(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20220511BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20220511BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220511BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/14
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2018175896
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坪井 優季
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】田邉 慎吾
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-158632(JP,A)
【文献】特開2010-209229(JP,A)
【文献】特開2016-053121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含む単量体混合物の共重合体であるアクリル樹脂(A)およびイソシアネート硬化剤(B)を含む粘着剤であって、
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル中のヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシアルキル基中の水酸基が一級水酸基かつ炭素数が3~6であり、
前記アクリル樹脂(A)は、重量平均分子量60万~200万かつ酸価2mgKOH/g以下であり、
前記イソシアネート硬化剤(B)は、炭素数8~24のアルキル基を有し、
配合量が、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して、前記イソシアネート硬化剤(B)0.01質量部以上5質量部未満であ
り、
前記アクリル樹脂(A)の水酸基モル数(OH)に対する前記イソシアネート硬化剤(B)のイソシアナト基モル数(NCO)の比(NCO/OH)が、1未満である、粘着剤。
【請求項2】
前記イソシアネート硬化剤(B)は、1分子当たりのイソシアナト基の平均数が、1.4~2.8個である、請求項
1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記イソシアネート硬化剤(B)が、炭素数12~20のアルキル基を有する、請求項1
または2記載の粘着剤。
【請求項4】
前記単量体混合物中に、さらに、アミド基、置換されていても良いアミノ基、アルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる極性基を少なくとも一種有する単量体を10~70質量%含む、請求項1~
3いずれか1項に記載の粘着剤。
(ただし、前記極性基を少なくとも一種有する単量体は、前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを除く。)
【請求項5】
基材および請求項1~
4いずれか1項に記載の粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える、粘着シート。
【請求項6】
剥離性シートおよび請求項1~
4いずれか1項に記載の粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末等の携帯機器は、機器の大きさを維持したままディスプレイの大面積化が近年求められている。例えば、特許文献1には、折り畳み可能なディスプレイを備えた機器が開示されている。このような折り畳み可能なディスプレイを提供するためには、ディスプレイを構成する透明導電層や無機バリア層等の機能層、これらの層を貼り合わせるための粘着剤層にも折り畳みへの適性が必要になっている。
【0003】
そのような粘着剤層を得るための粘着剤はいくつか知られているが、例えば、特許文献2に記載されている粘着剤では、塗工直後の初期凝集力が不足し、抜き加工の工程まで養生しなければならないという問題があった。また、特許文献3に記載されている粘着剤では、塗膜が硬化収縮により基材との間にひずみが生じ、密着性が不足するという問題があった。加えて、折り曲げ適性や耐皮脂性が不足しているという問題があった。また、特許文献4に記載されている粘着剤では、透明導電膜と接した際に、経時でその導電性を損なうという懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-510065号公報
【文献】特開2012-25843号公報
【文献】特開2012-118301号公報
【文献】特開2016-53122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、良好な折り曲げ適性、耐皮脂性、基材密着性、導電保持性を有する粘着シートを提供することである。また、そのような粘着シートの粘着剤層を得るための初期硬化性と塗工直後の加工性に優れた粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の実施態様は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含む単量体混合物の共重合体であるアクリル樹脂(A)およびイソシアネート硬化剤(B)を含む粘着剤であって、上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル中のヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシアルキル基中の水酸基が一級水酸基かつ炭素数が3~6であり、上記アクリル樹脂(A)は、重量平均分子量60万~200万かつ酸価2mgKOH/g以下であり、上記イソシアネート硬化剤(B)は、炭素数8~24のアルキル基を有し、配合量が、上記アクリル樹脂(A)100質量部に対して、上記イソシアネート硬化剤(B)0.01質量部以上5質量部未満である粘着剤である。
【0007】
また、本発明の実施態様は、上記アクリル樹脂(A)の水酸基モル数(OH)に対する上記イソシアネート硬化剤(B)のイソシアナト基モル数(NCO)の比(NCO/OH)が、1未満である上記粘着剤である。
【0008】
また、本発明の実施態様は、上記イソシアネート硬化剤(B)は、1分子当たりのイソシアナト基の平均数が、1.4~2.8個である上記粘着剤である。
【0009】
また、本発明の実施態様は、上記イソシアネート硬化剤(B)が、炭素数12~20のアルキル基を有する上記粘着剤である。
【0010】
また、本発明の実施態様は、上記単量体混合物中に、さらに、アミド基、置換されていても良いアミノ基、アルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる極性基を少なくとも一種有する単量体を10~70質量%含む上記粘着剤である。
(ただし、上記極性基を少なくとも一種有する単量体は、上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを除く。)
【0011】
また、本発明の実施態様は、基材および上記粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える粘着シートである。
【0012】
また、本発明の実施態様は、剥離性シートおよび上記粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える粘着シートである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着剤は、初期硬化性と塗工直後の加工性に優れ、それを用いた粘着シートは、良好な折り曲げ適性、耐皮脂性、基材密着性、導電保持性を有する。よって、OCA(Optical Clear Adheesive)として光学用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。また、アミド基、置換されていても良いアミノ基、アルコキシ基、水酸基を総称して「極性単量体」と略記することがある。「(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含む単量体混合物の共重合体であるアクリル樹脂(A)」および「炭素数8~24のアルキル基を有するイソシアネート硬化剤(B)」は、それぞれ「アクリル樹脂(A)」および「イソシアネート硬化剤(B)」と略記することがある。また、「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0015】
本発明の粘着剤は、下記(a1)で示される単量体を含む共重合体であるアクリル樹脂(A)を含んでなる粘着剤である。さらに場合によっては(a2)を含むこともある。
(a1)ヒドロキシアルキル基中の水酸基が一級水酸基かつ炭素数が3~6である(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル
(a2)アミド基、置換されていても良いアミノ基、アルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる極性基を少なくとも一種有する極性単量体(ただし、上記(a1)を除く)
(a3)(a1)および(a2)以外の単量体
【0016】
<(a1)ヒドロキシアルキル基中の水酸基が一級水酸基かつ炭素数が3~6である(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル>
折り曲げ適性や基材密着性の向上を図るために、本発明の粘着剤は、イソシアネート硬化剤(B)の配合量を、アクリル樹脂(A)100部に対して0.01部以上5部未満としている。しかし、一般的に粘着剤中の硬化剤の配合量を少なくすると、凝集力が不足し、巻ズレ等の問題を起こし易い。そこで、本発明では、アクリル樹脂(A)である共重合体を構成する単量体として、(a1)を用いることにより、上記問題の解決を図った。
(a1)中のヒドロキシアルキル基の炭素数は、3~6であり、4~6であることが好ましい。また、上記ヒドロキシアルキル基は、直鎖でも分岐でも構わないが、直鎖であることが好ましい。上記ヒドロキシアルキル基中の水酸基は、一級水酸基であれば、その結合位置に制限はないが、分子内の(メタ)アクリロイル基より離れた位置に水酸基を有していることが好ましい。したがって、炭素数4の場合を例にすると、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基よりも4-ヒドロシキブチルの方が好ましい。
(a1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロシキブチル、(メタ)アクリル酸5-ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシルが好ましく、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。
【0017】
共重合体を構成する全単量体中の(a1)の含有量は、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上がさらに好ましく、0.3%以上が特に好ましい。また、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。10%以下であれば、局所的な反応を抑制し易くなる。一方、0.01%以上であれば、初期凝集力を確保し易くなる。
【0018】
<(a2)アミド基、置換されていても良いアミノ基、アルコキシ基および水酸基からなる群より選ばれる極性基を少なくとも一種有する極性単量体(ただし、上記(a1)を除く)>
アクリル樹脂(A)である共重合体を構成する単量体としては、更に(a2)を含有することが好ましい。(a2)を含むことで、アクリル樹脂(A)とイソシアネート硬化剤(B)との反応が向上し、粘着シートにした際、粘着剤層の凝集力が増して加工性がより良好となることが期待できる。更に基材密着性を向上できることが期待できる。
【0019】
(a2)のアミド基を有する単量体としては、アミド基(-C(=O)N-)を有する単量体であれば、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸アミドの窒素原子上の水素原子が、置換基を有しても良いアルキル基で一つ以上置換された誘導体であることが好ましい。ここで、置換基を有しても良いアルキル基としては、アルキル基、水酸基で置換されたアルキル基、カルボニル基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
(a2)のアミド基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸アミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、4-アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。これらの中でも、ダイアセトンアクリルアミドが好ましい。
【0020】
(a2)の置換されていても良いアミノ基を有する単量体としては、無置換のアミノ基を有する単量体および置換されたアミノ基を有する単量体が挙げられるが、好ましくは置換されたアミノ基を有する単量体であり、より好ましくは置換されたアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、さらに好ましくはアルキル基で置換されたアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸N-アルキルアミノエステルおよび(メタ)アクリル酸N,N-ジアルキルアミノエステルである。ここで、置換されたアミノ基中の置換基としては、アルキル基、水酸基で置換されたアルキル基、カルボニル基で置換されたアルキル基等が挙げられるが、この内、アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
(a2)の置換されていても良いアミノ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等が挙げられる。これらの中でも、メタアクリル酸N,N-ジメチルアミノエチルが好ましい。
【0021】
(a2)のアルコキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル中のアルコキシ基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1または2であることが更に好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル中のアルコキシ基に結合したアルキレン基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
アルコキシ基を有する量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2-メトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルが好ましい。
【0022】
(a2)の水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸7-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。
【0023】
共重合体を構成する全単量体中の(a2)の含有量は5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。また、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。70%以下であれば、折り曲げ適性が向上する。一方、5%以上であれば、基材密着性がより良好になる。
【0024】
アクリル樹脂(A)は、共重合体を構成する単量体として、上記単量体以外のその他単量体を含んでも良い。
【0025】
<(a3)(a1)および(a2)以外の単量体>
(a3)としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、その中では、アルキル基の炭素数が1~22の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ドコシル等の(メタ)アクリル酸アルキル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0026】
アクリル樹脂(A)は、その他単量体として酸性基を有する単量体を含んでも良い。酸性基を有する単量体を使用すると、粘着力を高くし、密着耐久性を向上できる利点がある一方、酸によって腐食し易い被着体を使用する場合には、被着体を腐食させる懸念がある。本発明の粘着剤は、酸性基を有する単量体を含まないことが好ましく、含んでいるとしてもアクリル樹脂(A)の酸価として2.5mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0027】
ここで、酸性基とは、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基(リン酸基)等の酸性基を意味し、酸性基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する単量体、ホスホ基を有する単量体、スルホ基を有する単量体などを挙げることができる。
【0028】
アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、60万以上が好ましく、80万以上がより好ましい。また、200万未満が好ましく、160万未満がより好ましく、120万未満がさらに好ましい。60万以上であると初期凝集力を担保しやすく、200万以下であるとミクロゲルによる塗膜欠損を軽減し易い。
【0029】
アクリル樹脂(A)は、公知の方法により製造することができるが、溶液重合により製造することが好ましい。溶液重合においては、重合する際に使用する溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の等の炭化水素系溶剤を使用することが好ましい。
【0030】
具体的には、溶剤、単量体、重合開始剤等を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で、反応温度50~90℃程度に加熱し、4~20時間で重合反応させるのが一般的である。
【0031】
重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を挙げることができる。これらの重合開始剤は、原料単量体100質量部に対して、通常は0.01~5質量部の範囲内の量で使用される。また、重合反応中に、連鎖移動剤、原料単量体、溶媒を適宜添加してもよい。
【0032】
上記重合開始剤のうちアゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0033】
また、上記重合開始剤のうち有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0034】
上記のような条件において、得られる共重合体の重量平均分子量は、公知技術に従って、使用する溶媒の種類および量、重合開始剤の種類および量、反応時間、反応温度などの反応条件を調整することにより調節することができる。
【0035】
<イソシアネート硬化剤(B)>
イソシアネート硬化剤(B)としては、炭素数8~24のアルキル基を有するイソシアネート硬化剤が用いられる。イソシアネート硬化剤(B)は、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、上記芳香族イソシアネートの水素添加物などの分子中に二個以上のイソシアナト基を有する化合物と、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールなどの多価アルコールとを付加反応させた化合物を反応させて分子内に三個以上のイソシアナト基を有する化合物を合成した後、更に、分子内に三個以上のイソシアナト基を有する化合物と、炭素数8~24のアルキル基を有する単官能アルコールまたは2級アミンとを反応させて得ることができる。
【0036】
炭素数8~24のアルキル基を有する単官能アルコールとしては、直鎖または分岐の脂肪族単官能アルコール、例えば、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0037】
炭素数8~24のアルキル基を有する二級アミンとしては、直鎖または分岐の脂肪族二級アミンが挙げられる。例えば、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン,ジヘプタデシルアミン,ジオクタデシルアミン,ジノナデシルアミン,ジエイコシルアミン、ジペンタコシルアミン、N-メチル-N-ヘキサデシルアミン、N-ブチル-N-ヘキサデシルアミン等が挙げられる。尚、上記二級アミンは、窒素原子に結合するアルキル基の少なくとも一つが炭素数8~24のアルキル基であれば良いことを意味する。
【0038】
上記単官能アルコールまたは二級アミン中のアルキル基の炭素数は、8以上が好ましく、12以上がより好ましい。また、24以下が好ましく、20以下がより好ましい。8以上とすることで、皮脂との疎水性相互作用により馴染みやすくなり、また可塑化効果による折り曲げ適性が向上する。24以下とすることで、塗膜欠損を抑制できる。
【0039】
イソシアネート硬化剤(B)の分子内のイソシアナト基数としては、1.4以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、2以上が更に好ましい。また、2.8以下が好ましく、2.7以下がより好ましく、2.6以下が更に好ましい。このようなイソシアナト基数となることで、折り曲げ適性や基材密着性を担保しながら耐皮脂性が向上する。
【0040】
分子内に三個以上のイソシアナト基を有する化合物とアルキル炭素数8~24の単官能アルコールの反応は、窒素雰囲気下40~80℃で2~6時間で行うことが好ましい。サンプリングした反応溶液を滴定することでNCO%を算出し終点を判断することができる。
【0041】
分子内に三個以上のイソシアナト基を有する化合物とアルキル炭素数8~24の二級アミンの反応は、窒素雰囲気下10~40℃で1~3時間で行うことが好ましい。サンプリングした反応溶液を滴定することでNCO%を算出し終点を判断することができる。
【0042】
尚、「NCO%」とは、JIS K 1603-1に規定されている「イソシアナト基含有率」を意味し、上記規定に従って算出された値である。
【0043】
イソシアネート硬化剤(B)の配合量は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して、0.01部以上であり、0.03部以上が好ましく、0.05部以上がより好ましい。また、5質量部未満であり、3部以下が好ましく、1部以上がより好ましい。このような配合量とすることで、初期凝集力と折り曲げ適性や基材密着性を両立させ易い。
【0044】
アクリル樹脂(A)の水酸基モル数(OH)に対するイソシアネート硬化剤(B)のイソシアナト基モル数(NCO)の比(NCO/OH)は、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。また、1未満であり、0.99以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。上記比率に調整することで基材密着性が向上する。
【0045】
イソシアネート硬化剤(B)の分子量(式量)は、300以上が好ましく、500以上がより好ましく、800以上がさらに好ましい。また、2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。このような分子量であると、粘着シートを作成する際の乾燥工程による揮発の低減や架橋性の向上が期待できる。
【0046】
イソシアネート硬化剤(B)は、1種又は2種以上使用することもできる。またアルコールを反応させたものとアミンを反応させたものを併用することもできる。
【0047】
その他、エポキシ硬化剤、アジリジン、金属キレートを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することが出来る。
【0048】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、所望により各種樹脂や添加剤を添加することができる。例えば、タッキファイヤ、シランカップリング剤、熱または光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、抗菌剤、保湿剤、ビタミン類、顔料、染料、香料などを挙げることができる。これらは、必要に応じて有効量を配合する。
【0049】
<粘着シート>
本発明において粘着シートは、基材上に本発明の粘着剤から形成されて硬化した粘着剤層を有するものである。粘着シートは、例えば、基材上に粘着剤を塗工、乾燥することにより製造できる。粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていれば良い。
【0050】
粘着剤を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することもできるし、粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等はアクリル樹脂(A)とイソシアネート硬化剤(B)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0051】
基材としては、例えば、セロハン、プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴム布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられ、板状であってもフィルム状であっても良い。その中でも液晶ディスプレイ装置に用いる場合、基材はフィルムが好ましい。さらに基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に基材の表面を剥離処理したもの(以下、剥離シートと呼ぶ)を用いることもできる。
【0052】
プラスチックシートとしては、プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
【0053】
本発明において粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60~130℃程度の熱風加熱でよい。
【0054】
本発明の粘着シートは、(ア)剥離処理されたフィルムの剥離処理面に粘着剤を塗工、乾燥し、基材を粘着剤層の表面に積層したり、(イ)基材に粘着剤を直接塗工、乾燥し、粘着層の表面に剥離処理されたフィルムの剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0055】
粘着層の厚さは、0.1~300μmであることが好ましく、1~200μmであることがより好ましく、3~150μmであることが更に好ましい。0.1μm未満では十分な粘着力が得られないことがあり、300μmを超えても粘着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【実施例】
【0056】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明する。配合比に関しては、溶剤以外は固形分換算での値を示す。また、以下の例で使用した材料の略号を示す。
【0057】
<(a1)少なくとも炭素数3~6のアルキル基および一級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル>
3HPMA:メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
6HHA:アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル
<(a2)アミド基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシル基(ただし一級水酸基を有する炭素数3~6のヒドロキシアルキル単量体を除く)含有(メタ)アクリル酸エステル>
DAAm:ダイアセトンアセチルアミド
DM:メタクリル酸ジメチルアミノエチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
HPA:アクリル酸2-ヒドロキシプロピル
MEA:アクリル酸メトキシエチル
<(a3)その他の(メタ)アクリル酸エステル>
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
AA:アクリル酸
【0058】
<イソシアネート硬化剤(B)>
(B1)TDI-TMP-2EHA:下記反応例1で得られたイソシアネート硬化剤、炭素数8のアルキル基を有する、1分子当たりのイソシアナト基の平均数1.4個、NCO%6.3%。
(B2)TDI-TMP-CeA:下記反応例2で得られたイソシアネート硬化剤、炭素数16のアルキル基を有する、1分子当たりのイソシアナト基の平均数1.8個、NCO%7.4%。
(B3)TDI-TMP-ODOH:下記反応例3で得られたイソシアネート硬化剤、炭素数20のアルキル基を有する、1分子当たりのイソシアナト基の平均数2.2個、NCO%9.6%。
(B4)HDI-ヌレート-iTDOH:下記反応例4で得られたイソシアネート硬化剤、炭素数13のアルキル基を有する、1分子当たりのイソシアナト基の平均数2.6個、NCO%16.6%。
<イソシアネート硬化剤(B)ではないイソシアネート硬化剤(B’)>
TDI-TMP:「デスモジュールL75」、住化コベストロウレタン社製、1分子当たりのイソシアナト基の平均数3個、NCO%17.3%。
【0059】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.75部、ダイアセトンアセチルアミド7.5部、アクリル酸n-ブチル29.25部、アクリル酸2-エチルヘキシル7.5部、アクリル酸メチル5部、アゾビスイソブチロニトリル0.02部、酢酸エチル50部を4口フラスコに仕込み、窒素ガスを導入しながら、80℃まで昇温した。滴下漏斗に、上記フラスコに仕込んだものと同一の等量混合物(アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.75部、ダイアセトンアセチルアミド7.5部、アクリル酸n-ブチル29.25部、アクリル酸2-エチルヘキシル7.5部、アクリル酸メチル5部、アゾビスイソブチロニトリル0.02部、酢酸エチル50部)を仕込み、滴下し、窒素雰囲気下80℃にて7時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチル86部を加え希釈し、不揮発分35%、重量平均分子量80万、酸価0mgKOH/gの粘着剤を得た。
【0060】
<重量平均分子量(Mw)>
Mwは、下記の条件により測定した。Mwの決定は、重量平均分子量が既知のポリスチレンを標準物質に用いた検量線法により決定した。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製TSKgel α-M 2本を直列に連結
移動相溶媒:ジメチルホルムアミド
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
【0061】
<イソシアネート硬化剤(B)の合成>
(反応例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、TDI-TMPアダクト(「デスモジュールL75」、住化コベストロウレタン社製)100部、2-エチルヘキサノール31.7部、希釈溶剤として酢酸エチル82部を添加し、60℃で5時間反応させ、不揮発分50%のTDI-TMP-2EHAを得た。電位差滴定装置(「AT-710S」京都電子工業社製)を用いて測定した固形分当たりのNCO%は6.3%であった。
【0062】
(反応例2)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、TDI-TMPアダクト(「デスモジュールL75」、住化コベストロウレタン社製)100部、セチルアルコール44.3部、希釈溶剤として酢酸エチル95部を添加し、60℃で5時間反応させ、不揮発分50%のTDI-TMP-CAを得た。同様に測定した固形分当たりのNCO%は7.4%であった。
【0063】
(反応例3)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、TDI-TMPアダクト(「デスモジュールL75」、住化コベストロウレタン社製)100部、オクチルドデカノール36.4部、希釈溶剤として酢酸エチル87部を添加し、60℃で5時間反応させ、不揮発分50%のTDI-TMP-ODOHを得た。同様に測定した固形分当たりのNCO%は9.6%であった。
【0064】
(反応例4)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、HDI-ヌレート(「スミジュールN3300」、住化コベストロウレタン社製)100部、イソドリデシルアルコール15.9部、希釈溶剤として酢酸エチル41部を添加し、60℃で5時間反応させ、不揮発分50%のHDI-ヌレート-TDOHを得た。同様に測定した固形分当たりのNCO%は16.6%であった。
【0065】
(実施例1)
<塗工液の作成>
得られたアクリル樹脂(A)の不揮発分100部に対して、イソシアネート硬化剤(B)としてTDI-TMP-2EHAを不揮発分換算で0.1部、希釈溶剤として酢酸エチルを添加し、撹拌し、粘着剤を得た。
【0066】
<粘着シートの作成>
厚さ38μmのポリエステル製セパレーター[商品名「スーパーステック」SP-PET38、リンテック社製、以下同じ]上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように上記で得られた塗工液を塗工し、熱風オーブンにて100℃、2分間乾燥した。乾燥後、厚さ50μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(テオネックス、帝人社製)にラミネートし、さらに40℃で3日間養生し、粘着シートを得た。
【0067】
<初期凝集力>
養生前の粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに切り出して測定試料とした。次いで23℃50%RHの環境下、試料からポリエステル製セパレーターを剥がして、露出した粘着層を25mm角の面積でアルカリガラスに貼付し、試料の反対側に200gの重りを付けて5時間経過後に試料がガラスからズレた距離をルーペにて観察し評価した。
◎:0.1mm以内(優良)
○:0.1mm超~0.5mm未満(良好)
△:0.5mm超~5mm未満(使用可)
×:5mm超(使用不可)
【0068】
<折り曲げ適性>
養生した粘着シートから厚さ38μmのセパレーターを粘着剤層から剥がし、露出した粘着剤層をポリイミドフィルムにラミネートした。次いでラミネート物をオートクレーブに投入し50℃20分間保持した。次に、ラミネート物を取り出し23℃-50%RHで30分間静置した後、幅70mm・長さ100mmの大きさに準備して測定試料を作製した。上記測定試料を繰り返し曲げ試験機(卓上小型耐久試験器:ユアサシステム機器社製)を用いて10万回曲げを行い、粘着層の折り曲げ部の浮き・剥がれ具合を評価した。評価基準は以下の通りである。
・浮き剥がれ評価
◎:浮き・剥がれなし。優良。
○:浮き・剥がれが1mm未満。良好。
△:浮き・剥がれが1mm以上2mm未満。実用可。
×:浮き・剥がれが2mm以上。実用不可。
【0069】
<耐皮脂性>
養生後の粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに切り出して測定試料とした。次いで23℃50%RHの環境下、試料からセパレーターを剥がして、露出した粘着剤層を10%オレイン酸溶液(アセトン溶媒)に浸漬した後に乾燥させたアルカリガラスおよび浸漬させていないアルカリガラスそれぞれに貼付し、24時間経過後の剥離強度を測定した。オレイン酸に浸漬させた剥離強度Aと、浸漬していないアルカリガラスの剥離強度Bとの比を計算し評価した。
◎:A/B=0.95以上(優良)
○:A/B=0.90以上0.95未満(良好)
△:A/B=0.70以上0.90未満(使用可)
×:A/B=0.70未満(使用不可)
【0070】
<導電保持性>
養生後の粘着シートを幅40mm・幅100mmの大きさに準備した。次いで23℃-50%RH雰囲気でセパレーターを剥がして、厚さ1μmのITO(酸化インジウムスズ)透明導電膜が形成された幅40mm・縦160mmのITOフィルム貼り合わせて固定し、50℃雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて20分間保持して、PENフィルム/粘着剤層/ITOフィルムの積層構成の試験片を得た。上記試験片の両端に電極をつなぎ、初期の電気抵抗値を測定[三菱化学(株)製、Laresta-GP MCP-T600]した。更に試験片を85℃ 相対湿度85%で500時間放置した後、上記同様に経時後の電気抵抗値を測定し、導電性保持率(経時後の電気抵抗値/初期の電気抵抗値)を算出した。評価基準は以下のとおりである。
○:1.0以上1.3未満(良好)
△:1.3以上2.0未満(使用可)
×:2.0以上(使用不可)
【0071】
<基材密着性>
養生後の粘着シートを幅100mm・長さ100mmの大きさに切り出して測定試料とした。次いで23℃50%RHの環境下、試料からセパレーターを剥がして、露出した粘着剤層に対し碁盤目状にカッターで100マスできる様に粘着剤層のみを切り、親指で5回強く擦った。このときのPENフィルムから剥がれずに残ったマスの数を評価した。
◎:95マス以上(優良)
○:90マス以上95マス未満(良好)
△:70マス以上90マス未満(使用可)
×:70マス未満(使用不可)
【0072】
(合成例2~28、実施例2~30、比較例1~5)
表1~3に示す材料、組成、量になるよう変更した以外は、合成例1および実施例1と同様に、それぞれ粘着剤および粘着シートを製造し、測定および評価を行った。また平均分子量は重合開始剤の量を変更して調製した。酸価については、合成例2~21、23~25は0mgKOH/g、合成例23は2mgKOH/g、合成例28は8mgKOH/gであった。尚、表中の数値は、特に断りがない限り、部を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0073】
【0074】
【0075】