド移動自在に支持するための2つの支持部71,71は、固定部材70の上側の面上に、センサ62及び管状部材17を挟むように配置されている。支持部71は、支持本体71aと、付勢部材としての圧縮コイルバネ71bと、を有している。
図3及び
図5に示すように、支持部71の支持本体71aはブロック状にそれぞれ形成されており、上側に突出して固定部材70と一体に設けられる。また、
図3、
図4、及び
図6に示すように、固定部材70の径方向他方側(
図3中の右側)には、同様に後述する、線状リブ部72eが上側に突出して固定部材70と一体に設けられる。
【0056】
図3に示すように、位置検出機構60のスリット板61は、薄い平板状に形成されるとともに円環状に形成されている。スリット板61には、スリット板61の周方向に一定の間隔で複数のスリット孔(不図示)が形成されている。スリット板61は、スリット板61の周方向の一部分がセンサ62の発光素子と受光素子との間に配置されるようにモータ10の回転軸12に固定されている。
【0057】
ケース体80は、上下の両端が開口するケース本体81と、ケース本体81の上端側の開口を塞ぐカバー82と、を備えている。ケース本体81の下端側の開口は、減速機20により塞がれている。ケース本体81の側面には、上下方向に直交する方向で開口する開口部81aが形成されている。すなわち、ケース体80には、上下方向に直交する方向で開口する開口部81aが形成されている。開口部81aは、ケース本体81の側面部分を貫通するように形成されている。
【0058】
また、カバー82の上面部分には、後述する駆動機構40を構成する、ピン42が配置される貫通孔82aが形成されている。すなわち、ケース体80には、貫通孔82aが形成されている。貫通孔82aは、上下方向でカバー82の上面部分を貫通するように形成されており、貫通孔82aを介してケース体80の内部と外部とが連通している。また、貫通孔82aは、略丸孔状に形成されている。
【0059】
図3~
図5に示すように、回転規制機構30は、停止しているロータ11をその停止位置で保持するために設けられており、ケース体80に収容されている。この回転規制機構30は、ロータ11に固定される平板状かつ略円環状の回転側規制部材31と、規制部材としての規制ピン33を含み、規制ピン33と回転側規制部材31とを係合させて、ロータ11の周方向における回転側規制部材31の移動を規制するための規制ユニット32と、規制ピン33をロータ11の軸方向に沿って上下方向へ移動させる駆動機構40と、を有して構成される。
【0060】
図3に示すように、駆動機構40は、プランジャ41aを介して規制ピン33を下側へ移動させるソレノイド41と、ソレノイド41のプランジャ41aの上端部に取り付けられるピン42と、を有している。ソレノイド41は、ソレノイド41が通電状態となったときにソレノイド41のプランジャ41aが下側へ突出するようにケース体80に固定されている。プランジャ41aの上端部は、ソレノイド41の本体部41bよりも上側に突出している。本体部41bから上側へ突出しているプランジャ41aの上端部には、ピン42が固定されている。ピン42は、円柱状の軸部42aと、軸部42aの一端から径方向の外側へ広がる円環状のフランジ部42bと、を有して鍔付きの円柱状に形成されている。
【0061】
ピン42は、ピン42の軸方向と上下方向とが一致するように、かつ、フランジ部42bが下側に配置されるようにプランジャ41aの上端部に固定されている。また、ピン42は、プランジャ41aと同軸上に配置されている。ピン42の軸部42aは、ケース体80の貫通孔82aの中に配置されている。軸部42aの外径は、貫通孔82aの内径よりもわずかに小さく設定される。
なお、ピン42のフランジ部42bの下面には、プランジャ41aの上端部が挿入されて固定されるための凹部が形成されている。
【0062】
回転側規制部材31は、回転側規制部材31の厚さ方向と上下方向とが一致するようにモータ10の回転軸12の上端面に固定されており、位置検出機構60よりも上側に配置されている。
図5に示すように、回転側規制部材31の外周面には、径方向の外側へ突出する複数の突起部31aが周方向に沿って一定の間隔で形成されている。本形態では、12個の突起部31aが、回転側規制部材31の中心に対して30°ピッチで形成されている。また、突起部31aは、上下方向から見たときの形状が略等脚台形状となるように形成されている。
なお、回転側規制部材31に形成される突起部31aの数は特に限定されておらず、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。
【0063】
図3~
図5に示すように、規制ユニット32は、後述する規制位置に移動された際、回転側規制部材31の複数の突起部31aの間に挿入される規制ピン33と、規制ピン33をロータ11の軸方向に沿って上下方向へ案内するリニアブッシュ34と、規制ピン33を、リニアブッシュ34を介して上下方向に移動可能に支持する支持部材35と、規制ピン33を上側へ付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネ36と、を備えている。
【0064】
図4に示すように、支持部材35は、ブロック状に形成されており、支持部材35の上面の中央部には、下側に向かって窪む凹部35aが形成されている。また、この凹部35aの底面には窪み35bが下側に向かって窪むように形成されている。この窪み35bには、規制ユニット32の圧縮コイルバネ36の下端側部分が収納されている。また、支持部材35には、ロータ11の内周側の側面(径方向内側面)においてその上端部に径方向内側に延出する延出部35cが設けられる。延出部35cの周方向縁部には、後述する、固定部材70の支持部71の、付勢部材としての圧縮コイルバネ71bの他端部が固定されている。
【0065】
規制ピン33は、上端にフランジ部33aを有して鍔付きの円柱状に形成されている。また、規制ピン33は、規制ピン33の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。フランジ部33aは円環状に形成されており、上下方向から見たときのフランジ部33aの外形は円形状に設けられる。また、規制ピン33は、規制ピン33の上側に配置される駆動機構40のプランジャ41aに非固定の状態にて当接されている。そのため、規制ピン33は、プランジャ41aにより軸方向の移動が規制される一方、軸方向に垂直な面内において相対移動可能に設けられる。換言すれば、駆動機構40は、駆動機構40のプランジャ41aの下端部で規制ピン33に対し非固定の状態にて当接しており、規制ピン33の軸方向の移動のみを規制している。
【0066】
また、規制ピン33は、上下方向から見たときに回転側規制部材31の外周側(径方向外側)に配置されている。具体的には、上下方向から見たときに、
図4(B)、
図5に示すように、回転側規制部材31の複数の突起部31aの先端面を結ぶ仮想円よりも、規制ピン33のフランジ部33aの一部がロータ11の径方向の内側に配置されるように、規制ピン33が配置されている。また、
図4に示すように、規制ピン33の下端部には、上側に向かって窪む凹部33bが形成されており、凹部33bには圧縮コイルバネ36の上端側部分が収納されている。
【0067】
図3及び
図4に示すように、リニアブッシュ34は、その上端にフランジ部34aを有して鍔付きの円筒状に形成されており、リニアブッシュ34の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。リニアブッシュ34の、フランジ部34aよりも下側の部分は、支持部材35の凹部35aに収納されている。リニアブッシュ34の内周側には、規制ピン33の、フランジ部33aよりも下側の部分が収納されている。これにより、規制ピン33は、リニアブッシュ34を介して支持部材35により軸方向に移動可能に支持されている。
【0068】
そして、規制ユニット32は、固定部材70上に配置されており、
図5において、規制ピン33と回転側規制部材31の中心とを結ぶ線に沿った方向(ロータ11の径方向(第一の方向))にスライド可能に設けられる。具体的には、
図4及び
図6に示すように、固定部材70の上面には、第一の方向に延びる線状突部としての線状リブ部72eが、スライドガイドとして設けられている。その一方、規制ユニット32の支持部材35の下面には、線状リブ部72eに係合する係合部として係合溝部35dが形成されている。支持部材35の係合溝部35dは、固定部材70の線状リブ部72eの形状に対応して形成されている。すなわち、線状リブ部72eの、ロータ11の径方向と直交する方向の幅(
図6の左右方向の幅)は、係合溝部35dの当該方向の幅と略同じに設定されている。そのため、所定の嵌合隙間を有して線状リブ部72eと係合溝部35dとが係合する。これにより、規制ユニット32は線状リブ部72eに沿ってガタつきなく摺動案内されて、規制ピン33と回転側規制部材31の中心とを結ぶ線に沿った方向(ロータ11の径方向)に移動可能である。
【0069】
なお、規制ユニット32がロータ11の径方向に沿ってスライド移動自在になる構成であれば、線状リブ部72eと係合溝部35dとの構造に限定されない。例えば、固定部材70の上面に線状リブ部72eに代えて線状溝部を設けてもよい。この場合、規制ユニット32の支持部材35の下面には、この線状溝部に対応する係合部としての係合突起部が設けられる。その他、支持部材35と固定部材70との係合構造は、アリ溝構造なども適宜採用可能であり、この場合、規制ユニット32の軸方向の移動も規制可能である。
【0070】
また、前述のように固定部材70の支持部71は2つ設けられており、各支持部71は、支持本体71aと、付勢部材として圧縮コイルバネ71bをそれぞれ備える。すなわち、本形態では、支持部71は2つの支持部材を備える。
図5に示すように、支持部71の圧縮コイルバネ71bの一端部は支持部71の支持本体71aにそれぞれ固定されている。そして、
図4及び
図5に示すように、圧縮コイルバネ71bの他端部は規制ユニット32の支持部材35の延出部35cの周方向縁部にそれぞれ固定されている。また、
図5に示すように、2つの圧縮コイルバネ71b,71bは、上下方向で見たときに、回転側規制部材31と規制ピン33との中心を結ぶ線に対して同じ角度θにて規制ユニット32を引っ張るように配置される。すなわち、圧縮コイルバネ71bは当該中心を結ぶ線に対し互いに線対称となるようにそれぞれ配置されている。
【0071】
なお、別の形態として、2つの圧縮コイルバネ71b,71bの他端部同士が一体に連結されており、その他端部が、支持部材35の、ロータ11の径方向外側の側面に係合するように配置されてもよい。この場合、2つの圧縮コイルバネ71b,71bは、支持部材35を、ロータ11の径方向外側から押圧して付勢するので、支持部材35に延出部35cを設ける必要がなく、構造を簡素化可能である。また、本形態では規制ユニット32を引っ張る圧縮コイルバネ71bを2つ用いたが、これに限定されず、規制ユニット32を回転側規制部材31側に向けて付勢できれば1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0072】
このような構成により、固定部材70の支持部71は、ロータ11の軸方向に垂直な面内において回転側規制部材31の中心と規制ピン33との距離が可変となる方向、すなわち規制ピン33と回転側規制部材31の中心とを結ぶ線に沿った方向に規制ユニット32をスライド移動自在に支持している。また、圧縮コイルバネ71bはその両端で固定部材70の支持部71と規制ユニット32の支持部材35とにそれぞれ固定されているので、規制ユニット32を回転側規制部材31の中心側に向けて引っ張ることで規制ユニット32を回転側規制部材31側に向けて付勢している。
【0073】
また、本形態では、駆動機構40のソレノイド41は、モータ10の停止時に非通電状態となっており、モータ10の駆動時に通電状態となる。
図4(B)及び
図5に示すように、ソレノイド41が通電状態でないとき、規制ユニット32の圧縮コイルバネ36の付勢力により、回転側規制部材31の突起部31aの間に規制ピン33のフランジ部33aが配置されるように規制ピン33が上昇している。そのため、回転側規制部材31の突起部31aと規制ピン33のフランジ部33aとの係合により、停止しているロータ11の回転が規制される。また、このとき、規制ユニット32は、回転側規制部材31と規制ピン33との中心を結ぶ線上でスライド移動自在に設けられるとともに、支持部71の2つの圧縮コイルバネ71b,71bにより回転側規制部材31側に向けて付勢される。
【0074】
その一方、ソレノイド41が通電状態となると、
図4(A)に示すように、プランジャ41aが下側へ突出して、回転側規制部材31の突起部31aの間から規制ピン33のフランジ部33aが外れるまで、規制ピン33が下降する。そのため、ロータ11が回転可能となる。
【0075】
このように、駆動機構40は、回転側規制部材31の突起部31aの間に規制ピン33のフランジ部33aが配置される規制位置(
図4(B)に示す位置)と、回転側規制部材31の突起部31aの間から規制ピン33のフランジ部33aが外れる規制解除位置(
図4(A)に示す位置)との間で規制ピン33を移動させる。また、支持部材35に収納された規制ユニット32の圧縮コイルバネ36は、規制位置に向かって規制ピン33を付勢する。ソレノイド41は、規制位置にある規制ピン33を規制解除位置に向かって移動させる。
【0076】
本形態の規制ピン33のフランジ部33aは、回転側規制部材31の突起部31aの間に入り込んで、ロータ11の周方向における回転側規制部材31の移動を規制する規制部となっている。そして、規制ユニット32は、回転側規制部材31に向けて付勢された状態で、回転側規制部材31と規制ピン33との中心を結ぶ線に沿った方向でスライド移動可能に設けられるので、ロータ11の回転中に規制ユニット32の規制ピン33が回転側規制部材31の隣り合う突起部31a間に入り込んだ場合には、規制ピン33が回転側規制部材31から過度な力を受けるのが防止される。
なお、規制ピン33が規制解除位置にあるときには、回転側規制部材31の外周側に配置される駆動機構40のプランジャ41aは、回転側規制部材31の突起部31aに接触しない位置に配置されている。
【0077】
回路基板Bは、ガラスエポキシ基板などのリジッド基板であり、平板状に形成されている。この回路基板Bは、回路基板Bの厚さ方向と上下方向とが一致するようにケース体80に固定されている。また、回路基板Bは、ケース体80の上端側に固定されており、回転側規制部材31よりも上側に配置されている。管状部材17の上端は、回路基板Bの上面よりも上側に配置されている。
【0078】
回路基板Bには、モータ10を駆動するためのモータ駆動回路や、回路基板Bに入力される信号を回路基板Bの外部へ出力するための信号伝達回路が実装されている。また、回路基板Bには、少なくとも2個のコネクタが実装されている。2個のコネクタのうちの一方のコネクタに接続される配線は、管状部材17の内周側を通過するように引き回された後、出力側部材18の貫通孔18cから引き出されている。他方のコネクタに接続される配線は、ケース体80の開口部81aから引き出されている。
【0079】
(関節部、アームの連結構造)
再度
図2を参照して、本形態に係るロボット1の関節部2及びアーム3の連結構造について説明する。
上述したように、支持部材4と第1関節部2Aとが相対回動可能に連結され、第1関節部2Aと第2関節部2Bとが相対回動可能に連結されている。また、第2関節部2Bと第1アーム3Aの基端とが固定され、第1アーム3Aの先端と第3関節部2Cとが固定され、第3関節部2Cと第4関節部2Dとが相対回動可能に連結されている。また、第4関節部2Dと第2アーム3Bの基端とが相対回動可能に連結され、第2アーム3Bの先端と第5関節部2Eとが固定され、第5関節部2Eと第6関節部2Fとが相対回動可能に連結されている。具体的には、たとえば、
図2(B)に示す動作をロボット1が行うことが可能となるように、以下のように、各関節部2及びアーム3が連結されている。
【0080】
なお、以下の説明では、第1関節部2Aの剛性内歯歯車21の軸方向を「第1関節部2Aの軸方向」とし、第2関節部2Bの剛性内歯歯車21の軸方向を「第2関節部2Bの軸方向」とする。また、第3関節部2Cの剛性内歯歯車21の軸方向を「第3関節部2Cの軸方向」とし、第4関節部2Dの剛性内歯歯車21の軸方向を「第4関節部2Dの軸方向」とする。また、第5関節部2Eの剛性内歯歯車21の軸方向を「第5関節部2Eの軸方向」とし、第6関節部2Fの剛性内歯歯車21の軸方向を「第6関節部2Fの軸方向」とする。
【0081】
まず、支持部材4と第1関節部2Aとは、第1関節部2Aのフランジ部18aに、支持部材4の、フランジ部4aが形成されていない側の端面が固定されることで連結されている。すなわち、第1関節部2Aの軸方向と支持部材4の軸方向とが一致するように支持部材4と第1関節部2Aとが連結されている。第1関節部2Aと第2関節部2Bとは、第1関節部2Aの軸方向と第2関節部2Bの軸方向とが直交するように連結されている。また、第2関節部2Bのフランジ部18aに、第1関節部2Aのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。
【0082】
第2関節部2Bと第1アーム3Aとは、第2関節部2Bの軸方向と第1アーム3Aの長手方向(軸方向)とが直交するように連結されている。また、第2関節部2Bのケース本体81の、開口部81aが形成された側面に第1アーム3Aの基端が固定されている。第1アーム3Aと第3関節部2Cとは、第1アーム3Aの長手方向と第3関節部2Cの軸方向とが直交するように連結されている。また、第3関節部2Cのケース本体81の、開口部81aが形成された側面に第1アーム3Aの先端が固定されている。
【0083】
第3関節部2Cと第4関節部2Dとは、第3関節部2Cの軸方向と第4関節部2Dの軸方向とが直交するように連結されている。また、第3関節部2Cのフランジ部18aに、第4関節部2Dのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。より具体的には、第4関節部2Dのケース本体81の開口部81aが形成された側面に固定される連結部材5を介して、第3関節部2Cのフランジ部18aに、第4関節部2Dのケース本体81の開口部81aが形成された側面が固定されている。連結部材5は、第3関節部2Cのフランジ部18aに固定されるフランジ部5aを備えて鍔付きの円筒状に形成されている。
【0084】
第4関節部2Dと第2アーム3Bとは、第4関節部2Dの軸方向と第2アーム3Bの長手方向とが一致するように連結されている。また、第4関節部2Dのフランジ部18aに第2アーム3Bの基端が固定されている。
なお、第2アーム3Bの基端には、第4関節部2Dのフランジ部18aに第2アーム3Bの基端を固定するためのフランジ部3aが形成されており、第4関節部2Dのフランジ部18aとフランジ部3aとが互いに固定されている。
【0085】
第2アーム3Bと第5関節部2Eとは、第2アーム3Bの長手方向と第5関節部2Eの軸方向とが直交するように連結されている。また、第5関節部2Eのケース本体81の、開口部81aが形成された側面に第2アーム3Bの先端が固定されている。第5関節部2Eと第6関節部2Fとは、第5関節部2Eの軸方向と第6関節部2Fの軸方向とが直交するように連結されている。また、第5関節部2Eのフランジ部18aに、第6関節部2Fのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。
【0086】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、関節部(回転アクチュエータ)2は、ロータ11及びステータ14を有するモータ10と、停止しているロータ11の回転を規制するための回転規制機構30と、を備え、回転規制機構30は、ロータ11に固定された円環状の回転側規制部材31と、回転側規制部材31の外周面に周方向に沿って形成された複数の突起部31aの間に挿入されて周方向における回転側規制部材31の移動を規制する規制ピン(規制部材)33を含む規制ユニット32と、規制ピン33をロータ11の軸方向に移動させるための駆動機構40と、を有し、ロータ11の軸方向に垂直な面内において回転側規制部材31の中心と規制ピン33との距離が可変となる方向に規制ユニット32を移動自在に支持する支持部71を備える。
【0087】
すなわち、本形態では、関節部(回転アクチュエータ)2は、ロータ11の軸方向に垂直な面内において回転側規制部材31の中心と規制ピン33との距離が可変となる方向に規制ユニット32をスライド移動自在に支持する支持部71を含む。そのため、規制ユニット32の規制ピン33が回転側規制部材31の中心に対し離間方向に移動可能であるので、ロータ11の回転中に規制ユニット32の規制ピン33が回転側規制部材31の隣り合う突起部31a間に入り込んだ場合に、規制ユニット32の規制ピン33が突起部31aから受ける力の一部を逃がしてその衝撃力を緩和することができる。従って、規制ユニット32の破損や変形などの発生を抑制して、回転規制機構30の耐久性を向上させることができる。
【0088】
また、本形態では、規制ユニット32が、規制ピン(規制部材)33と回転側規制部材31の中心とを結ぶ線に沿った方向に移動可能である。そのため、規制ユニット32は回転側規制部材31の周方向に沿った仮想円の接線に対し垂直な方向にスライド移動可能であるので、規制ピン33が回転側規制部材31の突起部31aから受ける力の一部を効率的に逃がすことができる。
【0089】
また、本形態では、規制ユニット32は、固定部材70に形成された線状リブ部(線状突部)72eに配置され、更に、線状リブ部72eに係合する係合溝部(係合部)35dを有している。規制ユニット32は、線状リブ部72eと係合溝部35dとが係合して、線状リブ部72aに沿って摺動案内されてロータ11の径方向に移動し、線状リブ部72eのロータ11の径方向と直交する方向の幅は、係合溝部35dの当該方向の幅と実質的に同じである。そのため、規制ユニット32の移動方向と直交する方向での位置が線状リブ部72eにより規制され、また、この線状リブ部72eと規制ユニット32の係合溝部35dとの係合状態で嵌合隙間が小さく設けられるので、ガタの発生を抑制して規制ピン33の位置決めを精度良く行うことができる。2つの幅が実質的に同じとは、理想的にはこの2つの幅が完全に一致する場合を言うが、この2つの幅の差には設計上許容される公差が含まれていてもよい。
【0090】
また、本形態では、支持部71は、規制ユニット32を回転側規制部材31側に向けて付勢する圧縮コイルバネ(付勢部材)71bを備える。そのため、規制ユニット32は圧縮コイルバネ71bにより回転側規制部材31側に向けて付勢されるので、規制ユニット32が回転側規制部材31から離間する方向に移動しても、その付勢力で回転側規制部材31側に戻され、規制ピン33による規制を確実に行うことができる。
【0091】
また、本形態では、支持部71は、2つの圧縮コイルバネ(付勢部材)71b,71bを備え、2つの圧縮コイルバネ71b,71bは、規制ユニット32を回転側規制部材31側に向けて引っ張ることで規制ユニット32を回転側規制部材31側に向けて付勢する。そのため、規制ユニット32に対しロータ11の回転軸12側に2つの圧縮コイルバネ71b,71bを配置できるので、回転アクチュエータの大型化を回避することができる。
【0092】
また、本形態では、2つの圧縮コイルバネ(付勢部材)71b,71bの各々は、第一の方向に対して同じ角度にて規制ユニット32を引っ張っている。そのため、引っ張り力(付勢力)の損失なく、ロータ11の回転軸12に向かって規制ユニット32を付勢することができる。また、2つの圧縮コイルバネ71b,71bを第一の方向に対して同じ角度θで配置することで、ロータ11の回転軸12に向かってバランス良く付勢でき、特に本形態では、固定部材70の線状リブ部72eに沿ってバランス良く引っ張ることができる。なお、2つの圧縮コイルバネ71b,71bのバネ定数は同一としておくことで、上述した効果を容易に得ることができる。
【0093】
また、本形態では、規制ユニット32は、規制ピン(規制部材)33を軸方向に移動可能に支持する支持部材35を備え、2つの圧縮コイルバネ(付勢部材)71b,71bは、支持部材35に固定されている。圧縮コイルバネ71b,71bは支持部材35に固定されるので、支持部材35を圧縮コイルバネ71bで付勢することで規制ユニット32を安定して付勢することができる。
【0094】
また、本形態では、駆動機構40のプランジャ41aは、規制ピン(規制部材)33に対し非固定の状態にて当接している。そのため、規制ユニット32が移動する際、この移動に伴って駆動機構40も移動する必要がないので、構造を簡素化して製造コストを削減することができる。
【0095】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0096】
上述した形態では、支持部71の付勢部材として2つの圧縮コイルバネ71b,71bを備え、2つの圧縮コイルバネ71b,71bは、規制ユニット32を回転側規制部材31側に引っ張ることで規制ユニット32を回転側規制部材31側に向けて付勢したが、これに限定されない。
【0097】
上述した形態の変形例として、
図7に示すように、支持部71が規制ユニット32の外周側(ロータ11の径方向外側)に配置されており、支持部71は付勢部材として1つの圧縮コイルバネ71bを備え、この圧縮コイルバネ71bは、規制ユニット32を、ロータ11の径方向外側から径方向内側に向けて押圧するように設けてもよい。この場合、1つの圧縮コイルバネ71bにより、規制ユニット32を回転側規制部材31側に向けてロータ11の径方向に付勢するので、構造を簡素化して製造コストを削減することができる。
【0098】
上述した形態では、規制ユニット32は、規制ピン33と回転側規制部材31の中心とを結ぶ線に沿った方向にスライド可能に設けられるが、規制ユニット32の移動できる方向は、回転側規制部材31の中心と規制ピン33との距離が可変となる方向であればよい。
【0099】
例えば、規制ユニット32の移動できる方向は、規制ピン33と回転側規制部材31の中心とを結ぶ線に沿った方向と交差する方向(ただし、規制ピン33と回転側規制部材31の中心とを結ぶ線に沿った方向と直交する方向は含まない)であってもよい。このような方向であれば、ロータ11の回転中に規制ユニット32の規制ピン33が回転側規制部材31の隣り合う突起部31a間に入り込んだ場合に、規制ピン33が回転側規制部材31から離間する方向に移動できるため、規制ピン33が突起部31aから受ける力の一部を逃がすことができる。
【0100】
上述した形態では、規制ユニット32の圧縮コイルバネ36が規制ピン33を上側へ付勢し、ソレノイド41が規制ピン33を下側へ移動させているが、これに限定されない。例えば、圧縮コイルバネ36が規制ピン33を下側へ付勢し、ソレノイド41が規制ピン33を上側へ移動させてもよい。また、上述した形態では、規制ユニット32の圧縮コイルバネ36により規制ピン33が付勢されているが、これに限定されない。例えば、引張りコイルバネなどの他のバネ部材により規制ピン33が付勢されてもよい。
【0101】
上述した形態では、駆動機構40のプランジャ41aの上端部にピン42が固定されているが、これに限定されない。例えば、プランジャ41aの上端部にピン42が固定されていなくてもよい。この場合には、ソレノイド41の本体部41bよりも上側に突出するプランジャ41aの上端部の長さが長くなっており、プランジャ41aの上端部は、ケース体80の貫通孔82aの中に配置されている。また、規制ピン33が規制位置にあるとき、プランジャ41aの上端部はケース体80の外部に突出しており、ケース体80の外部に突出しているプランジャ41aの上端部がケース体80の内部に向かって例えば指などで押されると、規制位置にある規制ピン33が規制解除位置へ移動する。
【0102】
上述した形態では、剛性内歯歯車21が減速機20の出力軸となっているが、これに限定されない。例えば、可撓性外歯歯車22が減速機20の出力軸となっていてもよい。この場合、剛性内歯歯車21がケース体80及びクロスローラベアリング26の内輪26aに固定され、可撓性外歯歯車22がクロスローラベアリング26の外輪26b及び出力側部材18のフランジ部18aに固定される。また、上述した形態では、減速機20は、中空波動歯車装置であるが、これに限定されない。例えば、減速機20は、中空波動歯車装置以外の中空減速機であってもよい。また、減速機20は、中空減速機以外の減速機であってもよい。また、上述した形態では、モータ10は中空モータであるが、これに限定されない。例えば、モータ10は中空モータ以外のモータであってもよい。また、上述した形態では、モータ10はいわゆるインナーロータ型のモータであるが、これに限定されない。例えば、モータ10は、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0103】
上述した形態では、ロボット1は、6個の関節部2を備えているが、これに限定されない。例えば、ロボット1が備える関節部2の数は5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。また、上述した形態では、ロボット1は2本のアーム3を備えているが、これに限定されない。例えば、ロボット1が備えるアーム3の数は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、上述した形態では、ロボット1の関節部2がモータ10及び減速機20などを有する回転アクチュエータによって構成されているが、これに限定されない。例えば、回転アクチュエータはロボット1の関節部2以外に使用されてもよい。またその他、回転アクチュエータはθステージ(回転ステージ)の駆動部などに使用されてもよい。また、上述した形態では、ロボット1は、産業用ロボットであるが、ロボット1は、様々な用途に適用可能である。例えば、ロボット1は、サービス用ロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 産業用ロボット
2 関節部
10 モータ
11 ロータ
12 回転軸
30 回転規制機構
31 回転側規制部材
31a 突起部
32 規制ユニット
33 規制ピン(規制部材)
33a フランジ部
35 支持部材
35a 凹部
35d 係合溝部(係合部)
36 圧縮コイルバネ
40 駆動機構
41 ソレノイド
41a プランジャ
70 固定部材
71 支持部
71a 支持本体
71b 圧縮コイルバネ(付勢部材)
72e 線状リブ部(線状突部)