(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】過給システム
(51)【国際特許分類】
F02B 39/16 20060101AFI20220511BHJP
F02B 37/02 20060101ALI20220511BHJP
F02B 37/007 20060101ALI20220511BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20220511BHJP
F02B 39/14 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
F02B39/16 F
F02B37/02 F
F02B37/007
F02B37/00 400C
F02B39/14 F
(21)【出願番号】P 2018219241
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 佳明
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-138775(JP,A)
【文献】特開2009-185684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00 - 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コンプレッサを有する第1過給機と、
第2コンプレッサを有する第2過給機と、
前記第1過給機がエンジンに空気を過給する第1過給モードと、前記第1過給機および前記第2過給機が前記エンジンに空気を過給する第2過給モードとに過給モードを切換える切換部と、
前記第2過給機の過給圧に関するパラメータ値を検出する検出部と、
前記第2コンプレッサの流出口と前記第1コンプレッサの流入口とを結ぶ経路に設けられた調整弁と、
前記第1過給モードにおいて前記検出部が第1パラメータ値よりも大きい第2パラメータ値を検出した場合に、前記調整弁の開度を第1開度よりも大きい第2開度に調整する調整部と、
前記第2過給機において前記第1過給モード中にサージングが生じない前記調整弁の開度を特定するための情報を記憶する記憶部と、を備え、
前記調整部は、前記検出部により検出された前記パラメータ値と前記情報とに基づいて特定された開度で、前記調整弁の開度を調整する、過給システム。
【請求項2】
前記切換部は、前記過給モードを前記第1過給モードから準備モードに切換えた後に前記第2過給モードに切換え、
前記調整部は、前記第1過給モードから前記準備モードに切換えるために前記調整弁の開度を全開度に調整する、請求項
1に記載の過給システム。
【請求項3】
前記調整部は、前記第1過給モードから前記準備モードに切換えるために、前記調整弁の開度の大きさに関わらず、前記調整弁の開度を全開度に調整する、請求項
2に記載の過給システム。
【請求項4】
前記第1過給機と前記第2過給機との双方に潤滑油を供給する供給部をさらに備える、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の過給システム。
【請求項5】
前記パラメータ値は、前記第2過給機の過給圧である、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の過給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸気を過給する過給システムとしては、たとえば、第1過給機と第2過給機とを有する構成が公知である(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1記載の過給システムにおいては、制御装置は、第1過給機を用いてエンジンの吸気を過給する第1過給モードと、第1過給機および第2過給機の双方を用いてエンジンの吸気を過給する第2過給モードとのいずれかの過給モードに切換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明では、第1過給モード中において用いられていない第2過給機の制御については何ら考慮されていなかった。したがって、第1過給モード中に第2過給機についてサージングが生じる場合があり得る。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、第1過給機を用いる第1過給モード中に第2過給機でサージングが生じることを抑制する過給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示にかかる過給システムは、第1コンプレッサを有する第1過給機と、第2コンプレッサを有する第2過給機と、第1過給機が空気をエンジンに過給する第1過給モードと、第1過給機および第2過給機が空気をエンジンに過給する第2過給モードとに過給モードを切換える切換部と、第2過給機の過給圧に関するパラメータ値を検出する検出部と、第2コンプレッサの流出口と第1コンプレッサの流入口とを結ぶ経路に設けられた調整弁と、第1過給モードにおいて検出部が第1パラメータ値よりも大きい第2パラメータ値を検出した場合に、調整弁の開度を第1開度よりも大きい第2開度に調整する調整部とを備える。
【0007】
このようにすると、第1過給機が空気をエンジンに過給する第1過給モード中において、第2過給機でサージングが生じることを抑制できる。
【0008】
ある局面において、第2過給機において第1過給モード中にサージングが生じない調整弁の開度を特定するための情報を記憶する記憶部をさらに備え、調整部は、検出部により検出されたパラメータ値と情報とに基づいて特定された開度で、調整弁の開度を調整する。
【0009】
このようにすると、第1過給モード中に第2過給機でサージングが生じない調整弁の開度で、調整弁の開度を調整することから、第2過給機でサージングが生じることを正確に抑制できる。
【0010】
ある局面において、切換部は、過給モードを第1過給モードから準備モードに切換えた後に第2過給モードに切換え、調整部は、第1過給モードから準備モードに切換えるために調整弁の開度を全開度に調整する。
【0011】
このようにすると、パラメータ値が第1パラメータ値から第2パラメータ値になった場合に開度が大きくする調整弁と、準備モードに制御させるために全開度とされる調整弁とを同一とすることができることから、「パラメータ値が第1パラメータ値から第2パラメータ値になった場合に開度が大きくする調整弁と、準備モードに制御させるために全開度とされる調整弁とが異なる過給システム」と比較して、調整弁の数を減少させることができる。
【0012】
ある局面において、調整部は、第1過給モードから準備モードに切換えるために、調整弁の開度の大きさに関わらず、調整弁の開度を全開度に調整する。
【0013】
このようにすると、第1過給モード中の調整弁の開度に関わらず、適切に準備モードに切換えることができる。
【0014】
ある局面において、第1過給機と第2過給機との双方に潤滑油を供給する供給部をさらに備える。
【0015】
このようにすると、第1過給機および第2過給機の双方を適切に潤滑させることができる。
【0016】
ある局面において、パラメータ値は、第2過給機の過給圧である。
このようにすると、第2過給機の過給圧を用いて、サージングを抑制できることから、簡易な構成でサージングが発生する抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、第1過給機を用いる第1過給モード中に第2過給機のサージングが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態におけるエンジンの概略構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態の制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態のシングルモードを示す図である。
【
図6】本実施形態の制御装置の機能構成例を示す図である。
【
図8】本実施形態のABV開度の変化などの一例を示す図である。
【
図9】本実施形態の制御装置の処理を示す図である。
【
図10】本実施形態の過給システムの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0020】
<過給システムの構成について>
図1は、本実施形態におけるエンジン1の概略構成の一例を示す図である。
図1を参照して、このエンジン1は、たとえば、走行のための駆動源として車両に搭載される。本実施形態においては、エンジン1は、ディーゼルエンジンである場合を一例として説明するが、たとえば、ガソリンエンジンであってもよい。
【0021】
エンジン1は、エンジン本体10A、10Bと、エアクリーナ20と、インタークーラ25と、吸気マニホールド28A、28Bと、第1過給機30(プライマリターボ)と、第2過給機40(セカンダリターボ)と、排気マニホールド50A、50Bと、排気処理装置81と、制御装置200とを含む。なお、エンジン本体10A、およびエンジン本体10Bはともに「バンク」と称してもよい。
【0022】
エンジン本体10Aには、複数の気筒12Aが形成される。エンジン本体10Bには、複数の気筒12Bが形成される。各気筒12A、12B内にはピストン(図示せず)が収納されており、ピストンの頂部と気筒の内壁とによって燃焼室(燃料が燃焼する空間)が形成されている。各気筒12A、12B内をピストンが摺動することによって燃焼室の容積が変化する。各気筒12A、12Bには、インジェクタ(図示せず)が設けられており、エンジン1の動作中においては、制御装置200によって設定されたタイミングおよび量の燃料を各気筒12A、12B内に噴射する。なお、各インジェクタから噴射する燃料の噴射量およびタイミングは、たとえば、エンジン回転数NE、吸入空気量Qin、アクセルペダルの踏み込み量あるいは車両の速度等から制御装置200によって設定される。
【0023】
各気筒12A、12Bのピストンは、コネクティングロッドを介して共通のクランクシャフト(図示せず)に連結される。各気筒12A、12B内において所定の順序で燃料が燃焼することによってピストンが各気筒12A、12B内を摺動し、ピストンの上下運動がコネクティングロッドを経由してクランクシャフトの回転運動に変換される。
【0024】
第1過給機30は、第1コンプレッサ31と第1タービン32とを含むターボチャージャーである。第1過給機30は、エンジン本体10A、10Bに対して吸気(空気)を過給する。第1過給機30の第1コンプレッサ31は、エンジン1の吸気通路に設けられる。この吸気通路は、エアクリーナ20から吸気マニホールド28A、28Bまでの通路である。典型的には、第1コンプレッサ31は、エンジン本体10A、10Bに対して吸気を過給する。第1過給機30の第1タービン32は、エンジン1の排気通路に設けられる。この排気通路は、排気マニホールド50A、50Bから排気処理装置81までの通路である。
【0025】
第1コンプレッサ31内には、コンプレッサホイール33が回転自在に収納される。第1タービン32内には、タービンホイール34と可変ノズル機構35とが設けられる。タービンホイール34は、回転自在に第1タービン32内に収納される。コンプレッサホイール33と、タービンホイール34とは、回転軸36によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール33は、タービンホイール34に供給される排気のエネルギー(排気エネルギー)によって回転駆動される。
【0026】
可変ノズル機構35は、第1タービン32を作動させる排気の流速を変化させる。可変ノズル機構35は、タービンホイール34の外周側に配置され、排気流入口から供給される排気をタービンホイール34に導く複数のノズルベーン(図示せず)と、複数のノズルベーンの各々を回転させることによって隣接するノズルベーン間の隙間(以下の説明においてこの隙間をVN開度と記載する)を変化させる駆動装置(図示せず)とを含む。可変ノズル機構35は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN1に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。
【0027】
第2過給機40は、第2コンプレッサ41と第2タービン42とを含むターボチャージャーである。第2過給機40は、エンジン本体10A、10Bに対して吸気を過給する。第2過給機40の第2コンプレッサ41は、エンジン1の吸気通路において、第1コンプレッサ31に並列して設けられ、エンジン本体10A、10Bに対して吸気を過給する。第2過給機40の第2タービン42は、エンジン1の排気通路において、第1タービン32に並列して設けられる。
【0028】
第2コンプレッサ41内には、コンプレッサホイール43が回転自在に収納される。第2タービン42内には、タービンホイール44と可変ノズル機構45とが設けられる。タービンホイール44は、回転自在に第2タービン42内に収納される。コンプレッサホイール43と、タービンホイール44とは、回転軸46によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール43は、タービンホイール44に供給される排気エネルギーによって回転駆動される。
【0029】
なお、可変ノズル機構45は、可変ノズル機構35と同様の構成を有するため、その詳細な説明は繰り返さない。可変ノズル機構45は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN2に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。
【0030】
エアクリーナ20は、吸気口(図示せず)から吸入された空気から異物を除去する。エアクリーナ20には、吸気管23の一方端が接続される。吸気管23の他方端は、分岐して吸気管21の一方端および吸気管22の一方端に接続される。
【0031】
吸気管21の他方端は、第1過給機30の第1コンプレッサ31の吸気流入口31Aに接続される。第1過給機30の第1コンプレッサ31の吸気流出口31Bには、吸気管37の一方端が接続される。吸気管37の他方端は、インタークーラ25に接続される。第1コンプレッサ31は、コンプレッサホイール33の回転によって吸気管21を通じて吸入される空気を過給して吸気管37に供給する。
【0032】
吸気管22の他方端は、第2過給機40の第2コンプレッサ41の吸気流入口41Aに接続される。第2過給機40の第2コンプレッサ41の吸気流出口41Bには、吸気管47の一方端が接続される。吸気管47の他方端は、吸気管37の途中の接続部K3に接続される。第2コンプレッサ41は、コンプレッサホイール43の回転によって吸気管22を通じて吸入される空気を過給して吸気管47に供給する。
【0033】
また、エンジン1には、1以上の制御弁が設けられている。本実施形態では、1以上の弁は、ACV62、ABV64、およびECV66を含む。吸気管47の途中にはACV62が設けられている。ACV62は、エアコントロールバルブである。ACV62は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオフのバルブである。ACV62は、第1コンプレッサ31の吸気流出口31Bと、第2コンプレッサ41の吸気流出口41Bとを結ぶ経路に設けられている。
【0034】
また、吸気管47においてACV62よりも上流側(第2コンプレッサ41側)に位置する接続部K4に、還流管48の一方端が接続されている。また、還流管48の他方端は吸気管21に接続されている。還流管48は、吸気管47を流れる空気の少なくとも一部を第1過給機30の第1コンプレッサ31よりも上流側に還流させるための通路である。還流管48を通じて吸気管21に還流した空気は、第1コンプレッサ31に供給される。
【0035】
還流管48の途中にはABV64が設けられている。ABV64は、エアバイパスバルブである。ABV64は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオフのバルブである。ABV64は、第1コンプレッサ31の吸気流入口31Aと、第2コンプレッサ41の吸気流出口41Bとを結ぶ経路に設けられている。
【0036】
接続部K3には、第1コンプレッサ31によって過給された空気と、第2コンプレッサ41によって過給され、ACV62を通過した空気とが供給される。これらの空気は、接続部K3で合流してインタークーラ25に流入する。
【0037】
インタークーラ25は、流入した空気を冷却する。インタークーラ25は、たとえば空冷式又は水冷式の熱交換器である。インタークーラ25には、2カ所の吸気流出口が設けられる。インタークーラ25の一方の出口には、吸気管27Aの一方端が接続される。吸気管27Aの他方端は、吸気マニホールド28Aに接続される。インタークーラ25の他方の出口には、吸気管27Bの一方端が接続される。吸気管27Bの他方端は、吸気マニホールド28Bに接続される。
【0038】
吸気マニホールド28A、28Bは、それぞれエンジン本体10A、10Bにおける気筒12A、12Bの吸気ポート(図示せず)に連結される。一方、排気マニホールド50A、50Bは、それぞれエンジン本体10A、10Bにおける気筒12A、12Bの排気ポート(図示せず)に連結される。
【0039】
各気筒12A、12Bの燃焼室から排気ポートを通じて気筒外に排出された排気(燃焼後のガス)は、エンジン1の排気通路を経由して車外に排出される。上記の排気通路は、排気マニホールド50A、50B、排気管51A、51Bと、接続部K1と、排気管52A、52B、53A、53Bと、接続部K2とを含む。排気管51Aの一方端は、排気マニホールド50Aに接続される。排気管51Bの一方端は、排気マニホールド50Bに接続される。排気管51Aの他方端と、排気管51Bの他方端とは、接続部K1において一旦合流した後に、分岐して排気管52Aの一方端および排気管52Bの一方端に接続される。
【0040】
排気管52Aの他方端は、第1タービン32の排気流入口に接続される。第1タービン32の排気流出口には、排気管53Aの一方端が接続される。排気管52Bの他方端は、第2タービン42の排気流入口に接続される。第2タービン42の排気流出口には、排気管53Bの一方端が接続される。
【0041】
排気管52Bの途中にはECV66が設けられる。ECV66は、エキゾーストコントロールバルブである。ECV66は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオンのバルブである。
【0042】
排気管53Aの他方端と排気管53Bの他方端とは、接続部K2において合流し、排気処理装置81に接続される。排気処理装置81は、たとえば、SCR触媒、酸化触媒、あるいは、PM除去フィルタ等によって構成され、排気管53Aおよび排気管53Bから流通する排気を浄化する。
【0043】
検出部としての圧力センサ108は、吸気管47の接続部K4における圧力Psを検出する。圧力センサ108は、過給圧Psを示す信号を制御装置200に送信する。過給圧Psを、「第2過給機40の過給圧」という場合もある。なお、特に図示しないが、エンジン1には、他のセンサも設けられる。他のセンサは、エアフローメータと、エンジン回転数センサなどを含む。エアフローメータは、吸入空気量Qinを検出する。エアフローメータは、検出した吸入空気量Qinを示す信号を制御装置200に送信する。エンジン回転数センサは、エンジン回転数NEを検出する。エンジン回転数センサは、検出したエンジン回転数NEを示す信号を制御装置200に送信する。
【0044】
また、潤滑油タンク250が予め定められた位置に設けられている。潤滑油タンク250には、潤滑油が収容されている。該潤滑油は、制御装置200の制御により、適切なタイミングで、種々の箇所に供給される。種々の箇所は、たとえば、第1コンプレッサ31、第1タービン32、第2コンプレッサ41、および第2タービン42を含む。
【0045】
本実施形態において、第1過給機30、第2過給機40、および制御装置200などによって「過給システム」が構成される。
図1に示すように、エンジン本体10A、10Bの吸気経路において第1コンプレッサ31と第2コンプレッサ41とは並列に配置される。また、エンジン本体10A、10Bの排気経路において第1タービン32と第2タービン42とは並列に配置される。したがって、本実施形態の過給システムは、いわゆるパラレルシーケンシャルターボシステムである。また、第1過給機30、および第2過給機40については、「エンジンに過給する第1過給機」、および「エンジンに過給する第2過給機」と表現してもよい。
【0046】
図2は、制御装置200のハードウェア構成例を示す図である。制御装置200は、CPU101(Central Processing Unit)と、ROM102(Read Only Memory)と、RAM103(Random Access Memory)と、入出力ポート106とを含む。CPU101は、各種処理を行なう。ROM102は、プログラムおよびデータを記憶する。RAM103は、CPU101の処理結果等を記憶する。入出力ポート106は、外部との情報のやり取りを行なう。入出力ポート106の入力ポートには、圧力センサ108などの各種センサ類が接続される。出力ポートには、制御対象となる機器および部材(たとえば、ACV62、ABV64、ECV66など)が信号線などを介して接続される。
【0047】
制御装置200は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン1が所望の運転状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0048】
制御装置200は、ACV62、ABV64およびECV66を制御することにより、複数のモードのうちいずれかのモードに制御する。複数のモードは、シングルモードと、ツインモードとを含む。シングルモードは、第1過給機30が空気(吸気)をエンジンに過給する一方、第2過給機40が空気をエンジンに過給しないモードである。ツインモードは、第1過給機30および第2過給機40が空気をエンジンに過給するモードである。
【0049】
制御装置200は、過給モードをシングルモードからツインモードに切換える場合には、シングルモードから、助走モードに切換えた後にツインモードに切換える。助走モードは、第2過給機40による過給圧を一定以上に上昇させるモードである。なお、シングルモードを「第1過給モード」ともいい、ツインモードを「第2過給モード」ともいい、助走モードを「準備モード」ともいう。
【0050】
以下、シングルモード、助走モードおよびツインモードの各々における過給システムの動作について
図3、
図4および
図5を参照しつつ説明する。
【0051】
<シングルモードについて>
制御装置200は、所定の実行条件が成立する場合に、シングルモードで過給システムを動作させる。所定の実行条件とは、たとえば、エンジン回転数NEおよび吸入空気量Qinに基づくエンジン1の運転状態が低負荷運転状態であるという条件を含む。制御装置200は、過給モードがシングルモードである場合に、シングルモードのフラグをオン状態にし、ツインモードのフラグをオフ状態にする。制御装置200は、過給モードがシングルモードである場合には、ACV62、ABV64およびECV66をいずれも閉状態(オフ状態)にする。
【0052】
図3は、シングルモード時の過給システムの動作を説明するための図である。
図3の矢印に示すように、排気マニホールド50A、50Bを流通する排気は、排気管52Aを経由して第1過給機30の第1タービン32に流れ、排気管53Aを経由して排気処理装置81に流れる。
【0053】
第1タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転し、タービンホイール34の回転にともなってコンプレッサホイール33が回転する。
【0054】
エアクリーナ20から吸入される空気は、吸気管23および吸気管21を経由して第1コンプレッサ31に流れる。
【0055】
第1コンプレッサ31から吐出された吸気は、吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。
【0056】
インタークーラ25に流れた吸気は、吸気管27A、27Bに分岐して吸気マニホールド28A、28Bの各々に流れる。
【0057】
<助走モードについて>
制御装置200は、たとえば、過給モードがシングルモードであって、かつ、第1過給機30の回転数がしきい値を超える場合に、シングルモードからツインモードへの切換要求があると判定する。このとき、制御装置200は、たとえば、シングルモードからツインモードへの切換要求フラグをオン状態にする。制御装置200は、たとえば、エンジン1の排気の流量および可変ノズル機構35の開度に基づいて第1過給機30の回転数を推定してもよい。
【0058】
制御装置200は、シングルモードからツインモードへの切換要求がある場合には、まず、助走モードに制御する。制御装置200は、ABV64およびECV66の両方を開状態(オン状態)にし、ACV62を閉状態(オフ状態)にする。
【0059】
図4は、助走モード時の過給システムの動作を説明するための図である。
図4の矢印に示すように、排気マニホールド50A、50Bを流通する排気は、接続部K1で一旦合流した後に排気管52A、52Bに分岐し、第1過給機30の第1タービン32、および第2過給機40の第2タービン42の両方に流れ、排気管53A、53Bを経由して排気処理装置81に流通する。
【0060】
第1タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転し、タービンホイール34の回転にともなってコンプレッサホイール33が回転する。第2タービン42に供給された排気によって、タービンホイール44が回転し、タービンホイール44の回転にともなってコンプレッサホイール43が回転する。
【0061】
エアクリーナ20から吸入される空気は、吸気管23から吸気管21、22に分岐して第1コンプレッサ31、および第2コンプレッサ41の両方に流れる。
【0062】
第1コンプレッサ31から吐出された吸気は、吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。第2コンプレッサ41から吐出された吸気は、吸気管47から接続部K4を経由して還流管48に流れ、還流管48から吸気管21を経由して第1コンプレッサ31に流れる。
【0063】
インタークーラ25に流れた吸気は、吸気管27A、27Bに分岐して吸気マニホールド28A、28Bの各々に流れる。助走モード中においては、第1過給機30によってインタークーラ25に流れる吸気を過給しつつ、第2過給機40の回転数が上昇される。第2過給機40の回転数が上昇するにつれて第2過給機40の第2コンプレッサ41から吐出される吸気の圧力が上昇していく。
【0064】
<ツインモードについて>
制御装置200は、助走モード中における第2過給機40の過給能力が十分高くなったタイミングで、ツインモードで過給システムを動作させる。制御装置200は、たとえば、過給モードがツインモードである場合に、シングルモードのフラグをオフ状態にし、ツインモードのフラグをオン状態にする。制御装置200は、過給モードがツインモードである場合には、ACV62を開状態(オン状態)にするとともに、ABV64を閉状態(オフ状態)にする。
【0065】
図5は、ツインモード時の過給システムの動作を説明するための図である。助走モード時においては、第2過給機40の第2コンプレッサ41から吐出された吸気が吸気管47の途中から還流管48を経由して吸気管21に流れていたのに対して、ツインモード時においては、
図5の矢印に示すように、第2過給機40の第2コンプレッサ41から吐出された吸気が吸気管47から吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。
【0066】
なお、上述以外の排気および吸気の流れは助走モード時の排気および吸気の流れと同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0067】
[制御装置の機能構成例]
図6は、制御装置200の機能構成例を説明するための図である。制御装置200は、取得部202と、弁制御部204(調整部)と、記憶部206と、切換部208と、供給部210と、タイマ部212とを含む。
【0068】
取得部202は、種々のセンサからのセンサ値を取得する。取得部202は、たとえば、圧力センサ108で検出された第2過給機40の過給圧を取得する。弁制御部204は、ACV62、ABV64、およびECV66の開度を調整する。切換部208は、過給モードを切換える。記憶部206には種々の情報が記憶されている。本実施形態では、切換部208は、過給モードを、シングルモードから助走モードに切換え、該助走モードからツインモードに切換える。供給部210は、潤滑油タンク250に収容されている潤滑油を、第1コンプレッサ31、第1タービン32、第2コンプレッサ41、および第2タービン42などに対して供給する。タイマ部212は時間を測定する。
【0069】
作動部214は、第2過給機40を作動させる。本実施形態では、作動部214は、シングルモード中に、補助モータ(特に図示せず)を用いて、第2過給機40の第2タービン42を回転させる。以下に、シングルモード中に、第2過給機40の第2タービン42を回転させる理由を説明する。
【0070】
供給部210は、第2コンプレッサ41および第2タービン42に潤滑油を供給する。また、仮に、シングルモード中に、第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させない場合には、タービンホイール34の回転軸、およびコンプレッサホイール33の回転軸の少なくとも一方において、供給された潤滑油が固着して焼き付きが生じ得る。
【0071】
そこで、本実施形態では、作動部214は、シングルモード中に、第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させる。これにより、シングルモード中におけるタービンホイール44の回転軸、およびコンプレッサホイール43の回転軸の焼き付けを抑制できる。なお、作動部214は、シングルモード中に、第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させるが、ACV62は全閉状態になっていることから、第2過給機40(第2コンプレッサ41)は、エンジンに対して空気を過給するわけではない。また、作動部214は、第2コンプレッサ41および第2タービン42のうちのいずれか一方を作動させるようにしてもよい。作動部214が、第2コンプレッサ41および第2タービン42のいずれか一方を作動させることにより、他方をも作動させることができる。また、作動部214は、第2コンプレッサ41および第2タービン42の双方を作動させるようにしてもよい。
【0072】
以下では、第2コンプレッサ41および第2タービン42のうちのいずれか一方の作動、および第2コンプレッサ41および第2タービン42のいずれか一方の作動を、「作動処理」ともいう。作動部214は、シングルモード中においては、作動処理を継続して実行するようにしてもよい。また、作動部214は、シングルモード中においては、作動処理を一定間隔おきに実行するようにしてもよい。
【0073】
一方で、
図3に示したように、弁制御部204は、シングルモード中では、ACV62、ABV64、およびECV66を全て、全閉状態とする。ACV62、ABV64、およびECV66が全て、全閉状態となったときには、第2過給機40において閉じられた空間が形成される。ACV62、ABV64、およびECV66が全て、全閉状態となっているときに、第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させると、第2過給機40の過給圧が上昇する。第2過給機40の圧力は、ACV62、ABV64、およびECV66が全閉状態となることにより形成された空間内の圧力である。第2過給機40の圧力を、第2過給機40内の圧力ともいう。第2過給機40の過給圧が上昇している状態で、第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させると、第2過給機40でサージングが発生してしまう。サージングの発生は、第2過給機の過給圧が高まることに起因するものである。
【0074】
そこで、本実施形態の過給システムは、このサージングが発生することを抑制する。典型的には、シングルモード中に、弁制御部204が、第2過給機40の過給圧が上昇するにつれて、ABV64の開度を大きくする。これにより、シングルモード中においては、第2過給機40内の気体を外部に排出することができる。本実施形態の過給システムは、この気体の排出により、第2過給機40内の圧力(過給圧)を低減できる。その結果、第2過給機40でサージングが発生することを抑制できる。
【0075】
図7は、記憶部206が記憶しているマップである。
図7のマップの例では、横軸がシングルモード中における第2過給機40の過給圧を示し、縦軸がABV64の開度を示す。以下では、ABV64の開度を「ABV開度」ともいう。
【0076】
図7の例では、横軸に示される過給圧と、第2過給機40においてサージングが発生しないABV開度とが対応づけられて規定されている。つまり、
図7のマップは、第2過給機40においてシングルモード中にサージングが生じないABVの開度を特定するための情報である。
図7の例では、たとえば、第2過給機40の過給圧が、第1過給圧P1(第1パラメータ値)である場合には、サージング発生しないABV開度として、第1開度D1が規定されている。また、
図7の例では、たとえば、第2過給機40の過給圧が、第2過給圧P2(第2パラメータ値)である場合には、サージング発生しないABV開度として、第2開度D2が規定されている。第2過給圧P2は第1過給圧P1よりも大きく(P2>P1)、第2開度D2は第1開度D1よりも大きい(D2>D1)。また、
図7のマップでは、他の過給圧と、該他の過給圧に対応するABV開度が規定されている。
【0077】
また、たとえば、過給システムの製造時に、
図7のマップは生成されて、予め記憶部206に記憶される。
【0078】
取得部202は、シングルモード中において、所定時間(たとえば、1秒)ごとに、圧力センサ108から過給圧Psを取得する。取得部202は、該取得した過給圧Psを弁制御部204に対して出力する。弁制御部204は、取得部202により取得された過給圧Psと
図7のマップとに基づいて特定された開度で、ABV64の開度を調整する。典型的には、弁制御部204は、圧力センサ108から出力された過給圧Psを取得すると、
図7のマップを参照して、該取得した過給圧Psに対応するABV開度を特定する。弁制御部204は、ABV64の開度が該特定した開度となるように、ABV64の開度を調整する。
【0079】
たとえば、シングルモードにおいて圧力センサ108が第1過給圧P1よりも大きい第2過給圧P2を検出した場合に、弁制御部204は、ABV開度を第1開度D1から第2開度D2に調整する。換言すれば、取得部202により取得された第2過給機40の過給圧が、第1過給圧P1から、第2過給圧P2に変化した場合には、弁制御部204は、ABV開度は第1開度D1から第2開度D2に制御する。また、ABV開度が第2開度D2となった場合であっても、作動部214は、作動処理を継続する。したがって、ABV開度が第2開度D2である場合であっても、過給圧は高まる。この過給圧が、第2開度D2に対応する第2過給圧P2を超えて、第3過給圧P3に到達すると、弁制御部204は、ABV開度を第3開度D3とする。ただし、第3過給圧P3は第2過給圧P2よりも大きく(P3>P2)、第3開度D3は第2開度D2よりも大きい(D3>D2)。つまり、シングルモード中においては、ABV開度を大きくしても、過給圧も大きくなる。したがって、シングルモード中においては、弁制御部204は、時間の経過とともに、ABV開度を大きくなるように制御する(後述の
図8(C)の実線参照)。
図7のマップの例では、弁制御部204によるABV64の開度の調整回数は複数回となる。
【0080】
つまり、弁制御部204は、第2過給機40の過給圧が大きくなるにつれて、ABV開度を大きくする。この制御により、ABV64の開度は、第2過給機40においてサージングの発生が抑制される開度となる。また、ABV64は、シングルモード中における第2過給機40の過給圧を、開度が大きくなることにより低下させる弁である。
【0081】
[制御装置200のタイミングチャート]
図8は、制御装置200の処理のタイミングチャートを示す図である。
図8(A)~
図8(E)の横軸は、時間を示す。
図8(A)の縦軸は、エンジン回転数NEを示す。
図8(B)の縦軸は、ACV62の開度を示す。
図8(C)の縦軸は、ABV64の開度を示す。
図8(D)の縦軸は、ECV66の開度を示す。
図8(E)の縦軸は、第2過給機40の過給圧を示す。
【0082】
たとえば、エンジン1を搭載する車両が発進し、アクセル開度が緩やかに増加する場合を想定する。エンジン1の運転状態が低負荷運転状態である場合には、過給システムは、シングルモードで動作する。そのため、
図8(B)および
図8(D)に示すように、ACV62、およびECV66は、いずれも閉状態(オフ状態)となる。
【0083】
一方で、本実施形態で、シングルモード中においては、ABV64の開度は、
図8(C)に示すように、第2過給機40の過給圧に応じた開度とされる(
図7の説明など参照)。シングルモード中においては、ABV64の開度は徐々に大きくなることから、
図8(E)に示すように、シングルモード中においては第2過給機40の過給圧はほとんど上昇しない。また、
図3を用いて説明したように、エアクリーナ20からの吸気は、第1過給機30により過給され、エンジン本体10A、10Bに供給される。そのため、
図8(A)に示されるように、エンジン回転数NEは上昇する。
【0084】
タイミングT1において、たとえば、第1過給機30の回転数がしきい値を超えるなどしてシングルモードからツインモードへの切換が要求されたとする。該切換が要求された場合に、制御装置200の切換部208は、過給モードを助走モードに切換える。
【0085】
タイミングT1では、
図5(B)~
図5(D)に示されるように、制御装置200の弁制御部204は、ACV62の全閉状態を維持するとともに、ECV66を全開状態(オン状態)とする。全開状態とは、弁の開度が全開度である状態である。さらに、弁制御部204は、助走モードに切換えられる場合には、ABV64の開度の大きさに関わらず、ABV64の開度を全開状態とする。これにより、適切に、過給モードがシングルモードから助走モードに切換えられる。助走モードに切換えられると、エアクリーナ20からの吸気は、第1過給機30により過給され、エンジン1に供給されるとともに、第2過給機40により過給された空気は、吸気管21に戻される。
【0086】
第2過給機40の過給能力が十分高くなる場合に、タイミングT2にて、過給モードが助走モードからツインモードに切換えられる。そのため、
図8(B)~
図8(D)に示されるように、ECV66の開状態が維持されるとともに、ACV62が閉状態から開状態に切換えられ、ABV64が開状態から閉状態に切換えられる。
【0087】
[制御装置200の処理フロー]
図9は、制御装置200が実行する処理の一部のフローチャートである。制御装置200は、ステップS2において、現在の過給モードがシングルモードであるか否かを判断する制御装置200は、たとえば、シングルモードのフラグがオンされているか否かを判断することにより、ステップS2の処理を実行する。
【0088】
制御装置200が、ステップS2においてNOと判断すると、処理は終了する。制御装置200が、ステップS2においてYESと判断すると、処理はステップS4に進む。ステップS4において、制御装置200は、ツインモードへの切換要求があったか否かを判断する。制御装置200が、ステップS4においてYESと判断すると、処理は終了する。制御装置200が、ステップS4においてNOと判断すると、処理はステップS6に進む。
【0089】
ステップS6において、取得部202は、圧力センサ108からの第2過給機40の過給圧Psを取得する。次に、ステップS8において、弁制御部204は、
図7のマップを参照して、該取得した過給圧Psに対応するABV開度を特定する。次に、ステップS10において、弁制御部204は、ABV64の開度を、ステップS8で特定したABV開度とする。その後、
図9の処理は終了する。また、
図9の処理が終了したときにおいて、車両が走行している状態では、制御装置200は、所定期間(たとえば、1秒)経過後に
図9の処理を再び実行する。
【0090】
[本実施形態の過給システムが奏する効果]
次に、本実施形態の過給システムが奏する効果を説明する。
【0091】
(1)
図10は、本実施形態の過給システムの効果を説明するための図である。
図10は、コンプレッサマップ上の第2過給機40の動作点の変化を説明するための図でもある。
図10の縦軸は、第2過給機40の圧力比を示す。この圧力比は、典型的には、第2過給機40の第2コンプレッサ41における吸入圧力に対する吐出圧力の比である。
図10の横軸は、第2過給機40の第2コンプレッサ41への吸入空気量を示す。
図10の太実線は、第2過給機40においてサージングが発生しやすい領域との境界線であるサージラインを示す。
図10の細実線は、第2過給機40の過回転領域との境界線である過回転ラインを示す。以下の説明においては、サージラインよりも左側の領域をサージ領域と称する。サージ領域は、サージングが発生することを示す領域である。
【0092】
従来の過給システムは、
図8(C)の破線で示すように、シングルモード中においては、ABV64を全閉状態としていた。つまり、従来の過給システムは、ACV62、ABV64、およびECV66の全てを全閉状態としていた。シングルモード中において、3つの制御弁が全閉された状態で、タービンホイール34の回転軸などの焼き付きを防止するために、シングルモード中に、第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させると、
図8(E)のシングルモード中での破線で示すように、第2過給機40内の過給圧が高まってしまう。過給圧が高まった状態で、第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させると、
図10の経路Aに示すように、第2過給機40においてサージングが発生するという問題があった。
【0093】
そこで、本実施形態の過給システムは、圧力センサ108で検出された第2過給機40の過給圧を取得部202が取得する。
図7でも示したように、該取得された過給圧が、第1過給圧P1から、第2過給圧P2になった場合に、弁制御部204は、ABV開度を第1開度D1から第2開度D2に調整する。さらに、
図7においては、弁制御部204は、取得された過給圧が大きくなるにつれて、ABV開度を大きくなるように調整する。この結果、本実施形態の過給システムは、
図8(C)の実線で示すように、シングルモード中においては、時間の経過に応じて、徐々に、ABV開度は大きくなるように、制御する。したがって、
図8(E)の実線に示すように、第2過給機40の過給圧をほとんど上昇させないようにすることができる。その結果、作動部214は、過給圧が低い状態で第2コンプレッサ41および第2タービン42を作動させることができる。よって、本実施形態の過給システムは、
図10の経路Bに示すように、第2過給機40の過給圧が高まることに起因するサージングが第2過給機40で発生することを抑制できる。
【0094】
(2) また、第2過給機40においてシングルモード中にサージングが生じないABV64の開度を弁制御部204が特定するためのマップが、記憶部206に予め記憶されている。このマップは、
図7に示したものである。さらに、弁制御部204は、取得部202により取得された第2過給機40の過給圧と、このマップとに基づいて、開度を特定し、該開度でABV64の開度を調整する。したがって、本実施形態の過給システムは、シングルモード中に第2過給機40においてサージングが生じない開度で、ABV64の開度を調整することから、第2過給機においてサージングが生じることを正確に抑制できる。
【0095】
(3) また、切換部208は、シングルモード中において、ツインモードへの切換要求があった場合には、助走モードに制御する。また、弁制御部204が、ABV64とECV66との開度を全開度とすることにより、切換部208は助走モードに切換える。換言すれば、ABV64は、シングルモードから助走モードに切換えるために全開度とされる制御弁である。このように、シングルモード中において、第2過給機40内の過給圧を低下させるための制御弁と、シングルモードから助走モードに制御させるための制御弁を共に、ABV64とすることができる。したがって、本実施形態の過給システムにおいては、「第2過給機40内の過給圧を低下させるための制御弁と、シングルモードから助走モードに制御させるための制御弁とが異なる過給システム」と比較して、制御弁の数を減少させることができる。
【0096】
(4) また、
図8(C)のタイミングT1などに示すように、弁制御部204が、ABV64の開度の大きさに関わらず、ABV64の開度を全開度とすることにより、切換部208が、シングルモードから助走モードに切換える。したがって、シングルモード中のABV64の開度に関わらず、切換部208は、適切に準備モードに切換えることができる。
【0097】
(5) また、供給部210は、潤滑油タンク250に収容されている潤滑油を、第1コンプレッサ31、第1タービン32、第2コンプレッサ41、および第2タービン42に対して供給する。したがって、本実施形態の過給システムは、第1過給機30および第2過給機の双方を適切に潤滑させることができる。
【0098】
(6) また、ABV開度を特定するために用いられるパラメータ値は、第2過給機40の過給圧である。したがって、本実施形態の過給システムは、第2過給機40の過給圧を用いて、サージングが発生する抑制できることから、簡易な構成でサージングが発生することを抑制できる。
【0099】
以下、変形例について説明する。
本実施形態では、第1過給機30および第2過給機40の制御に用いる制御弁は、ACV62、ABV64、およびECV66の3つであるとして説明した。しかしながら、制御弁の個数は3つに限らず、他の個数であってもよい。このような構成の場合において、シングルモード中の第2過給機40内の過給圧は、「1以上の制御弁が全閉状態とされているときの過給圧」である。
【0100】
また、本実施形態では、作動部214は、シングルモード中においては、補助モータを用いて、第2過給機40の第2タービン42を回転させるとして説明した。しかしながら、他の手段を用いて、作動部214は、シングルモード中においては、第2過給機40の第2タービン42を回転させるようにしてもよい。たとえば、作動部214は、ABV64の開度を予め定められた開度とすることにより、第2過給機40の第2タービン42を回転させるようにしてもよい。ここで、予め定められた開度は、シングルモードにおいて、支障が出ない程度の開度である。
【0101】
また、本実施形態では、
図7などにも示したように、ABV開度を特定するために用いられるパラメータ値は、第2過給機40の過給圧であるとして説明した。しかしながら、該パラメータ値は他の値としてもよい。該パラメータ値は、第2過給機40内の温度としてもよい。このような構成の場合には、圧力センサ108は、第2過給機40内の温度を検出する温度センサに代替される。
【0102】
また、本実施形態では、「第2過給機40においてシングルモード中にサージングが生じないABV64の開度を特定するための情報」は、
図7に示すマップであるとして説明した。しかしながら、該情報は、マップに限らず、他の情報としてもよい。他の情報は、第2過給機40の過給圧に基づいて、ABV64の開度を特定できる情報である。他の情報は、たとえば、第2過給機40の過給圧が入力されると、ABV64の開度が算出される算出式としてもよい。
【0103】
また、
図7のマップの例では、弁制御部204によるABV64の開度の調整回数は複数回となる、として説明した。しかしながら、調整回数は、予め定められた回数としてもよい。予め定められた回数は、1回としてもよく、2回以上としてもよい。予め定められた回数が、たとえば、1回である場合には、第2過給機40の過給圧が、予め定められた閾値を超えたときに、弁制御部204は、ABV開度を大きくする制御を実行する。
【0104】
また、圧力センサ108は、
図1に示した箇所でなくても、第2過給機40内の過給圧を検出できるのであれば、如何なる箇所に設置するようにしてもよい。
【0105】
また、本実施形態では、制御装置200が、
図7のマップを有するとして説明した。しかしながら、制御装置200がマップを有さなくてもよい。たとえば、エンジン1の外部に存在する外部装置が該マップを保持するようにしてもよい。また、エンジン1が搭載されている車両の外部である外部装置(サーバ装置)が、該マップを保持するようにしてもよい。この場合には、制御装置200が、過給圧Psを取得すると、制御装置200が該過給圧を外部装置に送信する。外部装置は、過給圧を取得すると、
図7のマップに基づいて、ABV開度を求める。外部装置は、該ABV開度を制御装置200に対して送信する。制御装置200は、該ABV開度を受信すると、制御装置200の弁制御部204は該ABV開度でABV64の開度を調整する。このような構成によれば、制御装置200の記憶容量を削減することができる。
【0106】
また、本実施形態では、エンジン1の吸気通路には、第1過給機30および第2過給機40が設けられるものとして説明したが、エンジン1の吸気通路には、第1過給機30および第2過給機40に加えて、たとえば、吸気絞り弁や排気再循環装置のEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス流入口が設けられてもよい。
【0107】
また、本実施形態では、エンジン1は、V型6気筒のエンジンを一例として説明したが、たとえば、その他の気筒レイアウト(たとえば、直列型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。
【0108】
また、本実施形態では、第1過給機30の回転数によってシングルモードからツインモードへの切替要求があるか否かを判定するものとして説明したが、第1過給機30の回転数に加えて、第1過給機30の効率や車両の運転状態(たとえば、加速状態)等のドライバビリティの観点からシングルモードからツインモードへの切替要求があるか否かを判定してもよい。
【0109】
また、本実施形態では、過給システムとして2つの過給機を備えるものとして説明したが、3以上の過給機を有するものであってもよい。
【0110】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
1 エンジン、62 ACV、64 ABV、66 ECV、200 制御装置、202 取得部、204 弁制御部、206 記憶部、208 切換部、210 供給部、212 タイマ部、214 作動部、250 潤滑油タンク。