IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-不整地走行用のタイヤ 図1
  • 特許-不整地走行用のタイヤ 図2
  • 特許-不整地走行用のタイヤ 図3
  • 特許-不整地走行用のタイヤ 図4
  • 特許-不整地走行用のタイヤ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】不整地走行用のタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/11 20060101AFI20220511BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60C11/11 A
B60C11/03 300E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018153648
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020026256
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】疋田 真浩
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/174851(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318675(US,A1)
【文献】特開2012-25307(JP,A)
【文献】特開平08-332809(JP,A)
【文献】特開2016-2885(JP,A)
【文献】特開2010-173459(JP,A)
【文献】特開2015-89780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用のタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ赤道に中心を有し、かつ、トレッド展開幅の1/3の展開幅を有するクラウン領域と、その両外側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するミドル領域と、前記ミドル領域の両外側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するショルダー領域とを含み、
前記クラウン領域、前記ミドル領域及び前記ショルダー領域には、それぞれクラウンブロック、ミドルブロック及びショルダーブロックが複数配置されており、
前記各ミドルブロックは、いずれかの前記クラウンブロックとクラウンタイバーで連結され、かつ、いずれかの前記ショルダーブロックとショルダータイバーで連結され、
前記ショルダー領域のランド比は、前記クラウン領域のランド比の90%~115%である、
不整地走行用のタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダータイバーは、前記ショルダーブロックの一つから、前記ミドルブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第1ショルダータイバーを含む、請求項1記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダータイバーは、前記ミドルブロックの一つから、前記ショルダーブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第2ショルダータイバーを含む、請求項1又は2記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダータイバーは、前記ミドルブロックの一つから、前記ショルダーブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第2ショルダータイバーを含み、
前記第1ショルダータイバーと前記第2ショルダータイバーとがタイヤ周方向に交互に配置されている、請求項2に記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダータイバー及び前記クラウンタイバーの高さは、前記クラウンブロック、前記ミドルブロック及び前記ショルダーブロックのうちの最大ブロック高さの10%~40%である、請求項1ないし4のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項6】
前記ショルダータイバーの長手方向と直交する幅は、前記ショルダーブロックのタイヤ軸方向長さの50%以上の部分を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項7】
前記ミドルブロック及びショルダーブロックの少なくとも一つは、第1頂面と、前記第1頂面よりもブロック高さが小さい第2頂面とを含む段差状踏面を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項8】
前記第1頂面と前記第2頂面との間には溝が設けられ、
前記溝は、タイヤ軸方向に延びる一対の軸方向部を含む、請求項7に記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項9】
前記一対の軸方向部のそれぞれは、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜部と、前記第1傾斜部と逆向きに傾斜する第2傾斜部とを含む、請求項8に記載の不整地走行用のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地走行用のタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、複数のブロックを設けた不整地走行用の空気入りタイヤが記載されている。このような空気入りタイヤは、複数のブロックが、砂地や泥濘地等の軟弱路に食い込み、前記ブロックのエッジにより、トラクションや旋回力を得て操縦安定性を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5615924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述のような空気入りタイヤにおいて、軟弱路のみならず、アスファルト路面などの硬質路においても、操縦安定性能を高めることが期待されている。また、この種の空気入りタイヤにおいて、ブロックの欠けを抑制することが期待されている。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出されたもので、軟弱路や硬質路での操縦安定性能を高めるとともに、ブロックの欠けを抑制する不整地走行用のタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用のタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ赤道に中心を有し、かつ、トレッド展開幅の1/3の展開幅を有するクラウン領域と、その両外側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するミドル領域と、前記ミドル領域の両外側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するショルダー領域とを含み、前記クラウン領域、前記ミドル領域及び前記ショルダー領域には、それぞれクラウンブロック、ミドルブロック及びショルダーブロックが複数配置されており、前記各ミドルブロックは、いずれかの前記クラウンブロックとクラウンタイバーで連結され、かつ、いずれかの前記ショルダーブロックとショルダータイバーで連結され、前記ショルダー領域のランド比は、前記クラウン領域のランド比の90%~115%である。
【0007】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダータイバーが、前記ショルダーブロックの一つから、前記ミドルブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第1ショルダータイバーを含むのが望ましい。
【0008】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダータイバーが、前記ミドルブロックの一つから、前記ショルダーブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第2ショルダータイバーを含むのが望ましい。
【0009】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダータイバーが、前記ミドルブロックの一つから、前記ショルダーブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第2ショルダータイバーを含み、前記第1ショルダータイバーと前記第2ショルダータイバーとがタイヤ周方向に交互に配置されているのが望ましい。
【0010】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダータイバー及び前記クラウンタイバーの高さが、前記クラウンブロック、前記ミドルブロック及び前記ショルダーブロックのうちの最大ブロック高さの10%~40%であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダータイバーの長手方向と直交する幅が、前記ショルダーブロックのタイヤ軸方向長さの50%以上の部分を含むのが望ましい。
【0012】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ミドルブロック及びショルダーブロックの少なくとも一つが、第1頂面と、前記第1頂面よりもブロック高さが小さい第2頂面とを含む段差状踏面を含むのが望ましい。
【0013】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記第1頂面と前記第2頂面との間には溝が設けられ、前記溝は、タイヤ軸方向に延びる一対の軸方向部を含むのが望ましい。
【0014】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記一対の軸方向部のそれぞれが、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜部と、前記第1傾斜部と逆向きに傾斜する第2傾斜部とを含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の不整地走行用のタイヤでは、ミドルブロックは、いずれかのクラウンブロックとクラウンタイバーで連結され、かつ、いずれかのショルダーブロックとショルダータイバーで連結されている。これにより、各ブロックの剛性が高められ、走行時の各ブロックの変形が抑制されるので、ブロックの欠けが抑制される。また、このような不整地走行用のタイヤは、軟弱路に対するせん断力が高められるので、軟弱路での優れた操縦安定性能を発揮する。さらに、剛性が高められた各ブロックは、硬質路との接地圧を高めることができるので、硬質路での操縦安定性能を向上する。
【0016】
ショルダー領域のランド比は、クラウン領域のランド比の90%~115%である。このような不整地走行用のタイヤは、大きな接地圧が作用するクラウンブロック、及び、大きな横力が作用するショルダーブロックの剛性差が小さくなる。このため、直進走行時及び旋回走行時において、安定した走行が可能になるので、軟弱路や硬質路での操縦安定性能が向上する。
【0017】
したがって、本発明の不整地走行用のタイヤは、軟弱路や硬質路での優れた操縦安定性能を発揮し、かつ、ブロックの欠けを抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の不整地走行用のタイヤの一実施形態を示す横断面図である。
図2図1のトレッド部のトレッドパターンを示す展開図である。
図3図2のミドル領域及びショルダー領域の拡大図である。
図4】(a)は、ミドルブロックの斜視図、(b)は、(a)のB-B線断面図である。
図5図2のクラウン領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示す不整地走行用のタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態における横断面図である。本実施形態では、好ましいタイヤ1として自動二輪車用が示される。なお、本発明は、自動二輪車用に限定されるものではなく、例えば、乗用車用、重荷重用や他のカテゴリーのタイヤ1にも採用される。図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。図1は、図2のA-A線断面図である。
【0020】
「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、横断面において、その外面がタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。
【0024】
本実施形態のタイヤ1の内部には、カーカス6及びベルト層7等が設けられている。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0025】
図2に示されるように、トレッド部2は、クラウン領域Crとミドル領域Miとショルダー領域Shとを含んで区分される。クラウン領域Crは、タイヤ赤道Cに中心を有し、かつ、トレッド展開幅TWeの1/3の展開幅を有している。ミドル領域Miは、クラウン領域Crの両外側に位置し、かつ、トレッド展開幅TWeの1/6の展開幅を有している。ショルダー領域Shは、ミドル領域Miの両外側に位置し、かつ、トレッド展開幅TWeの1/6の展開幅を有している。
【0026】
トレッド展開幅TWeは、トレッド部2を平面に展開したときのトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。トレッド端Teは、トレッド部2の最もタイヤ軸方向外側での接地位置を意味する。
【0027】
クラウン領域Cr、ミドル領域Mi及びショルダー領域Shには、それぞれクラウンブロック11、ミドルブロック12及びショルダーブロック13が複数配置されている。クラウンブロック11は、踏面の図心がクラウン領域Cr内に位置している。ミドルブロック12は、踏面の図心がミドル領域Mi内に位置している。ショルダーブロック13は、踏面の図心がショルダー領域Sh内に位置している。なお、各ブロックの踏面に溝等の凹部が設けられる場合は、その凹部を埋めて得られる仮想踏面の図心が採用される。
【0028】
図1に示されるように、これら各ブロック11ないし13は、トレッド溝10により区画される。トレッド溝10は、本実施形態では、その溝底10bが、カーカス6に沿った滑らかな面で形成される。
【0029】
特に限定されるものではないが、クラウンブロック11、ミドルブロック12及びショルダーブロック13のブロック高さH1~H3は、それぞれ、6~20mmであるのが望ましい。ブロック高さH1~H3は、トレッド溝10の溝底10bから最もタイヤ半径方向外側の踏面までのタイヤ半径方向の高さである。
【0030】
図2に示されるように、各ミドルブロック12は、本実施形態では、いずれかのクラウンブロック11とクラウンタイバー14で連結されている。また、各ミドルブロック12は、本実施形態では、いずれかのショルダーブロック13とショルダータイバー15で連結されている。これにより、クラウンブロック11、ミドルブロック12及びショルダーブロック13の剛性が高められ、走行時の各ブロック11ないし13の変形が抑制されるので、ブロックの欠けが抑制される。また、このようなタイヤ1は、軟弱路に対するせん断力が高められるので、軟弱路での優れた操縦安定性能を発揮する。さらに、剛性が高められた各ブロック11ないし13は、硬質路との接地圧を高めることができるので、硬質路での操縦安定性能を向上する。
【0031】
クラウンタイバー14及びショルダータイバー15は、本実施形態では、トレッド溝10の溝底10bの一部を隆起させた隆起部として形成される。
【0032】
ショルダー領域Shのランド比Lsは、クラウン領域Crのランド比Lcの90%~115%とされる。このようなタイヤ1は、大きな接地圧が作用するクラウンブロック11、及び、大きな横力が作用するショルダーブロック13の剛性差が小さくなる。このため、直進走行時及び旋回走行時において、安定した走行が可能になるので、軟弱路や硬質路での操縦安定性能が向上する。
【0033】
上述の作用を効果的に発揮させるために、ミドル領域Miのランド比Lmは、クラウン領域Crのランド比Lcの95%~105%とされるのが望ましい。これにより、クラウンブロック11ないしショルダーブロック13の剛性差が小さくなるので、直進走行からキャンバー角が大きくなる旋回走行までの間での、唐突な挙動の変化が抑制されるため、さらに操縦安定性能が向上する。各ランド比は、本明細書では、トレッド溝10を埋めて得られる各領域Cr、Mi、Shの仮想接地面の面積Saに対する、各領域Cr、Mi、Shのブロック11~13の踏面の合計面積Sbの比Sb/Saである。
【0034】
本実施形態のショルダータイバー15は、第1ショルダータイバー16と第2ショルダータイバー17とを含んでいる。本実施形態の第1ショルダータイバー16は、ショルダーブロック13の一つから、ミドルブロック12の異なる2つにそれぞれ延びている。本実施形態の第2ショルダータイバー17は、ミドルブロック12の一つから、ショルダーブロック13の異なる2つにそれぞれ延びている。
【0035】
第1ショルダータイバー16は、本実施形態では、ショルダーブロック13と、このショルダーブロック13とタイヤ周方向の両側で隣接するミドルブロック12、12とに連結される。また、第2ショルダータイバー17は、本実施形態では、ミドルブロック12と、このミドルブロック12のタイヤ周方向の両側で隣接するショルダーブロック13、13とに連結される。これにより、第1ショルダータイバー16は、タイヤ軸方向外側に凸の略V字状に形成される。また、第2ショルダータイバー17は、タイヤ軸方向内側に凸の略V字状に形成される。このような第1ショルダータイバー16及び第2ショルダータイバー17は、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向へのミドルブロック12及びショルダーブロック13の動きを拘束して、ブロックの欠けの抑制効果を高める。
【0036】
第1ショルダータイバー16と第2ショルダータイバー17とは、タイヤ周方向に交互に配置される。即ち、本実施形態では、第1ショルダータイバー16に連結される第1ブロック群18と、第2ショルダータイバー17に連結される第2ブロック群19とがタイヤ周方向に交互に配置される。第1ブロック群18は、第1ショルダータイバー16に連結される一つのショルダーブロック13及び二つのミドルブロック12、12で形成される。第2ブロック群19は、第2ショルダータイバー17に連結される一つのミドルブロック12及び二つのショルダーブロック13、13で形成される。これにより、ショルダー領域Sh及びミドル領域Miの剛性差を小さくできるので、軟弱路や硬質路での旋回走行時の安定性が向上する。
【0037】
第1ショルダータイバー16は、一方のミドルブロック12と連結する第1部分16Aと、他方のミドルブロック12と連結する第2部分16Bとで形成されている。第1部分16Aと第2部分16Bとは、ショルダーブロック13で交わることなく、離間して連結されている。第2ショルダータイバー17も、一方のショルダーブロック13と連結する第1部分17Aと、他方のショルダーブロック13と連結する第2部分17Bとで形成され、これらがミドルブロック12で交わることなく離間して連結されている。これにより、各第1部分16A、17A及び第2部分16B、17Bからの荷重がミドルブロック12又はショルダーブロック13に分散して負荷されるので、ブロックの欠けが抑制される。
【0038】
このようなショルダータイバー15のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、30~60度であるのが望ましい。これにより、主に旋回走行時に接地するミドルブロック12及びショルダーブロック13の走行による変形が抑制されるので、硬質路での旋回時のグリップが高められる。ショルダータイバー15の前記角度θ1は、40~50度がさらに望ましい。角度θ1は、トレッド部2の平面視、一つのミドルブロック12と一つのショルダーブロック13との間のショルダータイバー15の幅中心線で決定される。
【0039】
本実施形態のクラウンタイバー14は、各クラウンブロック11の一つからミドルブロック12の異なる2つにそれぞれ延びている。クラウンタイバー14は、クラウンブロック11と、このクラウンブロック11のタイヤ周方向の両側に隣接する2つのミドルブロック12、12とを連結している。これにより、クラウンタイバー14は、タイヤ軸方向内側に凸の略V字状に形成される。
【0040】
クラウンタイバー14は、第1クラウンタイバー21と第2クラウンタイバー22を含んでいる。第1クラウンタイバー21は、第1ショルダータイバー16と連結されるミドルブロック12と、この第1ショルダータイバー16とはタイヤ周方向に隣接する第2ショルダータイバー17と連結されるミドルブロック12とにそれぞれ延びている。第2クラウンタイバー22は、第1ショルダータイバー16に連結される2つのミドルブロック12にそれぞれ延びている。本実施形態では、タイヤ周方向に並ぶ2つの第1クラウンタイバー21のタイヤ周方向の両側に第2クラウンタイバー22が配される。第1クラウンタイバー21と第2クラウンタイバー22との配置はこのような態様に限定されるものではない。
【0041】
クラウンタイバー14は、本実施形態では、一方のミドルブロック12と連結する第1クラウン部14Aと、他方のミドルブロック12と連結する第2クラウン部14Bとを含んでいる。第1クラウン部14Aと第2クラウン部14Bとは、本実施形態では、クラウンブロック11で交わることなく離間して連結されている。なお、クラウンタイバー14は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、一つのクラウンブロック11と一つのミドルブロック12とを連結する第1クラウン部14Aのみで形成される態様でも良い。
【0042】
クラウンタイバー14のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、ショルダータイバー15の前記角度θ1よりも大きいのが望ましい。これにより、クラウンタイバー14は、大きなタイヤ周方向成分を有し、大きな接地圧の作用するクラウンブロック11のタイヤ周方向への移動を効果的に抑制し、硬質路でのグリップを高める。このような観点より、クラウンタイバー14の前記角度θ2は、例えば、35~65度であるのが望ましい。
【0043】
本実施形態では、全てのクラウンブロック11と全てのミドルブロック12とがクラウンタイバー14で連結され、全てのミドルブロック12と全てのショルダーブロック13とがショルダータイバー15で連結されている。なお、本発明はこのような態様に限定されるものではない。
【0044】
ショルダータイバー15の長手方向と直交する幅w1は、ショルダーブロック13のタイヤ軸方向長さWsの50%以上の部分を含んでいる。このようなショルダータイバー15は、旋回時、相対的に大きな横力が作用するショルダーブロック13及びミドルブロック12の剛性を高める。ショルダータイバー15の幅w1が過度に大きい場合、トレッド溝10の溝容積が小さくなり、泥濘地でのトラクションが低下するおそれがある。このため、ショルダータイバー15の幅w1は、ショルダーブロック13の長さWsの90%以上の部分を含まないのが望ましい。
【0045】
ショルダータイバー15は、本実施形態では、タイヤ軸方向外側に向かって、幅w1が漸増している。クラウンタイバー14は、本実施形態では、タイヤ赤道C側に向かって、その長手方向と直交する幅w2が漸増している。ショルダータイバー15は、大きな横力の作用するショルダーブロック13の剛性を高める。クラウンタイバー14は、大きな接地圧の作用するクラウンブロック11の剛性を高める。クラウンタイバー14及びショルダータイバー15は、例えば、直線状に延びている。
【0046】
図1に示されるように、クラウンタイバー14の高さh1及びショルダータイバー15の高さh1は、本実施形態では、クラウンブロック11、ミドルブロック12及びショルダーブロック13のうちの最大ブロック高さHmの10%~40%であるのが望ましい。これにより、各ブロック11~13の剛性が高められつつ、トレッド溝10の溝容積が確保されて、硬質路でのグリップや泥濘地でのトラクションが高められる。
【0047】
図3は、ミドル領域Mi及びショルダー領域Shの拡大図である。図3に示されるように、ミドルブロック12及びショルダーブロック13のそれぞれは、その踏面12a、13aが、例えば、一対の軸方向縁23、23と、一対の軸方向縁23、23の両端間を継ぐ一対の周方向縁24、24とを含む矩形状で形成されている。軸方向縁23は、各ブロック12、13のタイヤ周方向の両側に配されてタイヤ軸方向に延びている。周方向縁24は、各ブロック12、13のタイヤ軸方向の両側に配されてタイヤ周方向に延びている。このような軸方向縁23及び周方向縁24は、旋回走行時の路面に対する引っ掻き力を高めて、操縦安定性能を高める。なお、ミドルブロック12及びショルダーブロック13の各踏面12a、13aは、このような態様に限定されるものではない。
【0048】
ミドルブロック12及びショルダーブロック13の少なくとも1つは、第1頂面25と、第1頂面25よりもブロック高さが小さい第2頂面26とを含む段差状踏面28を含んでいる。段差状踏面28は、本実施形態では、全てのミドルブロック12及び全てのショルダーブロック13に形成されている。
【0049】
段差状踏面28は、本実施形態では、第1頂面25と第2頂面26との間に溝29が設けられる。このような溝29は、ミドルブロック12及びショルダーブロック13のエッジ成分を増加させ、路面に対する摩擦力を高く維持する。
【0050】
本実施形態の溝29は、タイヤ軸方向に延びる一対の軸方向部30と、軸方向部30、30間を継いでタイヤ周方向に延びる周方向部31とを含んでいる。本実施形態では、軸方向部30は、タイヤ周方向に離間している。
【0051】
一対の軸方向部30のそれぞれは、本実施形態では、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜部33と、第1傾斜部33とは逆向きに傾斜する第2傾斜部34とを含んでいる。軸方向部30は、本実施形態では、第1傾斜部33と第2傾斜部34とで各ブロック12、13の外側へ凸となるように屈曲している。
【0052】
軸方向部30は、一方の周方向縁24から他方の周方向縁24に向かって延び、他方の周方向縁24に達することなく踏面内に終端30eを有する。周方向部31は、本実施形態では、両方の終端30e、30e間を継いでいる。
【0053】
本実施形態の第1頂面25は、一対の軸方向部30と周方向部31とで囲まれる六角形状に形成される。本実施形態の第2頂面26は、第1頂面25及び溝29を囲うように、平面視略U字状に形成されている。このような第1頂面25は、軸方向部30が屈曲しているので、タイヤ軸方向の過度の移動・変形が抑制されるので、ブロックの欠けが抑制される。
【0054】
より具体的には、ショルダーブロック13の軸方向部30は、タイヤ赤道C側に配された周方向縁24aからトレッド端Te側に向かって延びている。ミドルブロック12の軸方向部30は、トレッド端Te側に配された周方向縁24bからタイヤ赤道C側に向かって延びている。
【0055】
このような溝29は、その溝幅w3が例えば、0.5~3mm程度が望ましい。また、溝29は、その深さh3(図1に示す)が、0.5~5mmであるのが望ましい。
【0056】
図4(a)は、ミドルブロック12の斜視図である。図4(b)は、(a)のB-B線断面図である。図4に示されるように、第1頂面25からタイヤ半径方向内側に延びる第1ブロック壁25aは、第2頂面26からタイヤ半径方向内側に延びる第2ブロック壁26aよりも各ブロック12、13の外側に突出している。このような第1ブロック壁25a及び第2ブロック壁26aは、泥濘地に対するせん断力を高める。なお、このような第1ブロック壁25a及び第2ブロック壁26aは、ショルダーブロック13に形成されても良い。
【0057】
図3に示されるように、ミドルブロック12は、本実施形態では、タイヤ赤道C側に配された第1ミドルブロック12Aと、第1ミドルブロック12Aよりもトレッド端Te側に配された第2ミドルブロック12Bとを含んでいる。本実施形態のミドル領域Miは、第1ミドルブロック12Aと第2ミドルブロック12Bとがタイヤ周方向に重複するように設けられている。これにより、旋回中の車体の倒れ込みの変化による挙動が安定化する。
【0058】
図5は、クラウン領域Crの拡大図である。図5に示されるように、クラウンブロック11は、本実施形態では、第1クラウンブロック11Aと第2クラウンブロック11Bと第3クラウンブロック11Cとを含んでいる。第1クラウンブロック11Aは、クラウン領域Cr内に配される。第2クラウンブロック11Bは、クラウン領域Crとタイヤ軸方向の一方側のミドル領域Mi(図では右側)とに跨って配される。第3クラウンブロック11Cは、クラウン領域Crとタイヤ軸方向の他方側のミドル領域Mi(図では左側)とに跨って配される。これにより、本実施形態のクラウン領域Crは、タイヤ軸方向に亘ってタイヤ周方向線上にいずれかのクラウンブロック11A~11Cが配されるので、直進から旋回初期での車体の倒れ込みの変化の挙動が安定化し、操縦安定性能が向上する。
【0059】
本実施形態では、クラウン領域Cr及びミドル領域Miが、タイヤ軸方向に亘ってタイヤ周方向線上にいずれかのクラウンブロック11A~11C又はミドルブロック12A、12Bが配される。これにより、直進から旋回中期での車体の倒れ込みの変化の挙動が安定化し、操縦安定性能が向上する。
【0060】
本実施形態では、第1クラウンブロック11A、第2クラウンブロック11B及び第3クラウンブロック11Cで一つのクラウンブロック群11Gが形成され、このクラウンブロック群11Gが、タイヤ周方向並べられる。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0061】
クラウンブロック11は、タイヤ軸方向の中央部をタイヤ周方向に延びる浅底溝35が設けられることにより、2つのブロック片37、37に区分される。このような浅底溝35は、クラウンブロック11のタイヤ周方向のエッジ成分を増加する。浅底溝35は、例えば、その幅w4が、クラウンブロック11の幅Wの5%~25%であるのが望ましく、その深さh4(図1に示す)は、クラウンブロック11のブロック高さH1の5%~50%であるのが望ましい。
【0062】
第1クラウンブロック11Aは、2つのブロック片37、37がタイヤ周方向に位置ずれしない非シフトブロックとして成形されている。第2クラウンブロック11B及び第3クラウンブロック11Cは、2つのブロック片37、37がタイヤ周方向に位置ずれするシフトブロックとして形成されている。
【0063】
以上、本発明の実施形態について、詳述したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形して実施し得るのは言うまでもない。
【実施例
【0064】
図1の基本構造、及び、図2の基本パターンを有する自動二輪車用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの軟弱路及び硬質路での操縦安定性能・ブロックの欠けについてテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0065】
<軟弱路及び硬質路での操縦安定性能・ブロックの欠け>
各試供タイヤが装着された下記テスト車両が、テストライダーによって乾燥アスファルト路面や泥濘地のテストコースを走行された。このときの走行時のグリップや安定性に関する操縦安定性能、及び、走行後のブロックの欠けが、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例1の値を100とする評点で表示されている。数値が大きい程、優れている。
タイヤ:80/100-21(フロント)、120/80-19(リア)
リム:WM1.60(フロント)、WM2.15(リア)
タイヤ内圧:80kPa
テスト車両:排気量450ccのモトクロス競技用の自動二輪車
テストの結果などが表1に示される。
【0066】
【表1】
【0067】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、軟弱路や硬質路において高い操縦安定性能が発揮されること、及び、ブロックの欠けが抑制されることが確認される。
【符号の説明】
【0068】
1 タイヤ
2 トレッド部
11 クラウンブロック
12 ミドルブロック
13 ショルダーブロック
14 クラウンタイバー
15 ショルダータイバー
Cr クラウン領域
Mi ミドル領域
Sh ショルダー領域
Lc クラウン領域のランド比
Ls ショルダー領域のランド比
図1
図2
図3
図4
図5