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特許7070377ダクト付きカバー及びダクト付きカバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ダクト付きカバー及びダクト付きカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220511BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20220511BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B62D25/20 N
F24F13/02 A
F24F13/02 B
F01P11/10 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018227000
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020090126
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229069
【氏名又は名称】株式会社セキソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 英明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 広樹
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-87746(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012001459(DE,A1)
【文献】特開2003-276648(JP,A)
【文献】実開平2-147304(JP,U)
【文献】特開平6-24361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60H 1/00,1/26
F24F 13/02
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記第2面側から前記第1面側に向けてエアを導入する導入口が設けられたカバー本体と、前記カバー本体の前記第1面側に設けられ、前記導入口に接続される筒状のダクト部と、を備え、樹脂材料により一体成形されてなるダクト付きカバーであって、
前記カバー本体の一部が前記第1面側に向けて膨出され、その膨出方向と交差する方向に向けて開放された開口を有し、前記導入口を形成する導入部と、
前記導入部と前記ダクト部とを連結するヒンジ部と、を備え、
前記ダクト部は、前記膨出方向に対して前記ヒンジ部を起点として傾けられた姿勢で前記導入口に接続されている、
ダクト付きカバー。
【請求項2】
前記ダクト部には、前記カバー本体に対して係止される係止部が設けられている、
請求項1に記載のダクト付きカバー。
【請求項3】
前記カバー本体には、前記膨出方向に対して傾けられた姿勢の前記ダクト部の先端部を支持する支持部が突設されている、
請求項1または請求項2に記載のダクト付きカバー。
【請求項4】
前記カバー本体には、前記ダクト部の先端部の開口を仕切る仕切部が一体成形されている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のダクト付きカバー。
【請求項5】
前記仕切部は、互いに間隔をおいて複数設けられている、
請求項4に記載のダクト付きカバー。
【請求項6】
前記ダクト部の前記開口の縁部には、前記仕切部を収容する収容凹部が設けられている、
請求項4または請求項5に記載のダクト付きカバー。
【請求項7】
前記ダクト部の基端部は、前記導入部を覆っている、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のダクト付きカバー。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のダクト付きカバーを製造する方法であって、
前記ダクト部の延在方向が前記導入部の膨出方向に沿った状態の前記カバー本体、前記ヒンジ部、及び前記ダクト部を射出成形にて一体成形する成形工程と、
前記ダクト部を前記ヒンジ部を起点として傾けるとともに前記導入口に接続する接続工程と、を備える、
ダクト付きカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト付きカバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の下部には、樹脂材料からなり、車両と路面との間を流れる走行風を整流するアンダーカバーが設けられている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のアンダーカバーには、上記走行風を冷却風として取り入れるとともにエンジンルーム内の冷却対象物に吹き付ける冷却装置が一体に形成されている。冷却装置は、アンダーカバーの上面に設けられ、アンダーカバーの下方より冷却風を導入するダクトと、当該ダクトから導入される冷却風の下流に設けられ、当該冷却風を上方に誘導する傾斜面を有するエアスクープと、当該エアスクープとダクトとをつなぐ一対の側板とより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-87746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の冷却装置においては、ダクト、エアスクープ、及び一対の側板をアンダーカバーと一体成形することができる。
ところが、特許文献1に記載の冷却装置においては、成形の都合上、ダクトよりも下流側の部位、すなわち一対の側板やエアスクープを筒状とすることができない。そのため、アンダカバーの下方よりダクトに導入され、ダクトの上側の底部に沿って車両後方に流れる冷却風が、エアスクープに到達するまでの間に一対の側板同士の間から上方に向かって流出することとなり、冷却対象物に対して冷却風を適切に吹き付けることができないおそれがある。
【0005】
なお、こうした問題は、車体の下部に設けられるアンダーカバーに限定されるものではなく、他のダクト付きカバーにおいても同様にして生じる。
本発明の目的は、筒状のダクト部を有しながらも一体成形を可能としたダクト付きカバー及びダクト付きカバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのダクト付きカバーは、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記第2面側から前記第1面側に向けてエアを導入する導入口が設けられたカバー本体と、前記カバー本体の前記第1面側に設けられ、前記導入口に接続される筒状のダクト部と、を備え、樹脂材料により一体成形されてなるダクト付きカバーであって、前記カバー本体の一部が前記第1面側に向けて膨出され、その膨出方向と交差する方向に向けて開放された開口を有し、前記導入口を形成する導入部と、前記導入部と前記ダクト部とを連結するヒンジ部と、を備え、前記ダクト部は、前記膨出方向に対して前記ヒンジ部を起点として傾けられた姿勢で前記導入口に接続されている。
【0007】
同構成によれば、カバー本体の一部が第1面側に向けて膨出された導入部によって形成された導入口と、導入口に接続される筒状のダクト部とによってダクトが形成される。このため、導入部の膨出方向に対するダクト部の傾きを適宜設定することによって、エアの流れ方向を設定することができる。また、ダクト部が筒状であるため、ダクト部の外周方向へのエアの流出を抑制することができる。
【0008】
また、上記構成によれば、カバー本体の一部である導入部と筒状のダクト部とがヒンジ部を介して連結されている。このため、カバー本体の第1面側及び第2面側にそれぞれ位置し、互いに接離可能な可動型及び固定型と、可動型及び固定型の接離方向と交差する方向にスライド可能な複数のスライド型とを用いて、ダクト部の延在方向が導入部の膨出方向に沿った状態のカバー本体、ヒンジ部、及びダクト部を射出成形にて一体成形することができる。すなわち、ダクト部の外部形状やカバー本体の第1面の一部の形状を複数のスライド型によって成形する一方、ダクト部の内部形状やカバー本体のその他の形状を可動型及び固定型によって成形することができる。そして、ダクト部をヒンジ部を起点として傾けるとともに導入口に接続することによってカバーを製造することができる。したがって、筒状のダクト部を有しながらもカバーの一体成形が可能となる。
【0009】
上記ダクト付きカバーにおいて、前記ダクト部には、前記カバー本体に対して係止される係止部が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、ダクト部に設けられた係止部がカバー本体に係止されることにより、ダクト部をカバー本体に対して固定することができる。
【0010】
上記ダクト付きカバーにおいて、前記カバー本体には、前記膨出方向に対して傾けられた姿勢の前記ダクト部の先端部を支持する支持部が突設されていることが好ましい。
同構成によれば、ダクト部の姿勢を、導入部の膨出方向に対して傾けられた状態に安定して保持することができる。
【0011】
上記ダクト付きカバーにおいて、前記カバー本体には、前記ダクト部の先端部の開口を仕切る仕切部が一体成形されていることが好ましい。
同構成によれば、仕切部によってダクト部の先端部の開口が仕切られるため、同開口からダクト部内に異物が侵入することを抑制できる。
【0012】
また、仕切部がカバー本体と一体成形されるため、部品点数の増加を抑制できる。
上記ダクト付きカバーにおいて、前記仕切部は、互いに間隔をおいて複数設けられていることが好ましい。
【0013】
同構成によれば、先端部の開口からダクト部内に異物が侵入することをさらに抑制できる。
上記ダクト付きカバーにおいて、前記ダクト部の前記開口の縁部には、前記仕切部を収容する収容凹部が設けられていることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、上記開口の縁部に設けられた収容凹部に仕切部を収容することにより、仕切部とダクト部との位置決めを容易に行うことができる。
上記ダクト付きカバーにおいて、前記ダクト部の基端部は、前記導入部を覆っていることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、ダクト部の基端部が導入部を覆っているため、導入部とダクト部との間からのエアの流出を抑制できる。
また、上記目的を達成するためのダクト付きカバーの製造方法は、上記いずれか1つのダクト付きカバーを製造する方法であって、前記ダクト部の延在方向が前記導入部の膨出方向に沿った状態の前記カバー本体、前記ヒンジ部、及び前記ダクト部を射出成形にて一体成形する成形工程と、前記ダクト部を前記ヒンジ部を起点として傾けるとともに前記導入口に接続する接続工程と、を備える。
【0016】
同方法によれば、カバー本体の第1面側及び第2面側にそれぞれ位置し、互いに接離可能な可動型及び固定型と、可動型及び固定型の接離方向と交差する方向にスライド可能な複数のスライド型とを用いて、ダクト部の延在方向が導入部の膨出方向に沿った状態のカバー本体、ヒンジ部、及びダクト部を射出成形にて一体成形することができる。すなわち、ダクト部の外部形状やカバー本体の第1面の一部の形状を複数のスライド型によって成形する一方、ダクト部の内部形状やカバー本体のその他の形状を可動型及び固定型によって成形することができる。そして、ダクト部をヒンジ部を起点として傾けるとともに導入口に接続することによってカバーを製造することができる。したがって、筒状のダクト部を有しながらもカバーの一体成形が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、筒状のダクト部を有するダクト付きカバーを一体成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ダクト付きカバーの一実施形態について、当該カバーが取り付けられた車両を下方側から視た斜視図。
図2】同実施形態のカバーを冷却対象物とともに示す斜視図。
図3】同実施形態のカバーについて、ダクト部の先端部がカバー本体に固定された状態のダクトを中心とした拡大斜視図。
図4】同実施形態のカバーについて、ダクト部を傾動させた状態のダクトを中心とした拡大斜視図。
図5図3の5-5線に沿った断面図。
図6】同実施形態のカバーの製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図6を参照して、本発明を、車両の下部に取り付けられるエンジンアンダーカバー及びその製造方法として具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両100は、車両100の前部に設けられたエンジンルーム101の下部を覆うエンジンアンダーカバー(以下、カバー10)を備えている。カバー10は、樹脂材料により一体成形されている。なお、以降において、車両の前後方向を単に前後方向と称し、車両の幅方向を単に幅方向と称する。
【0020】
図1及び図2に示すように、カバー10は、上側の面である第1面20aと、下側の面であって路面に対向する第2面20bとを有するカバー本体20を備えている。
カバー本体20は、略長方形板状をなしている。カバー本体20の後側中央部には、切り欠き部21が形成されている。カバー本体20の切り欠き部21の前方には、開口部22が形成されている。カバー本体20の切り欠き部21及び開口部22は、例えば、車両100のエンジンオイルの交換などのメンテナンス作業時のために設けられており、カバー本体20に取り付け可能なサブカバー(図示略)により覆われている。
【0021】
図2に示すように、カバー10には、開口部22の幅方向の両側に位置し、車両100と路面との間を流れるエアを取り入れるとともに当該エアをエンジンルーム101内の冷却対象物に吹き付ける一対のダクト30を備えている。本実施形態の冷却対象物は、ステアリングギア110の取付部にてボルト111と共に設けられるゴムブシュ112である(図5参照)。
【0022】
次に、ダクト30について詳細に説明する。
図2に示すように、一対のダクト30は、互いに鏡面対称な形状を有しているため、以降において、幅方向の一方側(図2の右側)のダクト30について説明することで、他方側におけるダクト30についての説明を省略する。
【0023】
ダクト30は、カバー本体20の一部が第1面20a側に向けて膨出された導入部40と、導入部40の導入口41に接続されるダクト部50とを有している。導入部40とダクト部50とは、ヒンジ部31により連結されている。なお、以降において、カバー本体20に対して導入部40が膨出する方向を膨出方向(図5の上下方向)として説明する。
【0024】
図3及び図5に示すように、導入部40の後部には、後方に向けて開放された開口42が形成されている。導入部40は、第2面20b側(下側)から第1面20a側(上側)に向けてエアを導入する導入口41を形成する。なお、導入口41の幅方向の長さ及び膨出方向における高さは、後側ほど大きい。
【0025】
ダクト部50は、互いに対向する底壁51及び頂壁52と、これら底壁51及び頂壁52を連結する一対の側壁53とを有しており、略四角筒状をなしている。ダクト部50の開口断面積は、先端部55ほど徐々に大きくなっている。
【0026】
ダクト部50の基端部54においては、頂壁52及び一対の側壁53のみが設けられており、底壁51が設けられていない。すなわち、基端部54は、上部に頂壁52を有する断面略U字状をなしている。底壁51の基端縁51aは、カバー本体20の第1面20aに当接している。このことにより、ダクト部50の基端部54の下部がカバー本体20により閉塞されている。
【0027】
また、基端部54は導入部40の後端部を覆っている。そして、図5に拡大して示すように、上述したヒンジ部31は、ダクト部50の基端部54の頂壁52の後端縁と、導入部40の上面のうち開口42よりも僅かに前方の部分とを連結している。このため、ダクト部50は、ヒンジ部31を起点として導入部40に対して傾動可能に設けられている。ヒンジ部31は、導入部40及びダクト部50よりも薄肉状に形成された所謂インテグラルヒンジであり、導入部40と基端部54との間において幅方向の全体にわたって設けられている。
【0028】
図3及び図4に示すように、ダクト部50の先端部55の開口56における縁部、より詳しくは、先端部55における底壁51及び頂壁52の後端縁には、後述する仕切部70が収容される収容凹部57が幅方向に互いに間隔をおいて複数設けられている。
【0029】
各収容凹部57のうち、幅方向における最も内側の収容凹部57と、同収容凹部57と隣り合う収容凹部57との間の部分には、底壁51から後方に向かって突出するとともに屈曲してカバー本体20に向かって延在する係止部58が設けられている。係止部58の先端の後面には、係止爪59が設けられている。
【0030】
図3図5に示すように、カバー本体20の第1面20aのうち、ダクト部50の先端部55に対向する部分には、膨出方向に対して傾けられた姿勢のダクト部50の先端部55を支持する支持部60が突設されている。支持部60は、先端部55の幅方向の略全体にわたって延在している。このように、先端部55が支持部60により支持されることで、ダクト部50の先端部55の開口56がゴムブシュ112に向けて開口するようになる(図5参照)。
【0031】
支持部60の上面には、ダクト部50の開口56を仕切る仕切部70が幅方向に互いに間隔をおいて複数突設されている。各仕切部70は、ダクト部50の先端部55に設けられた上下の収容凹部57に収容されている。なお、開口56と各仕切部70とで区画される部分の幅方向の長さは、いずれも導入部40の開口42の膨出方向における高さよりも小さい。
【0032】
カバー本体20の第1面20aのうち、支持部60の後方における幅方向の内側に偏倚した部分には、固定部80が突設されている。固定部80は、支持部60と一体に成形されている。固定部80は、上端に底面を有する四角筒状をなしており、支持部60の上面と略同一の位置まで突出している。固定部80の上端には、ダクト部50の係止部58が係止される係止孔81が形成されている。固定部80の係止孔81の後方には、補助孔82が形成されている。係止孔81及び補助孔82は、幅方向に長い平面視長方形状をなしている。
【0033】
図5に拡大して示すように、係止孔81の前側縁には、係止部58の係止爪59の係止孔81への挿通を案内する案内面81aが形成されている。案内面81aは、後側ほど第1面20a側(下側)に位置するように傾斜している。
【0034】
係止部58の係止爪59が固定部80の係止孔81に挿入されると、係止孔81と補助孔82とを区画する区画部83が補助孔82側に向かって弾性変形することで、係止孔81が後方に拡開される。これにより、係止爪59の係止孔81への挿入が許容される。このようにして、係止部58の係止爪59と固定部80の係止孔81とが係止されることにより、ダクト部50が固定部80に固定される。
【0035】
次に、金型装置200を用いてカバー10を製造する方法について説明する。
本実施形態では、ダクト部50をその延在方向が膨出方向に沿うようにカバー本体20に対して起立した状態でカバー10を射出成形にて一体成形する。
【0036】
まず、金型装置200について説明する。
図6に示すように、金型装置200は、カバー本体20の第1面20a側及び第2面20b側にそれぞれ位置し、互いに接離可能な可動型210と固定型220とを備えている。また、金型装置200は、可動型210及び固定型220の接離方向(図6の上下方向)と交差する方向(図6の左右方向)であって、互いに異なる方向にスライド可能な2つのスライド型(第1スライド型230,第2スライド型240)を備えている。
【0037】
可動型210は、カバー10の第1面20a側の部位を成形する成形面211を有している。可動型210の成形面211には、ダクト部50の内部形状を形成するための突出部212が突設されている。可動型210には、金型装置200の型開き時にスライド型230,240をスライドさせるための複数のアンギュラピン(図示略)が設けられている。
【0038】
固定型220は、カバー10の第2面20b側の部位を成形する成形面221を有している。固定型220には、射出成形後にカバー10を固定型220から取り外すための複数のエジェクタピン(図示略)が設けられている。
【0039】
第1スライド型230は、ダクト部50の底壁51及び一対の側壁53の底壁51側の部分と、カバー本体20の第1面20aにおけるダクト部50の後方の一部を成形する成形面231を有している。
【0040】
第2スライド型240は、ダクト部50の頂壁52及び一対の側壁53の頂壁52側の部分と、カバー本体20の第1面20aにおけるダクト部50の前方の一部を成形する成形面241を有している。
【0041】
以上のことから、カバー本体20のダクト部50周辺の部分は、固定型220とスライド型230,240とにより成形される。また、カバー本体20のその他の部分は、可動型210と固定型220とにより成形される。
【0042】
そして、ダクト部50は、可動型210とスライド型230,240とにより成形される。なお、ダクト部50の基端部54は、スライド型230,240により成形される。したがって、ヒンジ部31は、スライド型230,240により成形される。
【0043】
なお、図6に示す可動型210及びスライド型230,240の外側に図示された矢印は、それぞれの可動方向を示しており、固定型220とカバー本体20との間に図示された矢印は、射出成形後に固定型220からカバー10を取り外す方向を示している。
【0044】
次に、カバー10の製造工程について説明する。
まず、金型装置200を型閉じし、可動型210、固定型220、及びスライド型230,240によって区画されたキャビティ内に溶融樹脂を充填する。
【0045】
次に、金型装置200を冷却する。これにより、ダクト部50の延在方向が導入部40の膨出方向に沿った状態のカバー本体20、ヒンジ部31、及びダクト部50が一体成形される(成形工程)。
【0046】
次に、金型装置200を型開きすることで、可動型210及び各スライド型230,240をカバー10から離間させ、上記複数のエジェクタピンによりカバー10を固定型から取り外す。
【0047】
その後、ダクト部50をヒンジ部31を起点として支持部60に向けて傾けるとともに導入部40の導入口41に接続する(接続工程)。このとき、ダクト部50は、先端部55が支持部60により支持されるとともに、係止部58が固定部80の係止孔81に係止される。
【0048】
このようにして、カバー10が製造される。
こうしたカバー10を車両のエンジンルーム101の下部に設けることにより、ダクト部50の先端部55の開口がカバー本体20の上方に存在するゴムブシュ112を指向する冷却装置が構成される。
【0049】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)カバー10は、第1面20a及び第1面20aの反対側の第2面20bを有し、第2面20b側から第1面20a側に向けてエアを導入する導入口41が設けられたカバー本体20と、カバー本体20の第1面20a側に設けられ、導入口41に接続される略四角筒状のダクト部50とを備える。また、カバー10は、カバー本体20の一部が第1面20a側に向けて膨出され、その膨出方向と交差する方向に向けて開放された開口42を有し、導入口41を形成する導入部40と、導入部40とダクト部50とを連結するヒンジ部31とを備える。ダクト部50は、膨出方向に対してヒンジ部31を起点として傾けられた姿勢で導入口41に接続されている。
【0050】
こうした構成によれば、カバー本体20の一部が第1面20a側に向けて膨出された導入部40によって形成された導入口41と、導入口41に接続される略四角筒状のダクト部50とによってダクト30が形成される。このため、導入部40の膨出方向に対するダクト部50の傾きを適宜設定することによって、エアの流れ方向を設定することができる。また、ダクト部50が略四角筒状であるため、ダクト部50の外周方向へのエアの流出を抑制することができる。
【0051】
また、上記構成によれば、カバー本体20の一部である導入部40と略四角筒状のダクト部50とがヒンジ部31を介して連結されている。このため、金型装置200を用いて、ダクト部50の延在方向が導入部40の膨出方向に沿った状態のカバー本体20、ヒンジ部31、及びダクト部50を射出成形にて一体成形することができる。すなわち、ダクト部50の外部形状やカバー本体20の第1面20aの一部の形状を複数のスライド型230,240によって成形する一方、ダクト部50の内部形状やカバー本体20のその他の形状を可動型210及び固定型220によって成形することができる。そして、ダクト部50をヒンジ部31を起点として傾けるとともに導入口41に接続することによってカバー10を製造することができる。したがって、略四角筒状のダクト部50を有しながらもカバー10の一体成形が可能となる。
【0052】
(2)ダクト部50には、カバー本体20の固定部80に形成された係止孔81に対して係止される係止部58が設けられている。
こうした構成によれば、ダクト部50に設けられた係止部58が固定部80の係止孔81に係止されることにより、ダクト部50をカバー本体20に対して固定することができる。
【0053】
また、上記構成によれば、傾動可能なダクト部50に係止部58が設けられているため、ダクト部50をカバー本体20に対して固定する際に、係止部58と係止孔81との位置合わせを目視で確認しやすくなる。
【0054】
(3)カバー本体20には、膨出方向に対して傾けられた姿勢のダクト部50の先端部55を支持する支持部60が突設されている。
こうした構成によれば、ダクト部50の姿勢を、導入部40の膨出方向に対して傾けられた状態に安定して保持することができる。
【0055】
(4)カバー本体20には、ダクト部50の先端部55の開口56を仕切る仕切部70が一体成形されている。
例えば、路上の石やゴミなどの異物がダクト部50の先端部55の開口56を通じてダクト部50内に侵入した場合、上記異物によりダクト部50内が詰まることによってゴムブシュ112が適切に冷却されないおそれがある。
【0056】
この点、上記構成によれば、仕切部70によってダクト部50の先端部55の開口56が仕切られるため、開口56からダクト部50内に上記異物が浸入することを抑制できる。
【0057】
また、仕切部70がカバー本体20と一体成形されるため、部品点数の増加を抑制できる。
(5)仕切部70は、幅方向に互いに間隔をおいて複数設けられている。
【0058】
こうした構成によれば、先端部55の開口56からダクト部50内に異物が侵入することを抑制できる。
(6)ダクト部50の先端部55の開口56と各仕切部70とで区画される部分の幅方向の長さは、いずれも導入部40の開口42の膨出方向における高さよりも小さい。
【0059】
こうした構成によれば、開口56からダクト部50内に異物が侵入した場合であっても、導入部40の開口42を通じて導入口41から異物が排出されやすくなる。
(7)ダクト部50の開口56の縁部には、仕切部70を収容する収容凹部57が設けられている。
【0060】
こうした構成によれば、ダクト部50の開口56の縁部に設けられた収容凹部57に仕切部70を収容することにより、仕切部70とダクト部50との位置決めを容易に行うことができる。
【0061】
(8)ダクト部50の基端部54は、導入部40の後端部を覆っている。
こうした構成によれば、ダクト部50の基端部54が導入部40の後端部を覆っているため、導入部40とダクト部50との間からのエアの流出を抑制できる。これにより、ゴムブシュ112を効率よく冷却することができる。
【0062】
(9)カバー10の製造方法は、ダクト部50の延在方向が導入部40の膨出方向に沿った状態のカバー本体20、ヒンジ部31、及びダクト部50を射出成形にて一体成形する成形工程と、ダクト部50をヒンジ部31を起点として傾けるとともに導入部40の導入口41に接続する接続工程とを備える。
【0063】
こうした方法によれば、金型装置200を用いて、ダクト部50の延在方向が導入部40の膨出方向に沿った状態のカバー本体20、ヒンジ部31、及びダクト部50を射出成形にて一体成形することができる。すなわち、ダクト部50の外部形状やカバー本体20の第1面20aの一部の形状を複数のスライド型230,240によって成形する一方、ダクト部50の内部形状やカバー本体20のその他の形状を可動型210及び固定型220によって成形することができる。そして、ダクト部50をヒンジ部31を起点として傾けるとともに導入口41に接続することによってカバー10を製造することができる。したがって、筒状のダクト部50を有しながらもカバー10の一体成形が可能となる。
【0064】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ダクト部50の外部形状は、スライド型230,240に加えて、これらとは別のスライド型を用いて成形してもよい。
【0065】
・ダクト部50の基端部54は、導入部40を覆っていなくてもよい。例えば、ダクト部50の基端面と導入部40の開口42の端面とが当接されている構成であってもよい。この場合、ヒンジ部31を、導入部40の開口42の縁部に設けるなどすればよい。
【0066】
・ダクト部50の基端部54を、底壁51、頂壁52及び一対の側壁53によって構成することもできる。この場合、底壁51とカバー本体20との干渉を防ぐために、カバー本体20における導入部40の後方に導入口41に連なる開口部を設ければよい。
【0067】
・ダクト部50の底壁51の基端縁51aは、カバー本体20の第1面20aに当接していなくてもよい。すなわち、底壁51とカバー本体20との間に隙間が設けられていてもよい。
【0068】
・ダクト部50の収容凹部57を省略することもできる。この場合、仕切部70は、ダクト部50の開口56に対向する位置に成形すればよい。またこのとき、仕切部70は、ダクト部50の先端部55に当接させてもよいし、先端部55から離間させてもよい。
【0069】
・仕切部70及び収容凹部57の数や形状は適宜変更できる。
・支持部60は、ダクト部50の先端部55よりも前方に位置するものであってもよい。この場合、仕切部70は、カバー本体20の第1面20aから突出させればよい。
【0070】
・固定部80の上面に膨出方向に沿って突出する係止部を設け、ダクト部50の先端部55に上記係止部に係止可能な係止孔を設けるようにしてもよい。
・係止部58は省略することもできる。この場合、例えば、ダクト部50の先端部55の底壁51と支持部60とを溶着または接着すればよい。
【0071】
・固定部80は省略することもできる。この場合、カバー本体20の第1面20aにダクト部50の係止部58が係止可能な係止孔を設け、係止部58を上記係止孔まで延在すればよい。
【0072】
・カバー10により冷却される冷却対象物はゴムブシュ112に限定されない。導入部40及びダクト部50の形成位置を変更したり、支持部60の突出高さを変更することにより、膨出方向に対するダクト部50の傾きを適宜設定したりすれば、エンジンルーム101内に設けられたその他の部材を冷却対象物とするカバーとして本発明を適用することもできる。
【0073】
・本発明は、車両100の下部における前後方向の中央部や後部に取り付けられるアンダーカバーに対して適用することもできるし、車両100の側部、上部、前部などに設けられるカバーに対しても適用することもできる。また、飛行機など車両以外の移動体用のカバーとして本発明を具現化することもできるし、固定体用のカバーとして本発明を具現化することもできる。
【符号の説明】
【0074】
10…カバー、20…カバー本体、20a…第1面、20b…第2面、21…切り欠き部、22…開口部、30…ダクト、31…ヒンジ部、40…導入部、41…導入口、42…開口、50…ダクト部、51…底壁、51a…基端縁、52…頂壁、53…側壁、54…基端部、55…先端部、56…開口、57…収容凹部、58…係止部、59…係止爪、60…支持部、70…仕切部、80…固定部、81…係止孔、81a…案内面、82…補助孔、83…区画部、100…車両、101…エンジンルーム、110…ステアリングギア、111…ボルト、112…ゴムブシュ、200…金型装置、210…可動型、211…成形面、212…突出部、220…固定型、221…成形面、230…第1スライド型、231…成形面、240…第2スライド型、241…成形面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6