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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/103 20210101AFI20220511BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220511BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20220511BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20220511BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20220511BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/14
H01M50/124
H01M50/184 A
H01M50/197
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018176418
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020047522
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-032348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0151306(US,A1)
【文献】特開2018-101486(JP,A)
【文献】特開2018-106967(JP,A)
【文献】特開2014-194883(JP,A)
【文献】実開昭61-063769(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 10/04
H01G 11/12-11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を積層した積層体を有し、前記積層体の側面に封止体を設けて構成される蓄電モジュールにおいて、
前記封止体は、前記積層体の側面を覆う本体部と、前記本体部の端部において前記積層体の内側へ屈曲して延びるオーバーハング部とを含み、
前記オーバーハング部の表面から前記積層体の積層方向に突設され、前記オーバーハング部の変形を抑制する補強部を備え、
前記オーバーハング部は、前記積層方向において前記本体部に重なる部分と前記積層体の内側へ延びる部分を含み、
前記補強部は、前記オーバーハング部において前記積層体と対峙する面の反対側の面に設けられ、前記オーバーハング部の前記本体部に重なる部分から前記積層体の内側へ延びる部分に亘って延びており、前記オーバーハング部の表面において前記積層体の側面の形成方向に沿って所定の間隔で複数形成されている、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記補強部は、前記オーバーハング部の基端側と比べて先端側の突出長が小さくなるように傾斜面が形成されている、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記補強部は、前記オーバーハング部の長さと同じ長さに形成されている、
請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電モジュールとして、例えば、特開2005-5163号公報に記載されるように、バイポーラ電極を複数積層させて積層体を形成し、その積層体の側部を樹脂で封止して構成される蓄電モジュールが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-5163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような蓄電モジュールでは、図8に示すように、バイポーラ電極101を積層した積層体102の側部を封止体103により封止し、封止体103の端部を内側に屈曲させてオーバーハング部103aを形成することが考えられる。オーバーハング部103aは、積層体102の内側に延びることにより、積層体102の端部の広がりを抑えることができる。ところが、蓄電モジュールの使用時などにおいて、蓄電モジュールの内部圧力が上昇する場合がある。この場合、図9に示すように、封止体103のオーバーハング部103aに内圧が加わり変形するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、積層体を封止する封止体の変形を抑制できる蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る蓄電モジュールは、複数の電極を積層した積層体を有し、積層体の側面に封止体を設けて構成される蓄電モジュールにおいて、封止体は、積層体の側面を覆う本体部と、本体部の端部において積層体の内側へ屈曲して延びるオーバーハング部とを含み、オーバーハング部の表面から積層体の積層方向に突設され、オーバーハング部の変形を抑制する補強部を備え、オーバーハング部は積層方向において本体部に重なる部分と積層体の内側へ延びる部分を含み、補強部はオーバーハング部において積層体と対峙する面の反対側の面に設けられオーバーハング部の本体部と重なる部分から積層体の内側へ延びる部分に亘って延びて構成されている。この蓄電モジュールによれば、オーバーハング部に補強部が形成されることにより、オーバーハング部の曲げ剛性を高めることができる。このため、積層体の内圧が上昇して封止体が押圧されても、封止体の変形を抑制することができる。また、オーバーハング部全体を大きくせずにオーバーハング部の曲げ剛性を高めることができるため、封止体の重量増加を抑えつつ封止体の変形を抑制することができる。さらに、補強部をオーバーハング部の本体部に重なる部分から積層体の内側へ延びる部分に亘って延びるように形成することにより、オーバーハング部の曲げ剛性を高めることができる。
【0008】
また、本発明に係る蓄電モジュールにおいて、補強部は、オーバーハング部の表面において積層体の側面の形成方向に沿って所定の間隔で複数形成されていてもよい。この場合、補強部を複数形成することにより、オーバーハング部において広い範囲で曲げ剛性を高めることができ、オーバーハング部の変形を適切に抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る蓄電モジュールにおいて、補強部は、オーバーハング部の先端側の突出長が小さくなるように傾斜面が形成されていてもよい。この場合、オーバーハング部の基端側と比べて先端側の突出長が小さくなるように補強部に傾斜面を形成することにより、オーバーハング部の基端側の曲げ剛性を高めることができる。また、オーバーハング部の先端側の補強部の突出長を小さくすることにより、補強部の形成による重量増加を抑制することができる。
また、本発明に係る蓄電モジュールにおいて、補強部は、オーバーハング部の長さと同じ長さに形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、積層体を封止する封止体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る蓄電モジュールを用いた蓄電装置の概略断面図である。
図2】実施形態に係る蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図2の蓄電モジュールの平面図である。
図4図2の蓄電モジュールにおける補強部の説明図である。
図5図2の蓄電モジュールにおける補強部の説明図である。
図6図2の蓄電モジュールにおける補強部の変形例である。
図7図2の蓄電モジュールにおける補強部の変形例である。
図8】背景技術の説明図である。
図9】背景技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る蓄電モジュール4を用いた蓄電装置1の概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、蓄電モジュール4を用いた蓄電装置の一例を示すものであり、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してその積層方向(ここでは、後述する電極積層体11における電極の積層方向D)に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0014】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5と、を含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0015】
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の積層方向Dの外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の積層方向Dの外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の積層方向Dの外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向Dに交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0016】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば、積層方向Dと、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、図1の例では、積層方向Dから見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0017】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、によって構成されている。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の積層方向Dの内側面(モジュール積層体2側に向いた面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0018】
エンドプレート8には、モジュール積層体2と積層方向Dに重なる部位よりも外周側の縁部に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向Dに拘束荷重が付加される。
【0019】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュール4の内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、複数の電極を積層した電極積層体(積層体)11を有し、この電極積層体11の外縁に封止体12を設けて構成されている。電極積層体11は、セパレータ13、セパレータ13を介して、積層方向Dに沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極14、単一の負極終端電極18及び単一の正極終端電極19)を含む。ここでは、電極積層体11の積層方向Dはモジュール積層体2の積層方向と一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11bを有している。
【0020】
バイポーラ電極14は、電極板15、正極16及び負極17を含んでいる。正極16は、電極板15の第1面15aに設けられている。負極17は、電極板15の第1面15aに対して反対側の第2面15bに設けられている。電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15は、積層方向Dから見て矩形状の外縁15dを含んでいる。
【0021】
正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。正極16は、積層方向Dから見て矩形状の外縁16dを含んでいる。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。負極17は、積層方向Dから見て矩形状の外縁17dを含んでいる。
【0022】
本実施形態では、例えば、電極板15の第2面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の第1面15aにおける正極16の形成領域に対して大きくなっている。つまり、負極17の外縁17dは、正極16の外縁16dよりも一回り大きい。電極板15の周縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。つまり、電極板15の周縁部15cは、積層方向Dから見て、電極板15における正極16及び負極17が形成された領域以外の部分であって、正極16及び負極17を包囲する部分である。なお、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19の表面は、それぞれ電極板15の周縁部15cにおける第1面15a及び第2面15bを含んでいる。
【0023】
電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合うさらに別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0024】
負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の第2面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18は、正極16を含んでいない。すなわち、負極終端電極18の電極板15の第1面15aには、活物質層が設けられていない(すなわち、負極終端電極18の第1面15aの全体が露出している)。負極終端電極18は、第2面15bが電極積層体11の積層方向Dの内側(積層方向Dについての中心側)に向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0025】
正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の第1面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19は、負極17を含んでいない。すなわち、正極終端電極19の電極板15の第2面15bには、活物質層が設けられていない(すなわち、正極終端電極19の第2面15bの全体が露出している)。正極終端電極19は、第1面15aが電極積層体11の積層方向Dの内側に向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0026】
負極終端電極18の電極板15の第1面15aには、導電板5が接触している。また、正極終端電極19の電極板15の第2面15bには、隣接する蓄電モジュール4の導電板5が接触している。拘束部材3からの拘束荷重は、導電板5を介して負極終端電極18及び正極終端電極19から電極積層体11に付加される。すなわち、導電板5は、積層方向Dに沿って電極積層体11に拘束荷重を付加する拘束部材でもある。
【0027】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0028】
バイポーラ電極14には、中間樹脂部23が設けられている。中間樹脂部23は、バイポーラ電極14、14の間を封止する一次シールとして機能する。中間樹脂部23は、バイポーラ電極14の外縁に沿って設けられ、バイポーラ電極14の全周に亘って設けられている。中間樹脂部23は、電極板15の外縁に接合して設けられている。この中間樹脂部23の端部は、封止体12に接合されている。つまり、バイポーラ電極14は、中間樹脂部23を介して封止体12に接合され、封止体12に支持されている。中間樹脂部23は、例えば第1中間樹脂部231と第2中間樹脂部232を含んで構成される。なお、中間樹脂部23は、単一の部材により構成される場合もある。
【0029】
バイポーラ電極14には、負極終端樹脂部24が設けられている。負極終端樹脂部24は、電極積層体11の積層方向Dの端部に設けられる部材であり、電極積層体11の端部を封止する一次シールとして機能する。負極終端樹脂部24は、例えば矩形枠状に形成され、負極終端電極18の表面に溶着されている。負極終端電極18は、電極積層体11の端部に配置される電極であり、電極板15と負極17により構成されている。
【0030】
バイポーラ電極14には、正極終端樹脂部26が設けられている。正極終端樹脂部26は、電極積層体11の積層方向Dの端部に設けられる部材であり、電極積層体11の端部を封止する一次シールとして機能する。正極終端樹脂部26は、例えば矩形枠状に形成され、正極終端電極19の表面に溶着されている。正極終端電極19は、電極積層体11の端部に配置される電極であり、電極板15と正極16により構成されている。
【0031】
封止体12は、電極積層体11の外縁に沿って設けられている。この封止体12は、矩形枠状に形成されており、電極積層体11の側面11bを封止する二次シールとして機能する。封止体12は、本体部12a及びオーバーハング部12bを含み、例えば絶縁性の樹脂によって形成されている。本体部12aは、電極積層体11の側面11bを覆うように形成されている。例えば、本体部12aは、電極積層体11の全周に亘ってその側面11bを覆っている。オーバーハング部12bは、本体部12aの端部において電極積層体11の内側へ屈曲して延びている。オーバーハング部12bは、本体部12aの両端にそれぞれ形成されており、電極積層体11の積層方向Dへの拡がりを抑制している。ここで、電極積層体11の内側とは、積層方向Dから見て、蓄電モジュール4の中心の側を意味する。一方、電極積層体11の外側とは、積層方向Dから見て、蓄電モジュール4の中心から遠ざかる側を意味する。
【0032】
オーバーハング部12bの表面には、補強部12cが突設されている。補強部12cは、オーバーハング部12bの変形を抑制する補強リブである。例えば、補強部12cは、オーバーハング部12bにおいて電極積層体11と対峙する面の反対側の面に設けられ、積層方向Dに向けて突出している。補強部12cは、オーバーハング部12bの基端側から先端側へ向けて延びている。つまり、補強部12cは、オーバーハング部12bの基端側から先端側への方向に対する曲げ剛性を高めている。この補強部12cは、オーバーハング部12bの基端の位置から先端の位置まで延びていてもよい。また、補強部12cは、オーバーハング部12bの基端の近傍の位置から先端の近傍の位置まで延びていてもよい。
【0033】
封止体12は、積層方向Dに沿って互いに隣接するバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣接する負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、積層方向Dに沿って互いに隣接する正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、バイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密(液密)に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。すなわち、第1樹脂部21は、積層方向Dに沿って隣接する電極の間に電解液が収容される内部空間Vを形成すると共に、内部空間Vを封止するためのものである。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。
【0034】
封止体12は、例えば、絶縁性の樹脂であって、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等から構成され得る。
【0035】
図3は、積層方向Dから見た場合における蓄電モジュール4の平面図である。図3に示すように、蓄電モジュール4は、矩形状の電極積層体11の外縁に封止体12を設けて構成されている。電極積層体11は、バイポーラ電極14等の複数の電極を積層して設けられており、電極の積層方向と直交する方向の断面が矩形となっている。封止体12は、電極積層体11の外縁に全周に亘って連続して設けられている。つまり、封止体12は、電極積層体11を積層方向から見た場合の電極積層体11の外縁に全周に亘って連続して設けられ、矩形枠状を呈している。
【0036】
封止体12のオーバーハング部12bには、複数の補強部12cが形成されている。補強部12cは、オーバーハング部12bの基端側から先端側(電極積層体11の外側から内側)へ延びている。補強部12cは、横幅の寸法がオーバーハング部12bの外側から内側への寸法と比べて小さく形成されている。なお、補強部12cは、横幅の寸法がオーバーハング部12bの外側から内側への寸法と比べて同じ長さ又は大きく形成される場合もある。ここで、オーバーハング部12bの内側とは、オーバーハング部12bの先端側であって、積層方向Dから見て、蓄電モジュール4の中心の側を意味する。一方、オーバーハング部12bの外側は、オーバーハング部12bの基端側であって、積層方向Dから見て、蓄電モジュール4の中心から遠ざかる側を意味する。
【0037】
補強部12cは、電極積層体11の側面11bの形成方向に沿って所定の間隔で複数形成されている。例えば、補強部12cは、電極積層体11の側面11bの形成方向に沿って等間隔で複数形成されていてもよい。この場合、オーバーハング部12bの曲げ剛性が均等に高められる。また、補強部12cは、オーバーハング部12bにおいて電極積層体11側から受ける荷重が大きい箇所ほど、補強部12cが多く形成され又は大きく形成されていてもよい。この場合、電極積層体11側から受ける荷重に応じてオーバーハング部12bの曲げ剛性を高めることができ、オーバーハング部12bの変形を適切に抑制することができる。このとき、補強部12cは、電極積層体11の側面11bの形成方向に沿って等間隔で形成されていなくてもよい。図3ではオーバーハング部12bの一辺において二つ又は三つの補強部12cが形成されているが、それ以外の数で補強部12cが形成されていてもよい。
【0038】
図4に補強部12cの拡大断面図を示す。図4は、電極積層体11の積層方向Dにおける補強部12cの断面を示している。補強部12cは、オーバーハング部12bにおいて電極積層体11と対峙する面の反対側の面に突設されている。補強部12cの突出長は、オーバーハング部12bにおいて必要な曲げ強度に応じて設定すればよい。また、補強部12cの突出長は、隣り合う蓄電モジュール4の補強部12c、オーバーハング部12bなどと接触しない長さに設定される。また、補強部12cが隣り合う蓄電モジュール4のオーバーハング部12bと接触する場合には、隣りのオーバーハング部12bに凹みを設けその凹みに補強部12cを挿入することで、補強部12cの接触を回避してもよい。
【0039】
補強部12cは、例えばオーバーハング部12bの長さより短く形成される。つまり、補強部12cにおいて、オーバーハング部12bの基端側から先端側への補強部12cの長さは、オーバーハング部12bの長さより短いものとされる。ここで、オーバーハング部12bは、電極積層体11の内側へ延びる部分と本体部12aの上方の部分を含む。つまり、屈曲する封止体12の角部は、オーバーハング部12bの基端部である。このため、オーバーハング部12bの長さは、図4において、封止体12の外側の端面からオーバーハング部12bの先端面までの距離となる。なお、この補強部12cの長さは、オーバーハング部12bにおいて必要な曲げ強度に応じて適宜設定すればよい。また、補強部12cは、例えば一定の突出長として形成される。
【0040】
補強部12cは、例えば本体部12aの内面の積層方向Dの延長線の位置を跨ぐように形成される。電極積層体11側から荷重を受けたときに、オーバーハング部12bにおいて本体部12aの内面の近傍位置に曲げ応力が大きく生ずる。このとき、補強部12cが本体部12aの内面の積層方向Dの延長線の位置を跨ぐように形成されることにより、オーバーハング部12bの基端側の曲げ剛性が高められ、オーバーハング部12bの変形を効果的に抑制することができる。
【0041】
補強部12cは、例えば樹脂により形成される。具体的には、封止体12の樹脂成形時において、封止体12と一体に成形して形成すればよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る蓄電モジュール4の変形抑制機能について説明する。
【0043】
図2において、蓄電モジュール4がバッテリとして使用される場合、蓄電モジュール4の内圧が上昇する場合がある。すなわち、電極積層体11の内圧が上昇し、封止体12に荷重が加わる場合がある。この場合、封止体12のオーバーハング部12bでは、電極積層体11側から積層方向Dの荷重が加わることとなる。
【0044】
このとき、封止体12において、できるだけ変形せずに荷重を受け止めることが要求される。そこで、本実施形態に係る蓄電モジュール4において、オーバーハング部12bに補強部12cが形成されている。すなわち、図5に示すように、電極積層体11の積層方向Dの断面において、オーバーハング部12bの表面に補強部12cが形成されている。補強部12cは、オーバーハング部12bの基端側から先端側へ延びており、オーバーハング部12bの基端側から先端側への方向において曲げ剛性を高めている。このため、オーバーハング部12bに荷重(図5の矢印)が加わった場合でも、オーバーハング部12bの変形を的確に抑制することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る蓄電モジュール4によれば、オーバーハング部12bに補強部12cが形成されることにより、オーバーハング部12bの曲げ剛性を高めることができる。このため、電極積層体11の内圧が上昇して封止体12が押圧されても、封止体12の変形を抑制することができる。また、オーバーハング部12b全体を大きくせずにオーバーハング部12bの曲げ剛性を高めることができるため、封止体12の重量増加を抑えつつ封止体12の変形を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る蓄電モジュール4において、補強部12cは、オーバーハング部12bの電極積層体11と対峙する面の反対側の面に設けられ、オーバーハング部12bの基端側から先端側へ延びている。このため、オーバーハング部12bの基端側から先端側への曲げ剛性が高められ、オーバーハング部12b及び封止体12の変形を適切に抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る蓄電モジュール4において、補強部12cがオーバーハング部12bの表面において電極積層体11の側面11bの形成方向に沿って所定の間隔で複数形成されることにより、オーバーハング部12bにおいて広い範囲で曲げ剛性を高めることができ、オーバーハング部の変形を適切に抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、図5のように補強部12cがオーバーハング部12bの長さより短く形成される場合について説明したが、図6に示すように、補強部12cがオーバーハング部12bの長さと同じ長さに形成されていてもよい。つまり、オーバーハング部12bの基端側から先端側への補強部12cの長さは、オーバーハング部12bの長さと同じとしてもよい。この場合、補強部12cを長く形成することができ、オーバーハング部12bの曲げ剛性をより高くすることができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、図5のように補強部12cの突出長が一定の場合について説明したが、補強部12cの突出長は、必ずしも一定でなくてもよい。例えば、図7に示すように、補強部12cに傾斜面12dを設け、オーバーハング部12bの基端側と比べて先端側の補強部12cの突出長が小さくなるようにしてもよい。この場合、オーバーハング部12bの基端側の曲げ剛性を高めることができる。また、オーバーハング部12bの先端側の補強部12cの突出長を小さくすることにより、補強部12cの形成による重量増加を抑制することができる。
【0051】
また、上述した実施形態では、図1のように蓄電モジュール4を積層した蓄電装置1に用いる場合について説明したが、蓄電モジュール4を異なる構造又は形式で用いてもよい。また、上述した実施形態では、蓄電モジュール4をフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いる場合について説明したが、その他の用途に用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体(積層体)、12…封止体、12a…本体部、12b…オーバーハング部、12c…補強部、12d…傾斜面、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…第1面、15b…第2面、16…正極、17…負極、18…負極終端電極、23…中間樹脂部、24…負極終端樹脂部、D…積層方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9